(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5709887
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】音声チャネル上で動作するデジタルインバンドモデム用適応データ送信
(51)【国際特許分類】
H04M 1/00 20060101AFI20150409BHJP
H04M 1/738 20060101ALI20150409BHJP
【FI】
H04M1/00 R
H04M1/738
【請求項の数】15
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-539913(P2012-539913)
(86)(22)【出願日】2010年10月18日
(65)【公表番号】特表2013-511893(P2013-511893A)
(43)【公表日】2013年4月4日
(86)【国際出願番号】US2010053006
(87)【国際公開番号】WO2011062715
(87)【国際公開日】20110526
【審査請求日】2013年7月23日
(31)【優先権主張番号】61/263,672
(32)【優先日】2009年11月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】309032522
【氏名又は名称】エアビクティ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100153017
【弁理士】
【氏名又は名称】大倉 昭人
(74)【代理人】
【識別番号】100134577
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 雅章
(72)【発明者】
【氏名】カイリー バーミングハム
【審査官】
岩田 淳
(56)【参考文献】
【文献】
特表2003−533908(JP,A)
【文献】
特開2002−368967(JP,A)
【文献】
特開2001−292292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24−7/26
H04M 1/00
1/24−1/82
3/00
3/16−3/20
3/38−3/58
7/00−7/16
11/00−11/10
99/00
H04W 4/00−8/24
8/26−16/32
24/00−28/00
28/02−72/02
72/04−74/02
74/04−74/06
74/08−84/10
84/12−88/06
88/08−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信ネットワークの無線音声チャネル上で、インバンドシグナリングモデムにより、デジタルデータの通信を行う方法であって、
受信したデジタルビットストリームを、特定の変調パラメータセットを用いて処理して、異なるビット値に対して異なる可聴トーンを有する可聴信号を発生させ、前記可聴トーンは、ボコーダが割込まれていない無線通信ネットワークの無線音声チャネルを通過するように選択されるとともに、前記特定の変調パラメータのセットは、前記可聴信号をボコーディングするボコーダにより複数のボコーディングモードのうちのどの1つが現在動作しているかという演繹的知識なしに、複数のボコーディングモードのサブセットに対し最適化されているステップと、
発生された前記可聴信号を前記無線通信ネットワークの前記無線音声チャネル上で送信するステップと、
前記無線音声チャネル上での前記送信と関連するエラーの量が、受信機により実行されるエラー検出によりプリセットしきい値に達したかどうかを決定するステップと、
前記無線音声チャネル上での前記送信と関連するエラーの量が前記プリセットしきい値に達したことの決定に応答して、前記特定の変調パラメータセットを異なる変調パラメータセットに切換えるステップと
を具える方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記異なる変調パラメータセットは、ボコーディングアルゴリズムに対する互換性が前記特定の変調パラメータセットよりも広くなるように設計し、前記異なる変調パラメータセットは、ボコーディングモードの前記サブセットに対して最適化されないか、又はボコーディングモードの異なるサブセットに対して最適化されるか、或いはボコーディングモードの前記サブセットに対して最適化されず且つボコーディングモードの異なるサブセットに対して最適化される方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、この方法が更に、
前記無線音声チャネル上での前記送信と関連するエラーの量が前記プリセットしきい値に達したことの決定に応答して、第1のシンボルを用いる前記デジタルビットストリームから前記可聴信号への符号化から、この第1のシンボルより大きなシンボル波形長を有する第2のシンボルを用いる前記デジタルビットストリームから前記可聴信号への符号化に移すステップ
を具える方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、この方法が更に、
前記無線音声チャネル上での前記送信と関連するエラーの量が前記プリセットしきい値に達したことの決定に応答して、第1の周波数の対を用いる前記デジタルビットストリームから前記可聴信号への符号化から、第2のより低周波数の対を用いる前記デジタルビットストリームから前記可聴信号への符号化に移すステップ
を具える方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、この方法が更に、
前記無線音声チャネル上での前記送信と関連するエラーの量が前記プリセットしきい値に達したことの決定に応答して、前記可聴信号内に第1のパターンを符号化するステップを具え、この第1のパターンは、前記無線音声チャネル上での前記送信と関連するエラーの量が前記プリセットしきい値に達したことの決定の前に、前記可聴信号内に符号化された第2のパターンよりも多くの波形情報を、前記受信機がシンボルを識別するのに用いるために供給する方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、この方法が更に、
