【実施例1】
【0016】
まず、本発明の実施例1に係るレーダ装置について説明する。
図4に実施例1に係るレーダ装置を構成する信号処理装置の機能ブロック図を示す。
図4には、
図1に示した信号処理装置の構成のみを示している。信号処理装置9は、周波数ピーク検出部10と、第1の組み合わせグループ決定部11と、第1のペアリング候補グループ決定部12と、第2の組み合わせグループ決定部13と、第2のペアリング候補グループ決定部14と、ペアリング候補グループ抽出部15と、今回ペアリング候補グループ決定部16と、今回データ算出部17とを備えている。本発明のレーダ装置を構成する信号処理装置以外の構成は、
図1に示した従来のレーダ装置と同様の構成を有する。
【0017】
本発明のレーダ装置の信号処理方法について図面を用いて説明する。
図5は本発明の実施例1に係るレーダ装置の信号処理方法の手順を示すフローチャートである。まず、ペアリングを行うための周波数ピークを求めるために、周波数ピーク検出部10は、FM−CWレーダ装置において、送信した電波が複数の目標物で反射された反射波を受信して受信信号を生成し、該受信信号から複数のアップ周波数ピークと複数のダウン周波数ピークとを検出すると共に、アップ周波数ピーク及びダウン周波数ピークにおける目標物に関する特性値を測定する。検出した周波数のピークは
図3に示すように複数存在する。ここで、アップ周波数ピークがn個あった場合、アップ周波数ピークをfu
1, fu
2, … fu
nと表し、ダウン周波数ピークがm個あった場合、ダウン周波数ピークをfd
1, fd
2, … fd
mと表すこととする。
【0018】
この周波数ピークを示す周波数における目標物に関する特性値としては、アップ周波数ピーク及びダウン周波数ピークにおける目標物の存在する位置の角度、受信信号のパワー、スペクトラム強度が挙げられる。スペクトラム強度とは、アレーアンテナによる到来方向推定法(ビームフォーマ法、Capon法、線形予測法など)によって得られる、到来波の角度分布(角度スペクトラム)において、それぞれの角度の強さを表すものをいう。
【0019】
次に、ステップS101において、第1の組み合わせグループ決定部11は、複数のアップ周波数ピークの各々に対して、全てのダウン周波数ピークを組み合わせて、第1の組み合わせグループを決定する。例えば、アップ周波数ピークがn個存在し、ダウン周波数ピークがm個存在する場合、第1の組み合わせグループに含まれる組合せの数はn×m個となる。具体的には、第1の組み合わせグループに含まれる組合せは、(fu
1, fd
1), (fu
1, fd
2), … (fu
1, fd
m), (fu
2, fd
1), (fu
2, fd
2), … (fu
2, fd
m), (fu
n, fd
1), (fu
n, fd
2) … (fu
n, fd
m)と表せる。
【0020】
次に、ステップS102において、第1のペアリング候補グループ決定部12は、第1の組み合わせグループを構成する各々の組み合わせについて、測定された特性値に基づいてマハラノビス距離を算出し、1つのアップ周波数ピークに対して1つのダウン周波数ピークを対応させるようにマハラノビス距離が最小となる第1のペアリング候補グループを決定する。ここで、第1のペアリング候補グループに含まれる組合せは、(fu
1, fd
a), (fu
2, fd
b), … (fu
n, fd
c)(a,b,cはm以下の整数)と表せる。
【0021】
マハラノビス距離は、アップ周波数ピークとダウン周波数ピークとの角度、パワー、スペクトラム強度それぞれの差である、角度差、パワー差、スペクトラム強度差の値を用いて算出する。
図6を用いてマハラノビス距離の算出方法について説明する。x軸にスペクトラム強度差、y軸に角度差、z軸にパワー差をとった3次元のグラフ上に、アップ周波数ピークとダウン周波数ピークとの角度差、パワー差、スペクトラム強度差をプロットしている。図中で21(●印)は正常にペアリングされた組合せの角度差、パワー差、スペクトラム強度差を示し、正常にペアリングされた組合せの全体の平均値を22(★印)で示している。この場合、マハラノビス距離を算出する対象の組合せのデータ23(四角形の印)のマハラノビス距離は、平均値22との間の距離24で求めることができる。
【0022】
具体的には、平均がμ=(μ
1, μ
2, μ
3)
T で、共分散行列がΣであるような多変数ベクトルx=(x
1, x
2, x
3)で表される一群の値に対するマハラノビス距離は、次のように算出できる。
【0023】
【数2】
【0024】
上記のステップS102における、第1のペアリング候補グループの決定方法について図面を用いて説明する。
