【0010】
前記支持体上には、低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた、吸液状態と非吸液状態で透明性を異にする多孔質層を設けてなる。
前記低屈折率顔料としては、珪酸及び/又は珪酸塩、バライト粉、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、クレー、タルク、アルミナホワイト、炭酸マグネシウム等が挙げられ、これらは屈折率が1.4〜1.8の範囲にあり、液体を吸液すると良好な透明性を示すものである。
なお、前記珪酸塩としては、珪酸アルミニウム、珪酸アルミニウムカリウム、珪酸アルミニウムナトリウム、珪酸アルミニウムカルシウム、珪酸カリウム、珪酸カルシウム、珪酸カルシウムナトリウム、珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、珪酸マグネシウムカリウム等が挙げられる。
前記低屈折率顔料の粒径は特に限定されるものではないが、0.03〜10.0μmのものが好適に用いられる。
又、前記低屈折率顔料は2種以上を併用することもできる。
なお、好適に用いられる低屈折率顔料としては珪酸が挙げられる。
前記珪酸は、乾式法により製造される珪酸(以下、乾式法珪酸と称する)であってもよいが、湿式法により製造される珪酸(以下、湿式法珪酸と称する)が好適である。
この点を以下に説明する。
珪酸は非晶質の無定形珪酸として製造され、その製造方法により、四塩化ケイ素等のハロゲン化ケイ素の熱分解等の気相反応を用いる乾式法によるものと、ケイ酸ナトリウム等の酸による分解等の液相反応を用いる湿式法によるものとに大別される。
乾式法珪酸と湿式法珪酸とでは構造が異なり、前記乾式法珪酸は珪酸が密に結合した構造であるのに対して、湿式法珪酸は、珪酸が縮合して長い分子配列を形成した構造部分を有している。
従って、湿式法珪酸は乾式法珪酸と比較して分子構造が粗になるため、湿式法珪酸を適用した場合、乾式法珪酸を用いた系と比較して乾燥状態における光の乱反射性に優れ、隠蔽性が大きくなるものと推察される。
又、多孔質層は水を吸液させるものであるから、湿式法珪酸は乾式法珪酸に比べて粒子表面にシラノール基として存在する水酸基が多く、親水性の度合いが大であり、好適に用いられる。
【0011】
前記バインダー樹脂としては、ウレタン系樹脂、ナイロン樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、アクリル酸エステル共重合樹脂、アクリルポリオール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、マレイン酸樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、スチレン共重合樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、スチレン−ブタジエン共重合樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合樹脂、メタクリル酸メチル−ブタジエン共重合樹脂、ブタジエン樹脂、クロロプレン樹脂、メラミン樹脂、及び前記各樹脂エマルジョン、カゼイン、澱粉、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、尿素樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
前記低屈折率顔料とバインダー樹脂の混合比率は、低屈折率顔料の種類及び性状に左右されるが、好ましくは、低屈折率顔料1重量部に対してバインダー樹脂固形分0.5〜2重量部であり、より好ましくは、0.8〜1.5重量部である。低屈折率顔料1重量部に対してバインダー樹脂固形分が0.5重量部未満の場合には、形成される多孔質層の実用的な皮膜強度を得ることが困難であり、2重量部を越える場合には、前記多孔質層内部への水の浸透性が悪くなる。
前記多孔質層は、一般的な塗膜と比較して着色剤に対するバインダー樹脂の混合比率が小さいため、十分な皮膜強度が得られ難い。そこで、前記のバインダー樹脂のうち、ナイロン樹脂又はウレタン系樹脂を用いて耐擦過強度を高めることが好ましい。
