特許第5709674号(P5709674)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5709674
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】折り曲げ可能な透明導電層
(51)【国際特許分類】
   H01B 5/14 20060101AFI20150409BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20150409BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20150409BHJP
   B32B 3/30 20060101ALI20150409BHJP
【FI】
   H01B5/14 A
   G09F9/00 366A
   G06F3/041 490
   B32B3/30
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-147430(P2011-147430)
(22)【出願日】2011年7月1日
(65)【公開番号】特開2013-16314(P2013-16314A)
(43)【公開日】2013年1月24日
【審査請求日】2014年4月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231361
【氏名又は名称】日本写真印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】徳野 勝己
【審査官】 太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−029476(JP,A)
【文献】 特開2010−147235(JP,A)
【文献】 特開2010−109231(JP,A)
【文献】 特開2006−127929(JP,A)
【文献】 特開2006−035773(JP,A)
【文献】 特開2006−171336(JP,A)
【文献】 特開2001−113635(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/104141(WO,A1)
【文献】 特開2007−086771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 5/00 − 5/16
B32B 37/00
B32B 1/00 − 43/00
G09F 9/00 − 9/46
G06F 3/03 − 3/047
H01L 27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性材料によって構成される導電膜と、
前記導電膜の表面及び裏面に設けられた樹脂層と、
を含み、
前記導電膜の表面及び裏面の前記樹脂層は、樹脂の厚さが厚い部分と薄い部分とからなる段差部分を有し、前記樹脂の薄い部分に沿って折り曲げ可能であって、
前記導電膜の裏面の樹脂の厚さが薄い部分は、前記導電膜の表面の樹脂の厚さが薄い折り曲げ部と対応する、透明導電膜。
【請求項2】
前記導電膜の表面及び裏面の前記樹脂層のそれぞれの前記段差部分は、前記樹脂を所定厚さで設けた部分と、前記樹脂を設けられていない部分とで構成される、請求項1に記載の透明導電膜。
【請求項3】
前記導電膜の表面及び裏面の前記樹脂層のそれぞれの前記段差部分は、前記樹脂の厚さが厚い部分から薄い部分に変化するテーパ部分を含む、請求項1に記載の透明導電膜。
【請求項4】
前記導電性材料は、導電性ナノワイヤ材料、カーボンナノワイヤ、導電性メッシュ材料、及び、導電性高分子材料からなる群から選択される、請求項1からのいずれか一項に記載の透明導電膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定箇所で折り曲げ可能な透明導電層に関する。具体的には、タッチパネル、液晶、太陽電池、電子ペーパ等に利用可能な、所定箇所で折り曲げ可能な透明導電層に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、タッチパネルや液晶等にはITO(インジウムスズ酸化物)からなる透明導電膜が使用されている。このITOからなる透明導電膜が透明性や導電性としては良好な特性を有するものの、折り曲げ等の機械的負荷には弱く、クラックが入ったり、電気抵抗が大幅に大きくなるなどの欠点がある。
