特許第5709495号(P5709495)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5709495
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】露光装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20150409BHJP
【FI】
   G03F7/20 501
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-271667(P2010-271667)
(22)【出願日】2010年12月6日
(65)【公開番号】特開2012-123049(P2012-123049A)
(43)【公開日】2012年6月28日
【審査請求日】2013年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500171707
【氏名又は名称】株式会社ブイ・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】特許業務法人 小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安井 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】石井 大助
【審査官】 関口 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−210598(JP,A)
【文献】 米国特許第05891806(US,A)
【文献】 特開平09−289159(JP,A)
【文献】 特開2004−246144(JP,A)
【文献】 特開2008−164729(JP,A)
【文献】 特開2010−243680(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0075612(US,A1)
【文献】 特開平07−135133(JP,A)
【文献】 特開平09−330863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20− 7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を搬送方向に搬送しながら、前記基板上に繰り返し露光を行う露光装置であって、
光源と、
前記光源と前記基板との間に配置されるフォトマスクと、
前記光源か出射された光の照度分布を一様にして前記フォトマスク上に照射するフライアイレンズとを備え、
前記フライアイレンズは、矩形状の単レンズが行列方向にマトリクス状に配列されたものであり、
前記フォトマスク上には、前記単レンズからの出射光が照射される照射領域が形成され、前記搬送方向に直交する方向における前記照射領域の長さが、前記搬送方向における前記照射領域の長さの1〜1.5倍であり、
前記フライアイレンズの縦方向の単レンズの数と、横方向の単レンズの数との比率が、1〜1.5倍である、露光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、液晶表示装置を構成するカラーフィルタ基板を露光するための露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の液晶表示装置の大型化に伴い、液晶表示装置に用いられるカラーフィルタも大型化している。カラーフィルタの製造工程では、フォトリソグラフィ法によって着色層をパターニングするが、大型の露光マスクは非常に高価であるため、カラーフィルタの製造コストが高くなるという問題がある。そこで、カラーフィルタ基板の表示画素領域の大きさより小さなフォトマスクを露光ヘッドに装着した露光機を用い、基板を搬送しながら、露光対象となる基板全面に対して繰り返し露光を行う方式(以下「小型マスク連続露光方式」という)がある。小型マスク連続露光方式では、例えば、基板を搬送しながら、点滅式光源から光を照射することで、基板上にフォトマスクの開口パターンが繰り返し転写される。
【0003】
小型マスク連続露光では、基板を一方向に搬送しながら露光を行う。従って、基板搬送方向における開口パターンが形成される領域(以下、「開口パターン形成領域」という)の長さを短く設計できる。従って、フォトマスク上に、サイズやピッチの異なる2種類以上の開口パターン形成領域を搬送方向に並べることができる。これによって、カラーフィルタの品種ごとにフォトマスクの領域を変えて露光を行い、フォトマスクを効率的に用い、フォトマスクの枚数を削減している。
【0004】
また、点滅式光源を用いて、光の点滅に合わせてフォトマスクの開口パターンを搬送中の基板に転写する場合には、光を高周波数で点滅させ、かつ、1回の点灯で高エネルギーの光を照射する必要がある。そのため、光源にはレーザー光が用いられることがある。但し、レーザー光の強度は、光軸中心に近いほど高くなるガウシアン分布となっている。そこで、フライアイレンズを用いて、照射領域におけるレーザー光の照度分布を均一にしている。また、露光時には、光源からの光を有効に用いるために、光源からの光が照射される領域が開口パターン形成領域に対して略相似形となるよう、露光装置の光学系が設計されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−292955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図4は、従来の露光装置に用いられるフライアイレンズの正面図であり、図5は、従来のフォトマスクの一例を示す平面図である。尚、以降の図では、基板搬送方向をY軸正方向とする。
【0007】
