特許第5709808号(P5709808)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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5709808粒子状物質検出素子の製造方法、並びに、粒子状物質検出センサ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5709808
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】粒子状物質検出素子の製造方法、並びに、粒子状物質検出センサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/06 20060101AFI20150409BHJP
   G01N 27/00 20060101ALI20150409BHJP
【FI】
   G01N15/06 D
   G01N27/00 D
【請求項の数】10
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2012-171820(P2012-171820)
(22)【出願日】2012年8月2日
(65)【公開番号】特開2014-32063(P2014-32063A)
(43)【公開日】2014年2月20日
【審査請求日】2014年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社日本自動車部品総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100067596
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 求馬
(72)【発明者】
【氏名】水谷 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】寺西 真哉
(72)【発明者】
【氏名】木全 岳人
【審査官】 土岐 和雅
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/101586(WO,A1)
【文献】 特開2011−203093(JP,A)
【文献】 特開昭60−196659(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/117853(WO,A1)
【文献】 特開2004−095592(JP,A)
【文献】 特開2012−078130(JP,A)
【文献】 特開2006−308545(JP,A)
【文献】 特開昭62−287135(JP,A)
【文献】 特開平10−010080(JP,A)
【文献】 特開平03−009273(JP,A)
【文献】 特開2011−247650(JP,A)
【文献】 特開昭63−066859(JP,A)
【文献】 特開平03−087079(JP,A)
【文献】 特開2012−093287(JP,A)
【文献】 特開2008−241603(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N15/00〜15/14、27/00〜27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも所定の距離を隔てて対向する第1の検出電極(EL)と第2の検出電極(ELを具備する検出部(10、10c、10d)に捕集・堆積する粒子状物質の量に応じて変化する上記第1の検出電極(EL)と上記第2の検出電極(EL)との間の電気的特性を検出して被測定ガス中に含まれる粒子状物質の量を検出する粒子状物質検出素子(2、2、2b、2c、2d)を備えた粒子状物質検出センサであって、
上記第1の検出電極(EL)が、一方の端部(103A、103Ac、103Ad)から、他方の端部(104A、104Ac、104Ad)に至る迄に直列に接続された導通経路を形成しつつ、
上記検出部(10、10c、10d)において、その一部をコ字形に屈曲せしめた折り返し部(101A、101Ad)と、
所定の検出電極対間距離を形成する絶縁層(120)を介して他の検出電極に対向する検出電極対向部(100A)と、を備えてなり、
上記第2の検出電極(EL)が、一方の端部(103B、103Bc、103Bd)から、他方の端部(104B、104Bc、104Bd)に至る迄に直列に接続された導通経路を形成しつつ、
上記検出部(10、10c、10d)において、その一部を逆コ字形に屈曲せしめた折り返し部(101B、101Bd)と、
所定の検出電極対間距離を形成する絶縁層(120)を介して他の検出電極に対向する検出電極対向部(100B)と、を備えてなり
上記第1の検出電極(EL)の上記一方の端部(103A、103Ac、103Ad)から上記他方の端部(104A、104Ac、104Ad)に至るまでの抵抗値の計測により、上記第1の検出電極(EL)の内部における断線の有無を検出する第1の断線検出回路部(301A、301Aa、301Ab)と、
上記第2の検出電極(ELの上記一方の端部(103B、103Bc、103Bd)から上記他方の端部(104B、104Bc、104Bd)に至るまでの抵抗値の計測により、上記第2の検出電極(EL)の内部における断線の有無を検出する第2の断線検出回路部(301B、301Ba、301Bb)と、を具備することを特徴とする粒子状物質検出センサ(1、1a、1b、1c、1d)。
【請求項2】
上記第1の検出電極(EL)の一方の端部(103A、103Ac、103Ad)と上記第2の検出電極(EL)の一方の端部(103B、103Bc、103Bd)との間(103A−103B、103Ac−103Bc、103Ad−103Bd)、又は、上記第1の検出電極(EL)の他方の端部(104A、104Ac、104Ad)と上記第2の検出電極(EL)の他方の短部(104B、104Bc、104Bd)との間(104A−104B、104Ac−104Bc、104Ad−104Bd)の抵抗値、静電容量、インピーダンスのいずれかの検出により、上記第1の検出電極(EL)と上記第2の検出電極(EL)との間に堆積した粒子状物質の堆積量を検出するPM検出回路部(31)を具備する請求項1に記載の粒子状物質検出センサ(1、1a、1b、1c、1d)。
【請求項3】
上記粒子状物質検出素子(2、2b、2c、2d)が、
上記検出部(10、10c、10d)と、
これを実装する基板部(20、20b、20c、20d)とからなり、
上記検出部(10、10c、10d)が、
100μm以上、500μm以下の膜厚で略平板状に形成した上記第1の検出電極対向部(100A)と上記第2の検出電極対向部(100B)と、
5μm以上、20μm以下の膜厚で略平板状に形成した上記絶縁層(120)とを繰り返して積層せしめた積層構造体の積層方向断面からなる請求項1又は2に記載の粒子状物質検出センサ(1、1a、1b、1c、1d)。
【請求項4】
上記粒子状物質検出素子(2、2b、2c、2d)が、
通電により発熱する抵抗発熱体(EL、EL/220)を具備する請求項1ないし3のいずれかに記載の粒子状物質検出センサ(1、1a、1b、1c、1d)。
【請求項5】
上記第1の断線検出回路部(301Aaが、
上記第1の検出部(EL)の上記一方の端部(103Aから上記第1の検出部(EL)の上記他方の端部(104Aまでの直流抵抗を測定して断線の有無を検出すると共に、
上記第2の断線検出回路部(301Ba)が、
上記第2の検出部(EL)の上記一方の端部(103B)から上記第2の検出部(EL)の上記他方の端部(104B)までの直流抵抗を測定して断線の有無を検出して、
上記第1の断線検出回路部(301Aa)と上記第2の断線検出回路部(301Ba)とによって検出された直流抵抗の値から上記発熱体(EL、EL/220)の発熱温度を算出し、上記抵抗発熱体(EL、EL/220)への通電を制御する発熱制御回路部としての機能を具備する請求項4に記載の粒子状物質検出センサ(1a、1b)。
