(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図3(a),(b)は、本発明の光源装置の一構成例を示す図である。なお、
図3(a)は全体の正面図、
図3(b)は蛍光体層が設けられている部分の平面図である。
図3(a)を参照すると、この光源装置10は、紫外光から可視光までの波長領域のうちの所定の波長の光を発光する固体光源5と、該固体光源5からの励起光により励起され該固体光源5の発光波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくとも1種類の蛍光体を含む蛍光体層2と、該蛍光体層2の面のうち励起光が入射する面とは反対の側の面に設けられた光透過性基板6とを備え、固体光源5と蛍光体層2とが空間的に離れて配置されている。
【0022】
ここで、
図3(a),(b)に示すように、蛍光体層2は、接合部7によって光透過性基板6に取り付けられている。
【0023】
このように、この光源装置10は、固体光源5と蛍光体層2とを空間的に離して配置し、蛍光体層2の面のうち固体光源5からの励起光が入射する側の面(本発明では、この面を蛍光体層入射面という)とは反対の側の面に設けられた光透過性基板6を蛍光などの光が透過することによって蛍光などの光を取り出す方式、もしくは、光透過性基板6を設けずに(以下の例では、光透過性基板6を設けているが、本発明において、光透過性基板6は必ずしも設けられなくても良い)、励起光が入射する側の面とは反対の側から蛍光などの光を直接取り出す方式(以下、これらを透過方式または透過型と称す)が採用されており、固体光源5と蛍光体層2とを空間的に離して配置することにより、従来に比べて十分な高輝度化を図ることが可能となる。なお、透過方式または透過型の光源装置とは、より正確には、
図3(a)のように蛍光体層2に固体光源5からの励起光を照射した場合に、蛍光体層2から発せられる蛍光成分のうち、固体光源5とは反対の側に出てくる成分を利用する光源装置のことであり、このとき、励起光の透過成分も利用し、蛍光成分とあわせて照明光としても良い。
【0024】
ところで、本発明では、光透過性基板6に取り付けられている蛍光体層2に入射する固体光源5からの励起光の蛍光体層入射面(蛍光体層2の面のうち固体光源5からの励起光が入射する側の面)上でのビームの形状および断面積が、蛍光体層入射面全体の形状および面積とほぼ等しいものとなるようにしている。ここで、蛍光体層2に入射する固体光源5からの励起光の蛍光体層入射面上でのビームの形状および断面積が、蛍光体層入射面全体の形状および面積とほぼ等しいとは、例えば
図4(a),(b)に示すように、蛍光体層2に入射する固体光源5からの励起光の蛍光体層入射面16上でのビーム17の形状が蛍光体層入射面16全体の形状とほぼ同じであり(
図4(a),(b)の例では、蛍光体層入射面16上でのビーム17の形状は、略長方形であるが、角が丸くなっている点で、いくらか相違している)、蛍光体層2に入射する固体光源5からの励起光の蛍光体層入射面16上でのビーム17の断面積が、蛍光体層入射面16全体の面積の80%〜120%の範囲であることを意味している。具体的に、
図4(a),(b)の例では、励起光の蛍光体層入射面16上でのビーム17の縦方向Yの幅BYが蛍光体層入射面16全体の縦方向Yの幅PYと同じになっており、
図4(a)では、励起光の蛍光体層入射面16上でのビーム17の横方向Xの長さBXが蛍光体層入射面16全体の横方向Xの長さPXの80%、
図4(b)では、励起光の蛍光体層入射面16上でのビーム17の横方向Xの長さBXが蛍光体層入射面16全体の横方向Xの長さPXの120%となっている。なお、図示はしていないが、励起光の蛍光体層入射面16上でのビーム17の横方向Xの長さBXを蛍光体層入射面16全体の横方向Xの長さPXと同じにしても良い。