図7に、アップビート信号及びダウンビート信号の一例を示す。同図では、アップビート信号(UPビート)には、4つのアップ周波数ピーク(fu
1, fu
2, fu
3, fu
4)が存在し、ダウンビート信号(DOWNビート)には、5つのダウン周波数ピーク(fd
1, fd
2, fd
3, fd
4, fd
5)が存在する例を示しており、例えば、アップ周波数ピークfu
1に対しダウン周波数ピークfd
1 〜fd
5の中でマハラノビス距離が最小となるダウン周波数ピークがfd
2であることを示している。このように、マハラノビス距離に基づいて、1つのアップ周波数ピークから、1つのダウン周波数ピークをペアリングする第1のペアリング候補グループは、同図の実線の矢印で示すように、(fu
1, fd
2), (fu
2, fd
5), (fu
3, fd
2), (fu
4, fd
3)と決定される。
【0025】
尚、上記の例では1つのピークが1つの目標物の角度、パワー、スペクトラム強度情報を有するものとして説明したが、目標物の角度推定方式によっては1つのピークから複数の目標物の角度情報を分離できる場合がある。その場合、1つのピークに対して複数の目標物の角度、パワー、スペクトラム強度情報を持つ。例えば1つのピークが3つの目標物の情報を持つとすれば、アップ周波数ピークfu
nはfu
n-1、fu
n-2、fu
n-3、ダウン周波数ピークfd
mはfd
m-1、fd
m-2、fd
m-3と各目標物毎に分離され、組み合わせは各目標物毎になされる。従って、アップ周波数ピーク数がn個、ダウン周波数ピーク数がm個ある場合、組み合わせの数は3n×3mとなる。この組み合わせについてマハラノビス距離が最小となる第1のペアリング候補グループを決定する。このことは、次のステップS103、S104についても同様である。
【0026】
次に、ステップS103において、第2の組み合わせグループ決定部13は、複数のダウン周波数ピークの各々に対して、全てのアップ周波数ピークを組み合わせて、第2の組み合わせグループを決定する。例えば、アップ周波数ピークがn個存在し、ダウン周波数ピークがm個存在する場合、第2の組み合わせグループに含まれる組合せの数はn×m個となる。具体的には、第2の組み合わせグループに含まれる組合せは、(fd
1, fu
1), (fd
1, fu
2), … (fd
1, fu
n), (fd
2, fu
1), (fd
2, fu
2), … (fd
2, fu
n), (fd
m, fu
1), (fd
m, fu
2) … (fd
m, fu
n)と表せる。
【0027】
次に、ステップS104において、第2のペアリング候補グループ決定部14は、第2の組み合わせグループを構成する各々の組み合わせについて、測定された特性値に基づいてマハラノビス距離を算出し、1つのダウン周波数ピークに対して1つのアップ周波数ピークを対応させるようにマハラノビス距離が最小となる第2のペアリング候補グループを決定する。マハラノビス距離の算出方法は上記と同様である。ここで、第2のペアリング候補グループに含まれる組合せは、(fd
1, fu
i), (fd
2, fu
j), … (fd
n, fu
k)(i,j,kはn以下の整数)と表せる。
【0028】
上記のステップS104における、第2のペアリング候補グループの決定方法について
図7を用いて説明する。第1のペアリング候補グループの決定方法と同様に、マハラノビス距離に基づいて、1つのダウン周波数ピークから、1つのアップ周波数ピークをペアリングする第2のペアリング候補グループは、同図の破線の矢印で示すように、(fd
1, fu
1), (fd
2, fu
1), (fd
3, fu
2), (fd
4, fu
4), (fd
5, fu
4)と決定される。
【0029】
次に、ステップS105において、ペアリング候補グループ抽出部15は、第1のペアリング候補グループ及び第2のペアリング候補グループからなるグループにおいて、同一周波数において複数の組み合わせが存在する場合には、該複数の組み合わせの中からマハラノビス距離が大きい組み合わせを除去してペアリング候補グループを抽出する。
【0030】
具体的には、本実施例では、アップ周波数ピークとダウン周波数ピークとの組合せを第1の組み合わせグループ決定ステップと第2の組み合わせグループ決定ステップの2回のステップで実行しているため、同一のアップ周波数ピークに対して複数のダウン周波数ピークが組み合わされる可能性がある。即ち、アップ側から組み合わせたときの組合せ(fu
1、fd
1)に対し、ダウン側から組み合わせたときの組合せ(fd
1、fu
