特許第5710001号(P5710001)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5710001miRNAをターゲットとした神経変性疾患の治療
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5710001
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】miRNAをターゲットとした神経変性疾患の治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 48/00 20060101AFI20150409BHJP
   C12Q 1/68 20060101ALI20150409BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20150409BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20150409BHJP
   A61P 21/02 20060101ALI20150409BHJP
   A61K 31/712 20060101ALI20150409BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20150409BHJP
【FI】
   A61K48/00
   C12Q1/68 AZNA
   A61K31/7088
   A61P25/28
   A61P21/02
   A61K31/712
   G01N33/53 M
【請求項の数】2
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2013-529052(P2013-529052)
(86)(22)【出願日】2011年9月9日
(65)【公表番号】特表2013-542921(P2013-542921A)
(43)【公表日】2013年11月28日
(86)【国際出願番号】KR2011006718
(87)【国際公開番号】WO2012036433
(87)【国際公開日】20120322
【審査請求日】2013年4月24日
(31)【優先権主張番号】10-2010-0089651
(32)【優先日】2010年9月13日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513061541
【氏名又は名称】エスエヌユー アールアンドディービー ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】ノ・ジェギュ
(72)【発明者】
【氏名】イ・サン クン
(72)【発明者】
【氏名】キム・マン ホ
(72)【発明者】
【氏名】チュ・コン
(72)【発明者】
【氏名】チョン・グンファ
(72)【発明者】
【氏名】イ・スンテ
【審査官】 平林 由利子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/026576(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/044937(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/117418(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/147974(WO,A1)
【文献】 特表2009−519339(JP,A)
【文献】 Hugon,J. et al,Targeting miRNAs in Alzheimer’s disease,Expert Review of Neurotherapeutics,2008年,Vol. 8, No. 11,pp. 1615-1616
【文献】 RAU CHENG-SHYUAN et al,Entrapment neuropathy results in different microRNA expression patterns from denervation injury in rats,BMC MUSCULOSKELETAL DISORDERS,2010年,vol. 11, no. 1,pp. 181(1-9)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 48/00
A61K 31/7088−31/713
G01N 33/48−33/98
C12Q 1/00− 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)配列番号1のヌクレオチド配列に相補的な配列を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドの薬剤的有効量と、
(b)薬剤的に許容される担体と、
を含み、
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが2’−O−C1−3アルキルリボヌクレオチドであることを特徴とするアルツハイマー疾患の予防又は治療用医薬組成物。
【請求項2】
miR−206のヌクレオチド配列又はその相補的配列を含むことを特徴とするアルツハイマー疾患の診断用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定miRNAをターゲットとした神経変性疾患の予防又は治療用医薬組成物に関する。また、本発明は、神経変性疾患の診断用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー疾患(AD)は、進行性認知機能低下、神経変性、アミロイドの細胞外沈着(老人性斑)と細胞内封入(神経原繊維:NFT)の増加で特徴付けられる、老人における認知症の最も一般的な形態である(非特許文献1〜2)。現在、ADに対する治療方法はない。ADの主要な分子メカニズムは、ミスフォルディングタンパク質、酸化性損傷、炎症性損傷及びエネルギー不全を含み、これは究極的にシナプス機能異常を招く(非特許文献2)。シナプスは、AD発病の初期ターゲットであり、シナプトフィシン(synaptophysin)の変化は、認知機能低下に関わっている(非特許文献3)。ADの脳は、BDNF(brain−derived neurotrophic factor)の低いレベルを示し、BDNFは、シナプス柔軟性、シナプス生成及び神経生成の主要な調節子である(非特許文献4〜6)。そのため、BDNFの調節を通じてADを治療しようとする提案があるが(非特許文献7)、安全で効果的な治療方法は未だ開発されていない。
【0003】
MicroRNAs(miRNA)は、21−乃至23−ヌクレオチドの小さいRNA分子であり、ターゲットmRNAの分解又は解読段階における抑制により遺伝子発現を調節する(非特許文献8)。miRNAは、多様な生理学的現象及び疾患に関与する(非特許文献8)。中枢神経系において、miRNA生成の主要な調節子であるDicerが消失されると、神経変性が誘導されるが、これは、miRNAの均衡ある発現が神経系で重要な役割をするということを示す(非特許文献9〜10)。幾つかのmiRNA、例えば、miR−8、9/9及び133bは、神経変性に関与することが知られている(非特許文献11〜13)。AD研究において、幾つかのmicroRNA発現変化及びこれらのAD関与も知られている(非特許文献14〜15)。このような研究は、ADの病因に対する理解を広めるものの、ADにおいて、miRNAの直接的治療への適用は、まだ試みられたことがない。
【0004】
本明細書全体にかけて多数の特許文献及び論文が参照されて、その引用が表示されている。引用された特許文献及び論文の開示内容は、その全体が本明細書に参照として取り込まれ、本発明の属する技術分野の水準及び本発明の内容がより明確に説明される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Braak and Braak,Acta Neurol Scand Suppl.1996;165:3−12.
