【実施例】
【0018】
図4は、本発明の実施例に係るメモリモジュールシステムの構成を示す図である。
図1、
図2で示した構成と同一のものについては同一参照番号を付し、その説明を省略する。本実施例のソケット100は、長手方向に細長く延在するソケット本体12と、ソケット本体12に取り付けられる複数のコンタクト110とを含んで構成される。ソケット100は、コンタクト110が電気抵抗体の機能を有する点を除き、
図1、
図2に示したソケットと実質的に同様の構成を有している。
【0019】
図5(a)は、信号ライン22に接続される一対のコンタクト110A、110Bを示している。一対のコンタクト110A、コンタクト110Bは、ソケット本体12の溝12Aに挿入されたメモリモジュール30の端部を弾性的に挟持する。メモリモジュール30の片面または両面には、複数の端子が形成され、これらの端子は導電トレースによる信号ラインを介してメモリチップに電気的に接続される。
【0020】
コンタクト110A、110Bは、基部112と、基部112から延在しU字形状に折り曲げられた折り曲げ部114と、折り曲げ部114から延在する接点部116とを含んで構成される。コンタクト110Aと110Bは、銅あるいはベリリウム銅などのバネ性を有する導電性金属をスタンピングすることで加工されるが、コンタクト110Aの基部112は、直線状に延在し、
図1(b)に示すマザーボード20の外側のスルーホールに挿入されて外側コンタクトとして使用され、コンタクト110Bの基部112は、直角にクランク状に折り曲げられ、マザーボード20の内側のスルーホールに挿入されて内側コンタクトとして使用される。また、後述するように、ソケット100がマザーボード20に表面実装される場合には、コンタクト110A、110Bの基部は、表面実装用に加工される。
【0021】
コンタクト110A、110Bの接点部116には、電気抵抗体として機能する抵抗118が付加され、抵抗118は接点部116に電気的に接続されている。抵抗118は、コンタクト110A、110Bの母材と異なる材料で構成され、抵抗118は、
図2(a)、(b)に示したダンピング抵抗24、24Aに置き換わるもの、あるいはダンピング抵抗24、24Aを補完するものである。従って、抵抗118の大きさは、メモリモジュールシステムの信号ラインの特性に応じて決定され、言い換えれば、搬送される信号のノイズやリンギングを抑制または減少させる抵抗値が選択される。なお、ソケット100に取り付けられた複数のコンタクト110は、信号を搬送するために信号ライン22に電気的に接続されるコンタクトの他に、電源Vccやグランドラインに電気的に接続されるコンタクトを含むが、抵抗118は、信号ライン22に接続されるコンタクトに付加される。
【0022】
ソケット本体12の長手方向に沿うように溝12Aが形成され、当該溝12Aの両側に、コンタクト110A、110Bを対とする複数対のコンタクト110が配置される。メモリモジュール30の端部がソケット本体12の溝12A内に差し込まれたとき、各接点部116は、折り曲げ部114の弾性変形により外側に変位し、各接点部116は、抵抗118を介して、メモリモジュール30の片面または両面に形成された端子に接触し電気的接続を得る。
図4に示すように、コンタクト110Aの基部112は、ソケット本体12から下方に突出し、マザーボード20の外側のスルーホール内に挿入され、そこではんだ接続されて信号ライン22に電気的に接続される。コンタクト110Bの基部112は、マザーボード20の内側のスルーホール内に挿入され、そこではんだ接続されて図示しない信号ラインに電気的に接続される。
【0023】
図5(b)ないし(d)は、本実施例のコンタクトの構成例を示す図であり、同図は、
図4のA部の拡大図である。
図5(b)に示すコンタクトは、接点部116に形成された開口部116Aに、導電性セラミックからなる抵抗120の端部を圧入、カシメ、またはインサート成型することで、抵抗120を接点部116に固定している。導電性セラミックは、例えば、ZrO2−NbCであり、抵抗120の表面には、接点用硬質メッキを施すことができる。こうして、接点部116には、抵抗120の突起物が形成され、接点部116とメモリモジュール30の端子38間の電流経路には抵抗120が介在され、この抵抗120をダンピング抵抗として機能させることができる。
【0024】
