【文献】
European Journal of Cancer. Supplement.,2008年10月 1日,Vol.6, No.12,p.69-70, POSTER:220
【文献】
Leuk. Res.,2007年 5月,Vol.31, No.5,p.673-682
【文献】
Int. J. Cancer,2006年,Vol.118, No.1,p.209-214
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
造血器腫瘍が非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞造血リンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、AML、及びMCLから選択される請求項1から15の何れか一項に記載の医薬。
二酸化ケイ素、粉末セルロース、微結晶セルロース、金属ステアレート、アルミノケイ酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、コーンスターチ、炭酸マグネシウム、アスベスト非含有タルク、ステアロウェット(stearowet)C、スターチ、スターチ1500、ラウリル硫酸マグネシウム、酸化マグネシウム、及びそれらの組み合わせから選択される薬学的に許容可能な流動促進剤を含有する請求項20又は21に記載の薬学的製剤。
非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞造血リンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、AML、及びMCLから選択される造血器腫瘍の治療方法における使用のための請求項20から23の何れか一項に記載の薬学的製剤。
非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞造血リンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、AML、及びMCLから選択される造血器腫瘍の治療のための医薬の製造における請求項1から18の何れか一項に記載の治療剤の組み合わせの使用。
【発明を実施するための形態】
【0034】
定義
本明細書及び特許請求の範囲において使用される場合、「含有する」、「含有してなる」、「含む」及び「含んでなる」なる語は、述べられた特徴、整数、成分、又は工程の存在を特定する意図のものであるが、一又は複数の他の特徴、整数、成分、工程、又はその群の存在又は付加を排除するものではない。
【0035】
「治療する」及び「治療」なる用語は、治癒的処置と、目的が例えば癌の増殖、発症又は広がりのような望まれない生理学的変化又は疾患を防止し又は遅延させる(少なくする)ことである予防的又は防止的手段の双方を意味する。治療を必要とする者は、既に疾患を持つ者並びに疾患になりやすい者又は疾患が防止されるべき者を含む。この発明の目的では、有益な又は所望の臨床結果は、限定するものではないが、検出可能であれ検出不可能であれ、徴候の軽減、疾患の程度の低減、疾患の安定化(つまり悪化しない)状態、疾患進行の遅延又は緩徐化、疾患状態の回復又は緩和、及び寛解(部分的であろうと完全であろうと)を含む。「治療」は、治療を受けない場合に予想される生存率と比較して生存を延長することをまた意味しうる。治療を必要とする者は、既に症状又は疾患を持つ者並びに症状又は疾患になりやすい者又は症状又は疾患が防止されるべき者を含む。
【0036】
被験者又は哺乳動物は、本発明の方法に従い、治療的有効量の併用治療剤を受容した後ならば、非ホジキンリンパ腫のような造血器腫瘍に対して成功裏に「治療され」、患者は、(i)癌細胞数の低減又は癌細胞の不在における観察可能な及び/又は測定可能な減少;(ii)腫瘍サイズの低減;軟部組織又は骨中への癌の広がりを含む、周辺器官への癌細胞の浸潤の阻害(つまり、ある程度の遅延化、好ましくは停止);(iii)腫瘍転移の阻害(つまり、ある程度の遅延化、好ましくは停止);(iv)腫瘍増殖の、ある程度の阻害;又は(v)特定の癌に関連する一又は複数の徴候のある程度の軽減で、罹患率及び死亡率の低減、及び生活の質の改善を含むものの、一又は複数を示す。併用治療剤が増殖を防止し、及び/又は存在する癌細胞を死滅させうる程度まで、それは細胞分裂阻害性及び/又は細胞毒性でありうる。これらの徴候又は症状の減少はまた患者によって感じられうる。疾患における成功裏の治療及び改善を評価するための上記パラメーターは、医師にはなじみの常套的手順により、容易に測定可能である。癌治療法にとって、有効性は、例えば無増悪時間(TTP)及び/又は奏功率(RR)を評価することによって測定することができる。転移は病期診断試験、及び骨スキャン、及びカルシウムレベル及び骨への広がりを測定するための他の酵素についての試験により測定することができる。また、CTスキャンは、領域内の骨盤及びリンパ節への広がりを調べるために使用することができる。胸部X線及び既知の方法による肝臓酵素レベルの測定は、それぞれ肺及び肝臓への転移を調べるために使用することができる。
【0037】
「造血器腫瘍」なる用語は、例えば白血球、リンパ球、ナチュラルキラー細胞、形質細胞及び骨髄系細胞、例えば好中球及び単球のような細胞に関係する造血中に生じる癌又は過剰増殖疾患を意味する。造血器腫瘍は、表1,国際疾病分類(ICD−O)の形態コードを伴うヒト造血器腫瘍のWHO分類;造血器及びリンパ系組織の腫瘍(Jaffe E.S., Harris N.L., Stein H., Vardiman J.W. (Eds.) (2001): World Health Organization Classification of Tumours. Pathology and Genetics of Tumours of Hematopoietic and Lymphoid Tissues. IARC Press:Lyon)に列挙された疾患を含む。状態は、悪性腫瘍を/3で、悪性度が低いか又は不明確な病巣のものを/1で表した。
【0038】
表1
I. 慢性骨髄増殖性疾患
慢性骨髄性白血病−ICD−O9875/3
慢性好中球性白血病−ICD−O9963/3
慢性好酸球性白血病/好酸球増加症候群−ICD−O9964/3
真性多血症−ICD−O9950/3
慢性特発性骨髄線維症−ICD−O9961/3
本態性血小板血症−ICD−O9962/3
分類不可能型慢性骨髄増殖性疾患−ICD−O9975/3
II. 骨髄異形成/骨髄増殖性疾患
慢性骨髄単球性白血病−ICD−O9980/3
非定型慢性骨髄性白血病−ICD−O9876/3
若年性骨髄単球性白血病−ICD−O9946/3
分類不可能型骨髄異形成/骨髄増殖性疾患−ICD−O9975/3
III. 骨髄異形成症候群
不応性貧血−ICD−O9980/3
環状鉄芽球を伴う不応性貧血−ICD−O9982/3
複数系統の異形成を伴う不応性血球減少症−ICD−O9985/3
芽球増加を伴う不応性貧血−ICD−O9983/3
単独del(5q)染色体異常を伴う骨髄異形成症候群−ICD−O9986/3
分類不可能型骨髄異形成症候群9989/3
IV. 急性骨髄性白血病
特異的染色体異常を伴う急性髄性白血病
t(8;21)(q22;q22)を持つAML、AML1/ETO−ICD−O9896/3
inv(16)(p13q22)又はt(16;16)(p13;q22)を持つAML、CBFb/MYH11−ICD−O9871/3
急性前骨髄球性白血病(t(15;17)(q22;q12)を持つAML、PML−RARa及び変異体)−ICD−O9866/3
11q23(MLL)を持つAML−ICD−O9897/3
多系列の異形成を伴う急性骨髄性白血病−ICD−O9895/3
治療関連急性骨髄性白血病/骨髄異形成症候群−ICD−O9920/3
他に分類できない急性骨髄性白血病
最未分化型急性骨髄性白血病−ICD−O9872/3
未分化型急性骨髄性白血病−ICD−O9873/3
分化型急性骨髄性白血病−ICD−O9874/3
急性骨髄単球性白血病−ICD−O9867/3
急性単芽球性/単球性白血病−ICD−O9891/3
急性純粋赤白血病−ICD−O9840/3
急性巨核芽球性白血病−ICD−O9910/3
急性好塩基球性白血病−ICD−O9870/3
骨髄線維症を伴う急性汎骨髄症−ICD−O9931/3
顆粒球性肉腫−ICD−O9930/3
系統特定が困難な急性白血病−ICD−O9805/3
V. B細胞性腫瘍
前駆造血器腫瘍
前駆Bリンパ芽球性白血病/−ICD−O9835/3
リンパ腫−ICD−O9728/3
成熟造血器腫瘍
慢性リンパ球性白血病/−ICD−O9823/3
小リンパ球性リンパ腫−ICD−O9670/3
造血性前リンパ球性白血病−ICD−O9833/3
リンパ形質細胞性リンパ腫−ICD−O9671/3
脾発性辺縁帯リンパ腫−ICD−O9689/3
ヘアリー細胞白血病−ICD−O9940/3
形質細胞性骨髄腫−ICD−O9732/3
骨孤立性形質細胞腫−ICD−O9731/3
節外性形質細胞腫ICD−O9734/3
節外性濾胞辺縁帯リンパ腫(粘膜関連リンパ組織リンパ腫)(MALTリンパ腫) −ICD−O9699/3
節性濾胞辺縁帯リンパ腫−ICD−O9699/3
濾胞性リンパ腫−ICD−O9690/3
マントル細胞リンパ腫−ICD−O9673/3
びまん性大細胞型造血性リンパ腫−ICD−O9680/3
縦隔(胸腺)大細胞型リンパ腫−ICD−O9679/3
血管内大細胞型造血性リンパ腫−ICD−O9680/3
原発性浸出液リンパ腫−ICD−O9678/3
バーキットリンパ腫/−ICD−O9687/3
白血病−ICD−O9826/3
不確定な悪性度の造血性増殖
リンパ腫様肉芽腫症−ICD−O9766/1
移植後多形リンパ増殖性疾患−ICD−O9970/1
VI. T細胞及びNK細胞性腫瘍
前駆T細胞腫瘍
前駆Tリンパ芽球性白血病/− ICD−O9837/3
リンパ腫−ICD−O9729/3
芽球型NK細胞リンパ腫−ICD−O9727/3
成熟T細胞及びNK細胞腫瘍
T細胞性前リンパ球性白血病−ICD−O9834/3
T細胞性大型顆粒性リンパ球白血病−ICD−O9831/3
侵攻性NK細胞白血病−ICD−O9948/3
成人T細胞白血病/リンパ腫−ICD−O9827/3
節外性NK/T細胞リンパ腫−ICD−O9719/3
腸症型T細胞リンパ腫−ICD−09717/3
肝脾T細胞性リンパ腫−ICD−O9716/3
皮下蜂窩織炎様T細胞リンパ腫−ICD−O9708/3
菌状息肉腫−ICD−O9700/3
セザリー症候群−ICD−O9701/3
原発性皮膚型未分化大細胞リンパ腫−ICD−O9718/3
非特異型末梢性T細胞リンパ腫−ICD−O9702/3
血管免疫芽球性T細胞リンパ腫−ICD−O9705/3
未分化大細胞型リンパ腫−ICD−O9714/3
悪性の可能性をもつT細胞増殖
リンパ丘疹症−ICD−O9718/1
VII. ホジキンリンパ腫
結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫−ICD−O9659/3
古典的ホジキンリンパ腫−ICD−O9650/3
結節硬化型ホジキンリンパ腫−ICD−O9663/3
リンパ球豊富型ホジキンリンパ腫−ICD−O9651/3
混合細胞型ホジキンリンパ腫−ICD−O9652/3
リンパ球減少型ホジキンリンパ腫−ICD−O9653/3
VIII. 組織球腫瘍および樹状細胞腫瘍
マクロファージ/組織球肉腫
組織球性肉腫−ICD−O9755/3
樹状細胞腫瘍
ランゲルハンス細胞組織球症−ICD−O9751/1
ランゲルハンス細胞肉腫−ICD−O9756/3
指状嵌入樹状細胞肉腫/腫瘍−ICD−O9757/3/1
濾胞樹状細胞肉腫/腫瘍−ICD−O9758/3/1
他に特定できない樹状細胞肉腫−ICD−O9757/3
IX. 肥満細胞症
皮膚肥満細胞症
無痛性全身性肥満細胞症−ICD−O9741/1
関連するクローン血液学的非肥満細胞系統疾患を伴う全身性肥満細胞症−ICD−O9741/3
侵襲性全身性肥満細胞症−ICD−O9741/3
肥満細胞白血病−ICD−O9742/3
肥満細胞肉腫−ICD−O9740/3
真皮外肥満細胞腫−ICD−O9740/1
【0039】
「B細胞」は、骨髄内で成熟するリンパ球であり、ナイーブB細胞、メモリーB細胞、又はエフェクターB細胞(形質細胞)を含む。ここでのB細胞は正常な又は非悪性のB細胞である。
【0040】
ここでの「抗体」なる用語は最も広義に使用され、特にモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つのインタクトな抗体から形成される多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、及びそれらが所望の生物活性を示す限り抗体断片を包含する。
【0041】
「治療的に有効な量」なる語句は、(i)特定の疾病、症状、又は疾患を治療し又は予防し、(ii)特定の疾病、症状、又は疾患の一又は複数の徴候を減弱にし、寛解させ、又は除き、又は(iii)ここに記載された特定の疾病、症状、又は疾患の一又は複数の徴候の発症を予防し又は遅延させる、本発明の化合物の量を意味する。癌の場合、薬剤の治療的に有効な量は、癌細胞の数を減少させ;腫瘍サイズを減少させ;周辺器官への癌細胞の浸潤を阻害し(つまり、ある程度まで遅くさせ、好ましくは停止させ);腫瘍転移を阻害し(つまり、ある程度まで遅くさせ、好ましくは停止させ);腫瘍増殖をある程度まで阻害し;及び/又は癌に伴う徴候の一又は複数をある程度軽減しうる。薬剤が増殖を防止し、及び/又は存在する癌細胞を死滅させうる程度まで、それは、無増悪期間(TTP)及び/又は奏功率(RR)によって測定して、細胞分裂阻害性及び/又は細胞傷害性でありうる。
【0042】
「癌」及び「癌性」という用語は、典型的には調節されない細胞増殖により特徴付けられる哺乳動物における生理学的状態を意味する。「腫瘍」は一又は複数の癌性細胞を含む。癌の例には、限定されるものではないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、骨髄腫、及び白血病又はリンパ性腫瘍が含まれる。このような癌のより特定な例には、扁平上皮細胞癌(例えば上皮扁平細胞癌)、肺癌、例えば小細胞肺癌、非小細胞肺癌(「NSCLC」)、肺の腺癌及び肺の扁平上皮癌、腹膜癌、肝細胞癌、胃癌(gastric又はstomach)、例えば胃腸癌、膵臓癌、神経膠芽細胞腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝腫瘍、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜又は子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌(kidney又はrenal)、前立腺癌、陰門癌、甲状腺癌、肝癌、肛門癌、陰茎癌、並びに頭頸部癌が含まれる。
【0043】
「慢性」投与とは、初期の治療効果(活性)を長期間にわたって維持するようにするために、急性態様とは異なり連続的な態様での薬剤の投与を意味する。「間欠」投与とは、中断無く連続的になされるのではなく、むしろ性質が周期的になされる治療である。
【0044】
癌の治療、その症状の軽減の目的のための「哺乳動物」は、ヒト、家畜、及び農場飼育動物、及び動物園、スポーツ、又はペット動物、例えばイヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウサギなどを含む哺乳動物と分類される任意の動物を意味する。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
【0045】
一又は複数の更なる治療剤「と組合わせての(との併用)」投与は同時(同時発生)及び任意の順序での連続的(交互)投与を含む。
【0046】
「化学療法剤」は、作用機序に関わりなく、癌の治療に有用な生物学的(大分子)又は化学的(小分子)化合物である。化学療法剤のクラスは、限定しないが、アルキル化剤、代謝拮抗薬、紡錘体毒植物アルカロイド、細胞傷害性/抗腫瘍抗生物質、トポイソメラーゼインヒビター、タンパク質、抗体、腫瘍親和性感光色素、及びキナーゼ阻害剤を含む。化学療法剤は、「標的療法」及び非標的の一般的な化学療法で使用される化合物を含む。
【0047】
化学療法剤の例は、デキサメタゾン、チオテパ、ドキソルビシン、ビンクリスチン、リツキシマブ、シクロホスファミド、プレドニゾン、メルファラン、レナリドミド、ボルテゾミブ、ラパマイシン、及びシタラビンを含む。
【0048】
化学療法剤の例はまたエルロチニブ(タルセバ(登録商標)、Genentech/OSI Pharm.)、ドセタキセル(タキソテール(登録商標)、Sanofi-Aventis)、5−FU(フルオロウラシル、5−フルオロウラシル、CAS番号51−21−8)、ゲムシタビン(ジェムザール(登録商標)、Lilly)、PD−0325901(CAS番号391210−10−9、Pfizer)、シスプラチン(シス−ジアミン、ジクロロ白金(II)、CAS番号15663−27−1)、カルボプラチン(CAS番号41575−94−4)、パクリタキセル(タキソール(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology)、テモゾロミド(4-メチル-5-オキソ-2,3,4,6,8-ペンタアザビシクロ[4.3.0]ノナ-2,7,9-トリエン-9-カルボキサミド、CAS番号85622−93−1、テモダール(TEMODAR)(登録商標)、テモダール(TEMODAL)(登録商標)、Schering Plough)、タモキシフェン((Z)-2-[4-(1,2-ジフェニルブタ-1-エニル)フェノキシ]-N,N-ジメチル-エタンアミン、ノルバデックス(登録商標)、ISTUBAL(登録商標)、VALODEX(登録商標))、ドキソルビシン(アドリアマイシン(登録商標))、Akti−1/2、HPPD、ラパマイシン、及びラパチニブ(タイケルブ(登録商標)、Glaxo SmithKline)を含む。
【0049】
化学療法剤の更なる例には、オキサリプラチン(エロキサチン(登録商標)、Sanofi)、ボルテゾミブ(ベルケイド(登録商標)、Millennium Pharm.)、スーテント(サニチニブ(登録商標)、SU11248、Pfizer)、レトロゾール(FEMARA(登録商標)、Novartis)、メシル酸イマチニブ(グリベック(登録商標)、Novartis)、XL−518(MEK阻害剤、Exelixis、国際公開第2007/044515号)、ARRY−886(MEK阻害剤、AZD6244、Array BioPharma、Astra Zeneca)、SF−1126(PI3K阻害剤、Semafore Pharmaceuticals)、BEZ−235(PI3K阻害剤、Novartis)、XL−147(PI3K阻害剤、Exelixis)、ABT−869(VEGF及びPDGFファミリーレセプターチロシンキナーゼの多標的阻害剤、Abbott Laboratories及びGenentech)、
ABT−263(Bcl−2/Bcl−xL阻害剤、Abbott Laboratories及びGenentech)、PTK787/ZK222584(Novartis)、フルベストラント(ファスロデックス(登録商標)、AstraZeneca)、ロイコボリン(フォリン酸)、ロナファルニブ(SARASAR(商標)、SCH66336、Schering Plough)、ソラフェニブ(ネクサバール(登録商標)、BAY43−9006、Bayer Labs)、ゲフィニチブ(イレッサ(登録商標)、AstraZeneca)、イリノテカン(カンプトサー(登録商標)、CPT−11、Pfizer)、ティピファニブ(ザーネストラ(商標)、Johnson & Johnson)、カペシタビン(ゼローダ(登録商標)、Roche)、アブラキサン(商標)(クレモフォア・フリー)、パクリタキセルのアルブミン遺伝子操作ナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners、Schaumberg、Il)、バンデタニブ(rINN、ZD6474、ZACTIMA(登録商標)、AstraZeneca)、クロラムブシル、AG1478、AG1571(SU5271;Sugen)、テムシロリムス(TORISEL(登録商標)、ワイス)、パゾパニブ(GlaxoSmithKline)、カンフォスアミド(テルサイタ(TELCYTA)(登録商標)、Telik)、チオテパ及びシクロホスファミド(シトキサン(CYTOXAN)(登録商標)、ネオサール(NEOSAR)(登録商標));スルホン酸アルキル、例えばブスルファン、イムプロスルファン及びピポスルファン;アジリジン、例えばベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、及びウレドーパ(uredopa);エチレンイミン及びメチルメラミン(methylamelamine)、例えばアルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド及びトリメチロメラミン;アセトゲニン(acetogenin)(特に、ブラタシン(bullatacin)及びブラタシノン(bullatacinone));カンプトテシン(例えば合成アナログのトポテカン);ブリオスタチン(bryostatin);カリスタチン(callystatin);CC−1065(そのアドゼレシン(adozelesin)、カルゼレシン(carzelesin)及びビゼレシン(bizelesin)合成アナログを含む);クリプトフィシン(cryptophycin)(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン(dolastatin);ドゥオカルマイシン(duocarmycin)(合成アナログKW−2189及びCB1−TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン(pancratistatin);サルコジクチイン(sarcodictyin);スポンジスタチン(spongistatin);ナイトロジェンマスタード、例えば、クロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベムビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン、トロフォスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソウレア、例えばカルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムスチン(ranimnustine);抗生物質、例えば、エンジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン、リケアマイシンγ1I及びカリケアマイシンωI1、ディネマイシン(dynemicin)、ディネマイシンA;ビスホスホネート、例えばクロドロネート;エスペラマイシン(esperamicin);並びにネオカルチノスタチン発色団及び関連する色素タンパクエンジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン(carminomycin)、カルチノフィリン、クロモマイシン(chromomycinis)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、モルホリノ−ドキソルビシン、シアノモルホリノ−ドキソルビシン、2−ピロリノ−ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシン)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシン、例えばマイトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗物質、例えば、メトトレキサート及び5−フルオロウラシル(5−FU);葉酸アナログ、例えばデノプテリン(denopterin)、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサート;プリンアナログ、例えばフルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジンアナログ、例えばアンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン;アンドロゲン、例えばカルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗副腎剤(anti−adrenal)、例えば、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸リプレニッシャー、例えば、フロリン(frolinic)酸;アセグラトン;アルドホスファミド(aldophosphamide)グリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル(eniluracil);アムサクリン;ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン;エダトレキサート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルチン;ジアジコン(diaziquone);エルフオルニチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン(epothilone);エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダミン(lonidainine);メイタンシノイド(例えば、メイタンシン(maytansine)及びアンサミトシン(ansamitocin));ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール(mopidanmol);ニトラエリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメト(phenamet);ピラルビシン;ロソキサントロン(losoxantrone);ポドフィリン酸(podophyllinic acid);2−エチルヒドラジン;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖類複合体(JHS Natural Products、Eugene、OR);ラゾキサン;リゾキシン(rhizoxin);シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2、2’、2”−トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(trichothecene)(特にT−2トキシン、ベラクリンA(verracurin A)、ロリジンA(roridin A)及びアングイジン(anguidine));ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「アラ−C」);シクロホスファミド;チオテパ;6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金アナログ、例えばシスプラチン及びカルボプラチン;ビンブラスチン;エトポシド(VP−16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン(ナベルビン(登録商標);ノバントロン;テニポシド;エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;カペシタビン(ゼローダ(登録商標)、Roche);イバンドロネート(ibandronate);CPT−11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイド、例えばレチノイン酸;並びに上記の任意のものの薬学的に許容可能な塩、酸及び誘導体が挙げられる。
【0050】