【非特許文献2】Querfurth and LaFerla,N Engl J Med 2010;362:329−44.
【非特許文献3】Selkoe,Science.2002;298:789−91.
【非特許文献4】Phillips et al.,Neuron.1991;7:695−702.
【非特許文献5】Bramham and Messaoudi,Prog Neurobiol.2005;76:99−125.
【非特許文献6】Ernfors and Bramham,Trends Neurosci.2003;26:171−3.
【非特許文献7】Nagahara et al.,Nat Med.2009;15:331−7.
【非特許文献8】Kim et al.,Nat Rev Mol Cell Biol.2009;10:126−39.
【非特許文献9】Schaefer et al.,J Exp Med.2007;204:1553−8.
【非特許文献10】Cueller et al.,Proc Natl Acad Sci U S A.2008;105:5614−9.
【非特許文献11】Karres et al.,Cell.2007;131:136−45.
【非特許文献12】Kim et al.,Science.2007;317:1220−4.
【非特許文献13】Packer et al.,J Neurosci.2008;28:14341−6.
【非特許文献14】Maes et al.,Curr Genomics.2009;10:154−68.
【非特許文献15】Hebert and De Strooper,Trends Neurosci.2009;32:199−206.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、神経変性疾患、特にアルツハイマー疾患を治療できるターゲット分子を見出し、これをターゲットとする医薬を開発するために鋭意研究した。その結果、本発明者らは、miR−206が神経変性疾患の脳において特異的に高発現し、miR−206をターゲットとするアンチセンスオリゴヌクレオチドが、シナプスを再生して記憶力を回復させるなど、神経変性疾患を治療することができることを実質的に確認することにより、本発明を完成した。
【0007】
本発明の目的は、神経変性疾患の予防又は治療用医薬組成物を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、神経変性疾患の診断用キットを提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的及び利点は、発明の詳細な説明及び請求の範囲及び図面により、さらに明確にされる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一様態によると、本発明は、(a)配列番号1のヌクレオチド配列の2番目から7番目のヌクレオチド配列に相補的な配列を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドの薬剤的有効量と、(b)薬剤的に許容される担体とを含む神経変性疾患の予防又は治療用医薬組成物を提供する。
【0011】
本発明の一様態によると、本発明は、(a)配列番号1のヌクレオチド配列の2番目から7番目のヌクレオチド配列に相補的な配列を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドの薬剤的有効量と、(b)薬剤的に許容される担体とを含む医薬組成物を対象に投与する工程を含む神経変性疾患の予防又は治療方法を提供する。
【0012】
本発明者らは、神経変性疾患、特にアルツハイマー疾患を治療できるターゲット分子を見出し、これをターゲットとする医薬を開発するために鋭意研究した。その結果、本発明者らは、miR−206が神経変性疾患の脳において特異的に高発現し、miR−206をターゲットとするアンチセンスオリゴヌクレオチドが、シナプスを再生して記憶力を回復させるなど、神経変性疾患を治療することができることを実質的に確認した。
【0013】
本明細書において、用語‘アンチセンスオリゴヌクレオチド’は、ターゲットとするmiRNA、特にmiRNAのシード(seed)配列に対する相補的な配列を有しており、miRNAと二本鎖(duplex)を形成できる核酸に基づく分子を包括する。したがって、本明細書において、用語‘アンチセンスオリゴヌクレオチド’は、‘相補的核酸ベース抑制剤(a complimentary nucleic acid−based inhibitor)’と記載できる。
【0014】
配列番号1は、miR−206の成熟配列を示す。配列番号1において、2番目から7番目までのヌクレオチド配列は、miR−206のシード配列である。一般に、miRNAのシード配列は、ターゲット認知に非常に重要な配列であって(Krenz、M.et al.、J.Am.Coll.Cardiol.44:2390−2397(2004);H.Kiriazis、et al.、Annu.Rev.Physiol.62:321(2000))、多様な種に対して保存されている。したがって、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、miR−206のシード配列である配列番号1の2番目から7番目までのヌクレオチド配列に相補的な配列を有し、この相補的な配列のみによってもmiR−206を抑制することができる。
