【実施例1】
【0014】
以下、本発明の実施例1に係る連続真空蒸着装置について図面に基づき説明する。
本実施例1では、連続真空蒸着装置の一例として、カーボンナノチューブ形成用の熱CVD装置について説明する。
【0015】
本実施例1においては、カーボンナノチューブを形成する基板として、表裏面および両側端部にSiO
2をコーティングしたステンレス製の薄鋼板、すなわちSiO
2コートステンレス鋼板(薄板材の一例であり、例えば箔材の場合は20〜300μm程度の厚さのものが用いられ、ステンレス箔ということもできる。また、板材である場合には、300μm〜数mm程度の厚さのものが用いられる。)を用いるようにしたもので、しかも、このステンレス鋼板としては、所定幅で長いもの、つまり帯状のものが用いられる。したがって、このステンレス鋼板はロールに巻き付けられており、カーボンナノチューブの形成に際しては、このロールから引き出されて連続的にカーボンナノチューブが形成されるとともに、このカーボンナノチューブが形成されたステンレス鋼板は、やはり、ロールに巻き取るようにされている。すなわち、一方の巻出しロールからステンレス鋼板を引き出し、この引き出されたステンレス鋼板の表面にカーボンナノチューブを形成(生成)した後、カーボンナノチューブが形成された面にスペーサおよび保護シートを被せた上で、このステンレス鋼板を他方の巻取りロールに巻き取るようにされている。ここで、
図1に示すように、スペーサSは、上記ステンレス鋼板(以下、基板Kという)と同形状の帯状のものに矩形開口Wが長さ方向で所定間隔おきに形成されたものであり、保護シートHは、上記基板Kと同形状の帯状のものである。このため、基板Kのカーボンナノチューブが形成された面にスペーサSおよび保護シートHを被せることで、スペーサSの矩形開口Wの内部にカーボンナノチューブが位置し(基板KにおけるFの位置である)、保護シートHでカーボンナノチューブの表面が覆われて、カーボンナノチューブが保護される。
【0016】
以下、上述した帯状の基板Kの表面にカーボンナノチューブを形成するための熱CVD装置について、
図2〜
図4に基づき説明する。
上記熱CVD装置には、
図2に示すように、細長い空間部が設けられて成る装置本体1が具備されており、この装置本体1内は、区画壁2により3つの部屋に区画されている。
【0017】
すなわち、この装置本体1内には、その一端側に位置して基板Kが巻き付けられた巻出しロール21が配置された基板供給室3と、上記装置本体1内の他端側に位置してカーボンナノチューブが形成された基板Kを巻き取るための巻取りロール28が配置された基板回収室4と、上記基板供給室3と基板回収室4との間に位置して基板Kにカーボンナノチューブを形成する設備が配置された中間室5とが具備されている。この中間室5内には、巻出しロール21から引き出された基板Kを導き負圧下(1〜1000Pa程度)で当該基板Kにカーボンナノチューブを形成するための真空容器(真空室である)6が配置されている。なお、以下では便宜上、巻出しロール21が配置された側を上流側、巻取りロール28が配置された側を下流側という。
【0018】
上記中間室5の内部における上記真空容器6の上部の空間は、上下流方向に5つの小部屋に区画されている。これら5つの小部屋のうち、上流側から2〜4番目の小部屋は、それぞれ第1加熱室11、第2加熱室12および第3加熱室13である。これら第1加熱室11、第2加熱室12および第3加熱室13の内部には、それぞれ複数(例えば3つ)の電熱ヒータ14と、これら電熱ヒータ14の上方に配置されて当該電熱ヒータ14の熱を下方に反射するゴールドミラー15とが設けられている。また、これら第1加熱室11、第2加熱室12および第3加熱室13の下壁部(真空容器6の上壁部でもある)には、電熱ヒータ14の熱を真空容器6の内部に伝達させるための石英窓16がそれぞれ設けられている。上記真空容器6内において上記第1加熱室11、第2加熱室12および第3加熱室13と隣接する小部屋は、詳しくは後述するが、それぞれ予熱室36、前処理室38および反応室45である。
【0019】