また「化学療法剤」の定義に含まれるのは、(i)腫瘍へのホルモン作用を調節又は阻害する作用をする抗ホルモン剤、例えば抗エストロゲン剤及び選択的エストロゲンレセプターモジュレーター(SERM)、例えばタモキシフェン(ノルバデックス(登録商標);クエン酸タモキシフェンを含む)、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、及びフェアストン(登録商標)(クエン酸トレミフェン);(ii)副腎においてエストロゲン産生を調節する酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤、例えば4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)(酢酸メゲストロール)、アロマシン(登録商標)(エキセメスタン;Pfizer)、フォルメスタン、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)(ボロゾール)、フェマーラ(登録商標)(レトロゾール;Novartis)、及びアリミデックス(登録商標)(アナストロゾール;AstraZeneca);(iii)抗アンドロゲン剤、例えばフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、及びゴセレリン;並びにトロキサシタビン(1,3−ジオキソランヌクレオシドシトシンアナログ);(iv)プロテインキナーゼ阻害剤、例えばMEK阻害剤(国際公開2007/044515号);(v)脂質キナーゼ阻害剤;(vi)アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に、異常な細胞増殖に関与しているシグナル伝達経路における遺伝子(例えば、PKC−α、Raf及びH−Rasなど)の発現を阻害するもの、例えばオブリメルセン(ゲナセンス(登録商標)、Genta Inc.);(vii)リボザイム、例えばVEGF発現阻害剤(例えばアンギオザイム(ANGIOZYME)(登録商標))及びHER2発現阻害剤;(viii)遺伝子治療ワクチンなどのワクチン、例えばアロベクチン(登録商標)、 ロイベクチン(登録商標)、及びVAXID(登録商標);プロリュウキン(登録商標)rIL−2;トポイソメラーゼ1阻害剤(ルートテカン(登録商標)など);アバレリックス(登録商標)rmRH;(ix)血管形成阻害剤、例えばベバシズマブ(アバスチン(登録商標)、Genentech);並びに上記のいずれかの薬学的に許容可能な塩、酸及び誘導体である。
【0051】
「化学療法剤」の定義にまた含まれるものは、治療用抗体、例えばアレムツズマブ(Campath)、ベバシズマブ(アバスチン(登録商標),ジェネンテック);セツキシマブ(アービタックス(登録商標)、Imclone);パニツムマブ(ベクティビックス(登録商標)、Amgen)、リツキシマブ(リツキサン(登録商標)、ジェネンテック/バイオジェン社)、ペルツズマブ(オムニターグ(OMNITARG(商標))、2C4、ジェネンテック)、トラスツズマブ(ハーセプチン、ジェネンテック)、トシツモマブ(Bexxar、Corixia)、及び抗体薬剤コンジュゲート、ゲムツズマブオゾガマイシン(マイロターグ(登録商標)、ワイス)である。
【0052】
本発明のPI3K阻害剤と併用される化学療法剤として治療上の潜在性を有するヒト化モノクローナル抗体は、アレムツズマブ、アポリズマブ、アセリズマブ、アトリズマブ、バピネオズマブ、ベバシズマブ、ビバツズマブメルタンシン、カンツズマブメルタンシン、セデリズマブ、セルトリズマブペゴール、シドフシツズマブ、シドツズマブ、ダクリズマブ、エクリズマブ、エファリズマブ、エプラツズマブ、エルリズマブ、フェルビズマブ、フォントリズマブ、ゲムツズマブオゾガミシン、イノツズマブオゾガミシン、イピリムマブ、ラベツズマブ、リンツズマブ、マツズマブ、メポリズマブ、モタビズマブ、モトビズマブ、ナタリズマブ、ニモツズマブ、ノロビズマブ、ヌバビズマブ、オクレリズマブ、オマリズマブ、パリビズマブ、パスコリズマブ、ペクフシツズマブ、ペクツズマブ、ペルツズマブ、ペキセリズマブ、ラリビズマブ、ラニビズマブ、レスリビズマブ、レスリズマブ、レシビズマブ、ロベリズマブ、ルプリズマブ、シブロツズマブ、シプリズマブ、ソンツズマブ、タカツズマブテトラキセタン、タドシズマブ、タリズマブ、テフィバズマブ、トシリズマブ、トラリズマブ、トラスツズマブ、ツコツズマブセルモロイキン、トクシツズマブ、ウマビズマブ、ウルトキサズマブ、及びビシリズマブを含む。
【0053】
「哺乳動物」なる用語は、限定されるものではないが、ヒト、マウス、ラット、モルモット、サル、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、及びヒツジ、及び家禽類を含む。
【0054】
ここで使用される「アルキル」なる用語は、1〜12個の炭素原子の飽和した直鎖もしくは分枝鎖の一価炭化水素基を意味し、ここで、アルキル基は、以下に記載の一又は複数の置換基で独立して置換されていてもよい。アルキル基の例は、限定されないが、メチル(Me、-CH
3)、エチル(Et、-CH
2CH
3)、1-プロピル(n-Pr、n-プロピル、-CH
2CH
2CH
3)、2-プロピル(i-Pr、i-プロピル、-CH(CH
3)
2)、1-ブチル(n-Bu、n-ブチル、-CH
2CH
2CH
2CH
3)、2-メチル-1-プロピル(i-Bu、i-ブチル、-CH
2CH(CH
3)
2)、2-ブチル(s-Bu、s-ブチル、-CH(CH
3)CH
2CH
3)、2-メチル-2-プロピル(t-Bu、t-ブチル、-C(CH
3)
3)、1-ペンチル(n-ペンチル、-CH
2CH
2CH
2CH
2CH
3)、2-ペンチル(-CH(CH
3)CH
2CH
2CH
3)、3-ペンチル(-CH(CH
2CH
3)
2)、2-メチル-2-ブチル(-C(CH
3)
2CH
2CH
3)、3-メチル-2-ブチル(-CH(CH
3)CH(CH
3)
2)、3-メチル-1-ブチル(-CH
2CH
2CH(CH
3)
2)、2-メチル-1-ブチル(-CH
2CH(CH
3)CH
2CH
3)、1-ヘキシル(-CH
2CH
2CH
2CH
2CH
2CH
3)、2-ヘキシル(-CH(CH
3)CH
2CH
2CH
2CH
3)、3-ヘキシル(-CH(CH
2CH
3)(CH
2CH
2CH
3))、2-メチル-2-ペンチル(-C(CH
3)
2CH
2CH
2CH
3)、3-メチル-2-ペンチル(-CH(CH
3)CH(CH
3)CH
2CH
3)、4-メチル-2-ペンチル(-CH(CH
3)CH
2CH(CH
3)
2)、3-メチル-3-ペンチル(-C(CH
3)(CH
2CH
3)
2)、2-メチル-3-ペンチル(-CH(CH
2CH
3)CH(CH
3)
2)、2,3-ジメチル-2-ブチル(-C(CH
3)
2CH(CH
3)
2)、3,3-ジメチル-2-ブチル(-CH(CH
3)C(CH
3)
3、1-ヘプチル及び1-オクチル等を含む。
【0055】
「アルケニル」なる用語は、少なくとも一の不飽和部位、つまり炭素−炭素sp
2二重結合を有する2から8の炭素原子の直鎖状又は分枝鎖状の一価炭化水素を意味し、ここで、アルケニル基はここに記載の一又は複数の置換基で独立して置換されていてもよく、「シス」及び「トランス」配向、又は「E」及び「Z」配向を有する基を含む。例には、限定されないが、エチレニル又はビニル(-CH=CH
2)、アリル(-CH
2CH=CH
2)等が含まれる。
【0056】
「アルキニル」なる用語は、少なくとも一の不飽和部位、つまり炭素−炭素、sp三重結合を有する2から12の炭素原子の直鎖状又は分岐鎖状の一価炭化水素を意味し、ここで、アルキニル基は記載される一又は複数の置換基で独立して置換されていてもよい。限定しないが、例には、エチニル(-C≡CH)、プロピニル(プロパルギル、-CH
2C≡CH)等が含まれる。
【0057】
「炭素環」、「カルボシクリル」、「炭素環式環」及び「シクロアルキル」なる用語は、3から12の炭素原子を単環式環として、又は7から12の炭素原子を二環式環として有する一価の非芳香族の飽和又は部分的に不飽和の環を意味する。7から12の原子を有する二環式炭素環は、例えばビシクロ[4,5]、[5,5]、[5,6]又は[6,6]系として配置され得、9又は10の環原子を有する二環式炭素環は、ビシクロ[5,6]又は[6,6]系として、又はビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン及びビシクロ[3.2.2]ノナンのような架橋系として配置されうる。単環式炭素環の例には、限定されないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、1-シクロペンタ-1-エニル、1-シクロペンタ-2-エニル、1-シクロペンタ-3-エニル、シクロヘキシル、1-シクロヘキサ-1-エニル、1-シクロヘキサ-2-エニル、1-シクロヘキサ-3-エニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、シクロドデシル等々が含まれる。
【0058】
「複素環」、「ヘテロシクリル」及び「複素環式環」なる用語は、ここでは交換可能に使用され、少なくとも一の環原子が、窒素、酸素、リン及び硫黄から選択されるヘテロ原子であり、残りの環原子がCであり、一又は複数の環原子が、例えば酸素(=O)、メルカプト、又はアミノ等で置換されていてもよい、3から20の環原子の飽和又は部分的不飽和(つまり、環内に一又は複数の二重及び/又は三重結合を有する)炭素環式基を意味する。複素環は、3から7の環員(2から6の炭素原子とN、O、P、及びSから選択される1から4のヘテロ原子)を有する単環、又は7から10の環員(4から9の炭素原子とN、O、P、及びSから選択される1から6のヘテロ原子)を有する二環、例えば、ビシクロ[4,5]、[5,5]、[5,6]、又は[6,6]系でありうる。複素環は、Paquette, Leo A.;"Principles of Modern Heterocyclic Chemistry" (W. A. Benjamin, New York, 1968)、特に1、3、4、6、7、及び9章;"The Chemistry of Heterocyclic Compounds, A series of Monographs"(John Wiley & Sons, New York, 1950 to present)、特に13、14、16、19、及び28巻;及びJ. Am. Chem. Soc. (1960) 82:5566に記載されている。「複素環」なる用語にはヘテロシクロアルコキシが含まれる。「ヘテロシクリル」はまた複素環基が飽和、部分的不飽和環、又は芳香族炭素環又は複素環式環に縮合した基を含む。複素環式環の例には、限定されないが、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、チオキサニル、ピペラジニル、ホモピペラジニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、ホモピペリジニル、オキセパニル、チエパニル、オキサゼピニル、ジアゼピニル、チアゼピニル、2-ピロリニル、3-ピロリニル、インドリニル、2H-ピラニル、4H-ピラニル、ジオキサニル、1,3-ジオキソラニル、ピラゾリニル、ジチアニル、ジチオラニル、ジヒドロピラニル、ジヒドロチエニル、ジヒドロフラニル、ピラゾリジニルイミダゾリニル、イミダゾリジニル、3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサニル、3-アザビシクロ[4.1.0]ヘプタニル、及びアザビシクロ[2.2.2]ヘキサニル、3H-インドリルキノジリニル及びN-ピリジルウレアが含まれる。スピロ部分がまたこの定義の範囲内に含まれる。2個の環炭素原子がオキソ(=O)部分で置換されている複素環基の例は、ピリミジノイル及び1,1-ジオキソ-チオモルホリニルである。ここでの複素環基は場合によってはここに記載された一又は複数の置換基で独立して置換されていてもよい。
【0059】
「アリール」は、親芳香環系の単一炭素原子から一つの水素原子を取り除くことによって誘導される6−20の炭素原子の一価芳香族炭化水素基を意味する。幾つかのアリール基は「Ar」として例示構造において表される。アリールは飽和、部分的不飽和環、又は芳香族炭素環又は複素環式環に縮合した芳香環を含む二環式基を含む。典型的なアリール基には、限定されないが、ベンゼンから誘導された基(フェニル)、置換ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル、インデニル、インダニル、1,2-ジヒドロナフタレン、1,2,3,4-テトラヒドロナフチル等々が含まれる。アリール基は場合によってはここに記載された一又は複数の置換基で独立して置換されていてもよい。
【0060】
「ヘテロアリール」なる用語は、5、6又は7員環の一価芳香族基を意味し、窒素、酸素及び硫黄から独立して選択される一又は複数のヘテロ原子を含む5−20の原子の縮合環系(その少なくとも一つが芳香族)を含む。ヘテロアリール基の例は、ピリジニル(例えば2-ヒドロキシピリジニルを含む)、イミダゾリル、イミダゾピリジニル、ピリミジニル(例えば4-ヒドロキシピリミジニルを含む)、ピラゾリル、トリアゾリル、ピラジニル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソオキサゾリル、チアゾリル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、ピロリル、キノリニル、イソキノリニル、インドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、シンノリニル、インダゾリル、インドリジニル、フタラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、イソインドリル、プテリジニル、プリニル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、チアジアゾリル、フラザニル、ベンゾフラザニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル、及びフロピリジニルが含まれる。ヘテロアリール基は場合によってはここに記載された一又は複数の置換基で置換されていてもよい。
【0061】
複素環又はヘテロアリール基は、それが可能である場合、ピラゾロ[3,4-b]ピリジンに、炭素で結合(炭素結合)しても、又は窒素で結合(窒素結合)してもよい。例を挙げると、限定するものではないが、炭素結合した複素環又はヘテロアリールは、ピリジンの2位、3位、4位、5位、又は6位、ピリダジンの3位、4位、5位、又は6位、ピリミジンの2位、4位、5位、又は6位、ピラジンの2位、3位、5位、又は6位、フラン、テトラヒドロフラン、チオフラン、チオフェン、ピロール又はテトラヒドロピロールの2位、3位、4位、又は5位、オキサゾール、イミダゾール又はチアゾールの2位、4位、又は5位、イソオキサゾール、ピラゾール、又はイソチアゾールの3位、4位、又は5位、アジリジンの2位又は3位、アゼチジンの2位、3位、又は4位、キノリンの2位、3位、4位、5位、6位、7位、又は8位、あるいはイソキノリンの1位、3位、4位、5位、6位、7位、又は8位で結合する。
【0062】
例を挙げると、限定するものではないが、窒素が結合した複素環又はヘテロアリールは、アジリジン、アゼチジン、ピロール、ピロリジン、2-ピロリン、3-ピロリン、イミダゾール、イミダゾリジン、2-イミダゾリン、3-イミダゾリン、ピラゾール、ピラゾリン、2-ピラゾリン、3-ピラゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドール、インドリン、1H-インダゾールの1位、イソインドール又はイソインドリンの2位、モルホリンの4位、及びカルバゾール又はβ-カルボリンの9位で結合する。
【0063】
「炭素結合型単環式へテロアリール」は、独立してN、O及びSから選択される1、2、3又は4の環ヘテロ原子を含む5又は6員環の未置換又は置換された単環式へテロアリール基を意味する。炭素結合単環式ヘテロアリールは、単環式ヘテロアリールR
3基の何れかの炭素原子において式Iのピリミジン環のC2位に結合される。炭素結合型単環式ヘテロアリール基は、限定しないが、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、3-イソキサゾリル、4-イソキサゾリル、5-イソキサゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、3-ピラゾリル、4-ピラゾリル、2-ピロリル、3-ピロリル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル、3-ピリダジニル、4-ピリダジニル、5-ピリダジニル、2-ピリミジニル、5-ピリミジニル、6-ピリミジニル、2-ピラジニル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、2-フラニル、3-フラニル、2-チエニル、3-チエニル、3-トリアゾリル、1-トリアゾリル、5-テトラゾリル、1-テトラゾリル、及び2-テトラゾリルを含む。炭素結合単環式ヘテロアリールは場合によってはここに記載の一又は複数の置換基で独立して置換されていてもよい。
【0064】
窒素、酸素、及び硫黄から独立して選択される一又は複数のヘテロ原子を含む「炭素結合型縮合二環式C
3−C
20ヘテロシクリル」及び「炭素結合型縮合二環式C
1−C
20ヘテロアリール」は、その芳香族性のみが異なり、一緒に縮合した2環を有し、つまり共通の結合を共有している。炭素結合型縮合二環式ヘテロシクリル及びヘテロアリール基は、縮合二環式C
3−C
20ヘテロシクリル又は縮合二環式C
1−C
20ヘテロアリール基R
3基の何れかの炭素原子において式Iに係るピリミジン環のC2位に結合している。炭素結合型縮合二環式ヘテロシクリル及びヘテロアリール基は、限定しないが、1H-インダゾール、1H-インドール、インドリン-2-オン、1-(インドリン-1-イル)エタノン、1H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール、1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン、1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン、1H-ベンゾ[d]イミダゾール、1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2(3H)-オン、1H-ピラゾロ[3,4-c]ピリジン、1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン、3H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン、7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン、7H-プリン、1H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン、5H-ピロロ[3,2-d]ピリミジン、2-アミノ-1H-プリン-6(9H)-オン、キノリン、キナゾリン、キノキサリン、イソキノリン、イソキノリン-1(2H)-オン、3,4-ジヒドロイソキノリン-1(2H)-オン、3,4-ジヒドロキノリン-2(1H)-オン、キナゾリン-2(1H)-オン、キノキサリン-2(1H)-オン、1,8-ナフチリジン、ピリド[3,4-d]ピリミジン、及びピリド[3,2-b]ピラジンが含まれる。縮合二環式複素環及び縮合二環式ヘテロアリールは、場合によってはここに記載された一又は複数の置換基で独立して置換されていてもよい
【0065】
アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、縮合二環式C
4-C
20ヘテロシクリル、及び縮合二環式C
1-C
20ヘテロアリールが場合によっては置換されていてもよい置換基は、F、Cl、Br、I、CN、CF
3、-NO
2、オキソ、R
10、-C(=Y)R
10、-C(=Y)OR
10、-C(=Y)NR
10R
11、-(CR
14R
15)
nNR
10R
11、-(CR
14R
15)
nOR
10、-NR
10R
11、-NR
12C(=Y)R
10、-NR
12C(=Y)OR
11、-NR
12C(=Y)NR
10R
11、-NR
12SO
2R
10、=NR
12、OR
10、-OC(=Y)R
10、-OC(=Y)OR
10、-OC(=Y)NR
10R
11、-OS(O)
2(OR
10)、-OP(=Y)(OR
10)(OR
11)、-OP(OR
10)(OR
11)、SR
10、-S(O)R
10、-S(O)
2R
10、-S(O)
2NR
10R
11、-S(O)(OR
10)、-S(O)
2(OR
10)、-SC(=Y)R
10、-SC(=Y)OR
10、-SC(=Y)NR
10R
11、置換されていてもよいC
1-C
12アルキル、置換されていてもよいC
2-C
8アルケニル、置換されていてもよいC
2-C
8アルキニル、置換されていてもよいC
3-C
12カルボシクリル、置換されていてもよいC
2-C
20ヘテロシクリル、置換されていてもよいC
6-C
20アリール、置換されていてもよいC
1-C
20ヘテロアリール、-(CR
14R
15)
t-NR
12C(=O)(CR
14R
15)NR
10R
11、及び(CR
4R
5)
t-NR
10R
11が含まれる。
【0066】
「代謝産物」は、所定の化合物又はその塩の体内で代謝によって生産される産物である。化合物の代謝産物は、当該分野で知られた常套的な技術を使用して同定することができ、その活性はここに記載されたもののような試験を使用して決定される。かかる産物は、投与された化合物の例えば酸化、還元、加水分解、アミド化、脱アミド、エステル化、エステル分解、酵素切断等々から生じうる。従って、本発明は、本発明の化合物をその代謝産物を生じせしめるのに十分な時間の間、哺乳動物と接触させることを含む方法によって生産される化合物を含む本発明の化合物の代謝産物を含む。
【0067】
「パッケージ挿入物」なる用語は、効能、使用法、用量、投与、禁忌及び/又はかかる治療用製品の使用に関する注意についての情報を含む、治療用製品の市販パッケージに常套的に含まれる指示書(説明書)を意味するために使用される。
【0068】
ここで使用される「薬学的に許容可能な塩」なる語句は、本発明の化合物の薬学的に許容可能な有機又は無機塩を意味する。例示的な塩には、限定されるものではないが、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸ホスフェート、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸シトレート、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩「メシレート」、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、パモ酸塩(つまり、1,1’-メチレン-ビス(2-ヒドロキシ-3-ナフトエート))塩が含まれる。薬学的に許容可能な塩は、アセテートイオン、スクシネートイオン又は他の対イオンのような他の分子を含みうる。対イオンは親化合物上の電荷を安定化する任意の有機又は無機部分でありうる。更に、薬学的に許容可能な塩は、その構造中に一を越える荷電原子を有しうる。複数の荷電原子が薬学的に許容可能な塩の一部である場合は、複数の対イオンを有しうる。よって、薬学的に許容可能な塩は一又は複数の荷電原子及び/又は一又は複数の対イオンを有しうる。
【0069】
本発明の化合物が塩基である場合、所望の薬学的に許容可能な塩は、当該分野で利用できる任意の適切な方法、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、メタンスルホン酸、リン酸等のような無機酸で、又は例えば酢酸、マレイン酸、コハク酸、マンデル酸、フマル酸、マロン酸、ピルビン酸、シュウ酸、グリコール酸、サリチル酸、ピラノシジル酸、例えばグルクロン酸又はガラクツロン酸、αヒドロキシ酸、例えばクエン酸又は酒石酸、アミノ酸、例えばアスパラギン酸又はグルタミン酸、芳香族酸、例えば安息香酸又はケイ皮酸、スルホン酸、例えばp−トルエンスルホン酸又はエタンスルホン酸等のような有機酸での遊離塩基の処理によって調製することができる。塩基性の薬学的化合物から薬学的に有用な又は許容可能な塩を形成するのに適していると一般に考えられる酸は、例えば、P. Stahl等, Camille G.(編) Handbook of Pharmaceutical Salts. Properties, Selection and Use. (2002) Zurich: Wiley-VCH;S. Berge等, Journal of Pharmaceutical Sciences (1977) 66(1) 1 19; P. Gould, International J. of Pharmaceutics (1986) 33 201 217;Anderson等, The Practice of Medicinal Chemistry (1996), Academic Press, New York; Remington’s Pharmaceutical Sciences, 第18版, (1995) Mack Publishing Co., Easton PA;及びThe Orange Book (Food & Drug Administration, Washington, D.C.のウェブサイト)に記載されている。これらの開示は出典明示によりここに援用する。
【0070】
本発明の化合物が酸である場合、所望の薬学的に許容可能な塩は、任意の適切な方法、例えば無機又は有機塩基、例えばアミン(第1級、第2級又は第3級)、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物等での遊離酸の処理によって調製することができる。適切な塩を例証する例には、限定されないが、アミノ酸、例えばグリシン及びアルギニン、アンモニア、第1級、第2級、及び第3級アミン、及び環状アミン、例えばピペリジン、モルホリン及びピペラジンから誘導される有機塩、及びナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム及びリチウムから誘導される無機塩が含まれる。
【0071】
「薬学的に許容可能な」なる語句は、物質又は組成物が、製剤を構成する他の成分、及び/又はそれで治療されている哺乳動物と、化学的に及び/又は毒物学的に適合性がなければならないことを示している。
【0072】
ここで使用される「相乗的」なる用語は、二以上の単剤の相加効果よりも効果的な治療薬の組合わせを意味する。式Iの化合物と一又は複数の化学療法剤との間の相乗的な相互作用の決定は、ここに記載されたアッセイから得られる結果に基づくことができる。これらのアッセイの結果は、コンビネーションインデックス(Combination Index)を得るためにChou及びTalalayコンビネーション法及びCalcuSynソフトウェアでの用量効果分析を使用して分析する(Chou及びTalalay, Trends Pharmacol. Sci. 4:450-454; Chou, T.C. (2006) Pharmacological Reviews 68(3):621-681;Chou及びTalalay, 1984, Adv. Enzyme Regul. 22:27-55)。本発明によって提供される組合わせを数種のアッセイ系において評価したが、データは、抗癌剤間の相乗効果、相加効果、及び拮抗作用を定量化するための標準的プログラムを利用して解析することができる。用いられる例示的なプログラムは、Chou及びTalalayにより、"New Avenues in Developmental Cancer Chemotherapy," Academic Press, 1987, 2章に記載されている。0.8未満のコンビネーションインデックス値は相乗効果を示し、1.2より大きい値は拮抗作用を示し、0.8から1.2の値は相加効果を示す。併用療法は、併せて使用される活性成分が化合物を別個に使用して得られる効果の合計よりも大きい場合に「相乗効果」をもたらし、「相乗的」、つまり効果が達成されることが分かる。相乗効果は、活性成分が、(1)同時処方され、組み合わされた単位投薬製剤として同時に投与又は送達され;(2)別個の製剤として交互に又は並行して送達される場合;又は(3)ある種の他のレジメンによって、達成することができる。交替療法で送達される場合、相乗効果は、化合物が、例えば別個のシリンジによる異なった注射によって逐次的に投与され又は送達されるときに達成できる。一般に、交替療法の間、各活性成分の有効用量が逐次的、つまり連続的に投与される一方、併用療法では二又はそれ以上の活性成分の有効用量が併せて投与される。
【0073】
ここで用いられる「担体」は、用いられる服用量及び濃度でそれらに曝露される細胞又は哺乳動物に対して非毒性である薬学的に許容可能な担体、賦形剤、又は安定剤を含む。生理学的に許容可能な担体は、水性pH緩衝溶液であることが多い。生理学的に許容可能な担体の例は、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸のバッファー;アスコルビン酸を含む酸化防止剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン;疎水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリジン;グルコース、マンノース又はデキストランを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;マンニトール又はソルビトール等の糖アルコール;ナトリウム等の塩形成対イオン;及び/又は非イオン性界面活性剤、例えば、TWEEN(商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、及びPLURONICS(商標)を含む。
【0074】
