(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5709689
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】耐落袋衝撃性に優れた複合袋
(51)【国際特許分類】
B32B 29/02 20060101AFI20150409BHJP
B32B 27/02 20060101ALI20150409BHJP
B32B 5/28 20060101ALI20150409BHJP
B65D 30/02 20060101ALI20150409BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20150409BHJP
【FI】
B32B29/02
B32B27/02
B32B5/28 Z
B65D30/02
B65D65/40 D
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-178296(P2011-178296)
(22)【出願日】2011年8月17日
(65)【公開番号】特開2013-39741(P2013-39741A)
(43)【公開日】2013年2月28日
【審査請求日】2014年5月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】591034512
【氏名又は名称】石川株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094813
【弁理士】
【氏名又は名称】庄子 幸男
(72)【発明者】
【氏名】古阪 一昭
【審査官】
横島 隆裕
(56)【参考文献】
【文献】
実公昭53−040551(JP,Y1)
【文献】
特開平05−085576(JP,A)
【文献】
特開2004−075152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B65D 30/02、65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自体に通気性を有する紙状シートに網目状プラスチックシートのシート面同士を密接させた状態で、前記網目状プラスチックシートの面に接合用の非通気性ラミネート樹脂を供給し、前記網目状プラスチックシートの全面を覆い被せて、前記紙状シートと前記網目状プラスチックシートとを接合させ、これらシート同士の密接部分を無接合部位とし、これらシート同士の非密接部分の剥離強度が少なくとも200gf/cmである強接合部位とした複合シートを使用したことを特徴とする複合袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、落袋衝撃に対して優れた耐衝撃性を有する
複合袋に関するものであり、より詳しくは、防湿性を確保しつつ通気性ないし脱気性に優れ、しかも落体衝撃を分散吸収して耐衝撃性に優れ、その上材料や仕上がり容積も少なくできる複合
シートを使用した複合袋に関する。
その特徴とするところは、
複合袋の素材として、自体に通気性を有する紙状シートに網目状プラスチックシートを接合するに際し、これらシート同士を密接させた状態で、前記網目状プラスチックシートに接合用の非通気性ラミネート樹脂を供給し、前記網目状プラスチックシートの全面を覆い被せて、前記紙状シートと前記網目状プラスチックシートとを接合させ、これらシート同士の密接部分を無接合部位とし、これらシート同士の非密接部分の剥離強度を
少なくとも200gf/cmの強接合部位として構成した複合シートを
使用したことにある。
【背景技術】
【0002】
従来の複合シートは、
図4に示すように、紙体50に接着剤51を斜め角度に碁盤目状に塗布し、それに別の合成樹脂クロス52を接着し、紙体50と合成樹脂クロス52との間に、すき間53の非接着部を形成してなるものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、
図5に示すように、合成樹脂クロス52と紙体50とを接着剤51で接着し、その接着剤51は巾1〜4mmの細巾の縦プラスチック条51aが縦方向に密に配列されており、この巾1〜4mmの細巾の縦プラスチック条51aの巾W1は合成樹脂クロス52のメッシュmの巾にほぼ等しいか、これより小さく、合成樹脂クロス52のメッシュピッチxを10mm以下とし、その1〜3ピッチに対して、細巾の縦プラスチック条51aとその間隔W2の縦条ピッチpの1ピッチが配設されている、複合シートが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、
