特許第5709757号(P5709757)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5709757
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】3次元医療用X線撮像法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20150409BHJP
【FI】
   A61B6/00 330Z
   A61B6/00 300D
   A61B6/00 320M
【請求項の数】18
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-537997(P2011-537997)
(86)(22)【出願日】2009年11月30日
(65)【公表番号】特表2012-510304(P2012-510304A)
(43)【公表日】2012年5月10日
(86)【国際出願番号】EP2009066051
(87)【国際公開番号】WO2010061003
(87)【国際公開日】20100603
【審査請求日】2012年11月12日
(31)【優先権主張番号】20080639
(32)【優先日】2008年11月28日
(33)【優先権主張国】FI
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591261406
【氏名又は名称】プランメド オイ
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107401
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 誠一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120064
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 孝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154162
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 浩輔
(74)【代理人】
【識別番号】100182257
【弁理士】
【氏名又は名称】川内 英主
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルタ,アルト
【審査官】 小田倉 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−166834(JP,A)
【文献】 特開2003−126073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンモグラフィー又は他の医療用撮像のためのX線撮像法であって、撮像すべき対象物をX線撮像装置のX線源(13)と画像検出器(15)との間のエリア内に対象物位置決め手段(16、17)によって位置決めし、撮像プロセス中、断層角度にわたって前記X線源(13)を前記対象物の位置に対して動かし、前記対象物が該対象物の位置に対して前記X線源(13)の複数の異なる位置で照射される、マンモグラフィー又は他の医療用撮像のためのX線撮像法において、前記撮像プロセス中、前記X線源(13)を連続的に動かし、前記対象物を複数回の短い照射期間中に照射し、一照射期間中、前記対象物位置決め手段(16、17)を前記X線源(13)が動くのと同じ速度及び同じ方向に前記X線源(13)の動きに同期するように動かすことにより、前記対象物が前記X線源(13)の動きに従うことを特徴とする、X線撮像法。
【請求項2】
初めの照射期間の前、かつ/又は任意の回数の次の照射期間の合間、すなわち、前記対象物が照射されていない期間中、前記対象物位置決め手段(16、17)を、前記X線源(13)の動きに同期するように動かす場合の方向とは逆の方向に動かすことを特徴とする、請求項1に記載のX線撮像法。
【請求項3】
前記対象物位置決め手段(16、17)が前記X線源(13)の動きに同期するように動いている照射期間の後に、かつ、少なくとも1回の次の照射期間の前に、前記対象物位置決め手段(16、17)を少なくとも実質的にその初期位置に、すなわち、少なくとも実質的に前記前の照射期間の開始時のその位置に戻すことを特徴とする、請求項1又は2に記載のX線撮像法。
【請求項4】
前記撮像プロセスは、前記対象物位置決め手段(16、17)が前記X線源(13)の動きに同期するように動く複数回の照射期間を含み、そのような照射期間の次の各非照射期間中、前記対象物位置決め手段(16、17)を少なくとも実質的に、そのような前の照射期間の開始時のその位置に戻すことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のX線撮像法。