【0025】
図4(a),(b)の例のように蛍光体層入射面16上でのビーム17の形状を略長方形のものとするためには、光半導体(発光ダイオードや半導体レーザーなど)の出射口にコリメートレンズ(図示せず)を設け、光半導体(発光ダイオードや半導体レーザーなど)からの出射光の形状(通常は円形形状)をコリメートレンズによって整形することにより、実現できる。但し、完全な長方形のビームを作ることは難しく、通常は、
図4(a),(b)に示すビーム17のような略長方形の形状のものとなる。また、蛍光体層入射面16上でのビーム17の断面積とは、光半導体(発光ダイオードや半導体レーザーなど)からの励起光のビーム17を蛍光体層2に照射した場合に、蛍光体層入射面16上でのビーム17の面積をいい、蛍光体層入射面16上でのビーム17の断面積は、光半導体(発光ダイオードや半導体レーザーなど)の出射口とコリメートレンズとの距離を変化させることで、調整することが可能である。また、蛍光体層入射面16上でのビーム17の断面積は、励起光の蛍光体層2への入射角度を調整することによっても、調整可能である。例えば、励起光を90°の入射角度で蛍光体層2へ入射させた場合に比べ、45°の入射角度で入射させた場合の方が、蛍光体層入射面16上でのビーム17の断面積を大きくすることができる。また、蛍光体層入射面16上でのビーム17の形状および断面積は、コリメートレンズの曲面を任意に設計することで、調整することも可能である。それにより、例えば、蛍光体層2の形状が長方形状以外のものであっても、ビーム17の形状を任意に調節することが可能となるため、蛍光体層2と同じ形状の照射光を実現することが可能となる。なお、本発明において、固体光源5とは、光半導体(発光ダイオードや半導体レーザーなど)のみならず、コリメートレンズなどの光学系も含まれているものであるとする。また、ビーム17の断面積を測定するには、蛍光体層2の代わりに、CCDカメラを有するビームプロファイラを配置し、ビーム17をプロファイラへ入射することで測定することができる。
【0026】
このように、本発明では、蛍光体層に入射する固体光源からの励起光の蛍光体層入射面上でのビームの形状および断面積を、蛍光体層入射面全体の形状および面積とほぼ等しいものとすることにより、蛍光体層2全面からほぼ同じ比率で励起光と蛍光を取り出すことが可能となり(蛍光体層2全面からほぼ同じ比率で励起光の色(例えば青色)と蛍光の色(例えば黄色)とを混ぜ合わせることが可能となり)、結果として、
図2(a)に示したような発光点(発光パターン)内の色ムラを抑制することができる。換言すれば、光半導体として例えば青色半導体レーザーを用い、蛍光体層2として例えば樹脂成分を含まない黄色蛍光体であるYAG蛍光体セラミックスを用いるとした場合、蛍光体層2のほぼ全面を発光点の中心部Aとすることができ、発光点の周辺部Bをほとんどなくすことができるので、十分な量の青色の励起光と黄色の蛍光との混色によって蛍光体層2のほぼ全面を白色発光のものにし、黄色発光の部分をほとんどなくすことができて、
図2(a)に示したような発光点(発光パターン)内の色ムラを抑制することができる。以上のように、本発明は、励起光の色と蛍光の色とを混ぜて使う場合に適用できる。
【0027】
さらに本発明では、固体光源5に半導体レーザーを使用する場合、蛍光体層2に入射しなかった(蛍光体層2からはみ出した)固体光源5からの励起光(コヒーレント光である励起光)がそのまま照明光として投射されてしまい人体に危害を及ぼすのを防止することを意図している。具体的には、固体光源5に半導体レーザーを使用した透過型の光源装置では、発光強度を高めるために蛍光体層2を透過率の高い光透過性基板6上に設けるが、固体光源5からの励起光のビーム断面積が蛍光体層入射面の面積よりも大きな場合(すなわち、固体光源5からの励起光の蛍光体層入射面16上でのビーム17の断面積が、蛍光体層入射面16全体の面積の100%〜120%の範囲である場合(例えば
