【実施例】
【0014】
図1〜
図8に実施例を示す。
図1〜
図3は実施例の立体編地を示し、この立体編地はサポーターで、その要部は
図1〜
図3での白色の編地の部分で、以下立体編地の要部を単に「立体編地」として説明することがある。立体編地は
図2の右から左への順で、後編地、内層編地、外層編地の3層の編地から成る。内層編地と外層編地は連結糸で連結され、外層編地と内層編地は、編地の丈方向に沿った複数個所で、ここでは一定のピッチで互いに隙間無しに結合され、外層編地と内層編地を隙間無しに結合することを、「目を閉じる」という。なお内層編地は、後編地と外層編地の間に有るため、
図1〜
図3では見えない。連結糸も、内層編地と外層編地の間にあるため、
図1〜
図3では見えない。外層編地は内層編地よりも多くのコース数(丈方向に沿った編目列の数)だけ編成され、その結果、外層編地は丈方向の長さ、即ち編丈が内層編地よりも長くなり、立体編地の外側に膨らんでいる。そして内層編地は表面がフラットで、人体等にフィットする。また後編地は、コース数が内層編地及び外層編地のいずれよりも少なく、コース方向(編幅の方向)に沿った編目数も内層編地及び外層編地よりも少ない。そのため、
図1,
図2のように、立体編地は外層編地が内側となるようにL字状に曲がり、また外層編地が腕の半周よりも広い範囲を覆うように曲がる。なお
図1〜
図3の立体編地で、上下両端の着色された部分は編み始めと編み終わりの部分で、連結糸は無く、編成組織は例えばリブ組織であるが、天竺組織等でも良い。内層編地と外層編地の編成組織は例えば天竺組織であるが、リブ組織等でも良い。
【0015】
内層編地、外層編地、後編地は適宜の強度と伸縮性を備えた糸により編成される。連結糸は適宜のクッション性を備えた糸、例えばマルチフィラメントのナイロン糸から成るウーリーナイロンで編成されるが、モノフィラメントの連結糸でも良く、その場合、より硬い立体編地が編成される。立体編地の糸の材質等は立体編地の用途に応じて定め、立体編地は腕、脚、肘、膝等のサポーターの他に、靴下の足首よりも底の部分、ヘルメット等に利用でき、スポーツ用、医療用を問わない。さらに実施例の立体編地は、柱状の物体、あるいはパイプ等の一面を集中的に保護する保護カバー等にも利用できる。実施例の立体編地は、外層編地と内層編地との間に連結糸のスペースがある凸状部分と、外層編地と内層編地とが隙間無しに密着した凹状部分とから成り、これらが交互に繰り返す。そして凸状部分のクッション性により人体等を保護する弾性を備え、凹状部分により立体編地は人体等の運動に合わせて容易に曲がる。
【0016】
図4は変形例の立体編地(図の左側)と比較例の立体編地(図の右側)とを示し、左右の立体編地の差は外層編地と内層編地の間の連結糸の有無である。左側の立体編地(変形例)ではウーリーナイロンを連結糸として、ウーリーナイロンを内層編地と外層編地の間にタック等で充填し、右側の立体編地(比較例)では連結糸は無い。左右の立体編地はいずれも、一定のピッチで外層の編地と内層編地とが隙間無しに結合されている。比較例の立体編地は連結糸が無いためクッション性に欠け、外層編地と内層編地の2層の編地で腕、脚等を保護する。変形例の立体編地は、内層編地と外層編地の間の連結糸によりクッション性を備え、外力に対して連結糸が圧縮されることで、人体等を保護する。
【0017】
図5は実施例で用いる横編機2を示し、4,6は前後一対の針床で、前後上下合計4枚の針床を備えたものでもよい。8はキャリッジで、針床4,6上を往復し、針床4,6の針を操作して立体編地を編成する。9はラッキングモータで、針床4,6を相対的に
図5の左右方向に横移動させる。また目移しにより、編地を前後の針床4,6間で移動させることができる。なおキャリッジ8に代えて、針床4,6に一群のリニアモータを設け、針をリニアモータで進退させても良い。内層編地と外層編地、及び後編地で、編地の丈方向サイズを異ならせるには、実施例のように編目を形成するコース数を編地間で異ならせる他に、編目のサイズを内層編地と外層編地等の間で異ならせても良い。編目のサイズを内層編地と外層編地等の間で異ならせるには、キャリッジ8の度山カムにより、針床4,6の針の引き込み量を変えると良い。さらに内層編地を熱収縮糸で外層編地と同じコース数で同じ編目サイズにより編成して、編成後に内層編地のみを熱収縮させても良い。
【0018】
なおこの明細書において、編丈(丈方向の立体編地の長さ)は
図5の横編機2で編成する際に、針床4,6の長手方向に直角な方向での立体編地の長さを言う。編幅、あるいはコース方向の編地サイズは、
