(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来のスプリンクラ消火設備において、スプリンクラヘッドが破損した場合でも水損を起こさぬようにした予作動式スプリンクラ消火設備と呼ばれるものがある。
この予作動式スプリンクラ消火設備は、平常時は予作動式流水検知装置と呼ばれる開放弁の二次側配管を充水せず、加圧手段であるコンプレッサ等から供給される空気等の気体で加圧している。予作動式スプリンクラ設備は、防護区域にスプリンクラヘッドとは別に火災感知器を設けており、この火災感知器が火災発報したときに予作動式流水検知装置を開弁して二次側配管を充水し、その後、スプリンクラヘッドの開栓による配管内の圧力低下で消火ポンプを始動して、スプリンクラヘッドから散水するようにしている。したがって、スプリンクラヘッドや配管が破損しても、火災感知器が作動しない限り原理的に水損を起こさないものとして普及している。
【0003】
しかしながら、点検などで二次側配管を充水後に排水しても、予作動式流水検知装置の二次側である二次側配管から分岐して下方に位置するスプリンクラヘッドへ接続される立ち下がり管や枝管に排水されない残水が滞る場合があり、スプリンクラヘッドが破損した場合にその残水が漏れ出ることがあった。
そこで、予作動式スプリンクラ設備の開放弁の二次側配管を、加圧空気ではなく真空ポンプによって負圧空気とし、スプリンクラヘッド部分まで負圧を維持することによって枝管内等に残水が滞っていようとも漏れ出ることがない、負圧予作動式のスプリンクラ設備が提案されている。(特許文献1参照)
しかしながら、予作動式流水検知装置の二次側配管を負圧としているので、この配管を充水するときに消火ポンプから送出される消火用水が過流量となり、供給される消火用水が配管末端部等に激突してウォーターハンマー(水撃)を生じ、配管等を破損する虞があった。
【0004】
一方、従来、防護区画におけるスプリンクラヘッドへ給水する開放弁の二次側配管(ここでは給水用主管と称する)をループ状に構成して、給水を右回りと左回りの二手に分け、給水用主管から分岐した枝管を介して給水用主管とスプリンクラヘッドとを連通させ、二手に分けた給水を開栓したスプリンクラヘッド直近で合流させて給水量を確保することが行われることがあった。給水用主管をこのようなループ状の配管とすることによって給水用主管の圧力損失を減らすことができるので、給水用主管の管径を小型化することも可能とされている。(特許文献2参照)
しかしながら、現実の配管設置工事にあたっては、建築物の駆体や設備を避けるなどの理由から、給水用主管を均一な高さで設置することが困難な場合があり、神社の鳥居の形のように、U字型に高低差を設けた配管、いわゆる“鳥居配管”が行われることがあった。(特許文献3参照)
【0005】
前記の負圧予作動式スプリンクラ消火設備にループ状の給水用主管を用いた場合には、上記のような鳥居配管が存在すると、鳥居配管におけるU字型配管の上部に空気が溜まることがあり、この部分を通過しようとする消火用水自体の重みによる落差抵抗が生じる問題があり、ループ状給水用主管を二手に分かれて散水するスプリンクラヘッドで合流して給水されるはずの消火用水が、ループ状給水用主管のうち抵抗の小さい片側の経路のみから給水されて十分な給水量を得られない通水障害を起こす虞があった。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1に係るスプリンクラ消火設備のシステム構成図である。 本実施の形態のスプリンクラ消火設備は、平常時に二次側配管12を充水せずに負圧とする負圧監視型乾式予作動式スプリンクラ消火設備(以下、負圧予作動式スプリンクラ設備と称する)であり、スプリンクラヘッド2、平常時は閉止している開放弁としての予作動弁22、一次側配管11、二次側配管12、真空配管14、真空ポンプ24、平常時は開弁している流水遮断弁31、ヘッド作動検出装置46、真空スイッチ41、53、加圧送水装置21等から構成されている。