【請求項6】
上記基板部(20)が、
略平板状の絶縁性基板(200、210)とその内部に上記抵抗発熱体(220)を具備する請求項4に記載の粒子状物質検出センサ(1、1a、1c、1d)。
【請求項7】
上記第1の断線検出回路部(301Abが、上記第1の検出電極(EL)の一方の端部(103Aから上記第1の検出電極(EL)の他方の端部(104Aまでの直流抵抗を測定して断線の有無を検出し、
上記第2の断線検出回路部(301Bb)が、上記第2の検出電極(EL)の一方の端部(103B)から上記第2の検出電極(EL)の他方の端部(104B)までの直流抵抗を測定して断線の有無を検出すると共に
上記第1の検出電極(EL)と上記第2の検出電極(EL)とのそれぞれを上記抵抗発熱体として利用して、
上記第1の検出電極(EL)において、上記一方の端部(103Aと上記他方の端部(104Aとの間への通電により、上記第1の検出電極(ELを発熱させ、
上記第2の検出電極(EL)において、上記一方の端部(103B)と上記他方の端部(104B)との間への通電により、上記第2の検出電極(EL)を発熱させる発熱制御回路部を具備する請求項4に記載の粒子状物質検出センサ(1b)。
【請求項8】
上記第1の検出電極(EL)と上記第2の検出電極(ELが、LNF(LaNi0.6Fe0.4)、LSN(La1.2Sr0.8NiO)、LSM(La1−XSrMnO3−δ)、LSC(La1−XSrCoO3―δ)、LCC(La1−XCaCrO3−δ)、LSCN(La0.85Sr0.15Cr1−XNi3−δ)(0.1≦X≦0.7)のいずれかから選択したペロブスカイト型の導電性酸化物材料からなり、導電率が10−2S/cm以上の導電性酸化物である請求項1ないし7のいずれか記載の粒子状物質検出センサ(1、1a、1b、1c、1d)。
【請求項9】
上記絶縁層(120)が、8YSZ((ZrO0.92(Y0.08からなる部分安定化ジルコニア、MgO、Alのいずれかから選択した絶縁性酸化物材料からなり、導電率が10−5S/cm以下の絶縁性酸化物である請求項1ないし7のいずれか記載の粒子状物質検出センサ(1、1a、1b、1c、1d)。
【請求項10】
所定の膜厚に形成した導電性シートと所定の膜厚に形成した絶縁性シートを積層した積層構造体の断面を検出部(10、10c、10d)として、上記絶縁性シートの膜厚によって決定される所定の間隙を隔てて対向せしめた第1の検出電極(EL)と第2の検出電極(EL)との間に堆積する粒子状物質の堆積量に応じて変化する電気的特性により被測定ガス中の粒子状物質を検出する請求項1から9のいずれかに記載の粒子状物質検出センサ(1、1a、1b、1c、1d)に用いられる粒子状物質検出素子(2、2b、2c、2d)の製造方法であって、
少なくとも、
LNF(LaNi0.6Fe0.4)、LSN(La1.2Sr0.8NiO)、LSM(La1−XSrMnO3−δ)、LSC(La1−XSrCoO3―δ)、LCC(La1−XCaCrO3−δ)、LSCN(La0.85Sr0.15Cr1−XNi3−δ)(0.1≦X≦0.7)のいずれかから選択したペロブスカイト型の導電性酸化物材料を用いて、100μm以上500μm以下の膜厚を有する略平板状の上記第1の検出電極対向部(100A)と上記第2の検出電極対抗部(100B)を構成するための導電性厚膜シート(100THK)を形成する導電性厚膜シート成形工程と、
上記導電性酸化物材料を用いて、5μm以上10μm以下の膜厚を有する記第1の検出電極折り返し部(101A)と上記第2の検出電極折り返し部(101B)を構成するための導電性薄膜シート(100THN)を形成する導電性薄膜シート成形工程と、
8YSZ((ZrO0.92(Y0.08からなる部分安定化ジルコニア、MgO、Alのいずれかから選択した絶縁性酸化物材料を用いて、5μm以上20μm以下の膜厚を有する略平板状の絶縁層(120THN)を構成するための絶縁性薄膜シート(120THN)を形成する絶縁性シート薄膜成形工程と、
上記絶縁性酸化物材料を用いて100μm以上500μm以下の膜厚を有する略平板状の絶縁層(120THK)を構成するための絶縁性厚膜シート(120THK)を形成する絶縁性シート厚膜成形工程と、
上記導電性厚膜シート(100THK)内の所定位置に、該導電性厚膜シートと同一膜厚に形成され、所定形状に区画した上記絶縁性薄膜シート(120THN)と同材質の絶縁性厚膜シート(120THK)を埋め込む、絶縁性厚膜シート埋め込み導電性厚膜(A層/B層)成形工程と、
上記絶縁性薄膜シート(120THN)内の所定位置に、該絶縁薄膜シートと同一膜厚に形成され所定形状に区画した上記導電性厚膜シート(100THK)と同材質の導電性薄膜シート(100THN)を埋め込む、導電性薄膜シート埋め込み絶縁性薄膜シート(MA層/MB層/C層)成形工程をと、
得られた絶縁性厚膜シート埋め込み導電性厚膜シート(A層/B層)と導電性薄膜シート埋め込み絶縁性薄膜シート(MA層/MB層/C層)とを、所定の繰り返しパターンで積層して上記検出部(10、10c、10d)を形成する積層工程と、を具備し、
上記第1の検出電極(EL)の一部が上記検出部においてコ字形に屈曲した上記第1の検出電極折り返し部(101A)と、上記第2の検出電極(EL)の一部が上記検出部において逆コ字形に屈曲した上記折り返し部(101B)を形成することを特徴とする粒子状物質検出素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用内燃機関の排気系等に使用され、被測定ガス中に含まれるカーボンからなる煤を主成分とする粒子状物質を検出する粒子状物質検出素子の製造方法、並びに、粒子状物質検出センサに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用ディーゼルエンジン等において、燃焼排気に含まれる環境汚染物質、特に煤粒子(Soot)及び可溶性有機成分(SOF)を主体とする粒子状物質(Particulate Matter;以下、PMと称する。)を捕集するために、排気通路にディーゼルパティキュレートフィルタ(以下、DPFと称する。)を設置することが行われている。DPFは、耐熱性に優れる多孔質セラミックスからなり、多数の細孔を有する隔壁に燃焼排気を通過させてPMを捕捉する。
DPFは、PM捕集量が許容量を超えると、目詰まりが生じて圧力損失が増大したり、過剰に堆積したPMを燃焼したときに発生する熱によりDPFが破損してPMのすり抜けを生じたりする虞があり、定期的に再生処理を行って捕集能力を回復させている。
【0003】
DPFの再生時期の適切な判断や、PMのすり抜け等の異常を早期に検出すべく、被測定ガス中のPMを検出するPM検出センサについて種々提案されている。
例えば、特許文献1には、絶縁体の表面に所定の間隙を隔てて対向させた一対の櫛歯電極間に被測定ガス中のPMを堆積させ、その堆積量に応じて変化する抵抗値、静電容量、インピーダンス等の電気的特性を測定して、被測定ガス中に含まれるPM量を検出するPM検出素子が開示されている。
また、特許文献2には、板状の素子基材、前記素子基材に配設された一対の計測電極、前記一対の計測電極の間における電気的特性の測定をする特性測定手段、及び前記特性測定手段で測定をされた電気的特性の変化量に基づいて前記一対の計測電極及びその周囲に集塵された粒子状物質の量を求める粒子状物質量算出手段、を備え、一対の前記計測電極を構成するそれぞれの計測電極は、平面的に配列された複数の櫛歯部と、各前記計測電極の前記複数の櫛歯部をその一端で連結する櫛骨部とを有する櫛歯状の電極であり、それぞれの前記計測電極の前記櫛歯部が、隙間を空けて相互にかみ合わされるように配置されてなり、且つ、少なくとも一方の前記計測電極の前記櫛骨部は、誘電体からなる櫛骨被覆部によって被覆された粒子状物質検出装置が開示されている。この粒子状物質検出装置は、一対の計測電極及びその周囲に粒子状物質を付着させ、一対の計測電極間の電気的特性の変化を測定することにより粒子状物質の検出を行うものである。
