特許第5709504号(P5709504)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5709504
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】炊飯器
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20150409BHJP
【FI】
   A47J27/00 103P
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-279259(P2010-279259)
(22)【出願日】2010年12月15日
(65)【公開番号】特開2012-125394(P2012-125394A)
(43)【公開日】2012年7月5日
【審査請求日】2013年7月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176866
【氏名又は名称】三菱電機ホーム機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085198
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 久夫
(74)【代理人】
【識別番号】100098604
【弁理士】
【氏名又は名称】安島 清
(74)【代理人】
【識別番号】100087620
【弁理士】
【氏名又は名称】高梨 範夫
(74)【代理人】
【識別番号】100125494
【弁理士】
【氏名又は名称】山東 元希
(74)【代理人】
【識別番号】100141324
【弁理士】
【氏名又は名称】小河 卓
(74)【代理人】
【識別番号】100153936
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 健誠
(74)【代理人】
【識別番号】100160831
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 元
(74)【代理人】
【識別番号】100166084
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 堅太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166350
【弁理士】
【氏名又は名称】小銭 幸恵
(72)【発明者】
【氏名】小暮 栄治
【審査官】 宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−128854(JP,A)
【文献】 実開昭62−002910(JP,U)
【文献】 特開平10−099194(JP,A)
【文献】 特開2008−000983(JP,A)
【文献】 特開平11−197015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00
F24C 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を内部に保持する内釜を収納するための収納部が形成された本体と、該収納部の上方を開閉する蓋体を有し、
前記蓋体は、前部に前方へ突出する係合爪が形成され、前記本体の後部に常に前記収納部の上方を開放する方向へ付勢する力が作用した状態で回動自在に取り付けられ、
前記本体には、前記蓋体が閉じられた状態において、前記係合爪を係止して前記蓋体を前記本体に閉じた状態に保持する係止ボタンが設けられ、
該係止ボタンは、前記蓋体が前記本体に閉じられた状態において外部から見える部位には塗装が施され、前記蓋体の開閉時において他の部位と接する部位は素地が露出し
前記本体には前記係止ボタンを取り付ける凹部が形成され、該凹部の内部には軸受部が形成され、前記係止ボタンの側面には前記軸受部に軸支される軸が一体に形成されており、前記係止ボタンの素地が露出した部位は、前記軸であり、
前記軸受部及び前記軸は、樹脂により形成されたことを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
被加熱物を内部に保持する内釜を収納するための収納部が形成された本体と、該収納部の上方を開閉する蓋体を有し、
前記蓋体は、前部に前方へ突出する係合爪が形成され、前記本体の後部に常に前記収納部の上方を開放する方向へ付勢する力が作用した状態で回動自在に取り付けられ、
前記本体には、前記蓋体が閉じられた状態において、前記係合爪を係止して前記蓋体を前記本体に閉じた状態に保持する係止ボタンが設けられ、
該係止ボタンは、前記蓋体が前記本体に閉じられた状態において外部から見える部位には塗装が施され、前記蓋体の開閉時において他の部位と接する部位は素地が露出し