「治療的に有効な量」なる用語は、被験者又は哺乳動物の疾患又は疾病を「治療」するのに効果的な併用治療剤の量を指す。癌の場合、治療的に有効な量のアンタゴニストは、癌細胞の数を減じ;腫瘍の大きさを減じ;末梢器官への癌細胞の浸潤を阻害(すなわち、ある程度まで減速、好ましくは停止)し;腫瘍転移を阻害(すなわち、ある程度まで減速及び好ましくは停止)し;腫瘍増殖をある程度まで阻害し;及び/又は癌に関連する一又は複数の症状をある程度まで緩和しうる。「治療する」のここでの定義を参照のこと。アンタゴニストが、存在する癌細胞の増殖を防ぎ及び/又は死滅させるという点で、それは、細胞分裂停止及び/又は細胞障害性でありうる。
【0075】
併用治療剤の「増殖阻害量」は、細胞、特に腫瘍、例えば癌細胞の増殖をインビトロ又はインビボで阻害できる量である。腫瘍細胞増殖を阻害する目的での併用治療剤の「増殖阻害量」は、経験的にまた常套的な形で決定することができる。
【0076】
併用治療剤の「細胞傷害性量」は、細胞、特に腫瘍、例えば癌細胞のインビトロ又はインビボでの破壊を可能にする量である。
【0077】
「癌」及び「癌性」という用語は、典型的には、調節されない細胞数の増大(通常細胞増殖と呼ばれる)を特徴とする、哺乳動物における生理学的状態を指すか記述し、その細胞数の増大は、細胞増殖の異常な増大、細胞死の異常な減少、又は細胞増殖と細胞死の量のアンバランスに起因し得る。癌の例には、これらに限定されるものではないが、造血性癌又は血液関連の癌、例えばリンパ腫、白血病、骨髄腫又はリンパ様悪性腫瘍、並びに、脾臓の癌及びリンパ節の癌が含まれる。
【0078】
「過剰増殖」なる用語は、ある程度の異常な細胞増殖を伴う疾患を意味する。一実施態様では、細胞増殖性疾患は癌である。
【0079】
ここで用いられる「腫瘍」は、悪性又は良性に関わらず、全ての腫瘍形成細胞成長及び増殖、及び全ての前癌性及び癌性細胞及び組織を意味する。「癌」、「癌性」、「細胞増殖疾患」、「増殖性疾患」及び「腫瘍」という用語は、ここでは互いに排他的なものではない。
【0080】
ここで使用される「非ホジキンリンパ腫」又は「NHL」なる用語は、ホジキンリンパ腫以外のリンパ系の癌を意味する。一般に、ホジキンリンパ腫にはリードシュテルンベルク細胞が存在し、非ホジキンリンパ腫には前記細胞が不在であることにより、ホジキンリンパ腫は非ホジキンリンパ腫と区別することができる。ここで使用される該用語に含まれる非ホジキンリンパ腫の例は、当該分野で知られている分類方式、例えばColor Atlas of Clinical Hematology第3版; A. Victor Hoffbrand及びJohn E. Pettit(編)(Harcourt Publishers Limited 2000)(特に
図11.57、11.58及び/又は11.59参照)に記載の改訂版European-American Lymphoma (REAL)スキームに従って当業者(例えば腫瘍学者又は病理学者)によって同定されうる任意のものを含む。より特定の例としては、限定するものではないが、再発性又は不応性NHL、前線低悪性度NHL、第III/IV期NHL、化学療法に抵抗性のNHL、前駆体Bリンパ芽球性白血病及び/又はリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、B細胞慢性リンパ性白血病及び/又は前リンパ球性白血病及び/又は小リンパ球性リンパ腫、造血性前リンパ球性白血病、免疫細胞腫及び/又はリンパ形質細胞性リンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫、脾発性辺縁帯リンパ腫、節外性濾胞辺縁帯リンパ腫−MALTリンパ腫、節性濾胞辺縁帯リンパ腫、ヘアリー細胞白血病、形質細胞腫及び/又は形質細胞骨髄腫、低悪性度/濾胞性リンパ腫、中悪性度/濾胞性NHL、マントル細胞リンパ腫、濾胞中心性リンパ腫(濾胞性)、中悪性度拡散性NHL、広汎性大B細胞リンパ腫、高悪性度NHL(高悪性度前線NHL及び高悪性度再発性NHLを含む)、自己幹細胞移植後の又は自己肝細胞移植に抵抗性のNHL再発、原発性縦隔大B細胞リンパ腫、原発性浸出液リンパ腫、高悪性度免疫芽細胞性NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度非切断小細胞性NHL、巨大病変NHL、バーキットリンパ腫、前駆体(辺縁帯)T細胞リンパ芽球性白血病及び/又はリンパ腫、成人T細胞リンパ腫及び/又は白血病、T細胞慢性リンパ球性白血病及び/又は前リンパ球性白血病、大顆粒リンパ球性白血病、菌状息肉腫及び/又はセザリー症候群、節外性ナチュラルキラー/T細胞(鼻腔型)リンパ腫、超疾患型T細胞リンパ腫、肝脾T細胞リンパ腫、皮下脂肪組織炎様T細胞リンパ腫、皮膚(皮膚性)リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、血管動原体リンパ腫、腸T細胞リンパ腫、末梢T細胞(特に断らない限り)リンパ腫及び血管免疫芽細胞性T細胞リンパ腫が挙げられる。
【0081】
よって、非ホジキンリンパ腫には、造血性リンパ腫、B細胞リンパ腫、びまん性大細胞B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、悪性リンパ腫、悪性T細胞リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、及び粘膜関連リンパ組織リンパ腫が含まれる。
【0082】
式I化合物
本発明は、構造:
を有する式Iの化合物、又はその立体異性体、幾何異性体、互変異性体又は薬学的に許容可能な塩を含む併用治療剤を含み、
上式中、R
1は、H、F、Cl、Br、I、CN、-(CR
14R
15)
mNR
10R
11、-C(R
14R
15)
nNR
12C(=Y)R
10、-(CR
14R
15)
nNR
12S(O)
2R
10、-(CR
14R
15)
mOR
10、-(CR
14R
15)
nS(O)
2R
10、-(CR
14R
15)
nS(O)
2NR
10R
11、-C(OR
10)R
11R
14、-C(=Y)R
10、-C(=Y)OR
10、-C(=Y)NR
10R
11、-C(=Y)NR
12OR
10、-C(=O)NR
12S(O)
2R
10、-C(=O)NR
12(CR
14R
15)
mNR
10R
11、-NO
2、-NR
12C(=Y)R
11、-NR
12C(=Y)OR
11、-NR
12C(=Y)NR
10R
11、-NR
12S(O)
2R
10、-NR
12SO
2NR
10R
11、-SR
10、-S(O)
2R
10、-S(O)
2NR
10R
11、-SC(=Y)R
10、-SC(=Y)OR
10、C
1-C
12アルキル、C
2-C
8アルケニル、C
2-C
8アルキニル、C
3-C
12カルボシクリル、C
2-C
20ヘテロシクリル、C
6-C
20アリール、及びC
1-C
20ヘテロアリールから選択され;
R
2は、H、F、Cl、Br、I、CN、CF
3、-NO
2、-C(=Y)R
10、-C(=Y)OR
10、-C(=Y)NR
10R
11、-(CR
14R
15)
mNR
10R
11、-(CR
14R
15)
nOR
10、-(CR
14R
15)
t-NR
12C(=O)(CR
14R
15)NR
10R
11、-NR
12C(=Y)R
10、-NR
12C(=Y)OR
10、-NR
12C(=Y)NR
10R
11、-NR
12SO
2R
10、OR
10、-OC(=Y)R
10、-OC(=Y)OR
10、-OC(=Y)NR
10R
11、-OS(O)
2(OR
10)、-OP(=Y)(OR
10)(OR
11)-OP(OR
10)(OR
11)、SR
10、-S(O)R
10、-S(O)
2R
10、-S(O)
2NR
10R
11、-S(O)(OR
10)、-S(O)
2(OR
10)、-SC(=Y)R
10、-SC(=Y)OR
10、-SC(=Y)NR
10R
11、C
1-C
12アルキル、C
2-C
8アルケニル、C
2-C
8アルキニル、C
3-C
12カルボシクリル、C
2-C
20ヘテロシクリル、C
6-C
20アリール、及びC
1-C
20ヘテロアリールから選択され;
R
3は、炭素結合単環ヘテロアリール、炭素縮合二環式C
3-C
20ヘテロシクリル、又は炭素結合縮合二環式C
1-C
20ヘテロアリールであり、ここで単環式ヘテロアリール、縮合二環式C
3-C
20ヘテロシクリル、及び縮合二環式C
1-C
20ヘテロアリールは、F、Cl、Br、I、-CN、-NR
10R
11、-OR
10、-C(O)R
10、-NR
10C(O)R
11、-N(C(O)R
11)
2、-NR
10C(O)NR
10R
11、-NR
12S(O)
2R
10、-C(=O)OR
10、-C(=O)NR
10R
11C
1-C
12アルキル及び(C
1-C
12アルキル)-OR
10から選択される一又は複数の基で置換されていてもよく;
R
10、R
11及びR
12は、独立してH、C
1-C
12アルキル、C
2-C
8アルケニル、C
2-C
8アルキニル、C
3-C
12カルボシクリル、C
2-C
20ヘテロシクリル、C
6-C
20アリール、又はC
1-C
20ヘテロアリールであり、
又はR
10及びR
11は、それらと結合する窒素と共に、オキソ、(CH
2)
mOR
12、NR
12R
12、CF
3、F、Cl、Br、I、SO
2R
12、C(=O)R
12、NR
12C(=Y)R
12、NR
12S(O)
2R
12、C(=Y)NR
12R
12、C
1-C
12アルキル、C
2-C
8アルケニル、C
2-C
8アルキニル、C
3-C
12カルボシクリル、C
2-C
20ヘテロシクリル、C
6-C
20アリール及びC
1-C
20ヘテロアリールから独立して選択される一又は複数の基で置換されていてもよいC
2-C
20複素環式環を形成し;
R
14及びR
15は、独立してH、C
1-C
12アルキル、又は-(CH
2)
n-アリールから選択され、
又はR
14及びR
15は、それらが結合する原子と共に、飽和又は部分的に不飽和なC
3-C
12炭素環式環を形成し;
ここで、上記アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリールは、F、Cl、Br、I、CN、CF
3、-NO
2、オキソ、R
10、-C(=Y)R
10、-C(=Y)OR
10、-C(=Y)NR
10R
11、-(CR
14R
15)
nNR
10R
11、-(CR
14R
15)
nOR
10、-NR
10R
11、-NR
12C(=Y)R
10、-NR
12C(=Y)OR
11、-NR
12C(=Y)NR
10R
11、-(CR
14R
15)
mNR
12SO
2R
10、=NR
12、OR
10、-OC(=Y)R
10、-OC(=Y)OR
10、-OC(=Y)NR
10R
11、-OS(O)
2(OR
10)、-OP(=Y)(OR
10)(OR
11)、-OP(OR
10)(OR
11)、-SR
10、-S(O)R
10、-S(O)
2R
10、-S(O)
2NR
10R
11、-S(O)(OR
10)、-S(O)
2(OR
10)、-SC(=Y)R
10、-SC(=Y)OR
10、-SC(=Y)NR
10R
11、C
1-C
12アルキル、C
2-C
8アルケニル、C
2-C
8アルキニル、C
3-C
12カルボシクリル、C
2-C
20ヘテロシクリル、C
6-C
20アリール、及びC
1-C
20ヘテロアリールから独立して選択される一又は複数の基で置換されていてもよく;
Yは、O、S、又はNR
12であり;
mは、0、1、2、3、4、5又は6であり;及び
nは1、2、3、4、5又は6である。
【0083】
式Iの化合物の例示的実施態様は、R
1は-(CR
14R
15)
mNR
10R
11であり、ここでmは1であり、R
10及びR
11は、それらが結合する窒素原子と共に、置換されていてもよいC
3-C
20複素環式環を形成する。C
3−C
20複素環式環は、場合によってはNR
10R
11、CF
3、F、Cl、Br、I、SO
2R
10、C(=O)R
10、NR
12C(=Y)R
11、NR
12S(O)
2R
11、C(=Y)NR
10R
11及びC
1-C
12アルキルから選択される一又は複数の基で置換されていてもよい、ピペラジニルでありうる。
【0084】
式Iの化合物の例示的実施態様では、R
1がHではないものを含む。
【0085】
式Iの化合物の例示的実施態様では、R
2が、H、CH
3、C
3-C
12カルボシクリル、C
2-C
20ヘテロシクリル、C
6-C
20アリール又はC
1-C
20ヘテロアリールであるものを含む。C
1-C
20ヘテロアリールは、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、3-イソキサゾリル、4-イソキサゾリル、5-イソキサゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、3-ピラゾリル、4-ピラゾリル、2-ピロリル、3-ピロリル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル、3-ピリダジニル、4-ピリダジニル、5-ピリダジニル、2-ピリミジニル、5-ピリミジニル、6-ピリミジニル、2-ピラジニル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、2-フラニル、3-フラニル、2-チエニル、3-チエニル、3-トリアゾリル、1-トリアゾリル、5-テトラゾリル、1-テトラゾリル及び2-テトラゾリルから選択される単環式ヘテロアリール基でありうる。
【0086】
式Iの化合物の例示的実施態様では、R
3が2-アミノピリミジン-5-イルであるものを含む。
【0087】
式Iの化合物の例示的実施態様では、R
3が1H-インダゾール、1H-インドール、インドリン-2-オン、1-(インドリン-1-イル)エタノン、1H-ベンゾ[d][1,2,3]チアゾール、1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン、1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン、1H-ベンゾ[d]イミダゾ-ル、1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2(3H)-オン、1H-ピラゾロ[3,4-c]ピリジン、1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン、3H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン、7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン、7H-プリン、1H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン、5H-ピロロ[3、2-d]ピリミジン、2-アミノ-1H-プリン-6(9H)-オン、キノリン、キナゾリン、キノキサリン、イソキノリン、イソキノリン-1(2H)-オン、3,4-ジヒドロイソキノリン-1(2H)-オン、3,4-ジヒドロキノリン-2(1H)-オン、キナゾリン-2(1H)-オン、キノキサリン-2(1H)-オン、1,8-ナフチリジン、ピリド[3,4-d]ピリミジン及びピリド[3,2-b]ピラジンから選択される二環式ヘテロアリール基であるものを含む。
【0088】
式Iの化合物の例示的実施態様では、R
3が1H-インダゾール-4-イルであるものを含む。
【0089】
例示的な式Iの化合物は、4-(2-(1H-インダゾール-4-イル)-6-((4-(メチルスルホニル)ピペラジン-1-イル)メチル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-4-イル)モルホリンと称され;CAS登録番号が957054‐30‐7であり;米国特許出願公開第2008/0076768号に記載され請求され;Folkes等(2008)Jour. of Med. Chem. 51(18):5522-5532; Belvin等, American Association for Cancer Research Annual Meeting 2008, 99th:April 15, Abstract 4004;Folkes等, American Association for Cancer Research Annual Meeting 2008, 99th:April 14, Abstract LB-146;Friedman等, American Association for Cancer Research Annual Meeting 2008, 99th:April 14, Abstract LB-110に記載されており;式Ia:
を有している。
【0090】
他の例示的な式Iの化合物は、(S)-1-(4-((2-(2-アミノピリミジン-5-イル)-7-メチル-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-6-イル)メチル)ピペラジン-1-イル)-2-ヒドロキシプロパン-1-オンと称され;米国特許出願公開第2008/0242665号に記載され請求され;式Ib:
を有している。
【0091】
式Iの化合物の調製
式Iの化合物は、化学分野においてよく知られているものに類似した方法を含む合成経路によって合成することができる。出発材料は、一般にAldrich Chemicals(Milwaukee WI)などの商業的供給元から入手可能であるか、又は当業者によく知られた方法を使用して容易に調製される(例えば、Louis F. Fieser及びMary Fieser, Reagents for Organic Synthesis, v. 1-19, Wiley, N.Y.(1967-1999版)、又はBeilsteins Handbuch der organischen Chemie, 4, Aufl.版 Springer-Verlag, Berlin, 追補を含む(またバイルシュタインオンラインデータベースから入手可能である))。
【0092】
式Iの化合物は、他のチオフェン及びピリミジン(米国特許第6608053号;米国特許第6492383号;米国特許第6232320号;米国特許第6187777号;米国特許第3763156号;米国特許第3661908号;米国特許第3475429号;米国特許第5075305号;米国特許出願公開第2003/220365号;英国特許出願公開第1393161号;国際公開第93/13664号);及びComprehensive Heterocyclic Chemistry, Editors Katritzky及びRees, Pergamon Press, 1984に記載されている他の複素環を調製するため手順を使用して調製しうる。
【0093】
式Iの化合物は、常法によって、薬学的に許容可能な塩に転換することができ、塩は遊離塩基化合物に転換することができる。式Iの化合物は、溶解性、溶解、吸湿性、及び薬物動態などの所望の特性に応じて、遊離塩基として又は薬学的に許容可能な塩として治療的に有効でありうる。薬学的に許容可能な塩の例としては、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸及びリン酸;また有機酸、例えばメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、エタンスルホン酸、アスパラギン酸及びグルタミン酸との塩が挙げられる。塩は、メシル酸塩、塩酸塩、リン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩又は硫酸塩でもよい。塩は、モノ塩又はビス塩でもよい。例えば、メシル酸塩は、モノメシル酸塩またはビスメシル酸塩でもよい。
【0094】
式Iの化合物及び塩はまた水和物又は溶媒和物として存在してもよい。
【0095】
中間体の官能基(例えば、第一級又は第二級アミン)の保護は、式Iの化合物の調製において必要な場合がある。このような保護の必要性は、遠位の官能基の性質及び調製方法の条件に応じて変わるであろう。適切なアミノ保護基には、アセチル、トリフルオロアセチル、t−ブトキシカルボニル(BOC)、ベンジルオキシカルボニル(CBz)及び9−フルオレニルメチレンオキシカルボニル(Fmoc)が挙げられる。このような保護の必要性は、当業者によって容易に決定される。保護基及びそれらの使用の一般的説明については、T.W.Greene, Protective Groups in Organic Synthesis, John Wiley & Sons, New York, 1991を参照のこと。
【0096】
例証のために、スキーム1から7は、本発明の化合物並びに重要な中間体を調製するための一般的方法を示す。個々の反応工程の更なる詳細な説明は、以下の実施例のセクションを参照のこと。当業者であれば、他の合成経路も本発明の化合物を合成するために使用しうることが分かるであろう。特定の出発物質及び試薬がスキームに示され、以下で検討されているが、他の出発物質及び試薬に容易に置換して、様々な誘導体及び/又は反応条件を提供することができる。また、以下に記載の方法によって調製される化合物の多くは、当業者によく知られている常套的な化学を使用し、この開示を考慮して更に変更することができる。
【0097】
スキーム1
スキーム1は、2-カルボキシエステル,3-アミノチオフェン試薬51からチエノピリミジン中間体53の調製をする一般的方法を示しており、ここで、HalはCl、Br、又はIであり;R
1、R
2、及びR
10は、式Iの化合物、その前駆体又はプロドラッグに対して定義された通りである。
【0098】
スキーム2
スキーム2は、塩基性条件下、有機溶媒中においてビス-ハロチエノピリミジン中間体54の4-ハロゲン化物をモルホリンで選択的に置換して、2-ハロ,4-モルホリノチエノピリミジン化合物55を調製する一般的な方法を示し、ここで、HalはCl、Br、又はIであり;R
1及びR
2は式Iの化合物、又はその前駆体又はプロドラッグに対して定義された通りである。
【0099】
スキーム3
スキーム3は、2-ハロ,4-モルホリノ,6-ヒドロゲノチエノピリミジン化合物56の6位を誘導体化する一般的方法を示し、ここで、R
1はHである。56をリチウム化試薬で処理して6位のプロトンを取り除き、続いてZがハロゲン、NHSエステル、カルボキシレート又はジアルキルアミノ等の離脱基であるアシル化試薬R
10C(O)Zを加えて、2-ハロ,4-モルホリノ,6-アシルチエノピリミジン化合物57を得、ここで、HalはCl、Br、又はIであり;R
2及びR
10は式Iの化合物、又はその前駆体又はプロドラッグに対して定義された通りである。6-ホルミル化合物(R
10=H)を調製するR
10C(O)Zの例はN,N’-ジメチルホルムアミド(DMF)である。
【0100】
スキーム4
スキーム4は、単環式ヘテロアリール、縮合二環式ヘテロシクリル又は縮合二環式ヘテロアリールボロネート酸(R
15=H)又はエステル(R
15=アルキル)試薬で2-ハロピリミジン中間体58を鈴木式カップリングし、式Iの2位が置換された(Hy)、4-モルホリノチエノピリミジン化合物59とする一般的方法を示し、ここで、HalはCl、Br、又はIであり;R
1及びR
2は式Iの化合物、又はその前駆体又はプロドラッグに対して定義された通りである。鈴木反応の概説については、Miyaura等(1995) Chem. Rev. 95:2457-2483;Suzuki, A. (1999) J. Organomet. Chem. 576:147-168;Suzuki, A. Metal-Catalyzed Cross-Coupling Reactions, Diederich, F., Stang, P.J.編, VCH, Weinheim, DE (1998), pp 49-97を参照のこと。パラジウム触媒は、典型的には鈴木式クロスカップリングに使用される任意のもの、例えばPdCl
2(PPh
3)
2、Pd(PPh
3)
4、Pd(OAc)
2、PdCl
2(dppf)-DCM、Pd
2(dba)
3/Pt-Bu)
3)でありうる(Owens等(2003) Bioorganic & Med. Chem. Letters 13:4143-4145;Molander等(2002)Organic Letters 4(11):1867-1870;米国特許第6448433号)。
【0101】
スキーム5
スキーム5は、化合物63のアルキニル化誘導体を調製するため使用されうる、アルキン61の一般的合成方法を示す。プロパルギルアミン61は、適切な塩基(Cs
2CO
3等)の存在下、式R
10R
11NH(該式中、R
10及びR
11はH、アルキル、アリール及びヘテロアリールから独立して選択され、又はR
10及びR
11はそれらが結合する窒素と共に複素環式環を形成する)のアミンと臭化プロパルギル60を反応させることによって調製されうる。アルキニルアミン及び関連する合成法の概説については、Booker-Milburn, K.I., Comprehensive Organic Functional Group Transformations(1995), 2:1039-1074;及びViehe,H.G.,(1967)Angew. Chem., Int. Ed. Eng., 6(9):767-778を参照のこと。アルキン61は、続いて、薗頭カップリングを介して中間体62(X
2=ブロモ又はヨード)と反応させられて、化合物63が得られ、ここで、R
2及びR
3は式Iの化合物、又はその前駆体又はプロドラッグに対して定義された通りである。
【0102】
スキーム6
スキーム6は、化合物66のアルキニル化誘導体を調製するため使用されうる、アルキン65の一般的合成方法を示す。gem−ジアルキルプロパルギルアミン類65はZaragoza等(2004) J. Med. Chem.,47:2833に記載される方法を用いて調製されうる。スキーム6に従って、gem−ジアルキル塩化物64(R
14及びR
15は独立してメチル,エチル又は他のアルキル基である)を、CuCl及び適切な塩基(例えば、TEA等)の存在下で、式R
10R
11NH(該式中、R
10及びR
11はH、アルキル、アリール及びヘテロアリールから独立して選択され、又はR
10及びR
11はそれらが結合する窒素原子と共に複素環式環を形成する)のアミンと反応させてアルキン65を得ることができる。アルキン65は中間体62(薗頭カップリングを介して)と反応させて化合物66を得ることができ、ここで、R
2及びR
3は式Iの化合物、又はその前駆体又はプロドラッグに対して定義された通りである。
【0103】
スキーム7
スキーム7は、化合物69のアルキニル化誘導体を調製するために使用することができるアルキン68の合成のための一般的スキームを示す。ブタ-3-イン-1-アミン類68(ここで、R
14及びR
15は独立してH、アルキル、アリール、ヘテロアリールであるか、又はR
14及びR
15はそれらが結合する炭素原子と共に炭素環式又は複素環式環を形成する)は、Olomucki M.等(1960)Ann.Chim.5:845に記載のプロトコールを使用して、式R
10R
11NH(該式中、R
10及びR
11はH、アルキル、アリール及びヘテロアリールから独立して選択されるか、又はR
10及びR
11はそれらが結合する窒素と共に複素環式環を形成する)のアミンとのアルキン67(LG=トシレート又は他の離脱基)の反応から調製することができる。続いてアルキンをスキーム5及び6に対して提供した記述に従って薗頭カップリングを介して中間体62と反応させ、それぞれ化合物69を得ることができ、ここで、R
2及びR
3は式Iの化合物、又はその前駆体又はプロドラッグに対して定義された通りである。
【0104】
式Iのチエノピリミジン化合物の薬学的に許容可能な塩は常套的な技術を用いて調製することができる。典型的には、その方法は、上述の式Iのチエノピリミジンを適切な溶媒中において適切な酸で処理することを含む。
【0105】
上述の本発明の方法では、アミノ化工程及びPd媒介クロスカップリング工程の双方を一般的な条件下で行う。パラジウム触媒は鈴木式クロスカップリングに典型的に使用される任意のもの、例えばPdCl
2(PPh
3)
2でありうる。還元試薬は、典型的には、NaBH(OAc)
3、NaBH
4又はNaCNBH
4のようなホウ化水素である。
【0106】
化学療法剤
ある種の化学療法剤は、式Iの化合物との組み合わせで、インビトロ及びインビボでの細胞増殖の阻害において驚くべきまた予期しない性質を示した。そのような化学療法剤は、デキサメタゾン、チオテパ、ドキソルビシン、ビンクリスチン、リツキシマブ、シクロホスファミド、プレドニゾン、メルファラン、レナリドミド、ボルテゾミブ、ラパマイシン、及びシタラビンを含む。
【0107】
デキサメタゾンは、抗炎症及び免疫抑制活性を持つ強力なグルココルチコイドステロイドホルモンである。腫瘍学においては、デキサメタゾンは化学療法を受けている癌患者に投与され、抗腫瘍治療のある種の副作用を相殺する。デキサメタゾンは、オンダンセトロンのような5HT