前記無線音声チャネル上での前記送信と関連するエラーの量が前記プリセットしきい値に達したことの決定に応答して、第1のシンボルを用いる前記デジタルビットストリームから前記可聴信号への符号化から、この第1のシンボルより大きなシンボル波形長を有する第2のシンボルを用いる前記デジタルビットストリームから前記可聴信号への符号化に移すステップと、
前記無線音声チャネル上での前記送信と関連するエラーの量が前記プリセットしきい値に達したことの決定に応答して、第1の周波数のセットを用いる前記デジタルビットストリームから前記可聴信号への符号化からこれとは異なる第2の周波数のセットを用いる前記デジタルビットストリームから前記可聴信号への符号化に移すステップと、
前記無線音声チャネル上での前記送信と関連するエラーの量が前記プリセットしきい値に達したことの決定の前に、前記可聴信号内に第1のパターンを符号化し、この第1のパターンは、エラーのある送信を識別する前に、前記可聴信号内に符号化された第2のパターンよりも多くの波形情報を、前記受信機がシンボルを識別するのに用いるために供給するステップと、
を具える方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、この方法が更に、
前記無線音声チャネル上での前記送信と関連するエラーの量が前記プリセットしきい値に達したことの決定に応答して、全二重送信モードから半二重送信モードに切換えるステップ
を具える方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、エラーのうちの少なくとも幾つかは、前記特定の変調パラメータのセットが最適化されている前記サブセット内に含まれていないボコーディングモードの動作をしているボコーダに起因して生じる方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法において、この方法が、
受信用のインバンドシグナリングモデムから送信用のインバンドシグナリングモデムへの非応答の回数を計数し、前記切換えがこの計数値に基づくステップ
を具える方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法において、この方法が、
受信エンドポイントにより発生されるシグナリングを処理し、前記切換えがこのシグナリングに基づくステップ
を具える方法。
【請求項11】
無線通信ネットワークの無線音声チャネル上で、インバンドシグナリングモデムにより、デジタルデータの通信を行う方法であって、
受信したデジタルビットストリームを、特定の変調パラメータセットを用いて処理して、異なるビット値に対して異なる可聴トーンを有する可聴信号を発生させ、前記可聴トーンは、ボコーダが割込まれていない無線通信ネットワークの無線音声チャネルを通過するように選択されるとともに、前記特定の変調パラメータのセットは、前記可聴信号をボコーディングするボコーダにより複数のボコーディングモードのうちのどの1つが現在動作しているかという演繹的知識なしに、複数のボコーディングモードのサブセットに対し最適化されているステップと、
発生された前記可聴信号を前記無線通信ネットワークの前記無線音声チャネル上で送信するステップと、
前記無線音声チャネル上での送信のために復調エンドポイントから実際のエラー情報を帰還させ、帰還されたこの実際のエラー情報がこの復調エンドポイントにより実行されるエラー検出の結果を表すようにするステップと、
帰還されたこのエラー情報がプリセットしきい値に達している場合に、前記特定の変調パラメータのセットから異なる変調パラメータのセットに切換えるステップと
を具える方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、前記異なる変調パラメータセットは、ボコーディングモードの前記サブセットに対して最適化されないか、又はボコーディングモードの異なるサブセットに対して最適化されるか、或いはボコーディングモードの前記サブセットに対して最適化されず且つボコーディングモードの異なるサブセットに対して最適化される方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法において、この方法が更に、
帰還された前記エラー情報がプリセットしきい値に達している場合に、第1のシンボルを用いる前記デジタルビットストリームから前記可聴信号への符号化から、この第1のシンボルより大きなシンボル波形長を有する第2のシンボルを用いる前記デジタルビットストリームから前記可聴信号への符号化に移すステップ
を具える方法。
【請求項14】
請求項11に記載の方法において、この方法が更に、
帰還された前記エラー情報がプリセットしきい値に達している場合に、第1の周波数のセットを用いる前記デジタルビットストリームから前記可聴信号への符号化から、第2のより低周波数のセットを用いる前記デジタルビットストリームから前記可聴信号への符号化に移すステップ
を具える方法。
【請求項15】
請求項11に記載の方法において、この方法が更に、
前記可聴信号内に第1のパターンを符号化するステップを具え、この第1のパターンは、前記プリセットしきい値に達する前に、前記可聴信号内に符号化された第2のパターンよりも多くの波形情報を、前記受信機がシンボルを識別するのに用いるために供給する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声チャネル上で動作するデジタルインバンド(帯域内)モデム用適応データ送信に関するものである。
【0002】
[著作権勧告]
(C) 2010 Airbiquity, Inc. 本明細書の開示の一部には、著作権保護の対象となる資料が含まれる。著作権者は、米国特許商標庁のファイル又は記録に現れるときには、特許書面又は特許の開示のいずれによる複製にも異議を申し立てないが、その他に対しては全て著作権の権利を保有するものである。37CFR§1.71(d)
【背景技術】
【0003】
無線通信範囲(サービス区域)は世界の多くの地域で、特に先進国でほぼユビキタス(普遍的)となっている。ある途上国でも同様に、従来の銅有線電気通信基盤施設が不足している領域全てが、この技術を飛び越しこれに代えて無線を展開している。最近の無線ネットワークは様々な範囲の音声及びデータサービスを提供している。これらのサービスの技術的な詳細は様々な個所で、例えば、3GPPスタンダーズグループウエブサイトwww.3gpp.orgで見ることができる。