図5(c)に示す例では、抵抗130は、導体130Aと、電気抵抗材料から構成された電気抵抗膜130Bとを有する。導体130Aは、例えば、ステンレス、アルミニウム、銅などから構成される。接点部116には、好ましくは窪んだ凹部116Bが形成され、凹部116Bの表面には、スパッタリング等により一定の厚さで電気抵抗膜130Bが形成される。導体130Aは、この凹部116Bに嵌合、カシメ、またはインサート成型により固定され、導体130Aは、電気抵抗膜130Bを介して接点部116に電気的に接続される。電気抵抗膜130Bの材質、および厚さを適宜調整することで、ダンピング抵抗に必要な抵抗値を得ることができる。
【0025】
図5(d)に示す例では、抵抗部140は、導電性樹脂から構成される。導電性樹脂は、例えば、アルミニウム、ステンレス、カーボンなどの導電性粒子が混入された樹脂が用いられる。抵抗140は、接点部116の開口部に嵌合、カシメ、インサート成型することで固定され、その表面には、接点用硬質メッキを施すことができる。こうして、接点部116は、突起状の抵抗140を介して端子38に電気的に接続される。
【0026】
次に、本発明の第2の実施例について説明する。
図6Aは、本発明の第2の実施例に係るソケットのコンタクトの構成を示す概略断面図である。第2の実施例では、コンタクト200は、抵抗を積層するものであり、例えば3層構造から構成される。コンタクト200は、銅やステンレス等のバネ性を有する導電性金属から構成されたコンタクト本体202と、コンタクト本体202上にポリイミドフィルムまたはテフロン(登録商標)のような誘電体を積層した電気保護膜204と、電気保護膜204上にニッケルクロム系、鉄クロム系、またはマンガンなどを積層した電気抵抗膜206とを含んで構成される。
【0027】
マザーボード20上には、信号を搬送する信号ライン22と、グランド電位を供給するグランドライン22Aとが導電トレースによって形成され、コンタクト200は、マザーボード20上に表面実装される。コンタクト本体202は、ソケット本体12の下部において湾曲形状に折り曲げられ、そこから水平に延びる端部202Aを有している。電気保護膜204および電気抵抗膜206は、コンタクト本体202の湾曲された部分まで覆い、すなわち、端部202Aの手前で終端している。電気抵抗膜206が被覆されていないコンタクト本体202の端部202Aは、はんだ等によってグランドライン22Aに接続され、コンタクト本体202を覆っている電気抵抗膜206は、湾曲した部分においてはんだ等により信号ライン22に接続される。一方、コンタクト200の接点部において、電気抵抗膜206は、メモリモジュール30の基板に形成された端子38に接触し端子38に電気的に接続される。接点部と端子38間の接圧は、折り曲げ部の弾性変形により提供される。このように、コンタクト200をグランドラインと信号ラインに接続することで、コンタクト200にはストリップラインL(一点鎖線で示す)が形成され、このストリップラインLの範囲でインピーダンスを付加することができる。
【0028】
図6Bは、第2の実施例に係るソケットの他の表面実装の例を説明する図である。この例では、コンタクト210は、上記の実施例と同様に、コンタクト本体202、電気保護膜204、および電気抵抗膜206の積層構造であるが、V字形状の接点部212が下方に存在するU字形状の折り曲げ部214から延在されており、折り曲げ部214から延在する基部216がソケット本体12の側壁を取り囲むようにU字形状に湾曲され、電気保護膜204および電気抵抗膜206は、U字形状の折り曲げ部214の部分で終端し、それより先の基部216ではコンタクト本体202が露出されている。電気抵抗膜206は、折り曲げ部214の下部においてグランドライン22Aにはんだ等により接続され、コンタクト本体202は、基部216の平坦な端部202Aにおいてグランドライン22Aから離間された信号ライン22にはんだ等によって接続される。
【0029】
図6Cは、第2の実施例のソケットがマザーボードのスルーホールを利用して実装される例を説明する図である。マザーボード20の表面には、信号ライン22が形成され、裏面には、導電性ランド22Bが形成され、信号ライン22および導電性ランド22Bにつながるスルーホールが形成される。コンタクト220の基部は、ソケット本体12から下方に延在しスルーホール内に挿入される。電気抵抗膜206は、はんだ等によって信号ライン22および導電性ランド22Bに接続される。本例の場合、コンタクト本体202は、端子38との間で接圧を生じさせるバネ性を有する材料から構成されればよく、必ずしも電気的に導電性の材料である必要はない。