【0004】
このような、従来のPM検出素子では、アルミナ等の絶縁性基板や、ジルコニア等の導電性基板の表面に、厚膜印刷、化学蒸着(CVD)、物理蒸着(PVD)等の薄膜印刷等の手法を用いて、略短冊状に形成した複数の電極を一定の間隔で並べ、極性が交互に入れ代わるように対向させた、いわゆる櫛歯状にパターン形成されたものが用いられている。櫛歯状電極を対向させたPM検出素子においては、一対の電極間に堆積するPM量が一定量を超えるまで電極間の電気的特性を検出することができない不感質量が存在し、DPFの異常をより早期に、しかも確実に検出するために、この不感質量をできる限り少なくすることが望まれている。
【0005】
また、検出電極間に一定量以上のPMが堆積し飽和状態となると、検出電極間で検出される電気的特性が一定となり、被測定ガス中のPMを検出できなくなる。
そこで、PM検出装置においては、PM検出を継続するために、検検出電極間へのPM付着量が限界に達したときに、ヒータ等の加熱により、付着したPMを燃焼除去してPM検出素子の再生を図っている。
【0006】
さらに、特許文献3では、このようなガスセンサにおいて、検出部と抵抗測定手段との間を繋ぐ導通経路の断線の有無を検出する断線検出手段として、所定の抵抗値を有する断線検出抵抗を一対の検出電極を導通すると共に、該検出電極間に形成される検出抵抗に対して並列となるように反抵抗測定手段側に設けたことを特徴とするガスセンサが開示されており、早期の断線検出を可能としている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、従来のPM検出素子において、櫛歯状電極を形成する際に、一般的な厚膜印刷を用いた場合には、検出電極間の間隙は数十μm程度となり、印刷ペーストのレオロジー特性や印刷スクリーンに形成するマスクの製造上の制約等から20μm程度が限界であった。
また、CVDやPVD等の薄膜印刷を用いた場合には、極めて精密なパターンの形成が可能である反面、設備費用が大きく、製造コストの増大となる虞がある。
加えて、形成される検出電極は、必然的に薄膜となるため、自動車エンジン等の内燃機関の燃焼排気流路に設けられ、外部からの振動、被測定ガスの温度変化、PM検出素子を加熱して検出部に堆積したPMを燃焼除去する際の熱ストレス、被測定ガス中に含まれる水分の付着による冷熱ストレス等、極めて過酷な使用環境に直接晒されるPM検出素子においては、検出電極の蒸散や剥離等を招き、十分な耐久性が得られない虞もある。
【0008】
さらに、一対の電極間に堆積する粒子状物質の量に応じて変化する電気的特性を検出する粒子状物質検出素子において、電気的特性として、検出電極間の抵抗値変化を測定する場合であっても、静電容量を測定する場合であっても、各検出電極内に何らかの欠陥による断線が生じた状態と検出電極間に粒子状物質が堆積していない状態とは、電気的には等価となるため、検出電極内の断線等の欠陥と検出電極間にPMが堆積していない状態との区別が付かなくなる虞もある。
【0009】
そこで、本発明は、かかる実情に鑑み、被測定ガス中に含まれる粒子状物質の検出部への堆積量に応じて変化する電気的特性を測定して被測定ガス中の粒子状物質の量を検出する粒子状物質検出素子であって、不感質量が極めて少なく、測定精度の高い構造の粒子状物質検出素子の製造方法を提供すると共に、その粒子状物質検出素子を用いた粒子状物質検出センサにおいて、素子内部における断線等の欠陥の有無を検出可能とした信頼性の高い粒子状物質検出センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明(1、1a、1b、1c、1d)では、少なくとも所定の距離を隔てて対向する第1の検出電極(EL)と、第2の検出電極(ELを具備する検出部(10、10c、10d)に捕集・堆積する粒子状物質の量に応じて変化する上記第1の検出電極と上記第2の検出電極の間の電気的特性を検出して被測定ガス中に含まれる粒子状物質の量を検出する粒子状物質検出素子(2、2、2b、2c、2d)を備えた粒子状物質検出センサであって、
上記第1の検出電極(EL)が、一方の端部(103A103Ac103Adから、他方の端部(104A104Ac104Adに至る迄に直列に接続された導通経路を形成し、上記検出部において、その一部をコ字形に屈曲せしめた折り返し部(101A101Adと、所定の検出電極対間距離を形成する絶縁層(120)を介して対向する検出電極対向部(100Aと、からなり、
上記第2の検出電極(EL)が、一方の端部(103B、103Bc、103Bd)から、他方の端部(104B、104Bc、104Bd)に至る迄に直列に接続された導通経路を形成し、上記検出部において、その一部を逆コ字形に屈曲せしめた第2の検出電極折り返し部(101B、101Bd)と、所定の検出電極対間距離を形成する絶縁層(120)を介して対向する第2の検出電極対向部(100B)と、からなり、
上記第1の検出電極の一方の端部(103A103Ac103Adから上記第1の検出電極の他方の端部(104A104Ac104Adに至るまでの抵抗値の計測により、上記第1の検出電極(ELの内部における断線の有無を検出する第1の断線検出回路部(301A、301Aa、301Ab)と、
上記第2の検出電極の一方の端部(103B、103Bc、103Bd)から上記第2の検出電極の他方の端部(104B、104Bc、104Bd)に至るまでの抵抗値の計測により、上記第1の検出電極(EL)の内部における断線の有無を検出する第1の断線検出回路部(301B、301Ba、301Bb)と、を具備する。
【0011】
また、本発明は、上記第1の検出電極の一方の端部と上記第2の検出電極の一方の端部との間(103A−103B、103Ac−103Bc、103Ad−103Bd)、又は、上記第1の検出電極の他方の端部と、上記第2の検出電極の間(104A−104B、104Ac−104Bc、104Ad−104Bd)の抵抗値、静電容量、インピーダンスのいずれかの検出により、上記第1の検出電極上記第2の検出電極との間に堆積する粒子状物質の堆積量を検出するPM検出回路部(31)を具備する。
さらに、本発明は、上記粒子状物質検出素子(2、2b、2c、2d)が、上記検出部(10、10c、10d)と、これを実装する基板部(20、20b、20c、20d)とからなり、上記検出部(10、10c、10d)が、100μm以上、500μm以下の膜厚で略平板状に形成した上記第1の検出電極対向部(100A)と上記第2の検出電極対向部(100B)と、5μm以上、20μm以下の膜厚で略平板状に形成した上記絶縁層(120)とを繰り返して積層せしめた積層構造体からなり、その積層方向端面を検出面として利用するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、被測定ガス中に含まれる粒子状物質の検出部への堆積量に応じて変化する電気的特性を測定して被測定ガス中の粒子状物質の量を検出する粒子状物質検出素子において、上記第1の断線検出回路部(301Aによって上記第1の検出電極(ELの内部の欠陥の有無を上記第1の検出電極の一方の端部(103Aから上記第1の検出電極の他方の端部(104Aに至るまでの直流抵抗の計測によって検出し、上記第2の断線検出回路部(301B)によって上記第2の検出電極(EL)の内部の欠陥の有無を上記第2の検出電極の一方の端部(103B)から上記第2の検出電極の他方の端部(104B)に至るまでの直流抵抗の計測によって検出した上で、上記第1の検出電極(EL)と上記第2の検出電極(ELとの間に堆積した粒子状物質の量に応じて変化する電気的特性を上記PM検出回路部(31)によって検出するため、従来のように検出された電気的特性が、断線等の検出電極内部の欠陥によるものなのか検出電極間に粒子状物質が堆積していないことによるものなのかが区別できなくなるような虞がなく、高い信頼性の維持を図ることができる。