前記ウレタン系樹脂としては、ポリエステル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ウレタン樹脂、ポリエーテル系ウレタン樹脂等があり、2種以上を併用することもできる。又、前記樹脂が水に乳化分散したウレタン系エマルジョン樹脂や、イオン性を有するウレタン樹脂(ウレタンアイオノマー)自体のイオン基により乳化剤を必要とすることなく自己乳化して、水中に溶解乃至分散したコロイド分散型(アイオノマー型)ウレタン樹脂を用いることもできる。
尚、前記ウレタン系樹脂は水性ウレタン系樹脂又は油性ウレタン系樹脂のいずれを用いることもできるが、水性ウレタン系樹脂、殊に、ウレタン系エマルジョン樹脂やコロイド分散型ウレタン系樹脂が好適に用いられる。
前記ウレタン系樹脂は単独で用いることもできるが、支持体の種類や皮膜に必要とされる性能に応じて、他のバインダー樹脂を併用することもできる。ウレタン系樹脂以外のバインダー樹脂を併用する場合、実用的な皮膜強度を得るためには、前記多孔質層のバインダー樹脂中にウレタン系樹脂を固形分比率で30重量%以上含有させることが好ましい。
前記バインダー樹脂において、架橋性のものは任意の架橋剤を添加して架橋させることにより、さらに皮膜強度を向上させることができる。
前記バインダー樹脂には、水との親和性に大小が存在するが、これらを組み合わせることにより、多孔質層中への浸透時間、浸透度合い、浸透後の乾燥の遅速を調整することができる。更には、適宜分散剤を添加して前記調整をコントロールすることができる。
前記多孔質層中には着色剤を含有させることもできる。
【実施例】
【0023】
以下に実施例を示すが、本発明は実施例に限定されない。なお、実施例中の部は質量部を示す。
実施例1(
図1乃至3参照)
支持体2として、目付量110g/m
2の白色のT/C(65/35)ブロード生地上に、青色顔料10部、アクリルエマルジョンを主成分とするバインダー樹脂80部を混合したスクリーン印刷インキを用いて、180メッシュのスクリーン版にて全面ベタ印刷して青色の着色層3を設けた。
次いで、前記着色層上に、湿式法珪酸〔商品名:ニップシールE−200、日本シリカ工業(株)製、平均粒子径:3.0μm〕15部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランHW−930、大日本インキ化学工業(株)製、固形分50%〕30部、水40部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、イソシアネート系架橋剤3部を混合してなる印刷インキを用いて、100メッシュのスクリーン版にて全面ベタ印刷して多孔質層4を形成した。
更に、前記多孔質層上に導電性物質として微粉末カーボンブラック(空隙率:70%、窒素吸着比表面積が900m
2/g)5部、アクリル樹脂エマルジョン50部(固形分50%)、シリコーン系顔料分散剤0.5部、消泡剤1.0部、粘度調整剤3.0部、水40.5部を混合してなる黒色の導電性スクリーン印刷インキを用いて、180メッシュのスクリーン版にて5mmの線幅で間隔が5mm、長さ30mmの破線からなる格子模様を印刷し、130℃で5分間乾燥硬化させて、導電性印刷像5を形成して通電性水変色体1を得た。
【0024】
前記通電性水変色体は、常態(非吸水状態)では白色の多孔質層上に黒色の破線からなる格子模様(導電性印刷像)が視認されるが(
図1)、多孔質層に水を付着させると、白色の多孔質層が水の吸液により透明化して着色層の青色が視認される(
図2)。前記水が付着した状態では、青色の着色層が視認されていたが、水が蒸発すると再び多孔質層が白色となり元の状態に戻る。
前記通電性水変色体を20cm×20cmの大きさに裁断、縫製して、衣服に取り付け可能な水鉄砲の標的を作製した。
尚、前記標的に通電作動装置を取り付けて通電性水変色装置を得た。
前記通電性水変色装置の各通電性印刷像には通電により発音する通電作動装置の素子を取り付けてなり、常態(非吸液状態)では作動しないが、水鉄砲の水が通電印刷像の破線部に付着すると通電して「ヒット」と発音する。
また、水が付着した多孔質層は青色に変色するため、水が標的に付着したことを変色と発音の両方で判別することができる。
前記水が付着した標的は乾燥により、元の状態に戻るため、何度も繰り返し遊ぶことができ、水鉄砲の標的として有用であった。
【0025】
実施例2
実施例1で作製した通電性水変色装置と、水付着手段として水鉄砲を組み合わせて通電性水変色セットを得た。
前記通電性水変色セットは、実施例1と同様に水の適用により何度も繰り返し遊ぶことができた。
【0026】
実施例3
支持体として、目付量100g/m
