(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。まず、本発明の第1実施形態に係る蒸気タービンの構成について説明する。
図1は、第1実施形態に係る蒸気タービン1を示す概略断面図である。
蒸気タービン1は、中空のケーシング10と、このケーシング10の内部に流入する蒸気S(流体)の量と圧力を調整する調整弁20と、ケーシング10の内部に回転自在に設けられ、不図示の発電機等の機械に動力を伝達する軸体30と、ケーシング10に保持された環状静翼群40と、軸体30に設けられた環状動翼群50(ブレード)と、軸体30を軸回りに回転可能に支持する軸受部60と、を備えている。
【0028】
ケーシング10は、内部空間が気密に封止されているとともに、蒸気Sの流路とされている。このケーシング10の内壁面には、軸体30が挿通されたリング状の仕切板外輪11(構造体)が強固に固定されている。
【0029】
調整弁20は、ケーシング10の内部に複数個取り付けられており、それぞれ図示しないボイラから蒸気Sが流入する調整弁室21と、弁体22と、弁座23とを備えており、弁体22が弁座23から離れると蒸気流路が開いて、蒸気室24を介して蒸気Sがケーシング10の内部空間に流入するようになっている。
【0030】
軸体30は、軸本体31と、この軸本体31の外周から径方向に延出した複数のディスク32とを備えている。この軸体30は、回転エネルギーを、図示しない発電機等の機械に伝達するようになっている。
【0031】
環状静翼群40は、軸体30を包囲して周方向に所定間隔で設けられ、その基端部が前記仕切板外輪11によってそれぞれ保持された複数の静翼41と、これら静翼41の径方向先端部を周方向に互いに連結するリング状のハブシュラウド42と、を有している。そして、このハブシュラウド42には、径方向に所定幅の隙間を介するようにして、軸体30が挿通されている。
そして、このように構成される6個の環状静翼群40が、軸体30の軸方向に所定間隔で設けられており、蒸気Sの圧力エネルギーを速度エネルギーに変換して、下流側に隣接する動翼51側に案内するようになっている。
【0032】
軸受部60は、ジャーナル軸受装置61及びスラスト軸受装置62を有し、軸体30を回転可能に支持している。
【0033】
環状動翼群50は、軸体30を包囲して周方向に所定間隔で設けられ、その基端部が前記ディスク32にそれぞれ固定された複数の動翼51と、これら動翼51の径方向先端部を周方向に互いに連結するリング状のチップシュラウド(
図1には不図示)と、を有している。
そして、このように構成される6個の環状動翼群50が、6個の環状静翼群40の下流側に隣接するようにしてそれぞれ設けられている。これにより、1組1段とされる環状静翼群40及び環状動翼群50が、軸方向に沿って合計6段に構成されている。
【0034】
ここで、
図2は、
図1における動翼51の先端部周辺を拡大した部分拡大断面図である。動翼51の先端部には、前述のようにリング状のチップシュラウド52が配設されている。このチップシュラウド52は、階段状の断面形状を有し、軸方向に沿う3つの軸方向壁面521a,521b,521cと、径方向に沿う3つの径方向壁面522a,522b,522cと、を有している。尚、チップシュラウド52の断面形状は、本実施形態に限定されず適宜設計変更が可能である。
【0035】
一方、
図2に示す仕切板外輪11の内周面には、断面凹型の環状溝111が形成されている。そして、この環状溝の底面111aには、3つのシールフィン12が、径方向に突出するようにしてそれぞれ設けられている。
【0036】
ここで、3つのシールフィン12のうち、蒸気の流通方向すなわち軸方向に沿って最も上流側に位置する第1シールフィン12Aは、チップシュラウド52の径方向壁面522aより若干下流側に設けられ、その先端とチップシュラウド52の軸方向壁面521aとの間には、微小隙間13Aが径方向に形成されている。また、3つのシールフィン12のうち、2番目に上流側に位置する第2シールフィン12Bは、チップシュラウド52の径方向壁面522bより若干下流側に設けられ、その先端とチップシュラウド52の軸方向壁面521bとの間にも、微小隙間13Bが径方向に形成されている。更に、3つのシールフィン12のうち、最も下流側に位置する第3シールフィン12Cは、チップシュラウド52の径方向壁面522cより若干下流側に設けられ、その先端とチップシュラウド52の軸方向壁面521cとの間にも、微小隙間13Cが径方向に形成されている。このように構成されるシールフィン12は、第1シールフィン12A,第2シールフィン12B,及び第3シールフィン12Cの順にその長さが短くなっている。
【0037】
尚、シールフィン12の長さや形状や設置位置や個数等は本実施形態に限定されず、チップシュラウド52および/または仕切板外輪11の断面形状等に応じて適宜設計変更が可能である。また、微小隙間13の寸法は、ケーシング10や動翼51の熱伸び量、動翼の遠心伸び量等を考慮した上で、シールフィン12とチップシュラウド52とが接触することがない安全な範囲内で、最小の値に設定することが好適である。本実施形態では、3つの微小隙間13を全て同じ寸法に設定しているが、必要に応じて、各シールフィン12によって微小隙間13を異なる寸法に設定してもよい。
また、本実施形態では、シールフィン12を仕切板外輪11から突出して設け、チップシュラウド52との間に微小隙間13を形成したが、これとは逆に、シールフィン12をチップシュラウド52から突出して設け、仕切板外輪11との間に微小隙間13を形成してもよい。
【0038】
そして、このような動翼51の先端部周辺の構成によれば、
図2に示すように、仕切板外輪11とシールフィン12とチップシュラウド52とによって、3つのキャビティC(空間)が形成されている。
【0039】
ここで、この3つのキャビティCのうち、軸方向に沿って最も上流側に位置する第1キャビティC1は、
図2に示すように、環状溝111の底面111a及び側面111bと、第1シールフィン12Aと、チップシュラウド52の径方向壁面522a及び軸方向壁面521aとによって形成されている。このように形成される第1キャビティC1は、軸方向に沿った断面で略矩形形状を有している。但し、前述のように第1シールフィン12Aが径方向壁面522aより若干下流側に設けられている分だけ、第1キャビティC1の軸方向下流部には、軸方向に若干拡幅された拡幅部14が形成されている。