加えて、上記検出部(10、10c、10d)を積層構造によって形成し、積層方向断面を検出面とすることにより、20μm以下の極めて薄く形成することが可能な上記絶縁層(120)の膜厚を上記第1の検出電極と上記第2の検出電極との間の検出電極対間距離を20μm以下のい距離に形成することが可能となり、不感質量が極めて少なく、測定制度の高い構造の粒子状物質検出素子の製造方法を提供することができる。
従来の厚膜印刷等の方法では、検出電極間を20μm以下に形成することが極めて困難であるが、本発明のように積層構造をとることで、絶縁層(120)を容易に5μm以上20μm以下の範囲で形成することが可能となり、極めて不感質量を少なくできる。
さらに、LNF(LaNi0.6Fe0.4)、LSN(La1.2Sr0.8NiO)、LSM(La1−XSrMnO3−δ)、LSC(La1−XSrCoO3―δ)、LCC(La1−XCaCrO3−δ)、LSCN(La0.85Sr0.15Cr1−XNi3−δ)(0.1≦X≦0.7)のいずれかから選択したペロブスカイト型の導電性酸化物材料を用いて、100μm以上500μm以下の膜厚を有する略平板状の導電性厚膜シート(100THK)と、同材質の導電性酸化物材料を用いて5μm以上20μm以下の膜厚を有する略平板状の導電性薄膜シート(100THN)を形成し、8YSZ((ZrO0.92(Y0.08)からなる部分安定化ジルコニア、MgO、Alのいずれかから選択した絶縁性酸化物材料を用いて、100μm以上500μm以下の膜厚を有する略平板状の絶縁性厚膜シート(120THK)と、同材質の絶縁性酸化物材料を用いて5μm以上20μm以下の膜厚を有する略平板状の絶縁性薄膜シート(120THN)を形成し、導電性厚膜シート(100THK)の所定位置に、所定の形状に区画した絶縁性厚膜シート(120THK)を埋め込んだ絶縁性厚膜シート埋め込み導電性厚膜シート(A層、B層)と絶縁性薄膜シート(120THN)の所定位置に、所定形状に区画した導電性薄膜シート(100THN)を埋め込んだ導電性薄膜シート埋め込み絶縁性薄膜シート(MA層、MB層、C層)とを所定の繰り返しパターンで積層することにより、第1の検出電極(EL)が、検出部(10、10c、10d)において、その一部をコ字形に屈曲せしめた折り返し部(101A、101Ad)と、所定の検出電極対間距離を形成する絶縁層(120)を介して他の検出部と対向する第1の検出電極対向部(100A)とを具備し、第2の検出電極(EL)が、検出部(10、10c、10d)において、その一部を逆コ字形に屈曲せしめた折り返し部(101B、101Bd)と、所定の検出電極対間距離を形成する絶縁層(120)を介して他の検出電極と対向する第2の検出電極対向部(100B)とを具備した、粒子状物質検出センサを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】本発明の粒子状物質検出センサの基本構成を示す模式図。
図1B】本発明の第1の実施形態における粒子状物質検出センサの全体概要を示す構成図。
図2A】本発明の第1の実施形態における粒子状物質検出素子の要部である検出電極積層体の概要を示す斜視図。
図2B図2A中A−Aに沿った検出電極積層体の断面図。
図3】本発明の第1の実施形態における粒子状物質検出素子の概要を示す展開斜視図。
図4A】正常時における本発明の作動状態を示す等価回路図。
図4B】断線時における本発明の作動状態の一例を示す等価回路図。
図5A】比較例の正常時における作動状態を示す等価回路図。
図5B】比較例の問題点を示し、断線時における作動状態の一例を示す等価回路図。
図6A】第1の実施形態における粒子状物質検出素子の要部である検出電極積層体の製造方法における埋め込み工程を説明するための断面図。
図6B】検出電極積層体の詳細な構造を示すと共に図6Aに続く積層工程の概要を説明するための展開斜視図。
図6C図6Bに続く検出電極積層体切り出し工程の概要を示す斜視図。
図7】本発明の第2の実施形態における粒子状物質検出センサの概要を示す構成図。
図8】本発明の第3の実施形態における粒子状物質検出センサの概要を示す構成図。
図9A】本発明の第4の実施形態における粒子状物質検出素子の概要を示す斜視図。
図9B図9Aの検出電極積層体の詳細な構造を示す展開斜視図。
図10A】本発明の第5の実施形態における粒子状物質検出センサの全体概要を示す構成図。
図10B図10Aの検出電極積層体の詳細な構造の一例を示す展開斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1Aを参照して、本発明の粒子状物質検出センサ1の基本構成について説明する。図1Aは、本発明の粒子状物質検出センサ1の基本構成を最も簡略化して表現した概念図である。
粒子状物質検出センサ1は、少なくとも所定の距離を隔てて対向する第1の検出電極ELと第2の検出電極ELを具備する検出部10に捕集・堆積する粒子状物質の量に応じて変化する第1の検出電極ELと第2の検出電極ELとの間の電気的特性を検出して被測定ガス中に含まれる粒子状物質の量を検出する粒子状物質検出素子2と、回路部3とによって構成されている。
粒子状物質検出素子2は、検出部10とこれを実装する基板部20とによって構成されている。
【0015】
検出部10は、少なくとも、絶縁層120を介して対向せしめた第1の検出電極ELと第2の検出電極ELを有する積層体構造によって形成されている。
なお、第1の検出電極ELと第2の検出電極ELは、いずれの電極であるかを区別するため、便宜上、ハッチングを変えて表示してあるが、いずれの電極も同じ材質で形成してある。
具体的な材質については、製造方法と共に後述する。
回路部3は、第1の検出電極ELと第2の検出電極ELとの内部の断線の有無を検出する検出電極断線検出回路部30と、検出電極間に堆積した粒子状物質の量に応じて変化する電気的特性を検出するPM検出回路部31とによって構成されている。
【0016】
検出電極断線検出回路部30は、第1の検出電極ELと第2の検出電極ELのそれぞれにおける断線の有無を検出する第1の検出電極断線検出回路部301Aと第2の検出電極断線検出回路部301Bとによって構成されている。
第1検出電極断線検出回路部301Aは、例えば、第1の検出電極EL一方の端に設けた断線検出端子部103Aから他方の端に設けたPM検出端子104A至るまでの抵抗値を検出して第1の検出電極EL内部の断線の有無を検出する。
同様に、第2の検出電極断線検出回路部302Bは、第2の検出電極ELの一方の端に設けた断線検出端子部103Bから他方の端に設けたPM検出端子104Bに至るまでの抵抗値を検出して第2の検出電極ELの内部の断線の有無を検出する。
具体的な断線の検出方法としては、微弱な電流を流して両端間の電位差を計測することで、第1の検出電極ELの内部抵抗RELA第2の検出電極ELの内部抵抗ELBの計測が可能となり、これを所定の閾値と比較することによって、断線の有無を判断できる。
【0017】
本発明においては、第1の検出電極EL、略平板状に形成した第1の検出電極対向部100A一部を検出部10において略コ字形に折り返した第1の検出電極折り返し部101Aを具備して、第1の検出リード部102A接続し、第1の検出リード部102A介して、第1の断線検出端子103A及び、第1のPM検出端子104A接続された状態となっており、第1の断線検出端子103AからPM検出端子104Aが枝分かれすることなく、直列に接続された一本の導電経路を形成する一筆書き状となっていることを特徴としている。