【0004】
しかし、幾つかの無線データサービスの動作速度は遅く、その無線通信範囲は点在的(スポッティ)である。“SMS”(ショートメッセージサービス)がその一例である。これに反して、無線音声サービスは著しく良質にする傾向にあり、人々が旅行する殆どの如何なる場所でも受け得るようになっている。従って、音声サービスは、例えば、警察業務、消防業務、医療業務又はその他の緊急業務に対する依頼のような緊急業務サービスの実施において信頼的で広い無線通信範囲が重要となる場合の良好な選択となるものである。人が特に自動車で旅行している場合、緊急業務サービスに届く有効な無線通信が不可欠となるものである。
【0005】
ここで、データチャネル、制御チャネル又はその他の非音声無線サービスとは区別される、音声チャネルで意味する“インバンド”通信につき言及する。重要なことに、音声チャネルは実際の人間のスピーチのトラフィックを有効に送信するのに最適であるが、実際にはこれらの音声チャネルは、比較的少量のデータ(例えば、メガビットではなく数十ビット又は数百ビット)をも送信するのに用いることができる。音声チャネルは、特別な性能特性に特徴がある。例えば、通常の人間の音声に基づく比較的狭い範囲の可聴周波数のみを送受信する必要がある。実際には、デジタル無線ネットワーク上で人間の音声を極めて有効に送受信しうるようにするのに、高度な圧縮及び符号化技術が知られている。しかし、代表的にソフトウェアや、DSPチップ等で構成されているこれらの音声符号器、すなわち“ボコーダ”は非音声を全く良好に送信できない。それどころか、これら音声符号器は、非音声信号をフィルタリングにより除去するように注意深く設計されている。
【0006】
図1は、無線通信ネットワーク上で無線音声呼出し、すなわち電話呼出しを行うための代表的な通話路を示す簡単化したブロック線図である。マイクロホンからのアナログ音声信号はA/Dコンバータによりデジタル化されて、(8000サンプル/秒で)ボコーダの符号化アルゴリズムに供給される。エンコーダは圧縮データのパケット(代表的に20msのオーディオフレーム当り1つのパケット)を生じ、このデータストリームを無線送受信機に供給する。一方、無線受信機はパケットを復号化アルゴリズムに供給し、この復号化アルゴリズムが(不完全であるが)元の音声信号をPCMストリームとして再構成する。このPCMストリームは最終的にアナログ電圧に逆変換されて、このアナログ電圧がスピーカに供給される。
【0007】
この種類のシステムを用いると、周波数や、タイミングを注意深く選択するとともに、情報を人間の音声データに“似せる”ようにすることによりボコーダがこの情報を送信するように“操る”特殊な技術を用いることにより、適度の量のデータ(ここではボコーダスピーチデータではなく「ユーザデータ」を意味する)を“インバンド”で送信しうる。無線システムの音声チャネルを用いるこの種のデータ通信は時として、“インバンドシグナリング”と称されている。この方式は、従来の“固定電話”でよく知られた古い用語「モデム」(モジュレータ‐デモジュレータ)を用いた“インバンドシグナリングモデム”と称されるハードウェア及びソフトウェアの双方又は何れか一方で実現しうる。
【0008】
幾つかの特許明細書には、無線通信ネットワークの音声チャネル上でデジタルデータを通信するインバンドシグナリングの技術が開示されている。その一例では、入力端にデジタルデータが供給される。このデジタルデータは、エンコーダにより、人間の言葉の周波数特性を合成した可聴トーンに変換される。又、このデジタルデータは、通信ネットワークにおける音声符号化回路がこのデジタルデータを表す合成可聴トーンを破損させないように符号化される。その後、この合成可聴トーンが出力端からデジタル無線通信ネットワークの音声チャネルに出力される。ある場合には、“トーン”を有するデータが同時音声と一緒に送信される。これらのトーンは短く且つ比較的目立たないように形成しうる。時として“ブランク・アンド・バースト(blank and burst )”と称される他の実施では、音声チャネルを介してデータを送信している間では音声を遮断する。更に他の実施では、可聴周波スペクトルの一部を音声に対し用い、一方他の部分をデータに対し用いる。これにより、受信側での復号化を補助する。
【0009】
今日の多くのビークルは、無線ネットワーク上で通信を行うためのある機能を有している。これらのビークルシステムは、テレマティックスクライアントシステムと称されている。
図2は、例示的な車載システム(In-Vehicle System; IVS)を示す簡単化したブロック線図である。この
図2には、代表的なテレマティックスクライアントシステムの関連部分の一例が示されている。このテレマティックスクライアントシステムは、自動車環境で動作するように設計された組込み式のハードウェア及びソフトウェアより成っている。
【0010】
図2では、テレマティックスソフトウェアには、殆どの如何なるアプリケーションにもすることができ、特に無線ネットワークを介するデータ送信を採用しているアプリケーションにしうる“カスタマアプリケーション”が含まれている。このカスタマアプリケーションは例えば、ナビゲーション又はエンターティメント(娯楽)に関するようにしうる。動作中、カスタマアプリケーションはデータ(好ましくはデータパケット)をインバンドシグナリングのモデムに伝達する。このインバンドシグナリングのモデムはこのデータを(必要に応じパケットヘッダやその他のオーバーヘッドと一緒に)可聴トーンに変換する。可聴“データトーン”は音声内容に酷似するように符号化されて遠隔の受信機に送信される。
【0011】
何らかの通信システムで見られるように、インバンドシグナリングの処理においてエラーが生じるおそれがある。例えば、受信機が送信されたデータトーンからデータパケットを再生しようと試みるが、この再生処理が失敗するか又は再生されたパケットが元のパケットの間違った表示となるおそれがある。エラーの場合に送信側から再送信を行い得る方式(スキーム)や、受信側でエラーを訂正する方式が存在するが、必要なことは、再送信により解決すべきエラーの個数を減少させる方式とエラー訂正方式との双方又は何れか一方である。以下に説明する開示によりこの及びその他の問題を解決する。
【発明の概要】
【0012】