【0040】
そして、
図2に示すように、この第1キャビティC1の2つの隅部、より詳細には環状溝111の底面111aと側面111bとによって形成される隅部、及び環状溝111の底面111aと第1シールフィン12Aとによって形成される隅部には、死水域充填部15がそれぞれ設けられている。この2つの死水域充填部15は、第1キャビティC1の隅部に生じる死水域を埋めて無くすためのものであって、その軸方向に沿った断面で、凹状の曲線に形成された傾斜面Kを有している。この凹状の曲線とは、後述するように、第1キャビティC1の内部で発生する蒸気Sの渦流に沿うような形状であって、本実施形態では半径5mm以上の円弧形状としている。従って、死水域充填部15の大きさは、前述のように応力集中を防止するためにケーシングの隅部に形成する半径1mm程度の円弧形状の部分と比較すると、断面積比で約25倍以上の大きさとなっている。
【0041】
尚、本実施形態では、死水域充填部15を仕切板外輪11とは別部材として構成したが、死水域充填部15を仕切板外輪11と一体的に構成してもよい。また、死水域充填部15を設ける位置は、第1キャビティC1の隅部に限定されず、第1キャビティC1において死水域が発生する任意の位置とすることが可能である。また、傾斜面Kの形状は、本実施形態のように円弧形状だけでなく、蒸気Sの渦流の形状に応じて任意の形状とすることができる。
【0042】
また、3つのキャビティCのうち、軸方向に沿って2番目に上流側に位置する第2キャビティC2は、
図2に示すように、環状溝111の底面111aと、第1シールフィン12Aと、チップシュラウド52の軸方向壁面521a,521b及び径方向壁面522bと、第2シールフィン12Bとによって形成されている。そして、この第2キャビティC2の軸方向下流部にも、第1キャビティC1と同様に、軸方向に若干拡幅された拡幅部16が形成されている。また、第2キャビティC2の2つの隅部、より詳細には環状溝111の底面111aと第1シールフィン12Aとによって形成される隅部、及び環状溝111の底面111aと第2シールフィン12Bとによって形成される隅部にも、死水域充填部17がそれぞれ設けられている。この2つの死水域充填部17の役割及びその形状は、第1キャビティC1の死水域充填部15と同様である。
【0043】
また、3つのキャビティCのうち、軸方向に沿って最も下流側に位置する第3キャビティC3は、
図2に示すように、環状溝111の底面111aと、第2シールフィン12Bと、チップシュラウド52の軸方向壁面521b,521c及び径方向壁面522cと、第3シールフィン12Cとによって形成されている。そして、この第3キャビティC3の軸方向下流部にも、第1キャビティC1と同様に、軸方向に若干拡幅された拡幅部18が形成されている。また、第3キャビティC3の2つの隅部、より詳細には環状溝111の底面111aと第2シールフィン12Bとによって形成される隅部、及び環状溝111の底面111aと第3シールフィン12Cとによって形成される隅部にも、死水域充填部19がそれぞれ設けられている。この2つの死水域充填部19の役割及びその形状は、第1キャビティC1の死水域充填部15と同様である。
【0044】
次に、第1実施形態に係る蒸気タービン1の作用効果について、
図1及び
図2を用いて説明する。
図1に示す調整弁20を開状態にすると、不図示のボイラからケーシング10の内部に蒸気Sが流入する。この蒸気Sは、各段の環状静翼群40によって環状動翼群50へと案内され、環状動翼群50が回転を開始する。これにより、環状動翼群50によって蒸気Sのエネルギーが回転エネルギーに変換され、この回転エネルギーが、環状動翼群50と一体的に回転する軸体30から不図示の発電機等に対して伝達される。
【0045】
この時、
図2に示すように、環状静翼群40を通過した蒸気Sの一部が、環状動翼群50の回転駆動に寄与することなく、シールフィン12と環状動翼群50との間の微小隙間13を通って下流側へリークする。
【0046】
この蒸気Sのリークについてより詳細に説明する。
図2に示すように、環状静翼群40を通過して軸方向に流れる蒸気Sは、その一部が、動翼51に衝突することなく第1キャビティC1に流入する。第1キャビティC1に流入した蒸気Sは、チップシュラウド52の径方向壁面522aに衝突することにより、例えば
図2では反時計回りの主渦SU1(渦流)を形成する。そして、この主渦SU1がチップシュラウド52の角部52Aにてその一部が剥離することによって、第1キャビティC1の拡幅部14において、主渦SU1と逆回りすなわち
図2では時計回りの剥離渦HU1(渦流)が発生する。この剥離渦HU1は、第1シールフィン12Aとチップシュラウド52との間の微小隙間13Aにおける蒸気Sのリーク量を低減させる、いわゆる縮流効果を発揮する。
【0047】
ここで、
図3は、剥離渦HU1の縮流効果について説明する図であって、
図2における第1シールフィン12Aの先端部周辺を拡大した部分拡大断面図である。時計回りの剥離渦HU1は、第1シールフィン12Aとチップシュラウド52との間の微小隙間13Aの直前位置で、径方向内向きの慣性力を有している。従って、微小隙間13Aを通って下流側へリークする蒸気Sは、剥離渦HU1の慣性力で押さえ込まれることにより、
図3に一点鎖線で示すように径方向への幅が縮められる。このように、剥離渦HU1は、蒸気Sを径方向内向きに押し縮めることでそのリーク量を低減させる効果、すなわち縮流効果を有している。また、この縮流効果は、剥離渦HU1の慣性力が大きいほど、すなわち剥離渦HU1の流速が速いほど、その効果が大きくなる。
【0048】
更に、