同様に、第2の検出電極ELは、第1の検出電極ELを180°反転させた形状となっており、略平板状に形成した第2の検出電極対向部100Bの一部を検出部10において略逆コ字形に折り返した第2の検出電極折り返し部101Bを具備して、第2の検出リード部102Bに接続し、第2の検出リード部102Bを介して、第2の断線検出端子103B、及び、第2のPM検出端子104Bに接続された状態となっており、第2の断線検出端子103BからPM検出端子104B迄が枝分かれすることなく、直列に接続された一本の導電経路を形成する一筆書き状となっていることを特徴としている。
第1の検出電極ELと第2の検出電極ELをこのような枝分かれのない連続した導電経路を有する形状とすることによって確実に断線の有無が検出可能となる。
【0018】
PM検出回路部31は、第1の検出電極ELと第2の検出電極ELとの間に堆積する粒子状物質の量に応じて変化する直流抵抗、静電容量、交流インピーダンスのいずれかの電気的特性について、第1の検出電極EL一方の端部103Aと第2の検出電極ELの一方の端部103Bとの103A−103B間、又は、第1の検出電極EL他方の端部104Aと第2の検出電極ELの他方の端部104Bとの104A−104B間)の抵抗値、静電容量、インピーダンスのいずれかの計測により検出し、被測定ガス中に含まれる粒子状物質の量を算出することができる。
なお、基板部20には、通電により発熱する発熱体220を具備させて、検出時の温度を安定化させたり、検出部10の表面に堆積した粒子状物質を燃焼除去してセンサの再生に利用したりするようにしても良い。
発熱体220への通電は、後述する発熱制御回路部32によって通電制御することができる。
【0019】
図1B図2A図2B図3を参照して、本実施形態における粒子状物質検出センサ1のより具体的な構成について説明する。
本実施形態における粒子状物質検出センサ1は、図1Bに示すように、公知の粒子状物質検出センサと同様に、図略のハウジング4に覆われ内燃機関から排出される燃焼排気等の被測定ガスが流れる測定ガス流路5に固定された状態で使用される。
粒子状物質検出素子2は、略筒状に形成したハウジング4内にインシュレータ等の公知の固定部材を介して固定され、基板部20の先端に固定した検出部10が被測定ガスに晒されるようになっている。
【0020】
本実施形態においては、図2Aに示すように、検出部10内において、痔1の検出電極ELと第2の検出電極ELが複数箇所で対向するように、複数箇所に第1の検出電極折り返し部101Aと第2の検出電極折り返し部101Bが設けられて、コ字形に屈曲する第1の検出電極対向部100Aと逆コ字形に屈曲する第2の検出電極対向部100Bとが交互に対向して複数並んで略櫛歯状に形成されている。
ただし、本実施形態においても、上述の如く、第1の断線検出端子103Aから第1のPM検出端子104A至るまで枝分かれすることなく、第2の断線検出端子103Bから第2のPM検出端子104Bに至るまで、枝分かれすることなく、それぞれ一本の直列する導電経路を構成している。
【0021】
また、本実施形態においては、図2Aに示すように、第1の断線検出端子103Aと第1のPM検出端子104Aとを、検出部10の一方の端に配置すべく、第1の戻りリード部105Aが形成され、第2の断線検出端子103Bと第2のPM検出端子104Bとを、検出部10の一方の端に配置すべく、第2の戻りリード部105Bが形成されている。
さらに、本実施形態における検出部10は、従来の絶縁性基板の表面に電極パターンを印刷形成するのではなく、図2Bに示すように、平板状に形成された第1の検出電極対向部100Aと第2の検出電極対向部100Bと所定の検出電極対間距離を形成するための絶縁層120とを積み重ねたような積層構造によって形成されている。
【0022】
一方、本実施形態においては、図2Bに示すように、第1の検出電極対向部100A及び第2の検出電極対向部100Bの積層方向の膜厚は、100μm以上500μm以下に形成され、絶縁層120の積層方向の膜厚は、5μm以上20μm以下に形成されている。
絶縁層120の膜厚を極めて薄く形成し、第1の検出電極対向部100Aと第2の検出電極対向部100Bを積層することによって、検出部10の表面に露出する第1の検出電極ELと第2の検出電極ELとの間の積層方向の距離は、5μm以上20μm以下の極めて短い距離に設定することが可能となり、不感質量の解消を図ることができる。
検出部10をこのような積層構造とする具体的な製造方法については、後述する。
【0023】
図3に示すように、本実施形態における基板部20は、略平板状の絶縁性基板200、210の間に、通電により発熱する発熱体220が具備されており、絶縁性基板200の表面には、厚膜印刷、メッキ等の公知の方法により、第1のPM検出端子接続部106A、第2のPM検出端子部106B、第1の断線検出端子接続部107A、第2の断線検出端子部107B、第1のリード部108A、109A、第2のリード部108B、109B第1のPM検出外部接続端子110A、第2のPM検出外部接続端子110B、第1の断線検出外部接続端子111A、第2の断線検出外部接続端子111Bからなる所定の導体パターンが形成されている。
検出部10の第1の断線検出端子103Aが、第1の断線検出端子接続部107Aと、第2の断線検出端子103Bが、第2の断線検出端子接続部107Bと、第1のPM検出端子104Aが、第1のPM検出端子接続部106A第2のPM検出端子104Bが、第2のPM検出端子接続部106Bと、それぞれ接続されると共に基板部20の表面に実装・固定されている。
略平板状に形成した絶縁性基板210の表面には、厚膜印刷、メッキ等の公知の方法により形成され、通電により発熱する発熱体220と一対の発熱体リード部221A、221Bが形成され、発熱体220及び発熱体リード部221A、221Bは、絶縁性基板200によって覆われており、スルーホール電極222A、222Bを介して、絶縁性基板210の裏面側に設けた発熱体端子部223A、223Bに接続されている。
【0024】
図4A図4Bを参照して、本発明の第1の実施形態における粒子状物質検出センサ1の効果を説明すると共に、図5A図5Bを参照して、比較例として示す従来の絶縁性基板の表面に一対の櫛歯状電極を厚膜形成した粒子状物質検出センサ1zの問題点について説明する。
本発明の粒子状物質検出センサ1を用いた場合、第1の検出電極ELの両端(103A−104A間)、及び、第2の検出電極ELの両端(103B−104B間)において、第1の断線検出回路部301A及び第2の断線検出回路部301によって検出される抵抗値は、第1の検出電極ELの内部抵抗ELA、及び、第2の検出電極ELの内部抵抗RELBに加え、第1の検出電極ELと第2の検出電極ELの表面に堆積する粒子状物質の影響を受ける。
このとき、粒子状物質の堆積によって形成される抵抗パスは、第1の検出電極ELの互いに対向する第1の検出電極対向部100A同士、及び、第2の検出電極ELの第2の検出電極対向部100B同士を架橋するように形成されるため、図4Aに示すように、粒子状物質の堆積によって形成される内部抵抗rPMは、第1の検出電極ELの内部抵抗RELA、と、第2の検出電極EL内部抵抗ELBに対して並列に接続されることになり、第1の検出電極ELと第2の検出電極ELそれぞれの両端で検出される第1の検出抵抗値Rと第2の検出抵抗とは、
1/R=1/RELA+1/rPM
1/R=1/RELB+1/rPMの関係が成り立つ。
【0025】
第1の検出電極EL内部抵抗RELA、及び、第2の検出電極ELの内部抵抗ELB、例えば、1Ω〜200Ω程度とした場合、粒子状物質の堆積によって形成される抵抗パスの抵抗値rPMは、粒子状物質の堆積量に応じて、1000Ω〜10Ω程度まで変化したとしても、第1の検出電極ELの両端、及び、第2の検出電極ELの両端で検出される第1の検出抵抗値R及び、第2の検出抵抗値は、0.999Ω〜199.96Ω程度となり、第1の検出電極EL第2の検出電極ELのいずれかの導通経路に断線が生じた場合には、第1の両端抵抗値R、若しくは、第2の両端抵抗値Rのいずれかが、1000Ω以上となる。