【請求項5】
照射期間中の前記対象物位置決め手段(16、17)の動きは、該対象物位置決め手段(16、17)を回転させること又は該対象物位置決め手段(16、17)を直線的に動かすことを含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のX線撮像法。
【請求項6】
前記撮像プロセス中の、乳房に対する前記X線源(13)の両極端の位置は、数十度の断層角度をなすことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のX線撮像法。
【請求項7】
前記X線源(13)の全体的な動きは、垂直線に対して又は前記対象物の中心に対して対称であるようになされることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のX線撮像法。
【請求項8】
前記検出器(15)の動きは、前記対象物位置決め手段(16、17)の動きに従うようになされることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のX線撮像法。
【請求項9】
前記対象物位置決め手段(16、17)は、前記撮像プロセスの期間中に前記対象物を間で圧迫する圧迫板(16、17)を含み、かつ/又は、伸張手段(30、31)が、前記固定手段(16、17)/前記圧迫板(16、17)間に乳房組織を引き伸ばすのに使用されるように構成されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載のX線撮像法。
【請求項10】
照射期間中、前記X線源13を、前記対象物の組織特性に応じて、タングステン陽極を含むX線管について約35kV〜45kV及び約5mAs又は約30kV〜34kV及び10mAs〜13mAsの撮像パラメーター値を用いることによって操作することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載のX線撮像法。
【請求項11】
前記X線撮像法は約11回〜15回の照射期間を含み、かつ/又は、前記対象物位置決め手段(16、17)が一照射期間中に動く距離と前記撮像プロセスの総体的な断層角度との間の比が1/10未満であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載のX線撮像法。
【請求項12】
マンモグラフィー又は他の医療用撮像のためのX線撮像装置であって、本体部(11)と、該本体部(11)に配置されているX線源(13)及び画像検出器(15)と、並びに、該X線源(13)と該画像検出器(15)との間のエリア内に、対象物を位置決めするように構成された手段(16、17)とを備え、前記X線源(13)は、断層角度にわたって前記対象物位置決め手段(16、17)の位置に対して可動に構成され、該装置は、該装置の動作を制御するように構成された制御システムをさらに備える、X線撮像装置において、前記対象物位置決め手段(16、17)は可動に構成され、該対象物位置決め手段(16、17)及び前記X線源(13)の動きは電動式になされ、前記X線源の動作は、撮像プロセス中、該X線源(13)が連続的に動き、乳房が複数回の短い照射期間中に照射され、かつ、照射期間中、前記対象物位置決め手段(16、17)が前記X線源(13)が動くのと同じ速度及び同じ方向に前記X線源(13)の動きに同期するように動くことにより、前記対象物が前記X線源(13)の動きに従うよう、前記制御システムによって制御されることを特徴とする、X線撮像装置。
【請求項13】
前記制御システムは、初めの照射期間の前、かつ/又は任意の回数の次の照射期間の合間、すなわち、前記乳房が照射されていない期間中、前記対象物位置決め手段(16、17)を、前記X線源(13)の動きに同期するように動く場合の方向とは逆の方向に動かすよう、前記装置の動作を制御するように構成されることを特徴とする、請求項12に記載のX線撮像装置。
【請求項14】
前記制御システムは、前記対象物位置決め手段(16、17)が前記X線源(13)の動きに同期するように動いている照射期間の後に、かつ、少なくとも1回の次の照射期間の前に、前記対象物位置決め手段(16、17)が少なくとも実質的にその初期位置に、すなわち、少なくとも実質的に前記前の照射期間の開始時のその位置に戻るよう、前記装置の動作を制御するように構成されることを特徴とする、請求項11又は12に記載のX線撮像装置。
【請求項15】