図2に示すように、第1キャビティC1には、その2つの隅部に、主渦SU1の流れに沿うように略円弧形状の死水域充填部15がそれぞれ設けられている。従って、第1キャビティC1の隅部には、死水域すなわち主渦SU1の及ばない領域が生じない。これにより、主渦SU1を形成する蒸気Sが死水域に流入することによって、蒸気Sのエネルギーが損失することを防止することができる。そうすると、主渦SU1を強めることができるので、その結果として、主渦SU1から剥離する剥離渦HU1も強めることができる。これにより、死水域充填部15がない場合と比較すると剥離渦HU1の縮流効果が大きくなり、第1シールフィン12Aとチップシュラウド52との間の微小隙間13Aにおける蒸気Sのリーク量を低減させることができる。
【0049】
また、
図2に示すように、微小隙間13Aからリークした蒸気Sは、第2キャビティC2へ流入する。この蒸気Sは、チップシュラウド52の径方向壁面522bに衝突することにより、反時計回りの主渦SU2を形成する。そして、この主渦SU2の一部が剥離することによって、第2キャビティC2の拡幅部16において、時計回りの剥離渦HU2が発生する。この剥離渦HU2も、剥離渦HU1と同様に、第2シールフィン12Bとチップシュラウド52との間の微小隙間13Bにおける蒸気Sのリーク量を低減させる、縮流効果を発揮する。
【0050】
更に、
図2に示すように、第2キャビティC2にも、その2つの隅部に略円弧形状の死水域充填部17がそれぞれ設けられている。従って、第1キャビティC1の死水域充填部15と同様に、主渦SU2を強めることができ、その結果として剥離渦HU2も強めることができる。これにより、死水域充填部17がない場合と比較すると、剥離渦HU2の縮流効果が大きくなり、微小隙間13Bにおける蒸気Sのリーク量を低減させることができる。
【0051】
また、
図2に示すように、微小隙間13Bからリークした蒸気Sは、第3キャビティC3へ流入する。この蒸気Sは、チップシュラウド52の径方向壁面522cに衝突することにより、反時計回りの主渦SU3を形成する。そして、この主渦SU3の一部が剥離することによって、第3キャビティC3の拡幅部18において、時計回りの剥離渦HU3が発生する。この剥離渦HU3も、剥離渦HU1と同様に、第3シールフィン12Cとチップシュラウド52との間の微小隙間13Cにおける蒸気Sのリーク量を低減させる、縮流効果を発揮する。
【0052】
更に、
図2に示すように、第3キャビティC3にも、その2つの隅部に略円弧形状の死水域充填部19がそれぞれ設けられている。従って、第1キャビティC1の死水域充填部15と同様に、主渦SU3を強めることができ、その結果として剥離渦HU3も強めることができる。これにより、死水域充填部19がない場合と比較すると、剥離渦HU3の縮流効果が大きくなり、微小隙間13Cにおける蒸気Sのリーク量を低減させることができる。
【0053】
このように、3つのキャビティC1,C2,C3において剥離渦HU1,HU2,HU3の縮流効果によって蒸気Sのリーク量をそれぞれ低減させることにより、蒸気Sのリーク量を最小限に抑えることが可能となっている。尚、軸方向に沿ったキャビティCの数は3つに限られず、任意の数だけ設けることができる。また、本実施形態では、第1キャビティCに死水域充填部15を、第2キャビティC2に死水域充填部17を、第3キャビティC3に死水域充填部19をそれぞれ設けたが、全てのキャビティCに死水域充填部を設ける必要はなく、少なくとも1つのキャビティCに死水域充填部を設ければ足りる。
【0054】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る蒸気タービンの構成について説明する。本実施形態に係る蒸気タービンは、第1実施形態の蒸気タービン1と比較すると、動翼51の先端部周辺に形成されるキャビティCにおいて、死水域充填部を設ける位置が異なっている。それ以外の構成については第1実施形態と同じであるため、同じ符号を用い、ここでは説明を省略する。
【0055】
図4は、第2実施形態の動翼51の先端部周辺を示す概略断面図である。環状動翼群50と仕切板外輪11との間には、第1実施形態と同様に、3つのキャビティCが形成されている。そして、3つのキャビティCのうち、軸方向に沿って最も上流側に位置する第1キャビティC1には、死水域充填部が設けられていない。尚、
図4では、第1実施形態と同じ構成については
図2と同じ符号を付している。
【0056】
また、
図4に示すように、3つのキャビティCのうち、軸方向に沿って2番目に上流側に位置する第2キャビティC2には、その1つの隅部に、死水域充填部70が設けられている。この死水域充填部70は、軸方向に沿った断面で略円弧形状の傾斜面Kを有し、チップシュラウド52の軸方向壁面521aと径方向壁面522bとによって形成される隅部に設けられている。
【0057】
また、
図4に示すように、3つのキャビティCのうち、軸方向に沿って最も下流側に位置する第3キャビティC3には、その1つの隅部に、死水域充填部71が設けられている。この死水域充填部71も、略円弧形状の傾斜面Kを有し、チップシュラウド52の軸方向壁面521bと径方向壁面522cとによって形成される隅部に設けられている。
【0058】
次に、第2実施形態に係る蒸気タービン1の作用効果について、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
図4に示す構成によれば、第1シールフィン12Aとチップシュラウド52との間の微小隙間13Aを通って下流側へリークした蒸気Sは、第2キャビティC2へ流入すると、第1実施形態と同様にして、主渦SU2及び剥離渦HU2を形成する。そして、この剥離渦HU2が、微小隙間13Bにおける蒸気Sのリーク量を低減させる、縮流効果を発揮する。
【0059】
更に、
図4に示すように、第2キャビティC2の1つの隅部には、略円弧形状の傾斜面Kを有する死水域充填部70が設けられている。従って、死水域にて蒸気Sのエネルギーが損失することを防止することによって主渦SU2を強めることができ、その結果として剥離渦HU2も強めることができる。これにより、死水域充填部70がない場合と比較すると、剥離渦HU2の縮流効果が大きくなり、微小隙間13Bにおける蒸気Sのリーク量を低減させることができる。
【0060】
加えて、本実施形態では、死水域充填部70を、チップシュラウド52の軸方向壁面521aと径方向壁面522bとによって形成される隅部に設けている。従って、軸方向壁面521aと径方向壁面522bとによって形成され、先鋭な形状を有するチップシュラウド52の角部52B,52Cにおいて、熱伸びや遠心力による伸びによって応力集中が生じるのを緩和することができる。