【0015】
本明細書において、アンチセンスオリゴヌクレオチドを言及しながら使用される用語‘相補的’は、所定のハイブリッド形成又はアニーリング条件、好ましくは、生理的条件下でアンチセンスオリゴヌクレオチドがmiR−206ターゲットに選択的にハイブリッド形成する程度に十分相補的であることを意味し、実質的に相補的(substantially complementary)及び完全に相補的(perfectly complementary)であることを包括する意味を有し、好ましくは、完全に相補的であることを意味する。
【0016】
本発明の好ましい具現例によると、本発明で有効成分として利用されるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号1のヌクレオチド配列(即ち、miR−206の成熟配列)の1〜8番目や2〜8番目、又は2〜7番目ヌクレオチド配列に相補的な配列を有する。最も好ましくは、本発明で有効成分として利用されるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号1のヌクレオチド配列(即ち、miR−206の成熟配列)全体に相補的な配列を有する。
【0017】
本発明において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、多様な分子を含む。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、DNA又はRNA分子であり、より好ましくは、RNA分子である。選択的に、本発明で利用されるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、リボヌクレオチド(RNA)、デオキシヌクレオチド(DNA)、2’−O−修飾オリゴヌクレオチド、ホスホロチオエート−バックボーンデオキシリボヌクレオチド、PNA(peptide nucleic acid)又はLNA(locked nucleic acid)である。2’−O−修飾オリゴヌクレオチドは、好ましくは、2’−O−アルキルオリゴヌクレオチドであり、より好ましくは、2’−O−C1−3アルキルオリゴヌクレオチドであって、最も好ましくは、2’−O−C1−3メチルオリゴヌクレオチドである。
【0018】
上述のように、本発明においてアンチセンスオリゴヌクレオチドは、miR−206に相補的な配列を有する核酸ベース抑制剤を含む包括的な意味を有する。本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドに含まれるものは、例えば、狭い意味のアンチセンスオリゴヌクレオチド、アンタゴミア(antagomir)及び抑制RNA分子を含む。
【0019】
用語‘アンタゴミア’は、一本鎖化学的修飾リボヌクレオチドであって、miR−206に少なくとも部分的に、好ましくは完全に相補的な配列を有する。アンタゴミアは、一つ又はそれ以上の修飾ヌクレオチド(例えば、2’−O−メチル−糖修飾)を含む。ある具現例によると、アンタゴミアは、修飾ヌクレオチドのみを含む。アンタゴミアは、一つ又はそれ以上のホスホロチオエート結合を含み、これに部分的に又は完全にホスホロチオエートバックボーンを有するようになる。インビボ運搬及び安定性を改善するために、アンタゴミアは、その3’−末端にコレステロール又は他の領域を結合させることができる。miR−206を抑制するために、アンタゴミアの長さは、7〜50ヌクレオチド、好ましくは、10〜40ヌクレオチド、より好ましくは、15〜30ヌクレオチド、最も好ましくは、20〜25ヌクレオチドである。
【0020】
miR−206機能の抑制は、典型的なアンチセンスオリゴヌクレオチドを投与することにより達成できる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドである。好ましくは、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも一つの化学的修飾を含む。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、一つ又はそれ以上のLNAs(locked nucleic acids)を含むことができる。LNAは、修飾リボヌクレオチドであって、リボース糖部位の2’乃至4’炭素間に追加的なブリッジを含み、Locked形態を有し、これにより、LNAのあるオリゴヌクレオチドは、改善された熱安定性を有するようになる。
【0021】