フライアイレンズ106は、行列状に並べられた複数の単レンズ161からなる。フライアイレンズ106に入射されるレーザー光は、中心に近づくほど光の強度が高くなる同心円の強度分布を有する。そして、各々の単レンズ161から出射される光は、互いに重ね合わされ、フォトマスク103上の開口パターンに照射される。各単レンズ161からの出射光が照射されるフォトマスク130上の領域を照射領域140という。
【0008】
図5に示すフォトマスク103には、一例として、X軸方向の長さ(以下、「幅」という)が215mm、Y軸方向の長さ(以下、「縦の長さ」という)が60mmに設計された開口パターン形成領域132a及び132bが設けられている。このように、開口パターン形成領域の縦の長さを幅より小さくすることで、フォトマスク103上に、2種類の開口パターン形成領域132a及び132bをY軸方向に並べている。ここで、上述したように、照射領域140は、開口パターン形成領域132a及び132bと略相似形に設計される。従って、図4に示すように、照射領域140に光を出射する各単レンズ161は、幅が縦の長さの3倍となるように設計されている。そのため、正方形のフライアイレンズ106に対する単レンズの分割数は4×12となり、X軸方向とY軸方向とで単レンズ161の数が異なる。この場合、以下に述べるような問題がある。
【0009】
図6は、照射領域と照度分布との関係を示すグラフ図であり、より詳細には、フォトマスクの開口パターンを通過した光の照度が基板上でどのような局所的分布を示すかをシミュレーションした結果を示す。尚、照度分布は、X軸方向(実線で示す)及びY軸方向(破線で示す)の各々の結果を示している。また、シミュレーション条件として、開口パターンの形状を、対向する1辺の間隔が30μmである正八角形に設定し、基板とフォトマスクとの間隔を200μmに設定し、光のコリメーション半角を±1.8度に設定した。尚、フライアイレンズ106から出射された光は、光の照射領域全体では、照度分布が均一であるが、局所的には、照度が変化している。
【0010】
照射光のコリメーション角の影響により、開口パターンを通過した照射領域の幅及び縦の長さ(約0.044mm)は、開口パターンの対向する一対の辺の間隔(0.03mm)に比べて大きくなっている。そして、光の照度は、照射領域の中央部分では略均一であるが、両側の端部では、各々、外側に向かって減衰する。ここで、Y軸方向の照度分布の減衰は滑らかであるのに対して、X軸方向の照度分布は階段状に減衰する。これは、X軸方向に並ぶ単レンズの数が少なくなるにつれて、X軸方向に隣接する単レンズからの出射光の照射領域同士の位置ズレが大きくなり、照度の減衰の連続性が失われることに起因する。
【0011】
開口パターンを透過した光が図6のように階段状の照度分布を示す場合、フォトマスクの開口パターンの形状が基板上のレジストに相似形で転写されないという問題がある。具体的に説明すると、レジストは、所定の光照射量(レジスト感度)以上の光が照射された場合に、現像時に溶解することなく、露光パターンを形成することができる。例えば、図5の1点鎖線で示すラインが、レジスト感度が得られる照度である場合は、1点鎖線と照度分布線とが交差する箇所の照射領域の位置が露光パターンの端縁となる。従って、現像後に形成される露光パターンは、幅と、縦の長さとにズレ108aが生じる(幅>縦の長さ)。一方、2点差線で示すラインがレジスト感度が得られる照度である場合は、露光パターンの幅と縦の長さとにズレ108bが生じる(縦の長さ>幅)。このように、X軸方向とY軸方向との照度分布の減衰の仕方の違いに起因して、フォトマスクの開口パターンの幅と縦の長さとの比率と、露光パターンの幅と縦の長さとの比率とが変わってしまう。
【0012】
それ故に、本発明では、小型マスク連続露光において、フォトマスク上の画素形成用パターンを透過した光の照度分布が、基板の搬送方向と、搬送方向に直交する方向とで略同じとなる露光を実現できる露光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、基板を搬送方向に搬送しながら、前記基板上に繰り返し露光を行う露光装置に関する。露光装置は、光源と、光源と基板との間に配置されるフォトマスクと、光源から出射された光の照度分布を一様にしてフォトマスク上に照射するフライアイレンズとを備える。フライアイレンズは、矩形状の単レンズが行列方向にマトリクス状に配列されたものである。フォトマスク上には、単レンズからの出射光が照射される照射領域が形成され、搬送方向に直交する方向における照射領域の長さが、搬送方向における照射領域の長さの1〜1.5倍であり、フライアイレンズの縦方向の単レンズの数と、横方向の単レンズの数との比率が、1〜1.5倍である
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、小型マスク連続露光において、フォトマスクの画素形成用パターンを透過した光の局所的な照度分布を、基板の搬送方向と、搬送方向に直交する方向とで略同じにすることができるので、フォトマスクの画素形成用パターンの形状を歪ませることなくレジストに転写できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る露光装置の平面図
図2図1に示す露光装置の側面図
図3】フライアイレンズの平面図
図4】従来のフライアイレンズの平面図
図5】従来のフォトマスクの一例を示す平面図
図6】照射領域と照度分布との関係を示すグラフ図
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施形態)
図1は、本実施形態の露光装置の平面図であり、図2は、図1に示す露光装置の側面図である。尚、以下の図においては、基板の搬送方向をY軸正方向とする。
【0017】
本実施形態に係る露光装置1は、基板7を搬送しながら、基板7上の複数の露光領域(右上がりハッチング部)にドット状の着色パターンを繰り返し露光する。露光装置1は、搬送装置2と、フォトマスク3と、光源4と、ビームエキスパンダ5と、フライアイレンズ6とを備える。