3レセプターアンタゴニストの制吐作用を増強する。デキサメタゾンはまたある種の造血器腫瘍、特に多発性骨髄腫の治療において使用され、ここで、デキサメタゾンは単独で又はサリドマイド(thal−dex)と共に又はアドリアマイシン(ドキソルビシン)及びビンクリスチン(VAD)との組合わせと共に投与される。脳腫瘍(原発性又は転移性)において、デキサメタゾンは、脳構造を最終的には圧迫することとなる浮腫の発生に対抗するために使用される。デキサメタゾンは、(8S,9R,10S,11S,13S,14S,16R,17R)-9-フルオロ-11,17-ジヒドロキシ-17-(2-ヒドロキシアセチル)-10,13,16-トリメチル- 6,7,8,11,12,14,15,16- オクタヒドロシクロペンタ[a]フェナントレン- 3-オン(CAS登録番号50−02−2)であり、構造:
を持つ。
【0108】
チオテパ(テスパ(tespa)、チオホスファミド、テスパミン、tspa、チフォシル(tifosyl)、チオプレックス(登録商標))は、乳癌、卵巣癌、及び膀胱癌の治療に使用されるアルキル化化学療法剤である(Maanen等(2000) Cancer Treat Rev 26(4):257-68, 米国特許第2670347号)。骨髄移植の前処置にもまた使用される。チオテパは、N,N’N’-トリエチレンチオホスホラミド、ホスフィノチオイリジントリサジリジン、又は1,1’,1’’-ホスホロチオイルトリアジリジン(CAS登録番号52−24−4)であり、構造:
を持つ。
【0109】
ドキソルビシン(アドリアマイシン(登録商標)、ヒドロキシルダウノルビシン)は、1960年代から化学療法で広く使用されているDNA相互作用薬である。アントラサイクリン系の抗生物質であり、DNAにまたインターカレートするダウノマイシンに構造的に関連している。ドキソルビシンは広い範囲の癌の治療によく使用される。ドキソルビシンは、(8S,10S)-10-(4-アミノ-5-ヒドロキシ-6-メチル-テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イルオキシ)-6,8,11-トリヒドロキシ-8-(2-ヒドロキシアセチル)-1-メトキシ-7,8,9,10-テトラヒドロテトラセン-5,12-ジオン(CAS登録番号23214-92-8)であり、構造:
を持つ。
【0110】
ビンクリスチン(22-オキソビンカロイコブラスチン;ロイコクリスチン(leurocristine)、VCR、LCR硫酸塩型:ビンクリスチン硫酸塩、キョークリスチン、オンコビン(リリー(登録商標))、ビンコシド、ビンクレックス(vincrex))はニチニチソウ(Madagascar periwinkle)Catharanthus roseusで、以前はVinca rosea由来のビンカアルカロイドである(Johnson等 (1963) Cancer Res. 23:1390-1427;Neuss等 (1964) J. Am. Chem. Soc. 86:1440)。半合成誘導体ビンデシン及びビノレルビン(ナベルビン(登録商標))と共に、ビンクリスチンは、チューブリンに結合し、細胞が分裂する際に染色体を移動させるのに必要な紡錘体を細胞が生産することを妨げることによって、分裂中期の有糸分裂を阻害する。ビンクリスチンは、白血病、リンパ腫、乳癌及び肺癌を含む幾つかの種類の癌の治療剤として投与される化学療法薬である。ビンクリスチン(ロイコクリスチン、VCR)は小児白血病及び非ホジキンリンパ腫の治療に最も効果的であり、ビンブラスチン(ビンカロイコブラスチン、VLB)はホジキン病を治療するのに使用される。ビンクリスチン(CAS番号57−22−7)は、構造:
を持つ。
【0111】
リツキシマブ(リツキサン(登録商標)、Genentech/Biogen Idec;マブセラ(登録商標)、ロッシュ、レディタクス(登録商標)、CAS登録番号174722−31−7)は、CD20抗原に対して産生される遺伝子操作型キメラマウス/ヒトモノクローナル抗体である。リツキシマブは米国特許第5736137号において「C2D8」と呼ばれている抗体である。リツキシマブは、再発性もしくは難治性の低悪性度又は濾胞性の、CD20陽性B細胞NHLの患者の治療に適応する。リツキシマブは細胞表面CD−20に結合し、B細胞枯渇を生じさせる(Cartron等(2002)Blood99:754-758;Idusogie等(2000)J. Immunol.164:4178-4184;Grillo-Lopez AJ,等(1999)Semin Oncol;26:66-73;米国特許第5736137号)。リツキサン(米国特許第5677180号;米国特許第5736137号)は造血器腫瘍において最も広く使用されているモノクローナル抗体であり、広汎な臨床実務で樹立されている。リツキサンは、再発性もしくは難治性の低悪性度又は濾胞性CD20陽性B細胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)で1997年に最初にFDA医薬品承認を受けた。また、欧州連合においては1998年6月に商品名マブセラ(登録商標)という名前で承認された。2006年2月、リツキサンはメトトレキセートとの併用で、一又は複数のTNFアンタゴニスト治療に対しては不十分な応答を有していた中程度から重症の関節リウマチの成人患者における徴候及び症状を減少させるためのFDA承認も受けた。リツキシマブ抗体(C2B8とも命名)のアミノ酸配列及びチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)中での組換え発現を介したその生産の例示的な方法は米国特許第736137号に開示されている。
【0112】
シクロホスファミド(シトキサン、ネオサー(Neosar)、Revimmune、シクロホスファン、B−518、シクロブラスチン、シクロスチン、エンドキサン、プロシトックス、センドキサン、サイトフォスファン)は、様々なタイプの癌やある種の自己免疫疾患に使用されるオキサゾフォリン群由来のナイトロジェンマスタードアルキル化剤である("A Review of cyclophosphamide",D.L.Hill(1975)Charles C. Thomas, Springfield,340pp;IARC Monographs(1975)9:135-156;Fraiser等(1991)Drugs 42:781-795;Colvin,OmM.(1999) Curr. Pharmaceut. Design 5:555-560)。シクロホスファミドは、肝臓中でプロドラッグから化学療法活性を持つ活性形態に転換される。シクロホスファミドの主な使用法は、リンパ腫、幾つか型の白血病、及び幾つかの固形腫瘍の治療における他の化学療法剤との併用である(Shanafelt等(2007)Cancer 109(11):2291-8;Brock N(1996)Cancer 78(3):542-7)。これは、細胞増殖を遅くさせ又は停止させることにより、また様々な疾患に対する免疫系応答を減少させることにより、作用する化学療法剤である。
【0113】
シクロホスファミドは、水和物形態を含む、N,N-ビス(2-クロロエチル)-1,3,2-オキサザホスフィナン-2-アミン2-オキシド、N,N-ビス(2-クロロエチル)テトラヒドロ-2H-1,3,2-オキサザホスホリン-2-アミン-2-オキシド;1-ビス(2-クロロエチル)アミノ-1-オキソ-2-アザ-5-オキサホスホリジン一水和物;ビス(2-クロロエチル)-ホスファミドサイクリックプロパノールアミドエステル;又はN,N-ビス(β-クロロエチル)-N’,O-プロピレンリン酸エステルジアミド(カタログ番号50−18−0)であり、構造:
を持つ。
【0114】
プレドニゾン(メチコルテン、ステラプレド(Sterapred)、ステラプレドDS(Sterapred DS)、レトロコルチンコルチン、コリソン、コルタンシル、ダコルチン(Dacortin)デコルチン、デルタコルテン(Deltacortene)、デルタコルトン(Deltacortone)、デルタソン(Deltasone)、ジアドレソン、エンコルトン、ホスタコルチン、メチコルテン、オラソン、レクトデルト、ソン(Sone)又はウルトラコルテン)は合成副腎皮質ステロイド薬である(米国特許第2897216号;米国特許第2837464号;米国特許第3134718号;米国特許第2579479号)。プレドニゾンは、肝臓中でプロドラッグから11−ヒドロキシルアナログのプレドニゾロン(CAS登録番号50−24−8)に転換され、主にグルココルチコイド効果を持つ。プレドニゾンは経口的に又は注射によって投与されうる。プレドニゾンは特に免疫抑制剤として効果的であり、自己免疫疾患、炎症性疾患(例えば重篤な喘息、アレルギー、ポイズンアイビー皮膚炎、ループス、関節リウマチ、及びクローン病、及び臓器移植の拒絶反応の予防と治療)の治療に用いられる。プレドニゾンは、急性リンパ芽球性白血病、非ホジキンリンパ腫、及び多発性骨髄腫を含む癌の治療に用いられる。プレドニゾンは、17-ヒドロキシ-17-(2-ヒドロキシアセチル)-10,13-ジメチル-7,8,9,10,12,13,14,15,16,17-デカヒドロ-6H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3,11-ジオン;又は17,21-ジヒドロキシプレグナ-1,4-ジエン-3,11,20-トリオン;1,4-プレグナジエン-17α、21-ジオール-3,11,20-トリオン;(CAS番号53-03-2)であり、構造:
を持つ。
【0115】
メルファラン(L−フェニルアラニンマスタード;アラニンナイトロジェンマスタード;L−PAM;メルファラン;L−サルコリシン;NSC−8806;CB−3025;ALKERANR(登録商標)(グラクソ・スミスクライン);サルコクロリン)は、ナイトロジェンマスタードアルキル化剤タイプの化学療法剤である(米国特許第3032584号;米国特許第3032585号)。メルファランは、多発性骨髄腫、卵巣癌及びメラノーマを治療するために主に使用される(IARC Monographs(1975)9:167-180;Furner等(1980)Cancer Treat. Rep.64:559-574)。メルファランは、2-アミノ-3-[4-[ビス(2-クロロエチル)アミノ]フェニル]-プロパン酸;4-[ビス(2-クロロエチル)アミノ]-L-フェニルアラニン;又はp-ジ(2-クロロエチル)アミノ-L-フェニルアラニン(CAS登録番号148−82−3)であり、構造:
を持つ。
【0116】
レナリドミド(レブリミド(登録商標)、CC5013、レビミド、Celgene Inc.)はサリドマイドの誘導体で、炎症障害及び癌の両方を治療するために2004年に紹介された(米国特許第5635517号、米国特許第6281230号)。直接的な抗腫瘍効果、腫瘍細胞に対する微小環境サポートの阻害、及び免疫調節の役割を含む複数の作用機序がある。インビトロでは、レナリドミドは、骨髄間質細胞のサポートの阻害によって、抗アンギオテンシン及び抗破骨細胞活性化効果によって、及び免疫調節活性によって、腫瘍細胞アポトーシスを直接的又間接的に誘導する。レナリドミドは、サリドマイドが受け入れられている治療様式である多発性骨髄腫の治療剤として最初は意図されていたが、骨髄異形成症候群として知られている血液疾患のクラスにおいても効能を示した(Richardson等(2002) Blood 100:3063;Bartlett等(2004)Nature Rev.4:314-322;Mitsiades等(2004) Curr. Opin. Invest.Drugs 5:635-647;Armoiry等 (2008) J of Clin Pharmacy&Therapeutics 33:219-226;List等(2005)N. Engl. Jour. Med. 352:549-57)。レナリドミドは、3-(4-アミノ-1-オキソイソインドリン-2-イル)ピペリジン-2,6-ジオン;3-(4-アミノ-1,3-ジヒドロ-1-オキソ-2H-イソインドール-2-イル)-2,6-ピペリジンジオン;1-オキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-4-アミノイソインドリン(CAS登録番号191732−72−6)であり、構造:
を持つ。
【0117】
ボルテゾミブ(MG−341、PS−341、ベルケイド(登録商標)、Millenium Pharm.)は、再発性多発性骨髄腫及びマントル細胞リンパ腫の治療のために米国で承認されたボロン酸プロテアソーム阻害剤である(国際公開第96/13266号;米国特許第5780454号;米国特許第6083903号;米国特許第6297217号;米国特許第6617317号;米国特許第6713446号;米国特許第6747150号;米国特許第6958319号;米国特許第7119080号)。ボルテゾミブ中のホウ素原子は、26Sプロテアソームの触媒部位に高い親和性及び特異性でもって結合する。正常細胞では、プロテアソームは、ユビキチニル化タンパク質の分解によりタンパク質の発現及び機能を調節し、また異常な又はミスフォールドタンパク質の細胞を浄化する(Adams等(2004)Cancer Invest22(2):304-11;Bonvini (2007). Leukemia 21(4):838-42)。ボルテゾミブは、[(1R)-3-メチル-1-({(2S)-3-フェニル-2-[(ピラジン-2-イルカルボニル)アミノ]プロパノイル}アミノ)ブチル]ボロン酸;(R)-3-メチル-1-((S)-3-フェニル-2-(ピラジン-2-カルボキサミド)プロパンアミド)ブチルボロン酸;又は[(1R)-3-メチル-1-[[(2S)-1-オキソ-3-フェニル-2-[(ピラジニルカルボニル)アミノ]プロピル]アミノ]ブチル]-ボロン酸(CAS登録番号179324−69−7)であり、構造:
を持つ。
【0118】
ラパマイシン(シロリムス、ラパミューン(登録商標))は、臓器移植における拒絶反応の防止するために使用される免疫抑制剤で、特に腎臓移植に有用である。ラパマイシンは、ラパ・ヌイと呼ばれる島(イースター島として、より知られている島)の土壌サンプルにおいて細菌ストレプトマイセス・ハイグロスコピカスが産生したマクロライド系抗生物質である(Pritchard DI (2005).Drug Discovery Today 10(10):688-691)。ラパマイシンは、インターロイキン2(IL−2)に対する応答を阻害し、それにより、T及び造血系の活性化を阻害する。ラパマイシンの作用機序は細胞質ゾルタンパク質のFK結合タンパク質12(FKBP12)に結合することである。ラパマイシン−FKBP12複合体は、mTOR複合体1(mTORC1)に直接結合することによりラパマイシン(mTOR)経路の哺乳動物標的を阻害する。mTORはまたFRAP(FKBP−ラパマイシン関連タンパク質)又はRAFT(ラパマイシン及びFKBP標的(rapamycin and FKBP target))とも呼ばれる。ラパマイシンアナログ(「Rapalogs」)は、テムシロリムス(CCI−779、ワイス)、エベロリムス(RAD001、Novartis)、デフォロリムス(AP23573、MK−8669、アリアド、メルク)が含まれる。ラパマイシンは、(3S,6R,7E,9R,10R,12R,14S,15E,17E,19E,21S,23S,26R,27R,34aS)-9,10,12,13,14,21,22,23,24,25,26,27,32,33,34,34a-へキサデカヒドロ-9,27-ジヒドロキシ-3-[(1R)-2-[(1S,3R,4R)-4-ヒドロキシ-3-メトキシシクロヘキシル]-1-メチルエチル]-10,21-ジメトキシ-6,8,12,14,20,26-ヘキサメチル-23,27-エポキシ-3H-ピリド[2,1-c][1,4]-オキサアザシクロヘントリコンチン-1,5,11,28,29(4H,6H,31H)-ペントン(CAS登録番号53123−88−9)であり、構造:
を持つ。
【0119】
シタラビン(シトシンアラビノシド、アラC、シトサールU(登録商標)、アップジョン)は急性骨髄性白血病(AML)及びNHLを含む造血器腫瘍の治療に主として使用される(米国特許第3116282号;Shen等(1965)J. Org. Chem. 835);Capizzi,R.L. (1996)Invest. New Drugs 14:249-256;Grant S. (1998)Adv. Cancer Res. 72:197-233)。シタラビンは、4-アミノ-1-((2R,3S,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル)ピリミジン-2(1H)-オン;4-アミノ-1-β-D-アラビノフラノシル-2(1H)-ピリミジノン;1-β-D-アラビノフラノシルシトシン;(CAS登録番号147−94−4)であり、構造:
を持つ。
【0120】
CHOPは、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、及びプレドニゾン/プレドニゾロンを含む非ホジキンリンパ腫の治療に使用される化学療法レジメンの頭文字である(Fisher等(1993) N Engl J Med 328(14):1002-6)。CHOPはよく4週間サイクルで投与される。一般的なレジメンは少なくとも6サイクルである。
【0121】
生物学的評価
ある種の式Iの化合物は、PI3キナーゼアイソフォームに特異的に結合し、腫瘍細胞の増殖を阻害する(米国特許出願公開第2008/0207611号;米国特許出願公開第2008/0039459号;米国特許出願公開第2008/0076768号;米国特許出願公開第2008/0076758号;米国特許出願公開第2008/0242665号;米国特許出願公開第2008/0269210号)。ある種の例示的な式Iの化合物は、10nM未満のPI3K結合活性IC
50値を有する。ある種の式Iの化合物は100nM未満の腫瘍細胞ベース活性EC
50値を有する。
【0122】
ここに記載される式Iの化合物と化学療法剤のある種の例示的併用治療剤を、腫瘍細胞に対するインビトロ活性についてアッセイした(実施例15)。ある種の式Iの化合物は、1マイクロモル未満のIC
50でp110αアイソフォームに結合し、マウス異種移植モデルにおいて単剤でのインビボ腫瘍増殖阻害を示す。従って、式Iの化合物は、単剤として、又は一又は複数の化学療法剤との併用療法において、異常な細胞増殖、機能又は挙動から生じる疾患又は障害を治療するために使用することができる。
【0123】
KRAS、NRAS、BRAF及びPIK3CAにおける変異は、癌細胞において増殖及び抗アポトーシスシグナル伝達を媒介する主要経路の二つを活性化する。而して、変異の存在は特定の腫瘍内の所定の経路に対する病理学的な活性化及び依存性のサインとなりうるから、これらの遺伝子中の変異は、これらの経路内の鍵となるノードを阻害する標的薬剤のための比較診断試験を構成するかもしれない。由来の多様な組織の細胞株の大きなパネルにおけるこれら遺伝子及び他のものに対する変異状態は、MEK及びPI3キナーゼの選択的阻害剤に対する応答と相関を生じうる。加えて、変異の検出は、少量の不均一な固定された腫瘍組織からなる臨床試料で実施され得、これは、KRAS、NRAS、BRAF及びPI3キナーゼ中の最も多い置換に対してアレル特異的Taqmanアッセイを使用して分析されうる。
【0124】
図1は、式Ia(GDC−0941)で処置した(右カラム)及び未処置(左カラム)の細胞DoHH2(リンパ腫細胞)、WSU−DLCL2(リンパ腫細胞)、OPM2(多発性骨髄腫細胞)、及びU266(多発性骨髄腫細胞)のFACSフローサイトメトリーにより測定された薬力学(PD)マーカーの減少を示している。実施例18は、GDC−0941処置後のホスホ−AKT(p−Akt)及びp−S6リボソームタンパク質(p−S6RP)の細胞内検出のためのFACSプロトコールを提供する。細胞は5μMのGDC−0941を用いてインビトロで4時間処置した。細胞株の3つが、高レベルのp−AKTによって証明される通り、PI3K経路活性化の証拠を示し、4つ全てが、未処置細胞(左カラム)での高レベルのホスホS6リボソームタンパク質シグナルによって証明される通り、遠位経路活性化の証拠を示す。右カラムでは、GDC−0941で処置された細胞がp−AKTシグナルを消失させ、p−S6RPシグナルを減少又は消失させた。pS6rpに対する残りのシグナルは、PI3K活性が部分的にこのリン酸化事象の原因であるというモデルと一致する。まとめると、これらのデータは、PI3k経路がこれらの細胞タイプにおいて活性化され、GDC−0941がインタクトな細胞中のPI3k経路に対して強力な阻害活性を有していることを示している。
【0125】
図2は、5μMのGDC−0941を用いてインビトロで4時間、処置された細胞株中でのSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動及びウエスタンブロットにより測定した細胞DoHH2、WSU−DLCL2、OPM2及びU266における薬力学的(PD)マーカーp−AKT、p−S6RP、p−Badの減少を示す。実施例17は、GDC−0941処置後のB細胞及び骨髄腫細胞株のp−Akt、p−BAD及びp−S6リボソームタンパク質のウェスタンブロットによる検出のためのプロトコールを示す。細胞を示されたように処置し、ライセートをウェスタンブロット法により分析する。βアクチンブロット法は、各レーンにおよそ等しいライセートの負荷を示す。細胞株の3種は、高いレベルのp−AKTにより証明されるようにPI3K経路の活性化の証拠を示し、4種全てが未処置細胞における高いレベルのp−S6RPシグナルにより証明されるように遠位の経路活性化の証拠を示す。p−AKT及びp−S6RP双方のシグナルはGDC−0941処置により有意に減弱され(存在する場合)、PI3K経路がこれらの細胞内で活性化されており、GDC−0941がインタクトな細胞内の経路に有意な阻害性活性を有していることを示している。両PDマーカーのレベルは同じ順番に従っており、
図1及び
図2間でよく相関している。
【0126】
吸収、分布、代謝、及び排出(ADME)の薬力学的及び薬物動態的な性質を、Caco−2透過性、肝クリアランス、チトクロムP450阻害、チトクロムP450誘導、血漿タンパク質結合、hERGチャネル遮断を含むアッセイにより、ある種の例示的化合物に対して測定した。
【0127】
本発明は、癌の治療のために組合わせて使用される化合物を決定する方法であって、a)式Iを有する化合物及び化学療法剤の併用治療剤をインビトロ腫瘍細胞株に投与し、b)相乗又は非相乗効果を測定することを含む方法を含む。
【0128】
インビトロ細胞増殖アッセイ
式Iの例示的化合物の細胞傷害性又は細胞分裂阻害活性を、細胞培養培地中に増殖する哺乳動物腫瘍細胞株を樹立し、式Iの化合物を加え、細胞を約6時間から約5日間の期間培養し;細胞生存率を測定することにより、測定した(実施例15)。細胞ベースインビトロアッセイは、生存率、つまり、増殖(IC
50)、細胞傷害性(EC
50)、及びアポトーシスの誘導(カスパーゼ活性化)を測定するために使用した。
【0129】
式Iの化合物と化学療法剤の組合わせのインビトロでの効力は、実施例15の細胞増殖アッセイ;Promega社,Madison,WIから商業的に入手可能なCellTiter−Glo(登録商標)発光細胞生存率アッセイによって測定した。この均一アッセイ法は、鞘翅目ルシフェラーゼの組換え発現(米国特許第5583024号;米国特許第5674713号;米国特許第5700670号)に基づき、代謝的に活性な細胞の指標であるATPの存在を定量することに基づき(Crouch等(1993) J. Immunol. Meth. 160:81-88;米国特許第6602677号)、培養中の生細胞の数を判定する。CellTiter−Glo(登録商標)アッセイは96又は384ウェル形式で実施し、自動化高スループットスクリーニング(HTS)(Cree等(1995) AntiCancer Drugs6:398-404)に受け入れられるものとした。均一アッセイの手順は、血清補填培地で培養された細胞へ単一試薬(CellTiter-Glo(登録商標)試薬)を直接的に添加することを含む。細胞の洗浄、培地の除去、及び複数回のピペット操作工程は必要とされない。該システムは、試薬を加え、混合した後、10分で384ウェル形式中のわずか15細胞/ウェルを検出する。
【0130】
均一「ミックス添加手段(add-mix-measure)」形式は、存在するATPの量に比例した細胞溶解及び発光シグナルの生成を生じる。ATPの量は培地中に存在する細胞の数に直接的に比例する。CellTiter-Glo(登録商標)は、ルシフェラーゼ反応により生成される「グロータイプ」の発光シグナルを生成し、これは、使用される細胞タイプ及び培地に応じて、一般に5時間より長い半減期を有する。生細胞は相対発光単位(RLU)に反映される。基質のカブトムシルシフェリンは、組換えホタルルシフェラーゼによって酸化的に脱カルボキシル化され、ATPからAMPへの転換と光子の発生を同時に伴う。延長された半減期は、試薬注射器を使用する必要性を排除し、複数プレートの連続又はバッチモードのプロセシングに対して柔軟性をもたらす。この細胞増殖アッセイは、例えば96又は384ウェル形式のような様々な複数ウェル形式で使用することができる。発光出力は、経時的に測定される相対発光単位(RLU)として提供される。
【0131】
式Iの例示的化合物及び化学療法剤との組合わせの抗増殖効果は、
図3から6における腫瘍細胞株に対するCellTiter-Glo(登録商標)アッセイによって測定した(実施例15)。試験された化合物及び併用剤に対してEC
50値を樹立した。インビトロ細胞効力活性の範囲は、約100nMから約10μMまでであった。
【0132】
特定の細胞に対する式Iの化合物及び化学療法剤の個々に測定されたEC50値を併用EC50値と比較する。コンビネーションインデックス(CI)スコアはChou及びTalalayの方法(Chou, T. and Talalay, P. (1984) Adv. Enzyme Regul. 22:27-55)により計算する。0.8未満のCIは相乗効果を示す。0.8から1.2の間のCIは相加効果を示す。1.2を越えるCIはアンタゴニスト作用を示す。相乗効果の強さはChou及びTalalayに従って評価される。
図4から6における所定の併用治療剤は、非ホジキンリンパ腫(NHL)、びまん性大細胞B細胞リンパ腫(DLBCL)及び多発性骨髄腫を含む腫瘍タイプの細胞株でのインビトロ細胞増殖アッセイにおいて驚くべき予期しなかった相乗的な性質を示す。他の組合わせは相乗作用を示さず;相加作用又はアンタゴニスト作用のみを示すだけである。所定の組合わせは一又は複数の腫瘍タイプでは相乗的であるが、他のものについてはそうではない。インビトロ細胞増殖アッセイで証明される相乗効果は、限定しないが、ヒト患者のリンパ腫及び多発性骨髄腫を含む造血性癌の治療において対応する相乗効果を予想する根拠を提供する。
【0133】
図3は、B−NHL細胞系列DoHH2に対するPI3K単一剤阻害剤の式Ia(GDC−0941)及びデキサメタゾン(Dex)とキソルビシン(Dox)との組合わせの効果を示す。インビトロ細胞生存及び増殖アッセイ(Cell-Titer Glo, Promega)は、様々な阻害剤濃度に対して生存細胞を測定した(10
−5から10の相対単位の以前に(およそ)決定されたIC50、式Ia、デキサメタゾン、ドキソルビシン及び式Iaとデキサメタゾンの組合わせ;式Iaとドキソルビシンの組み合わせ)。阻害剤の最も高い濃度における細胞死滅の度合いはある薬剤と他の薬剤との間で様々であった。ドキソルビシンの場合では、GDC−0941の添加は用量応答曲線の左への僅かなシフトを引き起こし、これは併用療法への細胞の感受性の増加を示している。〜0.75のコンビネーションインデックス(CI)がこの組合わせに対して計算され、これは、相加性又は相乗性を示している。デキサメタゾン単剤の相対的に不能な活性は高いIC
50値並びに該アッセイにおけるシグナル減少の弱い度合いに反映され、おそらく細胞分裂阻害効果又はほんの弱い細胞傷害活性の証拠となる。しかしながら、GDC−0941との組合わせでは、驚くべきことに、用量応答曲線の左方向への顕著なシフトが全濃度で得られた。IC50点で計算したCI値は〜3.0であり、これは試験した薬剤間では滅多にない、予想できず、予期されない強い相乗性を示している。
【0134】
式Ia(GDC−0941)は、表2によれば、多くのBリンパ腫細胞株に細胞傷害性であり、単剤として強いアポトーシスを誘導する。
【0135】
表2におけるデータは、GDC−0941が臨床的に達成可能な用量で、広範囲に細胞傷害性でありリンパ腫細胞株に対して強力であることを示している。
【0136】
図2におけるもののような実験は、更なる細胞株及びチオテパ、ドキソルビシン、ビンクリスチン及びデキサメタゾンとのGDC−0941の組合わせにまで拡張した。コンビネーションインデックス(CI)値は、Chou−Talalayの方法(表3)により計算した。併用された場合にGDC−0941がこれらの他の薬剤をアンタゴナイズしたことを示すCI値>1を見出すことは何れの場合にもなかった。一般に、GDC−0941はこれらの他の薬剤と良好に組合わされ、少なくとも相加性を示す。デキサメタゾンとの組合わせに対しては、およそ0.3又はそれ以下の驚くべき非常に有意なCI値が、試験された全ての細胞株で得られた。
【0137】
図4は、様々な濃度(10