【0014】
まず、前記負圧予作動式スプリンクラ設備の構成を説明する。
防護区画1には、該区画の消火を行う複数のスプリンクラヘッド2が設けられている。また、防護区画1には、該区画内で発生した火災を感知する火災感知器3が設けられている。この火災感知器3は火災受信機4と電気的に接続されており、火災感知器3の火災発報を受信した火災受信機4は、火災信号を消火システム制御盤5と真空ポンプ制御盤52へと送出する。
【0015】
消火システム制御盤5は、中継器51を介して、予作動弁22を駆動する電動のパイロット弁である遠隔起動弁22b、予作動弁22の開放による消火用水の通水を検知する流水信号用スイッチ22a、開放弁47、真空スイッチ41、ヘッド作動検出装置46及び電動弁36と電気的に接続されている。消火システム制御盤5は、所定の圧力以上で作動する真空スイッチ41、又は単位時間当たりの圧力上昇が所定の値を超えるときに作動するヘッド作動検出装置46の何れかが作動することによって、スプリンクラヘッド2が開栓したかどうかを判断する。また、加圧送水装置21は、図示しない消火ポンプ制御盤と電気的に接続されており、図示しない圧力検出手段が予作動弁22の開放に伴う二次圧の低下を検出することによって始動する。
【0016】
二次側配管12は、防護区画1において第1の分岐点12bでループ状給水用主管12aに接続され、このループ状給水用主管12aには、防護区画1を防護するように配設される複数のスプリンクラヘッド2が各々接続される枝管13bが立ち下がり配管13aを介して接続されている。
二次側配管12の一方の端部は、平常時は閉止しており火災時に電気的に開放される開放弁としての予作動弁22の一方の端部に接続されている。予作動弁22の他方の端部は、一次側配管11の一方の端部に接続されている。また、一次側配管11の他方の端部(基端側)は、加圧送水装置21の吐出口に接続されており、加圧送水装置21と、一次側配管11と、予作動弁22とで、二次側配管12へ消火用水を圧送する給水装置を構成している。
【0017】
一方、防護区画1内の二次側配管12は、ループ状給水用主管12aと、ループ状給水用主管12aへの給水点である第1の分岐点12bの反対側、すなわち第1の分岐点12bから最も遠い位置に第2の分岐点12cを有し、第2の分岐点12cから分岐した配管は、排気手段及び水撃抑制手段としての電動弁36の一端に接続されるとともに、末端試験弁25の一方の端部に接続されている。さらに電動弁36の他端及び末端試験弁25の他端には排水配管16が接続されている。スプリンクラ消火設備の水漏れ試験等によって二次側配管12に充填された水は、末端試験弁25及び予作動弁22に備えた図示しない排水弁を開くことにより、外部に排出される。通常の監視状態においては、末端試験弁25は閉じられた状態となっている。電動弁36は平常時には閉弁しており、平常時には負圧となっている二次側配管12の負圧は保たれる。
【0018】
また、二次側配管12には、真空配管14の一方の端部が接続されており、真空配管14の他方の端部には、真空ポンプ24が接続されている。
この真空配管14には、二次側配管12との接続部側から真空ポンプ24側に向けて、二次側の圧力上昇で閉止する流水遮断弁31、真空スイッチ41、単位時間当たりの圧力上昇が所定の値以上で作動するヘッド作動検出装置46及びオリフィス42が順に設けられている。また、オリフィス42と真空ポンプ24との間の真空配管14には、真空スイッチ53が接続されており、真空配管14の内圧を所定の値以下となるように真空ポンプ制御盤52を介して、真空ポンプ24を制御している。
【0019】
<スプリンクラ消火設備の動作>
本実施の形態に係るスプリンクラ消火設備は、平常時の監視状態において、給水用主管12aを含む二次側配管12は、充水せず、真空ポンプ24を運転することにより大気圧より低い負圧となっている、(真空式の)負圧予作動式スプリンクラ消火設備である。
