【実施例】
【0028】
以下で本発明を実施例および実施例に属する図面に基づいてより詳細に説明する。図は、概略的であり、かつ縮尺通りでない図に基づいて、本発明の異なる実施例を示している。同じ部分または同じ作用を有する部分には同じ参照番号が付与されている。
【0029】
図1には、本発明に相応する銅含有外部コンタクトAK1およびAK2を有するセラミック構成素子が概略的に示されている。第1の外部コンタクトAK1には、第1の銅含有内部電極IE1が接続されている。第2の外部コンタクトAK2には、第2の銅含有内部電極IE2が接続されている。これらの内部電極は相互にセラミック層KSによって分断されている。
【0030】
セラミック層KSは有利には圧電特性を有しており、例えばPZTタイプのセラミックをベースにして製造されている。
【0031】
図示された構成素子は、殊に圧電アクチュエータを実現する。相互に重なって積層された電極層とセラミック層はピエゾスタックと称される。
【0032】
焼付けされた外部コンタクトAK1,AK2は有利には10〜20μmの厚さであり、例えば15μmの厚さである。しかし他の厚さの外部コンタクトも選択可能である。
【0033】
外部コンタクトおよび/または内部電極は有利には、50m%(m%=質量パーセント)を下回る特定のセラミック成分を有しており、本発明の有利な形態ではこれは10〜50m%の間であり、殊に40m%である。セラミック成分はここで、特定の粒径を有するセラミック粒子を有している。例えば平均粒径は0.2〜0.6μmの間である。
【0034】
金属ペースト内のセラミック成分は殊に、ピエゾスタックの外部コンタクトの亀裂形成および剥離を阻止する。これはセラミック材料の膨張係数と金属銅の膨張特性が異なることが原因で生じる。
【0035】
PZTタイプのセラミックの熱膨張係数は、室温とキュリー温度との間では、約1.5〜2.0ppm/Kであり、金属銅は相応する温度領域において、約19ppm/Kの格段に高い熱膨張係数を有している。金属ペースト内にセラミック成分を混ぜることによって、外部コンタクトの膨張特性はセラミックペーストの膨張特性に整合され、構成素子の処理中にも、例えば−50℃〜+150℃での詳細に述べられた温度領域における後でのその使用の間(ここでは例えば電界を印加することによって、構成素子の変形が生じる)も整合される。
【0036】
熱膨張係数を整合させるために有利には、例えば39m%の高いSiO
2成分を有するガラスフリットが使用される。なぜならSiO
2は、PZTタイプのセラミックに対する高い親和力を有しているからである。
【0037】
銅含有金属ペーストの準備時には、まず、例えば0.4μmの平均粒度を有するセラミック粉体が、溶剤によって分散液の形で製造される。引き続き、セラミック粉体分散液は、上述した組成の銅含有金属ペースト内で攪拌され、三本ロール機によって均質化される。金属ペーストの粘性は有利には10〜20Pasの間である。ピエゾスタックの側面上に、完成した金属ペーストをピエゾスタックの側面に載せた後に、ペーストは約80〜140℃で空気雰囲気内で乾燥される。さらに、本発明に相応して設定された条件のもとで、結合剤除去と焼結が行われる。ここでは一方では金属銅の酸化が阻止され、他方ではPbOまたはPbTiO
3の還元が阻止される。ここでは殊に、結合剤除去温度の選択および結合剤除去の持続時間に関して次のことに留意されるべきである。すなわち結合剤除去処理中に、金属ペーストから結合剤成分だけでなく、溶剤残分も完全に焼いて除去されるということに留意されるべきである。
【0038】
金属ペースト内に含有されているガラスフリットは部分的に非常に強く、セラミック内で内方拡散し、ここで焼結されたセラミック層内に中空空間が残されるので、ガラス添加物の侵入が内部電極の領域内でのみ行われるように、焼結温度は低く(例えば765℃)選択される。顕微鏡検査によって次のことが証明されている。すなわち、このように選択された焼結温度では、ガラス成分(殊に酸化珪素)が、外部コンタクトに接している狭いセラミック層領域内でのみ確認可能であることが証明されている。外部コンタクトは固着し、50Nを超える大きな力を用いないとピエゾスタックから剥離されない。外部コンタクを強制的に剥離する場合には、セラミック材料部分が崩れる。これはピエゾスタックでの外部コンタクトの高い接着強度に相応する。
【0039】
セラミック成分は有利には、金属ペーストの固体含有量に関して40m%である。この金属ペーストは、基本的には、内部に位置する電極層にも使用可能である。
【0040】