上記基板供給室3内には、スペーサSが巻き付けられたスペーサ用ロール22が巻出しロール21の下方に配置され、保護シートHが巻き付けられた保護シート用ロール23がスペーサ用ロール22の下方に配置されている。これら巻出しロール21、スペーサ用ロール22および保護シート用ロール23の下流側には、これらロール21,22,23から引き出された基板K、スペーサSおよび保護シートHを上からこの順で重ねて圧着する上流側圧着ロール24が配置されている。なお、以下では、基板K、スペーサSおよび保護シートHを重ねて圧着したものを、積層シートという。
【0020】
上記真空容器6には、その上流側壁面に形成されて積層シートを基板供給室3から導く上流側開口部と、下流側壁面に形成されて積層シートを基板回収室4に導く下流側開口部とを有する。また、上流側開口部および下流側開口部には、積層シートを通過させるとともに真空容器6の内部を気密にし得るシール装置60がそれぞれ設けられている。
【0021】
上記真空容器6内は、さらに6つの小部屋に区画されている。すなわち、この真空容器6内には、その上流側に位置して積層シートを基板KとスペーサSおよび保護シートHとに分離する分離室31と、この分離室31の上部に位置して積層シートから分離された基板Kを予熱する予熱室36と、上記分離室31および予熱室36の下流側に位置して予熱された基板Kに鉄触媒(
図1に示す)Fを印刷する前処理室38と、この前処理室38の下流側に位置して第1真空ポンプ43により真空容器6の内部を負圧にし得る吸引室41と、この吸引室41の下流側に位置して基板Kに印刷された鉄触媒上にカーボンナノチューブを形成する反応室45と、この反応室45の下流側に位置して基板KにスペーサSおよび保護シートHを圧着することで当該基板Kに形成されたカーボンナノチューブを保護する保護室51とが具備されている。ここで、上記前処理室38には不活性ガス供給管39が設けられ、上記吸引室41には上記第1真空ポンプ43に接続された第1吸引管42が設けられ、上記反応室45には第2真空ポンプ47に接続された第2吸引管46と反応ガス供給管48とが設けられている。なお、これら6つの小部屋31,36,38,41,45,51は互いに連通している。すなわち、上記真空容器6内の6つの小部屋は、上記吸引室41の内部を第1真空ポンプ43で負圧にすると、または上記反応室45の内部を第2真空ポンプ47で負圧にすると、他の5つの小部屋も(つまり真空容器6の内部全て)負圧になり、同様に、上記前処理室38の内部に上記不活性ガス供給管39からヘリウムガス(He)を供給すると、他の5つの小部屋も(つまり真空容器6の内部全て)ヘリウムガスで満たされる構造である。
【0022】
上記分離室31内には、シール装置60および上流側開口部を通過させた積層シートを上方の基板Kと下方のスペーサSおよび保護シートHとに分離する分離ロール32が当該上流側開口部の下流側に配置され、分離された基板Kを案内する上流側基板案内ロール33が上記分離ロール32の下流側上方に配置され、分離されたスペーサSおよび保護シートHを案内する上流側保護部案内ロール34が上流側基板案内ロール33の下方に配置されている。また、上記予熱室36は、上記第1加熱室11の直下に隣接しており、基板Kを通過させて第1加熱室11からの熱で当該基板Kを加熱(予熱)するものである。さらに、上記前処理室38は、第2加熱室12の直下に隣接しており、基板Kに鉄触媒Fを印刷する触媒印刷器(図示しない)が設けられて、基板Kを通過させて第2加熱室12からの熱で当該基板Kを加熱しながら触媒印刷器で当該基板Kに鉄触媒Fを印刷するものである。また、上記反応室45は、第3加熱室13の直下に隣接しており、基板Kを通過させて第2加熱室12からの熱で当該基板Kを加熱しながら、反応ガス供給管48で供給されたアセチレンガス(C
2H
2)により当該基板Kに印刷された鉄触媒F上にカーボンナノチューブを形成するものである。上記保護室51内には、基板Kを冷却するととともに当該基板Kの張力を制御する調整ロール52が配置され、カーボンナノチューブが形成された基板Kを案内する下流側基板案内ロール53が上記調整ロール52の下流側に配置され、スペーサSおよび保護シートHを案内する下流側保護部案内ロール54が上記下流側基板案内ロール53の下方に配置され、下流側基板案内ロール53からの基板Kと下流側保護部案内ロール54からのスペーサSおよび保護シートHとを圧着する下流側圧着ロール55が下流側基板案内ロール53および下流側保護部案内ロール54の下流側に配置されている。
