(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施形態について図を参照しながら説明する。以下では、全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同じ符号を付して、重複する説明は省略する。
【0012】
ここでは、
図1乃至
図9を参照して、本実施形態に係る筐体100について説明する。
図1乃至
図3は、本実施形態に係る筐体100の斜視図であり、
図1は全閉状態、
図2は一部開放状態、
図3は全開状態を示している。
図1乃至
図3に示すように、本実施形態に係る筐体100は、筐体本体10と、開閉カバー30と、固定用カバー50と、ロック機構70と、を備えている。以下、これらの各構成要素について順に説明する。さらにその後で、これらの構成要素による作用について説明する。
【0013】
<筐体本体>
筐体本体10は、開閉カバー30等が取り付けられる部材である。
図4は、本実施形態に係る筐体本体10が取り付けられた産業用車両101の全体図である。
図4に示すように、本実施形態に係る筐体本体10は、産業用車両101の運転席102の側面下方に取り付けられている。本実施形態に係る産業用車両101はホイールローダであるが、例えば各種機器を収納する収納箱を備えたブルドーザ、油圧ショベル等の建設車両や、タンクローリ車や消防車など他の産業用車両や、鉄道車両など種々の車両が含まれる。本実施の形態において、筐体本体10は、後述する開閉カバー30と組み合わさって産業用車両101のバッテリボックスを構成している。このバッテリボックスは、内部にバッテリ(図示せず)を収容するが、それだけでなく外表面には運転席102へ上るにためのステップ103が設けられている。つまり、このバッテリボックスは、産業用車両101のステップ103の裏側に位置し、従来デッドスペースであった部分をバッテリの収容スペースとして有効に利用するものである。
【0014】
図3に示すように、筐体本体10は箱状の形状を有しており、産業用車両101の車両本体に取り付けられる背面部11と、背面部の内表面に対向する正面部12と、正面部12から背面部11をみて右側に位置する右側面部13と、正面部12から背面部11をみて左側に位置する左側面部14と、筐体本体10の下方に位置する底面部15と、筐体本体10の上方に位置する上面部16と、を有している。
【0015】
このうち、正面部12は、背面部11、右側面部13、及び左側面部14よりも高さ寸法が小さく、また、上面部16は、背面部11側に大きく切り欠かれている。つまり、筐体本体10は、正面の一部と上面の一部が開口し、開口部17が形成されている。ここで、筐体本体10の中心からみて正面部12側を前方とする(以下同様)。そうすると、右側面部13の前縁部分、左側面部14の前縁部分、上面部16の前縁部分、及び正面部12の上縁部分が、開口部17の外縁を構成することになる。作業者は、この開口部17を介して内部に収容されたバッテリにアクセスする。
【0016】
また、右側面部13の前縁部分は、上下に分かれて線上の支持部18を構成している。後述するように、開閉カバー30は、この支持部18に押さえつけられた状態で固定される。また、筐体本体10は、正面部12の上縁部分(開口部17の下縁部分)であって、右側面部13近傍に第1接触部材19を有している。第1接触部材19は、断面L字状の形状を有しており(
図7参照)、上面20が平らに形成されている。後述するように、開閉カバー30が閉じられると、開閉カバー30の第2接触部材36(
図7参照)がこの上面20に乗り上がる。また、正面部12の外表面には、ステップ103の最下段の踏み板104が取り付けられている。
【0017】
<開閉カバー>
開閉カバー30は、筐体本体10の開口部17を覆う部材である。
図2に示すように、開閉カバー30は、開口部17の正面側を覆う正面板31と、開口部17の上面側を覆う上面板32とを有している。正面板31は断面L字状であって板状の形状を有している。また、上面板32は平板状の形状を有している。正面板31は、右側面部13側(先端側)であって鉛直方向中央部分の一部が切り欠かれている。さらに、正面板31は、外表面にステップ103の一部である3枚の踏み板104が設けられている。このステップ103は、作業者が産業用車両101の運転席102へ昇り、また運転席102から降りるために使用するものである。そのため、このステップ103に作業者が乗ることで、開閉カバー30には大きな力がかかる。このような理由から、この開閉カバー30を固定する本実施形態に係る筐体100には、高い強度が必要とされる。
【0018】
