(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
横並びの複数の収納室を備えてなる収納庫本体と、この収納庫本体の基準位置を基点とする横幅方向の正逆移動を可能にする移動手段と、によって単一の収納庫ユニットが構成され、その収納庫ユニットが奥行方向に多段に並んでいる多段型収納庫であって、
個々の上記収納庫ユニットにおいて、複数の収納室が収納庫本体の横幅方向中央位置を境として片側の複数の第1収納室群と他側の複数の第2収納室群とに分けられ、
個々の収納庫ユニットの上記移動手段が、床面に固定された細長い固定側部材と、上記収納庫本体が固定されて上記固定側部材によって案内される可動側部材とでなると共に、上記固定側部材が、上記可動側部材の一定幅を越える傾動を阻止する傾き阻止機構を備え、
個々の収納庫ユニットの上記移動手段に、上記収納庫本体を基準位置に位置決めするための定位置用ストッパと、上記収納庫本体が基準位置から正方向に移動してその収納庫本体の第1収納室群の全体が上記基準位置に留まっている他の段の収納庫ユニットにおける収納庫本体の片側方の第1位置に引き出されたときに、その正方向の移動を阻止し、かつ、上記収納庫本体が基準位置から逆方向に移動してその収納庫本体の第2収納室群の全体が上記基準位置に留まっている他の段の収納庫ユニットにおける収納庫本体の他側方の第2位置に引き出されたときに、その逆方向の移動を阻止するための引出し位置用ストッパと、が設けられていることを特徴とする多段型収納庫。
上記移動手段の細長い固定側部材がレールでなり、上記移動手段の可動側部材が、上記収納庫本体の固定された横長の台座とその台座の両端部及び中央部にそれぞれ取り付けられて上記レール上を転動可能な端部車輪及び中央部車輪とでなり、
上記レールに上記端部車輪及び中央部車輪の上部に遊嵌合する倒立U字形の溝形部が設けられ、この溝形部の上面と上記レール上の端部車輪及び中央部車輪との間に、当該レール上での端部車輪及び中央部車輪の転動に必要な不可避的隙間が形成され、
その溝形部によって、レールから浮き上がった上記端部車輪に当接して可動側部材としての上記台座の傾動を阻止する上記傾き阻止機構が構成されている請求項1又は請求項2に記載した多段型収納庫。
上記定位置用ストッパが、上記台座の端部と上記レールの端部に結合された桁材とに振り分けて設けられたロックピン及びそのロックピンを嵌脱可能なピン受け部とを備えてなる請求項3又は請求項4に記載した多段型収納庫。
上記引出し位置用ストッパが、上記レールの長さ方向中央の1箇所に相応する箇所に設けられた立上り片と、上記台座の一端部及び他端部の2箇所に設けられて上記立上り片に係合可能な係止片と、でなる請求項3ないし請求項5のいずれか1項に記載した多段型収納庫。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、特定の納骨箱だけを側方に引き出すという方法が示唆されているだけであって、納骨箱を側方に引き出すための具体的構成については明らかにされていない。
【0007】
また、特許文献2のものは、任意の納骨壇をレールに沿って奥行方向に移動させることによって、他の段の納骨壇との間に人の入れる通路スペースを確保するものであるので、全段の納骨壇を奥行方向で詰めて配置したときに、納骨壇の乗っていないレールの余剰部分が多段式納骨壇の後側又は前側に突き出し、床面上にレールの余剰部分だけが露出してしまう。そのため、レールの全長部分を設置するのに必要な平坦なスペースを、全段の納骨壇を設置するのに必要なスペースよりも広く確保することが必要になり、それだけ設置スペースの広さを余分に確保することが必要になるという問題があった。
【0008】