【0061】
更に、
図4に示すように、第3キャビティC3の1つの隅部にも、略円弧形状の傾斜面Kを有する死水域充填部71が設けられている。従って、主渦SU3を強めることによって剥離渦HU3を強めることができるので、死水域充填部71がない場合と比較すると、微小隙間13Cにおける蒸気Sのリーク量を低減させることができる。加えて、死水域充填部71を、チップシュラウドの52の軸方向壁面521bと径方向壁面522cとによって形成される隅部に設けている。従って、先鋭な形状を有するチップシュラウド52の角部52B,52Cにおいて、熱伸びや遠心力による伸びによって応力集中が生じるのを緩和することができる。
【0062】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る蒸気タービンの構成について説明する。本実施形態に係る蒸気タービンも、第1実施形態の蒸気タービン1と比較すると、動翼51の先端部周辺に形成されるキャビティCにおいて、死水域充填部を設ける位置が異なっている。それ以外の構成については第1実施形態と同じであるため、同じ符号を用い、ここでは説明を省略する。
【0063】
図5は、第3実施形態の動翼51の先端部周辺を示す概略断面図である。環状動翼群50と仕切板外輪11との間には、第1実施形態と同様に、3つのキャビティCが形成されている。そして、3つのキャビティCのうち、軸方向に沿って最も上流側に位置する第1キャビティC1には、
図2に示す第1実施形態と同じ2つの隅部に死水域充填部15がそれぞれ設けられている。尚、
図5では、第1実施形態と同じ構成については
図2と同じ符号を付している。
【0064】
また、
図5に示すように、3つのキャビティCのうち、軸方向に沿って2番目に上流側に位置する第2キャビティC2には、
図2に示す第1実施形態と同じ2つの隅部に死水域充填部17がそれぞれ設けられるとともに、
図4に示す第2実施形態と同じ1つの隅部にも死水域充填部70が設けられている。
【0065】
また、
図5に示すように、3つのキャビティのうち、軸方向に沿って最も下流側に位置する第3キャビティC3にも、
図2に示す第1実施形態と同じ2つの隅部に死水域充填部19がそれぞれ設けられるとともに、
図4に示す第2実施形態と同じ1つの隅部にも死水域充填部71が設けられている。
【0066】
次に、第3実施形態に係る蒸気タービン1の作用効果について、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
図5に示す構成によれば、第2キャビティC2には2つの死水域充填部17に加えて死水域充填部70が更に設けられているので、第1実施形態と比較すると、蒸気Sのエネルギーが死水域で損失することを一層防止することができる。これにより、主渦SU2を一層強めることができるので剥離渦HU2も一層強めることができ、微小隙間13Bにおける蒸気Sのリーク量を第1実施形態より更に低減させることができる。また、第3キャビティC3についても、第2キャビティC2と同様の理由により、微小隙間13Cにおける蒸気Sのリーク量を第1実施形態より更に低減させることができる。
【0067】
更に、本実施形態では、チップシュラウド52の先鋭な角部52B,52Cに死水域充填部70,71をそれぞれ設けたことにより、第2実施形態と同様に、熱伸びや遠心力による伸びによって当該箇所で応力集中が生じるのを緩和することができる。
【0068】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に係る蒸気タービンの構成について説明する。本実施形態に係る蒸気タービンは、第1実施形態の蒸気タービン1と比較すると、動翼51の先端部周辺に形成されるキャビティCにおいて、死水域充填部を設ける位置及びその形状が異なっている。それ以外の構成については第1実施形態と同じであるため、同じ符号を用い、ここでは説明を省略する。
【0069】
図6は、第4実施形態の動翼51の先端部周辺を示す概略断面図である。環状動翼群50と仕切板外輪11との間には、第1実施形態と同様に、3つのキャビティCが形成されている。そして、3つのキャビティCには、
図5に示す第3実施形態と同じ隅部に死水域充填部がそれぞれ設けられているが、各死水域充填部が有する傾斜面Kの形状が第3実施形態とは異なっている。尚、
図6では、第1実施形態と同じ構成については
図2と同じ符号を付している。
【0070】
より詳細に説明すると、
図6に示すように、3つのキャビティCのうち、軸方向に沿って最も上流側に位置する第1キャビティC1には、
図2に示す第1実施形態と同じ2つの隅部に、略楕円弧形状の傾斜面Kを有する死水域充填部72が設けられている。
また、軸方向に沿って2番目に上流側に位置する第2キャビティC2にも、第1実施形態と同じ2つの隅部に、略楕円弧形状の傾斜面Kを有する死水域充填部73が設けられるとともに、第2実施形態と同じ1つの隅部に、略楕円弧形状の傾斜面Kを有する死水域充填部74が設けられている。
更に、軸方向に沿って最も下流側に位置する第3キャビティC3にも、第1実施形態と同じ2つの隅部に、略楕円弧形状の傾斜面Kを有する死水域充填部75が設けられるとともに、第2実施形態と同じ1つの隅部に、略楕円弧形状の傾斜面Kを有する死水域充填部76が設けられている。
【0071】
次に、第4実施形態に係る蒸気タービン1の作用効果について、第3実施形態と異なる点を中心に説明する。
図6に示す構成によれば、3つのキャビティCに設けた死水域充填部72〜76の全てが略楕円弧形状の傾斜面Kを有しているので、第3実施形態の蒸気タービン1が奏する効果に加えて、3つのキャビティCの形状によっては、微小隙間13A,13B,13Cにおける蒸気Sのリーク量を第3実施形態より更に低減させることができるという効果がある。
これは、3つのキャビティCに発生する主渦SU1,SU2,SU3の軸方向に沿った断面形状は、真円よりも楕円になる方が一般的であるため、この主渦SU1,SU2,SU3の形状により正確に沿うように、死水域充填部72〜76の傾斜面Kの形状も略楕円弧形状とした方が、蒸気Sが死水域に流入してそのエネルギーが損失することを、第3実施形態より一層確実に防止できるからである。
