(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5709641
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】タップ切換装置及び柱上変圧器
(51)【国際特許分類】
H01F 29/02 20060101AFI20150409BHJP
H01F 29/04 20060101ALI20150409BHJP
【FI】
H01F29/02 E
H01F29/04 502M
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-105907(P2011-105907)
(22)【出願日】2011年5月11日
(65)【公開番号】特開2012-238683(P2012-238683A)
(43)【公開日】2012年12月6日
【審査請求日】2013年10月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】514105011
【氏名又は名称】株式会社東光高岳
(74)【代理人】
【識別番号】100091281
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】丸山 元樹
(72)【発明者】
【氏名】古谷 伸秀
【審査官】
井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−192939(JP,A)
【文献】
特開2010−093050(JP,A)
【文献】
特開平05−182845(JP,A)
【文献】
特開昭63−098113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 29/02−29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次コイル及び二次コイルを有する変圧コイル部が、本体容器に収納されて変圧器本体を構成する柱上変圧器用のタップ切換装置において、
前記本体容器の開口部に着脱可能に装着される蓋と、
前記蓋に一体的に取り付けられており、前記変圧コイル部の前記二次コイルの電圧に応じて前記一次コイルのタップ上げ動作またはタップ下げ動作を行うタップ駆動部によって駆動される接点を有し、前記接点により前記変圧コイル部の前記一次コイルのタップを切り換える機能を有する切換装置本体と、
前記蓋に一体的に取り付けられており、前記切換装置本体が収納される切換装置容器と、
前記切換装置容器の外部に取り付けられる制御箱内に収納され、前記変圧コイル部の前記二次コイルの電圧を検出して前記タップ駆動部を駆動するための制御信号を生成する信号処理部と、を備えたことを特徴とするタップ切換装置。
【請求項2】
請求項1に記載したタップ切換装置において、
前記信号処理部に接続される通信部を備え、無線通信を用いて外部からの遠隔操作によりタップを切り換えることを特徴とするタップ切換装置。
【請求項3】
請求項1に記載された変圧器本体と、請求項1または請求項2に記載されたタップ切換装置と、を備えたことを特徴とする柱上変圧器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱上変圧器の本体容器に装着される蓋と一体化されたタップ切換装置、及び、このタップ切換装置を備えた柱上変圧器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電力系統に連系される多数の太陽光発電装置や風力発電装置等の分散型電源が、系統電圧の変動を招くことが問題となっている。
その対策として、特許文献1〜3に示すように、系統電圧が変動しても需要家への供給電圧を一定に維持するために、負荷に給電したままで変圧器のタップを切り換えるタップ切換装置(負荷時タップ切換装置)付きの柱上変圧器が提供されている。
【0003】
ここで、特許文献1,2に記載された柱上変圧器は、変圧器本体及びタップ切換装置が収納された容器内に絶縁油を充填し、ハンドルの手動操作によってタップを切り換えるものである。
また、特許文献3に記載された柱上変圧器は、変圧器の二次コイルの電圧に応じてタップ上げ、タップ下げを選択し、対応するソレノイドを駆動して一次コイルのタップを自動的に切り換える構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−275731号公報(段落[0017]〜[0026]、
図1〜
図4等)。
【特許文献2】特開2005−5401号公報(特開平10−275731号公報(段落[0015]〜[0025]、
図1〜
図6等)。
【特許文献3】特開2010−93050号公報(段落[0024]〜[0095]、
図1,
図21,
図23,
図24等)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、柱上変圧器では、一定期間ごとに点検、補修、部品交換を行っており、これらの作業は、点検、補修対象の柱上変圧器が有する機能を修復して柱上に再設置することを目的としている。しかしながら、例えば特許文献1,2等の手動式タップ切換装置を備えた柱上変圧器では、柱上変圧器を点検、補修する際に、より進んだ特許文献3等の自動式タップ切換機能を備えたいという要請がある。
この場合、従来では、柱上変圧器自体を自動式タップ切換装置付きのものに交換せざるを得ない。
【0006】