前記制御システムは、撮像前記対象物位置決め手段(16、17)が前記X線源(13)の動きに同期するように動く複数回の照射期間があり、そのような照射期間の次の各非照射期間中、前記対象物位置決め手段(16、17)を少なくとも実質的に、そのような前の照射期間の開始時のその位置に戻すよう、前記装置の動作を制御するように構成されることを特徴とする、請求項12〜14のいずれか一項に記載のX線撮像装置。
【請求項16】
前記制御システムは、前記放射線源(13)及び前記対象物位置決め手段(16、17)が一照射期間中に例えば約0.5mm〜2mm直線的に動くよう、前記装置の動作を制御するように構成されることを特徴とする、請求項12〜15のいずれか一項に記載のX線撮像装置。
【請求項17】
前記検出器(15)は、前記対象物位置決め手段(16、17)の動きに従って動くように構成されることを特徴とする、請求項12〜16のいずれか一項に記載のX線撮像装置。
【請求項18】
前記対象物位置決め手段(16、17)は、前記撮像プロセスの期間中に前記乳房を間で圧迫する圧迫板(16、17)を含み、かつ/又は、伸張手段(30、31)が、前記固定手段(16、17)/前記圧迫板(16、17)間に乳房組織を引っ張るように前記装置に構成されていることを特徴とする、請求項12〜17のいずれか一項に記載のX線撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンモグラフィー等の3次元医療用撮像であって、対象物の個々の画像を様々な投影角度で撮像し、その後、この画像情報から、適用可能な画像処理ソフトウェアによって3次元画像を合成する、3次元医療用撮像に関する。
【背景技術】
【0002】
乳がんは女性における最も一般的な種類の癌である。調査によれば、女性の10人に約1人が生涯のどこかで乳がんにかかる。乳がんが症状に基づいて発見されたとき、その病気は多くの場合、回復の予後が比較的悪いステージに既に進行している。その症例の幾つかは、多くの国々で40歳を超えた女性に向けたスクリーニングプログラムにおいて発見されている。スクリーニングにより、非常に早期のステージの癌が明らかになる場合が多く、そのため、その治療を手遅れにならないうちに開始することができ、ゆえに回復の見込みがより高い。
【0003】
マンモグラフィーは、臨床試験法として乳がんスクリーニングにおいて、また、追跡診断においても広く用いられている方法である。マンモグラフィーは、このために特別に設計された装置が使用されるX線撮像法である。スクリーニング検査において、マンモグラフィーは感度が90%〜93%、特異度が90%〜97%であることが報告されている。これは、スクリーニング検査が有用であること、及び、スクリーニングによる乳がんの早期発見が人命を救うことができることを示している。マンモグラフィーにより、乳がん死亡率は、50歳を超えた女性では35%、また40歳〜50歳の女性では25%〜35%減ることが確認されている。
【0004】
マンモグラフィー画像は、石灰化、すなわち、柔らかい乳房組織内での小さなカルシウム沈着物等、乳房における様々な異常を発見するために検査される。石灰化は一般的に、乳房を触ることでは発見することができないが、X線画像で見ることができる。大きな石灰化は一般的に癌に関係しないが、小さなカルシウム沈着物のクラスター、すなわち、いわゆる微小石灰化は、乳がんに関係する可能性のある特殊な乳房細胞活性(extra breast cell activity)の兆候である。マンモグラフィーによって発見される他の特徴は嚢腫及び線維腺腫であるが、これらは一般的に癌に関係しない。
【0005】
従来のスクリーニングマンモグラフィーでは、通常、乳腺(breast gland)を2つの圧迫板間で圧迫し、上及び斜め方向から、少なくとも2回、放射線を曝射する。必要であれば、追加的に、3枚目の画像を真横から撮像する。そのような撮像では、組織層はX線ビームの方向に互いに積み重なっているため、これらの照射により2次元画像が生成されるが、その場合、吸収が強い構造がそれらの下にある構造の検出を妨げる可能性がある。
【0006】
マンモグラフィーにおける絶え間ない改良により、患者の乳房の3次元画像を生成する新規のタイプのマンモグラフィー法及びマンモグラフィー装置がもたらされている。ここでは、様々な角度での乳房の複数の投影画像が生成され、その3次元分布が、適用可能な再構成アルゴリズムを用いることによって作成される。画像情報、すなわち個々の画像から、通常は、X線検出器の表面に平行に向けられた乳房の幾つかの層を表す数枚の画像が構成されるため、互いに積み重なっている組織構造を検出することが可能となる。
【0007】
通常のデジタルマンモグラフィー装置は、フレーム部及びCアーム、又はフレーム部に回転可能に接続されている対応する構造部を含む。Cアームの第1の端に、X線源が配置されており、第2の端に、放射線検出器が配置されている。撮像手段という用語は多くの場合、これらの装置に対して用いられる。実質的に上記X線源と検出器との間の領域内に、通常は検出器に近接して、圧迫板が配置されており、この圧迫板は、曝射の期間中、乳房を圧迫した状態で位置決めするように設計されている。