択一的に、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、PNAs(peptide nucleic acids)を含むことができ、これは、糖−ホスフェートバックボーンの代わりに、ペプチドベースバックボーンを含む。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、他の化学的修飾を含むことができ、そのような他の化学的修飾としては、例えば、2’−O−アルキル(例えば、2’−O−メチル、2’−O−メトキシエチル)、2’−フルオロ及び4’−チオ修飾のような糖修飾;ホスホロチオエート、モルフォリノ又はホスホノカルボキシレート結合のようなバックボーン修飾(例えば、米国特許第6,693,187号及び第7,067,641号)を含む。
【0022】
他の具現例において、適合したアンチセンスオリゴヌクレオチドは、2’−O−メトキシエチル‘ギャップマー’であり、これは、5’−末端及び3’−末端に2’−O−メトキシエチル−修飾リボヌクレオチドを含み、中央に少なくとも10個のデオキシリボヌクレオチドを有する。この‘ギャップマー’は、RNAターゲットのRNase I依存性分解メカニズムを誘発させることができる。アンチセンスオリゴヌクレオチドの長さは、7〜50ヌクレオチド、好ましくは、10〜40ヌクレオチド、より好ましくは、15〜30ヌクレオチド、最も好ましくは、20〜25ヌクレオチドである。
【0023】
miR−206の機能を抑制する他のアプローチは、抑制RNA分子を投与することであって、前記抑制RNA分子は、miR−206の成熟配列に相補的な配列を含む。このような抑制RNA分子は、siRNA(small interfering RNA)、shRNA(short hairpin RNA)及びリボザイムを含む。
【0024】
本発明の医薬組成物により治療できる疾患は、多様な神経変性疾患を含み、好ましくは、アルツハイマー疾患、認知症、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病又は筋萎縮性側索硬化症であり、最も好ましくは、アルツハイマー疾患である。
【0025】
下記の実施例で立証されたように、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、miR−206の機能を抑制し、BDNF及びIGF−1のレベルを大きく増加させ、シナプス再生を増加させ、その結果、神経変性疾患、特にアルツハイマー疾患を治療する。
【0026】
本発明の医薬組成物に含まれる薬剤的に許容される担体は、製剤時に通常的に利用されるものであって、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウム、及びミネラルオイルなどを含むが、これらに限定されるものではない。本発明の医薬組成物は、前記成分の他に、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などをさらに含むことができる。適した薬剤的に許容される担体及び製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences (19th ed.、1995)に詳細に記載されている。
【0027】
本発明の医薬組成物は、経口又は非経口で投与でき、非経口投与の場合は、静脈内注入、鼻腔内注入、局所注入、脳室内注入、脊髄腔注入、皮下注入、腹腔注入、経皮投与などにより投与できる。
【0028】
本発明の医薬組成物の適合した投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性、病的状態、飲食、投与時間、投与経路、排泄速度、及び反応感応性のような要因によって多様であり、普通に熟練した医者は、所望の治療又は予防に効果的な投与量を容易に決定及び処方することができる。本発明の好ましい具現例によると、本発明の医薬組成物の一日投与量は、体重当たり、0.001mg/kg〜100mg/kgである。
【0029】
本発明の医薬組成物は、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できる方法により、薬剤的に許容される担体及び/又は賦形剤を利用して製剤化することにより、単位容量形態に製造されるか、又は多用量容器内に入れて製造できる。この際、剤形は、油性又は水性媒質中の溶液、懸濁液又は乳化液の形態であるか、エキス剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤又はカプセル剤の形態であってもよく、分散剤又は安定化剤をさらに含むことができる。
【0030】
miR−206の抑制剤として本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、miRNAをターゲットとした神経変性疾患の治療において、最初に成果を挙げたことを示唆する。
【0031】
本発明の他の様態によると、本発明は、miR−424、miR−18b、miR−135a、miR−1228、miR−320、miR−296−5p、miR−557、miR−338−5p、miR−206、miR−92a、miR−1238、miR−513a−5p、miR−423−5p、miR−188−5p、miR−140−3p、miR−575、miR−640、miR−1237、miR−191又はmiR−134のヌクレオチド配列、その相補的配列又は前記配列の断片を含む神経変性疾患の診断用キットを提供する。