−5から10μモル濃度)の式Ia、GDC−0464、及びLY294002に対して生存細胞を測定するインビトロ細胞生存及び増殖アッセイ(Cell-Titer Glo(商標登録)、Promega Corp., Madison, WI)によって決定された患者NHL600由来の原発性濾胞性リンパ腫細胞に対するPI3K単剤阻害剤の効果を示す。細胞株傷害性のデータはこれらの化合物の効力をよく過大評価するととられるので、データは、式Ia(GDC−0941)が原発性ヒト癌細胞に対して驚くべきかつ予期しない程の強さを有していることを示している。GDC−0464(ジェネンテック社)は強力なチエノピリミジンPI3K阻害剤である(米国特許出願公開第2008/0076758号)。LY294002(イーライリリー社,CAS登録番号154447−36−6)もまたPI3キナーゼの強力な阻害剤である(国際公開第2003/035099号)。
【0138】
図5は、患者NHL640−A055由来の原発性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)細胞に対するPI3K単剤阻害剤、式Ia(GDC−941)、及びドキソルビシンとの組合わせの効果を示す。細胞生存率は、インビトロ細胞生存及び増殖アッセイ(Cell-Titer Glo(商標登録))によって、様々な濃度(10
−5から20μモル濃度)の式Ia、ドキソルビシン、及び式Iaとドキソルビシンの組合わせに対して測定した。アントラサイクリン類は殆どの化学療法レジメンの骨格であり、よって高い活性の化合物であると考えられる。これらの結果は、インビトロでのこの原発性腫瘍試料では、GDC−0941がドキソルビシンよりも有意に強力であり、インビトロで細胞株から得られた結果と驚く程対照的に、その組合わせが単剤GDC−0941より有意に良好ではなかったことを示している。
【0139】
図6は、様々な薬剤濃度(その以前決定したIC50値の関数として表現した、つまり「1」=IC50応答を生じる[薬剤])の式Ia、デキサメタゾン(Dex)及び固定比での式Iaとデキサメタゾンの組合わせに対して生存細胞を測定するインビトロ細胞増殖アッセイ(Cell-Titer Glo(登録商標))による、多発性骨髄腫OPM2に対する、PI3K単剤阻害剤の式Ia(GDC−0941)、及びデキサメタゾンとの組合わせの効果を示す。相対的に弱いデキサメタゾンへの応答は、効力と応答の度合いの双方の点で、GDC−0941との組合わせに大きく亢進され、二薬剤間の強い相乗性を示している0.45のCI値が得られている。表4は、式Ia化合物(GDC−0941)及びデキサメタゾン(Dex)、ドキソルビシン(Dox)、メルファラン、レナリドミド、及びボルテゾミブから選択される化学療法剤の併用治療剤による、様々な多発性骨髄腫細胞株の治療のChou及びTalalayの方法により計算されたコンビネーションインデックスを示している。所定の組合わせは相乗性(CI<0.8)、相加性(0.8−1.2)、又はアンタゴニスト作用(>1.2)を示している。これらのデータは、GDC−0941が全ての化学療法剤と等しく良好には併用されないことを示している。GDC−0941及びボルテゾミブから得られたCIは一般に0.8かそれ以上の範囲である一方、GDC−0941とデキサメタゾンで得られるCI値はそれより低く、試験した細胞株にわたって相乗的な応答とより支配的な応答の双方を示している。
【0140】
表5は、式Ia化合物GDC−0941及び化学療法剤ビンクリスチンの併用治療剤による様々なリンパ腫細胞株のChou及びTalalayの方法により計算されたコンビネーションインデックスを示す。ある種の組合わせは相乗性(CI<0.8)、相加性(0.8−1.2)、又はアンタゴニスト作用(>1.2)を示している。データは、GDC−0941が特にBJAB、WSU−DHL4及びWSU−DLCL2においてビンクリスチンとかなり好ましく併用されることを示している。CI値は、用量応答曲線の異なる3点、ED50、ED75及びED90で示されており、類似のCI値が用量応答曲線上のこれらの異なった点で得られるという事実は、データが強力で、全応答曲線がシフトして薬剤の併用の場合に増加した生物学的応答を生じることを示している。
【0141】
表6は、式Ia化合物(GDC−0941)及びデキサメタゾンの併用治療剤による、増殖因子IL6及びIGF−1の存在下又は非存在下における様々な造血器腫瘍細胞株の治療のChou&Talalayの方法により計算されたコンビネーションインデックスを示す。ある種の組合わせは、相乗性(CI<0.8)、相加性(0.8−1.2)又はアンタゴニスト作用(>1.2)を示している。データは、GDC−0941がデキサメタゾンとかなり好ましく併用されることを示している。CI値は、用量応答曲線の異なる3点、ED50、ED75及びED90で示されており、類似のCI値が用量応答曲線上のこれらの異なった点で得られるという事実は、データが強力で、全応答曲線がシフトして薬剤の併用の場合に増加した生物学的応答を生じることを示している。MM1.s細胞はデキサメタゾンに感受性であることが知られており、GDC−0941と併用する場合明らかな相乗性を示した。この細胞株の変異体MM1.rはデキサメタゾン耐性であることが知られており、この性質に一致して、全体的には低いCI値が観察された。サイトカインIL−6及びIGF−1は多発性骨髄腫の骨髄微小環境のおける主要な増殖因子であり、PI3K/AKTシグナル伝達経路を介したシグナルの媒介に関与する。増殖因子IL−6及びIGF−1は一般に化学療法抵抗性をもたらすと考えられ、各細胞株において、サイトカインの添加はコンビネーションインデックス値を増加させた。
【0142】
表7は、式Ia化合物(GDC−0941)とレナリドミドの併用治療剤による、増殖因子IL6及びIGF−1の存在下又は非存在下における様々な造血器腫瘍細胞株の治療のChou&Talalayの方法により計算されたコンビネーションインデックスを示す。ある種の組合わせは、相乗性(CI<0.8)、相加性(0.8−1.2)又はアンタゴニスト作用(>1.2)を示している。データは、GDC−0941がレナリドミドとかなり好ましく併用されることを示している。CI値は、用量応答曲線の異なる3点、ED50、ED75及びED90で示されており、類似のCI値が用量応答曲線上のこれらの異なった点で得られるという事実は、データが強力で、全応答曲線がシフトして薬剤の併用の場合に増加した生物学的応答を生じることを示している。増殖因子IL−6及びIGF−1は一般に化学療法抵抗性をもたらすと考えられ、各細胞株において、サイトカインの添加はコンビネーションインデックス値を増加させた。
【0143】
OPM2及びH929を含む多発性骨髄腫及びAML細胞株における、単剤の
図Ia及び
図Ibの化合物、及び(i)
図Iaの化合物(GDC−0941)とラパマイシン、及び(ii)
図Ibの化合物とラパマイシンの組合わせに対するアポトーシス応答をアネキシンV−FACS分析によって測定した。絶対IC50を測定するためのスクリーニング条件は:1日目−10%のFBSを含む培地中の384ウェルプレートに10000細胞/ウェルで細胞を播種し;2日目−細胞へ示した化合物のセットアップを投与することからなる。ラパマイシンを
図Ia又は
図Ibの化合物と組合わせて使用した場合、培地中のラパマイシン濃度は0.1uMとした:5日目−Celltiter-Gloアッセイ。測定したアポトーシス集団は、(i)及び(ii)の併用での相乗性を証明した。
【0144】
AML患者由来の芽細胞において、式IaのGDC−0941と化学療法剤シタラビン又はダウノルビシンの併用は、単剤GDC−0941と比べて向上した抗白血病活性と、また向上したアポトーシス効果を示し、各々30%及び22%のみの生細胞が残存した。
【0145】
インビボでの腫瘍異種移植片の有効性
本発明の併用の有効性は、齧歯類に癌細胞の同種移植片又は異種移植片を移植し、腫瘍を持つ動物を併用剤によって治療することによってインビボで測定しうる。細胞株、腫瘍細胞における所定の変異の存在又は不存在、式Iの化合物及び化学療法剤の投与シーケンス、投与レジメン、及び他の要因に依存して、様々な結果が予想される。対象マウスを薬物(薬物群)又はコントロール(ビヒクル)で処置し、数週間又はそれ以上にわたりモニターし、腫瘍倍加までの時間、殺細胞の対数値、及び腫瘍阻害を測定した(実施例16)。
【0146】
図7は、ビヒクル(0.5%メチルセルロース:DI水中の0.2%Tween80)、73mg/kgの式Ia(GDC−0941)、5mg/kgのリツキシマブ、CHOP、及び式Ia73mg/kgとリツキシマブ5mg/kgの組合わせ、式Ia73mg/kgとCHOPの組合わせを0日目に投与した、WSU−DLCL2リンパ腫腫瘍異種移植片を持つ10匹のマウスのコホートにおける20日にわたる平均腫瘍体積変化を示す。マウスには0日目に開始してCHOPを投与し、0、7、及び14日目にリツキシマブを投与する一方、式Iaは21日間毎日、経口的に経管栄養投与した。CHOPレジメン:シクロホスファミド(30mg/kg、iv、qd×1)、ドキソルビシン(2.475mg/kg、iv、qd×1)、ビンクリスチン(0.375mg/kg、iv、qd×1)、プレドニゾン(0.15mg/kg、po、qd×5)。シクロホスファミド、ドキソルビシン及びビンクリスチンは0日目に一回投与し、プレドニゾンは0、1、2、3及び4日目に投与した。このモデルにおいて、GDC−0941及びCHOPベースの併用化学療法は中程度の活性のみであった。リツキシマブ治療は、ビヒクルと比して有意に差異があった(コントロール・ダネット検定によりp<0.01)。GDC−0941とリツキシマブの組合わせはGDC−0941より有意に良好であったが、リツキシマブ単独とは対数順位分析による差異はなかった。GDC−0941とCHOPの組合わせは何れの薬剤単独と比較しても有意な改善をもたらした。
【0147】
図8は、ビヒクル(0.5%メチルセルロース:DI中0.2%のTween80)、73mg/kgの式Ia(GDC−0941)、5mg/kgのリツキシマブ、CHOP及び式Ia73mg/kgとリツキシマブ5mg/kgの組合わせ、及び式Ia100mg/kgとCHOPの組合わせを0日目に投与した、DoHH−2腫瘍異種移植片を持つ10匹のマウスのコホートにおける34日にわたる平均腫瘍体積を示す。マウスにはリツキシマブを0、7及び14日目(qwk×3)に静脈内投与し、CHOPを1日目に開始する一方、式Iaは21日間毎日、経口的に経管栄養投与した。CHOPレジメン:シクロホスファミド(30mg/kg、iv、qd×1)、ドキソルビシン(2.475mg/kg、iv、qd×1)、ビンクリスチン(0.375mg/kg、iv、qd×1)、プレドニゾン(0.15mg/kg、po、qd×5)。シクロホスファミド、ドキソルビシン及びビンクリスチンは0日目に一回投与し、プレドニゾンは0、1、2、3及び4日目に投与した。CHOP化学療法又はGDC−0941単剤療法コホートはビヒクルとは有意に異なっていた。リツキシマブ単独療法は比較的より効果的であり、治療中に2例の部分奏功と4例の完全奏功を生じた。GDC−0941はリツキシマブ活性を有意にはアンタゴナイズしなかったが、更なる抗腫瘍活性をもたらさなかった。これに対して、CHOP化学療法とのGDC−0941の組合わせは何れの単剤の活性に対しても非常に顕著な利益の増加をもたらし、2例の部分奏功と2例の完全奏功を生じた。
【0148】
図9は、ビヒクル(0.5%メチルセルロース:DI水中の0.2%Tween80)、75mg/kgの式Ia(GDC−0941)、CHOP、及び式Ia75mg/kgとCHOPの組合わせ、式Ia75mg/kgとシクロホスファミド30mg/kgの組合わせ、式Ia75mg/kgとドキソルビシン2.47mg/kgの組合わせ、式Ia75mg/kgとビンクリスチン0.38mg/kgの組合わせ、及び式Ia75mg/kgとプレドニゾン0.15mg/kgの組合わせを0日目に投与した、DoHH−2腫瘍異種移植片を持つ10匹のマウスのコホートにおける27日にわたる平均腫瘍体積変化を示す。マウスには、0日目にCHOPを、0日目にシクロホスファミドを、0日目にドキソルビシンを、0日目にビンクリスチンを、0−4日目に毎日プレドニゾンを投与する一方、式Iaは21日間毎日、経口的に経管栄養投与した。CHOP成分レジメンは、シクロホスファミド(30mg/kg、iv、qdx1)、ドキソルビシン(2.475mg/kg、iv、qd×1)、ビンクリスチン(0.375mg/kg、iv、qd×1)、プレドニゾン(0.15mg/kg、po、qd×5)であった。この実験は
図8の結果を確認し拡張し、GDC−0941及びCHOPがモデルにおいて各々類似した中程度に過ぎない活性を有していることを示している。前のように、GDC−0941はCHOPと組合わさると抗腫瘍活性の非常に顕著な増加を生じせしめる。驚くべきことに、これはインビトロ実験からは予想できなかったので、GDC−0941及びCHOP間で留意される相乗性の本質的に全てがただGDC−0941とビンクリスチンの組合わせに起因している可能性がある一方、GDC−0941と対にして試験したCHOPの他の3つの成分は増加した効力を示さなかった。
【0149】
図10は、ビヒクル(0.5%メチルセルロース:DI水中の0.2%Tween80)、73mg/kg式Ia(GDC−0941)、CHOP、及び式Ia73mg/kgとCHOPの組合わせを0日目に投与した、BJABリンパ腫腫瘍異種移植片を持つ10匹のマウスのコホートにおける25日にわたる平均腫瘍体積変化を示す。マウスには、0日目にCHOPを投与する一方、式Iaとビヒクルは21日間毎日、経口的に経管栄養投与した。CHOPレジメン:シクロホスファミド(30mg/kg、iv、qd×1)、ドキソルビシン(2.475mg/kg、iv、qd×1)、ビンクリスチン(0.375mg/kg、iv、qd×1)、プレドニゾン(0.15mg/kg、po、qd×5)。シクロホスファミド、ドキソルビシン及びビンクリスチンは0日目に一回投与し、プレドニゾンは0、1、2、3及び4日目に投与した。これらのデータは、BJABリンパ腫モデルにおいては、GDC−0941又はCHOP化学療法は中程度の活性しか有さないこと、及び併用は統計的有意性に達する群はないが、活性を増加させたことを示している。
【0150】
図11は、ビヒクル(0.5%メチルセルロース:DI水中の0.2%Tween80)、75mg/kgの式Ia(GDC−0941)、5mg/kgのリツキシマブ及び式Ia75mg/kgと5mg/kgリツキシマブの組合わせを0日目に投与した、BJABリンパ腫腫瘍異種移植片を持つ10匹のマウスのコホートにおける25日にわたる平均腫瘍体積変化を示す。マウスにリツキシマブを0、7及び14日目に投与する一方、式Iaとビヒクルを21日間毎日、経口的に経管栄養投与した。
図10におけるように、単剤GDC−0941はこのBJABリンパ腫モデルにおいては中程度の活性しか有していなかった。リツキシマブの活性は単剤GDC−0941と比して中程度であり、GDC−0941との併用より更に増加しなかった。この実験では、全ての群は、対数順位分析によりビヒクルより有意に差異がある。
【0151】
図12は、ビヒクル(po、qd×21)(0.5%メチルセルロース:DI水中の0.2%Tween80)、及び単剤治療:73mg/kgの式IaのGDC−0941(po、qd×21)1mg/kgのボルテゾミブ(iv、2×/wk×3)、25mg/kgのレナリドミド(ip、qd×21)及び1mg/kgのデキサメタゾン(po、5日間投与/2日間休薬/4日間投与)を0日目に投与した、NCI−H929多発性骨髄腫片を持つ10匹のマウスのコホートにおける22日にわたる平均腫瘍体積変化を示す。式1aのGDC−0941は21日間毎日、経口的に経管栄養投与した。ボルテゾミブは0、3、7、10、14及び17日目に静脈内投与した。レナリドミドは21日間毎日、腹腔内注射により投与した。デキサメタゾンは0から4日目及び7から10日目に経口的に投与した。この実験により、GDC−0941の単剤活性は、レナリドミド又はデキサメタゾン単剤による治療と同様であり、これはボルテゾミブの効能の方が上回っていることが確証された。ボルテゾミブ単剤治療は、この実験においては、3例の部分奏功となった。
【0152】
図13は、ビヒクル(po、qd×21)(0.5%メチルセルロース:DI水中の0.2%Tween80)、単剤治療:73mg/kgの式IaのGDC−0941(po、qd×21);0.5mg/kgのボルテゾミブ(iv、2×/wk×3);25mg/kgのレナリドミド(ip、5日間投与/2日間休薬/5日間投与/2日間休薬/5日間投与);及び3mg/kgデキサメタゾン(po、5日間投与/2日間休薬/5日間投与);及び:73mg/kgの式IaのGDC−0941(po、qd×21)と0.5mg/kgのボルテゾミブ(iv、2×/wk×3)の組合わせ;73mg/kgの式IaのGDC−0941(po、qd×21)と25mg/kgのレナリドミド(ip、5/2/5/2/5)の組合わせ;及び73mg/kgの式IaのGDC−0941(po、qd×21)と3mg/kgのデキサメタゾン(po、5/2/5)の組合わせを0日目に投与した、多発性骨髄腫OPM−2細胞異種移植片を持つ10匹のマウスのコホートにおける24日にわたる平均腫瘍体積を示す。式1aのGDC−0941は21日間毎日、経口的に経管栄養投与した。ボルテゾミブは0、3、7、10、14及び17日目に静脈内投与した。レナリドミドは0から4日目、7から11日目、及び14から18日目に腹腔内注射により投与した。デキサメタゾンは0から4日目及び7から11日目に経口投与した。この実験におけるボルテゾミブの減少させた用量は、ビヒクルのものと差異のない無症候性の応答を生じた。単剤GDC−0941、レナリドミド、又はデキサメタゾンで治療したコホートは、デキサメタゾンへのGDC−0941の追加は抗腫瘍活性を増加させる傾向にあったが、識別不能で中程度の腫瘍活性を有していた。この結果は先のインビトロ細胞株の実験から予想したものであるが、文献で刊行された先の研究から予想できなかった。
【0153】
図3はB−NHL細胞系列DoHH2におけるPI3Kシグナル阻害剤、式Ia(GDC−0941)及びデキサメタゾン(Dex)とキソルビシン(Dox)の組み合わせの効果を示す。インビトロ細胞生存及び増殖アッセイ(Cell−Titer Glo、Promega)では、様々な阻害剤の濃度(10
−5から10の相関単位である以前(およそ)決定したIC
50、式Ia、デキサメタゾン、ドキソルビシン及び式Iaとデキサメタゾンの組み合わせ;式Iaとドキソルビシンの組み合わせ)に対する生存細胞を測定した。
1つの薬剤から他の薬剤と様々な阻害剤の最も高い濃度における細胞死の程度を記録した。ドキソルビシンの場合では、GDC−0941の添加により用量依存曲線は控えめに左にシフトし、これは併用療法によって細胞の感受性が増加したことを指し示す。この組み合わせから計算された組み合わせ指数(CI)〜0.75は、相加的又は相乗的であることを指し示す。デキサメタゾン単剤は相対的に活性が不能であり、これは高いIC
50値、並びにアッセイのシグナルの減少程度が小さいところに反映され、おそらく細胞分裂阻害効果又は弱い細胞毒性活性のみ示すと考えられる。
しかしながら、GDC−0941との組み合わせでは、全濃度から得られた用量依存曲線の左シフトは驚くべきことに、有意に大きかった。IC50で計算したCI値は〜
0.3であり、これは試験した薬剤の間では滅多になく、予想、予期しない程強く相乗的であることを示す。表2に従うと、式Ia(GDC−0941)は多くのBリンパ腫細胞株に細胞毒性であり、単剤で強くアポトーシスを誘導する。
【0154】
図15は、ビヒクル(po、qd×21)(0.5%メチルセルロース:DI水中の0.2%Tween80)、単剤治療:75mg/kgの式IaのGDC−0941(po、qd×21)、0.5mg/kgのボルテゾミブ(iv、2×/wk×3)及び3mg/kgのデキサメタゾン(po、5/2/5);及び75mg/kgの式IaのGDC−0941(po、qd×21)と0.5mg/kgボルテゾミブ(iv、2×/wk×3)の組合わせ;75mg/kgの式IaのGDC−0941(po、qd×21)と3mg/kgのデキサメタゾン(po、5/2/5)の組合わせを0日目に投与した、多発性骨髄腫MM1.s細胞異種移植片を持つ10匹のマウスのコホートにおける40日にわたる平均腫瘍体積変化を示す。式1aGDC−0941は21日間毎日、経口的に経管栄養投与した。ボルテゾミブは、0、3、7、10、14及び17日目に静脈内投与した。デキサメタゾンは、0から4日目、7から11日目に経口投与した。MM1.sモデルは、これら単剤及び併用治療に一つの例外を除いて比較的不応性であり;インビトロ実験と一致して、GDC−0941とデキサメタゾンの併用は単剤成分に比して優れた活性を有していた。驚いたことにまた予期せぬことに、GDC−0941+デキサメタゾンのコホートが併用薬治療されている間は、腫瘍が退縮し、7例の部分奏功を生じた。この実験における他の群は奏効を生じなかった。デキサメタゾン治療を11日目に中止した場合、腫瘍の退縮が止まり、継続されたGDC−0941と一致して、ある速度で成長した。これらのデータは、デキサメタゾンとGDC−0941の組合わせの予期されない効果を明らかに示している。
【0155】
図16は、ビヒクル(po、qd×21)(0.5%メチルセルロース:DI水中の0.2%Tween80)単剤治療:75mg/kgの式IaのGDC−0941(po、qd×21)、0.5mg/kgのボルテゾミブ(iv、2×/wk×3)、25mg/kgのレナリドミド(ip、5/2/5/2/5)及び3mg/kgのデキサメタゾン(po、5/2/5);及び75mg/kgの式IaのGDC−0941(po、qd×21)と0.5mg/kgのボルテゾミブ(iv、qd×3)の組合わせ;75mg/kgの式IaのGDC−0941(po、qd×21)と25mg/kgのレナリドミド(ip、5/2/5/2/5)の組合わせ;75mg/kgの式IaのGDC−0941(po、qd×14)と3mg/kgデキサメタゾン(po、5/2/5)の組合わせを0日目に投与した、多発性骨髄腫NCI−H929細胞異種移植片を持つ10匹のマウスのコホートにおける33日にわたる平均腫瘍体積変化を示す。式1aGDC−0941は21日間毎日、経口的に経管栄養投与した。ボルテゾミブは0、3、7、10、14及び17日目に静脈内投与した。レナリドミドは0から4日目、7から11日目及び14から18日目に腹腔内注射により投与した。デキサメタゾンは0から4日目、7から11日目に経口的に投与した。H929モデルにおいて、併用群におけるGDC−0941の追加は単剤ボルテゾミブ、レナリドミド及びデキサメタゾンの中程度の活性を有意に増加させた。
【0156】
図17は、ビヒクル(po、qd×20))0.5%メチルセルロース:DI水中の0.2%Tween80);単剤治療:75mg/kg又は100mg/kgの式IaのGDC−0941(po、qd×20)、2.5mg/kg又は4mg/kgの式Ib(po、qd×20)、6mg/kgのラパマイシン(ip、qw×3);又は併用治療:75mg/kgの式IaのGDC−0941(po、qd×20)+6mg/kgのラパマイシン(ip、qw×3)又は2.5mg/kgの式Ib(po、qd×20)+6mg/kgのラパマイシン(ip、qw×3)を0日目に投与した、予め樹立されたDoHH2ヒトリンパ腫細胞株異種移植片を有する一群当たり10匹のマウスの実験的コホートに対して40日にわたる平均腫瘍体積変化を示す。ラパマイシンは腫瘍増殖に対して殆ど効果がないか又は有意な効果を示さなかったが、単剤治療においては、腫瘍増殖の用量関連阻害を示す一方、双方の組合わせは腫瘍増殖の有意に亢進された抑制を示した。
【0157】
図18は、ビヒクル(po、qd×20))0.5%メチルセルロース:DI水中の0.2%Tween80);単剤治療:60mg/kgの式IaのGDC−0941(po、qd×21)、1mg/kgの式Ib(po、qd×21)、6mg/kgのラパマイシン(ip、qd×21);又は併用療法:60mg/kgの式IaのGDC−0941(po、qd×18)+6mg/kgのラパマイシン(ip、qd×18)、又は1mg/kgの式Ib(po、qd×18)+6mg/kgのラパマイシン(ip、qd×18)の併用を0日目に投与した、予め樹立されたWSU−DLCL2ヒトリンパ腫細胞株異種移植片を有する一群当たり10匹のマウスの実験的コホートにおける25日にわたる平均腫瘍体積変化を示す。単剤治療は腫瘍増殖に殆ど効果は示さない一方、併用治療は腫瘍増殖の有意に亢進された抑制を示す。
【0158】
薬学的組成物
本発明の薬学的組成物又は製剤は、式Iの化合物、化学療法剤、及び一又は複数の薬学的に許容可能な担体、流動促進剤、希釈剤又は賦形剤の組合わせを含む。
【0159】
本発明の式Iの化合物及び化学療法剤は、非溶媒和形態並びに水、エタノール等の薬学的に許容可能な溶媒との溶媒和形態で存在し得、本発明は溶媒和形態及び非溶媒和形態の双方を包含することが意図される。
【0160】
本発明の式Iの化合物及び化学療法剤はまた異なった互変異性体形態で存在し得、そのような全形態が本発明の範囲内に包含される。「互変異性体」又は「互変異性形態」なる用語は、低いエネルギー障壁を介して相互に転換可能である異なるエネルギーの構造異性体を意味する。例えば、プロトン互変異性体(プロトン移行互変異性体としても知られている)は、プロトンの移動を介する相互変換、例えば、ケト−エノール異性及びイミン−エナミン異性を包含する。原子価互変異性体は、結合電子の幾つかの再編成による相互変換を包含する。
【0161】
薬学的組成物は、任意の薬学的に不活性な賦形剤、希釈剤、担体、又は流動促進剤と共に、式Iの化合物及びここに記載される更なる薬剤のリストから選択される化学療法剤を含む一を越える(例えば二の)薬学的に活性な薬剤からなるバルク組成物及び個々の投薬単位の双方を包含する。バルク組成物及びそれぞれの個々の投薬単位は前述の薬学的に活性な薬剤の固定量を含みうる。バルク組成物は個々の投薬単位にまだ形成されていない材料である。例示的投薬単位は、錠剤、丸薬、カプセル等の経口投薬単位である。同様に、薬学的組成物を投与することにより患者を治療する方法もまたバルク組成物及び個々の投薬単位の投与を包含する。
【0162】
薬学的組成物は、ここに記載されたものと同一であるが、一又は複数の原子が天然に通常見出される原子質量又は質量数とは異なる原子質量又は質量数を有する原子によって置き換えられている本発明の同位体標識された化合物をまた包含する。特定された任意の特定の原子又は元素の全ての同位体が本発明の化合物及びその用途の範囲にあると考えられる。本発明の化合物に導入することができる例示的な同位体は、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素、塩素、及びヨウ素の同位体、例えば
2H、
3H、
11C、
13C、
14C、
13N、
15N、
15O、
17O、
18O、
32P、
33P、
35S、
18F、
36Cl、
123I及び
125Iを含む。本発明のある種の同位体標識された化合物(例えば
3H及び
14Cで標識されたもの)は化合物及び/又は基質組織分布アッセイにおいて有用である。三重水素(
3H)及び炭素−14(
14C)同位体は、その調製及び検出性の容易性のために有用である。更に、重水素(
2H)のようなより重い同位体との置換は、より大なる代謝安定性から生じる所定の治療的利点(例えば、増加したインビボ半減期又は減少した必要な投薬量)をもたらし得、よってある状況下では好ましい場合がある。陽電子放出同位体、例えば
15O、
13N、
11C、及び
18Fは、基質レセプター占有率を調べるための陽電子放出断層撮影(PET)研究に有用である。本発明の同位体標識された化合物は、一般に、非同位体標識試薬を同位体標識試薬に置換することによって、ここでのスキーム及び/又は実施例に開示されたものと類似な手順に従って調製することができる。
【0163】
式Iの化合物及び化学療法剤は、ヒトを含む哺乳動物の過剰増殖性疾患の治療的処置(予防的処置を含む)のための併用治療において使用するために標準的な医療実務に従って製剤化される。本発明は一又は複数の薬学的に許容可能な担体、流動促進剤、希釈剤、添加剤、又は賦形剤と関係させて、式Iの化合物を含んでなる薬学的組成物を提供する。
【0164】
適切な担体、希釈剤、及び賦形剤は、当業者によく知られており、炭水化物、ロウ、水溶性及び/又は膨張性のポリマー、親水性又は疎水性の物質、ゼラチン、油、溶媒、水等を含む。使用される特定の担体、希釈剤又は賦形剤は、本発明の化合物が適用される手段及び目的に依存するであろう。溶媒は、一般的には、哺乳類に投与した際に安全(GRAS)であると当業者に認識されている溶媒に基づき選択される。一般に、安全な溶媒は無毒の水性溶媒、例えば水、及び水に溶解又は混和する無毒の他の溶媒である。適切な水性溶媒には、水、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(例えば、PEG400、PEG300)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、クレモホール(例えばCREMOPHOR EL(登録商標),BASF)及びその混合物が含まれる。また製剤は、一又は複数のバッファー、安定剤、界面活性剤、湿潤剤、滑剤、乳化剤、懸濁剤、保存料、抗酸化剤、不透明化剤、流動促進剤、加工助剤、着色料、甘味料、香料、フレーバー剤及び薬物(すなわち、本発明の化合物又はその薬学的組成物)を見栄え良く提供するための又は薬学的製品(すなわち、医薬)の製造を補助する他の既知の添加剤を含みうる。