以下の開示は、本発明の幾つかの観点を基本的に理解するための本発明の概要である。この概要は、本発明の主要な要素を特定したり又は本発明の範囲を線引きしたりするものではない。その唯一の目的は、後に説明するより詳細な説明に対する前置きとして、本発明の幾つかの概念を簡単な形態で提供することにある。
【0013】
本発明の一例では、携帯機器が特定のセット(組)の変調パラメータを用いてデジタルビットストリームを符号化し、この携帯機器のボコーダを通過するように選択した種々の可聴トーンを有する可聴信号を発生させるようにする。特定のセットのこれらのパラメータは、複数のボコーディングモードのうちのどの1つが現在ボコーダにより動作させられているかという演繹的(アプリオリ)知識なしに、複数のボコーディングモードのサブセットに対し最適化される。携帯機器は、特定のセットの変調パラメータを用いてボコーダを介する無線通信ネットワーク上で送信を行うとともに、これらの送信をエラーに関してモニタリングする。エラーの個数がしきい値に達すると、ボコーダは、前記特定のセットの変調パラメータが最適化されているサブセットに含まれていないボコーディングモードの1つを用いることができ、従って、変調装置は特定のセットの変調パラメータから異なるセットの変調パラメータに切換える。本発明の更なる観点及び利点は、添付図面を参照して行う好適実施例の以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、無線音声呼出し用の代表的な通話路を示す簡単化したブロック線図である。
【
図2】
図2は、組込み式の携帯電話モジュールを有する例示的な車載システム(IVS)を示す簡単化したブロック線図である。
【
図3A】
図3Aは、変調パラメータのセット間で切換えるように構成したインバンドシグナリング(IBS)を示すブロック線図である。
【
図4】
図4は、
図1に示すIBSモデムが、変調パラメータのセット間を切換える時を如何にして決定しうるかを示すシグナリング線図である。
【
図5A】
図5Aは、受信側におけるIBSモデムが、変調パラメータのセット間を切換えてこれを
図1のIBSモデムにシグナリングする時を如何にして決定しうるかを示すシグナリング線図である。
【
図5B】
図5Bは、受信機側でのエラーの計数を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図3Aは、変調パラメータのセット間で切換えを行うように構成したインバンドシグナリング(IBS)を示す。
【0016】
システム100は、サーバーのIBSモデム(図示せず)のような遠隔IBSモデムと通信する携帯機器(“クライアント”とも称する)のインバンドシグナリング(IBS)モデム4を有する。このIBSモデム4は、第1のセットの変調パラメータ8を用いてパケットデータを変調するように構成されている。このIBSモデム4のソフトウェア15は、無線音声チャネル13上での遠隔のIBSモデム(図示せず)への送信と関連するエラーをモニタリングし、このエラーのモニタリングに応じて、(IBSモデム4を有する)システム100が送信中に第2のセットの変調パラメータ9に“フォールバック”するかどうかを制御する。
【0017】
背景技術によれば、ボコーダ5のようなボコーダがこれに構成されているボコーディングアルゴリズム又はボコーディングコーデックに応じて音声データを処理する。ボコーディングアルゴリズムとしては種々のものが知られており、ボコーダはこれらが使用している特定のボコーディングアルゴリズムがどれであるかを必ずしも明らかにできるものではない。更に複雑なことに、図示のボコーダ5のようなあるボコーダは複数のボコーディングアルゴリズムで構成されており、どのボコーディングアルゴリズムを現在用いるかをここでの考察の範囲外の理由でいつでも動的に切換えるようになっている(この動的な切換えは必ずしもこのボコーダによっても通知できない)。
【0018】
前述したように、IBSモデムによる可聴信号10へのパケットデータの変調は、パケットデータの情報を、無線音声チャネルのボコーダにより除去されない形態にするためのものである。しかし、種々のボコーディングアルゴリズムは、入力を種々の方法で処理するものであり、ある場合には、情報が1つのあるボコーディングアルゴリズムを充分正確に通過しうるようにする変調方式は、情報が他のボコーディングアルゴリズムを充分正確に通過しえないように、異なって入力を処理するものである。
【0019】
システム100では、IBSモデム4が少なくとも2セットの変調パラメータ、例えば、各々が変調方式を表している変調パラメータのセット8及び9で構成されている。これらの変調方式は、以下のパラメータ、すなわち、変調周波数、シンボル(記号)波形長、同期パターン長及び全/半二重送信の1つ以上で異ならせることができる。変調方式8及び9の一方は既知のボコーディングアルゴリズムの1つのサブセットとともに使用するのに最適化されており、このことは、この変調方式は代表的に、情報をこのサブセットのボコーディングアルゴリズムを高性能で通過させうるが、他のボコーディングアルゴリズムを必ずしも通過させないことを意味する。変調方式8及び9の他方は、既知のボコーディングアルゴリズムの異なるサブセットに対して最適化されているか、又は特定の如何なるボコーディングアルゴリズムに対しても最適化されていない(このことはボコーディングアルゴリズムに対して低い性能で広い互換性(コンパチビリティ)を表す)。
【0020】
IBSモデム4は、どの特定のボコーディング方式が現在ボコーダ5により用いられているかを解析することなく、変調方式8及び9のうちの特定の1つを“デフォルトモード”で用いる。例えば、例示のシステム100では、ボコーディングアルゴリズム1〜Nのサブセットに対し最適化された高性能な変調方式を最初に送信のために用いる。この特定の変調方式の使用を“演繹的”と称しうる。その理由は、IBSモデム4が、ボコーダ5のボコーディングアルゴリズム1〜Nのうちのどの1つが(又は、更に言えば、何らかの既知のボコーディングアルゴリズムのうちのどの1つが)現在用いられているかに関する実際の情報を有さない為である。
【0021】
従って、ソフトウェア15が、変調方式8及び9のうちの特定の1つを用いて送信を連続的にモニタリング(監視)する。換言すれば、実際のエラーモニタリング情報19をソフトウェア15に帰還させる。このエラーモニタリング情報19が、エラーの個数がしきい値に達したことを表す場合には、ソフトウェア15によりIBSモデム4が変調方式を切換えるようにする。このことは、制御信号17により
