特許第5709764号(P5709764)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5709764
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】セリア−ジルコニア−ゼオライト触媒体
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/46 20060101AFI20150409BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20150409BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20150409BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20150409BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20150409BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20150409BHJP
【FI】
   B01J29/46 A
   B01J37/02 301C
   B01J37/08ZAB
   B01D53/36 102C
   F01N3/10 A
   F01N3/28 301P
   F01N3/28 301C
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-552147(P2011-552147)
(86)(22)【出願日】2010年2月25日
(65)【公表番号】特表2012-519067(P2012-519067A)
(43)【公表日】2012年8月23日
(86)【国際出願番号】US2010025337
(87)【国際公開番号】WO2010099275
(87)【国際公開日】20100902
【審査請求日】2013年2月22日
(31)【優先権主張番号】12/395,160
(32)【優先日】2009年2月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】アディブ,カヴェー
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,ジャックリーン エル
(72)【発明者】
【氏名】オグンウミ,スティーヴン ビー
【審査官】 壺内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−226414(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/022229(WO,A1)
【文献】 特開平10−128123(JP,A)
【文献】 特開2006−326437(JP,A)
【文献】 特開2009−022821(JP,A)
【文献】 特開2009−022820(JP,A)
【文献】 特開平04−363143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J21/00−38/74
B01D53/86,53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ce:Zr酸化物および金属交換または含侵ゼオライトを含む複数の壁を有するNOx還元押出触媒体において、前記Ce:Zr酸化物およびゼオライトが前記壁全体に亘って均一に分布しており、該触媒体はタングステンを含有せず、セリアおよびジルコニアが、1.0以下のジルコニア/セリアモル比で存在することを特徴とする触媒体。
【請求項2】
酸化タングステンおよび酸化バナジウムを含まないことを特徴とする請求項1記載の触媒体。
【請求項3】
さらに鉄を含むことを特徴とする請求項1記載の触媒体。
【請求項4】
Ce:Zr酸化物および鉄−ゼオライトから実質的になる複数の壁を有する押出触媒体において、前記Ce:Zr酸化物および鉄−ゼオライトが前記壁全体に亘って均一に分布しており、該触媒体はタングステンを含有せず、セリアおよびジルコニアが、1.0以下のジルコニア/セリアモル比で存在し、200℃から600℃のNOxガス温度でNOxガスを少なくとも30%還元することができることを特徴とする触媒体。
【請求項5】
バナジウム、白金、パラジウム、およびロジウムを含有しないことを特徴とする請求項4記載の触媒体。
【請求項6】
NOx還元触媒体を製造する方法において、