【0023】
上記基板回収室4内には、下流側開口部およびこれに設けられたシール装置60を通過させた積層シートを案内する製品案内ロール27が当該シール装置60の下流側に配置され、積層シートを回収する巻取りロール28が製品案内ロール27の下流側に配置されている。
【0024】
以下、本発明の要旨であるシール装置60について、
図3および
図4に基づき詳しく説明する。
上記シール装置60は、上記真空容器6の上流側開口部および下流側開口部から、それぞれ基板供給室3内および基板回収室4内に突出するように設けられており、積層シートを通過させるとともに真空容器6の内部を気密にし得るものである。
【0025】
上記シール装置60は、
図3に示すように、上記真空容器6の上流側開口部および下流側開口部の縁からそれぞれ突出させた中空の直方体形状である案内体61と、これら案内体61において上下流方向(積層シートの送り方向)に複数配置されたシール部(磁極体である)63とを備えている。
【0026】
上記案内体61は、直方体の内部に、上下流方向に貫通して形成した空間であって積層シートを通過させ得る基板通過部62を有するものである。この基板通過部62は、上流側開口部または下流側開口部に連通する空間である。また、上記各シール部63は、積層シートをその幅方向および厚さ方向で密封して、この密封した位置の上流側と下流側との気密を確保し得るものである。このため、上記シール装置60は、上記シール部63が案内体61において上下流方向に複数配置されることで、当該シール装置60の上流側と下流側、すなわち真空容器6の内部を確実に気密し得るものである。ここで、上記複数のシール部63は、いずれかのシール部63が必ずスペーサSの矩形開口Wでない部分を常に密封するような間隔で配置されている。言い換えれば、隣り合うシール部63の間隔においてシール部63で密封できない上下流方向の距離が、隣り合う矩形開口Wにおける上流側矩形開口Wの下流側端辺と下流側矩形開口Wの上流側端辺との距離よりも小さくなるように、シール部63同士の間隔が設定される。また、最上流側のシール部63と最下流側のシール部63との間隔は、矩形開口Wの間隔より大きい構成となっている。なお、以下では便宜上、積層シートの幅方向を左右方向という。
【0027】
上記各シール部63は、
図4に示すように、案内体61の左右側にそれぞれ配置されてコイル65が巻き付けられた軸芯部(磁石部の一例である)64と、左右の両軸芯部64の両上端および両下端から案内体61を貫通して基板通過部62に達する上下の貫通ヨーク部67と、基板通過部62において上側の左右の貫通ヨーク部67同士および下側の左右の貫通ヨーク部67同士からそれぞれ連続するとともに積層シートの表裏面に張り出した上下の対面ヨーク部68と、これら上下の対面ヨーク部68に保持される磁性流体69とから構成される。また、上記各コイル65は、直流電源66が接続されており、この直流電源66で直流電流が流されることにより、上記軸芯部64を磁化し得るものである。さらに、上記対面ヨーク部68は、磁化した上記軸芯部64により貫通ヨーク部67とともに磁力を帯び、磁性流体69を保持するものである。すなわち、上記貫通ヨーク部67および対面ヨーク部68が、ヨークとして作用するものである。なお、上下の対面ヨーク部68の隙間が積層シートを通過させる空間となり、上記磁性流体69は、上下の対面ヨーク部68の隙間において積層シートをその幅方向および厚さ方向で囲うように満たされるものである。また、上記磁性流体69には、水または油に強磁性超微粒子(例えば直径10nm程度のマグネタイトや複合フェライトなどである)を界面活性剤で分散させたものが用いられる。
【0028】
上記各シール部63の気密構造としては、
図3および