図3に論理的に示してある。図示の特定例では、IB
Sモデム4が、デフォルト変調方式に対し、異なる変調周波数と、より大きなシンボル波形長と、より大きな同期パターン長と、全二重送信に代わる半二重送信とのパラメータの1つ以上を有する変調方式に“フォールバック”する。変調周波数を変えることにより、利用しているボコーディングアルゴリズムによりデータが除去されるのを阻止しうる。より大きなシンボル波形長を有する変調方式は、送信されたシンボルを識別する目的で、更なる波形情報を受信機に供給する。このようなシンボルは、代表的には、“バッドチャネル”環境で、例えば、パケットデータに対し適していないボコーディング方式を用いるボコーダにおいて、正しく再生される可能性がより高くなる。一例では、1つの変調方式において、シンボルを他の変調方式におけるよりも4倍長くする。より大きな同期パターン長を有する変調方式はより長い同期パターンを用いて、ペイロードの開始を遠隔のIBSモデムにシグナリングし、これにより“バッドチャネル”環境において受信側での検出が誤検出又は不検出となるおそれを少なくする。半二重送信を用いることによりIBSモデム間のクロストークを回避しうる。
【0022】
変調方式8及び9の特定例の1つは以下の通りである。これらの変調方式のうちの第1のものは、送信機及び受信機に対しそれぞれ、変調周波数F1/F2及びF3/F4を有する400ボーのデータシンボルレートを有する。送信機側と受信機側とは互いに異なる周波数を用いている為、時間的重複にもかかわらず波形間に干渉が無くなり(又は最小となり)、全二重動作が可能となる。第2のフォールバック変調方式は、第1の変調方式の4倍のシンボル長とした100ボーのデータシンボルレートを有する。変調周波数は、送信機及び受信機の双方に対しF1/F2であり、半二重送信モードが用いられる。この第2のフォールバック変調方式は、第1の変調方式と相違し、F3/F4の変調周波数を用いない。その理由は、4.8kbpsのEVRC‐Bボコーディングアルゴリズムがこれらの変調周波数を抑圧する為である。
【0023】
IBSモデム4がデフォルト変調方式からフォールバック変調方式に切換わると、このIBSモデム4は遠隔のIBSモデムに、このフォールバック変調方式に応じて復調を開始するようにシグナリングする。その結果、現在用いているボコーディングアルゴリズムの1つに対応しない変調方式を使用することにより生じるエラーを終了させ、エラー訂正と関連する処理及び再送信を低減させることができる。更に強固なフォールバック変調方式により無線音声チャネル媒体の状態に起因する、例えば、スピーチ(通話)途切れや、パケットロスに起因するエラーと、回路切換え媒体のような他の回路網に起因するエラーとの双方又は何れか一方に対処することもできることを理解すべきである。
【0024】
ソフトウェア15は、フォールバック変調方式をある期間用いた後にデフォルト変調方式に戻るように切換えるように構成することもできることを理解すべきである。例えば、ソフトウェア15は、エラーの最小しきい値がプリセットされた期間に亘って観察された場合に自動的に戻るように切換わるようにすることができる。
【0025】
前述したように、ボコーダは代表的に、どの特定のボコーディングアルゴリズムをこれらが用いているかを明らかにしない。しかし、幾つかの“ホスタイル”ボコーダ、例えば、ボコーディングアルゴリズムを明らかにする特性を有し、非スピーチデータを積極的に除去するボコーダがある。1つの特定な例のアルゴリズムは、ある種のボコーダが用いている4.8kbpsのEVRC‐Bボコーディングアルゴリズムである。従って、IBSモデム4は、これらの特定のボコーディング方式を用いるボコーダと組み合わせた場合に、フォールバック変調方式を用いてデジタルビットストリームを最初に変調するように構成しうる。例えば、高性能の変調方式が最適化されているボコーディングアルゴリズムのサブセット内に、識別したボコーディングアルゴリズムが含まれていない場合に、直ちにバッドチャネルを宣言することができ、その結果、IBSモデム4がフォールバック変調方式を用いて、デジタルビットストリーム2の最初の部分を変調する。
【0026】
上述した変調方式は、周波数偏移キーイング(FSK)変調のような周波数変調方式を用いることができる。周波数変調方式を用いる場合、情報を、選択した周波数対で符号化するか、又は周波数のより大きなセット、すなわち2つよりも多い周波数のセットで符号化することができる。上述した原理は、他の変調方式に、例えば、搬送周波数の位相又は周波数(これらに限定されない)を有する他の信号特性を用いて情報を符号化する変調方式に適用しうること明らかである。
【0027】
図3Bは、
図1のIBSモデムの動作を示すフローチャートである。
【0028】
ブロック301では、IBSモデム4が、ボコーダにより現在用いられているボコーディングアルゴリズムを識別することを試みる。ブロック(菱形)302においてボコーディングアルゴリズムが識別されると、ブロック303AでIBSモデム4がこの識別に応じて第1の変調方式と第2のフォールバック変調方式との間で選択を行う。ブロック(菱形)302においてボコーディングアルゴリズムが識別されないと、ブロック303Bにおいて、IBSモデム4が第1の変調方式を用いてデジタルビットストリームの最初の部分を変調して、異なるビット値に対し互いに異なる可聴トーンを有する可聴信号を発生させ、ここではボコーダが割込まれていない無線通信ネットワークの無線音声チャネルを通過する可聴トーンを選択する。
【0029】
ブロック304では、IBSモデム4が無線通信ネットワーク上の送信をモニタリングする。このようなモニタリングの例は後に
図4と
図5A及び5Bとにつき詳細に説明する。エラーの個数がブロック305におけるプリセットしきい値よりも少ない場合には、ブロック306AにおいてIBSモデム4が第1の変調方式を用いてデジタルビットストリームの後続部分を変調する。エラーの個数がブロック305におけるプリセットしきい値に達した場合には、ブロック306
BにおいてIBSモデム4が第2のフォールバック変調方式を用いてデジタルビットストリームの後続部分を変調する。前述したように、第2のフォールバック変調方式は、第1の変調方式に比べて、異なる変調周波数と、より大きなシンボル波形長と、より大きな同期パターン長と、全二重送信の代わりの半二重送信とのうちの少なくとも1つを有する。
【0030】