以下、このスプリンクラ消火設備の動作について説明する。まず、スプリンクラヘッド2の開栓を検出する動作について説明する。続いて、スプリンクラ消火設備の消火動作について説明する。
【0020】
(スプリンクラヘッド作動検出動作)
スプリンクラヘッド2の作動(開栓)を検出する動作について説明する。
上述のように、平常時の監視状態において、ループ状給水用主管12aを含む二次側配管12内及び真空配管14内は負圧空気となっている。これら二次側配管12内及び真空配管14内は、枝管13bと立ち下がり配管13aとスプリンクラヘッド2との接続部等から徐々に空気が流入し、負圧である管内圧力が上がってくる(大気圧に近づいてくる)。負圧である二次側配管12内及び真空配管14内の圧力が所定の圧力以上となったことを真空配管14に接続した真空スイッチ53で検出すると真空ポンプ制御盤52が真空ポンプ24を作動させ、ループ状給水用主管12aを含む二次側配管12内及び真空配管14内の負圧を一定以下の圧力に保っている。
なお、負圧である二次側配管12内の圧力が上昇する場合には、スプリンクラヘッド2の開栓によるものと、配管からの空気流入による場合とがある。ここでは、配管からの空気流入による圧力上昇を真空スイッチ53で検出し、スプリンクラヘッド2の開栓による圧力上昇をヘッド作動検出装置46または真空スイッチ41で検出している。
【0021】
防護区画1で火災が発生し、スプリンクラヘッド2が開栓すると(スプリンクラヘッド2の放水口が開放されると)、開栓したスプリンクラヘッド2aの放水口から枝管13b、立ち下がり配管13aを介して、ループ状給水用主管12aを含む二次側配管12内及び真空配管14内に防護区画1の空気が流入する。これにより、負圧である二次側配管12内及び真空配管14内の圧力が上昇する。
【0022】
そこで、本実施の形態では、負圧である二次側配管12内及び真空配管14内の圧力を真空スイッチ41で検出し、ヘッド作動検出装置46における所定時間当たりの圧力変化量に基づいてスプリンクラヘッド2の開栓を検出している。より具体的には、平常状態において配管の接続部等から空気が流入する場合には、負圧である二次側配管12内及び真空配管14内の圧力上昇速度は小さい。つまり、平常状態における圧力の所定時間当たりの変化量は小さい。一方、スプリンクラヘッド2が開栓したときにおいては、負圧である二次側配管12内及び真空配管14内の圧力上昇速度は、通常の監視状態の場合よりも大きくなる。つまり、火災によってスプリンクラヘッド2が作動(開栓)したときの所定時間当たりの圧力変化量は、平常状態の場合よりも大きくなる。ヘッド作動検出装置46は所定時間当たりの圧力変化量のこの違いによって、スプリンクラヘッド2の開栓を検出している。換言すると、ヘッド作動検出装置46は所定時間当たりの圧力変化量の絶対値が所定の閾値よりも大きくなったときにスプリンクラヘッド2が開栓したと判断し、ヘッド作動信号を、中継器51を介して消火システム制御盤5へ送出している。
【0023】
ここで、スプリンクラヘッド2の作動検出(開栓検出)を所定時間当たりの圧力変化量に基づいてヘッド作動検出装置46で行う理由について説明する。
従来のスプリンクラ消火設備は、負圧である二次側配管12内及び真空配管14内の圧力がある閾値よりも大きくなったとき(ある閾値よりも大気圧に近い値となったとき)、スプリンクラヘッド2が開栓したと判断していた。しかしながら、二次側配管12内及び真空配管14内の体積と比較してスプリンクラヘッド2の放水口は小さく、また二次側配管12内の圧力と防護区画1の圧力差が小さいため、スプリンクラヘッド2から二次側配管12に流入する単位時間あたりの空気量が少ないので、負圧である二次側配管12内及び真空配管14内の圧力上昇には時間がかかってしまう。このため、スプリンクラヘッド2の開栓時に、例えば真空ポンプ24を起動したばかりで負圧である二次側配管12内及び真空配管14内の圧力が低く、現在の圧力と前記ある閾値との圧力差が大きい場合には、前記閾値まで圧力が上昇するのには時間がかかり、スプリンクラヘッド2の作動検出(開栓検出)が遅くなってしまう。