1)、(fd
2、fu
1) 、(fd
3、fu
1)等が存在する場合がある。そこで、複数の組合せの中からマハラノビス距離が大きいものを除去して、マハラノビス距離が小さい組合せをペアリング候補と決定する。
図8を用いて、同一周波数における複数の組合せの中から1つの組合せを選択する方法について説明する。
図7に示したようにステップS102及びS104において、アップ周波数ピークとダウン周波数ピークは
図7の実線及び破線の矢印で示すように、同一の周波数において複数の組合せが存在する場合がある。例えば、アップ周波数ピークfu
1に対しては、(fu
1, fd
2), (fd
1, fu
1), (fd
2, fu
1)の3つの組合せが存在する。このように複数の組合せの中からマハラノビス距離が最小となる組合せを1つだけ選択する。同様に他のアップ周波数ピークfu
2〜fu
4、ダウン周波数ピークfd
1〜fd
5についてもマハラノビス距離が最小となる組合せを選択する。
図8(a)に、マハラノビス距離が最小となる組合せを○で示し、それ以外の組合せを×で示す。また、
図8(b)にマハラノビス距離が最小となる組合せのみを示す。この例では3つの組み合わせ(fu
2, fd
5), (fd
2, fu
1), (fd
5, fu
4)のみが選択されている。
【0031】
次に、ステップS106において、ペアリング候補と決定する今回ペアリング候補グループ決定部16は、ペアリング候補グループを構成する組み合わせのうち、マハラノビス距離が所定のしきい値以上の組み合わせを除去して今回ペアリング候補グループと決定する。
【0032】
ペアリング候補決定ステップ(S105)において、マハラノビス距離が小さい組合せを抽出したとしても、その絶対値が大きい場合にはペアリングが正常に行われていない可能性も考えられる。そこで、マハラノビス距離が所定の閾値以上である場合には正常にペアリングが行われていないと判断し、そのような組合せを除去する。
【0033】
図9にマハラノビス距離が所定の閾値以上の組合せを除去した結果を示す。
図8(b)に示すように、ステップS105において、マハラノビス距離が最小となる3つの組み合わせ(fu
2, fd
5), (fd
2, fu
1), (fd
5, fu
4)が得られた場合、(fu
2, fd
5)のマハラノビス距離が所定の閾値以上となっているとすると、
図9に示すように2つの組合せ(fd
2, fu
1), (fd
5, fu
4)が今回のペアリンググループとして決定される。
【0034】
次に、ステップS107において、今回データ算出部17は、今回ペアリング候補グループに含まれるアップ周波数ピークとダウン周波数ピークとの組み合わせについて、目標物の距離、相対速度及び角度の少なくとも1つを含む今回のデータを算出する。
【0035】
ここで、第1の組み合わせグループ決定部及び第2の組み合わせグループ決定部の少なくとも1つにおいて、特性値が所定の範囲内である場合に、アップ周波数ピークとダウン周波数ピークとの組み合わせを行うようにしてもよい。アップ周波数ピーク及びダウン周波数ピークのそれぞれにおける角度、パワー、スペクトラム強度のそれぞれの差が明らかに大きい場合はペアリングが正常に行われていない可能性が高いと考えられるので、そのような組合せは行わないようにすることで、ペアリングが正常に行われているか否かを検証するための演算量を削減することができ、ペアリングの判定を高速化することができる。
【0036】
本実施例では、マハラノビス距離に基づいてペアリングが正常に行われているか否かを判断しているが、判断基準はマハラノビス距離に限られず、他の相関値に基づいてペアリングが正常に行われているか否かを判断するようにしてもよい。
【0037】
さらに、本実施例では、角度差、パワー差、スペクトラム強度差の3つの値を基準にしてマハラノビス距離を算出した例を示したが、これには限られず、他のパラメータに基づいてマハラノビス距離を算出してもよいし、パラメータの数も3つには限られない。
【0038】
以上のようにして、本発明の実施例1に係るレーダ装置によれば、複数の目標物に関して検出されたアップ周波数ピークとダウン周波数ピークとをマハラノビス距離を用いてペアリングを行うことにより、ミスペアリングを低減することができる。
【実施例2】
【0039】
次に、本発明の実施例2に係るレーダ装置について説明する。
図10に本発明の実施例2に係るレーダ装置を構成する信号処理装置の機能ブロック図を示す。
図10には、
図1に示した信号処理装置の構成のみを示している。信号処理装置9は、実施例1で示した構成に加えて、過去データ抽出部18と、予測データ算出部19と、ペアリング確定部20とを備えている。