【0008】
従来技術では、3次元マンモグラフィーに関して、複数の異なる投影角度で乳房を撮像する様々な方法が使用又は示唆されている。これらは、一定の速度又は変わる速度で、乳房の周りの湾曲路に沿って、X線源を連続的に回転させること、X線源が静止している、曝射間の合間に、X線源を段階的に回転させること、及び、複数の固定X線源を使用することを含む。検出器に関して、検出器は固定しておくことができ、直線的に動かすことができ、かつ/又は、曝射ごとにX線ビームの中心線に対して直角のままにするように傾けることができる。
【0009】
Cアームの(上)端に位置しているX線源は、比較的重量のある構成部材である。X線源を段階的に動かす場合では、各曝射前に、撮像装置が振動のない状態になっていなければならない。したがって、マンモグラフィー装置の構造部は、多段階撮像手順に含まれる加速、減速及び停止(静定時間(stabilization times:安定化時間))の回数を考慮して最適化されねばならない。このような撮像手順に必要とされる全体的な時間は非常に長いものとなる傾向がある。
【0010】
その一方、X線源を連続的に動かす場合では、動きのアーチファクトが生じるのを回避するために、50ms未満のような著しく短い曝射時間を用いねばならない。これはさらに、強力で十分な放射線源の使用を必要とし、このことは、従来技術の2次元マンモグラフィー装置において通常使用されるX線源よりもさらに重量のあるX線源を使用することを意味し、したがって、撮像装置の他の構成部もこのより重い質量を考慮して設計せねばならない。
【0011】
マンモグラフィー装置内に幾つかのX線源を配置することに関して、そのような特定の3次元撮像モダリティーを実施することを可能にするには、マンモグラフィー装置のための全く新規のタイプの設計を必要とすることは明らかである。この種の機械設計を基礎とすれば、装置を従来の2次元スクリーニングマンモグラフィーにおける使用にも実用的にする構成的解決策(construction)を提案することができるようにすることが課題であろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、上記の撮像方式の問題の少なくとも幾つかをなくすか又は減らすことに焦点を置いている。本発明の目的は、添付の独立請求項の方法及び装置によって達成される。本発明の幾つかの好ましい実施形態は添付の従属請求項に提示されている。本発明は、撮像手段の回転及び直線的なの動きの双方に関して適用することができる。
【0013】
本発明により、撮像手順中にX線源を連続的に動かす場合であっても実質的に長い曝射時間を用いることを可能にすることによって、既存のタイプのマンモグラフィー装置、すなわち、通常使用されているのと同じ種類のX線源及びCアーム並びに関連構成部を用いての3次元マンモグラフィーが可能となる。これは、撮像手順の少なくとも1つの曝射段階中に乳房がX線源の動きに従うようになされることによって可能となる。撮像プロセスにおいて用いられる断層角度(X線源の両極端の曝射位置間の角度)は、複数回の曝射中に乳房の回転を実際に可能にするために数十度とすることができ、本発明の手順サイクルの好ましい実施の形態は、撮像プロセスの(各)非曝射期間中に乳房を回転(turn)させてその前の/初期の位置に戻すステップを含む。
【0014】
本発明の基本的な利点の1つは、撮像手順中に、乳房を繰返し回転及び停止させること(すなわち、圧迫板等の乳房保持手段を回転及び停止させること)を可能にするそのような手段をマンモグラフィー装置内に構成することが、放射線源に対して対応する動き手順を構成するよりもかなり簡単であることである。本発明では、放射線源自体と放射線源を動かす構成部とに関する限り、装置のいかなる特別な構成又は根本的な設計変更も必要なく、従来技術の2次元マンモグラフィーにおいて用いられている従来設計を利用することができる。
【0015】
以下に、本発明の幾つかの実施形態及びそれらの利点を、添付の図面も用いながら、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】通常のマンモグラフィー装置の構成を示す図である。
図2a】3次元マンモグラフィー用の画像情報を取得するための従来技術の方法によるX線源の動きを示す図である。
図2b】3次元マンモグラフィー用の画像情報を取得するための従来技術の方法によるX線源の動きを示す図である。
図3a】本発明による一医療用X線撮像装置の特定の幾つかの構成部の動きを示す図である。
図3b】本発明による一医療用X線撮像装置の特定の幾つかの構成部の動きを示す図である。