【0024】
一方、本実施の形態の負圧予作動式スプリンクラ消火設備では、負圧である二次側配管12内及び真空配管14内の圧力(真空スイッチ41の検出値)の所定時間当たりの変化量の絶対値が所定の閾値よりも大きくなったときに、スプリンクラヘッド2が開栓したと判断している。このため、スプリンクラヘッド2の開栓時における二次側配管12内及び真空配管14内の圧力にかかわらず、早期にスプリンクラヘッド2の開栓を検出することができる。なお、本実施の形態では、真空ポンプ24の作動中にスプリンクラヘッド2が開栓したとき、二次側配管12の圧力が変化しなくなり、ヘッド作動検出装置46が作動しなくなることを防ぐため、ヘッド作動検出装置46と真空ポンプ24の間の真空配管14にオリフィス42を設けている。本実施の形態では、火災感知器3が火災を感知すると、真空ポンプ24の運転を停止させるか、又は、火災検出時には真空配管14内の圧力が上昇しても真空ポンプ24を起動しないように制御する。このため、必ずしもオリフィス42を設ける必要はない。
【0025】
(消火動作)
続いて、スプリンクラ消火設備の消火動作について説明する。
平常状態においては、一次側配管11の予作動弁22まで水が充填され、ループ状給水用主管12aを含む二次側配管12内及び真空配管14内は充水されず、負圧空気で満たされている状態となっている。
防護区画1で火災が発生して火災感知器3が火災を感知すると、火災感知器3から送出される火災信号を火災受信機4が受信し、火災受信機4は火災警報を発するとともに消火システム制御盤5に火災信号を送出する。また、その後スプリンクラヘッド2が開栓し、負圧である二次側配管12の圧力が上昇すると、ヘッド作動検出装置46はその位置における所定時間当たりの圧力変化量に基づいて、スプリンクラヘッド2の開栓を検出し、中継器51を介して、消火システム制御盤5にスプリンクラヘッド2の作動検出信号を送出する。消火システム制御盤5は、前記火災信号とスプリンクラヘッド2の開栓の両方を検知すると、中継器51を介して遠隔起動弁22bを開弁させることによって予作動弁22を開放して二次側配管12に消火用水を供給(充水)する。これにより、ループ状給水用主管12a、立ち下がり配管13a及び枝管13bを介して開栓したスプリンクラヘッド2aから防護区画1に放水し、防護区画1で発生した火災を消火する。なお、予作動弁22が開放されると、予作動弁22に設けられた流水信号用スイッチ22aは、中継器51を介して消火システム制御盤5に流水信号を発信する。
【0026】
このとき、予作動弁22の開放に伴って一次側配管11の圧力が低下し、図示しない圧力検出手段がこれを検出して図示しない消火ポンプ制御盤へ信号を送出し、これによって前記消火ポンプ制御盤は加圧送水装置21を始動する。加圧送水装置21によって圧送される消火用水は、開弁している予作動弁22を通過し、二次側配管12へ圧送され、開栓しているスプリンクラヘッド2aから散水され、火災を消火する。
また、本実施の形態では、二次側配管12の圧力上昇によって流水遮断弁31が閉止されるように動作する。このため、予作動弁22が開放して二次側配管12に水が供給されても、流水遮断弁31より下流部の真空配管14に水が流入することを防止できる。つまり、真空ポンプ24に水が流入することを防止できる。したがって、真空ポンプ24が水を吸引して、過負荷で停止したり故障を起こしたりすることを防止できる。なお、ここでは予作動弁22の開放と流水遮断弁31の閉止とを機械的に連動させたが、これに限らず、予作動弁22の開放と流水遮断弁31の閉止とを、消火システム制御盤5を介して電気的に連動させてもよい。
【0027】
(排気及び水撃抑制の動作)