【0030】
図6Dは、
図6Cのスルーホールの実装を改良したものである。コンタクト230は、コンタクト本体202、電気保護膜204および電気抵抗膜206を有し、コンタクト230の基部において、電気保護膜204および電気抵抗膜206は、コンタクト本体202から剥離または離脱される。コンタクト本体202は、マザーボード20のスルーホール内に挿入され、はんだ等によってグランドライン22Aに電気的に接続され、他方、電気保護膜204および電気抵抗膜206はマザーボード20の表面上を延在し、延在した部分は、はんだ232によって信号ライン22に電気的に接続される。こうして、コンタクト230には、ストリップラインL(一点鎖線で示す)が形成され、この範囲Lでインピーダンスを付加することができる。本例の場合、コンタクト本体202は、バネ性を有する導電性材料から構成される。
【0031】
次に、本発明の第3の実施例について説明する。
図7は、本発明の第3の実施例に係るソケットの要部を示す断面図である。第3の実施例では、コンタクト300は、銅または銅合金等のバネ性を有する導電性金属から構成される。コンタクト300は、直線状に延びる基部302と、基部302から延在しU字形状に折り曲げられた折り曲げ部304と、折り曲げ部304から延在するV字形状の接点部306とを有する。基部302は、ソケット本体12から下方に延在し、マザーボード20に形成されたスルーホール内に挿入され、信号ライン22にはんだ等によって電気的に接続される。さらに、基部302は、マザーボード20の底面の導電性ランド22Bにはんだ等によって接続されるようにしてもよい。また、接点部306の両面には、電気抵抗材料からなる電気抵抗膜306Aがコーティングされ、電気抵抗膜306Aは、折り曲げ部304によって与えられた弾性力によりメモリモジュール30の端子38に押し付けられ、端子38に電気的に接続される。電気抵抗膜306Aの材質、膜厚等を調整することで、信号ライン22から端子38に至る経路に直列にダンピング抵抗の機能を付加することができる。なお、電気抵抗膜306Aは、接点部306の片面にのみ形成されるようにしてもよい。
【0032】
次に、本発明の第4の実施例について説明する。
図8Aは、第4の実施例に係るソケットのコンタクトを示す断面図である。本実施例のコンタクト400は、コンタクト本体402と、電気抵抗材料に導電性フィルムなどを用いて構成される電気抵抗部材404とを有する。コンタクト本体402は、上記の実施例と同様に、基部と、基部から延在するU字形状に折り曲げられた折り曲げ部と、折り曲げ部から延在する接点部とを有する。電気抵抗部材から構成される抵抗404の一方の端部は、ソケット本体12の溝12Aに隣接する側壁12Bの孔内に挿入され、片持ち梁上に支持され、抵抗404は、コンタクト本体402の接点部とメモリモジュール30の端子38との間に介在される。抵抗404の材質、膜厚等を調整することで、信号ライン22と端子38との間の電流経路にダンピング抵抗を付加することができる。なお、電気抵抗部材404の形状、大きさ等は、仕様に応じて適宜選択される。
【0033】
図8Bは、第4の実施例の他の例を示す図である。コンタクト420は、第1のコンタクト部分422と、第2のコンタクト部分424と、抵抗426とを有する。第1のコンタクト部分422は、ソケット本体12の開口部12C内に挿入される第1の端部422Aと、ソケット本体12の底面からクランク状に折り曲げられた折り曲げ部と、折り曲げ部から直線状に延在する第2の端部422Bとを有し、第2の端部422Bは、マザーボード20のスルーホール内に挿入され、はんだ等によって信号ライン22および/または導電性ランド22Bに接続される。
【0034】
第2のコンタクト部分424は、ソケット本体12の側面12Dに当接される基部と、基部から延在するU字形状の折り曲げ部と、折り曲げ部から延在する接点部とを有する。
第1のコンタクト部分422の第1の端部422Aには、バネ性を付与するための突起部が形成され、また、第2のコンタクト部分424の基部にも同様にバネ性を付与するための突起部が形成され、これらの両突起部の間に抵抗426が圧入、嵌合され、抵抗426は、第1および第2のコンタクト部分422、424に電気的に接続される。こうして、信号ライン22から、第1のコンタクト部分422、抵抗426、第2のコンタクト部分424、端子38を介してメモリモジュール30のメモリチップまでの電流経路が形成される。なお、抵抗426は、