本発明は以上の問題に鑑みてなされたものであり、収納室に対して物品を出し入れする際に、収納庫本体を側方に引き出すという方式を採用することを基本として、レールなどの固定部材を設置するのに必要なスペースの広さを、奥行方向に詰めて並べられた多段の収納庫本体を設置するのに必要なスペースの広さと同等にすることができ、しかも、骨壺やその他の物品の収納にも便利に利用することのできる多段型収納庫を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、奥行方向に詰めて並べられた多段の収納庫本体の両側方の床面に段差が存在していても、その段差によってレールなどの固定部材の水平設置が妨げられるという事態の生じない多段型収納庫を提供することを目的とする。
【0010】
さらに、本発明は、地震発生に起因する収納庫本体の位置ずれや転倒などが生じにくい多段型収納庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る多段型収納庫は、横並びの複数の収納室を備えてなる収納庫本体と、この収納庫本体の基準位置を基点とする横幅方向の正逆移動を可能にする移動手段と、によって単一の収納庫ユニットが構成され、その収納庫ユニットが奥行方向に多段に並んでいる。そして、個々の上記収納庫ユニットにおいて、複数の収納室が収納庫本体の横幅方向中央位置を境として片側の第1収納室群と他側の第2収納室群とに分けられている。また、個々の収納庫ユニットの上記移動手段が、床面に固定された細長い固定側部材と、上記収納庫本体が固定されて上記固定側部材によって案内される可動側部材とでなると共に、上記固定側部材が、上記可動側部材の一定幅を越える傾動を阻止する傾き阻止機構を備えている。さらに、個々の収納庫ユニットの上記移動手段に、上記収納庫本体を基準位置に位置決めするための定位置用ストッパと、上記収納庫本体が基準位置から正方向に移動してその収納庫本体の第1収納室群の全体が上記基準位置に留まっている他の段の収納庫ユニットにおける収納庫本体の片側方の第1位置に引き出されたときに、その正方向の移動を阻止し、かつ、上記収納庫本体が基準位置から逆方向に移動してその収納庫本体の第2収納室群の全体が上記基準位置に留まっている他の段の収納庫ユニットにおける収納庫本体の他側方の第2位置に引き出されたときに、その逆方向の移動を阻止するための引出し位置用ストッパと、が設けられている。
【0012】
このように構成された多段型収納庫において、任意の1つの収納庫ユニットの収納庫本体を基準位置から正方向に移動させて、その収納庫本体の第1収納室群の全体を第1位置に引き出すと、その第1収納室群の個々の収納室に対して物品を出し入れするときに、他の段の収納庫ユニットやその収納庫本体がじゃまにならない。同様に、任意の1つの収納庫ユニットの収納庫本体を基準位置から逆方向に移動させて、その収納庫本体の第2収納室群の全体を第2位置に引き出すと、その第2収納室群の個々の収納室に対して物品を出し入れするときに、他の段の収納庫ユニットやその収納庫本体がじゃまにならない。
【0013】
また、この多段型収納庫では、収納庫ユニットの移動手段を構成している細長い固定側部材に、その相手方部材である可動側部材の一定幅を越える傾動を阻止する傾き防止機構が備わっているため、収納庫本体を側方に引き出したときでも、引き出された部分の重量の影響を受けて可動側部材が一定幅を越えて傾くという事態が起こらない。したがって、上記一定幅を適切に定めておくことにより、収納庫本体の引き出された部分の重量が固定側部材や床面によって支えられていなくても、側方に引き出された収納庫本体の水平度を、許容できる範囲に適切に保つことが可能になる。その結果、細長い固定側部材を、横に引き出された収納庫本体の全体を支え得る程度にまで長くする必要がなくなるので、それだけ固定側部材の長さを短くして設置スペースの省スペース化を図りやすくなる。
【0014】
さらに、この多段型収納庫では、定位置用ストッパの作用によって収納庫本体を基準位置に位置決めしておくことができるので、地震発生に起因する収納庫本体の基準位置からの位置ずれや転倒などが生じにくい。また、引出し位置用ストッパの作用によって収納庫本体の引き出し幅が規制されるので、固定側部材の長さを収納庫本体の横幅に見合う程度に短くしておいても、収納庫本体を側方に引き出したときに可動側部材が固定側部材から外れてしまうという事態が起こらなくなる。