しかし、変圧器本体が点検、補修や部品交換によって今後も十分に使用可能であるにもかかわらず、柱上変圧器全体を交換することは資源やエネルギーの浪費、コストの増加を招くことになる。
そこで本発明の解決課題は、既存の変圧器本体を再利用しつつ柱上変圧器に自動式タップ切換機能を持たせることができるタップ切換装置、及び、このタップ切換装置を備えた柱上変圧器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に係るタップ切換装置は、一次コイル及び二次コイルを有する変圧コイル部が、本体容器に収納されて変圧器本体を構成する柱上変圧器用のタップ切換装置において、
前記本体容器の開口部に着脱可能に装着される蓋と
、
前記蓋に一体的に取り付けられて
おり、前記変圧コイル部の
前記二次コイルの電圧に応じて前記一次コイルのタップ上げ動作またはタップ下げ動作を行うタップ駆動部によって駆動される接点を有し、前記接点により前記変圧コイル部の前記一次コイルのタップを切り換える機能を有する切換装置本体と
、
前記蓋に一体的に取り付けられており、前記切換装置本体が収納される切換装置容器と、
前記切換装置容器の外部に取り付けられる制御箱内に収納され、前記変圧コイル部の前記二次コイルの電圧を検出して前記タップ駆動部を駆動するための制御信号を生成する信号処理部と、を備えたものである。
【0008】
請求項2に記載したタップ切換装置は、請求項1に記載したタップ切換装置において、
前記
信号処理部に接続される通信部を備え、無線通信を用いて外部からの遠隔操作によりタップを切り換えるものである。
【0009】
請求項3に記載した
柱上変圧器は、請求項
1に記載
された変圧器本体と、請求項1または請求項2に記載されたタップ切換装置と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、変圧器本体の本体容器に装着される蓋及び切換装置本体が一体的に構成されたタップ切換装置により、既存の変圧器本体を再利用しつつ自動式のタップ切換機能を備えた柱上変圧器を容易に製造することができる。
これにより、柱上変圧器全体を交換する場合に比べて資源やエネルギー、コストの大幅な削減が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る柱上変圧器の外観図であり、
図1(a)は平面図、
図1(b)は正面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る柱上変圧器及びタップ切換装置の回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
図1は、この実施形態に係る柱上変圧器を示す外観図であり、
図1(a)は平面図、
図1(b)は正面図である。
【0014】
これらの図において、100は変圧器本体であり、有底円筒状の本体容器101の内部には、コアと一次コイル及び二次コイルからなる変圧コイル部102が絶縁油中に浸漬されている。この変圧コイル部102は、例えば配電系統の6.6[kV]の高電圧を200(210)[V]または100(105)[V]の低電圧に変圧するものである。
本体容器101からは、一次コイルを配電系統に接続するための一次ケーブル103と、二次コイルを需要家側の引込線に接続するための二次ケーブル104とが引き出されている。
【0015】
また、200は蓋一体型のタップ切換装置であり、切換装置容器201に内蔵された切換装置本体202と、切換装置容器201の下端部に固定された蓋203と、後述する制御箱204とを備えている。すなわち、タップ切換装置200は、蓋203、切換装置容器201、切換装置本体202及び制御箱204が一体的に構成されており、これらの全体が独立した一つの部材として形成されている。
【0016】
切換装置本体202は、変圧コイル部102の一次コイルのタップに接続されて巻数を変更するための固定接点や可動接点、可動接点を駆動する可動体、後述する複数のソレノイド、ソレノイド駆動部、限流抵抗、及び、二次コイルの両端電圧を検出するための変換部等からなる。
一方、蓋203は、前記本体容器101の上方開口部に適合した内径を有する有底円筒状の蓋体であり、本体容器101に固定された取付金具301に蓋203側の締結金具302を連結し、締結ボルト303を締め付けることで本体容器101に対し着脱可能に装着される。なお、蓋203は円環状のパッキン(図示せず)を介して本体容器101に装着されている。
【0017】
切換装置容器201の側面には、正面から見てほぼL字形の制御箱204が取り付けられている。この制御箱204は、変圧コイル部102の発熱や日射による温度上昇、絶縁油の影響等を受けにくくするために上記の位置に配置されており、その内部には、後述する信号処理部205の主要部や通信部214等が収納されている。
なお、信号処理部205や通信部214に、上述した温度上昇や絶縁油の影響を受けないような対策が施されている場合には、これらを切換装置容器201の内部に収納してもよい。
【0018】
次に、
図2は、この実施形態に係るタップ切換装置及び柱上変圧器の回路構成図であり、
図1と同じ部材には同一の番号を付してある。
図2において、変圧コイル部102の一次コイル102aに設けられたタップ1〜6は、切換装置本体202の固定接点1〜6(各タップに対応するものに同一の番号を付してある)に接続されている。ここで、一次コイル102aの両端は、前述した一次ケーブル103を介して6.6[kV]の配電系統に接続されている。なお、一次ケーブル103に付した符号(+),(−)は、ある瞬間の系統電圧の極性である。