図3a】本発明による他の医療用X線撮像装置の特定の幾つかの構成部の動きを示す図である。
図3b】本発明による他の医療用X線撮像装置の特定の幾つかの構成部の動きを示す図である。
図4】本発明の圧迫板間の容積に組織を引き伸ばす構成が備わった、マンモグラフィー装置のCアームを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に提示する通常のマンモグラフィー装置1は、本体部11と、本体部11に接続されたCアーム構成部12とから構成される。通常、放射線源13と、例えばいわゆる下側棚構造部14の内部に配置されている画像データ受信手段15とが、Cアーム12の対向する両端に設置されている。これらの撮影手段(depicting means)13、15は、装置のカバーの内側に位置しているため、図1では実際には見ることができない。
【0018】
さらに、撮影手段13、15間のエリア内、通常は、画像データ受信手段15の近傍に、撮像すべき対象物を撮像エリア内に位置決め/固定する手段16、17が設置されている。現在では、通常、この種の装置は、Cアーム12が垂直方向に移動可能に、かつ、軸、すなわち通常はCアームを本体部11に接続する物理的な水平軸の回りに回転可能に配置されるように電動式である。位置決め/固定手段16、17は通常、上側圧迫板16と下側圧迫板17とから構成され、下側圧迫板17は下側棚構造部14と一体配置されることができる。下側棚の内部には、グリッド構造部が画像データ受信手段15よりも上に位置することができ、グリッド構造部は、組織から散乱した放射線が画像データ受信手段15に入り込むのを制限する。本発明に関して、実際には、Cアーム12の回転軸は、圧迫板16、17(固定手段)の位置に対して、Cアームの傾斜角に関係なく患者が曝射に対して同じ位置のままでいることができるように構成されることが必要である。この種のマンモグラフィー装置の構成部は欧州特許出願公開第370089号に教示されている。
【0019】
図2a及び図2bは、3次元マンモグラフィー用の画像情報を取得するための従来技術のシステムを示す。明確にするために、図2a、図2b、図3a、図3bには、X線源13の焦点を起点とする実際の円錐状X線ビームではなく、中心線のみが示されている。
【0020】
図2aによる従来技術のシステムでは、X線源13は撮像手順の開始位置からその終了位置に連続的に動くように構成され、この動きの最中、X線源13は数回の短い曝射期間中励起されているが、圧迫板16、17(及び図2aではさらに検出器15)は静止したままである。検出器15で検出された画像情報は保存され、かつ/又は画像処理に送られる。この種の構成では、従来の散乱線除去グリッドは、グリッド層板(grid lamella)の向きに平行な他の曝射角度全てにおいて所望のX線量子の一部も吸収するであろうことから、その使用が可能ではない。
【0021】
その一方、図2bによる従来技術のシステムでは、X線源13は、各曝射の場合に所定の角度位置で停止するように段階的に動く。図2bには、X線源13のそのような静止した曝射位置が3つ示されている。
【0022】
図3a及び図3bは、本発明のマンモグラフィー撮像の2つの基本動作段階を示す。X線源13の両極端の位置と共に、図3aはシステムの一曝射段階を示すものと見なし、図3bはシステムの一非曝射段階を示すものと見なすことができる。これらの図では、垂直線に対するX線源13のこれらの両極端の位置は、システムの断層角度の幅を示し、図3aでは、X線源13の垂直位置に近い2つの位置と、乳房固定手段16、17及び検出器15の対応する位置とが、本発明によるシステムのコア動作段階を示し、図3bでは、本発明の特定の好ましい実施形態の動作段階を示す。図3a及び図3bに全体として示す本発明の実施形態では、圧迫板16、17は、曝射段階(図3a)中はX線源13の動きに同期して回転するように構成され、非曝射段階(図3b)中は逆方向に回転する。本発明のこの実施形態では、検出器15は圧迫板16、17と共に回転するように構成される。
【0023】
本発明による、X線源13及び圧迫板16、17の同期した動きにより、図2aの従来技術の方法(この方法では、曝射時にX線源13と乳房との間に相互的な動きが存在する)に従って乳房が撮像される場合に常に存在するそのような動きのアーチファクトの生成を回避することが可能となる。その方法と比較すると、本発明により、より長い曝射時間を用いることも可能となり、特別に強力な、したがって、より重量のあるX線源を用いる必要がなくなる。
【0024】
その一方で、(各)曝射の期間中、X線源13を停止する必要がないため、撮像プロセス全体に必要とされる時間が、図2bによる従来技術のプロセスに必要とされるよりもかなり短くなる。
【0025】