このため、図4Bに示すように、断線が発生している第1の検出電極ELの内部抵抗RELA、又は、第2の検出電極ELの内部抵抗ELBは、10Ω以上に上昇するため、第1の断線検出回路部301A、又は、第2の断線検出回路部301Bにおいて、第1の検出抵抗R第2の検出抵抗と、所定の抵抗閾値RREF(例えば、1000Ω)と、を比較する第1の断線判定手段302A、第2の断線判定手段302Bを設けることによって、極めて容易に断線の有無を検出することができる。
【0026】
加えて、対向する第1の検出電極ELと第2の検出電極ELとの間に堆積する粒子状物質の量に応じて変化する電気的特性として、PM検出端子104A−104B間のPM由来抵抗RPMを計測した場合、粒子状物質の堆積量による抵抗値変化のみを検出することができる。
また、断線を検出したときには、異常警告を発信することにより、粒子状物質算出を停止させることもできる。
【0027】
一方、絶縁性基板の表面に、所定の間隙を隔てて互いに対向する一対の検出電極を厚膜印刷によって櫛歯状に形成した従来の粒子状物質検出センサ1zを用いた場合、正常時には、図5Aに示すように、検出電極間で検出される検出抵抗RSUMは、第1の検出電極ELAZの内部抵抗r第2の検出電極ELBZ内部抵抗と、粒子状物質の堆積量QPMに応じて変化するPM由来抵抗RPMと、が直列接続されたものと等価となり、その合成抵抗RPM+r+rを計測することでPM堆積量QPMの算出が可能となる。
【0028】
しかし、従来の粒子状物質検出センサ1zでは、第1の検出電極ELAZ第2の検出電極ELBZの何処かに断線異常が発生した場合、図5Bに示すように、断線箇所とPM由来抵抗RPMとは直列に接続された状態であり、PM由来抵抗は、1000Ω〜10Ωまでの大きな範囲で変化し、断線が生じた場合の検出抵抗は10Ω程度となるで、断線が生じているのか、検出電極ELAZ、ELBZ間に粒子状物質が堆積していない状態なのかを区別して検出することができない虞がある。
さらに、断線を生じた場合であっても、断線箇所を架橋するように粒子状物質が堆積した場合には、断線箇所をバイパスするように並列に接続された抵抗パスrPMZが形成されるため、断線が検出されない虞もある。
本発明は、従来の粒子状物質検出センサ1zにおいて起こり得るこのような問題を解決するためになされたものである。
【0029】
ここで、図6A図6B図6cを参照して、本発明の粒子状物質検出センサ1の要部である検出部10の製造方法について説明する。
絶縁層120は、8YSZ(ZrO0.92(Y0.08からなる部分安定化ジルコニア、MgO、Alのいずれかから選択した絶縁性酸化物材料に所定の結合材、可塑剤、分散剤、溶剤等を添加して、厚膜印刷、又は、ドクターブレード法等の公知の成膜方法を用いて、膜厚5μm以上、20μm以下の略平板状によって形成された、絶縁性薄膜シート(120THN)と、膜厚100μm以上、500μm以下の略平板状によって形成された、絶縁性厚膜シート(120THK)とを用いて形成されている。
なお、以下の説明において、焼成前のグリーンシートの状態であるか、焼成後の焼結体の状態であるかを特に区別していないが、積層工程や埋め込み工程においては、グリーンシートの状態で加工され、焼成により一体の粒子状物質検出素子を構成するものであることは、いうまでもない。
【0030】
導電性シート成形工程では、第1の検出電極EL及び、第2の検出部ELを形成するための導電性シートを形成する。
導電性シートは、LNF(LaNi0.6Fe0.4)、LSN(La1.2Sr0.8NiO)、LSM(La1−XSrMnO3−δ)、LSC(La1−XSrCoO3―δ)、LCC(La1−XCaCrO3−δ)、LSCN(La0.85Sr0.15Cr1−XNi3−δ)(0.1≦X≦0.7)のいずれかから選択したペロブスカイト型の導電性酸化物材料に所定の結合材、可塑剤、分散剤、溶剤等を添加して、ドクターブレード法、プレス法等の公知の形成方法によって、膜厚100μm以上、500μm以下の略平板状に形成された導電性厚膜シート(100THK)が用いられている。
後述する、膜厚5μm以上、20μm以下の絶縁性薄膜シート120内に埋め込むための導電性薄膜シート100THNは、導電性厚膜シート100THKと同材料を用いて、絶縁性薄膜シート120THNと同一膜厚に形成されている。
LNF、LSN、LSM、LSC、LCC、LSCN等の導電性酸化物材料によって形成された導電性シートは、焼成によって、導電率が10−2S/cm以上の導電性酸化物となる。
なお、図においては、第1の検出電極ELを構成する導電性シートには、Aの符号を、第2の検出電極ELを構成する導電性シートにはBの符号を付して区別したため、導電性厚膜シート100THKと導電性薄膜シート100THNとの違いを示す符号は付していない。
【0031】
絶縁性シート成形工程では、YSZ((ZrO0.92(Y0.08からなる部分安定化ジルコニア、MgO、Alのいずれかから選択した絶縁性酸化物材料をドクターブレード法、厚膜印刷法等の公知の成形方法を利用して形成する。
絶縁性シート成形工程で形成された絶縁シートは、焼成により、絶縁層120を構成する導電率が10−5S/cm以下の絶縁性酸化物となる。
検出電極間距離を決定する絶縁性薄膜シート120THNは、膜厚5μm以上、20μm以下に形成され、後述する導電性厚膜シート100THK内に埋め込まれる絶縁性厚膜シート120THKは、導電性厚膜シート100THKと同一の膜厚に形成されている。
なお、図においては、絶縁性厚膜シート120THKと絶縁性薄膜シート120THNとは、同材質であり、いずれも、焼成後に絶縁層120となるため、膜厚の違いによる符号の区別をしていない。
【0032】
図6Aに(a)〜(d)の順を追って示す絶縁性厚膜シート埋め込み導電性厚膜シート成形工程では、予め用意した同じ膜厚の絶縁性厚膜シート120THKと導電性厚膜シート100THKとを重ね合わせ、金型M1、M2を用いて、同時に打ち抜くことで、絶縁性膜厚シート120THKを導電性厚膜シート100THK内に隙間なく埋込み、絶縁性厚膜シート埋め込み導電性厚膜シート(A層、B層)を形成することができる。
金型のパターンを適宜変更することによって、導電性厚膜シート100THKの複数の所定位置に所定の形状に区画した絶縁性厚膜シート120THKを埋め込むことで、導電性薄膜シート埋め込み絶縁性薄膜シート(MA層、MB層、C層)の形成が可能である。
なお、膜厚5μm以上、20μm以下の絶縁性薄膜シート120THNの所定位置に部分的に同膜厚で所定形状に区画した導電性薄膜シート100THNを埋め込む導電性薄膜シート埋め込み絶縁性薄膜シート成形工程において、上記のような方法が困難な場合には、所定のパターンの導電性シートと絶縁性シートとを重ねて厚膜印刷するようにしても良い。
【0033】
このような絶縁性シート120と導電性シート100とが所定のパターンで組み合わされたシートを図6Bに示すような積層工程を経て積層することで、検出部10が形成されている。
例えば、図6BにA層と記した絶縁性厚膜シート埋め込み導電性厚膜シートでは、導電性厚膜シート100THK内の5カ所に絶縁性厚膜シート120THKを埋め込むことで、検出電極戻りリード部105Aと、検出電極対向部100Aと、検出電極リード部102Bと、検出電極戻りリード部105Bとが絶縁層120を介して配置された状態とすることができる。
なお、第1の検出電極ELと第2の検出電極ELのどの部分を構成するものであるかを明確にするために、便宜上、第1の検出電極EL側と第2の検出電極EL側とをハッチングを分けて示しているが、元々は、一枚の導電性厚膜シート100THKに絶縁性厚膜シート120THKを埋め込んだものである。
絶縁性厚膜シート埋め込み導電性厚膜シートB層は、絶縁性厚膜シート埋め込み導電性厚膜シートA層を平面方向に180度回転させたものである。
【0034】