【0040】
本発明のレーダ装置の信号処理方法について図面を用いて説明する。
図11は、本発明の実施例2に係るレーダ装置の信号処理方法の手順を示すフローチャートであり、
図5に示した実施例1の手順を示すフローに続けて実行される。
【0041】
まず、ステップS201において、過去データ抽出部18が、今回データ算出ステップで今回のデータを算出する以前に検出された目標物の距離、相対速度及び角度の少なくとも1つを含む過去のデータを抽出する。ここで、「過去のデータ」とは、ペアリング候補グループ決定段階(S106、S107)のデータをいう。即ち、本発明の信号処理装置は、目標物に対して繰り返し電波を照射した際に受信した信号から算出した、目標物に関する検出データを順次記憶し、過去データ抽出部18が記憶された過去のデータを抽出する。過去のデータは信号処理装置9内に備えられたメモリ92(
図1参照)に格納してもよいし、信号処理装置9の外部に設けられた記憶媒体(図示せず)に記憶するようにしてもよい。
【0042】
次に、ステップS202において、予測データ算出部19が、抽出された過去のデータに基づいて、目標物に関して今回のデータに対応すると予測される予測データを算出する。即ち、過去数回にわたって検出し記憶された目標物の過去のデータに基づいて、今回のデータを予測するものである。例えば、過去3回分のデータに基づいて今回のデータを予測するようにしてもよい。ただし、3回分には限られず、2回分でもよいし、4回分以上の過去のデータを用いて今回のデータを予測するようにしてもよい。
【0043】
次に、ステップS203において、ペアリング確定部20が、予測データと今回のデータとを用いてマハラノビス距離を算出し、算出したマハラノビス距離が所定の範囲内である場合に、目標物に関してアップ周波数ピークとダウン周波数ピークとのペアリングを確定する。
【0044】
マハラノビス距離は、過去のデータに基づいて予測した目標物のデータと、今回のデータとを用いて算出する。
図12を用いてマハラノビス距離の算出方法について説明する。本実施例では、目標物の位置情報、即ち縦位置誤差と横位置誤差とを用いた例を示す。x軸に横位置誤差、y軸に縦位置誤差をとったグラフ上に、過去において予測した目標物の横位置、縦位置データとそのときに正しいペアリングが行なわれたとして確定した目標物の横位置、縦位置データとの差分、即ち横位置誤差、縦位置誤差を31(●印)としてプロットしている。ここで、過去の横位置誤差、縦位置誤差は、事前に測定し正しいペアリングと判定されたデータであって、その今回ペアデータと前回ペアデータからの予測値との差を求めたものを使用している。その平均値を32(★印)で示している。尚、ペアリング確定部20で予測と確定が行なわれるたびにそのときの予測目標物と確定目標物との横位置誤差、縦位置誤差を過去データに追加してもよい。今回の処理においては、ステップS107で算出された今回の目標物データの横位置、縦位置データと、過去のデータから今回予測した横位置、縦位置データとの横位置誤差、縦位置誤差(今回のデータ33(四角形の印)として示している)と、平均値32とのマハラノビス距離(平均値32との間の距離34で求めることができる。)を求め、算出したマハラノビス距離が所定の範囲内である場合に、目標物に関してアップ周波数ピークとダウン周波数ピークとのペアリングを確定する。
【0045】
上記の説明においては、目標物の位置のマハラノビス距離に基づいてアップ周波数ピークとダウン周波数ピークとのペアリングを確定する方法について説明したが、目標物の確定のためには、目標物の位置情報だけでなく、目標物の相対速度に関しても同様にマハラノビス距離を算出してアップ周波数ピークとダウン周波数ピークとのペアリングを確定する。実際にペアリングを確定するには位置と相対速度が予測値と近いことが必要であるためである。
【0046】
上記のようにして算出したマハラノビス距離が所定の範囲内である場合には、正常にペアリングが行われているものと考えられるので、アップ周波数ピークとダウン周波数ピークとのペアリングを確定する。
【0047】
以上のようにして、マハラノビス距離に基づいて正常にペアリングが行われているか否かを判断しているので、ミスペアリングを抑制することができる。
【0048】
さらに、過去のデータを用いて今回のデータを予測することにより、目標物の周波数ピークがノイズや他の目標物により一時的に埋もれて検出できなかった場合でも、その次に検出できれば速やかにペアリングを確定することができるため、目標物を見失う危険性を低減することができる。
【0049】