【0072】
尚、
図6に示すように、本実施形態では、仕切板外輪11の側に設ける死水域充填部72,73,75の傾斜面Kが、径方向に縦長の略楕円弧形状を有しているのに対し、チップシュラウド52の側に設ける死水域充填部74,76の傾斜面Kは、軸方向に縦長の略楕円弧形状を有している。このような構成によれば、主渦SU1,SU2,SU3をチップシュラウド52の角部へ正確に案内して衝突させることができるので、剥離渦HU1,HU2,HU3の剥離方向を径方向に一致させることができる。これにより、微小隙間13A,13B,13Cの直前位置で剥離渦HU1,HU2,HU3が径方向への慣性力を有することとなるため、剥離渦HU1,HU2,HU3の縮流効果を大きくすることができる。尚、死水域充填部72〜76の傾斜面Kを、軸方向及び径方向のいずれの方向に縦長の略楕円弧形状に形成するかは適宜設計変更が可能である。
【0073】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態に係る蒸気タービンの構成について説明する。本実施形態に係る蒸気タービンは、第1実施形態の蒸気タービン1と比較すると、動翼51の先端部周辺に形成されるキャビティCにおいて、死水域充填部を設ける位置及びその形状が異なっている。それ以外の構成については第1実施形態と同じであるため、同じ符号を用い、ここでは説明を省略する。
【0074】
図7は、第5実施形態の動翼51の先端部周辺を示す概略断面図である。環状動翼群50と仕切板外輪11との間には、第1実施形態と同様に、3つのキャビティCが形成されている。そして、3つのキャビティCには、
図5に示す第3実施形態と同じ隅部に死水域充填部がそれぞれ設けられているが、各死水域充填部が有する傾斜面Kの形状が第3実施形態とは異なっている。尚、
図7では、第1実施形態と同じ構成については
図2と同じ符号を付している。
【0075】
より詳細に説明すると、
図7に示すように、3つのキャビティCのうち、軸方向に沿って最も上流側に位置する第1キャビティC1には、
図2に示す第1実施形態と同じ2つの隅部に、略直線状の傾斜面Kを有する死水域充填部77が設けられている。
また、軸方向に沿って2番面に上流側に位置する第2キャビティC2にも、第1実施形態と同じ2つの隅部に、略直線状の傾斜面Kを有する死水域充填部78が設けられるとともに、第2実施形態と同じ1つの隅部に、略直線状の傾斜面Kを有する死水域充填部79が設けられている。
更に、軸方向に沿って最も下流側に位置する第3キャビティC3にも、第1実施形態と同じ2つの隅部に、略直線状の傾斜面Kを有する死水域充填部80が設けられるとともに、第2実施形態と同じ1つの隅部に、略直線状の傾斜面Kを有する死水域充填部81が設けられている。
【0076】
次に、第5実施形態に係る蒸気タービン1の作用効果について、第3実施形態と異なる点を中心に説明する。
図6に示す構成によれば、3つのキャビティCに設けた死水域充填部77〜81の全てが略直線状の傾斜面Kを有しているので、第3実施形態の蒸気タービン1が奏する効果に加えて、死水域充填部77〜81の製作を第3実施形態より簡略化できるという効果がある。具体的には、死水域充填部77〜81を仕切板外輪11やチップシュラウド52とは別部材として構成する場合には、死水域充填部77〜81の加工作業を容易化することができる。一方、死水域充填部77〜81を、仕切板外輪11やチップシュラウド52と一体的に構成する場合には、仕切板外輪11やチップシュラウド52を形成するための金型の形状を簡素化することができる。
【0077】
尚、本実施形態では、死水域充填部77〜81が略直線状の傾斜面Kを1個だけ有する場合を例に説明したが、死水域充填部77〜81は略直線状の傾斜面Kを複数個有していてもよい。すなわち、死水域充填部77〜81の断面形状は、本実施形態のように三角形に限られず、多角形であってもよい。
【0078】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態に係る蒸気タービンの構成について説明する。本実施形態に係る蒸気タービンは、第1実施形態の蒸気タービン1と比較すると、死水域充填部を設ける位置が、動翼51の先端部周辺ではなく、静翼41の先端部周辺である点で異なっている。それ以外の構成については第1実施形態と同じであるため、同じ符号を用い、ここでは説明を省略する。尚、本実施形態では、環状静翼群40が本願発明に係るブレードに相当し、軸体30が本願発明に係る構造体に相当する。
【0079】
図8は、第6実施形態の静翼41の先端部周辺を拡大した部分拡大断面図である。静翼41の先端部には、前述のようにリング状のハブシュラウド42が配設されている。そして、このハブシュラウド42の外周面42aには、3つのシールフィン84が、径方向に突出するようにしてそれぞれ設けられている。そして、この3つのシールフィン84のうち軸方向に沿って最も上流側に設けられた第1シールフィン84Aは、ハブシュラウド42の軸方向最上流部に位置する軸方向端面42bと略同一面を形成するように設けられている。
【0080】
一方、軸体30の外周面には断面凹型の環状溝301が形成されており、この環状溝301が形成されることで小径になった部分が、ハブシュラウド42に挿通されている。これにより、環状溝301の底面301aと各シールフィン84との間には、微小隙間85がそれぞれ径方向に形成されている。
【0081】
尚、シールフィン84の長さや形状や設置位置や個数等は本実施形態に限定されず、ハブシュラウド42および/または軸体30の断面形状等に応じて適宜設計変更が可能である。また、微小隙間85の寸法は、シールフィン84と軸体30とが接触することがない安全な範囲内で、最小の値に設定することが好適である。また、本実施形態では、シールフィン84をハブシュラウド42から突出して設け、軸体30との間に微小隙間85を形成したが、これとは逆に、シールフィン84を軸体30から突出して設け、ハブシュラウド42との間に微小隙間85を形成してもよい。
【0082】