前記係止ボタンは、上方を向き上面を形成する押圧部と、後方を向く後面と、該後面に開口する係止凹部と、前記押圧部と前記後面が交わる角部が一体に形成されており、後方に付勢された状態で前後に回動可能に前記本体に設けられ、
前記蓋体が前記本体に閉じられる過程において、前記係合爪が前記角部及び前記後面を押圧して前記係止ボタンを前方に動作させた後、前記係止凹部に入り込むことで前記蓋体が前記本体に閉じた状態で保持可能に構成され、
前記係止ボタンの素地が露出した部位は、前記後面及び/又は前記角部であり、
前記係止ボタン及び前記係合爪は、樹脂により形成されたことを特徴とする炊飯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体を開閉する蓋体を係止する係止ボタンを有する炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被加熱物を入れる内釜を装着する開口が形成された本体と、この開口を開閉自在となるように本体に設けられた蓋体を有する炊飯器がある。このような炊飯器の蓋体は、本体に軸支されており、本体と蓋体との間にネジリバネなどを介在させることで、蓋体が本体を閉鎖した状態を含め、常に開放方向に付勢される力が作用した状態となっている。
このような蓋体は、蓋体に設けられた係合爪が、蓋体を開放するためのボタンを兼ねる蓋開閉レバー(係止ボタン)で下方に係合保持されることにより本体の開口を閉鎖した状態となる。
そして、このような蓋体と蓋開閉レバーは、蓋開閉レバーを押圧することで本体前方に回動させることで、蓋体の係合爪と蓋開閉レバーの係合が解除される。これにより蓋体は、ネジリバネの弾性力により、軸支位置を中心に本体後方に向かって開放される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−337505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような炊飯器の本体に設けられた蓋体開閉レバーは、蓋体に設けられた係合爪との係合を確実にするため、バネなどにより、蓋体が位置する側に付勢されるように本体に取り付けられている。
この為、蓋体を本体に閉めるとき、蓋体の係合爪が蓋開閉レバーに、上方より接触して蓋開閉レバーを前方に押し出して係合することとなる。
従って、この係合爪と蓋開閉レバーの接触が繰り返されることにより、蓋開閉レバーの表面に意匠性を高めるためにメッキ処理などを施してある場合、メッキが剥離することによる意匠性の低下や、メッキの亀裂に形成される鋭いエッジに使用者が触れることによる怪我の恐れが生じる、という課題があった。
【0005】
そこで本発明は、上記のような課題を解決するためのものであり、蓋を開放するためのボタンである蓋体開閉レバーの意匠性の確保と、使用者が安全に使用することが可能な炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる炊飯器は、被加熱物を内部に保持する内釜を収納するための収納部が形成された本体と、該収納部の上方を開閉する蓋体を有し、前記蓋体は、前部に前方へ突出する係合爪が形成され、前記本体の後部に常に前記収納部の上方を開放する方向へ付勢する力が作用した状態で回動自在に取り付けられ、前記本体には、前記蓋体が閉じられた状態において、前記係合爪を係止して前記蓋体を前記本体に閉じた状態に保持する係止ボタンが設けられ、該係止ボタンは、前記蓋体が前記本体に閉じられた状態において外部から見える部位には塗装が施され、前記蓋体の開閉時において他の部位と接する部位は素地が露出し、前記本体には前記係止ボタンを取り付ける凹部が形成され、該凹部の内部には軸受部が形成され、前記係止ボタンの側面には前記軸受部に軸支される軸が一体に形成されており、前記係止ボタンの素地が露出した部位は、前記軸であり、前記軸受部及び前記軸は、樹脂により形成することにより課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
以上のように各部を構成した炊飯器であれば、係止ボタンの外部から見える部位の意匠性を確保すると共に、蓋体を開閉する際に接触(摺接)する部位同士は、塗装が施されていないため、塗装が剥がれることによる塗装片の飛散を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態に係る炊飯器の側面図
図2図1における炊飯器の蓋体が開放した状態を示す側面図
図3図1における炊飯器の上面図
図4図3における炊飯器の蓋体が開放した状態を示す上面図
図5図3における炊飯器の蓋体が開放した状態を後方から見た後方斜視図
図6図3のX−X断面図
図7図6における炊飯器の蓋が閉まる直前を示す縦断面図
図8図7の要部(B部)拡大図
図9】係止解除ボタンの上面図
図10】係止解除ボタンの側面図
図11図9のY−Y断面を側方からみた図