【0003】
タッチパネルには、画面の周辺部に透明導電膜からの引き回し部分が存在するため、実際には画面の全てをタッチパネルとして使用できなかった。この引き回し部分をタッチパネルの側面側に設けようとすると、タッチパネルを側面で曲げるか、又は、折り曲げる必要がある。しかし、上述のように、ITOからなる透明導電膜は折り曲げ等の機械的負荷に弱く、曲げたり、折り曲げる等の加工ができなかった。
【0004】
なお、絶縁基板上に透明なフィルムを設けて構成されるタッチパネルにおいて、絶縁基板をとフィルムとをそれぞれ丸みをもたせて折り曲げるようにすることが提案されている(例えば、引用文献1参照。)。また、タッチパネルを表面と側面とを備えた立体形状に形成し、側面に電極と該電極を外部への取り出し部に接続するリード回路とを形成した狭額縁対応タッチパネルの提案がある(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−54050号公報
【特許文献2】特開2010−146418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1では、折り曲げ部分を直角状にするのではなくある程度の曲率となるように丸みをもたせている。この場合、タッチパネルを直角状に折り曲げることはできない。また、上記引用文献2では、折り曲げるのではなく、立体形状の基板の側面に電極と該電極を外部への取り出し部に接続するリード回路とを形成している。つまり、引用文献2では、タッチパネルを折り曲げるのではなく、立体形状の基板の側面に電極等を形成できる場合に限られる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、タッチパネル等に利用可能な透明導電膜について、所定箇所で折り曲げ可能な透明導電膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る透明導電膜は、導電性材料によって構成された導電膜と、
前記導電膜の表面に設けられた樹脂層と、
を含み、
前記樹脂層は、樹脂の厚さが厚い部分と薄い部分とからなる段差部分を有し、前記樹脂の薄い部分に沿って折り曲げ可能なことを特徴とする。
【0009】
また、前記段差部分は、前記樹脂を所定厚さで設けた部分と、前記樹脂を設けられていない部分とで構成されていてもよい。
【0010】
さらに、前記段差部分は、前記樹脂の厚さが厚い部分から薄い部分に変化するテーパ部分を含んでもよい。
【0011】
またさらに、前記透明導電膜は、裏面にも樹脂の厚さが厚い部分と薄い部分とからなる段差部分を有し、前記裏面の樹脂の厚さが薄い部分は、前記表面の樹脂の厚さが薄い折り曲げ部と対応する。
【0012】
また、前記導電性材料は、導電性ナノワイヤ材料、カーボンナノワイヤ、導電性メッシュ材料、及び、導電性高分子材料からなる群から選択してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る透明導電膜は、導電膜が導電性材料を用いて構成され、導電膜の表面に設けられた樹脂層が、樹脂の厚さが厚い部分と薄い部分とからなる段差部分を有するので、この樹脂の薄い部分に沿って折り曲げ可能である。このように段差部分を設けることによって折り曲げようとする部分における力学的負荷を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施の形態1に係る透明導電膜の断面構造を示す断面図である。
図2】実施の形態1に係る透明導電膜の変形例1の断面構造を示す断面図である。
図3】実施の形態1に係る透明導電膜の変形例2の断面構造を示す断面図である。
図4図2の透明導電膜の平面図である。
図5図2の透明導電膜を折り曲げ部で折り曲げた状態を示す断面図である。