また、上記の実施例ではマハラノビス距離に基づいて相関値を算出する例を示したが、マハラノビス距離以外の他の計算方法で相関値を算出するようにしてもよい。さらに、本実施例では、縦位置誤差及び横位置誤差の2つのパラメータを基準にして正常にペアリングが行われたか否かを判断する例を示したが、他のパラメータを基準にして判断するようにしてもよいし、位置情報、相対速度情報を含む3個以上のパラメータを用いて判断してもよい。
【実施例3】
【0050】
次に、本発明の実施例3に係るレーダ装置について図面を用いて説明する。
図13は、本発明の実施例3に係るレーダ装置の信号処理方法の手順を示すフローチャートであり、
図11に示した実施例2の手順を示すフローに続けて実行される。本実施例では、ペアリング確定部20が、同一目標物に対してペアリングが確定するたびにペアリング確定回数をカウントし、ペアリング確定回数が所定の回数以上となった場合に目標物に関する今回データを出力する点を特徴としている。即ち、目標物が複数存在する場合には、各目標物毎にペアリング確定回数をカウントする。
【0051】
目標物の確定方法について
図14を用いて説明する。ここでは、2つの目標物の候補101,102があり、前回のペアリング候補から求めた目標物の位置をそれぞれP
1、P
2とする。また、前回のペアリング候補から求めた今回の予想位置を△101´、□102´とし、それぞれの値を中心として今回のペアリング候補と関連付ける、即ち目標物の同一性を判断するための境界を201、202で示す。ここで、今回のペアリング候補には3つの候補があり、それぞれの候補から求めた位置をP
11(111)、P
12(112)、P
13(113)とする。そこで、各ペアリング候補について、目標物の同一性を今回の予想位置から所定の範囲(201、202)内にあるか否かを判定し、所定の範囲内にあるとき、更にマハラノビス距離が所定の閾値以下なら前回のペアリング候補と同一目標物とみなす。
【0052】
例えば、今回のペアリング候補から求めた位置P
11(111)は、前回のペアリング候補から求めた今回の予想位置△101´に対し所定範囲201にあるため今回のペアリング候補は目標物101と同一目標物の候補とする。そして今回のペアリング候補から求めた位置P
11(111)と今回の予想位置△101´から横位置誤差、縦位置誤差についてのマハラノビス距離が所定の閾値の範囲内にあれば同一物とみなす。この場合は目標物101用のカウントをアップする。なお、カウンタは目標物101用と102用とで別々に持つ。
【0053】
同様にして、目標物102の今回のペアリング候補から求めた位置P
13(113)は、前回のペアリング候補から求めた今回の予想位置□102´に対し所定範囲202内にあるため、その横位置誤差、縦位置誤差についてのマハラノビス距離が所定の閾値の範囲内にあれば、同一物とみなす。この場合は目標物102用のカウントをアップする。
【0054】
一方、今回のペアリング候補P
12(112)は、目標物101の前回のペアリング候補から求めた今回の予想位置△101´からの所定範囲、及び目標物102の前回のペアリング候補から求めた今回の予想位置□102´からの所定範囲の何れの予想位置にも入らないため、除外する。
【0055】
上記のようにして、ペアリング確定部20は、ペアリングが確定するたびにペアリング確定回数をカウントし、ペアリング確定回数を記憶手段に格納する。次に、ステップS301において、ペアリング確定部20は記憶手段を参照してペアリング確定回数が所定の回数以上であるか否かを判断する。
【0056】
ペアリング確定回数が所定の回数以上である場合には、ステップ302において、目標物のデータを出力する。一方、ペアリング確定回数が所定の回数未満である場合には、再度測定を開始する。
【0057】
以上のように、本発明の実施例3に係るレーダ装置の信号処理装置によれば、連続性を有する同一目標物のペアリング確定回数が所定の回数となった場合、即ち目標物の存在が確かめられたときにのみ目標物データの出力を行うようにしているので、ミスペアリングした目標物のデータの出力を抑制することができる。
【0058】
以上の説明において、図示したレーダ装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示のように構成されていることを要しない。
【0059】
さらに、各構成要素にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPU等及びCPU等においてにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、論理回路によるハードウェアとして実現されてもよい。