【0165】
製剤は、常套的な溶解及び混合手順を使用して調製することができる。例えば、バルク薬剤物質(すなわち、本発明の化合物又は該化合物の安定化形態(例えば、シクロデキストリン誘導体又は他の既知の錯化剤との複合体)を、上述の賦形剤の一又は複数の存在下で適切な溶媒に溶解させる。本発明の化合物は、典型的には薬学的投与形態に処方され、薬剤の投与量の制御が容易になり、患者が処方レジメンを遵守することを可能にする。
【0166】
適用される薬学的組成物(又は製剤)は、薬剤の投与に使用される方法に応じて、様々な形で包装されうる。一般に、流通用の物品は、適切な形態の薬学的製剤をそこに収容した容器を含む。適切な容器は当業者によく知られており、ビン(プラスチック及びガラス)、サシェ(小袋)、アンプル、プラスチック袋、金属製シリンダー等の材料を含む。また容器は、包装の内容物への軽率な接近を防止するための、不正開封防止が施されたアセンブリを含みうる。また、容器には、容器の内容物を記載するラベルがそこに付着される。またラベルは適切な警告を含むこともできる。
【0167】
本発明の化合物の薬学的製剤は、投与の様々な経路及びタイプに対して調製されうる。例えば、所望の度合いの純度を有する式Iの化合物を、凍結乾燥製剤、粉砕粉末、又は水溶液の形態で、薬学的に許容可能な希釈剤、担体、賦形剤又は安定剤と混合する(Remington's Pharmaceutical Sciences (1995)第18版, Mack Publ. Co., Easton, PA)。製剤化は、生理学的に許容可能な担体、つまり用いられる用量及び濃度でレシピエントに非毒性である担体と、適切なpH、所望の度合いの純度で室温で混合することにより、なされうる。製剤のpHは特定の用途及び化合物の濃度に主として依存するが、約3から約8の範囲とできる。
【0168】
薬学的製剤は好ましくは滅菌される。特に、インビボ投与に使用される製剤は無菌でなければならない。このような滅菌は、滅菌濾過膜を通した濾過によって容易に達成される。
【0169】
薬学的製剤は、通常は、固形組成物、凍結乾燥製剤又は水溶液として保存することができる。
【0170】
本発明の薬学的製剤は、良好な医療行為と一致した様式、つまり、投与量、濃度、スケジュール、経過、ビヒクル及び経路で、用量決定され投与されるであろう。ここで考慮される要因には、治療される特定の疾患、治療される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床症状、疾患の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジュール、及び医師に既知の他の要因が含まれる。投与される化合物の「治療的に有効な量」は、このような考慮に支配され、凝固因子媒介性疾患を防止し、軽減し、又は治療するのに必要な最小量である。このような量は、好ましくはホストに毒性であるか又はホストを出血に対して有意により感受性にする量以下である。
【0171】
経口的又は非経口的に投与される式Iの化合物の初回の薬学的に有効な量は、約0.01−1000mg/kgの範囲、つまり1日当たり患者の体重の約0.1から20mg/kgであり、典型的な化合物の初回の投与量は0.3から15mg/kgの範囲である。式Iの化合物の用量及び投与される化学療法剤の用量は、それぞれ単位投薬形態当たり約1mgから約1000mg、又は単位投薬形態当たり約10mgから約100mgである。式Iの化合物及び化学療法剤の用量は、約1:50から約50:1の重量比、又は約1:10から約10:1の重量比で投与されうる。
【0172】
許容可能な希釈剤、担体、賦形剤及び安定剤は、用いられる投薬量及び濃度でレシピエントに非毒性であり、ホスフェート、シトレート、及び他の有機酸のようなバッファー;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;保存料(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール等);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリジン等のアミノ酸;グルコース、マンノース、又はデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトールなどの糖類;ナトリウム等の塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);及び/又は非イオン性界面活性剤、例えばTWEEN(商標)、CREMOPHOR EL(登録商標)、プルロニクス(PLURONICS)(商標)、又はポリエチレングリコール(PEG)を含む。活性な薬学的成分は、コロイド性の薬剤送達系(例えば、リポソーム類、アルブミンミクロスフィア、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)又はマイクロエマルションで各々、例えば、コアセルべーション技術又は界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えばヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセル類に捕捉されうる。このような技術は、Remington's Pharmaceutical Sciences 18版, (1995) Mack Publ. Co., Easton, PAに開示されている。
【0173】
式Iの化合物の徐放性製剤を調製することができる。徐放性製剤の適切な例は、式Iの化合物を含む疎水性固体ポリマーの半透性マトリクスを含み、そのマトリクスは成形品、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形態である。徐放性マトリクスの例には、ポリエステル、ハイドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリ乳酸(米国特許第3773919号)、L-グルタミン酸及びγ-エチル-L-グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、例えばLUPRON DEPOT(商標)(乳酸-グリコール酸コポリマー及び酢酸リュープロリドからなる注射可能なミクロスフィア)及びポリ-D(-)3-ヒドロキシ酪酸が含まれる。
【0174】
薬学的製剤はここに詳細に記載する投与経路に適したものを含む。製剤は簡便には単位投薬形態で提供され得、薬学の分野でよく知られている方法の何れかによって調製することができる。一般に技術及び製剤化は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18版 (1995)Mack Publishing Co., Easton, PAに見出される。かかる方法は、活性成分を、一又は複数の補助成分を構成する担体と一緒にする工程を含む。一般に、製剤は、活性成分を、液状担体又は細かに分断された固形担体又はその双方と均一かつ密に混合し、ついで必要ならば生成物を成形することにより、調製される。
【0175】
経口投与に適した式Iの化合物及び/又は化学療法剤の製剤は、それぞれが予め決められた量の式Iの化合物及び/又は化学療法剤を含む、例えば、丸薬、硬又は軟、例えばゼラチンカプセル、薬包(カシェ)、トローチ、ロゼンジ、水性又は油性の懸濁液、分散性粉末又は顆粒、エマルション、シロップ又はエリキシル剤のような別々の単位として調製されうる。式Iの化合物の量及び化学療法剤の量は、併用製剤として丸薬、カプセル、溶液又は懸濁液に製剤化されうる。別法では、式Iの化合物及び化学療法剤は、交替投与による丸薬、カプセル、溶液又は懸濁液に別個に製剤化されうる。
【0176】
製剤は、薬学的組成物の製造のために当該分野で知られている任意の方法に従って調製することができ、そのような組成物は、口に合う調製物を提供するために、甘味料、香味料、着色料及び保存剤を含む一又は複数の薬剤を含みうる。圧縮錠は、場合によってはバインダー、潤滑剤、不活性希釈剤、保存料、界面活性又は分散剤と混合せしめて、粉末又は顆粒のような自由に流動する形態で活性成分を適切な機械で圧縮することによって調製することができる。成形錠剤は不活性な液体希釈剤で湿潤させた粉末化活性成分の混合物を適切な機械で成形することによって製造することができる。錠剤は場合によっては被覆し又は切り込み線を入れ、場合によっては活性成分の遅延又は制御放出をもたらすように製剤化される。
【0177】
本発明の薬学的製剤の錠剤賦形剤は、錠剤を構成する粉末化薬剤のバルク体積を増加させるフィラー(又は希釈剤);摂取されるときに錠剤を小さな断片へ、理想的には個々の薬剤粒子へ分解させて、薬剤の素早い溶解及び吸収を促進する崩壊剤;顆粒及び錠剤が必要とされる機械的強度で形成され得、圧縮された後に錠剤を保持し、包装、輸送、及び通常の取り扱い中にその成分粉末に分解することを防ぐ結合剤(バインダー);製造中において錠剤を構成する粉体の流動性を改善する流動促進剤;製造中において錠剤をプレスするのに使用される装置に錠剤化粉末が付着しないようにする滑沢剤(それらは、最終錠剤が装置から排出されるに応じて、プレスを通過するときの粉末ミックスの流れを改善し、摩擦及び破壊を最小にする);流動促進剤と類似した機能を持ち、製造中において錠剤の形状を打ち抜くために使用される機械と錠剤を構成する粉末との間の付着を減少させる抗付着剤;錠剤に好ましい味覚を与えたり又は不快な味をマスクするために錠剤に導入されるフレーバー(香味料)、及び識別及び患者のコンプライアンスを助ける着色料を含みうる。
【0178】
錠剤の製造に適した非毒性の薬学的に許容可能な賦形剤と混合せしめられて活性成分を含む錠剤が許容可能である。これらの賦形剤は、例えば不活性な希釈剤、例えば炭酸カルシウム又はナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム又はナトリウム;顆粒化及び崩壊剤、例えばトウモロコシデンプン、又はアルギン酸;結合剤、例えばデンプン、ゼラチン又はアカシア;及び潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルクでありうる。錠剤は非被覆でもよく、あるいは胃腸管中での崩壊と吸着を遅延させるマイクロカプセル化を含む既知の方法によって被覆されてもよく、それによって長時間にわたる持続作用がもたらされる。例えば、時間遅延物質、例えばモノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリルを単独で又はロウと共に用いることができる。
【0179】
眼又は他の外部組織、例えば口及び皮膚の治療に対しては、製剤は、好ましくは、例えば0.075から20%w/wの量で活性成分を含む局所用軟膏又はクリームとして適用される。軟膏に製剤される場合、活性成分はパラフィン系又は水混和性軟膏基剤と共に用いることができる。あるいは、活性成分は水中油クリーム基剤を用いてクリームに製剤化することができる。
【0180】
クリーム基剤の水性相は多価アルコール、すなわち、例えばプロピレングリコール、ブタン1,3-ジオール、マンニトール、ソルビトール、グリセロール及びポリエチレングリコール(PEG400を含む)及びその混合物のような二以上のヒドロキシル基を有するアルコールを含みうる。局所用製剤は、望ましくは、皮膚又は他の患部領域を通しての活性成分の吸収又は浸透を向上させる化合物を含みうる。そのような皮膚浸透向上剤の例はジメチルスルホキシド及び関連アナログを含む。
【0181】
本発明のエマルションの油性相は、脂肪又は油との、又は脂肪及び油の双方との少なくとも一の乳化剤の混合物を含む、既知の成分から既知の方法で構成することができる。好ましくは、親水性乳化剤が、安定化剤として作用する親油性乳化剤と共に含有せしめられる。併せて、安定化剤と共に又は安定化剤を伴わないで乳化剤が乳化ロウを構成し、油及び脂肪と共にロウが、クリーム製剤の油性分散相を形成する乳化軟膏基剤を構成する。本発明の製剤に使用するのに適した乳化剤及びエマルション安定化剤は、トゥイーン(Tween(登録商標))60、スパン(Span(登録商標))80、セトステアリルアルコール、ベンジルアルコール、ミリスチルアルコール、モノ-ステアリン酸グリセリル及びラウリル硫酸ナトリウムを含む。
【0182】
本発明の薬学的製剤の水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適した賦形剤と混合せしめられて活性物質を含む。そのような賦形剤には、懸濁剤、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、クロスカルメローゼ、ポビドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガム及びアカシアガム、及び分散又は湿潤剤、例えば天然に生じるホスファチド(例えばレシチン)、脂肪酸とのアルキレンオキシドの縮合産物(例えばポリオキシエチレンステアレート)、長鎖脂肪族アルコールとのエチレンオキシドの縮合産物(例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール)、脂肪酸とヘキシトール無水物から誘導された部分エステルとのエチレンオキシドの縮合産物(例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)が含まれる。水性懸濁液はまた一又は複数の保存料、例えばエチル又はn-プロピルp-ヒドロキシ-ベンゾエート、一又は複数の着色剤、一又は複数の香味剤及び一又は複数の甘味料、例えばスクロース又はサッカリンを含みうる。
【0183】
薬物学的組成物は滅菌された注射用調製物の形態、例えば滅菌注射用水性又は油性懸濁液でありうる。この懸濁液は上に述べた好適な分散又は湿潤剤及び懸濁剤を用いて既知の技術に従って製剤化することができる。滅菌された注射用製剤はまた1,3-ブタン-ジオール溶液又は凍結乾燥粉末から調製したもののように、非毒性の非経口的に許容可能な希釈剤又は溶媒中の溶液又は懸濁液でありうる。用いることができる許容可能なビヒクル及び溶媒は水、リンガー溶液及び等張塩化ナトリウム溶液である。また、滅菌固定化油を溶媒又は懸濁媒質として常套的に用いることができる。この目的に対して、合成モノ-又はジグリセリドを含む任意のブランドの固定化油を用いることができる。また、オレイン酸のような脂肪酸も同様に注射剤の調製に使用することができる。
【0184】
単一投薬形態をつくるために担体物質と組合わせられうる活性成分の量は、治療される宿主と特定の投与態様に応じて変わる。例えば、ヒトへの経口投与を意図した時間放出製剤は、全組成物の約5から約95%(重量:重量)と変わりうる適切で簡便な量の担体物質と共に配合されるおよそ1から1000mgの活性物質を含みうる。薬物学的組成物は投与のために容易に測定可能な量をもたらすよう調製することができる。例えば、静脈点滴のための水溶液は、約30mL/時の割合で適切な体積の点滴が生じうるようにするために溶液1ミリリットル当たり約3から500μgの活性成分を含みうる。
【0185】
非経口投与に適した製剤には、抗酸化剤、バッファー、静菌剤及び意図したレシピエントの血液と製剤を等張にする溶質を含みうる水性及び非水性滅菌注射用溶液;及び懸濁剤及び増粘剤を含みうる水性及び非水性滅菌懸濁液が含まれる。
【0186】
眼への局所投与に適した製剤には、好適な担体、特に活性成分のための水性溶媒に活性成分が溶解又は懸濁させられた点眼液がまた含まれる。活性成分はそのような製剤中に好ましくは約0.5から20%w/w、例えば約0.5から10%、例えば約1.5%w/wの濃度で存在する。
【0187】
口への局所投与に適した製剤には、香味基剤、通常はスクロース及びアカシア又はトラガカント中に活性成分を含むロゼンジ;ゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアカシアのような不活性基剤に活性成分を含むパスティユ;及び適切な液体担体に活性成分を含むうがい薬が含まれる。
【0188】
直腸投与のための製剤は、例えばカカオバター又はサリチレートを含む適切な基剤を用いて座薬として提供することができる。
【0189】
肺内又は経鼻投与に適した製剤は、例えば0.1から500ミクロン(例えば0.5、1、30ミクロン、35ミクロン等のような増分ミクロンで0.1から500ミクロンの範囲の粒子径を含む)の範囲の粒子径を有し、これが鼻経路を通る迅速な吸入又は肺胞嚢に達するように口からの吸入によって投与される。好適な製剤には、活性成分の水性又は油性溶液が含まれる。エアゾール又は乾燥粉末投与に適した製剤は常法によって調製することができ、以下に記載されるような疾患の治療又は予防にこれまで使用されている化合物のような他の治療剤と共に送達できる。
【0190】
膣投与に適した製剤は、活性成分に加えて、当該分野で適切であることが知られているような担体を含むペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム又はスプレー製剤として提供することができる。
【0191】
製剤は、単位用量又は複数用量容器、例えば密封されたアンプル及びバイアルに包装することができ、使用直前に注射用の滅菌液体担体、例えば水の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)条件で保存することができる。即時混合注射溶液及び懸濁液は既に記載された種類の滅菌粉末、顆粒及び錠剤から調製される。好適な単位投薬製剤は、活性成分の、上に記載されたような毎日の投薬又は毎日の部分用量単位、又はその適切な画分を含むものである。
【0192】
本発明は更に獣医学的担体と共に上述の少なくとも一の活性成分を含有する獣医学的組成物を提供する。獣医学的担体は組成物を投与する目的に有用な物質であり、不活性な又は獣医学分野で許容され活性成分と相容性がある固形、液体又は気体物質でありうる。これらの獣医学的な組成物は非経口的、経口的又は任意の他の所望の経路によって投与することができる。
【0193】
併用療法
式Iの化合物は、前悪性及び非腫瘍性又は非悪性の過剰増殖性疾患と共に、造血器腫瘍の治療のためのある種の化学療法剤と組合わせて使用されうる。ある実施態様では、式Iの化合物は、薬学的な併用製剤中に、又は併用療法としての投与レジメンにおいて、抗過剰増殖能を持つか又は造血器腫瘍の治療に有用な化学療法剤と組合わせられる。薬学的な併用製剤又は投与レジメンの化学療法剤は、好ましくは式Iの化合物に相補的な活性を持ち、互い悪影響を及ぼすことはない。併用治療剤のそのような化合物は意図される目的に効果的である量で投与されうる。一実施態様では、この発明の薬学的製剤は式Iの化合物と明細書にここに記載されるような化学療法剤を含有する。他の実施態様では、併用治療剤は、投与レジメンによる投与であり、ここで式Iの化合物の治療的に有効な量が毎日2回から3週毎に1回(q3wk)の範囲で投与され、治療的に有効な量の化学療法剤が、別に、交互に、毎日2回から3週毎に1回の範囲で投与される。
【0194】
本発明の併用治療剤は、式Iの化合物と、デキサメタゾン、チオテパ、ドキソルビシン、ビンクリスチン、リツキシマブ、シクロホスファミド、プレドニゾン、メルファラン、レナリドミド、ボルテゾミブ、ラパマイシン、及びシタラビンから選択される化学療法剤を、過剰増殖性疾患の治療に、別個に、同時に又は逐次に使用されるための併用調製物として、含む製品を含む。
【0195】
併用療法は同時又は逐次のレジメンとして投与されうる。逐次的に投与される場合、併用薬は二回以上の投与で投与されうる。併用投与には、別個の製剤又は単一の薬学的製剤を使用する同時投与、及び何れかの順での逐次投与が含まれ、そこでは、好ましくは、両方の(又は全ての)活性剤が同時にその生物学的活性を作用させる時間がある。
【0196】
上記の同時投与薬剤の任意のものに対する適切な投薬量は現在使用されているものであり、新たに同定された薬剤と他の化学療法剤又は治療の併用作用(相乗作用)のために、例えば、治療係数を増加させ又は毒性又は他の副作用又は事象を緩和させるように、低下させうる。
【0197】
抗癌療法の特定の実施態様では、併用治療剤は、アジュバント療法として手術療法及び放射線療法が組合わせられうる。本発明に係る併用療法は、少なくとも一種の式Iの化合物の投与と一又は複数の他の癌治療法又は様式を含む。式Iの化合物及び化学療法剤の量及び投与の相対的なタイミングは、所望される併用治療効果を達成するために選択される。
【0198】
薬学的組成物の投与
本発明の併用治療剤は治療される症状に適した任意の経路によって投与されうる。好適な経路には、経口、非経口(皮下、筋肉内、静脈内、動脈内、吸入、皮内、くも膜下腔内及び硬膜外、及び注入法を含む)、経皮、直腸、経鼻、局所(頬側及び舌下を含む)、膣、腹腔内、肺内及び鼻腔内が含まれる。局所投与は、経皮パッチ又はイオン導入装置のような経皮投与の使用をまた含みうる。薬剤の製剤化は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18版, (1995) Mack Publishing Co., Easton, PAで検討されている。薬剤製剤の他の例は、Liberman, H. A.及びLachman, L.編, Pharmaceutical Dosage Forms, Marcel Decker, Vol 3, 2版, New York, NYにも見出すことができる。局所的な免疫抑制処置のために、化合物は、移植前に、移植片とインヒビターとをかん流又は接触させることを含む、病巣内投与により投与することができる。好ましい経路は例えばレシピエントの状態に応じて変わりうることは理解される。化合物が経口投与される場合、化合物は、丸薬、カプセル剤、錠剤等として薬学的に許容可能な担体又は賦形剤と共に製剤化することができる。化合物が非経口的に投与される場合、化合物は、以下に詳述されるように、薬学的に許容可能な非経口ビヒクルと共に単位投薬注射可能形態で製剤化することができる。
【0199】
ヒト患者を処置するための用量は、約10mgから約1000mgの式Iの化合物、例えば約100mgから約300mgの化合物の範囲とすることができる。特定の化合物の吸収、分布、代謝、及び排出を含む、薬物動態(PK)及び薬力学的特性(PD)に応じて、1日に1回(QID)、1日に2回(BID)、又はより頻繁に投与されうる。また、毒性要因が、投薬量及び投与投薬レジメンに影響を与える場合がある。経口的に投与される場合、丸薬、カプセル剤又は錠剤は、一日2回、毎日又はより少ない頻度、例えば毎週、又は2又は3週毎に1回、特定の期間、摂取されうる。レジメンは多くの治療サイクルの間、繰り返されうる。
【0200】
治療方法
(1)式Iの化合物及び(2)化学療法剤の併用治療剤は、限定しないが、PI3キナーゼ経路の活性化により特徴づけられるものを含む疾患、症状及び/又は障害の治療に有用である。従って、この発明の他の態様は、PI3を含む脂質キナーゼを阻害することによって治療されうる疾患又は症状を治療する方法を含む。一実施態様では、造血器腫瘍の治療方法は、哺乳動物に併用製剤として又は交互に併用治療剤を投与することを含み、ここで、併用治療剤は、式Iを有する化合物の治療的に有効な量と、デキサメタゾン、チオテパ、ドキソルビシン、ビンクリスチン、リツキシマブ、シクロホスファミド、プレドニゾン、メルファラン、レナリドミド、ボルテゾミブ、ラパマイシン及びシタラビンから選択される一又は複数の化学療法剤の治療的に有効な量とを含む。(1)式I又はIIの化合物及び(2)化学療法剤の併用治療剤は、前悪性及び非腫瘍性又は非悪性の過剰増殖性疾患と共に、腫瘍、癌、新生物組織を含む、過剰増殖疾患又は障害の治療に用いることができる。一実施態様では、ヒト患者は、併用治療剤及び薬学的に許容可能な担体、アジュバンド、又はビヒクルで治療され、ここで、上記併用治療剤の式Iの化合物又はその代謝産物はPI3キナーゼ活性を検出可能に阻害する量で存在する。
【0201】
造血器腫瘍には、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞造血リンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、AML、MCLが含まれる。
【0202】
この発明の他の態様は、疾患又は症状に罹患している哺乳動物、例えばヒトにおける、ここに記載の疾患又は症状の治療に使用するための薬学的組成物又は併用治療剤を提供する。また提供されるのは、そのような疾患に罹患している哺乳動物、例えばヒト等の温血動物における、ここに記載の疾患及び症状の治療のための医薬の調製における薬学的組成物の使用である。
【0203】
式Iの化合物の代謝産物
また本発明の範囲に入るものは、ここに記載される式Iの化合物のインビボ代謝産物である。かかる産物は、例えば、投与された化合物の酸化、還元、加水分解、アミド化、脱アミド、エステル化、エステル分解、酵素分解等から生じうる。従って、本発明は、その代謝産物を生じさせるのに十分な時間、この発明の化合物を哺乳動物に接触させることを含む方法によって生産される化合物を含む、式Iの化合物の代謝産物を含む。
【0204】
代謝産物は、典型的には本発明の化合物の放射標識(例えば、
14C又は
3H)同位体を調製し、それを、例えばラット、マウス、モルモット、サルのような動物、又はヒトに(例えば約0.5mg/kgを越える)検出可能な用量で非経口的に投与し、十分な時間をかけて代謝を生じさせ(典型的には約30秒から30時間)、尿、血液又は他の生物学的試料からその転換産物を単離することによって同定される。これらの産物は、標識されているので容易に単離される(他のものは代謝産物中で生存するエピトープに結合可能な抗体の使用によって単離される)。代謝産物の構造は、常套的な方法、例えばMS、LC/MS又はNMR分析で決定される。一般に、代謝産物の分析は当業者によく知られた一般的な薬剤代謝研究と同じ方法でなされる。代謝産物は、それらがインビボで別に見出されない限り、本発明の化合物の治療用投薬の診断アッセイにおいて有用である。
【0205】
製造品
本発明の他の実施態様では、上述の疾病及び疾患の治療に有用な式Iの化合物を含む製造品、又は「キット」が提供される。一実施態様では、キットは、式Iの化合物を含む容器を含む。キットは、容器上又は容器に付随して、ラベル又はパッケージ挿入物を更に含みうる。「パッケージ挿入物」という用語は、適応症、用法、用量、投与法、禁忌及び/又はこのような治療製品の使用に関する警告についての情報を含む、治療製品の商業的パッケージ中に常套的に含められる指示書を指すために使用される。適切な容器には、例えば、ビン、バイアル、シリンジ、ブリスターパック等が含まれる。容器は、ガラス又はプラスチックなどの様々な材料から形成されうる。容器は、症状を治療するのに有効な式Iの化合物又はその製剤を収容し得、無菌のアクセスポートを有し得る(例えば、容器は皮下注射針で貫通可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグ又はバイアルでありうる)。組成物中の少なくとも一種の活性剤は式Iの化合物である。ラベル又はパッケージ挿入物は、組成物が癌のような選択した症状の治療のために使用されることを示している。一実施態様では、ラベル又はパッケージ挿入物は、式Iの化合物を含む組成物が、異常な細胞増殖から生じる疾患を治療するために使用することができることを示している。ラベル又はパッケージ挿入物はまた組成物が他の疾患を治療するのに使用されうることも示しうる。あるいは、又は付加的に、製造品は、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液及びデキストロース溶液等の薬学的に許容可能なバッファーを含む第2の容器を更に含みうる。それは、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、及びシリンジを含む商業的及び使用者の観点から望ましい他の材料を更に含みうる。
【0206】
キットは、式Iの化合物と、存在する場合は第二の薬学的製剤の投与のための指示書を更に含みうる。例えば、キットが、式Iの化合物を含む第一の組成物と第二の薬学的製剤を含む場合、キットは、それを必要としている患者への第一及び第二の薬学的組成物の同時、逐次又は別個の投与のための指示書を更に含みうる。
【0207】
他の実施態様では、キットは、錠剤又はカプセル剤等の式Iの化合物の固形経口形態の送達に適している。このようなキットは、好ましくは多くの単位投薬量を含む。このようなキットは、それらの意図した使用の順に配された投薬量を有するカードを含みうる。このようなキットの一例は「ブリスターパック」である。ブリスターパックは、包装産業においてよく知られており、薬学的単位投薬形態の包装に広く使用されている。所望される場合は、例えば数字、文字、又は他のマークの形態で、又は該用量が投与されうる治療スケジュールにおける日を指定するカレンダー挿入物を用いて、記憶補助を提供することができる。
【0208】