本発明の枠内では、電極金属化部内に有利には、以下でセラミック添加物とも称される化学的に活性のセラミック粉体(または他の化学的に活性の添加材料)を設けることもできる。これは特定の条件下で、化学的に、電極金属、有機結合剤、セラミックおよび/またはこれらの反応生成物と反応可能である、ないしは特定の成分と化合可能である。さらに、このセラミック添加物は処理雰囲気と反応する。例えば処理雰囲気に酸素を提供するまたは酸素を吸収する。これによって、少なくとも局部的ないし過渡的に酸素分圧が安定される。安定した酸素分圧によって、殊に、内部に位置する電極層ないしは外部コンタクトが酸化に対して保護され、セラミック層が還元に対して保護される。このセラミック粉体添加物によって、電極金属化におけるプロセス不安定さによって生じる酸化金属が結合される。これによって、セラミック層内でのこの酸化金属の不所望の内方拡散が回避される。
【0041】
例えば金属の焼結を遅延させるために、金属ペースト内で化学的に不活性のセラミック粉体を使用することは、それ自体公知である。しかし本発明ではセラミック粉体は機能的な添加物として使用される。これは、化学的に活性であり、自身の周辺と化学的に反応可能である。この化学的な活性は、例えばPbの結合に向けられる。これは焼結時には鉛を含有するセラミック質量体から遊離される。化学的に活性のセラミック粉体がセラミック質量体の別のコンポーネントを殊に焼結時に結合することも可能である。または化学的に活性のセラミック粉体を特定のコンポーネント(例えば酸素)をセラミック質量体から遊離させる、またはセラミック質量内または金属ペースト内に含有されている結合剤から遊離させるために用いることが可能である。しかし有利には、セラミック粉体は金属ペーストの金属成分と化学的に反応しない。
【0042】
外部電極で使用されている金属ペーストとは異なり、内部電極層に適している金属ペースト内には有利には、ガラス添加物は使用されていない。化学的に活性のセラミック粉体としては殊に、(Zr,Ti)O
2が適している。金属ペーストは、化学的に活性のセラミック粉体の代わりに、他の、化学的に活性の添加物を含むこともできる。または化学的に活性のセラミック粉体に対して付加的に、他の物質の成分も含み得る。これは例えばBaO
2および/またはMgOである。
【0043】
内部電極でのセラミック粉体の添加によってさらに、内部電極と、この内部電極を取り囲んでいるセラミック層との間の接着が改善される。ここで、金属粒子間のセラミック粒子が細かく分けられることによって、殊に焼結ネッキング形成が阻止される。焼結ネッキングは内部電極の局部的な中断をあらわす。ここで金属化部はセラミック層から剥離するおよび/または−殊に縁部領域において−引き戻される。これによって、内部電極は網状の構造を取る。その構造は構成部分毎に再現不可能である。均質な内部電極構成が、貴金属または貴金属合金を添加することによっても実現されることは公知である。これに対して、本発明に相応するセラミック粉体の添加は、コストに関して大きな利点を有する。
【0044】
図2には、片対数グラフで、水蒸気を添加して調整する酸素分圧P
o2(例えば曲線3によって示されている)の、温度に対する依存性と、CuおよびCu
2Oの数字的に計算された平衡曲線1と、PbとPbTiO
3の数字的に計算された平衡曲線2が示されている。
【0045】
平衡曲線1は選択された温度でのO
2の分圧を示しており、ここでは金属CuおよびCuO
2が同時に存在可能である。金属銅は平衡値を上回らない酸素分圧P
o2、すなわち平衡曲線1を下回ってのみ存在する。曲線1の上方ではCuO
2のみが安定しているので、選択された温度で平衡値を上回る酸素分圧で、金属銅の不所望な酸化が行われる。
【0046】
平衡曲線2は選択された温度でのO
2の分圧を示しており、ここでは金属PbおよびPbTiO
3が同時に存在可能である。PbTiO
3は、曲線2の上方でのみ存在する。選択された温度で平衡値を下回る酸素分圧P
o2では、セラミック内に含有されているPbTiO
3は、Pbに還元される。
【0047】
従って少なくとも、本発明によるセラミック多層構成素子製造方法の結合剤除去フェーズにおいて、酸素分圧P
o2は水蒸気を添加して次のように調整される。すなわち、それが一方では曲線1によって定められた最大値P
max(ここでは金属的な銅がまだ安定している)を上回らないように調整され、他方では曲線2によって定められた最小値P
min(ここではチタン酸鉛はまだ還元されない)を下回らないように調整される。すなわち、所与の結合温度T
EのもとでP
min<P
o2<P
maxである。すなわち酸素分圧の調整のための付加的な領域は曲線1と曲線2の間である。
【0048】
曲線3は温度に応じて、湿気のある雰囲気において調整する、本発明に相応して見い出された最適な酸素分圧を示している。加えられる水蒸気の量は基本的に曲線3から計算される。酸素分圧の降下、水蒸気を添加して手動で、または自動的に次のように制御することができる。すなわち、所定の限界値が犯されないように制御することができる。