ブロック307において、ビットストリーム全体がボコーダに供給されると、処理がブロック308で終了される。ビットストリーム全体がボコーダに供給されていない場合には、処理がブロック304におけるモニタリングに戻される。
【0031】
図4は、
図1に示すIBSモデムが如何にして変調パラメータのセット間で切換えを行う時を決定しうるかを示すシグナリング線図である。
【0032】
システム200では、送信用のIBSモデムが非応答の計数値に基づいて変調方式間を切換える時を決定する。これらの非応答には、この特定例に示すように否定応答を含むとともに、プリセットされた期間内で肯定応答を受信することの失敗のような送信エラーを示す何らかの他の表示をも含む。
【0033】
例えば、送信用のIBSモデムは第1の変調方式を用いて第1のパケットを変調し、この変調されたパケットを送信する。説明の便宜上、変調されたパケットは良好に再生され、応答は送信用のIBSモデムに戻されるように受信されるものと仮定する。
【0034】
送信用のIBSモデムは第1の変調方式を用いて第2のパケットを変調する。説明の便宜上、変調されたパケットが良好に再生されないものと仮定する。受信用のIBSモデムは、前述したように一種の非応答である否定応答を送信する。送信用のIBSモデムは非応答に対してカウンタの値を増大(インクリメント)させる。続いて、この送信用のIBSモデムが第1の変調方式を用いて変調した第2のパケットを再送信する。
【0035】
引き続き非応答(この場合も、否定応答か、又は送信エラーを示す何らかの他の表示)が受信されると、カウンタの値は送信用のIBSに関して増大し続ける。カウンタの値がエラーのプリセットしきい値に達した後、バッドチャネルが宣言され、第2のフォールバック変調方式を用いて後続の送信が行われる。例えば、この特定な例では、依然として第2のパケットを通信することを試みている間にしきい値に達すると、この第2のパケットが第2のフォールバック変調方式に応じて変調され、その後に送信される。第2のフォールバック変調方式への早期の切換えを回避するために、履歴を計数に用い得ることを理解すべきである。
【0036】
前述したように、送信用のIBSモデムによって更に変調方式を切換えることを受信用のIBSモデムにシグナリングする。このようなシグナリングは第2のフォールバック変調方式を用いて送るのが好ましい。このことは、パケットデータに関し第1の変調方式を用いて動作している際でも、受信用のIBSモデムが第2のフォールバック変調方式で送られたシグナリングを復調するように構成されていることを意味すること勿論である。送信用のIBSモデムは、受信用のIBSモデムがフォールバックモデムで動作を開始したことをこの受信用のIBSモデムが確実に表すまで、第2のフォールバック変調方式に応じて変調を開始するのを待つことができる。
【0037】
サーバーから移動クライアントにダウンロードを行う場合、サーバーは送信用のIBSモデムの機能を実行することを理解すべきである。これとは逆に、移動クライアントからサーバーにアップロードを行う場合には、移動クライアントが送信用のIBSモデムの機能を実行する。
【0038】
送信用のIBSモデムは、ある期間後に、第1の変調方式に戻す切換えを開始しうる。この第1の変調方式に戻す切換えは、プリセットした期間の経過後に、又はプリセットした期間の経過後ではあるがこの期間中に特定量よりも少ないエラーが検出された場合のみ等で自動的に生じるようにしうる。エラーが一時的に無線通信ネットワーク媒体に関連する問題から生じた場合には、この時点で第1の変調方式を用いた送信が比較的エラーを受けないようにしうる。又、エラーが呼出し経路に沿うボコーダによる特定のボコーディングアルゴリズムの瞬時的使用から生じた場合でも、この時点で第1の変調方式を用いた送信が比較的エラーを受けないようにしうる。
【0039】
図5Aは、変調パラメータセット間を切換え且つ
図1のIBSモデムをシグナリングする時を受信側におけるIBSモデムが如何にして決定するかを示すシグナリング線図である。
【0040】
システム300では、受信用のIBSモデムが、巡回冗長検査(CRC)又はある他の形態のエラー検出を用いて検出したエラーの計数に基づいて変調方式間の切換えを行う時を決定する。
【0041】
例えば、受信用のIBSモデムが、第1の変調方式により変調された第1のパケットを受信する。次に、この受信用のIBSモデムが、第1のパケットの受信データに関してCRCを実行する。説明の便宜上、このCRC中にエラーが識別されないものと仮定する。受信用のIBSモデムは、第1のパケットが良好に再生されたという応答を送ることができる。
【0042】
次に、受信用のIBSモデムが、第1の変調方式に応じて変調された第2のパケットに関しCRCを実行する。説明の便宜上、このCRCによりエラーが識別されるものと仮定する。この場合、受信用のIBSモデムがカウンタを更新する。この受信用のIBSモデムにより否定応答を送信しうる。
【0043】
その後のエラーが発見されると、カウンタの値が送信用のIBSに関して増大し続ける。カウンタの値がエラーのプリセットしきい値に達した後、バッドチャネルが宣言される。カウンタの計数に履歴を用いて第2のフォールバック変調方式に早期に切換えるのを回避しうることを理解すべきである。
【0044】
続いて、受信用のIBSモデムが変調方式を切換える要求を送り、送信用のモデムが第2のフォールバック変調方式を用いてパケットを再送信する(又はこのフォールバック変調方式を用いてまだ送信されていないパケットの送信を開始する)ようにする。前述したように、この要求自体は、第2のフォールバック変調方式に応じて変調されている。このことは、第1の変調方式を用いてパケットデータに関して動作している際でも、第2のフォールバック変調方式で送信されたシグナリングを復調するように、送信用のIBSモデムが構成されていることを意味すること勿論である。
【0045】
図5Bは、受信機側でのエラーの計数を示すフローチャートである。
【0046】
このフローチャート400においては、CRC計算を実行する前にパケットデータを訂正するのに、前方誤り訂正(FEC)のパリティビットを用いる。CRC又はその他のエラー検出処理を行う前に、如何なる形態のエラー訂正をも実行しうること明らかである。エラー検出はヘッダ上で又は(
図5Bで“データ”を付してある)ペイロード上で又はその双方で行うことができる。