一実施態様によれば、キットは、(a)その中に式Iの化合物を含む第一の容器と;場合によっては(b)その中に第二の薬学的製剤を含む第二の容器を含んでいてもよく、ここで、第二の薬学的製剤は、抗過剰増殖活性を有する第二の化合物を含む。あるいは、又は加えて、キットは、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液及びデキストロース溶液のような薬学的に許容可能なバッファーを含む第三の容器を更に含みうる。それは、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、及びシリンジを含む、商業的にかつ使用者の観点から望ましい他の材料を更に含みうる。
【0209】
キットが式Iの組成物と第二の治療剤、つまり化学療法剤を含む場合、キットは、別々の組成物を収容するための容器、例えば分割されたビン又は分割されたホイルパケット等を含みうるが、別々の組成物がまた単一の分割されていない容器に収容されてもよい。典型的には、キットは、別個の成分の投与のための指示書を含む。別々の成分が異なる投薬形態(例えば、経口及び非経口)で好ましくは投与され、異なる投与間隔で投与される場合、又は組合せの個々の成分の用量設定が処方医師によって望まれる場合に、キット形態は特に有利である。
【0210】
一般的調製手順
一般的手順A−1 鈴木カップリング:
【0211】
鈴木タイプのカップリング反応は、ピリミジン環の2位に縮合二環式複素環又はヘテロアリールを結合させるのに有用である(スキーム4参照)。一般的に、置換2-クロロ-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン5を約1.5当量の4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)1H-インダゾール7と組合わせ、1モル濃度の水溶液としての3当量の炭酸ナトリウムと等体積のアセトニトリルに溶解させうる。中間体7は、出典明示によりここに援用される米国特許出願公開第2008/0039459号;米国特許出願公開第2008/0076768号;米国特許出願公開第2008/0076758号;米国特許出願公開第2008/0207611号に従って調製した。触媒量又はそれ以上の低価数のパラジウム試薬、例えばビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロライドを加える。様々なボロン酸又はボロン酸エステルを、示したインダゾールボロン酸エステルの代わりに使用することができる。また別法では、イミダゾールの窒素を、例えばテトラヒドロピラニル基を用いて保護することができる。ある場合には、水性層のpHを調節するために炭酸ナトリウムの代わりに酢酸カリウムを使用した。ついで、反応を、Biotage Optimizer(Biotage社)において加圧下で、10分から30分間、約140−150℃に加熱した。内容物を酢酸エチル又は他の有機溶媒で抽出する。有機層の蒸発後、生成物8をシリカで又は逆相HPLCによって精製することができる。
【0212】
一般的手順A−2 鈴木カップリング:
鈴木タイプカップリング反応は、ピリミジン環の2位に単環式ヘテロアリールを結合させるのに有用である(スキーム4参照)。一般的に、置換2-クロロ-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン5を1.5当量の5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ピリミジン-2-アミン7aと組合わせて、1モル濃度の水溶液としての3当量の炭酸ナトリウム又は炭酸カリウムと等体積のアセトニトリルに溶解させうる。中間体7aは、出典明示によりここに援用される米国特許出願公開第2008/0269210号;米国特許出願公開第2008/0242665号に従って調製した。触媒量又はそれ以上の低価数のパラジウム試薬、例えばビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロライドを加える。様々なボロン酸又はボロン酸エステルを、示したピナコールボロン酸エステルの代わりに使用することができる。また別法では、ピリミジン-2-アミンの窒素を、例えばテトラヒドロピラニル基を用いて保護することができる。ある場合には、水性層のpHを調節するために炭酸ナトリウムの代わりに酢酸カリウムを使用した。ついで、反応を、Biotage Optimizerマイクロ波反応器(Biotage社)において加圧下で、10分から30分間、約100−150℃に加熱した。内容物を酢酸エチル又は他の有機溶媒で抽出する。有機層の蒸発後、生成物8aをシリカで又は逆相HPLCによって精製することができる。
【0213】
一般的手順B アミドカップリング:
2-(1H-インダゾール-4-イル)-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-6-カルボン酸13を、DMF中の1.5当量のHATU、3当量のアルキルアミン及び3当量のDIPEAでおよそ0.1M濃度まで処理する。反応を完了するまで攪拌し、飽和重炭酸塩溶液と共に酢酸エチル中で一回で抽出する。有機層を乾燥させ、濾過し、濃縮して、粗中間体を得る。この中間体を逆相HPLCを介して精製して生成物15を得る。
【0214】
一般的手順B−1 アミドカップリング:
4-モルホリノ-2-(ピリジン-3-イル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-6-カルボン酸13aをDMF中の1.5当量のHATU、3当量のアルキルアミン(R-NH
2)及び3当量のDIPEAでおよそ0.1M濃度まで処理する。反応を完了するまで攪拌し、飽和重炭酸塩溶液と共に酢酸エチル中で一回で抽出する。有機層を乾燥させ、濾過し、濃縮して、粗中間体を得る。この中間体を逆相HPLCを介して精製して生成物15aを得る。
【0215】
一般的手順B−2 アミドカップリング:
2-クロロ-4-モルホリノ-6-((ピペラジン-1-イル)メチル)チエノ[3,2-d]ピリミジンをDMF中の1.5当量のHATUのようなカップリング試薬、約3当量のカルボン酸(RCO
2H)及び過剰のDIPEAのようなアミン塩基でおよそ0.1M濃度まで処理する。反応を完了するまで攪拌し、飽和重炭酸塩溶液と共に酢酸エチル中で一回で抽出する。有機層を乾燥させ、濾過し、濃縮して、粗中間体を得る。
【0216】
一般的手順B−3 還元的アミノ化:
2-クロロ-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-6-カルバルデヒドをジクロロエタン中0.2M濃度まで溶解させる。この溶液に1.5から2.0当量の第一級又は第二級アミン(R
2NH)、約10当量のトリメチルオルトギ酸塩、及び約1当量の酢酸を加える。混合物を2から6時間攪拌した後、1.5当量のナトリウムトリアセトキシボロヒドリドを加える。12から16時間攪拌後、反応物を飽和重炭酸ナトリウム中に注ぎ、酢酸エチルで数回抽出して、還元的アミノ化中間体を得、これをシリカゲルで精製するか、又は粗物質のまま次の反応で使用する。
【0217】
一般的手順C スルホンアミドの形成:
塩化2-クロロ-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-6-スルホニル17をDCM中に懸濁させた後、約2当量のアミン(HNR
2)及び約3当量のDIPEAのようなアミン塩基を加える。反応を完了するまでLCMSによりモニターする。粗反応混合物を酢酸エチルで希釈し、飽和塩化アンモニウムで抽出し、酢酸エチルで一回逆抽出する。有機層を組合せ、濃縮乾固させた。粗スルホンアミド中間体18を次の鈴木カップリングにおいて直接使用する。
【0218】
一般的手順D アルコール合成
2-クロロ-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン4をTHF中0.2モル濃度まで懸濁させ、ドライアイス/アセトニトリル浴中で−50℃まで冷却した後、ヘキサン中の2当量の2.5MのnBuLiを加える。15分後に3.0モル当量の環状又は非環状ケトン(R
2C(=O)を溶液に加える。反応物を−50℃で約1時間攪拌し続け、ついで殆どの場合、0℃になるようにした。TLC又は質量分析によって反応が完了したところで、飽和塩化アンモニウム溶液中にクエンチし、EtOAcで2回抽出する。有機層を濃縮し、粗混合物として使用するか、又はシリカで精製し、あるいは生成物12を最小量のアセトニトリルに溶解させ、濾過して、残っている出発物質4を除去することができる。
【0219】
一般的手順E t-ブトキシカルボニル(BOC)基の除去
ジオキサン中の10当量以上の4NのHClを、共溶媒としてジクロロメタンを伴うか伴わないで、出発物質を加える(上に示した一般的スキームを、しかし同様のスカフォールドで用いる)。40℃までの数時間の加熱が、Boc基を除去するために時折必要となる。反応物を濃縮乾固させ、次の反応に粗物質のまま使用することができる。
【0220】
一般的手順F ワンポットでの鈴木カップリング反応
1MのNa
2CO
3水溶液(3当量)及びアセトニトリル(3当量)中の2-クロロ-6-ヨード-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン19(1当量)、フェニルボロン酸又はヘテロ環ボロン酸(R
1−B(OH)
2、1.1当量)及びビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロライド(0.1当量)を密封マイクロ波反応器中で10分から40分100℃まで加熱して5を得た。完了時に、4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1H-インダゾール7(1.3当量)及びビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロライド(0.1当量)を同じポットに加えた。反応混合物を密封マイクロ波反応器中で10分から40分150℃に加熱した。混合物を酢酸エチル(3×5mL)で抽出した。混合有機層を濃縮して粗物質8を得た。
【0221】
一般的手順G アミドカップリング反応
ジクロロメタン中の2-クロロ-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-6-アミン22(1当量)、酸塩化物(約2当量)及びトリエチルアミン(2当量)を攪拌した。反応を完了するまでLC/MSでモニターした。混合物を蒸発させて粗アミド23を得、これを精製せずに次の工程で直接使用した。
【0222】
一般的手順H アセトアミド、ベンズアミジン、及びスルホンアミドの調製
0℃に冷却したDCM中の1-(2-クロロ-4-モルホリノチエノ[2,3-d]ピリミジン-6-イル)-N-メチルメタンアミンの0.25から0.40M溶液に1.5当量のTEAを加え、続いてDCMに希釈した1.0から1.5当量のアルキル又はアリール−酸塩化物又は塩化スルホニルを滴下して加えた。反応を雰囲気温度で攪拌し、LCMSによって完了をモニターする。完了後、反応体積をDCMで増加させ、希重炭酸ナトリウム水溶液を溶液に加える。有機及び水性層を分離する。最後に、有機層をブラインで洗浄し、乾燥(MgSO
4)させる。乾燥させた有機溶液を真空濃縮させ、生成物を必要に応じてシリカクロマトグラフィーで精製する。
【0223】
一般的手順I ベンゼンアミンに対するアミドカップリング反応
DMF中の3-(2-クロロ-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-6-イル)ベンゼンアミン24(1当量)、カルボン酸(1.5当量)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾチアゾール(0.2当量)、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-(N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU、1.5当量、及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(2.5当量)を室温で攪拌した。反応を完了までLC/MSによってモニターした。反応混合物を酢酸エチルで希釈し、飽和重炭酸ナトリウム及びブラインで洗浄した。有機層をMgSO
4で乾燥させ、濾過し、蒸発させてアミド生成物25を得た。
【0224】
一般的手順J 6-ヨード置換及び2-鈴木カップリング
DMF(1.00mL)中の2-クロロ-6-ヨード-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン19(0.05g、0.13mmol)の溶液に適切なアニリン(200mol%)、Cs
2CO
3(50mol%)、Pd
2(dba)
3(5mol%)、及びXANTPHOS(キサントフォス)(10mol%)を加えた。反応物をBiotage optimizerマイクロ波反応器中で加圧下で110℃まで30分間加熱した。生じた溶液を真空下で濃縮して、26を得、その後一般的手順Aに従った。
【0225】
一般的手順K 6-アミノアルキルアシル化及び2-鈴木カップリング
CH
2Cl
2(4mL)中の(2-クロロ-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-6-イル)メタンアミン27(50mg、0.2mmol)の溶液にEt
3N(84μL、0.6mmol)及び適切な酸塩化物又はそのHCl塩(0.3mmol)を加えた。反応物を18から48時間室温で攪拌した後、水でクエンチした。水性層をEtOAcで抽出した。組合わせた有機物をNa
2SO
4で乾燥させ、真空下で濃縮した。2-クロロ粗生成物をボロネート試薬7及びパラジウム触媒と一般的手順Aに従ってカップリングさせて28を得、これを逆相HPLC精製によって精製した。
【0226】
別法では、DMF(5mL)中の(2-クロロ-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-6-イル)メタンアミン27(111mg、0.39mmol)の溶液に2,6-ルチジン(48.2μL、0.41mmol)及び適切な酸塩化物又はそのHCl塩(0.39mmol)を加えた。反応物を18から72時間室温で攪拌した後、水でクエンチした。水性層をEtOAcで抽出した。組合わせた有機物をNa
2SO
4で乾燥させ、真空下で濃縮した。2-クロロ粗生成物をボロネート試薬7及びパラジウム触媒と一般的手順Aに従ってカップリングさせて28を得、これを逆相HPLC精製によって精製した。
【0227】
一般的手順L フルオロピリジン上のアミン置換
N-メチルピロリジン(〜0.1M)中の2-クロロ-6-(6-フルオロピリジン-3-イル)-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン、約4当量の第一級又は第2級アミン(R=H、C
1-C
12アルキル、C
2-C
8アルケニル、C
2-C
8アルキニル、C
3-C
12カルボシクリル、C
2-C
20ヘテロシクリル、C
6-C
20アリール又はC
1-C
20ヘテロアリール)、及び約2当量のジイソプロピルエチルアミンの混合物を、密封マイクロ波反応器で10〜40分、約130−140℃に加熱した後、高真空下で揮発分を除去した。粗混合物をフラッシュクロマトグラフィーで精製して中間体2-クロロ-6-(6-アミノピリジン-3-イル)-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジンを得、これを、一般的手順Aに従って、単環式ヘテロアリール、縮合二環式複素環又はヘテロアリールボロネート試薬と鈴木カップリングさせることができる。
【0228】
本発明を例証するために、次の実施例を含める。しかしながら、これらの実施例は発明を限定するものではなく、発明を実施する方法を単に示唆するものであることが理解されなければならない。当業者には、記載された化学反応を、多くの本発明の他のPI3K阻害剤を調製するために容易に適応させることができることが分かり、この発明の化合物を調製するための代替方法も本発明の範囲に入ると見なされる。例えば、本発明に係る非例示化合物の合成は、例えば干渉基を適切に保護し、記載したもの以外の当該分野で知られた他の適切な試薬を利用し、及び/又は反応条件の常套的な改変を行うことによって、当業者に明らかな改変によって成功裏に実施されうる。あるいは、ここに開示され又は当該分野で知られている他の反応も本発明の他の化合物の調製のための利用性を有していることが認識されるであろう。
【0229】
実施例1 2,4-ジクロロ-チエノ[3,2-d]ピリミジン3
【0230】
3-アミノ-2-チオフェンカルボン酸メチル1(13.48g、85.85mmol)と尿素(29.75g、5当量)の混合物を190℃で2時間加熱した。熱い反応混合物を水酸化ナトリウム溶液に注ぎ、不溶性物質を濾過により取り除いた。混合物をついで酸性化し(HCl、2N)、1H-チエノ[3,2-d]ピリミジン-2,4-ジオン2を白色沈殿物として得、これを濾過により集め、空気乾燥させた(9.49g、66%)。
1H NMR400MHz,d
6−DMSO)6.90(1H,d,J=5.2Hz),8.10(1H,d,J=5.2Hz),11.60−11.10(2H,br s)。
【0231】
1H-チエノ[3,2-d]ピリミジン-2,4-ジオン2(9.49g、56.49mmol)及びオキシ塩化リン(150mL)の混合物を
還流下で6時間
加熱した。反応混合物をついで冷却し、氷/水に激しく攪拌しながら注ぎ、沈殿物を得た。混合物をついで濾過し、2,4-ジクロロ-チエノ[3,2-d]ピリミジン3を白色固体として得た(8.68g、75%)。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)7.56(1H,d,J=5.5Hz),8.13(1H,d,J=5.5Hz)。
【0232】
実施例2 2-クロロ-4-モルホリン-4-イル-チエノ[3,2-d]ピリミジン4
2,4-ジクロロ-チエノ[3,2-d]ピリミジン3(8.68g、42.34mmol)、モルホリン(8.11mL、2.2当量)及びMeOH(150mL)の混合物を室温で1時間攪拌した。反応混合物をついで濾過し、水及びMeOHで洗浄し、2-クロロ-4-モルホリン-4-イル-チエノ[3,2-d]ピリミジン4を白色固体として得た(11.04g、100%)。
1H NMR(400MHz,d
6−DMSO)3.74(4H,t,J=4.9Hz),3.90(4H,t,J=4.9Hz),7.40(1H,d,J=5.6Hz),8.30(1H,d,J=5.6Hz)。
【0233】
実施例3 2-クロロ-4-モルホリン-4-イル-チエノ[3,2-d]ピリミジン-6-カルバルデヒド10
−78℃の無水THF(40mL)中の2-クロロ-4-モルホリン-4-イル-チエノ[3,2-d]ピリミジン4(1.75g、6.85mmol)の懸濁液にヘキサン(3.3mL、1.2当量)中のn-ブチルリチウム(nBuLi)の2.5M溶液を加えた。1時間攪拌した後、無水DMF(796μL、1.5当量)を加えた。反応混合物を1時間−78℃で攪拌し、ついでゆっくりと室温まで温めた。更に室温で2時間経過した後に、反応混合物を氷/水に注ぎ、黄色沈殿物を得た。これを濾過により集め、空気乾燥して2-クロロ-4-モルホリン-4-イル-チエノ[3,2-d]ピリミジン-6-カルバルデヒド10(1.50g、77%)を得た。
1H NMR(400MHz,d
6−DMSO)3.76(4H,t,J=4.9),3.95(4H,t,J=4.9),8.28(1H,s),10.20(1H,s)。
【0234】
実施例4 2-クロロ-6-ヨード-7-メチル-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン41
−78℃のTHF(60mL)中の2-クロロ-7-メチル-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン39(3.0g、11.1mmol;2-クロロ-4-モルホリン-4-イル-チエノ[3,2-d]ピリミジンの合成手順に従って調製するが、3-アミノ-4-メチル-チオフェン-2-カルボン酸エチルエステルから出発した)の溶液にn−BuLi(8.9mL、Et
2O中2.5M)を加えた。得られたスラリーを−40℃まで温め、50分攪拌した。反応混合物をついで−78℃まで冷却し、THF(30mL)中のI
2(5.6g、22.2mmol)の溶液を加えた。溶液を室温まで温め、5時間攪拌した。反応を、水を加えることによりクエンチした。有機層を分離し、水性層をCH
2Cl
2で抽出した。組合わせた有機物を飽和Na
2S
2O
3水溶液で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮して、2-クロロ-6-ヨード-7-メチル-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン41(3.8g、84%収率)を得た。
【0235】
実施例5 4-(2-クロロ-6-(ピペラジン-1-イルメチル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-4-イル)モルホリン30
2-クロロ-4-モルホリン-4-イル-チエノ[3,2-d]ピリミジン-6-カルバルデヒド10(3.5g)、1-BOC-ピペラジン(2.76g)及びオルトギ酸トリメチル(4.05mL)の混合物を1,2-ジクロロエタン(300mL)中で1時間室温で攪拌した。これにナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(3.92g)を加え、反応混合物を24時間室温で攪拌した。混合物をついでブラインでクエンチし、ジクロロメタンで抽出し、乾燥(MgSO
4)させ、真空下で溶媒を除去した。残留物を、フラッシュクロマトグラフィーを使用して精製して、4-(2-クロロ-4-モルホリン-4-イル-チエノ[3,2-d]ピリミジン-6-イルメチル)-ピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル(3.4g)を得た。ジクロロメタン/メタノール中のHClで処理して、4-(2-クロロ-6-(ピペラジン-1-イルメチル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-4-イル)モルホリン30を得た。
【0236】
実施例6 (2-クロロ-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-6-イル)-N-メチルメタンアミン35
2-クロロ-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-6-カルバルデヒド10(2.0g)を50mLのトルエン及び50mLのTHFに溶解させ、続いてH
2O中の20mLの40%メチルアミンを加えた。反応混合物をN
2下、室温で24時間攪拌した。溶媒を真空下で除去し、残留物を50mLのメタノール及び50mLのTHFに溶解させ、NaBH
4を滴下して加えた。この反応混合物をN
2下室温で24時間攪拌し、完全な反応をLCMSで確認した。溶媒を真空下で除去し、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(EtOAc/EtOH)で精製して、1.12gの35(収率53%)を得た。MS(Q1)300(M+)。
【0237】
実施例7 (2-クロロ-7-メチル-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-6-イル)-N-メチルメタンアミン37
2-クロロ-7-メチル-4-モルホリノチエノ-[3,2-d]ピリミジン-6-カルバルデヒド36を20mLのトルエン及び20mLのTHFに溶解させ、続いて15mLのH
2O中の40%メチルアミンを加え、反応物を24時間攪拌した。反応混合物を真空下で濃縮させ、残留物を30mLのメタノール及び30mLのTHFに溶解させ、続いてNaBH
4を加えた。反応物を室温で少なくとも24時間攪拌し、生成物の形成をLCMSによって確認した。溶媒を真空下で除去し、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィーで精製して、2.53gの(2-クロロ-7-メチル-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-6-イル)-N-メチルメタンアミン37(収率70%)を得た。MS(Q1)314(M)+
【0238】
実施例8 4-(2-クロロ-6-((4-(メチルスルホニル)ピペラジン-1-イル)メチル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-4-イル)モルホリン31
ジクロロメタン中のN-BOC-ピペラジン及び塩化メタンスルホニルとトリエチルアミンの反応により4-メタンスルホニル-ピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステルを得た。BOC保護基の切断をジクロロメタン中のHCl(2M)用いて行い、1-メタンスルホニル-ピペラジンHCl塩を得た。
2-クロロ-4-モルホリン-4-イル-チエノ[3,2-d]ピリミジン-6-カルバルデヒド10(1.00g)、1-メタンスルホニル-ピペラジン(750mg)及びオルトギ酸トリメチル(3.80mL)の混合物を1,2-ジクロロエタン(30mL)中で6時間室温で攪拌した。これにナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(900mg)を加え、反応混合物を24時間室温で攪拌した。混合物をついでブラインでクエンチし、ジクロロメタンで抽出し、乾燥(MgSO
4)させ、溶媒を真空下で除去した。残留物を熱い酢酸エチルで倍散して、4-(2-クロロ-6-((4-(メチルスルホニル)ピペラジン-1-イル)メチル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-4-イル)モルホリン31を白色固体として得た(1.01g)。
【0239】
実施例9 4-(4,4,5,5-テトラメチル-[1,3,2]ジオキサボロラン-2-イル)-1H-インダゾール7−経路1
中間体7を、出典明示によりここに援用する米国特許出願公開第2008/0076768号;米国特許出願公開第2008/0076758号;国際公開第2006/046031号の方法に従って調製した。
【0240】
実施例10 1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボラン-2-イル)-1H-インダゾール40
中間体40を、出典明示によりここに援用する米国特許出願公開第2008/0039459号;米国特許出願公開第2008/0076768号;米国特許出願公開第2008/0076758号;米国特許出願公開第2008/0207611号の方法に従って調製した。
【0241】
実施例11 2-(1H-インダゾール-4-イル)-4-モルホリン-4-イル-チエノ[3,2-d]ピリミジン-6-カルバルデヒド11
2-クロロ-4-モルホリン-4-イル-チエノ[3,2-d]ピリミジン-6-カルバルデヒド10(100mg、0.35mmol)、4-(4,4,5,5-テトラメチル-[1,3,2]ジオキサボロラン-2-イル)-1H-インダゾール(70)(95mg、0.39mmol)及び炭酸ナトリウム(112mg)の混合物をトルエン(2.5mL)、エタノール(1.5mL)及び水(0.7mL)に懸濁させた。これにビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)塩化物(13.5mg)を加え、反応容器にアルゴンを流した。反応混合物をマイクロ波で1時間120℃に加熱し、ついでDCM及び水の間で分配し、有機層をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、真空下で蒸発させた。生じた残留物を、フラッシュクロマトグラフィーを使用して精製し、2-(1H-インダゾール-4-イル)-4-モルホリン-4-イル-チエノ[3,2-d]ピリミジン-6-カルバルデヒド11(97mg)を得た。
【0242】
実施例12 4-(2-(1H-インダゾール-4-イル)-6-((4-(メチルスルホニル)ピペラジン-1-イル)メチル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-4-イル)モルホリン(式Ia、GDC−0941):
実施例4からの4-(2-クロロ-6-((4-(メチルスルホニル)ピペラジン-1-イル)メチル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-4-イル)モルホリン31(2.00g)、4-(4,4,5,5-テトラメチル-[1,3,2]ジオキサボラン-2-イル)-1H-インダゾール7(2.26g)、トルエン(24mL)、エタノール(12mL)、水(6mL)、炭酸ナトリウム(1.72g)及びPdCl
2(PPh
3)
2(325mg)の混合物をマイクロ波で130℃に90分加熱した(出典明示によりここに援用される米国特許出願公開第2008/0076768号;国際公開第2006/046031号)。
反応混合物を冷却し、クロロホルムで希釈し、ブラインで洗浄し、乾燥(MgSO