【0015】
以上のように、本発明によれば、収納庫本体の横幅と移動手段の固定側部材及び可動側部材の長さを同等又は略同等に定めておいても、収納庫本体の収納室に対する物品の出し入れを、収納庫本体を側方に引き出した状態で楽に行うことができるようになる。したがって、本発明によれば、設置スペースの省スペース化を図り得ることは勿論、その設置スペースの横に段差が存在していても、収納庫本体を側方に引き出して行う物品の出し入れに支障が生じることがなく、さらに、地震発生に起因する収納庫本体の位置ずれや転倒などが生じにくい多段型収納庫を提供することが可能になる。
【0016】
本発明では、上記収納庫本体が、横並びの複数の収納室を上下方向に多段に備えている、という構成を採用することができる。この構成によれば、設置スペースの省スペース化を阻害することなく、収納室の数を増大させることが可能になる。
【0017】
本発明では、上記移動手段の細長い固定側部材がレールでなり、上記移動手段の可動側部材が、上記収納庫本体の固定された横長の台座とその台座の両端部及び中央部にそれぞれ取り付けられて上記レール上を転動可能な端部車輪及び中央部車輪とでなり、上記レールに上記端部車輪及び中央部車輪の上部に遊嵌合する倒立U字形の溝形部が設けられ、この溝形部の上面と上記レール上の端部車輪及び中央部車輪との間に、当該レール上での端部車輪及び中央部車輪の転動に必要な不可避的隙間が形成され、その溝形部によって、レールから浮き上がった上記端部車輪に当接して可動側部材としての上記台座の傾動を阻止する上記傾き阻止機構が構成されている、という構成を採用することが可能である。
【0018】
この構成によれば、収納庫本体が側方に引き出されるのに伴って端部車輪がレールから浮き上がっても、その端部車輪の無制限な浮き上がりが傾き阻止機構としての溝形部によって阻止される。したがって、側方に引き出した収納庫本体の水平度が極端に損なわれることがなくなる。
【0019】
本発明では、固定側部材としての上記レールの長さが、基準位置に留まっている上記収納庫本体の横幅方向両側に実質的に突出しない長さである、という構成を採用することが望ましい。ここで、「実質的に突出しない長さ」とは、レールが、基準位置の収納庫本体の横幅と同等(同一)の寸法である場合、レールが、基準位置の収納庫本体の横幅よりも短い寸法である場合、レールが、基準位置の収納庫本体の横幅よりも長いけれども、実際上は同等と見なせる程度の寸法である場合、を含んでいる。この構成によれば、基準位置に留まっている収納庫本体の側方にレールが突出することがないので、レールの設置のためだけに余分に平坦なスペースを確保する必要がなくなって効率のよい省スペース化が図られる。
【0020】
本発明では、上記第1ストッパが、上記収納庫本体の横幅方向の端部と上記台座の長手方向の端部とに振り分けて設けられたロックピン及びそのロックピンを嵌脱可能なピン受け部とを備えてなる、という構成を採用することが可能である。また、上記第2ストッパが、上記レールの長さ方向中央の1箇所に相応する箇所に設けられた立上り片と、上記台座の一端部及び他端部の2箇所に設けられてその立上り片に係合可能な係止片と、でなる、という構成を採用することが可能である。
【0021】
本発明の多段型収納庫の具体的構成や作用は、後述する実施形態を参照してさらに詳細に説明する。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る多段型収納庫は、収納室に対して物品を出し入れする際に、収納庫本体を側方に引き出すという方式を採用しているにもかかわらず、レールなどの固定側部材の設置に必要なスペースの広さを、奥行方向に詰めて並べられた多段の収納庫本体の設置に必要なスペースの広さと同等にすることが可能になる。そのため、収納庫本体を側方に引き出した状態で収納室に対する物品の出し入れを楽に行うことができるだけでなく、設置スペースの省スペース化を顕著に達成することが可能になる。さらに、奥行方向に詰めて並べられた多段の収納庫本体の両側の床面に段差が存在していても、その段差によってレールなどの固定部材の水平設置が妨げられるという事態を生じさせずに済む。そのほか、本発明によれば、地震発生に起因する収納庫本体の位置ずれや転倒などが生じにくい多段型収納庫を提供することが可能になる。