そして、このような静翼41の先端部周辺の構成によれば、
図8に示すように、軸体30とシールフィン84とハブシュラウド42とによって、3つのキャビティCが形成されている。ここで、この3つのキャビティCのうち、軸方向に沿って最も上流側に位置する第4キャビティC4は、
図8に示すように、環状溝301の底面301a及び側面301bと、第1シールフィン84Aと、ハブシュラウド42の軸方向端面42bとによって形成されている。このように形成される第4キャビティC4は、軸方向に沿った断面で略矩形形状を有している。
【0083】
そして、
図8に示すように、この第4キャビティC4の1つの隅部、より詳細には環状溝301の底面301aと側面301bとによって形成される隅部には、死水域充填部86が設けられている。この1つの死水域充填部86は、その軸方向に沿った断面で、略楕円弧形状の傾斜面Kを有している。
【0084】
尚、死水域充填部86の役割は、第1実施形態と同様である。また、死水域充填部86の傾斜面Kの形状は、本実施形態のように略楕円弧形状だけでなく、略円弧形状や略直線形状であってもよい。また、本実施形態では、3つのキャビティCのうち第4キャビティだけに死水域充填部86を設けたが、2番目に上流側に位置する第5キャビティC5や、最も下流側に位置する第6キャビティC6にも死水域充填部を設けてもよい。すなわち、ハブシュラウド42の外周面42aと第2シールフィン84Bとによって形成される隅部や、ハブシュラウド42の外周面42aと第3シールフィン84Cとによって形成される隅部にも死水域充填部を設けてもよい。
【0085】
次に、第6実施形態に係る蒸気タービン1の作用効果について説明する。
図1に示すケーシング10の内部に流入した蒸気Sは、本来、環状静翼群40を構成する複数の静翼41の間を通過して環状動翼群50へと案内されるが、その蒸気Sの一部は、環状静翼群40と軸体30との間の微小隙間85(85A,85B,85C)を通って下流側へリークする。
【0086】
この蒸気Sのリークについてより詳細に説明する。
図8に示すように、軸方向に流れる蒸気Sは、その一部が、静翼41によって下流側へ案内されることなく、第4キャビティC4に流入する。第4キャビティC4に流入した蒸気Sは、ハブシュラウド42の軸方向端面42bに衝突することにより、例えば
図8では時計回りの主渦SU4を形成する。ここで、第1シールフィン84Aがハブシュラウド42の軸方向端面42bと略同一面を形成するように設けられているため、主渦SU4がハブシュラウド42の角部42Aにて剥離渦が発生することはない。しかし、本実施形態では、主渦SU4が時計回りに回転するため、微小隙間85Aの直前位置において、主渦SU4が径方向外向きの慣性力を有している。従って、この主渦SU4は、微小隙間85Aを通って下流側へリークする蒸気Sを押し縮めることにより、そのリーク量を低減させる縮流効果を発揮する。
【0087】
更に、
図8に示すように、第4キャビティC4には、その1つの隅部に、主渦SU4の流れに沿うように略楕円弧形状の死水域充填部86が設けられている。従って、第4キャビティC4に生じる死水域を減らすことができ、蒸気Sが死水域に流入することによってそのエネルギーが損失することを低減させることができる。これにより、死水域充填部86がない場合と比較して主渦SU4を強めることができるので、その結果主渦SU4の縮流効果が大きくなり、微小隙間85Aにおける蒸気Sのリーク量を低減させることができる。
【0088】
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態に係る蒸気タービンの構成について説明する。本実施形態に係る蒸気タービンは、第6実施形態の蒸気タービンと比較すると、軸方向に沿って最も上流側に位置するキャビティの形状が異なっている。それ以外の構成については第6実施形態と同じであるため、同じ符号を用い、ここでは説明を省略する。
【0089】
図9は、第7実施形態の静翼41の先端部周辺を拡大した部分拡大断面図である。環状静翼群40と軸体30との間には、第6実施形態と同様に、3つのキャビティCが形成されている。但し、3つのキャビティCのうち、軸方向に沿って最も上流側に位置する第7キャビティC7が、すなわち第1シールフィン84Aより上流側の部分が、下流側の部分より径方向に段落ちして、すなわち本実施形態では径方向内側に位置するように形成されている。尚、第6実施形態では、シールフィン84をハブシュラウド42の側ではなく軸体30から突出して設けることも可能としたが、本実施形態では、シールフィン84をハブシュラウド42の側に設けることが必須の構成であって、軸体30に設けることはできない。尚、静翼41の先端部周辺に限られず、動翼51を構成するチップシュラウド52からシールフィン84を突出して設け、このシールフィン84より上流側の部分を、下流側の部分より径方向に段落ちして、すなわち径方向外側に位置するように形成してもよい。
【0090】
そして、
図9に示すように、第7キャビティC7の2つの隅部に死水域充填部87,88がそれぞれ設けられている。より詳細には、環状溝301の底面301aと側面301bとによって形成される隅部には死水域充填部87が設けられ、底面301aと段差面301cとによって形成される隅部には死水域充填部88が設けられている。これら2つの死水域充填部87,88は、その軸方向に沿った断面で、略楕円弧形状の傾斜面Kをそれぞれ有している。
【0091】
次に、第7実施形態に係る蒸気タービン1の作用効果について、第6実施形態と異なる点を中心に説明する。本実施形態では、
図9に示すように、第1シールフィン84Aがハブシュラウド42から突出して設けられることにより、微小隙間85Aが形成される位置は軸体30に近接した位置となっている。そして、この微小隙間85Aより上流側の第7キャビティC7が、下流側の第8キャビティC8及び第9キャビティC9より段落ちして形成されている。
【0092】
このような構成によれば、
図9に示すように、第7キャビティC7の内部で時計回りに回転する主渦SU5は、微小隙間85Aを通過して更に下方(径方向内方)まで達する。従って、本実施形態の主渦SU5は、