3次元マンモグラフィーでは複数回の曝射があるため、各曝射時間中、圧迫板16、17をX線源13の動きの方向に単に繰返し回転させること(及びそれらの圧迫板を非曝射期間中に静止させておくこと)は、圧迫板16、17を例えば約15度回転させることを追加するが、これにより、患者に関する限り、撮像プロセスが不快なものとなる。このことを回避するために、本発明の好ましい実施形態は、X線源15が励起しておらず、圧迫板16、17(及び検出器15)がX線源13の動きの方向とは逆の方向に回転する動作段階(非照射期間)を含む。図3bに示すような本発明の好ましい実施形態によれば、圧迫板16、17及び検出器15は回転して前の照射期間の開始時のその初期位置に戻る。
【0026】
圧迫板16、17が回転する角度は、非常に小さくなるように構成することができ、非曝射期間は、次の曝射期間に安定した開始状態を確立するのに十分な時間があるよう、曝射期間よりも長くなるように構成することができる。すなわち、本発明の好ましい実施形態によれば、X線源13が励起していない期間はX線源が励起している期間よりもかなり長くなるように構成されているため、乳房を逆回転させるのに十分な時間がある。通常の従来技術のマンモグラフィー装置を有すると共に12回の曝射を5度の間隔で開始することを用いる一例を考えると、圧迫板16、17は、2度又はさらに小さい度数で回転することができ、これにより、動きを加速及び減速するのに必要とされる時間を考慮したとしても、逆方向に回転するのに十分な時間が容易に残される。
【0027】
図3aに示すように、本発明の好ましい一実施形態では、放射線源13及び画像検出器15は双方とも、乳房の周りを実質的に一定の同じ角速度で動き、一方、乳房は、圧迫板16、17間で圧迫されるか、又はこの目的で構成された手段で別様に固定される。
【0028】
実際には、図3a及び図3bに示すような本発明の実施形態に関して、本発明による撮像手順中、様々な投影角度での照射のために患者の位置を変えることはできないため、圧迫板16、17又は上記の他の乳房用固定手段は、たいての場合に放射線源13の回転中心から短い距離のところに回転するように構成されることが不可欠である。
【0029】
本発明の特定の好ましい実施形態によれば、初めに、投影画像のためのそれぞれの曝射中、圧迫板16、17又は上記の他の固定手段を放射線源13の動きに同期するように回転させる。したがって、乳房は、そのような各照射期間中、放射線源13に対して静止したままとなる。その後、次に、照射期間の合間に、圧迫板16、17を回転させて前の照射期間の開始時のそれらの位置に戻す。結果として、固定手段16、17が回転すべき総角度は、1枚の投影画像の個々の曝射中に動きの同期を生じさせるのに必要とされる回転角度ほど小さいものでよい。この角度は、例えば、0.5度〜2度等、2度未満になるようになされることができるが、患者への負担(strain)から考えて、許容可能であろう。したがって、説明したように、必要とされる加速及び減速を考慮したとしても、画像が、例えば約50度の断層角度に対して5度の間隔で撮像される場合、固定手段(例えば上側圧迫板16及び下側圧迫板17)を再回転させて曝射段階の開始時のそれらの初期位置に戻すのになおも十分な時間がある。
【0030】
さらに概して言えば、本発明によるシステムでは、撮像すべき乳房を固定手段16、17内に固定配置し、撮像プロセス中、撮像すべき乳房の位置に対してX線源13を動かし、乳房がX線源13の複数の角度位置で開始する複数回の照射期間中に照射される。撮像プロセス中、X線源13を連続的に動かし、乳房を複数回の短い照射期間中に照射し、乳房が照射されている期間中、固定手段16、17をX線源13の動きに同期するように動かす。本発明によるマンモグラフィー装置に関して、マンモグラフィー装置は、本体部11と、該本体部11に配置されているX線源13及び画像検出器15と、並びに、X線源13と画像検出器15との間のエリア内に、乳房を固定するように構成された手段16、17とを備え、X線源13は、上記固定手段16、17の位置に対して可動に構成されている。さらに、装置は、該装置の動作を制御するように構成されている制御システムを備える。固定手段16、17は回転可能に構成され、固定手段16、17及びX線源13の動きは電動式になされ、X線源の動作は、撮像プロセス中にX線源13が連続的に動き、乳房が複数の短い照射期間中に照射され、かつ、照射期間中、上記固定手段16、17がX線源13の動きに同期して回転するよう、上記制御システムによって制御される。
【0031】