ループ状給水用主管12aに、神社の鳥居のようなU字型に高低差を設けた配管“いわゆる鳥居配管”(以下、鳥居配管と称する)が施工された一例を
図11に示す。二次側配管12から圧送されてくる消火用水はループ状給水用主管12aの給水部である第1の分岐点12bで、右回り流路Rと左回り流路Lとに分岐して流れ、開栓したスプリンクラヘッド2aへ向かって流れてゆく。
図11に示されたケースでは、左回り流路Lの経路で流れる消火用水は、開栓したスプリンクラヘッド2aに近いので、すぐにスプリンクラヘッド2aへ到達することができる。一方、右回り流路Rの経路で流れる消火用水は、いわゆる鳥居配管の頭頂部に溜まる空気を押し流して進行するものの、この経路で最も遠い位置で開栓したスプリンクラヘッド2aの手前の鳥居配管に空気が溜まってくる。
【0028】
このような状態になると、鳥居配管の底部から頭頂部へ消火用水を押し上げるだけの圧力を要するが、この部分の落差における消火用水自体の重みによる圧力損失、いわゆる「落差抵抗」を複数の鳥居配管で受ける。このような鳥居配管における落差抵抗によって、右回り流路Rで圧送される消火用水の送水圧力が途中で失われてしまうと、消火用水は右回り流路Rの経路では開栓したスプリンクラヘッド2aへ到達できなくなってしまい、左回り流路Lのみで放水するスプリンクラヘッド2aは規定流量に達しなくなる虞がある。
【0029】
ここで、上記の右回り流路Rの途中で、ループ状給水用主管12a内の空気を排気すると、上記の如く配管内に空気が溜まることが無く、したがって上記落差抵抗を生じることもなく、右回り流路Rで開栓したスプリンクラヘッド2aへ消火用水が到達できるようになり、上記スプリンクラヘッド2aから規定流量で放水が行われ、有効な消火活動を行うことができる。
そこで、本実施の形態では、
図1に示されるように、ループ状給水用主管12aにおいて第1の分岐点12bから最も遠い位置に第2の分岐点12cを設けている。すなわち、第2の分岐点12cは、ループ状給水用主管12aが同一口径の配管で構成されている場合には第1の分岐点12bを起点とする総延長距離の中間点であり、ループ状給水用主管12aを構成する配管に異なる口径の配管が混在している場合には延べ容積(全容積)が第1の分岐点12bとで二等分される位置である。
【0030】
この第2の分岐点12cを介し、平常時は閉弁している電動弁36を放水開始から所定時間(例えば60秒間)開弁し、二次側配管12から圧送されてくる消火用水を排水配管16へ排水すると、配管内の空気も排水とともに排気することができる。前記所定時間が経過した後に電動弁36は閉鎖するように制御されるが、そのときにはループ状給水用主管12aから空気は追い出されている。したがって、ループ状給水用主管12aの前記左回り流路Lと前記右回り流路Rの両方の経路で消火用水が開栓したスプリンクラヘッド2aへ到達するので、規定流量で放水し、有効な消火活動を行うことができる。
以上の説明では、分岐点12cを給水点である第1の分岐点12aから最も遠い位置の1点のみであったが、鳥居配管等の圧損発生点に応じて適宜増設配置すると、なお効果がある。
【0031】
なお、放水開始時に電動弁36を開弁すると、負圧であるループ状給水用主管12aを含む二次側配管12へ、排水配管16から外気が流れこみ、配管内を常圧(大気圧)にする。二次側配管12へ向かって加圧送水装置21から圧送される消火用水は、二次側配管12内が負圧であると、それに吸引されて過流量で送水してしまい、ウォーターハンマーを生じる虞があるが、上記のように二次側配管12内が常圧になると、上記のような過流量となることを防止できるので、ウォーターハンマーを抑制することができる。
ところで、前記のような排気手段及び水撃抑制手段によらず、鳥居配管を考慮せずに開栓したスプリンクラヘッド2aから規定流量で散水させる送水圧力値に、鳥居配管による圧力損失値相当を加えた送水圧力値で、加圧送水装置21から消火用水を圧送することによって、ループ状給水用主管12a内の空気を開栓したスプリンクラヘッド2から強制的に排気させてしまい、右回り流路Rと左回り流路Lの双方の経路から通水する手段も考えられる。そのような手段を用いた場合には、高圧の消火用水によるウォーターハンマー発生の虞が高まるので、特にその対策を要求されることとなる。