2の白色のポリエステルトロピカル生地上に、蛍光ピンク色顔料15部、アクリル酸エステルエマルジョン50部、水系インキ増粘剤3部、レベリング剤0.5部、消泡剤0.3部、エポキシ系架橋剤5部を混合した蛍光ピンク色スクリーン印刷用インキを用いて、120メッシュのスクリーン版を用いて全面ベタ印刷して着色層を得た。
次いで、前記着色層上に、湿式法微粒子状珪酸〔商品名:ニップシールE−1009、日本シリカ工業(株)製〕15部、青色顔料〔商品名:サンダイスーパーブルーGLL、山陽色素(株)製〕5部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランAP−20、大日本インキ化学工業(株)製、固形分35重量%〕45部、水40部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、ブロックイソシアネート系架橋剤3部を混合してなる青色スクリーン印刷用インキを用いて、100メッシュのスクリーン版にてベタ印刷し、乾燥状態で淡青色の多孔質層を形成した。
次いで、前記多孔質層上に、導電性物質として微粉末カーボンブラック(空隙率:80%、窒素吸着比表面積が1200m
2/g)4部、アクリル樹脂エマルジョン50部(固形分50%)、シリコーン系顔料分散剤0.5部、消泡剤1.0部、粘度調整剤3.0部、水41.5部を均一に混合してなる黒色の導電性スクリーン印刷インキを用いて、180メッシュのスクリーン版にて2mmの線幅で「アヒル」の文字とアヒルの絵柄をそれぞれ印刷して、導電性印刷像を形成して通電性水変色体を得た。
【0027】
前記通電性水変色体は、常態(非吸水状態)では淡青色の多孔質層上に黒色の「アヒル」の文字とアヒルの絵柄が視認されるが、多孔質層に水を付着させると、淡青色の多孔質層が水の吸液により透明化して下層の着色層と混色となった紫色が視認される。前記水が付着した状態では、紫色が視認されていたが、水が蒸発すると再び元の淡青色に戻る。
前記通電性水変色体に通電作動装置を取り付けて通電性水変色装置を得た。
前記通電性水変色装置の各通電性印刷像には通電により発光する通電作動装置の素子を取り付けてなり、常態(非吸液状態)では作動しないが、通電印刷像である「アヒル」の文字とアヒルの絵柄の間の多孔質層に水を内部に収容可能な塗布具を用いて水を付着させて通電性印刷像を繋ぐと通電して発光する。
また、水が付着した多孔質層は青色から紫色に変色するため、筆跡を明瞭に視認することができる。
前記筆跡は乾燥により、元の状態に戻るため、何度も繰り返し遊ぶことができ、筆跡形成と発光機能を備えた知育玩具として有用であった。
【0028】
実施例4
実施例3で作製した通電性水変色装置と、水付着手段として水を内部に収容可能な塗布具を組み合わせて通電性水変色セットを得た。
前記通電性水変色セットは、実施例1と同様に水の適用により何度も繰り返し遊ぶことができた。
【0029】
実施例5
支持体として、目付量180g/m
2の白色のT/C(65/35)ツイル生地上に、青色顔料10部、アクリルエマルジョンが主成分のバインダー樹脂80部を混合したスクリーン印刷インキを用いて、180メッシュのスクリーン版にて全面ベタ印刷して青色の着色層を設けた。
次いで、前記着色層上に、湿式法珪酸〔商品名:ニップシールE−200、日本シリカ工業(株)製、平均粒子径:3.0μm〕15部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランHW−930、大日本インキ化学工業(株)製、固形分50%〕30部、水40部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、イソシアネート系架橋剤3部を混合してなる印刷インキを用いて、100メッシュのスクリーン版にて全面ベタ印刷して多孔質層を形成した。
更に、前記多孔質層上に、導電性物質として微粉末カーボンブラック(空隙率:60%、窒素吸着比表面積が800m
2/g)5部、アクリル樹脂エマルジョン50部(固形分50%)、シリコーン系顔料分散剤0.5部、消泡剤1.0部、粘度調整剤3.0部、水40.5部を均一に混合してなる黒色の導電性スクリーン印刷インキを用いて、180メッシュのスクリーン版にて5mmの線幅で直径20cmの線路形態の円軌道を2箇所に印刷し、導電性印刷像を形成して通電性水変色体を得た。
【0030】