図4(b)のような場合))には、蛍光体層2に入射しなかった(蛍光体層2からはみ出した)励起光が光透過性基板6を透過し、コヒーレント光である励起光がそのまま照明光として投射されてしまい、人体に危害を及ぼす危険性がある。また、固体光源5からの励起光のビームの断面積と蛍光体層入射面の面積がほぼ同じか小さくなる組み合わせであっても(すなわち、固体光源5からの励起光の蛍光体層入射面16上でのビーム17の断面積が、蛍光体層入射面16全体の面積の80%〜100%の範囲であっても(例えば
図4(a)のような場合であっても))、使用中に外部の振動などにより光軸がずれた場合には、同様の現象が発生する可能性がある。
【0028】
そこで、
図3(a),(b)の光源装置10では、固体光源5からの励起光が入射するとき該励起光を吸収する吸収手段9を蛍光体層2の周囲に設けている。なお、
図3(a),(b)の例では、吸収手段9は、光透過性基板6上に、蛍光体層2を囲んで設けられている吸収部材(例えば黒色部材)である。
【0029】
このように、吸収手段9を蛍光体層2の周囲に設けることで、蛍光体層2に入射しなかった(蛍光体層2からはみ出した)励起光を吸収手段9によって吸収し、上記のような危険性を防止することができる。
【0030】
なお、吸収手段9は、
図3(a),(b)の構成に限らず、種々の変形が可能である。例えば、吸収手段9を
図5(a),(b)、
図6(a),(b)に示すようなものにすることもできる。すなわち、
図5(a),(b)の例では、吸収手段9は、蛍光体層2の周囲において光透過性基板6の凹部に設けられた吸収材(例えば黒色材)として構成され、
図6(a),(b)の例では、吸収手段9は、光透過性基板6上にあって蛍光体層2を囲み、かつ、蛍光体層2の上面の一部を覆う吸収部材(例えば黒色部材)として構成されている。
【0031】
また、上述の各例では、コヒーレント光である励起光が照明光として投射されて人体に危害を及ぼす危険性を防止するのに、固体光源5からの励起光が入射するとき該励起光を吸収する吸収手段9を蛍光体層2の周囲に設けたが、吸収手段9のかわりに、前記固体光源5からの励起光が入射するとき該励起光を拡散する拡散手段を蛍光体層2の周囲に設けることもできる。
【0032】
図7(a),(b)は、
図3(a),(b)の構成において、吸収手段9のかわりに、拡散手段19が設けられた光源装置20を示す図である。すなわち、
図7(a),(b)の光源装置20では、固体光源5からの励起光が入射するとき該励起光を拡散する拡散手段19を蛍光体層2の周囲に設けている。なお、
図7(a),(b)の例では、拡散手段19は、光透過性基板6上に、蛍光体層2を囲んで設けられている拡散部材(例えば白色部材)である。
【0033】
このように、拡散手段19を蛍光体層2の周囲に設けることで、蛍光体層2に入射しなかった(蛍光体層2からはみ出した)励起光を拡散手段19によって拡散し、上記のような危険性を防止することができる。
【0034】
なお、拡散手段19は、
図7(a),(b)の構成に限らず、種々の変形が可能である。例えば、拡散手段19を
図8(a),(b)、
図9(a),(b)、
図10(a),(b)に示すようなものにすることもできる。すなわち、
図8(a),(b)の例では、拡散手段19は、蛍光体層2の周囲において光透過性基板6の凹部に設けられた拡散材(例えば白色材)として構成され、
図9(a),(b)の例では、拡散手段19は、光透過性基板6上にあって蛍光体層2を囲み、かつ、蛍光体層2の上面の一部を覆う拡散部材(例えば白色部材)として構成され、