図6に示すように、合成樹脂クロス52全面に接合されているフィルムラミネートシート54のフィルム面54aに、紙体50が重ね合わされ、フィルム面54aと紙体50とが多数の点状の接着部55を介して接着されていると共に、その紙体50の緊張時の長さがフィルムラミネートシート54の緊張時の長さの約1.01〜1.20倍となるように、その紙体50が各接着部55の周辺に不定形のたるみまたはたるみじわ56を形成して起伏している、複合シートが知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
また、
図7に示すように、合成樹脂クロス52と紙体50との間に、合成樹脂クロス52と全面接着し且つ紙体50側に凹部57を有して紙体50と部分的に接着する合成樹脂層58を介在させて、合成樹脂クロス52と紙体50とを接着すると共に、合成樹脂層58の紙体50側にその全長にわたる多数の排気通路59を形成してなる、複合シートが知られている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公昭55−32854号公報
【特許文献2】実公昭63−48536号公報
【特許文献3】実公昭60−3083号公報
【特許文献4】実公昭57−21887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の複合シートは、紙体50に合成樹脂クロス52を碁盤目状に塗布した接着剤51により接合して通気性を確保し、且つ紙体50に非通気性処理を施したり、接着剤51を全面に塗布して非通気性も確保できる点で大変都合が良いが、この複合シートによる袋は、落袋衝撃を受けた際、その複合シートが均質な構成であるため、その衝撃を分散吸収しづらくなる虞がある。
【0008】
特許文献2の複合シートは、紙体50と合成樹脂クロス52との接着に際し、合成樹脂クロス52の非通気性条と接着剤51の非通気性の縦プラスチック条51aとを一致させて接着して、通気性を大きく確保しているため、この複合シートによる袋は、落体衝撃を受けた際、その複合シートが均質な接合構成であるため、その衝撃を分散吸収しづらくなる。その上、通気性を大きく確保した結果接着部分が少なく、その落袋部分に衝撃が集中するから、接着部分の強度不足とも相俟って破袋する虞がある。
【0009】
特許文献3の複合シートは、合成樹脂クロス52の全面に接合されているフィルムラミネートシート54のフィルム面54aに、紙体50が不定形のたるみまたはたるみじわ56を形成した状態で、接着されているから、防湿性を確保しつつ通気性ないし脱気性に優れ、しかも落体衝撃に対しても強い点で大変都合が良い。しかしながら、フィルムラミネートシート54のフィルム面54aに、紙体50が不定形のたるみまたはたるみじわ56を形成した状態で、接着されているから、その分紙体50を多く使用することになり、その分仕上がり容積も増えることになる。
【0010】
特許文献4の複合シートは、合成樹脂クロス52と紙体50との接着に際し、合成樹脂クロス52と全面接着し、且つ紙体50側に凹部57を有して紙体50と部分的に接着する合成樹脂層58を介在させているから、この複合シートによる袋は、落袋衝撃を受けた際、その複合シートが均質な接着構成であるためその衝撃を分散吸収しづらく、その落袋部分に衝撃が集中するから、破袋する虞がある。
【0011】
そこで、本発明の目的は、防湿性を確保しつつ通気性ないし脱気性に優れ、しかも落体衝撃を分散吸収して耐衝撃性に優れ、その上材料や仕上がり容積も少なくできる複合シート及びそれを使用した複合袋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記目的を達成するために提案されたものであって、下記の構成からなることを特徴とするものである。
すなわち、本発明によれば、
自体に通気性を有する紙状シートに網目状プラスチックシート
のシート
面同士を密接させた状態で、前記網目状プラスチックシート
の面に接合用の非通気性ラミネート樹脂を供給し、前記網目状プラスチックシートの全面を覆い被せて、前記紙状シートと前記網目状プラスチックシートとを接合させ、これらシート同士の密接部分を無接合部位とし、これらシート同士の非密接部分
の剥離強度が少なくとも200gf/cmである強接合部位とした
複合シートを使用したことを特徴とする複合袋が提供される。
【0015】
本発明の複合袋の素材として用いる複合シートは、紙状シートと網目状プラスチックシートとを密接させた状態で、網目状プラスチックシートに非通気性ラミネート樹脂を供給しその全面を覆い被せて
、紙状シートと非通気性ラミネート樹脂双方のシートを接合させているから、防湿性を有し且つ紙状シートでの通気性ないし脱気性も確保でき、その接合に際し強接合部位と無接合部位とが生じているから、衝撃を受けた際、無接合部位にてその衝撃を分散吸収して、その衝撃部分に衝撃が集中しづらくなって、破損を防ぐことが出来る。
【0016】
また、この複合袋は、強接合部位の剥離強度が少なくとも200gf/cmであることにより、衝撃が脱気通路となる無接合部位により分散吸収して、その衝撃部分に衝撃が集中しづらくなって、