撮像手順は、上記固定手段16、17が、X線源13の動きに同期するように移動する場合の方向とは逆の方向に回転する第1の照射期間の前の段階を含むことができる。任意の回数の連続照射期間の合間に、固定手段16、17が逆方向に動く期間があることができる。固定手段16、17の逆回転の動き(場合によってはさらに画像検出器15の動き)の長さは、曝射期間中と全く同じものとすることができる、すなわち、固定手段16、17が前の曝射期間の開始時のその初期位置に戻ることができるか、又は、逆方向の動きは、前の曝射中に行われた動きよりも短いか若しくは長いものとすることができる。逆方向の動きの長さは、曝射中の動きのステップの正確な倍数である必要はない。本発明の例示的な一実施形態として、撮像手順は2回の曝射期間の幾つかのステップからなることができ、それらの曝射期間の合間、固定手段16、17はこれらの曝射期間の2回目の後以外はいずれの方向にも回転せず、逆方向の動きはこれらの2つの曝射期間中の固定手段16、17の総体的な動きに対応する。
【0032】
撮像プロセス中の乳房に対するX線源13の両極端の位置は、約50度のような数十度の断層角度をなすように構成されることができる。好ましい一実施形態では、X線源13の全体的な動きは、垂直線に対して対称であるように、すなわち、全体的な断層角度が垂直線に対して約±25度であるように構成される。好ましくは、X線源13の動きは、通常の既存のマンモグラフィー装置の場合におけるように曲線路に従うように構成されるが、本発明の原理は、X線源を直線的に動かす場合にも実現されることができる。
【0033】
角度を別の観点から考慮すると、X線源13の全体的な変位に対する、曝射期間中の固定手段16、17の個々の微小な回転の角度間の比は、約1/10であるように構成されることができる。撮像手順は、約11回〜15回の曝射期間からなるように構成されることができる。
【0034】
様々な乳房の厚み及びX線源13の所望速度が、最適であることに影響を及ぼす可能性がある場合としても、本発明の好ましい実施形態は、タングステン陽極を含むX線源13の使用を含むが、この使用は、セレンベースの撮像検出器、特に、低エネルギーX線量子(乳房組織に貫通する可能性がないであろう)を吸収する適正な厚みの銀フィルターを使用するような適正な構成の場合は、幾つかの他の構成と比較して放射線量が低減することになり得る。本発明の好ましい実施形態に関して、投影画像のためにおよそ50ms〜100msの曝射時間、並びに、およそ35kV〜40kV、最大45kVまでものX線管電圧及び約5mAsの撮像パラメーター値を用いることができる。kV値が約30〜34の場合、約10〜13のmAs値を用いることができる。
【0035】
本発明の好ましい一実施形態は、固定手段と機能的に接続している構成を含み、圧迫板16、17間のスペースに組織を引き伸ばす手段が配置されている。そのような手段は、例えば図4に示すような構成を含むように構成することができ、ここでは、上下の伸張装置30が圧迫板16、17の双方と一体化している。伸張装置30は、プラスチックシート31等、伸張手段に対して係合して引っ張る手段を含むように構成することができることで、圧迫板16、17間での乳房の圧迫に関して、撮像のために乳房を位置決めする際に乳房組織が圧迫板16、17間に引き伸ばされる。そのような構成により、本発明に関して、マンモグラフィーの技術分野において通常用いられるよりも、おそらくは10%低い圧迫を用いることが可能であり、それにより、乳房の圧迫及び回転(turning)の双方を含む撮像手順が扱いやすいものとなる。
【0036】
上記において、本発明をマンモグラフィーに関して、X線源を回転軸回りに回転させる図を参照しながら主に説明してきた。本発明の基本概念は、他種の医療用X線撮像用途にも、すなわち、乳房以外の対象物の撮像に、また、対象物の曝射が広いX線ビームによる直線走査運動であるものに関して適用することができる。図4a及び図4bには、X線源13がその初期の位置からその端位置に直線的に動くように構成されている様子が提示されており、そのような動きの最中、X線源が励起されているときは常に、固定手段16、17がX線源13と同じ速度でかつ同じ方向に動く(図4a)。次いで、非曝射期間中、固定手段16、17は、曝射期間中の方向とは逆の方向に動く。曝射期間中、検出器もまた好ましくは、X線源13の動きに同期するように動く。X線ビームの構成寸法及び幅寸法により、達成可能な断層角度が確定する。曝射期間中の直線的な動きの長さは例えば0.5mm〜2mmとすることができる。
【0037】
マンモグラフィー以外の、本発明の考えられる様々な他の用途を鑑み、実際には、対象物固定手段16、17よりもむしろ対象物位置決め手段16、17という用語が用いられることがあり得るであろう。本発明は、マンモグラフィーにおいて用いられるいわゆるフルフィールドサイズ及びより小型の撮像検出器の双方に関しての使用に適用可能である。
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図5