図8に示す第6実施形態のように段落ちの無い場合と比較すると、主渦SU5の旋回中心が微小隙間85Aに近付くことになる。従って、微小隙間85Aの付近における主渦SU5の径方向速度は、段落ちのある場合の方が段落ちの無い場合より速くなり、主渦SU5の縮流効果が高くなるため、微小隙間85Aにおける蒸気Sのリーク量を一層低減化することができる。
また、本実施形態では、第7キャビティC7の2つの隅部に、死水域充填部87,88が設けられているので、第6実施形態のように第4キャビティC4の1つの隅部だけに死水域充填部86が設けられている場合と比較すると、死水域を更に減らして主渦SU5を一層強めることができる。
これにより、本実施形態は、第6実施形態と比較して、微小隙間85Aにおける蒸気Sのリーク量を一層低減させることができるという効果を奏する。
【0093】
(第8実施形態)
次に、本発明の第8実施形態に係る蒸気タービンの構成について説明する。本実施形態に係る蒸気タービンは、第6実施形態の蒸気タービンと比較すると、各キャビティの形状が異なっている。それ以外の構成については第6実施形態と同じであるため、同じ符号を用い、ここでは説明を省略する。
【0094】
図10は、第8実施形態の静翼41の先端部周辺を拡大した部分拡大断面図である。環状静翼群40と軸体30との間には、第7実施形態と同様に、3つのキャビティCが形成されている。但し、3つのキャビティCのうち、最も上流側に位置する第10キャビティC10は第7実施形態の第7キャビティC7と同じ構成であるが、その下流側に位置する第11キャビティC11及び第12キャビティC12の構成が、第7実施形態の第8キャビティC8及び第9キャビティC9とは異なっている。
【0095】
より詳細に説明すると、
図10に示すように、環状溝301の底面301aには、互いに隣接する第1シールフィン84Aと第2シールフィン84Bとの間の位置に、軸方向に沿って下流側が上流側より径方向内方に段落ちするような段差部89が形成されている。これにより、第11キャビティC11の軸方向下流部には、径方向に若干拡幅された拡幅部90が形成されている。そして、段差部89より下流側では、底面301aの径方向高さ位置は、第10キャビティC10を形成する底面301aと略等しい高さ位置になっている。尚、段差部89より下流側における底面301aは、第10キャビティC10を形成する底面301aと異なる高さ位置であってもよい。
【0096】
そして、
図10に示すように、第10キャビティC10の2つの隅部には、第7実施形態と同様に、死水域充填部87,88がそれぞれ設けられている。また、第11キャビティC11の3つの隅部には、死水域充填部82及び死水域充填部83がそれぞれ設けられている。より詳細に説明すると、ハブシュラウド42の外周面42aと第1シールフィン84Aとによって形成される隅部、及び外周面42aと第2シールフィン84Bとによって形成される隅部には、死水域充填部82がそれぞれ設けられている。更に、段差部89と底面301aとによって形成される隅部には、死水域充填部83が設けられている。
【0097】
次に、第8実施形態に係る蒸気タービン1の作用効果について、第7実施形態と異なる点を中心に説明する。
図10に示す構成によれば、第10キャビティC10の内部では、第7実施形態の第7キャビティC7と同様に、時計回りの主渦SU5が形成され、第7実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0098】
また、
図10に示す構成によれば、微小隙間85Aを通って第10キャビティC10から第11キャビティC11へ流入した蒸気Sは、第11キャビティC11の内部で反時計回りの主渦SU6を形成する。そして、この主渦SU6が、段差部89の角部にてその一部が剥離することによって、時計回りの剥離渦HU4が発生する。ここで、この剥離渦HU4は、第2シールフィン84Bと軸体30との間の微小隙間85Bの直前位置において径方向内向きの慣性力を有しているため、大きな縮流効果を発揮する。従って、第11キャビティC11に段差部89が形成されず、その内部で反時計回りの主渦SU6しか発生しない場合と比較すると、本実施形態は、第2シールフィン84Bの先端部に形成される微小隙間85Bでの蒸気Sのリーク量を一層低減できるという効果を奏する。
【0099】
更に、
図10に示すように、第11キャビティC11には、その2つの隅部に、主渦SU6の流れに沿うように死水域充填部82が設けられるとともに、1つの隅部に、剥離渦HU4の流れに沿うように死水域充填部83が設けられている。従って、主渦SU6及び剥離渦HU4の両方について、死水域に流入することでエネルギーが損失することを低減させることができる。これにより、死水域充填部82,83のない場合と比較して、主渦SU6及び剥離渦HU4の両方を強めることができるので、微小隙間85Bにおける蒸気Sのリーク量を低減させることができる。
【0100】
尚、本実施形態では、軸方向に沿って下流側が上流側より径方向内方に段落ちするように段差部89を形成したが、これとは逆に、
図11に示すように、下流側が上流側より径方向外方に一段上がるように段差部91を形成してもよい。この場合、第11キャビティC11の軸方向下流部には、軸方向に若干拡幅された拡幅部92が形成される。
そして、
図10に示す構成と同様に、ハブシュラウド42の外周面42aと第1シールフィン84Aとによって形成される隅部、及び外周面42aと第2シールフィン84Bによって形成される隅部には、死水域充填部82がそれぞれ設けられている。更に、段差部91と底面301aとによって形成される隅部には、死水域充填部100が設けられている。
【0101】
このような構成によれば、微小隙間85Aを通って第10キャビティC10から第11キャビティC11へ流入した蒸気Sも、第11キャビティC11の内部で主渦SU7を形成する。そして、この主渦SU7が、段差部91の角部にてその一部が剥離することによって、時計回りの剥離渦HU5が発生する。これにより、段差部91を形成した場合も、段差部89を形成した場合と同様の作用効果が得られる。
【0102】
更に、
図11に示すように、第11キャビティC11には、2つの隅部に死水域充填部82が設けられているので、