図12図11の断面(C部)の拡大図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
図1図7を参照すると、炊飯器Sは、米や水などの被加熱物を内部に保持する内釜30を収納するための凹状の収納部11が形成された本体10と、この収納部11の開口11aの上方を開閉する蓋体20から構成されている。
本体10の前部の上面には、炊飯メニューなどの各種設定入力を行う操作部12が設けられている。この操作部12は、複数の操作キーからなる操作パネル12aや表示手段12bから構成されている。
【0010】
また、本体10の内部には、内釜30を加熱する加熱手段13,14や、操作部12や各種センサーからの入力信号を受けて加熱手段13,14の制御を行う制御部17や、制御部15により制御される音声報知手段(図示せず)が設けられている。
使用者は、表示手段12bの表示内容や音声報知手段からの音声報知を参考に、各種操作キーを操作することで、タイマーセット、メニュー選択、時計セット、炊飯スタート、各種操作の取消、保温等の操作が可能となっている。
【0011】
また、本体10の後部には、ヒネリバネ18aが組み込まれた蓋体受け部18が形成されており、後述する蓋体20が回動自在に軸支されている。このヒネリバネ18aは、蓋体20と本体10との間に介在して位置し、蓋体20に対して、常に開口11aが開放する方向へと付勢する力を作用している。
つまり、蓋体20が後述するように本体10に係止されていない状態では、収納部11に対して内釜30が着脱自在となるように、蓋体20が本体10に対して開放した状態となる。
【0012】
図2図4図5を参照すると、この様な本体10は、側方から見て、本体10の操作部12の操作キーが配置されている部位である前部の上面(第1の上面10a)に対して、蓋体20が本体10に係止されて閉じられている状態で、蓋体20の下面と合わさる面であり開口11aが形成されている本体10の上面(第2の上面10b)は、一段低く構成されている。
つまり炊飯器Sは、蓋体20が本体10に閉じられた状態において、操作部12の操作キーが配置されている前部の上面(第1の上面10a)と蓋体20の上面20dが、連続的に繋がるような外形状が形成されるように構成されている。
【0013】
また、第1の上面10aと第2の上面10bは、略垂直方向に立設する樹脂により形成された壁部10cによってつながれている。そして、第1の上面10aの後端中央の位置には、壁部10cに跨る凹部10dが形成されている。
この凹部10dの左右壁面にはそれぞれ樹脂により軸受部10e(図示せず)が形成され、下部には後述するコイルバネ16を取り付けるバネ取り付け部10fが形成されている。
そして、この凹部10dには、蓋体20を係止及び係止状態の解除するためのボタンである係止ボタン15が配置される。
【0014】
図8図12を参照すると、この係止ボタン15には、上方を向き上面を形成する押圧部15aと、後面15gに開口する係止凹部15bと、両側面15cから外方向に突出する軸15dと、下方向に突出するバネ受け部15eと、前面を形成する前面部15fと、押圧部15aと後面15gが交わる角部15hがそれぞれ形成されている。
押圧部15aは、使用者が蓋体20の係止状態を解除するために係止ボタン15を回動させるために押圧する部位である。係止凹部15bは、後述する蓋体20の形成された係止爪25を受け入れて凹部内部に保持することで、係合する部位である。
【0015】
軸15cは、凹部10d内部に形成された軸受部10eに軸支され、凹部10d内部に係止ボタン15が回転自在に保持されるようにするためのものである。
バネ受け部15eは、バネ取り付け部10fに取り付けられたコイルバネ16を下方向から受ける部位であり、コイルバネ16の開口内部に挿入されることにより、脱落しないように構成されている。
【0016】
尚、バネ取り付け部10fは、軸15cより前側に位置する。これにより、コイルバネ16は、凹部10dに係止ボタン15と共に取り付けられた状態において、自然長より縮めた状態で前方に向けて湾曲して取り付けられている。
つまり、コイルバネ16はバネの元の形状に戻ろうとする復元力で、係止ボタン15を下方から上方へ押圧すると共に、前面部15f下側が凹部10dの壁面に当接して後方へ付勢した状態となっている。
このように係止ボタン15は凹部10dの内部において、係止凹部15bの開口を後方に向け、コイルバネ16に付勢された状態で、押圧部15aに作用する外力により回動自在に軸支されている。
【0017】
また、図4を参照すると、上記のように係止ボタン15が取り付けられた炊飯器Sを上方から見ると、係止ボタン15に力が作用していない状態(通常の状態)において、凹部10dの左右方向に延びる壁部10cのライン(第1の上面10aの後端ライン)と、係止ボタン15の後端が形成するラインは、連続したラインとなっている。