図4に示すように、基板通過部62の上壁部および下壁部にそれぞれ上の対面ヨーク部68の上端部および下の対面ヨーク部68の下端部が密接するとともに、基板通過部62の側壁部に上下の対面ヨーク部68の側端部が密接しており、これら上下の対面ヨーク部68の隙間において積層シートを囲うように磁性流体69が満たされることで、当該シール部63の上流側と下流側とで気密が確保される。なお、上下の対面ヨーク部68と積層シートの表裏面との間は、カーボンナノチューブの形成に悪影響を与えることなく気密を確保できる大きさが好ましく、具体的には0.5〜2.0mm程度である。
【0029】
以下、上記連続真空蒸着装置の動作について説明する。
予め、真空容器6の内部は、不活性ガス供給管39で供給されたヘリウムガスが満たされ、その後、吸引室41および反応室45から、第1真空ポンプ43および第2真空ポンプ47でヘリウムガスが空気とともに排出されることにより、所定の真空度にされる。なお、基板供給室3および基板回収室4の内部は大気圧であるが、真空容器6の上流側開口部および下流側開口部に設けられたシール装置60により、当該真空容器6の内部は所定の真空度に維持される。
【0030】
基板供給室3では、基板Kが巻取りロール28から引き出されるとともに、スペーサSおよび保護シートHがそれぞれスペーサ用ロール22および保護シート用ロール23から引き出され、これら基板K、スペーサSおよび保護シートHが上流側圧着ロール24で圧着されて積層シートを形成する。そして、この積層シートを送り、シール装置60および上流側開口部に通過させる。
【0031】
一方、シール装置60の各シール部63において、直流電源66でコイル65に電流を流し、軸芯部64を磁化して貫通ヨーク部67とともに上下の対面ヨーク部68に磁力を帯びさせる。磁力を帯びた上下の対面ヨーク部68は、これら上下の対面ヨーク部68の隙間において積層シートを囲うように磁性流体69を保持して、シール装置60(具体的には各シール部63)の上流側と下流側とで気密が確保される。
【0032】
シール装置60および上流側開口部を通過した積層シートは、分離室31の分離ロール32により、基板Kと、スペーサSおよび保護シートHとに分離される。基板Kは上流側基板案内ロール33で案内されて予熱室36に導かれ、この予熱室36の内部で基板Kが加熱(予熱)される。そして、基板Kは、前処理室38で鉄触媒Fが印刷されるとともに、吸引室41を通過して反応室45に導かれる。反応室45では、基板Kに印刷された鉄触媒Fに、反応ガス供給管48で供給されたアセチレンガスを導くことで、カーボンナノチューブが形成される。カーボンナノチューブが形成された基板Kは、保護室51の下流側基板案内ロール53で案内されて下流側圧着ロール55に導かれる。
【0033】
一方で、分離ロール32で分離されたスペーサSおよび保護シートHは、分離室31の上流側保護部案内ロール34で案内されて、予熱室36の下方から前処理室38、吸引室41および反応室45を通過し、保護室51の下流側保護部案内ロール54で案内されて下流側圧着ロール55に導かれる。そして、保護室51の下流側圧着ロール55で、基板Kと、スペーサSおよび保護シートHとが、再び圧着されて積層シートを形成する。当然ながら、保護室51内の積層シートは、その基板Kにカーボンナノチューブが形成されたものである。
【0034】
この積層シートを、下流側開口部およびシール装置60を通過させるとともに、製品案内ロール27で案内して巻取りロール28で巻き取る。この巻取りロール28で巻き取られた積層シートが製品となる。
【0035】
このように、シール装置60による基板Kの密封が、固体ではなく流体の磁性流体69により行われているので、基板Kやカーボンナノチューブが固体に接触することがなく、また、シール装置60で気密が確保されて、基板Kを振動させる気流が発生しないので、基板Kやカーボンナノチューブが傷つくことなく、高品質のカーボンナノチューブを連続的に形成することができる。
【実施例2】
【0036】
上記実施例1に係るカーボンナノチューブ形成用の熱CVD装置は、シール装置60における対面ヨーク部68が、各シール部63で上下に1つずつ配置されたものである。これに対して、本実施例2に係るシール装置では、