図5の横編機2で編成する際に、針床4,6に沿った立体編地の幅を言う。コース数は編丈方向に沿った編目列の数を言い、編目サイズが一定の場合、編丈に比例する。
【0019】
図6に、実施例の立体編地10の断面を模式的に示す。12は後編地、14は内層編地、16は外層編地で、立体編地10は後編地12、内層編地14、外層編地16の3層から成り、内層編地14と外層編地16は、例えば一定のピッチで設けられた凹状部分17で互いに密着するように結合されている。連結糸18は凹状部分17,17間の領域に充填されて、編地14,16を連結し、連結糸18で内層編地14と外層編地16を連結した部分が立体編地10の凸状部分となる。
【0020】
立体編地10は、前後上下4枚の針床を備えた横編機の場合、編地12,14,16に各1枚の針床を割り当て、割り当てられた針床で編地12,14,16を編成することにより編成できる。前後2枚の針床の横編機2の場合、例えば
図7のように編成する。後編地12を一方の針床に、内層編地14と外層編地16を他方の針床に割り当て、内層編地14は外層編地16よりも、針床間の領域、即ちトリックギャップ側にシフトした位置に配置する。
図7の上部の配置で、後編地12を編成できる。目移しにより、
図7の上部の配置と下部の配置との間で、内層編地14を移動することができる。
図7の下部の配置で、内層編地14と外層編地16の編成ができ、またタック、ニット等により、連結糸18を編地14,16間に充填できる。タックの場合を
図7に示し、ニットの場合、連結糸18により例えば、< …数目ミス、内層編地14で1目ニット(編目の形成)、数目ミス、外層編地16で1目ニット、… >の編成を行う。
【0021】
外層編地16のコース数を内層編地14のコース数よりも増すには、例えば外層編地16と内層編地14とを筒状に編成するコースと、外層編地16と後編地12とを筒状に編成するコースとを行うと良い。このようにすると
図1〜
図3の立体編地を編成できる。
【0022】
図8に、
図1〜
図3の立体編地の編成方法を示す。図のFBは横編機の前針床を,BBは後針床を示し、▼は外層編地16と内層編地14及び後編地12用の糸を供給する給糸口を、▽は連結糸18の給糸口を示す。●は今回のコースで形成される編目を、○は以前のコースで形成済みの編目を表し、Vはタック目を表す。針の数と編目の数は実際よりも少なく表示してあり、前針床FBの針に外層編地16が係止され、後針床BBの針に内層編地14と後編地12が係止され、内層編地14は編目間の渡り糸が後編地12の渡り糸よりも前針床FB側に位置するように係止されている。後針床BBの針b,d,f,h,…に内層編地14が係止され、針a,c,e,g…に後編地12が係止されている。
【0023】
ステップ1〜ステップ8で、外層編地16はステップ1,4,7で例えば3コース編成され、内層編地14はステップ2,8で例えば2コース編成され、後編地12はステップ5で例えば1コース編成される。このため編丈は外層編地16>内層編地14>後編地12の順となり、凸状部分で外層編地16が外側に膨らむ。ステップ3で内層編地14が前針床FBへ目移しされ、ステップ4で外層編地16が前針床FBで編成されるので、外層編地16の渡り糸が内層編地14の渡り糸を前針床FB側へ固定し、凹状部分17が形成される。ステップ5で後編地12を後針床BBで編成し、この時、内層編地14は前針床FBへ移動しているので、後編地12を編成しても、渡り糸が内層編地14を固定することがない。これに対して、仮にステップ2で、内層編地14ではなく、後編地12を編成すると、後編地12の渡り糸が内層編地14の渡り糸を固定し、後編地12と内層編地14とが互いに結合されてしまう。ステップ6で内層編地14を後針床BBへ移し戻し、ステップ7,ステップ8で、外層編地16と内層編地14を各1コース編成する。
【0024】
ステップ9〜ステップ13では、連結糸18で外層編地16と内層編地14を連結し、数針(編目数としてはその1/2)毎に外層編地16と内層編地14に交互にタックを行い、コース(ステップ)毎にタックする針をずらして行く。ステップ1〜ステップ8で編成するコース数、ステップ9〜ステップ13でタックするコース数は任意で、ステップ1〜ステップ13を繰り返して、
図1〜
図3の立体編地を編成する。
【0025】
実施例では3層の立体編地を説明したが、後編地12の代わりに縫製で伸縮性の有るバンド等を取り付ける場合、あるいは半球状のヘルメットのように後編地12が不要な場合、外層編地16と内層編地14との2層で無縫製の立体編地を編成しても良い。