図10(a),(b)の例では、拡散手段19は、光透過性基板6の表面に設けられた拡散性の微細構造(拡散面)として構成されている。
【0035】
以上のように、蛍光体層2の周囲に吸収手段9または拡散手段19を設けることで、蛍光体層2に入射しなかった(蛍光体層2からはみ出した)固体光源5からの励起光(コヒーレント光である励起光)が照明光として投射されて人体に危害を及ぼすのを防止することができる。
【0036】
なお、本発明において、蛍光体層2とは、励起光を吸収し励起光よりも長波長の蛍光を発光する蛍光体を含むものである。蛍光体には有機物、無機物、有機無機複合体があるが、信頼性に優れる無機物の蛍光体を使用することが望ましい。蛍光体層2は、樹脂やガラスなどのマトリックス中に蛍光体を分散させる方法や、無機物のみからなる樹脂成分を実質的に含まない方法などで、形成することが出来る。また、高輝度化を実現するためには、蛍光体層2には、樹脂成分を実質的に含まない蛍光体層が用いられるのが好ましい。ここで、樹脂成分を実質的に含まない蛍光体層とは、蛍光体層の形成に通常使用される樹脂成分が蛍光体層の5wt%以下であるものを意味する。このような蛍光体層を実現するものとして、蛍光体粉末をガラス中に分散させたもの、ガラス母体に発光中心イオンを添加したガラス蛍光体、蛍光体の単結晶や蛍光体の多結晶体(以下、蛍光体セラミックスという)などが挙げられる。なお、蛍光体セラミックスには、蛍光体とそれとは異なる組成のセラミックスからなる多結晶体も含まれる。蛍光体セラミックスは、蛍光体の製造過程において、焼成前に材料を任意の形状に成形し、焼成した蛍光体の塊である。蛍光体セラミックスは、その製造工程のうち、成形工程においてバインダーとして有機物を使用する場合があるが、成形後に脱脂工程を設け有機成分を焼き飛ばすため、焼成後の蛍光体セラミックスには有機樹脂成分は5wt%以下しか残留しない。したがって、樹脂成分を実質的に含まない蛍光体層は、そのほとんどが無機物質のみから構成されているため、熱による変色が発生することがない。また、無機物質のみからなるガラスやセラミックスは、一般に樹脂よりも熱伝導率が高いため、蛍光体層から基板への熱放散においても有利である。特に蛍光体セラミックスは、一般的に、ガラスよりもさらに熱伝導率が高く、単結晶より製造コストが安いため好適である。
【0037】
また、光透過性基板6には、励起光に対する透過率が85%以上のもの、特に90%以上のものを使用するのが望ましい。また、この光透過性基板6は、蛍光体層2から放散してきた熱を外部へ放散させる役割と、蛍光体層2の支持基板の役割も担うものである。このため高い光透過特性、伝熱特性が求められる。光透過性基板6には、プラスチックやガラス、単結晶もしくは多結晶体からなる透光性セラミックスなどが使用可能であるが、特に光透過特性と伝熱特性を併せ持つサファイアなどの単結晶の透光性セラミックスを使用するのが望ましい。
【0038】
また、蛍光体層2と光透過性基板6の接合部7には、樹脂、有機接着剤、無機接着剤、低融点ガラスなどを用いることが出来る。光透過性基板6の透過率を活用するためには接合部は透明度が高いほうが望ましく、シリコーン樹脂に代表される樹脂や無機接着剤の使用が望ましい。
【0039】
また、吸収手段9は、励起光を吸収できるものであればよく、黒色樹脂、もしくは、少なくとも励起光を吸収する着色したフィルタ部材(少なくとも励起光を吸収する色素をプラスチック中に混ぜたフィルタ)などが使用可能である。ここで、黒色樹脂とは、透明樹脂中に黒色粉末を分散させたものである。透明樹脂としては、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、シリコンエポキシ樹脂等が使用可能である。また、黒色粉末としては、金属粉末やセラミックスの黒色顔料、有機物の黒色色素などが使用可能である。作製方法は、まず、樹脂と黒色粉末を混練し、光透過性基板6上の蛍光体層2の周囲もしくは上部に、印刷やディスペンスなどの方法を用いて配置し、そのまま硬化炉で硬化する。このようにすれば