導電性薄膜シート埋め込み絶縁性薄膜シートMA層は、A層とA層とを直列に接続するものであり、絶縁性薄膜シート120THNの所定の4カ所に導電性薄膜シート100THNを埋め込むことで、絶縁層120内の所定の位置に検出電極戻りリード部105A、検出電極折り返し部101A、検出電極リード部102B、検出電極戻りリード部105Bが配設された状態となっている。
導電性薄膜シート埋め込み絶縁性薄膜シートMB層は、B層とB層とを直列に接続するものであり、導電性薄膜シート埋め込み絶縁性薄膜シートMA層を平面方向に180度回転させたものである。
【0035】
導電性薄膜シート埋め込み絶縁性薄膜シートC層は、互いに対向する第1の検出電極対向部100Aと第2の検出電極対向部100Bとの絶縁を図りつつ、第1の検出電極リード部102A、第2の検出電極リード部102B、第1の検出電極戻りリード部105A、第2の検出電極戻りリード部105Bの導通を図るものであり、絶縁性薄膜シート120THNの所定の4カ所に導電性薄膜シート100THNを埋め込むことで、絶縁層120内の所定の位置に第1の検出電極戻りリード部105A、第1の検出電極リード部102A、第2の検出電極リード部102B、第2の検出電極戻りリード部105Bが配設された状態となっている。
A層、MA層、A層、C層、B層、MB層、B層、C層、A層・・・のように、所定のパターンを繰り返して積層することにより、第1の検出電極ELは、少なくとも、略平板状に形成した第1の検出電極対向部100Aとその一部が略コ字形に屈曲する第1の検出電極折り返し部101A、検出電極リード部102Aによって構成され、一方の端部に第1の断線検出端子部103A形成され、他方の端部に第1のPM検出端子部104A形成され、第1の断線検出端子部103AからPM検出端子部104Aまでが直列に接続された一本の導通経路を形成することができ、第2の検出電極ELは、少なくとも、略平板状に形成した第2の検出電極対向部100Bと、その一部が略コ字形に屈曲する第2の検出電極折り返し部101Bと、検出電極リード部102Bとによって構成され、一方の端部に第2の断線検出端子部103Bが形成され、他方の端部に第2のPM検出端子部104Bが形成され、第2の断線検出端子部103BからPM検出端子部104Bまでが直列に接続された一本の導通経路を形成することができる。
【0036】
絶縁性厚膜シート埋め込み導電性厚膜シートAE層は、検出部10の一方の端部処理を行うものであり、導電性厚膜シート100THKの3カ所に絶縁性厚膜シート120THKが埋設されて、第1の検出電極対向端部100AEが、第1の検出電極折り返し部101Aと第1の検出電極戻りリード部105Aとに接続するように配設され、第2の検出電極対向部100BEが、第2の検出電極リード部102Bと第2の検出電極戻りリード部105Bとに接続されるように配設されている。
また、上端末シートETP層は、絶縁性シート120のみからなり、検出部10の一方の端面の絶縁保持を図っている。
【0037】
なお、導電性薄膜シート埋め込み絶縁性薄膜シートC層を繰り返し積層することで、第1の検出電極リード部102A、第2の検出電極リード部102B、第1の検出電極戻りリード部105A、第2の検出電極戻りリード部105Bを任意の長さに形成することができる。
下端末シートEND層は、検出部10の他方の端部処理を行うもので、絶縁性厚膜シート120THKの所定の4カ所に導電性厚膜シート100THKを埋設(逆に、導電性厚膜シート100THKの所定の3カ所に絶縁性膜厚シート120THKを埋設しても良い。)することによって、第1の断線検出端子103A、第2の断線検出端子103B、第1のPM検出端子104A、第2のPM検出端子104Bを形成し検出部10の片側に配設してある。
【0038】
また、実際の製造工程においては、多層セラミックスの製法において慣用されているように、各層の周囲を覆う枠部を設けて、位置決め孔を形成した上で積層することにより、高い精度で第1の検出電極層EL第2の検出電極層ELの一方の端から他方の端までが枝分かれすることなく直列に接続された導通経路を形成しつつ、互いに一定の間隙を隔てて対向させることができる。
【0039】
なお、本実施形態において、各層の幅を厚く形成し、積層した後、金太郎飴のように、所定の幅に切り出すことによって、複数の検出部10を効率良く形成することができる。
このようにして得られた検出部集合体10MLTを図6Cに示すように、ダイシングソー等の切断手段を用いて、所定の厚みに切り出して検出部10が完成する。
これを、図3に示したように、基板部20に実装すれば、本発明の要部である粒子状物質検出素子2が完成する。
【0040】
なお、検出部集合体10MLTから、個片を切り出すのは、焼成前に行っても良いし、焼成後に行っても良い。
焼成前の加工であれば、成形体の状態であるので加工が容易であるメリットがある反面、焼成による寸法変化があるため、検出部10の寸法バラツキが大きくなるデメリットがある。
焼成後の加工であれば、検出部10の強度が高くなっているので、加工が困難となるデメリットがある反面、焼成による寸法変化がないので、加工後の寸法精度が高いメリットがある。
したがって、生産コストを重視する用途か、加工精度を重視しる用途かに応じて、いずれの時期に加工するのが良いかを適宜選択できる。
【0041】
また、本発明の要部である検出部10は、上述のような積層構造を呈しているため、多層基板や、圧電アクチュエータ等の積層構造体と同様に、加工工程途中での不純物の混入や、各層間の熱膨張係数の違い等によって、層間剥離(デラミネーション)を生じる虞がある。
第1の検出電極EL内、又は、第2の検出電極EL内に、デラミネーションを生じると、各層間の導通が阻害され、局所的な断線を生じる虞があるが、上述の如く、本発明によれば、極めて容易に素子内部の断線の有無を検出することができる。
したがって、検出部10を積層体構造とし、積層方向断面を検出面として利用することによって、第1の検出電極ELと第2の検出電極ELとの間の絶縁距離を極めて短くして不感質量の解消を図った場合であっても、高い信頼性を維持できるのである。
【0042】
図7を参照して、本発明の第2の実施形態における粒子状物質検出センサ1aについて説明する。なお、上記実施形態と同じ構成については、同じ符号を付したので詳細な説明を省略し、類似する構成であって相違する部分には同じ符号に枝番としてアルファベットを付してあり、相違点を中心に説明する。以下の実施例においても同様とする。
上記実施形態においては、基板部20に具備した発熱体220への通電を制御する発熱体通電制御回路部32を、断線検出回路部30、及び、PM検出回路部31とは独立に設けた例を示したが、本実施形態においては、断線検出回路部30(第1の断線検出回路部301Aa、第2の断線検出回路部301Ba)を、発熱体220の発熱温度の検出と温度制御に利用するように構成した点が相違する。
【0043】
第1の検出電極ELの第1の断線検出端子103Aから第1のPM検出端子104A至るまでの第1の内部抵抗R及び第2の検出電極ELの第2の断線検出端子103Bから第2のPM検出端子104Bに至るまでの第2の内部抵抗Rは、温度に対して相関性を有するため、検出された第1の内部抵抗Rから、発熱体220の第1の発熱温度Tを、第2の内部抵抗Rから発熱体220の第2の発熱温度を算出することが可能である。
得られた温度結果を、ヒータ制御回路320にフィードバックし、ヒータ制御回路320では、温度結果に応じて、発熱体220への通電を制御するスイッチング素子322を開閉駆動するたドライバ321の駆動を制御する。
本実施形態によれば、上記実施形態と同様に、検出部10内部の断線の有無検出が可能で、高い精度で粒子状物質の検出が可能であるのに、加えて、発熱体の温度をより正確に制御することも可能となる。
【0044】
図8を参照して、本発明の第3の実施形態における粒子状物質検出センサ1bについて説明する。