【0023】
なお、本発明の多段型収納庫は、骨壺やその他の物品の収納に便利に利用することができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は本発明の実施形態に係る収納庫ユニットAの設置状態を例示した正面図、
図2は
図1のII−II線に沿う部分の概略平面図、
図3は
図1のIII矢視図である。
【0026】
図1に示した単一の収納庫ユニットAは、収納庫本体10と、この収納庫本体10の基準位置を基点とする横幅方向の正逆移動を可能にする移動手段50と、によって構成されている。ここで、「収納庫本体10の基準位置」とは、正面視矩形の収納庫本体10の横幅方向中央位置P1が、収納庫本体10の横幅と同等の長さを有する横長の移動手段50の中央位置P2に一致しているときの収納庫本体10の位置を指している。
【0027】
収納庫本体10は、基本的には
図2のように横並びの複数(図例では6個)の収納室C1〜C6を備えていて、それぞれの収納室C1〜C6に、
図2に矢印aで示した方向に開閉される片開き式の開閉扉D1〜D6が備わっている。この実施形態の収納庫本体10では、
図1のように、横並びの複数の収納室C1〜C6を上下方向に多段(図例では5段)に具備させることによって収納室C1〜C6の数を増大させている。
【0028】
この構成の収納庫本体10において、全段の収納室C1〜C6の全部が、矩形の枠体11で囲まれることにより一体化されている。また、枠体11の横幅方向中央位置にやゝ幅広の仕切り板12が縦通していて、その仕切り板12を境として、全段の収納室C1〜C6の全部が、片側の複数(図例では15個)の第1収納室群21と他側の複数(図例では15個)の第2収納室群22とに分かれている。また、収納庫本体10の枠体11の左右の両側板13,14にはそれぞれ把手15,16が設けられている。
【0029】
図1又は
図3に示したように、移動手段50は、床面Fに設置された細長い固定側部材60と、この固定側部材60の相手方部材である可動側部材70とでなる。固定側部材60は、具体的には、一対の平行なレール要素によって構成されたレール61でなる。また、可動側部材70は、具体的には、横長の台座71と、その台座71の左右の両端部及び中央部にそれぞれ取り付けられて、レール61の上を転動することによって案内される一方側及び他方側の端部車輪72,73及び中央部車輪76とでなる。そして、台座71に収納庫本体10が固定されている。ここで、固定側部材60としてのレール61及び可動側部材70としての台座71は、それらの長さが収納庫本体10の横幅と同等になっている。
【0030】
図4は移動手段50などの要部を示した縦断側面図、
図5は一方側の端部車輪72を含む移動手段50などの要部を示した縦断正面図、
図6は他方側の端部車輪73を含む移動手段50などの要部を示した縦断正面図、
図7は中央部車輪76を含む移動手段50などの要部を示した縦断正面図である。
【0031】
図5又は
図6のように、台座71の左右の両端部にそれぞれ端部車輪72,73が設けられている。これらの端部車輪72,73は、共通の回転軸線を持つ2つのローラを有する単輪タイプであって、それらの取付軸74,75が台座71の左右の両端部に固定されている。また、
図7のように、台座71の中央部に中央部車輪76が設けられている。この中央部車輪76は、複輪タイプであって、台座71の長手方向中央位置に固定された取付軸77の両側に、共通の回転軸線を持つ2つの輪体を1組とする2組のローラ78a,78bを1組ずつ有している。なお、
図7では、1組の2つの輪体のうちの片側の輪体だけが図に現れている。
【0032】