前記通電性水変色体は、常態(非吸水状態)では白色の多孔質層上に二つの円軌道が視認されるが、多孔質層に水を付着させると、白色の多孔質層が水の吸液により透明化して着色層の青色が視認される。前記水が付着した状態では、青色の着色層が視認されていたが、水が蒸発すると再び多孔質層が白色となり元の状態に戻る。
【0031】
前記通電性水変色体に踏み切り形態の通電作動装置を取り付けて通電性水変色装置を得た。
前記通電性水変色装置の各通電性印刷像には通電により作動する通電作動装置の素子を取り付けてなり、常態(非吸液状態)では作動しないが、通電印刷像である円軌道間の多孔質層に、水を内部に収納した線路の像を有するローラー式スタンプ具を用いて水を付着させて通電性印刷像を繋ぐと通電して踏み切りの遮断機が開く。
また、水が付着した多孔質層は白色から青色に変色するため、スタンプ具の印像(線路の像)を明瞭に視認することができる。
【0032】
本体内に電源とモーターと制御回路を収容し、本体下部に車輪と通電センサーを設けた汽車形態の走行玩具を前記導電性印刷像上に載置して走行させると、走行玩具は導電性印刷像に沿って円軌道を描いて走行する。
次いで、2箇所の導電性印刷像を前記ローラー式スタンプ具を用いて水を付着させて通電性印刷像を繋ぐと通電して踏み切りの遮断機が開くと共に、走行玩具はローラー式スタンプ具により形成された印像(線路の像)上を走行して他方の導電性印刷像上を走行する。
前記印像は乾燥により、元の状態に戻るため、何度も繰り返し遊ぶことができ、印像形成と作動機能を備えた走行玩具として有用であった。
【0033】
実施例6
実施例5で作製した通電性水変色装置と、汽車形態の走行玩具と、水付着手段として前記ローラー式スタンプ具を組み合わせて通電性水変色セットを得た。
前記通電性水変色セットは、実施例5と同様に水の適用により何度も繰り返し遊ぶことができた。
【0034】
実施例7
支持体として、目付量110g/m
2の白色のT/C(65/35)ブロード生地上に、青色顔料10部、アクリルエマルジョンを主成分とするバインダー樹脂80部を混合したスクリーン印刷インキを用いて、180メッシュのスクリーン版にて全面ベタ印刷して青色の着色層を設けた。
前記多孔質層上に導電性物質として微粉末カーボンブラック(空隙率:70%、窒素吸着比表面積が900m
2/g)5部、アクリル樹脂エマルジョン50部(固形分50%)、シリコーン系顔料分散剤0.5部、消泡剤1.0部、粘度調整剤3.0部、水40.5部を混合してなる黒色の導電性スクリーン印刷インキを用いて、180メッシュのスクリーン版にて3mmの線幅で「パンダ」の文字とパンダの絵柄をそれぞれ印刷して、導電性印刷像を形成した。
前記導電性印刷像の周囲に、湿式法珪酸〔商品名:ニップシールE−200、日本シリカ工業(株)製、平均粒子径:3.0μm〕15部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランHW−930、大日本インキ化学工業(株)製、固形分50%〕30部、水40部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、イソシアネート系架橋剤3部を混合してなる印刷インキを用いて、100メッシュのスクリーン版にて多孔質像を形成して通電性水変色体を得た。
【0035】
前記通電性水変色体は、常態(非吸水状態)では白色の多孔質像の周囲に黒色の「パンダ」の文字とパンダの絵柄が視認されるが、多孔質像に水を付着させると、白色の多孔質像が水の吸液により透明化して下層の着色層による青色が視認される。前記水が付着した状態では、青色が視認されていたが、水が蒸発すると再び元の白色に戻る。
前記通電性水変色体に通電作動装置を取り付けて通電性水変色装置を得た。
前記通電性水変色装置の各通電性印刷像には通電により発光する通電作動装置の素子を取り付けてなり、常態(非吸液状態)では作動しないが、通電印刷像である「パンダ」の文字とパンダの絵柄の間の多孔質像に水を内部に収容可能な塗布具を用いて水を付着させて通電性印刷像を繋ぐと通電して発光する。
また、水が付着した多孔質層は白色から青色に変色するため、筆跡を明瞭に視認することができる。
前記筆跡は乾燥により、元の状態に戻るため、何度も繰り返し遊ぶことができ、筆跡形成と発光機能を備えた知育玩具として有用であった。
【0036】
実施例8
実施例7で作製した通電性水変色装置と、水付着手段として水を内部に収容可能な塗布具を組み合わせて通電性水変色セットを得た。
前記通電性水変色セットは、実施例7と同様に水の適用により何度も繰り返し遊ぶことができた。