図5は本実施形態に係る筐体100の概略正面図である。また、
図6は本実施形態に係る筐体100の概略水平断面図である。なお、
図5及び
図6ではステップ103を削除している。
図5及び
図6に示すように、開閉カバー30は、左側面部14側(基端側)が2つの第1支持部材33により回動可能に支持されている。第1支持部材33はいわゆるヒンジであって、軸棒34を挟んで第1支持部材33の一方側が筐体本体10の左側面部14に取り付けられており、他方側が開閉カバー30の正面板31に取り付けられている。これにより、開閉カバー30は第1支持部材33の軸棒34を第1回動軸として回動する。そして、第1支持部材33は、この第1回動軸(軸棒34)が鉛直方向に延びるように配置されている。なお、本実施の形態では、第1支持部材33の第1回動軸(軸棒34)は、鉛直斜めに延びるよう設けられている。
【0019】
また、
図2に示すように、開閉カバー30は、先端付近の上方側及び下方側(開閉カバー30の基端側から先端側をみて右側半分の領域及び左側半分の領域)の2箇所に外方に突出する円盤状の当接部材35を有している。ただし、当接部材35は、半球状や円錐形状など他の形状を有していても良い。本実施形態に係る当接部材35は、金属によって形成されており、高い剛性を有している。ただし、当接部材35は、ゴムや樹脂によって形成されていても良い。後述するように、当接部材35は、固定用カバー50に接する部分であるとともに、固定用カバー50から力がかかる部分である。そのため、上記の2箇所に当接部材35を配置することにより、開閉カバー30の先端部分の広い範囲に力が加わり、開閉カバー30が歪んで先端部分の一部が開放状態になるのを防ぐことができる。
【0020】
また、
図6に示すように、当接部材35の裏側には、筐体本体10の支持部18が位置している。つまり、当接部材35は、筐体本体10の支持部18に対応する位置に配置されている。このように配置されることにより、固定用カバー50から当接部材35に加わる力の方向線上に支持部18が位置することになる。そのため、支持部18は、当接部材35を介して力を受けた開閉カバー30をしっかりと支持することができる。
【0021】
また、
図3に示すように、開閉カバー30は、内表面の下端付近に第2接触部材36を有している。第2接触部材36の下面37は平らに形成されている。ここで、
図7は、前述した筐体本体10の第1接触部材19と開閉カバー30の第2接触部材36との位置関係を示した図である。
図7のうち左側の図は、開閉カバー30がわずかに開いた時の状態を示している。また、右側の図は、開閉カバー30が完全に閉じた時の状態を示している。
図7に示すように、第1接触部材19の上面20が、第2接触部材36の下面37と同一面上、あるいはそれよりもわずかに鉛直方向上方に位置している。そのため、開閉カバー30がわずかに開いた状態(左図)から、完全に閉じた様態(右図)に移行すると、第2接触部材36が第1接触部材19に乗り上げることになる。このように、第2接触部材36が第1接触部材19に乗り上げることで、開閉カバー30は鉛直方向への移動が制限される。その結果、開閉カバー30の鉛直方向への変位を抑えることができる。
【0022】
<固定用カバー>
固定用カバー50は、開閉カバー30の先端付近の表面に重なる部材である。
図3及び
図6に示すように、本実施形態に係る固定用カバー50は板状であって、かつ、断面L字状の形状を有している。固定用カバー50は、右側面部13側(基端側)が2つの第2支持部材51により回動可能に支持されている。第2支持部材51は、いわゆるヒンジであって、開閉カバー30を支持する第1支持部材33と実質的に同じ構成を有している。そして、
図6に示すように、第2支持部材51のうち、軸棒52を挟んで一方側が筐体本体10の右側面部13に取り付けられており、他方側が固定用カバー50に取り付けられている。これにより、固定用カバー50は第2支持部材51の軸棒52を第2回動軸として回転する。さらに、
図3に示すように、第2支持部材51は、この第2回動軸(軸棒52)が鉛直方向よりもわずかに後方側(筐体本体10の背面部11側)に傾いて延びるように、配置されている。
【0023】
図5に示すように、固定用カバー50には、中央付近に窓部53が形成されている。そして、固定用カバー50の窓部53の下縁付近には後述するロック機構70の係合部材71が取り付けられている。さらに、開閉カバー30が閉じた状態のとき、窓部53は開閉カバー30の切り欠かれた部分に対応する位置に位置している。このように配置されているのは、後述するように、ロック機構70の一部が、固定用カバー50の窓部53と開閉カバー30の切り欠かれた部分を貫通できるようにするためである。そして、