つまり、壁部10cの面と係止ボタン15の後端(後面15g)は、揃った状態となっている。
【0018】
次に、図9図12を参照すると、係止ボタン15の形状を形成する基体は、樹脂により形成されている。そして、この基体の表面に塗装を施すことにより、係止ボタン15の意匠性を向上させている。
ここで、係止ボタン15の基体への塗装について、上面を形成する押圧部15aと前面を形成する前面部15fには塗装を行うが、後面15gと両側面15cと軸15dと角部15hには塗装を行わない。
【0019】
つまり、係止ボタン15が本体10に取り付けられ、蓋体10が本体10に閉じられた状態(蓋体10を係止ボタン15が係止している状態)において、炊飯器Sを外部から見て係止ボタン15の見える部位(他の部位により隠れていない部分)には意匠性を向上させる塗装が施され、外部から見えない部位である後面15gと両側面15cと軸15dと角部15hは、係止ボタンの基体の素地である樹脂が露出した状態となっている。
尚、後述するが、係止ボタン15が本体10に取り付けられ、蓋体20を開閉する際、後面15gと両側面15cと軸15dと角部15hは、他の部位と接触する部分である。
【0020】
塗装の方法であるが、塗装を行わない後面15gと両側面15cと軸15dを完全にマスキング(被う)して、塗料が上記の部位に付着しないようにして行うか、また、塗装を行わない部位にマスキングをせずに、冶具などに固定した係止ボタン15の基体の前面15f又は押圧部15a側から吹き付けによる塗装を行っても良い。
【0021】
基体にマスキングを行わないで塗装を行った場合、塗装を行わない面にも飛散した塗料が付着するが、塗装を行う面と行わない面との間に、基体の面に付着する塗料と塗料が付着しない基体の面との境に、大きな段差が形成されにくい。
つまり、基体の面上に、塗料の厚さによるエッジが立ちにくいので、塗装面と外部との接触で塗装が剥がれにくい。
【0022】
尚、係止ボタン15の表面に施す塗装は、下塗りと中塗りと上塗りの3層からなる。下塗りは、係止ボタン15の素地である樹脂と意匠面の色である中塗りの密着を良くするために塗るものであり、上塗りは塗装面の光沢を出したり、中塗りを保護するためのものである。
また、本実施の形態において係止ボタン15に行う中塗りには、微細なアルミ粉を添加したウレタン系塗料を用いてメッキ調の塗装を行っている。このようなメッキ調の塗装を用いることで、実際に意匠面にメッキ処理を施したかのように、係止ボタン15に高級感を出すことができる。
【0023】
次に、図1図8を参照して蓋体20について説明する。
蓋体20には開口20cが形成されており、この開口には調理中に発生する水蒸気と共に炊飯器Sの外部に噴出する米の成分であるおねばを受入れ、水蒸気とおねばを分離し、水蒸気は炊飯器Sの外部へ排出し、おねばは内釜内部へ戻すカートリッジ21が着脱自在に取り付けられている。
また、蓋体20の下面には、蓋体20が本体10に閉じられた際に内釜の開口を覆う内蓋22と、蓋保温ヒーター23が設けられている。この蓋保温ヒーター23は、内蓋22を保温することにより、内蓋22に生じる結露を防止するためのものである。
【0024】
次に、蓋体20の後部には、本体10の後部に形成された蓋体受け部18に回動自在に蓋体20を取り付ける蓋体取り付け部20bが形成されている。
そして、先に述べたように、蓋体20と本体10の間にヒネリバネ18aを介在させた状態で、取り付け部20bを蓋体受け部18に回動自在に軸支することで、蓋体20が常に開口11aが開放する方向へと付勢した状態で、本体10に対して開閉自在に取り付けられる。
つまり、本体10に形成されたヒネリバネ18aを有する蓋体受け部18と、蓋体20に形成された蓋体取り付け部20bにより、蓋体20を本体10に対して開閉自在にするヒンジが形成されている。
【0025】
次に、蓋体20の前部には、前端面の左右中心から前方へ突出する係合爪25が形成されている。この係合爪25は樹脂により形成されており、係止ボタン15に形成された係止凹部15bの内部入り込むことで係合する部位である。
また、この係合爪25は、蓋体20が本体10に閉じられた状態において、蓋体20の前端面20aに向けて下り傾斜する面である受け部25aと、この受け部25aの先端から下方に行くに従って蓋体20の前端面20aに近づく面で構成されるテーパー部25bを有した形状である。
【0026】
尚、炊飯器Sを上方から見ると、蓋体20の前端面20aのライン形状と本体10の壁部10cの面と係止ボタン15の後面15gが形成するライン形状は、略同一の形状である。
ここで、係合爪25は、蓋体20の前端面から前方へ突出しているので、蓋体20が本体に閉じられている状態において係合爪25は、本体10側である係止ボタン15の係合凹部15bの内方に入り込むことになる。
【0027】
以上のように各部が構成された蓋体20は、次のように本体10に対して閉じられる。