図4に一部拡大して示したように、レール61を形成しているレール要素は、倒立U字形の溝形部62を全長に亘って一体に備えた型鋼によって製作されていて、その溝形部62の上面62aとレール61上の一方側の端部車輪72との間には、レール61上を端部車輪72が転動するのに必要とされる不可避的隙間Sが形成されている。したがって、溝形部62の上面62aは、レール61上の端部車輪72に不可避的隙間Sを隔てて対向していて、端部車輪72がレール61から浮き上がったときには、端部車輪72が溝形部62の上面62aに当接してその浮き上がり幅の最大値を不可避的隙間Sの寸法と同等の寸法に規制する。このため、収納庫本体10と共に台座71が横に傾動するような事態を生じたときには、その傾き幅が不可避的隙間Sの寸法に見合う角度に制限される。したがって、この溝形部62が、レール61から浮き上がった端部車輪72に当接して台座71の傾動を阻止する作用を発揮する傾き阻止機構を構成している。
図6に示した他方側の端部車輪73と溝形部6を有するレール61との関係についても同様である。なお、溝形部6は、端部車輪72,73の個々のローラに対応して個別に設けられているものである。
【0033】
図8は、一対の平行なレール要素によって構成されたレール61を備える構体の部分斜視図である。一対の平行なレール要素によって構成されたレール61を備える構体の部分斜視図である。同図のように、レール61を構成している一対の平行なレール要素は、その端部と中央部とがそれぞれ桁材63,64に結合されている。また、
図1又は
図3に示したように、移動手段50には、収納庫本体10を上記した基準位置に位置決めするための定位置用ストッパ80が設けられている。
【0034】
図9はこの定位置用ストッパ80を例示した正面図である。同図の定位置用ストッパ80は、収納庫本体10が固定されている台座71の左右の各端部とレール61の左右の各端部に結合された桁材63(
図8参照)とに振り分けて設けられたロックピン81及びそのロックピン81を嵌脱可能な筒状のピン受け部82とを備えている。図例の定位置用ストッパ80は「丸落し」と通称されていて、ロックピン81が、台座71に固定されたピン保持筒83に上下摺動可能に保持されている。そして、収納庫本体10が基準位置に位置しているときに、ロックピン81から突出されている操作軸84を引き上げてピン保持筒83に設けられている上側係合溝85に係止させると、ロックピン81がピン受け部82から引き抜かれる。また、収納庫本体10が基準位置に位置しているときに、操作軸84を押し下げてピン保持筒83に設けられている下側係合溝86に係止させることによって、ロックピン81がピン受け部82に嵌合される。そして、ロックピン81がピン受け部82に嵌合されているときには、台座71に固定されている収納庫本体10が上記した基準位置に位置決めされているのに対し、ロックピン81がピン受け部82から引き抜かれているときにはその位置決めが解除されている。
【0035】
この実施形態では、移動手段50に、上記した定位置用ストッパ80の他に、引出し位置用ストッパ90が設けられている。この引出し位置用ストッパ90は、収納庫本体10が基準位置から正方向X1(
図1において右方向)又は逆方向X2(
図1において左方向)に移動し得る範囲を規制する役割を果たす。次に、この引出し位置用ストッパ90の構成を、
図5、
図6、
図8及び
図10を参照して具体的に説明する。
【0036】
図5及び
図6は一方側又は他方側の端部車輪72,73を含む移動手段50などの要部を示した縦断正面図、
図8はレール61を備える構体の部分斜視図、
図10は引出し位置用ストッパ90の構成を示した一部破断平面図である。
【0037】
引出し位置用ストッパ90は、
図8に示したレール61を備える構体の中央部の桁材64に設けられた板片状の立上り片91と、
図5に示した台座71の一端部の下部に設けられた一端側係止片92と、
図5に示した台座71の他端部の下部に設けられた他端側係止片93とを備えている。立上り片91の位置は、基準位置の収納庫本体10の横幅方向の中央位置P1(
図1参照)に一致している。
【0038】
そして、たとえば
図10のように、収納庫本体10が基準位置から正方向X1に移動して、その収納庫本体10の第1収納室群21(