無機結合剤および酸化物系成分の混合物を成形体に押し出す工程であって、前記酸化物系成分が、金属交換または含侵ゼオライトおよびCe:Zr酸化物を含み、Zr/Ceモル比が1.0以下であり、該混合物がWを含まない工程、次いで、
前記成形体を少なくとも2時間に亘り少なくとも450℃の炉温度で焼成する工程、
を有してなる方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、2009年2月27日に出願された米国特許第12/395160号に優先権の恩恵を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、広く、エンジン排気システムに使用するためなどの、押出ハニカム触媒体などの触媒および触媒体に関する。
【背景技術】
【0003】
触媒担体または支持体を含む、エンジン排ガスの排出物質を減少させるための様々な方法および装置が公知である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、エンジン排気システムに使用するためなどの、触媒および触媒体、例えば、押出ハニカム触媒体、並びにその製造に関する。
【0005】
ある態様において、本開示は、セリア、ジルコニア、および鉄交換または含侵ゼオライト、または銅交換または含侵ゼオライトなどの金属交換または含侵ゼオライトから構成されるNOx還元触媒体であって、該触媒体はタングステンを実質的に含有せず、セリアおよびジルコニアが、1.0以下のジルコニア/セリアのモル比で存在するものである触媒体に関する。ある実施の形態において、セリアおよびジルコニアは、0.9以下のジルコニア/セリアのモル比で存在する。ある実施の形態において、セリアおよびジルコニアは、0.8以下のジルコニア/セリアのモル比で存在する。ある実施の形態において、セリアおよびジルコニアは、0.7から1.0までのジルコニア/セリアのモル比で存在する。触媒体が、酸化タングステンおよび酸化バナジウムを実質的に含まない、または含まないことが好ましい。ある実施の形態において、触媒体は鉄をさらに含み、これらの実施の形態の内のいくつかにおいて、ゼオライトが鉄を含有する。ある実施の形態において、触媒体は、50質量%以上のゼオライトを含む。ある実施の形態において、触媒体は、60から80質量%のゼオライトを含む。ある実施の形態において、触媒体は50質量%以下のCe:Zrを含む。ある実施の形態において、触媒体は20から40質量%のCe:Zrを含む。ある実施の形態において、触媒体は、60から80質量%のゼオライトおよび20から40質量%のCe:Zrを含む。
【0006】
ある実施の形態において、触媒体は、150℃から600℃の全ての温度でNOxガスを少なくとも20%還元する。ある実施の形態において、触媒体は、200℃から600℃の全ての温度でNOxガスを少なくとも30%還元する。ある実施の形態において、触媒体は、200℃から600℃の全ての温度でNOxガスを少なくとも40%還元する。ある実施の形態において、触媒体は、200℃から600℃の全ての温度でNOxガスを少なくとも50%還元する。ある実施の形態において、触媒体は、200℃から600℃の全ての温度でNOxガスを少なくとも60%還元する。
【0007】
ある実施の形態において、金属交換または含侵ゼオライトは、ZSM−5、ベータ型ゼオライト、モルデナイト、Y型ゼオライト、超安定型Y型ゼオライト、リン酸アルミニウム・ゼオライト、およびそれらの混合物からなる群より選択される。
【0008】
ある実施の形態において、触媒体は、白金、パラジウム、およびロジウムを実質的に含まない、または含まない。
【0009】
ある実施の形態において、触媒体は、複数の平行な通路を画成する複数の壁を有する。ある実施の形態において、触媒体の少なくとも一部はハニカム形状である。触媒体の壁が、混合物の押出しにより形成されることが好ましい。
【0010】
別の態様において、本開示は、ここに開示された触媒体の使用に関し、その使用は、NOxガスを含有するエンジン排気流を接触させることを含む。ある実施の形態において、排気流の温度は200℃未満であり、NOxガスは、触媒体との接触により接触還元される。
【0011】
別の態様において、本開示は、セリア、ジルコニア、およびゼオライトから実質的になる触媒体に関し、ここで、セリアとジルコニアは、1.0以下のジルコニア/セリアのモル比で存在し、触媒体は、200℃から600℃のNOxガス温度でNOxガスを少なくとも30%還元することができる。ある実施の形態において、触媒体は、タングステン、バナジウム、白金、パラジウム、およびロジウムを含有しない。