図6の黒丸で示すように、固定用カバー50は、ロック機構70から力が加えられる部分である付勢部54を有している。この付勢部54は、係合部材71が取り付けられている固定用カバー50の中央付近に位置する。また、固定用カバー50は、同じく
図6の黒丸で示すように、開閉カバー30に接触する部分である接触部55を有している。本実施形態では、固定用カバー50は開閉カバー30と当接部材35で接触するから、この当接部材35と接触する部分の2箇所が接触部55となる。
【0024】
<ロック機構>
ロック機構70は、固定用カバー50と開閉カバー30と筐体本体10とをロックする機構である。本実施形態に係るロック機構70は、固定用カバー50に設けられた係合部材71と、筐体本体10に設けられた被係合部材72とから主に構成されている。
【0025】
係合部材71は、上述したように、固定用カバー50に形成された窓部53の下縁付近に取り付けられている。また、
図2に示すように、係合部材71は、レバー73と係合リング74によって主に構成されている。
図8は、ロック機構70の概略側面図である。
図8において紙面に直交する方向が水平方向である。
図8に示すように、レバー73は、固定用カバー50に固定され水平方向に延びる支軸部材75を回動軸として、回動できるように構成されている。また、係合リング74は全体が矩形であるリング状の形状を有している。なお、レバー73には、支軸部材75から離れた位置に保持孔76が形成されている。保持孔76は、水平方向に延びるように形成されている。係合リング74は、この保持孔76に挿入されており、この保持孔76の中心を回動軸として回動できるように構成されている。
【0026】
被係合部材72は、
図3に示すように、筐体本体10の右側面部13の前縁付近に取り付けられている。
図8に示すように、被係合部材72には、後方(紙面右側)に開口する被係合溝77が形成されている。この被係合溝77は、係合部材71の係合リング74を係合できるように構成されている。なお、
図6等に示すように、係合リング74を被係合溝77に係合する際、係合リング74は固定用カバー50の窓部53及び開閉カバー30の切り欠かれた部分(
図5参照)を貫通して、被係合溝77に係合される。
【0027】
ロック機構70は以上のような構成を有しているため、
図8に示すように、係合リング74を被係合溝77に係合させ、その状態で支軸部材75を回動軸としてレバー73を下方(
図8では反時計回り)に回転させれば、係合リング74を介して被係合部材72には前方方向へ引っ張ろうとする力が加わる。反対に、係合部材71が被係合部材72を引込もうする力の反力によって、係合部材71には後方方向への力が加わる。そのため、固定用カバー50には、係合部材71から後方側(開閉カバー30側)へ押そうとする付勢力が加わる。実際には、被係合部材72は筐体本体10に固定されているため動くことはなく、固定用カバー50(及び開閉カバー30)がわずかに筐体本体10側に移動する。このように、本実施形態に係るロック機構70は、反力を利用する構成を採用することで、占有スペースが小さいにもかかわらず、大きな付勢力を生成させている。
【0028】
さらに、ロック機構70は、当接部材35との関係において次のとおり配置されている。すなわち、
図6に示すように、開閉カバー30が閉まった状態において、ロック機構70は、当接部材35よりも第2支持部材51(固定用カバー50の第2回動軸)から遠い位置に配置されている。別の言い方をすると、ロック機構70と固定用カバー50の第2回動軸の間に当接部材35が位置している。そのため、固定用カバー50の第2回動軸から付勢部54までの距離は、固定用カバー50の第2回動軸から接触部55までの距離よりも大きい。なお、ここでいう「距離」とは、付勢力がはたらく方向に対して直交する面上における距離をいう。
【0029】
<筐体の作用>
本実施形態に係る筐体100は、以上のような構成を備えているため、開閉カバー30を固定する際には次のように作用する。
図9は本実施形態に係る付勢部54と接触部55の位置関係を示した模式図である。なお、
図6等に示すように、開閉カバー30及び固定用カバー50はいずれも断面L字状に形成されているが、
図9では、理解を容易にするため、いずれも平板状のように図示している。つまり、
図9は、開閉カバー30及び固定用カバー50が平板状である場合のみに本発明を限定する趣旨ではない。
図9に示すように、第2支持部材51(固定用カバー50の回動軸)から付勢部54までの距離Xは、第2支持部材51から接触部55までの距離Yよりも大きい。そして、力学上、第2支持部材51が支点であり、付勢部54が力点であり、接触部55が作用点であると考えることができる。