図8Aに示したような導電性フィルム、導電性セラミックのような材料から構成するようにしてもよいし、抵抗426は、第1および第2のコンタクト部分の両端部にはんだによって接続されるようにしてもよい。本例によれば、ピン毎に抵抗426を容易に変更することができる。
【0035】
図8Cは、第4の実施例の他の構成例を示す図である。コンタクト440は、第1のコンタクト部分442と、第2のコンタクト部分444と、抵抗446とを有する。ソケット本体12の開口部12Cに臨む側面12Dには、導電性フィルム等の電気抵抗材料がメッキ、コーティング、またはスクリーン印刷され、抵抗446が形成される。
【0036】
第1のコンタクト部分442は、バネ性が生じるような第1の端部442Aを含み、第1の端部442Aは、抵抗446に接触される。さらに第1のコンタクト部分442は、ソケット本体12の開口部12Cから下方に向けて延在する延在部と、マザーボード20のスルーホール内に挿入され、信号ライン22および/または導電ランド22Bと接続される第2の端部442Bとを有する。第2のコンタクト部分444は、開口部12C内に位置する基部444Aと、基部444Aから斜め方向に延在する延在部444Bと、延在部444BからU字形状に折り曲げられた折り曲げ部444Cと、折り曲げ部444Cから延在しV字形状に折り曲げられた接点部444Dとを有する。折り曲げ部444Cは、抵抗446と端子38との間に第2のコンタクト部分444が挟持されるように弾性を付与し、これにより、延在部444Bが抵抗446に電気的に接続され、接点部444Dがメモリモジュール30の端子38に電気的に接続される。
【0037】
図8Dは、第4の実施例の他の構成例を示す図である。コンタクト460は、第1のコンタクト部分462と、第2のコンタクト部分464と、抵抗466とを有する。第1のコンタクト部分462の第1の端部462Aは、ソケット本体12の孔内に挿入されそこに固定され、第2の端部462Bは、マザーボード20のスルーホール内に挿入され信号ライン22および/または導電ランド22Bと電気的に接続される。
【0038】
第2のコンタクト部分464は、基部464Aと、基部464Aからほぼ直線状に延在する延在部464Bと、延在部464Bから延在しU字形状に折り曲げられた折り曲げ部464Cと、折り曲げ部464Cに接続されたV字形状の接点部464Dとを有する。折り曲げ部464Cは、側面12Dと端子38との間に第2のコンタクト部分464が挟持されるように弾性を付与し、すなわち、接点部464Dが端子38に弾性的に接触し、延在部464Bが側面12Dに弾性的に支持される。
【0039】
第1のコンタクト部分462の第1の端部462Aには、接圧を生じさせるような突起部が形成され、第2のコンタクト部分464の基部464Aには、接圧を生じさせるような突起部が形成され、両突起部は、対向した位置にあり、両突起部の間に、導電セラミックなどの電気抵抗材料からなる抵抗466が弾性的に支持されるように介在される。好ましくは、抵抗466の端部は、ソケット本体12から突出し、抜き差しすることが可能である。抵抗466は、好ましくは、基部464Aと第1の端部462Aとの間に一定の接圧で電気的に接続される。本例によれば、コンタクト460の実装後またはソケットをマザーボード20へ実装後に、抵抗466を着脱することで抵抗466を容易に変更することができる。
【0040】
第4の実施例によれば、コンタクトをメモリモジュールに接触する側と、マザーボードに接続する側に分離し、その間に電気抵抗材料を挿入するようにしたので、接点部側の第1のコンタクト部分には接触力を発生するバネ材料を用いるが、第2のコンタクト部分は、電気抵抗体として接続される材料であればよいので、第1のコンタクト部材と同じ材料でなくてもよい。このように本実施例によれば、コンタクトに所定の電気抵抗を付加することにより、マザーボードまたはサブボード上の電気抵抗体(ダンピング抵抗)を削減することができ、部品点数の減少、マザーボードおよびメモリモジュールシステムの小型化が可能になる。
【0041】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明に係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。