落袋時の破損を防ぐことが出来る。
【発明の効果】
【0018】
本発明の複合
袋は、防湿性を確保しつつ通気性ないし脱気性に優れ、しかも衝撃を受けた際、無接合部位が脱気通路として機能し、
落袋衝撃を分散吸収するから耐衝撃性に優れているという効果がある。
【0019】
また、
本発明の複合袋は、その接合に際し強接合部位と無接合部位とが生じていても、上記の効果を得ることができる。
【0021】
上述したように、本発明の複合袋は、防湿性を確保しつつ通気性ないし脱気性に優れ、しかも落袋衝撃を分散吸収するから耐衝撃性に優れ、その上材料や仕上がり容積も少なく出来
るという優れた効果を奏し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施の形態を示す
複合袋を構成する複合シートの一部の平面図である。
【
図3】本発明の
複合袋の実施の形態を示す複合シートの製作状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
【0024】
図面において、
複合袋の素材となる複合シート1は、紙状シート2に網目状プラスチックシート3を接合するに際し、これら両シート2、3同士を密接させた状態で、前記網目プラスチックシート3の前面を覆い被せて、前記紙状シート2と前記網目状プラスチックシート3とを
密接させ、これらシート2,3同士の密接部分を無接合部位7とし、これらシート2,3同士の非密接部分を強接合部位5として構成したものである。
【0025】
前記紙状シート2は、それ自体に通気性があるシートであれば特に限定が
ないが、
なかでも、クラフト紙またはエンボス加工紙が好適に用いられる。
【0026】
前記網目状プラスチックシート3は、網目状のシートであれば特に限定がなく、割布、ソフクロス、ポリエチレンクロスなどが例示される。
【0027】
前記非通気性ラミネート樹脂4は、前記紙状シート2と前記網目状プラスチックシート3とを接合することができる接合剤であれば、特に限定がないが、従来公知のポリオレフィン系の樹脂が多く使用される。
【0028】
なお、
本発明の複合袋の前記強接合部位5
は、その剥離強度が200gf/cm以上であ
り、また、前記無接合部位7は、接合していないので
あるから剥離強度は0gf/cmである。このような強接合部位5と無接合部位7とを有する複合シート1にて製造した複合袋では、収納物が入った状態での落袋の際、その衝撃を脱気通路6として機能する無接合部位7にて分散吸収して、その落袋部分に衝撃が集中しづらくなって、破損を防ぐことができる。
【実施例】
【0029】
図1ないし3は
本発明の複合袋の素材として用いる複合シート1を示し、この複合シート1と紙状シート2に網目状プラスチックシート3を接合するに際し、これらシート2、3同士を密接させた状態で、網目状プラスチックシート3に接合用の非通気性ラミネート樹脂4を供給しその網目状プラスチックシート3全面を覆い被せて紙状シート2と網目状プラスチックシート3とを接合圧力を強にして
密接させ、これらシート2、3同士の密接部分を無接合部位7とし、これらシート2、3同士の非密接部分を強接合部位5としたものである。
【0030】
本発明の複合袋の素材である複合シート1は、上記のように形成されているので、紙状シート2に網目状プラスチックシート3を、その全面を非通気性ラミネート樹脂4にて覆い被せた状態で、接合させているから、防湿性を有し且つ紙状シート2での通気性ないし脱気性も確保でき、その上、
特定の剥離強度を有する強接合部位5と無接合部位7とが生じているから、この複合シート1にて製造した複合袋では、収納物が入った状態での落袋の際、その衝撃を脱気通路として機能する無接合部位7にて分散吸収して、その落袋部分に衝撃が集中しづらくなって、破損を防ぐことができるものである。
【0031】
以上、本発明の実施例を説明したが、具体的な構成はこれに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲での変更は適宜可能であることは理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の複合袋は、防湿性を確保しつつ通気性ないし脱気性に優れ、しかも落体衝撃を分散吸収して耐衝撃性に優れ、その上材料や仕上がり容積も少なくできる
複合袋を得たいような場合に、利用可能性が極めて高くなる。
【符号の説明】
【0033】
1 複合シート
2 紙状シート
3 網目状プラスチックシート
4 非通気性ラミネート樹脂
5 強接合部位
6 脱気通路
7 無接合部位
50 紙体
51 接着剤
51a 縦プラスチック条
52 合成樹脂クロス
53 すき間
54 フィルムラミネートシート
54a フィルム面
55 接着部
56 たるみまたはたるみじわ
57 凹部
58 合成樹脂層
59 排気通路