図3(a),(b)のような構成を実現することが出来る。また、先に、光透過性基板6に凹部を設けておけば、同様の方法で
図5(a),(b)のような構成を実現することも出来る。さらに蛍光体層2の上面の一部を覆う
図6(a),(b)のような構成を実現することも出来る。また、吸収手段9に少なくとも励起光を吸収する色素をプラスチック中に混ぜたフィルタを用いる場合、例えば励起光に青色光を用いるのであれば、吸収手段9として黄色のフィルタを用いることができる。
【0040】
また、拡散手段19は、励起光を拡散できるものであればよく、白色樹脂などの付加部材を使用する場合と、光透過性基板6の表面に拡散性の微細構造を設ける場合との2つに大別できる。白色樹脂などの付加部材を使用する場合は、さらに透明樹脂中に白色粉末を分散させる方法と、樹脂成分を含まない白色の板状セラミックスを使用する場合とに分けられる。透明樹脂中に白色粉末を分散させる方法の場合、透明樹脂としては、シリコーン樹脂等が使用可能である。また、白色粉末としては、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウムなどのセラミックス粉末が使用可能である。作製方法は、まず、樹脂と白色粉末を混練し、光透過性基板6上の蛍光体層2の周囲に、印刷やディスペンスなどの方法を用いて配置し、そのまま硬化炉で硬化する。このようにすれば
図7(a),(b)のような構成を実現することが出来る。また、先に、光透過性基板6に凹部を設けておけば、同様の方法で
図8(a),(b)のような構成を実現することも出来る。さらに蛍光体層2の上面の一部を覆う
図9(a),(b)のような構成を実現することも出来る。また、拡散手段19に樹脂成分を含まない白色の板状セラミックスを使用する場合、白色の板状セラミックスは、蛍光体セラミックスと同様の手順で作製することが出来る。蛍光体セラミックスとの違いは、材料に発光中心イオンを入れないことと、拡散性を持たせるためにポアを残して焼き上げることである。完成した板状セラミックスは切削、研磨加工により任意の形状に仕上げ、樹脂や接着剤を用いて光透過性基板6に貼り付ければよい。また、拡散手段19を、光透過性基板6の表面に拡散性の微細構造を設けて構成する場合、光透過性基板6に設ける微細構造は、励起光を拡散できれば良く、形状などは特に限定されない。例えば、光透過性基板6に設ける微細構造を、エッチングにより精密な周期構造として設けても良いし、砥粒を使用した研磨で設けても良い。いずれにしても、拡散手段19として、
図10(a),(b)のように光透過性基板6の表面に拡散性の微細構造を設けることができる。
【0041】
次に、本発明の光源装置をより詳細に説明する。
【0042】
本発明の光源装置において、固体光源5には、紫外光から可視光領域に発光波長をもつ発光ダイオードや半導体レーザーなどが使用可能である。
【0043】
より具体的に、固体光源5には、例えば、InGaN系の材料を用いた発光波長が約380nm乃至約400nmの近紫外光を発光する発光ダイオードや半導体レーザーなどを用いることができる。この場合、蛍光体層2の蛍光体としては、波長が約380nm乃至約400nmの紫外光により励起されるものとして、例えば、赤色蛍光体には、CaAlSiN
3:Eu
2+、(Ca,Sr)AlSiN
3:Eu
2+、Ca
2Si
5N
8:Eu
2+、(Ca,Sr)
2Si
5N
8:Eu
2+、KSiF