【0032】
以上のように、本実施の形態によれば、排気手段及び水撃抑制手段を、排水配管16と、排水配管16と給水用主管12aとの間に介在する電動弁36とによって構成し、排気手段及び水撃抑制手段を兼用した構成にしたことにより、簡単な構成で、ウォーターハンマーを抑制し、ウォーターハンマーによる設備破損を防止することができる。更に、給水用主管12aに神社の鳥居のようにU字型に高低差を設けた配管(いわゆる鳥居配管)が施工されても、ループ状給水用主管12aを二手に分かれて進行する消火用水が開栓したスプリンクラヘッド2aで合流することができるので、規定流量で放水することができる、という効果が得られる。
【0033】
なお、以上の説明は、火災感知器3が火災を感知し、かつ、スプリンクラヘッド2の開栓を検出することによって予作動弁22を開放するように制御するスプリンクラ消火設備に関するものである。しかし、一般的な予作動式スプリンクラ消火設備のように、火災感知器3が火災を感知したときに予作動弁22を開放するように制御するスプリンクラ消火設備においても、スプリンクラヘッドの開栓を待たずに二次側配管12を充水するだけであり、本発明を同様に適用することができる。その場合においても、ウォーターハンマーを抑制し、ループ状給水用主管12aから空気を排出して鳥居配管が存在しても開栓したスプリンクラヘッド2aから規定流量で散水できるという効果を奏することに変わりはない。
【0034】
[実施の形態2]
図2は、本発明の実施の形態2に係るスプリンクラ消火設備のシステム構成図である。実施の形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略する。
まず、本実施の形態の構成について、実施の形態1と異なる部分について説明する。
第2の分岐点12cには、
図1の電動弁36に代えて、平常時は開弁しているエアベント34の一端が接続され、エアベント34の他端は平常時は閉弁している電動弁35の一端に接続され、電動弁35の他端は大気中に開放されている。このエアベント34と電動弁35とが本実施の形態における排気手段及び水撃抑制手段として作用する。電動弁35は、中継器51を介して消火システム制御盤5と電気的に接続されている。
【0035】
ここでエアベント34について、
図4乃至
図7に基づいて説明する。
前記説明の如く、第2の分岐点12cにはエアベント34の入口部34aが接続される。エアベント入口部34aは内部のフロート室34cと連通しており、フロート室34cが充水されない状態では、フロート室34cは、さらに、その上部に設けられた弁口34e、通気路34fを介して、エアベント出口部34bと連通している。そして、出口部34bは電動弁35に接続される。フロート室34c内にはフロート34dが封じ込まれている(
図4参照)。
フロート室34cが充水されないとき、入口部34aと出口部34bとの間は空気が流通できる状態であり、気圧の高い方から気圧の低い方へと流れる(
図5及び
図6参照)。フロート室34cが入口部34aから流入する水で満たされると、フロート34dは、その浮力によって上昇し、弁口34eを閉鎖し、エアベント34は閉鎖される(
図7参照)。
【0036】
<スプリンクラ消火設備の動作>
スプリンクラヘッド2作動検出動作、消火動作、及びループ状給水用主管12aにおける鳥居配管の影響については、実施の形態1と同じなので説明を省略し、排気及び水撃抑制の動作について説明する。
平常時は、電動弁35及び末端試験弁25を閉弁するので、ループ状給水用主管12aを含む二次側配管12と真空配管14の負圧は保たれている。火災が発生して放水を開始するときは電動弁35を開弁するように制御するので、開弁した電動弁35を通った外気は、エアベント34を介してループ状給水用主管12aを含む二次側配管12と真空配管14へ流入する(