【0032】
本発明のまた他の様態によると、本発明は、ヒト生物学的試料におけるmiR−424、miR−18b、miR−135a、miR−1228、miR−320、miR−296−5p、miR−557、miR−338−5p、miR−206、miR−92a、miR−1238、miR−513a−5p、miR−423−5p、miR−188−5p、miR−140−3p、miR−575、miR−640、miR−1237、miR−191又はmiR−134の発現を検出する工程を含み、これにより神経変性疾患の診断又は予後に必要な情報が提供される神経変性疾患マーカーを検出する方法を提供する。
【0033】
前記miRNA分子のヌクレオチド配列は、GenBankで確認することができる。
【0034】
最も好ましくは、前記miRNA分子は、miR−206である。
【0035】
本発明の診断キットは、多様な神経変性疾患、好ましくは、アルツハイマー疾患、認知症、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病又は筋萎縮性側索硬化症に利用でき、最も好ましくは、アルツハイマー疾患の診断に利用できる。
【0036】
本発明のキットは、上記の成分の外にも、他の成分を追加的に含むことができる。例えば、本発明のキットがPCR増幅過程に適用される場合は、本発明のキットは選択的に、PCR増幅に必要な試薬、例えば、緩衝液、DNAポリメラーゼ(例えば、Thermus aquaticus(Taq)、Thermus thermophilus(Tth)、Thermus filiformis、Thermis flavus、Thermococcus literalis又はPyrococcus furiosus(Pfu)から収得した熱安定性DNAポリメラーゼ)、DNAポリメラーゼ助因子及びdNTPsを含むことができる。本発明のキットは、上記の試薬成分を含む多数の別途パッケージング又はコンパートメントとして製作できる。
【0037】
本発明の好ましい具現例によると、本発明のキットは、マイクロアレイである。本発明の好ましい具現例によると、本発明のキットは、遺伝子増幅キットである。
【0038】
本発明のキットがマイクロアレイである場合は、マイクロアレイの固相表面にプローブが固定化されている。本発明のキットが遺伝子増幅キットである場合は、プライマーを含む。
【0039】
本発明の診断用キットで利用されるプローブ又はプライマーは、PRDX1ヌクレオチド配列に対して相補的な配列を有する。本明細書において用語‘相補的(complementary)’は、ある特定なハイブリッド形成(hybridization)又はアニーリング条件下で上述のヌクレオチド配列に選択的にハイブリッド形成できる程度の相補性を有することを意味する。したがって、用語‘相補的’は、用語‘完全に相補的(perfectly complementary)とは異なる意味を有し、本発明のプライマー又はプローブは、上述のヌクレオチド配列に選択的にハイブリッド形成できる程度であれば、一つ又はそれ以上のミスマッチ(mismatch)塩基配列を有することができる。
【0040】
プライマー又はプローブ製作時に参照すべき本発明のmiRNAのヌクレオチド配列は、GenBankで確認することができ、この配列を参照してプライマー又はプローブをデザインすることができる。
【0041】
本発明のキット又は方法により分析された前記miRNAの発現程度、例えば、RT(reverse transcriptase)−PCR又はリアルタイム(real−time)−PCR方法(参照:Sambrook、J.et al.,Molecular Cloning.A Laboratory Manual,3rd ed.Cold Spring Harbor Press(2001))により測定された発現程度が、正常対照群と比較し、1.5倍以上、好ましくは2倍以上、最も好ましくは、3倍以上の発現度を示す場合は、分析試料を採取した対象が神経変性疾患、特にアルツハイマー疾患を有しているか、発病危険度が高いと判定する。
【発明の効果】
【0042】
本発明の特徴及び利点を要約すると、以下の通りである:
(a)本発明は、神経変性疾患、特にアルツハイマー疾患に対する治療ターゲットとしてmiR−206を提供する。
(b)本発明で見出されたmiR−206ターゲットは、アルツハイマー動物モデル及びヒト脳試料において共通的に高発現したものであって、実験的誤差(artifact errors)無しに選択された、実質的な治療ターゲットである。
(c)miR−206の抑制剤として本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、miRNAをターゲットとした神経変性疾患治療において最初に成果を挙げたことを示唆する。