【0012】
別の態様において、本開示は、触媒体を製造する方法において、無機結合剤および酸化物系成分の混合物を成形体に押し出す工程であって、酸化物系成分が、ゼオライトおよびCeO2−ZrO2から構成され、Zr/Ceモル比が1.0以下であり、その混合物がWを実質的に含まない、または含まない工程;次いで、成形体を少なくとも2時間に亘り少なくとも450℃の炉温度で焼成する工程を有してなる方法に関する。
【0013】
本開示の追加の特徴と利点は、以下の詳細な説明に述べられており、一部は、その説明から当業者には容易に明らかになるか、または以下の詳細な説明、特許請求の範囲、並びに添付の図面を含む、ここに記載された主題を実施することによって認識されるであろう。
【0014】
先の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方とも、特許請求の範囲に記載された本発明の性質および特徴を理解するための概要または骨子を提供することが意図されている。添付の図面は、本開示をさらに理解するために含まれており、本明細書に包含され、その一部を構成する。図面は、本開示の様々な実施の形態および態様を示しており、説明と共に、本発明の原理および動作を説明する働きをする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】入口ガス温度の関数としての、実施例3および比較例4に関するNOxガス転化率を比較するグラフ
図2】入口ガス温度の関数としての、実施例5および比較例6に関するNOxガス転化率を比較するグラフ
図3】入口ガス温度の関数としての、実施例1および比較例2に関するNOxガス転化率を比較するグラフ
【発明を実施するための形態】
【0016】
ここで、本開示の実施の形態、添付の図面に示された実施例および態様を詳しく参照する。
【0017】
ある例示の実施の形態において、押出ハニカム触媒体(「触媒体」)は、金属交換ゼオライトを、セリア−ジルコニア(Ce:Zr酸化物)およびシリコーンなどの結合剤およびMethocel(登録商標)などの有機結合剤と混合することにより提供される。混合された組成物を押し出して、未焼成体と称される、ハニカム構造を有するものなどのセルラ体を形成することができる。このセルラ体は次いで、焼成されて、触媒体が形成される。ある実施の形態において、触媒体は、NOx、HCおよびアンモニアガスを含有する、ディーゼルエンジンおよびリーンバーンエンジンの排ガスなどのエンジン排気流を処理する用途に特に適している。
【0018】
Ce:Zr酸化物およびゼオライトは、自動車の排ガス温度で安定であり、選択触媒還元(「SCR」)を示し、尿素噴霧に使用することができる。これらの触媒は、最適なNOx還元性能のためのNH3吸着、NOx吸着およびNOx酸化部位を有する。表面上に吸着されたNH3は、隣接する吸着されたNOxと相互作用する。したがって、NOxは窒素とH2Oに還元される。しかしながら、ゼオライトおよびCe:Zr酸化物は、異なる温度範囲でNOxSCR活性を示す。ゼオライト(例えば、Fe−ZSM−5)は、高温領域(例えば、400℃、または500℃、またはさらには600℃超)で相当な比率のNOxを転化するのに対し、Ce:Zr酸化物は、低温領域(例えば、350℃、または300℃、またはさらには250℃未満)で相当な比率NOxを転化する。別の態様において、HCおよびアンモニアガスも、触媒体によって接触還元される。
【0019】
金属ゼオライトをCe:Zr酸化物と組み合わせることにより、効果的なNOx転化または還元温度窓が広がる。例えば、ある実施の形態は、NOxガスの効果的な還元のために200℃から600℃の動作温度窓を示した。反対に、HZSM−5ゼオライト単独の低温転化窓は約325℃である。転化温度窓の下限を広げることは、ディーゼル排気ガスなどのエンジン排ガスを処理するのに特に都合よいであろう。
【0020】
バッチ混合物にタングステンまたはタングステン化合物(ここでは、別記しない限り、集合的にタングステンと称する)を加えずに、またはタングステンを成形体または成形焼成体に加えずに、効果的なNOx転化を達成できることを発見した。
【実施例】
【0021】
本開示は、本発明を実施するための組成物および方法の単なる例示であることが意図されている、以下の実施例を参照することによって、さらに理解されるであろう。
【0022】