図6】ITOからなる透明導電膜(◆)と、銀ナノワイヤからなる透明導電膜(■)について、8mmφマンドレル屈曲試験テスト結果の折り曲げ回数と抵抗値変化率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施の形態に係る折り曲げ可能な透明導電膜について添付図面を用いて説明する。なお、図面において実質的に同一の部材には同一の符号を付している。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る透明導電膜10の断面構造を示す断面図である。図2は、実施の形態1の変形例1に係る透明導電膜10aの断面構造を示す断面図である。図3は、実施の形態1の変形例2に係る透明導電膜10bの断面構造を示す断面図である。図4は、図2の透明導電膜10aの平面図である。図5は、図2の透明導電膜10aを折り曲げ部で折り曲げた状態を示す断面図である。
実施の形態1に係る透明導電膜10は、導電性材料によって構成された導電膜2と、導電膜2の表面に設けられた樹脂層4と、を含む。また、樹脂層4は、樹脂の厚さが厚い部分と薄い部分とからなる段差部分を有し、樹脂の薄い部分に沿って折り曲げ可能である。この樹脂の薄い部分は、折り曲げ部6として機能する。
【0017】
この実施の形態1に係る透明導電膜10では、導電膜2を構成する材料として、折り曲げ負荷に対して抵抗値変化の少ない導電性材料を用いることを特徴とする。
図6は、ITOからなる透明導電膜(◆)と、銀ナノワイヤからなる透明導電膜(■)とについて、8mmφマンドレル屈曲試験テスト結果の折り曲げ回数と抵抗値変化率との関係を示すグラフである。この図6に示すように、通常よく使用されるITO(インジウムスズ酸化物)材料からなる透明導電膜は、折り曲げ等の機械的負荷に弱く、わずかな折り曲げであってもその抵抗値が大きく変化する。一方、図6の8mmφマンドレル屈曲試験テスト結果に示すように、導電性ナノワイヤ材料の一つである銀ナノワイヤ材料からなる透明導電膜は、10回を越える折り曲げ回数を経ても抵抗値変化がほとんどないほど十分な折り曲げ耐性を有している。そこで、この銀ナノワイヤ材料からなる透明導電膜では、折り曲げた場合にも抵抗率変化がほとんどないため、所定箇所で折り曲げ可能となる。
【0018】
また、この透明導電膜10は、導電膜2の上に設けた樹脂層4において、樹脂の厚さが厚い部分と薄い部分とからなる段差部分を有し、この樹脂の薄い部分に沿って折り曲げ可能である。この樹脂の薄い部分は、折り曲げ部6として機能する。また、段差部分は、図1に示すように、樹脂を所定厚さ(L2)で設けた部分と、樹脂を設けられていない部分(L3)とで構成してもよい。この場合、樹脂を設けられていない部分(孔)が樹脂の薄い部分に対応する。なお、全体厚さをL1として、L2/L1の比率が大きいほど曲げやすくなる。また、樹脂層4の厚さL2は、100μm以下が好ましい。さらに、段差部分は、図1に示す孔の場合に限られず、図2に示すように、樹脂の厚さが厚い部分から薄い部分に変化するテーパ部分によって構成してもよい。このテーパ部分を設けることによって可動範囲を限定して、過度に折れることによる電気抵抗断線不良の発生を抑制できる。なお、テーパ部分の角度が大きいと可動範囲が広くなるが、その一方、折り曲げ位置はバラつき易くなる。例えば、段差部分の底の長さL3は、樹脂層4の厚さL2よりも小さいことが好ましい。具体的には、
100μm≧L2>L3≧0μm
の関係式を満たすことが好ましい。さらに、段差部分は、図3に示すように、導電膜2の表面だけでなく、裏面側にも設けてもよい。この場合、裏面の樹脂の厚さが薄い部分6bは、表面の樹脂の厚さが薄い折り曲げ部6aと対応するように設ける必要がある。表面だけでなく、裏面にも樹脂層4bを設けることによって、全体の厚さL1のうち、表面及び裏面の樹脂層4a、4bのそれぞれの厚さL2の比率を大きく出来るため、折れやすさと応力低減とを実現できる。
なお、樹脂層4は、導電膜2の表面の全部を覆う必要はなく、折り曲げようとする箇所の周辺にのみ設けてもよい。
【0019】
以下に、この透明導電膜10を構成する各構成部材について説明する。
<導電膜>
導電膜2を構成する導電性材料としては、導電性ナノワイヤ材料、カーボンナノワイヤ、導電性メッシュ材料、及び、導電性高分子材料からなる群から選択して用いることができる。
なお、導電膜2の全体が同一材料からなるものでなくてもよく、折り曲げ部を設ける箇所の導電膜2について、折り曲げ可能な導電性材料からなる導電膜とすればよい。例えば、折り曲げに影響しない箇所にはITO等からなる導電膜を用いて、折り曲げ部を設ける箇所には導電性材料からなる導電膜を用いて、両者を組み合わせて一つの導電膜を構成してもよい。