4)させ、溶媒を真空下で除去した。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル、続いて5%の酢酸エチル/メエタノール)を使用して精製し、ついでエーテルで倍散して式Iaの化合物、GDC−0941(1.4g)を得た。MSデータ:(ESI+):MH+514。NMRデータ:(CDCl3):2.67−2.71(4H,m),2.81(3H,s),3.29−3.33(4H,m),3.89(2H,s),3.89−3.93(4H,m),4.08−4.12(4H,m),7.41(1H,s),7.51(1H,t,J=7.2),7.60(1H,d,J=8.3),8.28(1H,d,J=7.5),9.02(1H,s),10.10(1H,br)
【0243】
実施例13 (S)-1-(4-((2-(2-アミノピリミジン-5-イル)-7-メチル-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-6-イル)メチル)ピペラジン-1-イル)-2-ヒドロキシプロパン-1-オン(式Ib):
2-クロロ-7-メチル-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-6-カルバルデヒド36(495mg)をBoc-ピペラジンと一般的手順B−3を介して反応させ、4-((2-クロロ-7-メチル-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-6-イル)メチル)ピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチルを得た。
4-((2-クロロ-7-メチル-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-6-イル)メチル)ピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチル(777mg)を一般的手順Eに供し、2-クロロ-7-メチル-4-モルホリノ-6-((ピペラジン-1-イル)メチル)チエノ[3,2-d]ピリミジンのHCl塩を得た。2-クロロ-7-メチル-4-モルホリノ-6-((ピペラジン-1-イル)メチル)チエノ[3,2-d]ピリミジンのHCl塩(590mg)を一般的手順B−2を介して乳酸と反応させ、(S)-1-(4-((2-クロロ-7-メチル-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-6-イル)メチル)ピペラジン-1-イル)-2-ヒドロキシプロパン-1-オンを得た。
(S)-1-(4-((2-クロロ-7-メチル-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-6-イル)メチル)ピペラジン-1-イル)-2-ヒドロキシプロパン-1-オン(60mg)を50mgの5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボラン-2-イル)ピリミジン-2-アミンと一般的手順A−2を介して反応させ、10mgの式Ib(出典明示により援用される米国特許出願公開第2008/0242665号)を得た。MS(Q1)499.3(M)+。
【0244】
実施例14 p110α(アルファ)PI3K結合アッセイ
結合アッセイ: 最初の偏光実験を、アナリストHT96−384(Molecular Devices Corp., Sunnyvale, CA.)で実施した。蛍光偏光親和性測定のための試料を、偏光バッファー(10mMのトリス(pH7.5)、50mMのNaCl、4mMのMgCl
2、0.05%のChaps、及び1mMのDTT)中の20μg/mLの最終濃度で開始するp110αPI3Kの1:3段階希釈物(Upstate Cell Signaling Solutions, Charlottesville, VA)を、10mMの最終濃度のPIP
2(Echelon-Inc, Salt Lake City, UT)に加えることによって調製した。室温での30分のインキュベーション時間後、それぞれ100nM及び5nMの最終濃度のGRP-1及びPIP3-TAMRAプローブを加えることによって反応を止めた。384ウェルのブラック低容量プロキシプレート(PerkinElmer, Wellesley, MA)中のローダミンフルオロフォア(λex=530nm;λem=590nm)について標準的なカットオフフィルターで読み取る。蛍光偏光値をタンパク質濃度の関数としてプロットし、KaleidaGraphソフトウェア(Synergy software, Reading, PA)を使用してデータを4パラメータ式にフィットさせることによってEC
50値を得た。この実験はまた阻害剤での続く競合実験において使用する適切なタンパク質濃度を確立する。
【0245】
PIP
2(10mMの最終濃度)と組合わせた0.04mg/mLのp110αPI3K(最終濃度)を、偏光バッファー中の25mMの最終濃度のATP(Cell Signaling Technology, Inc., Danvers, MA)中のアンタゴニストの1:3段階希釈物を含むウェルに加えることによって、阻害剤のIC
50値を決定した。室温で30分のインキュベーション時間後、それぞれ100nM及び5nMの最終濃度のGRP−1及びPIP3−TAMRAプローブ(Echelon-Inc, Salt Lake City, UT.)を加えることによって反応を止めた。384ウェルのブラック低容量プロキシプレート(PerkinElmer, Wellesley, MA)中のローダミンフルオロフォア(λex=530nm;λem=590nm)について標準的なカットオフフィルターで読み取る。蛍光偏光値をアンタゴニスト濃度の関数としてプロットし、Assay Explorerソフトウェア(MDL, San Ramon, CA.)でデータを4パラメータ式にフィットすることによってIC
50値を得た。
【0246】
別法では、精製した組換え酵素及びATPを1μMの濃度で使用した放射測定アッセイにおいてPI3Kの阻害を決定した。化合物を100%のDMSOで段階希釈した。キナーゼ反応物を室温で1時間インキュベートし、PBSを添加することによって反応を終わらせた。続いて、IC
50値を、シグモイド用量応答曲線の当てはめ(可変勾配)を使用して決定した。
【0247】
実施例15 インビトロ細胞増殖アッセイ
式I又はIIの化合物の効能を、次のプロトコル(Mendoza等(2002) Cancer Res. 62:5485-5488)を用いた細胞増殖アッセイによって測定した。試薬及びプロトコールを含むCellTiter-Glo(登録商標)発光細胞生存率アッセイは商業的に入手可能である(Promega Corp.,Madison,WI,Technical Bulletin TB288)。該アッセイは、化合物が細胞に入り、細胞増殖を阻害する能力を評価する。該アッセイの原理は、Cell−Titer Glo試薬の添加が細胞溶解及びルシフェラーゼ反応を介した発光シグナルの生成を生じる均質アッセイにおいて存在するATPを定量することにより、存在する生細胞の数を定量することに基づく。発光シグナルは存在するATPの量に比例する。
【0248】
手順:1日目−細胞プレート(384ウェル、ブラック、透明な底部、マイクロクリア,Falcon#353962の蓋を伴うTCプレート)に播種し、細胞を収集し、3日間のアッセイで1ウェル54μL当たり1000の細胞を384ウェル細胞プレートに播種する。細胞培養培地:RPMI又はDMEM高グルコース、10%ウシ胎仔血清、2mML-グルタミン、P/S。37℃、5%CO2でインキュベートO/N。
【0249】
2日目−細胞、化合物希釈液、DMSOプレート(段階1:2、9ポイント)に薬剤を加え、96ウェルプレートの二番目のカラム中の10mMで20ulの化合物を加える。Precisionを使用して全9ポイントに対してプレートにわたって段階1:2を実施する(10μl+20μlの100%DMSO)。Nunc製の培地プレート96ウェル円錐底ポリプロピレンプレート(カタログ番号249946)(1:50希釈)。147μlの培地を全てのウェルに加える。DMSOプレート中の各ウェルから3μlのDMSO+化合物を、Rapidプレートを使用して培地プレート上の各対応ウェルに移す。二剤併用試験では、DMSOプレート中の各ウェルからの1.5μlのDMSO+化合物一剤を、Rapidプレートを使用して培地プレート上の各対応ウェルに移す。ついで、他の薬剤1.5ulを培地に移す。
【0250】
細胞、細胞プレート(1:10希釈)に薬剤を加え、6μlの培地+化合物を細胞(既に54μlの培地が細胞上にある)に直接加える。あまり頻繁に開けないインキュベーター中で3日間37℃、5%CO2でインキュベートする。
【0251】
5日目−プレートを展開し、室温でCell Titer Gloバッファーを解凍。細胞プレートを37℃から移し、約30分間、室温まで平衡にする。Cell Titer Glo基質にCell Titer Gloバッファーを加える(ビンからビンへ)。30μlのCell Titer Glo試薬(Promega カタログ番号G7572)を細胞の各ウェルに加える。プレート振盪機に約30分間配する。発光をアナリストHTプレートリーダー(1ウェル当たり0.5秒)で読み取る。
【0252】
細胞生存アッセイ及び併用アッセイ: 細胞を384ウェルプレート中に1000から2000細胞/ウェルで16時間播種した。2日目に、96ウェルプレートにおいてDMSO中で9回の段階1:2化合物希釈を作製した。化合物を更にラピッドプレートロボット(Zymark Corp., Hopkinton, MA)を用いて増殖培地中に希釈した。希釈した化合物をついで384ウェル細胞プレート中の四組のウェルに加え、37℃、5%CO2でインキュベートした。4日後、生存細胞の相対数を、製造業者の説明書に従いCell-Titer Glo(Promega)を使用して発光を測定し、Wallac Multilabelリーダー(PerkinElmer,Foster City)で読み取った。EC50値をPrism4.0ソフトウェア(GraphPad, San Diego)を用いて計算した。併用アッセイにおける薬剤は4×EC50濃度で開始して用量決定した。薬剤のEC50が>2.5μMの場合、使用した最高濃度は10μMであった。PI3K阻害剤及び化学療法剤は全てのアッセイにおいて同時に又は4時間あけて(交互に)加えた。
【0253】
更なる例示的なインビトロ細胞増殖アッセイは次の工程を含む:
1.培地中に約10
4の細胞を含む細胞培養物(細胞株及び腫瘍タイプについては
図1A−Cを参照)の100μlのアリコートを、384ウェルの不透明な壁部のプレートの各ウェルに沈着させた。
2.培地を含み細胞を含まないコントロールウェルを調製した。
3.化合物を実験ウェルに加え、3−5日間インキュベートした。
4.プレートをおよそ30分間室温に平衡化した。
5.各ウェル中に存在する細胞培養培地の体積に等しい体積のCellTiter-Glo試薬を加えた。
6.内容物をオービタルシェーカーで2分間混合し、細胞溶解を誘発した。
7.プレートを室温で10分間インキュベートし、発光シグナルを安定化させた。
8.発光を記録し、RLU=相対発光単位としてグラフで報告した。
9.コンビネーションインデックスを得るために、CalcuSynソフトウェア(Biosoft, Cambridge, UK)と共にChou及びTalalayの組合わせ法及び用量効果解析法を使用して分析する。
【0254】
別法では、細胞を96ウェルプレートに最適密度で播き、試験化合物の存在下で4日間インキュベートした。続いて、アラマーブルー(商標)をアッセイ培地に加え、細胞を6時間インキュベートした後、544nmの励起、590nmの発光で読み取った。シグモイド用量反応曲線フィッティングを使用してEC
50値を計算した。
【0255】
別法では、増殖/生存率を薬物治療から48時間後にCell Titer glo試薬(Promega Inc., Madison, WI)を用いて分析した。DMSO処置を全ての生存率アッセイにおいてコントロールとして使用した。IC
50値を、XLフィットソフトウェア(IDBS, Alameda, CA)を使用して計算した。
【0256】
AML細胞株AP−1060、EOL−1、FKH−1、GF−D8、HEL、HL−60、HNT−34、Kasumi−1、KG−1、ME−1、ML−2、MOLM−13、MOLM−16、MV4−11、NOMO−1、OCI−AML2、OCI−AML3、OCI−AML5、OCI−M1、OCI−M2、PL−21、SET−2、SIG−M5、SKM−1、THP−1、UKE−1及びUT−7をATCC又はDSMZの何れかから取得した。細胞を10%熱失活FBS(Sigman-Aldrich)及び2mol/LのLグルタミンを用いてRPMI1640培地中に維持した。ウェスタンブロットのための抗体は、Epitomicsから得たp110δ抗体を除いて、Cell Signal Technologyから購入した。阻害剤GDC−0941はGenentechで合成した。ラパマイシン、Ara−C、及びダウノルビシンはSigmaから購入した。全ての化合物はDMSO中の原液として調製し、使用時にアッセイバッファーで希釈した。芽細胞はAML患者の末梢血又は骨髄試料からFicoll分離によって単離した。PBS中での洗浄後、単離細胞を、10%FBS及び示したサイトカインカクテル(各々10ng/mLのIGF−1、SCF、GMCSF及びIL−3)を含むRPMI1640培地で培養した。
【0257】
ヒト多発性骨髄腫細胞株は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC, Manassas, VA)から全て入手し、また先の研究で述べた()。細胞は、10%ウシ胎仔血清、100単位/mlのペニシリン、2mMのL-グルタミン及び100mg/mlのストレプトマイシンを含むRPMI1640培地(Life Technology, Grand Island, NY)中、37℃、5%CO
2下で培養した。
【0258】
実施例16 インビボマウス腫瘍異種移植片の効能
マウス: 雌の重篤な複合免疫不全マウス(Fox Chase SCIDR, C.B-17/IcrHsd, Harlan)は実験の0日目に8から9週齢で、15.1から21.4グラムのBW範囲を有していた。動物を水(逆浸透、1ppmCl)及び18.0%粗タンパク質、5.0%粗脂肪、及び5.0%粗繊維からなるNIH31 改変・照射Lab Diet(登録商標)を自由に与えた。マウスは、12時間の照明周期、21−22℃(70−72
oF)及び40−60%の湿度で、静止マイクロアイソレーター中、照射したALPHA−Dri(登録商標)bed−o’cobs(登録商標)実験動物敷料の上でマウスを飼育した。PRCは、束縛された状態、畜産、手術手順、餌及び液体調節、動物管理に関する実験動物の管理と使用に関する指針(Guide for Care and Use of Laboratory Animals)の推奨を特に遵守している。PRCの動物ケア・使用プログラムは、国際実験動物管理公認協会(AAALAC)によって認可されているものであり、実験動物の管理と使用に対する承認された標準の遵守を保障する。
【0259】
腫瘍移植: 異種移植を癌細胞で開始した。細胞を、10%のウシ胎仔血清、2mMのグルタミン、100単位/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシン硫酸塩及び25μg/mLのゲンタマイシンを補充したRPMI1640培地で培養した。細胞を、対数増殖中に収集し、5×10
7細胞/mLの濃度でリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に再懸濁させた。腫瘍移植の日に、各試験マウスの右腹側部に皮下的に1×10^7細胞(0.2mL)を移植し、腫瘍増殖を平均サイズが100から150mm
3の標的範囲に近づくところをモニターした。腫瘍移植から21日目を実験の0日目として、マウスを、それぞれ75−172mm
3の範囲の個々の腫瘍体積と120−121mm
3の群平均腫瘍サイズを持つ10匹のマウスからなる四群に分けて配した(付録A参照)。体積は式:
腫瘍体積(mm
3)=(w
2×l)/2
ここで、w=腫瘍の幅、l=腫瘍の長さ(単位mm)
を使用して計算した。腫瘍重量は、1mgが腫瘍体積1mm
3に相当すると仮定して推定することができる。
【0260】
治療薬剤: 式Iaの化合物(GDC−0941、ジェネンテック社)は、73%の活性成分を含む塩形態の乾燥粉末として供給され、これを光から保護して室温で保存した。薬剤用量は毎週0.5%のメチルセルロース:脱イオン水(MC/Tw80、「ビヒクル」)中の0.2%のTween80で調製し、4℃で保存した。73%の活性剤を含む塩形態をG−033829用量の製剤において計上した。リツキシマブ(注射用リツキサン(登録商標)10mg/mL、ジェネンテック、ロット番号M79901)は臨床薬剤として購入した。リツキシマブの用量は無菌の生理食塩水(0.9%NaCl)を用いて原液のアリコートを希釈することによって各投薬日に調製した。全用量は、体重20グラム当たり0.2mLの体積(10mL/kg)で述べられたmg/kg投薬量を送達するように処方した。
【0261】
治療: 全用量は個々の動物の体重に合わせ、各図に示した経路で与えた。
【0262】
エンドポイント: ノギスを使用して腫瘍を週に二回測定した。マウスを個々にモニターし、その腫瘍が1500mm
3の体積に達するか又は49日目の実験の終わりかどちらか早い方で各マウスを安楽死させた。しかし、コントロール腫瘍の自己限定的な増殖のため、エンドポイントを分析のための1000mm
3まで減じた。各マウスに対するエンドポイントまでの時間(TTE)は次の式から計算した:
TTE(日数)=[log
10(エンドポイント体積,mm
3)−b]/m
ここで、bは切片であり、mは対数変換した腫瘍増殖データセットの線形回帰によって得られる直線の勾配を表す。データセットは、実験のエンドポイント体積を超えた最初の観測値と、エンドポイント体積の到達点を越えた直後の3連続観測値とからなる。エンドポイントに達しない動物には実験最終日に等しいTTE値をあてがう。事故(NTRa)又は原因不明(NTRu)のためにNTR(非処置関連)死に分類される動物は、TTE計算(及び全ての更なる解析)から除外する。TR(治療関連)死又はNTRm(転移による非治療関連死)として分類される動物には死亡の日と等しいTTE値をあてがう。治療成績は、腫瘍増殖遅延(TGD)により評価したが、これは、コントロール群と比較した処置群におけるエンドポイントまでの時間の中央値の増加(TTE)と定義される:
TGD=T−C
日数で表されるか又はコントロール群のTTE中央値の割合として表す:
%TGD=(T−C)/C×100
ここで、T=治療群のTTE中央値、C=コントロール群のTTE中央値(群1)である。治療は動物における腫瘍の部分奏効(PR)又は完全奏効(CR)を生じうる。部分奏効では、腫瘍体積は、実験の過程中の3連続測定に対して1日目の体積の50%以下であり、これらの3測定の一又は複数に対して13.5mm
3以上である。CR奏功では、腫瘍体積は実験の過程中の3連続測定に対して13.5mm
3未満である。実験終了時にCR奏功の動物は無腫瘍生存体(TFS)と更に分類される。動物を退縮応答についてモニターした。
【0263】
毒性: 動物は実験の最初の5日間は毎日体重測定し、その後、週に二回測定した。マウスは、何らかの有害な、治療関連の副作用の明白な徴候について頻繁に観察し、観察されたときに毒性の臨床症状を記録した。許容可能な毒性は、実験中20%未満の群平均体重(BW)減少で、10匹の処置動物の中で治療関連(TR)死が1匹を越えないものとして定義される。より多い毒性を生じる投薬レジメンは最大耐量(MTD)を越えると考えられる。死は、臨床症状及び/又は剖検により証明されて、治療の副作用に起因するならばTRと分類され、あるいは投薬期間内の又は最終投薬の10日以内の原因不明のものもまたTRと分類されうる。死が治療の副作用に関連していたという証拠がないならばNTRと分類される。
【0264】
実施例17 B細胞及び骨髄腫細胞株のGDC−0941処置後のp−Akt、p−BAD及びp−S6リボソームタンパク質の検出のためのウェスタンブロット法
材料: 電気泳動のための全試薬及びブロッティングバッファー原液はInvitrogenから入手した。
B細胞株(DoHH2及びWSU−DLCL2)及び骨髄腫細胞株(OPM2及びU266)はPen/Strep及びグルタミンの存在下でRPMI−1640/10%FBS中に維持した。
【0265】
プロトコール:
1. 各細胞株の10
7細胞を各細胞株について2皿の10cmペトリ皿の10mL培地に播種する。
2. 5uLの10mM GDC−0941ストック(DMSO中)を10mLの培地の一つの皿に最終5uM薬剤となるように加え、5uLのDMSOを他の皿にコントロールとして加える。
3. 37℃、5%CO2のインキュベーターに細胞を4時間維持した後、収集する。
4. 9mLの培養物(9×10
6細胞と等価)を15mLのコニカルチューブに収集し、ペレットにし、1×SDS試料バッファーを用いて細胞可溶化物を作製する。FACSのために各条件の他の1mL(1×10
6細胞と等価)を5mLのFACSチューブ(BD)に移す。
5. 細胞を冷PBSで一回洗浄する。
6. タンパク質試料のODを測定し、NuPAGE電気泳動系試薬を用いてそれぞれ20ugを負荷するように試料を調製する。
7. 電気泳動のための各タンパク質試料を、適切な量のNuPAGE LDS試料バッファー及び還元剤と混合し、70℃の熱を10分間かける。
8. 10uLのSeeBlue Plus2事前染色標準及び20ugの各試料を4−12%のNuPAGE Norvexビス-トリスゲルに負荷し、MES-SDSバッファーを用いて抗酸化剤の存在下で走査する(XCell SureLock Mini-Cell装置で1時間135ボルト)。
9. ゲルを、iBlot装置を使用してブロッティング膜に移す。
10. 1×TBSTバッファーで一回洗浄する。
11. 20mLの1×TBST5%の脱脂乳を用いて膜を2時間ブロックする。
12. 1×TBSTバッファーで三回洗浄する。
13. 4℃で一晩、適度な希釈度で、10mLの1×TBST5%BSA及び一次抗体(p−Akt、クローン193H12、p−BAD、クローン185D10及びp−S6RP、クローンD57.2.2D、βアクチン、クローン13E5、Cell Signaling)中で膜をインキュベートする。p−Akt及びp−6SRP及びβアクチンウサギ抗体を同じ膜を加え、他を各々別個の膜に加える(複数のゲルは先に作製される)。
14. 1×TBSTバッファーで三回洗浄する。
15. 10mLの1×TBSTバッファー/5%脱脂乳中、室温で2時間、適切な希釈度でHRP結合ヤギ抗ウサギ抗体と共にインキュベートする。
16. 1×TBSTバッファーで三回洗浄する。
17. 膜を3mLのLumiGLOと共に3分間インキュベートし、過剰な溶液を排出し、X線フィルムに露光する。
【0266】
別法では、各条件に対して10×10
6細胞を10cm
2プレートに播き、細胞を、GDC−0941、デキサメタゾン、又はレナリドミドを用いて、又は併用して処置した。DMSO処置をコントロールとして使用した。細胞を冷PBSで一回洗浄し、1×細胞溶解バッファーで可溶化した(Cell Signaling Technology, Beverly, MA)。同量のタンパク質をNupageビス-トリスゲル(Invitrogen, Carlsbad, CA)を使用して分離した。抗ホスホAkt(セリン473)、抗PTEN、抗ホスホBAD(セリン136)、抗ホスホFoXO1/3a、Bim、切断型カスパーゼ9、切断型カスパーゼ3、p27及び切断型PARP抗体(Cell Signaling Technology, Beverly, MA)を使用してウェスタンブロット分析を実施した。全AKT、全BAD、全Foxo3a及びβアクチン(シグマ)レベルをコントロールとして使用した。
【0267】
実施例18 GDC−0941処置後のp−Akt及びp−S6リボソームタンパク質の細胞内検出のためのFACSプロトコール
B細胞株(DoHH2及びWSU−DLCL2)及び骨髄腫細胞株(OPM2及びU266)をPen/Strep及びグルタミンの存在下でRPMI-1640/10%FBS中に維持した。
プロトコール:
1. 各細胞株の10
7細胞を各細胞株について2皿の10cmペトリ皿の10mL培地に播種する。
2. 5uLの10mM GDC−0941ストック(DMSO中)を10mLの培地の一つの皿に最終5uM薬剤となるように加え、5uLのDMSOを他の皿にコントロールとして加える。
3. 37℃、5%CO2のインキュベーターに細胞を4時間維持した後、収集する。
4. 各条件の1mL(10
6細胞に等価)を5mLのFACSチューブ(BD)に移し、5分間1200rpmで遠心した後、固定化する(ウェスタンのために他の9mL培養物−9×10
6細胞を15mLコニカルチューブに収集する)。
5. 上清を吸引し、細胞を室温でFix/Perm培地A(カタログ番号GAS001S−100)を用いて15分間固定する。
6. PBS/2%FBSで細胞を1回洗浄する。
7. 上清を吸引し、Fix/Perm培地B(カタログ番号GAS002S−100)を用いて室温で15分間、細胞を透過処理する。
8. PBS/2%FBSで細胞を1回洗浄する。
9. 300uLのPBS/2%のBSAと共に細胞を再懸濁し、各々100uLの3つのチューブに分ける(一つはアイソタイプ-ウサギIgG Alexa Fluor−647、一つはp−Akt Alexa Fluor−647クローン193H12及び一つはp−S6RP Alexa Fluor−647クローンD57.2.2Eで、全てのウサギ抗体はCell Signalingから入手)。
10. 50ngの各Abを対応チューブに添加し、室温で30分間インキュベートする。
11. PBS/2%FBSで1回洗浄する。
12. 細胞を300uLのPBS/2%BSAで再懸濁させ、CellQuestプログラムを用いてFACSCalibur(BD)上にデータを得る。
13. FlowJoプログラムを使用してデータを分析し、ヒストグラムでデータを表す。
【0268】
実施例19 GDC−0941処置後のアポトーシス及び生存細胞の定量的蛍光を測定するためのFACSプロトコール
アポトーシス及び生存細胞を、蛍光標示式細胞分取(FACS)アッセイに若干の修正を加えたものを使用して定量的蛍光解析により測定した(Munugalavadla等(2008)Mol. Cell Biol. 28(23):7182-7198)。様々な多発性骨髄腫細胞株(1×10
6)をDMSO又は様々な濃度の
図IaのGDC−0941で24時間処置し、ついで細胞を製造者の説明書に従いAnnexin−V−APC/PIキット(BD Biosciences, San Jose, CA)を用いて染色し、フローサイトメトリーで分析した。原発性多発性骨髄腫患者の試料の場合、2百万の核形成BM細胞を、6ウェルプレートにおいて、2%熱失活ウシ増殖血清(Hyclone, Waltham, MA)及び2ng/mlの組換え型IL6(R&D Systems Inc., Minneapolis, MN)を補填した2mlのadvanced−RPMI(Invitrogen, Carlsbad, CA)中に播種した。細胞をビヒクル(DMSO)、1μM又は10μMのGDC−0941で72時間処置し、ついでフローサイトメトリーにより分析して、薬剤誘導アポトーシスを評価した。次の試薬を使用した:CD45RA−FITC、CD38−APC及びヨウ化プロピジウム(全てBD Pharmingen, San Jose, CAから入手した)。データはCyanADP機器(Dako Cytomation)で獲得し、FlowJoソフトウェア(Tree Star)を使用して解析した。生存形質細胞はCD38hiCD45RA−及びPI−として同定した。
【0269】
実施例20 細胞周期分析
細胞周期分析をClick−iT(商標)Eduサイトメトリーアッセイキット(Invitrogen, Carlsbad, CA)を製造者の説明書に従って使用して、行った。蛍光はBD LSR−IIで測定し、データを、FlowJoソフトウェア(Becton Dickinson)を使用して分析した。
【0270】
実施例21 Meso Scale Discovery(MSD)アッセイを使用する原発性MM骨髄単核細胞におけるpAKT測定
MMドナー由来の骨髄単核細胞(BM-MNC)を、10%FBSを補填した10mLのRPMI中で一晩培養した。インキュベーション後、細胞を増殖培地で1回洗浄し、1mLの培地に再懸濁させた。各ドナーでは、細胞を500mLのアリコートに分け、1mMのDMSO又はGDC−0941の何れかで37℃で1時間処理した。処理後、細胞ペレットを5分間1200rpmで収集し、ペレットを冷PBSで1回洗浄した。細胞ペレットを60mlの1×Mesoscale Discovery(MSD, Gaithersburg, Maryland)細胞溶解バッファーで再懸濁し、ライセートを4℃、14000rpmで10分間遠心分離することによって清澄化させた。清澄化した細胞ライセートを、MSDキットを若干の修正を加えて製造者の説明に従って使用して、ホスホAkt(Ser473)及び全Aktを評価した。