【0018】
搬送装置2は、基板7をY軸正方向に一定速度で搬送する。また、基板7には、フォトリソグラフィ法等によって、遮光層として機能するブラックマトリックスが予め形成されている。ブラックマトリクスで区画された画素領域の外側には、周辺ダミーパターン及びアライメントマークが形成されている。更に、基板7の表面には、着色パターンを形成するためのレジストが塗布されている。
【0019】
フォトマスク3は、光源4と基板7との間に配置されている。また、図1に示すように、フォトマスク3は、X軸方向に6枚ずつ、2行に配置されている。一方の行に配置されるフォトマスク3の間を、他の列に配置されるフォトマスク3が補完している。更に、フォトマスク3の各々には、着色パターンを露光するための複数の開口パターン31が開口パターン形成領域32(右上がりハッチングで示す矩形状の領域)に形成されている。尚、図1の各フォトマスク3において、Y軸方向に一つの開口パターン31のみ示しているが、開口パターン31は、Y軸方向に並ぶ複数のドット状の開口により形成される場合もある。
【0020】
光源4には、所定の間隔で点滅するレーザー光(例えば、YAGレーザー)が用いられる。尚、光源4から照射される光の強度はガウシアン分布に従い、光軸中心に近づくほど光の強度が高くなる。光源4から出射された光は、ビームエキスパンダ5で光径が拡大され、フライアイレンズ6(フライアイレンズ6の詳細については後述する)に入射する。フライアイレンズ6で照度分布が均一にされた光は、フォトマスク3に入射する。フォトマスク3に入射した光は、開口パターン形成領域32に設けられた開口パターン31を通過し、基板7上の露光領域41に照射される。
【0021】
次に、図3を用いて、フライアイレンズ6の詳細について説明する。
【0022】
フライアイレンズ6は、略正方形であり、8×12の行列状に並べた複数の単レンズ61からなる。単レンズ61のX軸方向の長さ(以下、「幅」という)は、Y軸方向の長さ(以下、「縦の長さ」という)の1〜1.5倍である。
【0023】
フライアイレンズ6が正方形であれば、単レンズ61の形状を正方形に近づけることで、X軸方向の単レンズ61の数を増やすことができる。これによって、開口パターンを通過した光のX軸方向の照度分布の減衰の仕方は、図6のシミュレーション結果(実線)と比べてよりなだらかになる。
【0024】
尚、図1に示すフォトマスク3の幅が予め決まっており、照射領域40の幅は一定値に維持する必要があるので、単レンズ61の幅が、縦の長さの1倍未満になると、照射領域40の縦の長さが大きくなってしまい、好ましくない。この場合、照射領域40の面積が増大し、露光に要求される光の照射強度が得られない虞がある。逆に、単レンズ61の幅が縦の長さの1.5倍を超えると、X軸方向における単レンズの数が減少するので、図6に示したシミュレーション結果と同様に、フォトマスク3を透過した光の照度分布が顕著な階段状となる。この場合、X軸方向とY軸方向の照度分布との差が大きくなるため、開口パターンのエッジによって規定される着色層の外周縁の位置がずれ、フォトマスク3の開口パターンが歪んで転写されてしまう。
【0025】
また、照射領域40に出射される光を有効に用いるために、フォトマスク3上の開口パターン形成領域32は、照射領域40と略相似形となるように設計される。一例として、基板7上に照射される領域41のX軸方向の長さが215mm、Y軸方向の長さが150mmとなるように、フォトマスク開口パターン形成領域32の大きさが設計される。本実施形態では、フォトマスク上に複数の開口パターン形成領域を設ける代わりに、縦の長さを大きくした開口パターン形成領域を一つ設けることで、開口パターンを透過した局所的な光の照度分布を均一にすることができるという利点を有する。
【0026】
以上に述べた露光装置1を用いて、基板7をY軸正方向に一定速度で搬送しながら、光源4を点滅させ、フォトマスク3の開口パターン31をY軸方向に繰り返し転写し、基板7上にドット状の着色パターンを形成する。上述したように、露光装置1においては、開口パターンを通過して基板上に照射される光のX軸方向の照度分布とY軸方向の照度分布とが略同じである。従って、開口パターン31と相似形となるように着色パターンを形成することができる。
【0027】
尚、本実施形態に係る露光装置では、点滅式光源を用いて、ドット形状の着色パターンを形成しているが、光源の種類は特に限定されない。例えば、常灯式光源を用いて、フォトマスクのストライプ状の開口パターンを、Y軸方向に連続して転写することで、ストライプ状の着色パターンを形成しても良い。
【0028】
また、本実施形態に係る露光装置では、光源、ビームエキスパンダ、及びフライアイレンズを基板に対して垂直な方向に並べて配置しているが、これらの配置は、特に限定されない。例えば、光軸上に設けた複数のミラーやプリズムによって、光を任意の角度で複数回反射させ、当該反射させた光の光軸に対して適切な向きにビームエキスパンダ、フライアイレンズを夫々配置しても良い。
【0029】
また、本実施形態に係る露光装置では、フライアイレンズから出射した光は直接フォトマスク上に照射されるが、特にこのような光学系を備えることに限定されない。例えば、フライアイレンズとフォトマスクとの間に、更にレンズ等を設けた光学系を用いても良い。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、例えば、液晶表示装置に用いられるカラーフィルタ基板を露光するための露光装置に用いることができる。
【符号の説明】
【0031】
1 露光装置
2 搬送装置
3 フォトマスク
31 開口パターン
32 開口パターン形成領域
4 光源
40 照射領域
41 露光領域
5 ビームエキスパンダ
6 フライアイレンズ
61 単レンズ
7 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6