【0020】
<導電性ナノワイヤ材料>
導電性ナノワイヤ材料としては、例えば、銀、金、銅、ニッケル、金めっきされた銀、アルミニウム等を用いることができる。なお、導電性ナノワイヤ材料3としては、上記例示に限定されるものではない。導電性ナノワイヤ材料として、特に銀ナノワイヤが好ましい。また、図6の8mmφマンドレル屈曲試験テスト結果に示すように、この導電性ナノワイヤ材料の一つである銀ナノワイヤ材料からなる透明導電膜(■)は、10回を超える折り曲げ回数を経ても抵抗値変化がほとんどないほど十分な折り曲げ耐性を有している。
【0021】
なお、導電性ナノワイヤ材料を透明導電材料として用いる提案(特開2010−244747号公報、特表2009−505358号公報)がある。
【0022】
<カーボンナノワイヤ>
カーボンナノワイヤとしては、例えば、カーボンナノチューブ(CNT)を使用できる。なお、カーボンナノチューブは、単層、多層等のいずれであってもよい。
【0023】
<導電性メッシュ材料>
導電性メッシュ材料としては、例えば、銅メッシュ、アルミメッシュ等を使用できる。なお、導電性メッシュ材料は、上記のものに限られず、これらを複合して用いてもよい。
【0024】
<導電性高分子材料>
導電性高分子材料としては、例えば、PEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)、PSS(ポリスチレンスルホン酸)等を使用できる。なお、導電性高分子材料は、これらに限られず、これらを複合して用いてもよい。
【0025】
<樹脂層>
樹脂層4は、導電膜2上に形成され、樹脂の厚さが厚い部分と薄い部分とからなる段差部分を有し、この樹脂の薄い部分に沿って折り曲げ可能である。この樹脂の薄い部分は、折り曲げ部6として機能する。
樹脂層4を構成する樹脂としては、一定の透明性を有するものであれば使用できる。また、樹脂層4は、インクジェット法、塗布法、CVD法等の通常の樹脂層の形成方法によって形成することができる。
また、樹脂層4の樹脂の厚さが厚い部分と薄い部分とからなる段差部分は、樹脂層4を形成した後、マスクを形成した後、マスク以外の箇所をエッチングして樹脂の薄い部分を形成する方法によって形成してもよい。あるいは、樹脂層4を形成すると同時に段差部分を形成してもよい。例えば、樹脂層4の形成をインクジェット法、CVD法等で行うと共に、膜厚を制御することで、樹脂の厚さが厚い部分から薄い部分に変化するテーパ部分を含む段差部分を形成してもよい。
【0026】
<製造方法>
この透明導電膜10は、例えば、以下のようにして得られる。
a)導電性ナノワイヤ材料として銀ナノワイヤからなる導電膜2を形成する。
b)銀ナノワイヤからなる導電膜2の表面に、樹脂層4を形成する。例えば、塗布法、インクジェット法、CVD法等によって樹脂層4を形成できる。
c)樹脂層4の上に孔を形成する箇所以外にマスクを設け、マスクを設けなかった箇所の樹脂層4をエッチングして孔を設ける。これによって、図1に示すように、樹脂層4において、樹脂を所定厚さで設けた部分と、樹脂を設けられていない部分(孔)とで構成される段差部分を形成できる。
以上によって、導電膜2が銀ナノワイヤで構成され、導電膜の表面に設けられた樹脂層4が樹脂の厚さが厚い部分と薄い部分とからなる段差部分を有し、樹脂の薄い部分に沿って折り曲げ可能な透明導電膜10が得られる。
【0027】
なお、上記製造方法では、(b)樹脂層4を形成するステップと、(c)樹脂層4に段差部分を形成するステップとを別々に行ったが、これらのステップを同時に行ってもよい。例えば、樹脂層4の形成をインクジェット法、CVD法等で行うと共に、膜厚を制御することで、樹脂の厚さが厚い部分から薄い部分に変化するテーパ部分を含む段差部分を形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明に係る所定箇所で折り曲げ可能な透明導電膜は、タッチパネル、液晶、太陽電池、電子ペーパ等の透明導電膜として有用である。
【符号の説明】
【0029】
2 導電膜
4、4a、4b 樹脂層
6、6a、6b 折り曲げ部(薄い部分)
10、10a、10b 透明導電膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6