図10の構成と同様に主渦SU7のエネルギー損失を低減させることができるとともに、1つの隅部に死水域充填部100が設けられているので、剥離渦HU5のエネルギー損失も低減させることができる。これにより、
図11に示す構成によれば、死水域充填部82,100のない場合と比較して、微小隙間85Bにおける蒸気Sのリーク量を低減させることができる。
【0103】
(第9実施形態)
次に、本発明の第9実施形態に係る蒸気タービンの構成について説明する。本実施形態に係る蒸気タービンは、第1実施形態の蒸気タービン1と比較すると、動翼51の先端部周辺に形成されるキャビティCにおいて、死水域充填部を設ける位置が異なっている。ここで、
図12は、第9実施形態の動翼51の先端部周辺を示す概略断面図であって、特に、第1シールフィン93の先端部について拡大した図である。尚、第1シールフィン93以外の構成については第1実施形態と同じであるため、同じ符号を用い、ここでは説明を省略する。
【0104】
本実施形態では、この第1シールフィン93が、フィン本体部931と、このフィン本体部931より幅広に形成された空間制限部932と、を有している。これにより、第1シールフィン93より上流側の第1キャビティC1は、その軸方向下流部に、軸方向に若干拡幅された拡幅部94を有している。そして、この拡幅部94の隅部には、より詳細にはフィン本体部931と空間制限部932とによって形成される隅部には、死水域充填部95が設けられている。
【0105】
次に、第9実施形態に係る蒸気タービン1の作用効果について、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
図12に示す構成によれば、第1キャビティC1で形成される反時計回りの主渦SU1が、チップシュラウド52の角部にてその一部が剥離することによって、拡幅部94の内部では、時計回りの剥離渦HU1が発生する。ここで、剥離渦HU1は、空間制限部932及びフィン本体部931に衝突してその流れ方向が案内されることによって、渦流の流れが強められる。更に、拡幅部94の隅部には死水域充填部95が設けられているので、剥離渦HU1が死水域に流入することで蒸気Sのエネルギーが損失することを低減することができる。これにより、死水域充填部95がない場合と比較すると、剥離渦HU1を強めてその縮流効果を大きくすることができるので、微小隙間13Aにおける蒸気Sのリーク量を低減させることができる。
【0106】
(第10実施形態)
次に、本発明の第10実施形態に係る蒸気タービンの構成について説明する。本実施形態に係る蒸気タービンは、第1実施形態の蒸気タービン1と比較すると、動翼51の先端部周辺に形成されるキャビティCにおいて、死水域充填部を設ける位置が異なっている。それ以外の構成については第1実施形態と同じであるため、同じ符号を用い、ここでは説明を省略する。
【0107】
図13は、第10実施形態の動翼51の先端部周辺を示す概略断面図である。環状動翼群50と仕切板外輪11との間には、第1実施形態と同様に、3つのキャビティCが形成されている。ここで、本実施形態では、シールフィン12A,12B,12Cから径方向壁面522a,522b,522cまでの軸方向への離間距離が、第1実施形態より長く設定されている。これにより、3つのキャビティC1,C2,C3は、その拡幅部96,97,98が第1実施形態より広く形成されている。
【0108】
そして、3つのキャビティCのうち、軸方向に沿って最も上流側に位置する第1キャビティC1には、第1実施形態と同様に2つの隅部に、死水域充填部15がそれぞれ設けられている。より詳細には、環状溝111の底面111a及び側面111bによって形成される隅部、及び環状溝111の底面111aと第1シールフィン12Aとによって形成される隅部に、死水域充填部15がそれぞれ設けられている。
【0109】
更に、本実施形態では、第1キャビティC1には、前記2つの隅部に加えて、環状溝111の底面111aにおける前記2つの隅部の中間位置に、死水域充填部99が設けられている。この死水域充填部99は、2つの傾斜面K1,K2を有しており、一方の傾斜面K1は、第1キャビティC1に発生する主渦SU1の流れに沿うように、他方の傾斜面K2は同じく第1キャビティC1の拡幅部96に発生する剥離渦HU1の流れに沿うように、それぞれ形成されている。尚、第1キャビティC1と同様に、第2キャビティC2及び第3キャビティC3にも、その2つの隅部に死水域充填部17及び19がそれぞれ設けられるとともに、底面111aにおける2つの隅部の中間位置に、死水域充填部99がそれぞれ設けられている。
【0110】
次に、第10実施形態に係る蒸気タービン1の作用効果について、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
図13に示す構成によれば、前述のように拡幅部96,97,98が第1実施形態より広く形成されているので、剥離渦HU1,HU2,HU3が、環状溝111の底面111aに達する程度の大きさとなる。
【0111】
ここで、本実施形態における第1キャビティC1では、合計3個の死水域充填部15,15,99が設けられているので、主渦SU1及び剥離渦HU1の両方について、死水域に流入することで蒸気Sのエネルギーが損失することを低減させることができる。従って、主渦SU1を強めることで剥離渦HU1を間接的に強めることができるとともに、剥離渦HU1を直接的に強めることもできる。これにより、死水域充填部15,15,99がない場合と比較して剥離渦HU1の縮流効果が大きくなるので、微小隙間13Aにおける蒸気Sのリーク量を低減させることができる。
同様に、本実施形態における第2キャビティC2及び第3キャビティC3においても、合計3個の死水域充填部17,17,99及び19,19,99がそれぞれ設けられており、第1キャビティC1と同様の作用効果が得られるため、微小隙間13B,13Cにおける蒸気Sのリーク量を低減させることができる。
【0112】
尚、上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ、或いは動作手順等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。