図5参照)。この為、ループ状給水用主管12aを含む二次側配管12内は常圧(大気圧)となる。このように放水開始時はエアベント34が真空破壊弁として作用し、二次側配管12を常圧とするので、二次側配管12が負圧であることによって加圧送水装置21から送出される消火用水が過流量となる現象は防止される。これによって、二次側配管12が負圧であることによって発生し得るウォーターハンマー(水撃)を防止することができる。
【0037】
ループ状給水用主管12aを含む二次側配管12内の空気は、未だ消火用水が達せず充水されないで開弁しているエアベント34と開弁している電動弁35とを介して、加圧送水装置21から圧送される消火用水によって押し出されるように排気される(
図6参照)。そして、消火用水がエアベント34に達し、その内部のフロート室34cが充水されるとエアベント34は閉弁し(
図7参照)、消火用水はループ状給水用主管12aを通って開弁しているスプリンクラヘッド2aへ向かい、規定流量で放水することができる。
【0038】
以上のように本実施の形態によれば、本発明の排気手段及び水撃抑制手段を、エアベント34と電動弁35とによって構成し、排気手段及び水撃抑制手段を兼用した構成にしたことにより、簡単な構成で、ウォーターハンマーを抑制し、ウォーターハンマーによる設備破損を防止することができる。更に、給水用主管12aに神社の鳥居のようにU字型に高低差を設けた配管(いわゆる鳥居配管)が施工されても、ループ状給水用主管12aを二手に分かれて進行する消火用水が開栓したスプリンクラヘッド2aで合流することができるので、規定流量で放水することができる、という効果が得られる。
【0039】
[実施の形態3]
図3は、本発明の実施の形態3に係るスプリンクラ消火設備のシステム構成図である。実施の形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略する。
まず、本実施の形態の構成について、実施の形態1と異なる部分について説明する。
第2の分岐点12cには、
図1の電動弁36に代えて、平常時は開弁しているエアベント34の一端が接続され、エアベント34の他端は平常時にはループ状給水用主管12aを含む二次側配管12内の負圧によって閉弁している逆止弁39の一端に接続され、逆止弁39の他端は大気中に開放されている。なお、逆止弁39はループ状給水用主管12aを含む二次側配管12から外部へ流れる方向に設けられる。このエアベント34及び逆止弁39が本実施の形態における排気手段として作用する。
さらに、第2の分岐点12cには、水撃吸収装置32の一端が接続され、水撃吸収装置の他端は逆止弁33の一端に接続され、逆止弁の他端は排水配管16に接続される。なお、逆止弁33は、水撃吸収装置32から排水配管16へ水が流れる方向に設けられる。この水撃吸収装置32及び逆止弁33が本実施の形態における水撃抑制手段として作用する。
【0040】
ここで水撃吸収装置32について、
図8乃至
図10に基づいて説明する。
水撃吸収装置32は、第2の分岐点12cへ接続される入口部32a、及び排水配管16へ接続される出口部32bを備える。入口部32a及び出口部32bはネジ切りされており、配管と接続して使用するようになっているが、接続する配管によってはフランジ形状としてもよい。
水撃吸収装置32は、平常時には開弁しており、弁体32cは連通口32lから離れており、入口部32aと連通している一次室32fは開放されている連通口32lを介して、出口部32bと連通している二次室32gと連通している。弁体32cはピストン軸32iの一方の端部に固定されており、ピストン軸32iは、連通口32l、二次室32gを貫通して、さらに第1室32e及び第2室32dを貫通している。ピストン軸32iにはピストン32hが固定されており、ピストン32hが第1室32eと第2室32dとを区画している。第2室32d内にはピストン32iに固定される弁体32cを開方向へ付勢するようにピストン32iを付勢する弾性体としてのスプリング32kが収納されており、第2室32d及び第1室32eには非圧縮性流体(例えばオイル)が充填される。前記非圧縮性流体は、ピストン32iに設けられた連通流路32jを介し、第2室32dと第1室32eとの間で流通がある(