【0047】
パケットは、代表的には、送信のためにセグメント化されていることを理解すべきである。従って、カウンタの値は、エラーが存在する各セグメント(セグメントはヘッダと、パケットの一部に相当するペイロードとの組み合わせである)に対し一度だけ増大する。
【0048】
一例では、実行されると特定の動作をもたらす特定の命令でプロセッサ可読媒体を符号化する。1つの動作には、受信したデジタルビットストリームを、特定の変調パラメータセットを用いて処理して、異なるビット値に対して異なる可聴トーンを有する可聴信号を発生させるようにすることが含まれる。この場合、可聴トーンは、ボコーダが割込まれていない無線通信ネットワークの無線音声チャネルを通過するように選択されるとともに、特定の変調パラメータのセットは、可聴信号をボコーディングするボコーダにより複数のボコーディングモードのうちのどの1つが現在動作しているかという演繹的知識なしに、複数のボコーディングモードのサブセットに対し最適化される。他の動作には、無線音声チャネル上の送信と関連するエラーの量がプリセットしきい値に達した時を識別するために、無線通信ネットワーク上の送信をモニタリングすることが含まれる。又、他の動作には、モニタリングによりエラーの量がプリセットしきい値に到達したことを表した場合に、特定の変調パラメータのセットから異なる変調パラメータのセットに切換えることが含まれる。ある場合には、エラーのうちの少なくとも幾つかは、特定の変調パラメータのセットがエラーのある送信と関連しているサブセットに含まれていないボコーディングモードの動作をしているボコーダに起因するものである。
【0049】
異なる変調パラメータのセットは特定の変調パラメータのセットよりも広い互換性に対し設計でき、この場合この異なる変調パラメータのセットはボコーディングモードの前記サブセットに対して最適化されないか、又はボコーディングモードの異なるサブセットに対して最適化されるか、或いはボコーディングモードの前記サブセットに対して最適化されず且つボコーディングモードの異なるサブセットに対して最適化されるようにする。
【0050】
他の動作には、モニタリングによりエラーの量がプリセットしきい値に達したことを表した場合に、第1のシンボルタイプを用いる符号化から、この第1のシンボルタイプよりも持続時間の長い第2のシンボルタイプを用いる符号化に移すことを含めることができる。
【0051】
他の動作には、モニタリングによりエラーの量がプリセットしきい値に達したことを表した場合に、第1の周波数の対を用いる符号化から、第2のより低周波数の対を用いる符号化に移すことを含めることができる。この場合、第1のより高周波数の対はエラーのある送信に対して用いられる。
【0052】
他の動作には、モニタリングによりエラーの量がプリセットしきい値に達したことを表した場合に、可聴信号内に第1のパターンを符号化することを含めることができる。この場合、この第1のパターンは、エラーのある送信を識別する前に、可聴信号内に符号化された第2のパターンよりも多くの波形情報を、受信機がシンボルを識別するのに用いるために供給する。
【0053】
他の動作には、モニタリングによりエラーの量がプリセットしきい値に達したことを表した場合に、第1のシンボルタイプを用いる符号化から、この第1のシンボルタイプよりも持続時間の長い第2のシンボルタイプを用いる符号化に移すことや、第1の周波数のセットを用いる符号化から、これとは異なる第2の周波数のセットを用いる符号化に移すことや、可聴信号内に第1のパターンを符号化し、この第1のパターンにより、エラーのある送信を識別する前に、可聴信号内に符号化された第2のパターンよりも多くの波形情報を、受信機がシンボルを識別するのに用いるために供給するようにすることを含めることができる。
【0054】
他の動作には、モニタリングによりエラーの量がプリセットしきい値に達したことを表した場合に、全二重送信モードから半二重送信モードに切換えることを含めることができる。
【0055】
他の動作には、非応答数を計数し、切換えをこの計数値に基づかせるようにすることを含めることができる。
【0056】
他の動作には、受信エンドポイントにより発生されるシグナリングを処理し、切換えをこのシグナリングに基づかせるようにすることができる。
【0057】
他の例では、特定の処理を提供する。この処理における1つのステップには、特定の変調パラメータセットを用いて、受信したデジタルビットストリームを処理して、異なるビット値に対し異なる可聴トーンを有する可聴信号を発生させるようにすることが含まれる。この場合、可聴トーンは、ボコーダが割込まれていない無線通信ネットワークの無線音声チャネルを通過するように選択されるとともに、特定の変調パラメータのセットは、可聴信号をボコーディングするボコーダにより複数のボコーディングモードのうちのどの1つが現在動作しているかという演繹的知識なしに、複数のボコーディングモードのサブセットに対し最適化される。この処理における他のステップには、送信のために復調エンドポイントから実際のエラー情報を帰還させることが含まれる。又、この処理における他のステップには、帰還されたエラー情報がプリセットしきい値に達しているエラーを表している場合に、特定の変調パラメータのセットから異なる変調パラメータのセットに切換えることが含まれる。ある場合には、この異なる変調パラメータのセットはボコーディングモードの前記サブセットに対して最適化されていないか、又はボコーディングモードの異なるサブセットに対して最適化されているか、或いはボコーディングモードの前記サブセットに対して最適化されておらず且つボコーディングモードの異なるサブセットに対して最適化されている。
【0058】
この処理における他のステップには、エラーがプリセットしきい値に達したことを帰還されたエラー情報が示した場合に、第1のシンボルタイプを用いる符号化から、この第1のシンボルタイプよりも長い持続時間を有する第2のシンボルタイプを用いる符号化に移すことを含める。
【0059】
この処理における他のステップには、エラーがプリセットしきい値に達したことを帰還されたエラー情報が示した場合に、第1の周波数のセットを用いる符号化から、第2のより低周波数のセットを用いる符号化に移すことを含める。この場合、第1のより高周波数のセットはエラーのある送信に対して用いられる。
【0060】