図6および
図7に示すように、実施例1での対面ヨーク部68に該当する箇所を左右方向に4つに分割し、これら4つの分割されたそれぞれにおける磁力を均一にし得るように構成したものである。さらに、本実施例2に係るシール装置70は、ヨークに磁性流体69を新たに供給するための磁性流体供給装置91を具備させたものである。なお、これら以外の構成については、上記実施例1と同一であるため、同一の符号を用いて説明を省略する。
【0037】
ところで、本実施例2に係るシール装置70も、実施例1と同様に、それぞれ上流側開口部および下流側開口部に設けられたものであるが、以下では上流側開口部に設けられた方に着目して、
図5〜
図7に基づき説明する。
【0038】
まず、シール部73について説明する。
上記シール部73におけるヨークの磁性流体を保持する部分は、上述したように、実施例1での対面ヨーク部68を左右方向に4つに分割したもの(分割されたそれぞれを分割ヨーク部78,88という)であり、
図6および
図7に示すように、上下のこれら分割ヨーク部78,88は、それぞれ軸芯部74,84から上下の貫通ヨーク部77,87により連続したものである。なお、以下では便宜上、分割ヨーク部78,88のうち、左右側(外側)の2つを外側対面ヨーク部78といい、中央側(内側)の2つを内側対面ヨーク部88という。
【0039】
上記シール部73において、
図7に示すように、上下の外側対面ヨーク部78に磁力を帯びさせる外側用軸芯部74と、これら両外側用軸芯部74から上下の外側対面ヨーク部78に連続する上下の外側用貫通ヨーク部77とは、実施例1での軸芯部64および貫通ヨーク部67と同一の構成である。一方、上下の内側対面ヨーク部88に磁力を帯びさせる内側用軸芯部84は、
図7に示すように、外側用軸芯部74の上流側に配置されたものである。また、これら両内側用軸芯部84から上下の内側対面ヨーク部88に連続する上下の内側用貫通ヨーク部87は、上下の外側対面ヨーク部78の上流側において左右側(外側)から中央側(内側)まで伸びるとともに当該中央側で下流側に屈曲した形状である。すなわち、上下の内側用貫通ヨーク部87は、内側用軸芯部84から上下の内側対面ヨーク部88に連続するとともに、外側用貫通ヨーク部77および外側用軸芯部74と干渉しないように配置されたものである。一方、外側用軸芯部74に巻き付けられたコイル65には、外側用直流電源(磁力調整部の一例である)76が接続され、内側用軸芯部84に巻き付けられたコイル65には、内側用直流電源(磁力調整部の一例である)86が接続されており、各分割ヨーク部78,88の磁力を調整できるように構成されている。
【0040】
次に、磁性流体供給装置91について
図5および
図6に基づき説明する。なお、
図7ではシール部73の構成を見やすくするため、磁性流体供給装置91の図示を省略する。
シール装置70における磁性流体69は、分割ヨーク部78,88の磁力により保持されるが、積層シートがシール装置70を通過するに伴い、各分割ヨーク部78,88に保持された磁性流体69の一部は、積層シートとともに下流側に送られることで、喪失していく。上記磁性流体供給装置91は、この喪失した分の磁性流体69を補充するものである。
図5および
図6に示すように、上記磁性流体供給装置91は、案内体61の上方に位置して各分割ヨーク部78,88に供給する磁性流体69が蓄えられたタンク部92と、このタンク部92から各分割ヨーク部78,88に所望の磁性流体69を供給する複数の供給部93と、上記タンク部92および供給部93による磁性流体69の供給量を調整する制御部(図示せず)とから構成される。
【0041】