図1図3を参照すると、蓋体20が本体10に閉じられる過程において、まず、蓋体20が本体10の上面に近づくに伴い、係止ボタン15の上方より係合爪25が近づいてくる。
【0028】
そして、係止ボタン15の押圧部15aを形成する上面と後面15gが交わる角部15hに、係合爪25のテーパー部25bが当接する。そして、角部15hにテーパー部25bが当接しながら、テーパー部25bが下方に移動するに従って、テーパー部25bの面に沿って角部15hが前方に押圧される。
これにより、蓋体の凹部に軸支された係止ボタン15は、コイルバネ16の弾性力に抗して、前方に向けて回動(図中矢印A、左回転)し、炊飯器Sを上方から見た場合の壁部10cのラインより前側に係止ボタン15が押圧される。
【0029】
次に、角部15hを越えた係合爪25は、係合爪25の先端25cを係止ボタン15の後面15gに当接しながら下方へ移動する。そして、後面15gを係合爪25が乗り越えることにより、係止ボタン15がコイルバネ16の弾性力により元の位置に戻り、係合爪25が凹部15bの内部に入り込む。
この状態において蓋体20は、ヒンジに設けられたヒネリバネ18aの弾性力により、開放する方向(図中、上方向)に付勢されるので、受け部25aが凹部15bの上面に付勢し、凹部15bの内部に係合爪25が保持される。
これにより、蓋体20は本体10に対して閉じた状態に保持される。
【0030】
次に、上記のように本体10に閉じられた蓋体20は、次のように開放される。
まず、係止ボタン15の押圧部15aを上方より押すことにより、コイルバネ16により本体10後方に向いて付勢されている係止ボタン15を本体10の前方(図中、左回転)に傾くように回動させる。
これにより、受け部25aが凹部15bの内部で上下に重ならなくなるので、蓋体20はヒネリバネ18aの弾性力により上方に回動して本体10から開放される。
【0031】
以上のように炊飯器Sの各部が構成されているので、上記のように蓋体20の開閉を行っても、次のような効果を得ることができる。
係止ボタン15は、上面を形成する押圧部15aと前面を形成する前面部15fには塗装を行い、後面15gと両側面15cと軸15dと角部15hには塗装を行わない。
つまり、係止ボタン15の外部から見える部位は意匠性を向上させる塗装を行い、外部から見えない部位であり、蓋体20を開閉する際に他の部位と接触する部分である後面15gと両側面15cと軸15dと角部15hは、基体の素地である樹脂が露出した状態となっている。
【0032】
この様に構成することにより、係止ボタン15の外部から見える部位の意匠性を確保すると共に、蓋体20を開閉する際に係合爪25と接触する後面15gや角部15hや、係止ボタン15が回動する際に凹部10dに形成された軸受に回転摺動する軸15dや凹部10dの内壁に接触することがある側面15cは、塗装が施されていないため、塗装が剥がれることによる塗装片の飛散を防止することができる。
【0033】
また、塗装面は、他の部材との接触など、何らかの原因で塗装の一部が剥がれると、その剥がれた部位を基点に周囲の塗装が剥がれやすくなることがあるが、本実施の形態の構成であれば、各接触(摺接)部分において、塗装剥がれの基点が形成されない。
これにより、各部位の接触(摺接)部位を基点とした係止ボタンの15の意匠部分へ及ぶ、塗装の剥がれの広がりを防止することができる。
【0034】
また、接触や摺接する係合爪25や後面15gや角部15hや凹部10dに形成された軸受や軸15dは、それぞれ樹脂により形成されているので、塗装が施されていない面同士、つまり、直接素材である樹脂同士が接触するのですべり性がよく、スムーズに接触や摺接を行うことができる。
また、接触など何らかの原因で塗装が施されている意匠面に傷などが付いても、塗装が剥がれるだけなので、メッキのように剥がれた部位が鋭くなりにくく、使用者が接触することによる怪我を防止することができる。
【0035】
また、塗装を行わない部位にマスキングをせずに、冶具などに固定した係止ボタン15の基体の前面15f又は押圧部15a側から吹き付けによる塗装を行った場合、塗装を行わない面にも飛散した塗料が付着するが、塗装を行う面と行わない面との間に、基体の面に付着する塗料と塗料が付着しない基体の面との境に、大きな段差が形成されにくい。
つまり、基体の面上に、塗料の厚さによるエッジが立ちにくいので、塗装面と外部との接触で塗装が剥がれにくい塗装面を構成することができる。
【符号の説明】
【0036】
S 炊飯器、10 本体、11 収納部、12 操作部、13,14 加熱手段、
15 係止ボタン、16 コイルバネ、17 制御部、18 蓋体受け部、
18a ヒネリバネ、20 蓋体、21 カートリッジ、25 係合爪、30 内釜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12