【0019】
切換装置本体202内の202aは可動体、Rは限流抵抗である。この切換装置本体202の回路構成は本発明の要旨ではないため、詳述を省略するが、後述するソレノイド211,212等からなるタップ駆動部により可動体202a及び可動接点が駆動されて変圧コイル部102のタップを切り換え、コイルの巻数を変更する機能を備えていれば、図示以外の如何なる構成であってもよい。
【0020】
変圧コイル部102の二次コイル102bはV結線されており、二次コイル102bに接続された前記二次ケーブル104から210[V]または105[V]の交流低電圧が出力されるようになっている。なお、Nは中性点を示す。
【0021】
中性点Nと二次コイル102bの一端との間には、変圧器からなる変換部206の一次側が接続され、その二次側には、整流部207、A/D変換部208、中央処理部209が順次接続されている。ここで、変換部206、整流部207、A/D変換部208、中央処理部209は、信号処理部205を構成している。
【0022】
信号処理部205では、二次コイル102bの両端の交流電圧を変換部206により所定のレベルに変換し、整流部207にて直流電圧に変換した後、A/D変換部208によりディジタル信号に変換してCPU等からなる中央処理部209に送り、二次コイル102bの両端電圧から系統電圧の変動を検出する。
中央処理部209は、系統電圧の変動に応じて需要家への供給電圧を一定に保つためのタップ上げ動作、タップ下げ動作の必要性を判断し、その結果に応じてソレノイド駆動部210に制御信号を送る。ソレノイド駆動部210は、上記制御信号に従ってタップ上げ用ソレノイド211またはタップ下げ用ソレノイド212に通電し、切換装置本体202の可動体202aを駆動してタップ上げ動作またはタップ下げ動作を行う。213は、切換装置本体202の接点位置を保持するための固定用ソレノイドである。
ここで、ソレノイド駆動部210及び各ソレノイド211〜213は、請求項におけるタップ駆動部を構成しているが、変圧コイル部102のタップを駆動する手段はソレノイドに限定されないのは言うまでもなく、例えば、ダイレクトドライブ機構やモータによるばね駆動機構などを用いてもよい。また、
図2ではソレノイド駆動部210及び各ソレノイド211〜213が切換装置本体202の外部に表示されているが、これは、ソレノイド駆動部210及び各ソレノイド211〜213と切換装置本体202とを物理的に分離して配置することを意味していない。すなわち、
図1(b)に示した切換装置本体202は、ソレノイド駆動部210及び各ソレノイド211〜213を含むブロックである。
【0023】
また、中央処理部209には通信部214が接続されている。この通信部214は、携帯電話回線等を利用した無線通信により、外部からの遠隔操作にてタップを切換えるためのものである。
前述したように、信号処理部205の主要部と通信部214とは
図1の制御箱204(あるいは切換装置容器201の内部)に収納されると共に、変換部206、ソレノイド駆動部210及び各ソレノイド211〜213は切換装置容器201に内蔵されている。
なお、
図2に示した構成によるタップ切換動作については、前述した特許文献3に詳しく記載されている。
【0024】
以上の説明から明らかなように、本実施形態に係るタップ切換装置200は、本体容器101に装着される蓋203に、切換装置容器201及び切換装置本体202を一体化して構成されている。
このため、蓋203の内径を既存の柱上変圧器の本体容器101の開口部外径に適合させておけば、取付金具301、締結金具302等を用いることにより、蓋203と一体化されたタップ切換装置200を、自動式タップ切換機能を持たないタイプの柱上変圧器の本体容器101に装着して使用することができる。
例えば、本体容器101に変圧コイル部と手動式のタップ切換装置とが内蔵されているタイプの柱上変圧器に対しては、手動式のタップ切換装置を取り外して変圧コイル部のタップを本実施形態のタップ切換装置200に接続し、また、手動式のタップ切換装置をもともと備えていないタイプの柱上変圧器に対しては、変圧コイル部のタップをそのまま本実施形態のタップ切換装置200に接続すればよい。
【0025】
すなわち、本実施形態によれば、標準化された変圧器本体100に対して、その本体容器101に適合する蓋203及び切換装置本体202が一体的に構成されたタップ切換装置200を適用することにより、自動式のタップ切換機能を備えた柱上変圧器を容易に製造することができる。このため、自動式のタップ切換機能を持たない変圧器本体を有効に利用可能であり、柱上変圧器全体を交換する場合に比べて資源やエネルギー、コストの大幅な削減が可能になる。
【符号の説明】
【0026】
100:変圧器本体
101:本体容器
102:変圧コイル部
102a:一次コイル
102b:二次コイル
103:一次ケーブル
104:二次ケーブル
200:タップ切換装置
201:切換装置容器
202:切換装置本体
202a:可動体
203:蓋
204:制御部
205:信号処理部
206:変換部
207:整流部
208:A/D変換部
209:中央処理部
210:ソレノイド駆動部
211:タップ上げソレノイド
212:タップ下げソレノイド
213:固定用ソレノイド
214:通信部
301:取付金具
302:締結金具
303:締結ボルト
R:限流抵抗
N:中性点