6:Mn
4+、KTiF
6:Mn
4+等が用いられ、黄色蛍光体には、(Sr,Ba)
2SiO
4:Eu
2+、Ca
x(Si,Al)
12(O,N)
16:Eu
2+等が用いられ、緑色蛍光体には、(Ba,Sr)
2SiO
4:Eu
2+、Ba
3Si
6O
12N
2:Eu
2+、(Si,Al)
6(O,N)
8:Eu
2+、BaMgAl
10O
17:Eu
2+,Mn
2+等が用いられ、青色蛍光体には、BaMgAl
10O
17:Eu
2+等を用いることができる。
【0044】
また、固体光源5には、例えば、GaN系の材料を用いた発光波長が約460nm程度の青色光を発光する発光ダイオードや半導体レーザーなどを用いることができる。この場合、蛍光体層2の蛍光体としては、波長が約440nm乃至約470nmの青色光により励起されるものとして、例えば、赤色蛍光体には、CaAlSiN
3:Eu
2+、(Ca,Sr)AlSiN
3:Eu
2+、Ca
2Si
5N
8:Eu
2+、(Ca,Sr)
2Si
5N
8:Eu
2+、KSiF
6:Mn
4+、KTiF
6:Mn
4+等が用いられ、黄色蛍光体には、Y
3Al
5O
12:Ce
3+、(Sr,Ba)
2SiO
4:Eu
2+、Ca
x(Si,Al)
12(O,N)
16:Eu
2+等が用いられ、緑色蛍光体には、Lu
3Al
5O
12:Ce
3+、(Lu,Y)
3Al
5O
12:Ce
3+、Y
3(Ga,Al)
5O
12:Ce
3+、Ca
3Sc
2Si
3O
12:Ce
3+、CaSc
2O
4:Eu
2+、(Ba,Sr)
2SiO
4:Eu
2+、Ba
3Si
6O
12N
2:Eu
2+、(Si,Al)
6(O,N)
8:Eu
2+等を用いることができる。
【0045】
蛍光体層2としては、これらの蛍光体粉末をガラス中に分散させたものや、ガラス母体に発光中心イオンを添加したガラス蛍光体、樹脂などの結合部材を含まない蛍光体セラミックス等を用いることができる。蛍光体粉末をガラス中に分散させたものの具体例としては、上に列挙した組成の蛍光体粉末をP
2O
3、SiO
2、B
2O
3、Al
2O
3などの成分を含むガラス中に分散したものが挙げられる。ガラス母体に発光中心イオンを添加したガラス蛍光体としては、Ce
3+やEu
2+を付活剤として添加したCa−Si−Al−O−N系やY−Si−Al−O−N系などの酸窒化物系ガラス蛍光体が挙げられる。蛍光体セラミックスとしては、上に列挙した組成の蛍光体組成からなり、樹脂成分を実質的に含まない焼結体が挙げられる。これらの中でも透光性を有する蛍光体セラミックスを使用することが望ましい。これは、焼結体中に光の散乱の原因となるポアや粒界の不純物がほとんど存在しないために透光性を有するに至った蛍光体セラミックスである。ポアや不純物は熱拡散を妨げる原因にもなるため、透光性セラミックスは高い熱伝導率を示す。このため蛍光体層として利用した場合には励起光や蛍光を拡散により失うことなく蛍光体層から取り出して利用でき、さらに蛍光体層で発生した熱を効率良く放散することができる。透光性を示さない焼結体でも出来るだけポアや不純物の少ないものが望ましい。ポアの残存量を評価する指標としては蛍光体セラミックスの比重の値を用いることができ、その値が計算される理論値に対して95%以上のものが望ましい。
【0046】
ここで、青色励起の黄色発光蛍光体であるY
3Al
5O
12:Ce
3+蛍光体を例に、透光性を有する蛍光体セラミックスの製造方法を説明する。蛍光体セラミックスは出発原料の混合工程、成形工程、焼成工程、加工工程を経て製造される。出発原料には、酸化イットリウムや酸化セリウムやアルミナ等、Y
3Al
5O
12:Ce