上記供給部93は、シール装置70における分割ヨーク部78,88の数だけ設けられている。各供給部93は、上記タンク部92に上端部が接続されて下端部が各分割ヨーク部78,88の上流側まで伸びたノズル94と、このノズル94に設けられてその内部を通過する磁性流体69の流量を調整するバルブ95と、上記ノズル94の下端部に設けられて各分割ヨーク部78,88と積層シートとの隙間に磁性流体69を供給する供給口96とが具備されている。また、上記制御部は、上記バルブ95の開度を調整することで、(1)常に磁性流体69を供給する、(2)一定時間間隔で定量の磁性流体69を供給する、(3)真空計等で真空容器6内の真空度を計測し当該真空度が下がると磁性流体69を供給する、ように構成されたものである。また、上記(1)については、各分割ヨーク部78,88に保持された磁性流体69の表面位置をセンサー等で検出し、その表面位置が常に一定となるように磁性流体69を供給するものであってもよい。
【0042】
以下、本実施例2に係るカーボンナノチューブ形成用の熱CVD装置の動作における上記実施例1との相違点、すなわち、本実施例2に係るシール装置70の動作について説明する。
【0043】
シール装置70の外側用直流電源76および内側用直流電源86で各コイル65に電流を流し、各軸芯部74,84を磁化して各分割ヨーク部78,88に磁力を帯びさせる。ここで、外側用直流電源76および内側用直流電源86の電圧が同一だと、内側用貫通ヨーク部87は外側用貫通ヨーク部77より長いので、内側対面ヨーク部88では外側対面ヨーク部78よりも磁力が弱くなる。このため、内側用軸芯部84に接続された内側用直流電源86の電圧を外側用直流電源76の電圧よりも若干高くすることで、外側対面ヨーク部78と内側対面ヨーク部88との磁力を均一にする。
【0044】
ここで、積層シートがシール装置70を通過するに伴い、各分割ヨーク部78,88に保持された磁性流体69の一部は、積層シートとともに案内体61の外部(下流側)に送られることで喪失する。この喪失した分を補充するため、磁性流体供給装置91により適量の磁性流体69が各分割ヨーク部78,88に供給される。この磁性流体69の供給量は、制御部により調整される。
【0045】
このように、本実施例2に係るカーボンナノチューブ形成用の熱CVD装置は、外側対面ヨーク部78および内側対面ヨーク部88で磁力を均一にすることで、保持される磁性流体69の量も均一となり、また、磁性流体69の喪失分を磁性流体供給装置91で補充するため、確実に気密が確保されることで、一層高品質のカーボンナノチューブを形成することができる。
【実施例4】
【0049】
上記実施例1に係るカーボンナノチューブ形成用の熱CVD装置では、磁石部として電磁石を用いたもの、すなわち、コイル65が巻き付けられた軸芯部64を有するものである。これに対して、本実施例4に係るシール部では、磁石部として永久磁石を用いたものである。なお、これ以外の構成については、上記実施例1と同一であるため、同一の符号を用いて説明を省略する。
【0050】
本実施例4に係るシール部は、実施例1でのコイル65および直流電源66を用いる代わりに、
図10に示すように、軸芯部64の一部に永久磁石105を用いて、磁石部を構成したものである。これにより、電力を消費せずにシール部103を機能させることができる。
【0051】
ところで、本実施例4では、上記実施例1での磁石部に永久磁石105を用いたものについて説明したが、これに限定されるものではなく、上記実施例2または3の磁石部に永久磁石を用いたものであってもよい。
【0052】
また、上記実施例1〜3では、連続真空蒸着装置の一例としてカーボンナノチューブ形成用の熱CVD装置について説明したが、これに限定されるものではなく、上述したシール装置60,70が設けられた連続真空蒸着装置であればよい。
【0053】
また、上記実施例1〜3では、コイル65に接続された電源として直流電源66,76,86について説明したが、交流電源を用いてもよい。
さらに、上記実施例2ではシール装置70が磁性流体供給装置91を備えたものとして説明したが、実施例1,3および4においても、シール装置が磁性流体供給装置91を備えたものであってもよい。
【0054】
また、上記実施例2および3では、各シール部73における分割ヨーク部78,88同士の間について説明しなかったが、隣り合う分割ヨーク部78,88の磁力の影響を受けないためにも、これらの間に漏洩磁束防止用の遮蔽体または空間を設けてもよい。この遮蔽体は、テフロン(登録商標)、プラスチック膜または塗装膜などである。