図1参照)の全体がレール61の一端部側方に引き出されたときには、他端側係止片93が立上り片91に係合してその正方向X1の移動を阻止する。また、図示していないけれども、収納庫本体10が基準位置から逆方向X2(
図1参照)に移動して、その収納庫本体10の第2収納室群22(
図1参照)の全体がレール61の他端部側方に引き出されたときに、一端側係止片92が立上り片91に係合してその逆方向X2の移動を阻止する。
【0039】
ここまでは、単一の収納庫ユニットAの構成を説明してきた。本発明の実施形態に係る多段型収納庫は、上記の構成を備えた収納庫ユニットAが奥行方向に多段に並んでいる。
図11は多段型収納庫の全体を示した平面図であり、同図には、収納庫ユニットAが奥行方向に多段(図例では6段)に並んでいる状態が示されている。
【0040】
図10によって類推することができるように、同図の多段型収納庫によると、各段の収納庫ユニットAにおいて、床面Fに設置されているレール61が、基準位置の収納庫本体10の側方に突き出ていない。このことは、
図1によっても明らかである。したがって、床面F上での多段型収納庫の設置スペースの広さは、全段の収納庫ユニットA…を奥行方向で詰めて配置し得るだけの広さで済み、そのことは、設置スペースの省スペース化を図る上で特に有益である。
【0041】
また、基準位置の収納庫本体10を、定位置用ストッパ80を利用して位置決めしておくと、地震発生に起因する収納庫本体10の位置ずれが防止される。また、収納庫本体10を固定している台座71に取り付けられている端部車輪72,73や中央部車輪76の横ずれ(車輪回転軸方向の位置ずれ)が、レール61に一体に備わっている溝形部62によって抑制されるので、地震発生に起因する収納庫本体10の前後方向への位置ずれや転倒なども防止される。
【0042】
次に、
図10、
図11又は
図12を参照して、収納庫本体10の収納室C1〜C6に対して物品を出し入れする手順を例示的に説明する。なお、
図12は収納庫本体10が第1位置に引き出された状態の正面図である。
【0043】
この多段型収納庫では、任意の収納庫ユニットAの収納庫本体10を、その収納庫ユニットAの移動手段50を利用して、他の段の収納庫ユニットAの基準位置の収納庫本体Aの片側方の第1位置や他側方の第2位置に引き出することができる。収納庫本体10を第1位置や第2位置に引き出すときには、その収納庫本体10に設けられている把手15,16を活用し、それらの把手15,16を引いたり押したりして、端部車輪72,73や中央部車輪76をレール61上で転動させて、台座71と共に収納庫本体10を横方向に移動させる。
【0044】
図11には、前から4段目の収納庫ユニットAの収納庫本体10が正方向X1に移動して第1位置に引き出された状態が示されている。
図12においても同様である。同図によって判るように、第1位置に引き出された収納庫本体10では、上下方向多段に亘って設けられている全部の収納室C1,C2,C3を含む第1収納室群21の全体が、基準位置に留まっている他の段の収納庫ユニットAにおける収納庫本体10の片側方に配備される。こうして収納庫本体10を第1位置に引き出したときには、
図10に示したように、レール61側に設けられている引出し位置用ストッパ90の立上り片91に、台座71に設けられている引出し位置用ストッパ90の他端側係止片93が係合する。そのため、台座71に固定されている収納庫本体10の正方向X1の移動が阻止されて、収納庫本体10の第1収納室群21がその位置に位置決めされる。
【0045】
また、収納庫本体10の第1収納室群21が第1位置に位置決めされたときには、
図12に示したように、他方側の端側端部車輪73及び中央部車輪76の他方のローラ78bがレール61上に留まっているものの、一方側の端部車輪72及び中央部車輪76の一方のローラ78aがレール61から外れる。この状態では、第一収納室群21の重量の影響を受けて、収納庫本体10が台座71と共に、第一収納室群21が第2収納室群22よりも下位になるように、中央部車輪76の他方のローラ78bを支点として横に傾むくことがあるけれども、このときの傾きは無視できる程度に小さく、実使用においては第1収納室群21の水平度が損なわれることはない。すなわち、