3+蛍光体の構成元素の酸化物や、焼成後に酸化物となる炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩等を用いる。出発原料の粒径はサブミクロンサイズのものが望ましい。これらの原料を化学量論比となるように秤量する。このとき焼成後のセラミックスの透過率向上を目的として、カルシウムやシリコンなどの化合物を添加することも可能である。秤量した原料は、水もしくは有機溶剤を用い、湿式ボールミルにより十分に分散、混合を行う。次に混合物を所定の形状に成形する。成形方法としては、一軸加圧法、冷間静水圧法、スリップキャスティング法や射出成形法等を用いることができる。得られた成形体を1600〜1800℃で焼成する。これにより、透光性のY
3Al
5O
12:Ce
3+蛍光体セラミックスを得ることができる。
【0047】
以上のようにして作製した蛍光体セラミックスは、自動研磨装置などを用いて、厚さ数十〜数百μmの厚みに研磨し、さらに、ダイアモンドカッターやレーザーを用いたダイシングやスクライブにより、円形や四角形や扇形、リング形など任意の形状の板に切り出して使用する。
【0048】
ここで、蛍光体セラミックスは、空気に対して屈折率が高く、さらに、内部にポアなどの散乱の原因となるものが少なく、光がセラミックス内部を導波するため、板状に成形した場合には側面から出射される発光成分が増加し、正面方向へ出射される発光成分が減少してしまう。この問題を解決するために、セラミックスの表面にエッチングにより凹凸の光取出し構造を設けたり、レンズを実装したり、側面に反射層を設けることで、正面方向へ出射される発光成分を増加させることも可能である。
【0049】
また、光透過性基板6には、プラスチックやガラス、単結晶もしくは多結晶体からなる透光性セラミックスなどが使用可能であるが、特に光透過特性と伝熱特性を併せ持つ透光性セラミックスを使用するのが望ましい。透光性セラミックスには、酸化アルミニウムやYAG、酸化イットリウム、酸化マグネシウムなどがあるが、いずれも、単結晶からなるものと、多結晶からなるものとがある。これらのなかでも高い透過率と高い熱伝導率を両立する単結晶の酸化アルミニウム(サファイア)の使用が望ましい。
【0050】
また、蛍光体層2と光透過性基板6との接合部7には、樹脂、有機接着剤、無機接着剤、低融点ガラスなどを用いることが出来る。中でも、光透過性基板6の透過率を活かすためには、励起光の透過率の高い樹脂や無機接着剤の使用が望ましい。これらを使用する場合、光透過性基板6上に樹脂もしくは無機接着剤を塗布し、その上に蛍光体層2を配置し、硬化炉内で加熱することで接着することが出来る。
【0051】
また、上述した各構成例の透過型の光源装置において、光透過性基板6の固体光源5とは反対の側の面に、蛍光などの光を効率良く取り出すための(蛍光などの光の取り出し量を増加させるための)多層膜からなる反射防止膜を設けても良い。また、光透過性基板6の中を導光した発光成分を取り出すために、光透過性基板6の固体光源5側の面において吸収手段9または拡散手段19の周囲に反射層を設けても良い。
図11には、
図3の光源装置において、光透過性基板6に、反射防止膜31と、反射層32とが設けられている例が示されている。また、
図12には、
図7の光源装置において、光透過性基板6に、反射防止膜31と、反射層32とが設けられている例が示されている。このように、光透過性基板6に、反射防止膜31および/または反射層32を設けることで、透過型の光源装置において、蛍光などの光をより一層効率良く取り出すことができる。
【0052】
また、本発明の上述した光源装置を、所定のレンズ系、あるいは、ミラー、リフレクタなどと組み合わせることで、従来に比べて十分な高輝度化を図ることが可能であり、かつ、照明光に色ムラがほとんどない照明装置を提供することができる。