上記実施形態においては、検出部10に堆積した粒子状物質を燃焼除去させたり、検出時の温度を一定として検出精度の向上を図ったりするために、基板部20の内部に通電により発熱する発熱体220を設けた例を示したが、本実施形態においては、発熱体220を具備することなく、第1の検出電極ELと第2の検出電極ELのそれぞれを抵抗発熱体として利用するように構成した点が相違する。
本実施形態においては、第1の検出電極ELの両端103A−104A間の断線を検出する第1の断線検出回路部301Abと、第2の検出電極ELの両端103B−104間の断線を検出する第2の断線検出回路部301Bbのそれぞれに、発熱制御機能を持たせたことを特徴とする。
具体的には、第1の検出電極ELの両端103A−104A間の内部抵抗、及び、第2のEL両端103B−104A間の内部抵抗を測定することによって断線の有無を検出するだけでなく、導体の抵抗値は、温度依存性を有することから、測定された第1の検出抵抗値Rから第1の検出電極ELの温度を第2の検出抵抗値から第2の検出電極ELの温度を算出する。
【0045】
さらに、抵抗体の発熱量は、供給電力に比例することから、第1の検出抵抗値R第2の検出抵抗値をモニタしつつ、第1の可変電源32Abから第1の検出電極ELに、2の可変電源32Bbから第2の検出電極ELに供給する電力量を増減することによって、第1の検出電極EL及び、第2の検出電極ELを所望の温度に維持することが可能となる。
本実施形態によれば、上記実施形態と同様の効果に加え、第1の検出電極EL、及び、第2の検出電極ELに堆積した粒子状物質が飽和状態となった場合には、第1の可変電源32Ab、及び/又は、第2の可変電源32Bbからの供給電力を上げ、第1の検出電極EL及び/又は、第2の検出電極ELの温度を上昇させ、堆積した粒子状物質を燃焼除去することもできる。
【0046】
図9A図9Bを参照して、本発明の第4の実施形態における粒子状物質検出センサ1cとその要部である検出電極積層体10cについて説明する。
上記実施形態においては、検出電極積層体10の内部を貫通するように、検出電極戻りリード部105A、105Bを設けて外部との接続を図る断線検出端子部103A、103Bと粒子状物質検出端子部104A、104Bとを検出電極積層体10の一方の端縁に引き出した構成について説明したが、図9A図9Bに示すように、検出電極戻りリード部105A、105Bを設けることなく、断線検出端子部103Ac、103Bc、粒子状物質検出端子部104Ac、104Bcを4箇所に振り分けて露出させ、基板部20cの表面に設けた導体106Ac、106Bc、107Ac、107Bc、108Ac、108Bc、109Ac、109Bc、110Ac、110Bc、111Ac、111Bcの配線パターンによって、外部との接続を図る接続端子110Ac、110Bc、111Ac、111Bcを粒子状物質検出素子2cの基端側に配設するようにした点が相違する。
【0047】
検出電極戻りリード部105A、105Bを形成していないので、図9Bに示すように、各層の構成がシンプルで上記実施形態より製造容易となる。
本実施形態においても、上記実施形態と同様に、第1の検出電極ELが、第1の断線検出端子103Acから第1のPM検出端子104Ac至るまで枝分かれすることなく、一筆書き状の導電経路が形成され、第2の検出電極ELが、第2の断線検出端子103Bcから第2のPM検出端子104Bcに至るまで枝分かれすることなく、一筆書き状の導電経路が形成されているので、第1の検出電極ELと第2の検出電極EL内部の断線の有無を極めて容易に検出できる。
【0048】
図10A図10Bを参照して、本発明の第5の実施形態における粒子状物質検出センサ1d、及び、検出電極積層体10dについて説明する。
上記実施形態においては、導電性厚膜シート100THK内に絶縁性薄膜シート120THKを埋め込んだ絶縁性厚膜シート埋め込み導電性厚膜シート(A層、B層)と、絶縁性薄膜シート120THN内に導電性薄膜シート100THNを埋め込んだ導電性薄膜シート埋め込み絶縁性薄膜シート(MA層、MB層、C層)を積層することで、第1の検出電極折り返し部101A、第2の検出電極折り返し部101Bや、第1の検出電極リード部102A、第2の検出電極リード部102Bを形成して、第1の検出電極ELが、第1の断線検出端子103A、から、第1のPM検出端子104Aまで、第2の検出電極ELが第2の断線検出端子103Bから第2のPM検出端子104Bまで、それぞれ枝分かれすることなく、直列接続された導電経路を形成する方法を示したが、本実施形態においては、各層間の導通を確保する第1の検出電極折り返し部101A、第2の検出電極折り返し部101Bや、第1の検出電極リード部102A、第2の検出電極リード部102Bをスルーホール印刷によって形成する点が相違する。
【0049】
このような構成とすることで、検出部10dの表面には、略短冊状に区画された第1の検出電極対向部100A、第1の検出電極対向部100Bのみが絶縁層120を介して平行に並んで露出した状態となり、第1の検出電極折り返し部101Ad、第2の検出電極折り返し部101Bd、及び、第1の検出電極リード部102Ad、第1の検出電極リード部102Bdは、絶縁層120内部に埋設された状態となっている。
このため、第1の検出電極ELAdと第2の検出電極ELBdとの間に電界を作用させ、被測定ガス中に含まれる粒子状物質の捕集を図った場合に、検出電極の屈曲する部分に電界集中することがなく、平行に並んだ第1の検出電極ELAd第2の検出電極ELBdとの間に一様な電界が形成されるため、捕集される粒子状物質の偏在が抑制され、検出精度のさらなる向上を図ることもできる。
また、本発明において、検出部10、10a、10b、10c、10dの方向性を特に限定するものではなく、図1Bに示すように、粒子状物質検出素子2の長手方向に対して、直交する方向に第1の検出電極対向部100A、第2の検出電極対向部100Bが並ぶように形成しても良いし、図10Aに示すように、粒子状物質検出素子2の長手方向に対して、平行する方向に第1の検出電極対向部100Aと第2の検出電極対向部100Bが並ぶように形成してもよい。
【0050】
なお、上記実施形態においては、検出部10、10a、10b、10c、10dを積層体構造とすることで、一対の検出電極対向部100A、100B間を絶縁する絶縁層120の膜厚を20μm以下にすることを可能にし、極めて検出精度を高くした構成について説明した
厚膜印刷の場合、第1の検出電極対向部100Azと第2の検出電極対向部100Bzとを絶縁する絶縁距離を20μm以下とするのが困難であるため、上記実施形態に比べ、検出精度の低下は避けられない
【符号の説明】
【0051】
1 粒子状物質検出センサ
10 検出部
100A 第1の検出電極対向部
100B 第2の検出電極対向部
101A 第1の検出電極折り返し部
101B 第2の検出電極折り返し部
102A 第1の検出電極リード部
102B 第2の検出電極リード部
103A 第1の断線検出端子部
103B 第2の断線検出端子部
104A 第1の粒子状物質検出端子部
104B 第2の粒子状物質検出端子部
105A 第1の検出電極戻りリード部
105B 第2の検出電極戻りリード部
2 粒子状物質検出素子
20 基板部
200、210 絶縁性基板
220 発熱体
221A、221B 発熱体リード部
222A、222B 発熱体端子部
223A、223B スルーホール電極
A層、B層 絶縁性厚膜シート埋め込み導電性厚膜シート
MA層、MB層、C層 導電性薄膜シート埋め込み絶縁性薄膜シート
【先行技術文献】
【特許文献】
【0052】
【特許文献1】特開2005−164554号公報
【特許文献2】特開2012−47596号公報
【特許文献3】特開2011−203093号公報
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B