【0030】
よって、作業者がレバー73を操作してロック機構70によって付勢部54に力を加えたとき、付勢部54に加えた力よりも大きな力が接触部55に加わる。つまり、ロック機構70によって付勢部54に加えられた力は、接触部55で大きくなり、接触部55を介して開閉カバー30を筐体本体10に強く押し付けることができる。そのため、本実施形態に係る筐体100によれば、1つのレバー73を操作するという容易な固定作業でありながら、開閉カバー30を筐体本体10に強い力で押し当て、しっかりと固定することができる。
【0031】
また、本実施形態に係るロック機構70は、係合部材71と、被係合部材72とが係合し開閉カバー30と固定用カバー50と筐体本体10とがロックされるように構成さているため、占有スペースが小さいにもかかわらず、開閉カバー30と固定用カバー50と筐体本体10とを強固にロックすることができる。また、本実施形態では、ロック機構70は、鉛直方向において、開閉カバー30及び筐体本体10の略中心の位置に設けられており、また、当接部材35は、鉛直方向において、ロック機構70の上方及び下方の2箇所に設けられるため、開閉カバー30の先端部分の広い範囲に力が加わり、開閉カバー30が歪んで先端部分の一部が開放状態になるのを防ぐことができる。
【0032】
さらに、本実施形態では、筐体本体10が、開口部17の下端部に第1接触部材20を有し、また、開閉カバー30が第1接触部材20に接触して、開閉カバー30が筐体本体10の下端部に乗り上げて閉扉される第2接触部材36を有するため、開閉カバー30の鉛直方向への変位を抑えることができる。
【0033】
また、本実施形態に係る筐体本体10は、産業用車両101の運転席102の側面下方に設けられ、機器を収納可能な収納箱であり、開閉カバー30は、その前面に作業者が乗り降りするためのステップ103が取り付けられている。そのため、従来デッドスペースであったステップの裏側の部分を収容スペースとして有効に利用することができる。
【0034】
以上、本発明の実施形態について図を参照して説明したが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。以上では産業用車両101に筐体本体10が取り付けられており、開閉カバー30がその筐体本体10の開口部17を覆うものである場合について説明したが、本発明はこのような場合に限定されない。例えば、開閉カバー30が、産業用車両のエンジンを覆うパネルの開口部を覆うものであっても、また、産業用車両以外に設けられた筐体の開口部を覆うものであっても本発明に含まれる。
【0035】
また、以上では、当接部材35が開閉カバー30に設けられているが、固定用カバー50に設けてもよい。なお、この場合には、固定用カバー50の一部である当接部材35が開閉カバー30に接することになるから、当接部材35が固定用カバー50の接触部55となる。
【0036】
また、以上では、ロック機構70が、係合部材71と被係合部材72によって主に構成されている場合について説明したが、本発明はこのような場合に限られない。ロック機構70が固定用カバー50に対して開閉カバー30へ向かう方向に力を作用させることができる構成であれば、いかなる構成を備えていても本発明に含まれる。
【0037】
また、以上では、固定用カバー50が板状に形成されている場合について説明したが、固定用カバー50の形状は板状である場合に限られない。例えば、固定用カバー50が付勢部54及び接触部55を含む三角枠状の形状を有していても本発明に含まれる。なお、本実施の形態では、レバー73は、固定用カバー50の前面に設けられたが、これに限られず、筐体本体10側に設けられてもよい。
【0038】
また、以上では、開閉カバー30の第1回動軸及び固定用カバー50の第2回動軸がいずれも略鉛直方向に延びる場合について説明したが、本発明はこのような場合に限定されてない。例えば、固定用カバー50の第2回動軸が水平方向に延びるように構成されていてもよい。具体的には、上述した実施形態において、固定用カバー50の第2支持部材を固定用カバー50の上方又は下方に設け、固定用カバー50が上下方向に回動するように構成されていてもよい。また、例えば開閉カバー30の第1回動軸及び固定用カバー50の第2回動軸がいずれも水平方向に延びるように構成されていてもよい。具体的には、上記の実施形態とは異なり、筐体本体10の開口部が上方に開口しており、開閉カバー30がこの開口部を覆うものであって、さらに固定用カバー50がこの開閉カバー30の一部を覆うように構成されていてもよい。