図4を参照して説明したところから類推できるように、他方側の端部車輪73には、レール61に一体に備わっている倒立U字形の溝形部62の上面62aが、レール61上を他方側の端部車輪73が転動するのに必要な不可避的隙間Sを隔てて対向していて、収納庫本体10と共に台座71が横に傾いたときには、他方側の端部車輪73が、傾き阻止機構としての溝形部62の上面62aに当接する。そのため、台座71の傾き幅が不可避的隙間Sの寸法に見合う角度に制限される。そして、実際的な不可避的隙間Sの寸法は数mm、たとえば2〜5mm程度であるので、側方に引き出された第1収納室群21の水平度が損なわれることはない。したがって、
図12のように仮に床面Fに段差Lが存在していても、側方に引き出された第1収納室群21が床面Fから浮き上がったままその水平度を保つので、個々の収納室C1,C2,C3に対する物品の出し入れに支障が生じことはない。
【0046】
図11には、前から2段目の収納庫ユニットAの収納庫本体10が逆方向X2に移動して第2位置に引き出された状態も併せて示されている。この場合も上述したところと同様に、第2位置に引き出された収納庫本体10では、全部の収納室C4,C5,C6を含む第2収納室群22の全体が、基準位置に留まっている他の段の収納庫ユニットAにおける収納庫本体10の他側方に配備される。こうして収納庫本体10を第2位置に引き出したときには、引出し位置用ストッパ90の立上り片91に、台座71に設けられている引出し位置用ストッパ90の一端側係止片92(
図5参照)が係合する。そのため、台座71に固定されている収納庫本体10の逆方向X2の移動が阻止されて、収納庫本体10の第2収納室群21がその位置に位置決めされる。
【0047】
また、図示していないけれども、この場合も、一方側の端部車輪72及び中央部車輪76の一方のローラ78aがレール61上に留まるのに対して、他方側の端部車輪73及び中央部車輪76の他方のローラ78bがレール61から外れ、収納庫本体10が台座71と共に、中央部車輪76の一方のローラ78aとの接触点を支点として横に傾むくことがある。しかし、このときには、レール61から浮き上がった一方側の端部車輪72が、レール61側に備わっている傾き阻止機構としての溝形部62の上面62aに当接して、第2収納室群21の水平度が保たれるので、個々の収納室C4,C5,C6に対する物品の出し入れに支障が生じことはない。
【0048】
第1位置又は第2位置に引き出した収納庫本体10は、収納室への物品の出し入れ後に、元の基準位置に押し戻される。
【0049】
以上説明した多段型収納庫は、日用品やその他の物品を収納することに好適に用い得るものである。特に、寺院などの納骨壇に利用することも可能である。この多段型収納庫を納骨壇に利用する場合、納骨堂の床面を、多段型収納庫の平面面積に相当する部分だけ一段高くしておき、そのように高くなった設置スペースに多段型収納庫を設置し、収納室への骨壺などの出し入れを一段低い床面から人が行うようにすることが可能になるので、納骨壇の威厳を高めるのに有益である、ということが云える。
【0050】
また、上記した実施形態では、収納庫本体10の横並びの収納室C1〜C6がすべて同じサイズになっているけれども、この点は、横並びの収納室C1〜C6のサイズが異なっていてもよい。
【0051】
さらに上記した実施形態では、移動手段50を、固定側部材としてのレール61と、可動側部材としての端部車輪72,73及び中央部車輪76と、可動側部材としての台座71、とによって構成した事例を説明したけれども、この移動手段50のレール61を敷居に置き換え、端部車輪72,73及び中央部車輪76を敷居の上でスライドする摺動体に置き換え、この摺動体を台座に具備させるという構成を採用することも可能である。この構成によると、床面が畳敷きであっても違和感なく当該多段型収納庫を設置することができる。