図8参照)。なお、上記の第2室32d、第1室32e、非圧縮性流体及びピストン32hが本発明のダンパを構成している。
【0041】
水撃吸収装置32の入口部32aから圧送されてくる消火用水が流入すると、水撃吸収装置32の弁体32cは開弁しており、水撃吸収装置32の第2室32d及び第1室32eには非圧縮性流体が充填されていることから弁体32cは急激には移動できないので、消火用水は弁体32cを押圧しながら水撃吸収装置連通口32lを通過して2次室32g、出口部32bへと流れ、逆止弁33を通過して排水配管16へと流れ出す。このように圧送されてくる消火用水は、二次側配管12の末端部で排水されるのでウォーターハンマー(水撃)の発生が抑制される。(
図9参照)
【0042】
水撃吸収装置32の入口部32aには消火用水が連続的に流入してくるので、弁体32cは押圧され続け、水撃吸収装置第2室32dに充填された非圧縮性流体は狭い連通流路32jから水撃吸収装置32の第1室32eへと押し出され、弁体32cは徐々に閉鎖方向へと移動する。そして所定時間(例えば60秒)が経過すると、弁体32cは連通口32lを完全に閉鎖する(
図10参照)。
【0043】
<スプリンクラ消火設備の動作>
スプリンクラヘッド2作動検出動作、消火動作、及び、ループ状給水用主管12aにおける鳥居配管の影響については、実施の形態1と同じなので説明を省略し、排気及び水撃抑制の動作について説明する。
平常時は、ループ状給水用主管12aを含む二次側配管12の負圧により、逆止弁33、39及び末端試験弁25は閉弁しているので、ループ状給水用主管12aを含む二次側配管12と真空配管14の負圧は保たれている。
火災が発生して放水を開始するとき、ループ状給水用主管12aを含む二次側配管12内の空気は、加圧送水装置21から圧送される消火用水によって押し出されてきて、未だ消火用水が達せず充水されないで開弁しているエアベント34を介して、順方向となって開弁する逆止弁39を通って排気される。そして、消火用水がエアベント34に達し、その内部のフロート室34cが充水されるとエアベント34は閉弁し、消火用水はループ状給水用主管12aを通って開栓しているスプリンクラヘッド2aへ向かい、規定流量で放水することができる。
【0044】
また、消火用水が水撃吸収装置32に達すると、既に説明したように消火用水を排水することによってウォーターハンマーの発生を抑制し、所定時間が経過すると水撃吸収装置32は閉弁するので、圧送されてくる消火用水はループ状給水用主管12aを開栓したスプリンクラヘッド2aへ向かい、規定流量で放水することができる。
なお、放水が終わると、水撃吸収装置32への消火用水の流入が停止するので、弁体32cを消火用水が押圧しなくなり、ピストン32hを開弁方向に付勢している弾性体としてのスプリング32kにより、弁体32cは開放される。
【0045】
以上のように本実施の形態によれば、本発明の排気手段をエアベント34と逆止弁39とによって構成し、本発明の水撃抑制手段を水撃吸収装置32と逆止弁33とよって構成したので、簡単な構成で、ウォーターハンマーを抑制し、ウォーターハンマーによる設備破損を防止することができる。更に、給水用主管12aに神社の鳥居のようにU字型に高低差を設けた配管(いわゆる鳥居配管)が施工されても、ループ状給水用主管12aを二手に分かれて進行する消火用水が開栓したスプリンクラヘッド2aで合流することができるので、規定流量で放水することができる、という効果が得られる。