この処理における他のステップには、可聴信号内に第1のパターンを符号化することを含めることができる。この場合、この第1のパターンは、プリセットしきい値に達する前に、可聴信号内に符号化された第2のパターンよりも多くの波形情報を、受信機がシンボルを識別するのに用いるために供給する。
【0061】
他の例では、実行した場合に特定の動作をもたらす特定の命令でプロセッサ可読媒体を符号化する。1つの動作には、ボコーダが、複数のボコーディングモードのうちの特定のボコーディングモードが現在動作しているか否かを決定することが含まれている。他の動作には、特定の変調パラメータセットを用いて、受信したデジタルビットストリームを処理して、異なるビット値に対し異なる可聴トーンを有する可聴信号を発生させるようにすることが含まれる。この場合、可聴トーンは、ボコーダが割込まれていない無線通信ネットワークの無線音声チャネルを通過するように選択されるとともに、前記の決定が、複数のボコーディングモードのうちの特定のボコーディングモードが現在動作させていることを表す場合には、特定の変調パラメータのセットがパラメータの第1のセットを有し、前記の決定が、このことを表さない場合には、特定の変調パラメータのセットがパラメータの第2の異なるセットを有する。他の動作には、無線通信ネットワーク上の送信をモニタリングして、無線ボイスチャネル上の送信と関連するエラーの量がプリセットしきい値に達する時を識別するようにすることが含まれる。又、他の動作には、エラーの量がプリセットしきい値に達したことを表した場合に、受信したビットストリームの処理を適応することが含まれる。
【0062】
他の動作には、エラーの量がプリセットしきい値に達したことをモニタリングが表した場合に、第1のシンボルタイプを用いる符号化から、この第1のシンボルタイプよりも持続時間の長い第2のシンボルタイプを用いる符号化に移すことを含める。
【0063】
他の動作には、エラーの量がプリセットしきい値に達したことをモニタリングが表した場合に、第1の周波数のセットを用いる符号化から、第2のより低周波数のセットを用いる符号化に移すことを含める。
【0064】
他の動作には、エラーの量がプリセットしきい値に達したことをモニタリングが表した場合に、可聴信号内に第1のパターンを符号化することを含めることができる。この場合、この第1のパターンは、エラーのある送信を識別する前に、可聴信号内に符号化された第2の
パターンよりも多くの波形情報を、受信機がシンボルを識別するのに用いるために供給する。
【0065】
他の動作には、非応答の回数を計数するか又は受信エンドポイントにより発生されるシグナリングを処理することを含め、前記の適応がこの計数又はこのシグナリングに基づくようにする。
【0066】
当業者にとって明らかなように、本発明の基本的な原理を逸脱することなく、上述した実施例の細部に対して種々の変更を達成しうるものである。従って、本発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ決定されるべきものである。
【0067】
上述した装置の殆どは、ハードウェアとこれに関連するソフトウェアとを有する。例えば、代表的なナビゲーション装置は、1つ以上のプロセッサと、これらのプロセッサで実行しうるソフトウェアとを有し、上述した動作を実行するようにする可能性がある。ここでは、一般的に理解されている感覚で、プログラム又はルーチン(サブルーチン、オブジェクト、プラグイン等)や、マシン又はプロセッサで用い得るデータを参照するために、用語“ソフトウェア”を用いている。周知のように、コンピュータプログラムは一般的に、マシン可読記憶媒体又はコンピュータ可読記憶媒体に記憶された命令を有する。本発明のある実施例は、デジタルメモリのようなマシン可読記憶媒体又はコンピュータ可読記憶媒体に記憶されたプログラム又は命令を有するようにしうる。如何なる特定の実施例でも通常の意味での“コンピュータ”を必要とするということを意味するものではない。例えば、ここで述べた構成素子のような装置には、内臓式の又はその他の種々のプロセッサを用いることができる。
【0068】
ソフトウェアを記憶するメモリも周知である。ある実施例では、所定のプロセッサと関連するメモリをこのプロセッサと同じ物理的装置内に格納することができる(“オンボード”メモリ)。例えば、RAM又はフラッシュメモリを集積回路のマイクロプロセッサ等内に配置しうる。他の例では、メモリが、外付けディスクドライブ、記憶装置アレイ又は携帯フラッシュキーホブのような独立装置を有するようにする。このような場合、メモリとデジタルプロセッサとを互いに動作的に結合させるか又は、例えば、I/Oポート、ネットワーク接続等により互いに通信させてプロセッサがメモリに記憶されたファイルを読み取りうるようにした場合に、メモリがデジタルプロセッサと“関連”するようになる。この関連するメモリは、設計により又はパーミッションの設定により“読み出し専用”メモリ(ROM)とするか、又はこのようにしないようにすることができる。他の例には、WORM、EPROM、EEPROM、FLASH(フラッシュ)等のメモリを含めるが、これらのメモリに限定されるものではない。これらの技術はしばしば、固体半導体装置内で実施される。他のメモリは、従来の回転ディスクドライブのような可動部を有しうる。このようなメモリは全て“マシン可読”又は“コンピュータ可読”であり、ここで述べた機能を実行するための実行可能命令を記憶するのに用いることができる。
【0069】
“ソフトウェア製品”とは、一連の実行可能な命令がマシン可読形態で記憶されているメモリ装置を参照するものであり、ソフトウェア製品に対する適切なアクセスを有する適切なマシン又はプロセッサによりこれらの命令を実行して、これらの命令により表される処理を達成するようにしうる。ソフトウェア製品は時にはソフトウェアを配布するのに用いられる。上述した要約事項を無制限に有する如何なる種類のマシン可読メモリを用いてもソフトウェア製品を形成することができる。しかし、電子的な送信(“ダウンロード”)を介してソフトウェアを配布することができることも既知であり、この場合、代表的には、送信側又は受信側或いはその双方に対応のソフトウェア製品がある。
【0070】
本発明の好適実施例では、本発明の原理を説明及び開示したが、このような原理から逸脱することなく、構成配置及び細部において本発明を変更させることができること明らかである。本発明の特許請求の範囲の精神及び権利範囲内に入るあらゆる変更をも本発明は主張しうるものである。