表1には、実施例および比較例が列記されており、各々は、ハニカム体に押し出され、5時間に亘り650℃で焼成されたものである。比較例2および4は、押出し後に成形体に含侵されたWO3を有するのに対し、比較例6は、押し出されたバッチ混合物中にWO3を有した。全ての実施例および比較例は、焼成され、次いで、6時間に亘り700℃で熟成された。押出混合物は、他の非反応性充填剤および結合剤(上乗せ添加物として)を含有してもよい。
【表1】
【0023】
図1は、71質量%のFe−ZSM−5およびZr/Ceのモル比が0.8である29質量%のCeO2:ZrO2から製造された押出ハニカム触媒体の実施例3および比較例4のNOx転化性能を示しており、タングステンの添加(焼成前に比較例4の押出成形体に含侵されたWO3)により、実施例3より優れた改善を実質的に示していない。
【0024】
図2は、71質量%のFe−ZSM−5およびZr/Ceのモル比が0.8である29質量%のCeO2:ZrO2から製造された押出ハニカム触媒体の実施例5および比較例6のNOx転化性能を示しており、WO3の混合物(比較例6を形成するために押し出される)への添加はさらに効果的でないことを示している。
【0025】
図3は、71質量%のFe−ZSM−5およびZr/Ceのモル比が0.7である29質量%のCeO2:ZrO2から製造された押出ハニカム触媒体の実施例1および比較例2のNOx転化性能を示しており、タングステンが添加された(焼成前に比較例2の押出成形体に含侵されたWO3比較例2と比べて実施例1のさらに著しい性能の改善を示している。
【0026】
例示のゼオライトとしては、ZSM−5、ベータ型ゼオライト、モルデナイト、Y型ゼオライト、超安定型Y型ゼオライト、およびリン酸アルミニウム・ゼオライト、並びにそれらの混合物が挙げられる。これらのゼオライトは、当業者によって、容易に鉄により交換または含侵できる。Fe−ZSM−5ゼオライトの供給源の1つは、米国、ペンシルベニア州、バリー・フォージ所在のZeolyst International社により供給される。ある実施の形態において、ゼオライト材料は、0.5nmから0.7nmに及ぶ細孔径を有し得る。ある実施の形態において、ゼオライトは、15から100の、他の実施の形態において15から50の、他の実施の形態において15から30のSi/Al比を有する。
【0027】
未焼成体を焼成するための焼成手順は、周期的(またはバッチ式)炉などの公知の炉、または1つ以上のコンベヤを使用したトンネル窯などの窯により実施できる。ある実施の形態において、未焼成体は、マイクロ波加熱炉または従来の炉により、乾燥させて水を除去することができる。この中で、未焼成体は、60から100℃の間の温度に加熱される。ある実施の形態において、未焼成構造体は、未焼成構造体を空気などの加熱ガス環境に曝露することにより焼成され、ここで、空気は、約100℃〜1200℃の範囲の温度に、これらの実施の形態のいくつかでは、約500℃〜900℃の間の温度に加熱され、その温度範囲での滞留時間は、構造体の焼成を完了するのに十分な期間である。滞留時間は、約1から48時間、ある実施の形態においては1から10時間、ある実施の形態においては3から6時間であり得、例えば、使用される成分のタイプまたは供給源によるであろう。
【0028】
触媒体は、バッチ材料を混合し、その混合物をブレンドし、未焼成体を形成し、その後、未焼成体を焼結または焼成して、硬質多孔質構造体を形成することによって製造される。押出しに適したバッチ混合物は、上述した成分を適切な液体ビヒクルと混合することによって調製することができる。ビヒクルは、焼成前に破壊されるのに耐えるために、成形後の十分な未焼成強度および可塑成形性をバッチに与えるのに必要な押出助剤および水を含んでよい。混合工程中にバッチに、様々な滑剤、結合剤、界面活性剤、および粘度改質剤を加えて、粘度制御、可塑性、および焼成前強度を提供して差し支えない。
【0029】
結合剤成分は、物体を互いに保持して、物体の強力な機械的構造を達成する。適切な結合剤としては、シリカまたはシリカ形成材料が挙げられる。結合剤の混合物または組合せを使用してもよい。結合剤は、シリコーン樹脂および/またはエマルションなどのシリコーン結合剤から選択されることが好ましい。これらは、前駆体、例えば、シリコーン樹脂などのシリカ前駆体として提供してもよく、またはコロイドシリカが適している。結合剤は、シリコーン樹脂またはシリコーンエマルションの形態で含まれることが好ましい。シリコーン樹脂は、水性エマルションの形態で混合物に加えて差し支えなく、両方とも独国、ミュンヘン所在のWacker-Chemie GmbHから入手できる、Wacker AG SILRES(登録商標)M50E(報告された固体含有量が52%〜55%であるメチルシリコーン樹脂のエマルション)またはWacker AG 「SILRES」M97Eなどのように市販されている。ある実施の形態において、結合剤は、焼成セラミックがシリカ結合剤を約5質量%から約30質量%、好ましくは15質量%〜30質量%に及ぶ量、より好ましくは約20質量%の量で含有するように、バッチ混合物中に含まれる。結合剤の量は、生成物中の結合剤の質量である、熱処理後の予測される質量に基づく。例えば、シリコーン樹脂が使用される場合、生成物中の結合剤の質量は、樹脂により加えられるシリカの質量である。焼成中、1種類以上のシリカ形成材料の形態またはシリカそれ自体の形態で提供されるシリカは、軟化し、その物体の全体に亘り広まる。焼成後に冷却した際に、シリカは硬化し、その物体を構成する他の材料の結合剤として働く。
【0030】
押出助剤は、通常、結合剤および可塑剤/ペースト形成剤、並びに滑剤などの加工助剤を含む。可塑剤/ペースト形成剤は、成形中に可塑性、および焼成前の押出体にある種の強度を提供する。ここに述べた目的に適した有機ペーストとしては、セルロースエーテルタイプの材料および/またはそれらの誘導体が挙げられる。セルロースエーテルおよび/またはその誘導体の供給源としては、Dow Chemical Co., からのセルロースエーテルの「Methocel」系列、およびその混合物が挙げられる。メチルセルロースが、本開示の押出体の配合に使用するのに適した有機ペースト成形助剤の一例である。結合剤、有機ペーストおよび他の加工助剤は、一般に、主相および副相の合計質量(熱処理後の予測される質量に基づく)を超えた上乗せ添加として加えられる。有機ペーストの上乗せ添加は、一般に、約3%〜8%の範囲にあるが、それより多くまたは少なく使用してもよい。有機ペーストまたは一時的結合剤は、ハニカム体のその後の焼成中に焼き払われる。取扱いおよび押出しに必要な可塑性を達成するために、バッチ成分に水を加えてもよい。この点に関して、加工を容易にするために、水性結合剤を使用して差し支えない。
【0031】
ハニカム構造体を形成する方法の1つは、成形ダイに通す押出しによるものである。ラム押出機、連続オーガー、または二軸スクリュー押出機または他の公知の押出装置を使用して差し支えない。本開示によるハニカム体は、どのような都合の良いサイズおよび形状、例えば、直円円柱形状構造体を有しても差し支えない。ハニカム体は、壁のマトリクスを形成するように押し出すことができ、その中で、主相材料、副相材料(もし存在すれば)および永久的結合剤が壁全体に亘って均一に分布している。壁のマトリクスは、ハニカム体を通って延在する通路を画成する。ハニカム体は、その構造体の外周で表皮セメント材料によりさらに被覆しても差し支えない。
【0032】
ある実施の形態において、触媒体は、ゼオライトの第1と第2の酸化物との混合物から生じる熱膨張係数(「CTE」)の正味差し引きまたは低下のために、改善された耐熱衝撃性および改善された熱機械的耐久性を有し得る。耐熱衝撃性はCTEに依存する。CTEがゼロに近いほど、耐熱衝撃性はより強くなる。ゼオライトは、典型的に、その有用な安定温度範囲に亘り低いまたは負のCTE、すなわち、−20×10-7/℃のCTE、またはより低いCTEを有する。Ce:Zr酸化物は、典型的に、ゼオライトよりも高いCTEを有する。触媒体は、Ce:Zr酸化物と組み合わされていないゼオライト材料から製造された触媒体よりも高いCTEを有する。正のCTEを有するCe:Zr酸化物は、負のCTEを有するゼオライトと釣り合う。それゆえ、本開示は、潜在的に、耐熱衝撃性ゼオライト系ハニカム体およびその製造方法を提供する。
【0033】
本開示の押出焼成ハニカム体の実施の形態は、フロースルー型基体としてエンジン排気システムに使用するのに特に適している。ある実施の形態において、提供された物体は、触媒材料でウォッシュコートされる。しかしながら、本開示のハニカム体は、高表面積および低熱膨張を示すことが好ましく、ある実施の形態において、過剰な高表面積のウォッシュコートの必要性が減少するまたはなくなる。
【0034】
ある実施の形態において、ハニカム体はフロースルー型基体である。
【0035】
本発明の精神および範囲から逸脱せずに、本開示の様々な改変および変更を行えることが当業者には明らかである。それゆえ、本発明は、本開示の改変および変更を、それらが添付の特許請求の範囲およびその同等物の範囲に含まれるという条件で包含することが意図されている。
図1
図2
図3