(d)本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、miR−206の機能を抑制し、BDNF及びIGF−1のレベルを大きく増加させ、シナプス再生を増加させ、その結果、神経変性疾患、特にアルツハイマー疾患を治療する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1a】アルツハイマー脳において、miR−206の上方調節を示す図である。(a)マイクロアレイにおいて、7月齢及び12月齢の野生型及びTg2576マウスは、互いに異なって調節されたmiRNAを示す。緑色より赤色がさらに高い発現(Z−score)を示す。miRNAが相対的発現量(Tg2576/WT)順に整列された。右側のヒートマップは、左側の長方形により表されるイメージの拡大図を示す(Mmu、Mus musculus)。
図1b】アルツハイマー脳において、miR−206の上方調節を示す図である。(b)Rea−time PCR(グラフ)及びRT−PCR(ゲル)は、miR−206レベルが、12月齢野生型マウスより12月齢Tg2576マウスでさらに高いことを示す(グループ当たりn=4)。sno202 RNAが内部コントロールとして用いた。
図1c】アルツハイマー脳において、miR−206の上方調節を示す図である。(c)miR−206のin situハイブリダイゼーションは、12月齢Tg2576マウスでmiR−206の発現が増加することを示した(スケールバー、25μm)。
図1d】アルツハイマー脳において、miR−206の上方調節を示す図である。(d)Real−time PCRは、Aβ42ペプチドの細胞培養への添加が、Neuro−2a細胞のmiR−206レベルは増加させるが、HUVECではそうではないことを示す。
図1e】アルツハイマー脳において、miR−206の上方調節を示す図である。(e)ヒト側頭皮質において、real−time PCRは、コントロール脳と比較し、アルツハイマー脳でmiR−206の上方調節を示す(グループ当たりn=4)。P<0.05及び**P<0.01。バーは、平均±標準平均誤差を示す。
図2a】miR−206によるBDNFの調節を示す。(a)BDNF 3’−UTR(BDNF#1、#2、and#3)の三ヶ所の位置がmiR−206のターゲットと予想された。miR−206のシード配列に下線表示した。
図2b】miR−206によるBDNFの調節を示す。(b)HeLa細胞を利用したルシフェラーゼ試験において、miR−206のトランスフェクションは、BDNF#3及びBDNFの全3’−UTR(tBDNF)を有するベクターのルシフェラーゼ活性を減少させる(n=6複製)。
図2c】miR−206によるBDNFの調節を示す。(c)ウェスタンブロッティング(左側)及びデンシトメトリー(densitometry)(右側)の結果から分かるように、Neuro−2a細胞及びHUVECにおいて、miR−206のトランスフェクションは、BDNFタンパク質レベルを減少させる。減少は、AM206(miR−206に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド)とコトランスフェクションさせることにより一般化された。Scr、スクランブル配列。
図2d】miR−206によるBDNFの調節を示す。(d)Neuro−2a細胞において、Aβオリゴマー処理は、BDNF mRNAの有意な減少無しにmiR−206のレベルを増加させた(グループ当たりn=6)。
図2e】miR−206によるBDNFの調節を示す。(e)Aβオリゴマーは、細胞において、BDNFタンパク質レベルを減少させ、AM206のトランスフェクションは、BDNFタンパク質レベルを回復する。Scr、スクランブル配列。
図2f】miR−206によるBDNFの調節を示す。(f)マウスプライマリー海馬ニューロンにおいて、Aβオリゴマーは、樹状突起スパイン密度の減少を誘発し、これはAM206処理により阻害された。スケールバー、10μm。
図2g】miR−206によるBDNFの調節を示す。(g)12月齢Tg2576マウスの第三脳室にCy3ラベルされたAM206を注入した。24時間後、Cy3−AM206の蛍光が海馬及び周辺組織に分布した。スケールバー、100μm。
図2h】miR−206によるBDNFの調節を示す。(h)MAP2陽性神経、Ulex−レクチン陽性内皮細胞及びGFAP陽性グリア細胞でCy3−AM206が検出された。スケールバー、20μm。
図2i】miR−206によるBDNFの調節を示す。(i)ウェスタンブロッティング(左側)及びデンシトメトリー(右側)において、AM206を脳室内注入したTg2576マウス(Tg2576−AM206)は、注入して1週後、コントロール(Tg2576−control)と比較し、全体脳BDNFのレベルが明らかに増加したことを確認することができる(グループ当たりn=4)。P<0.05、及び**P<0.01。ns、有意差なし。バーは、平均±標準平均誤差を示す。
図3a】AM206の治療効果を示す図である。(a)文脈的恐怖条件付けテストを12ヶ月に行って、テスト1週前又は3週前にスクランブルアンチセンスオリゴヌクレオチドを注入したコントロールTg2576マウス(Tg−ctr−1w及びTg−ctr−3w)のフリージングタイムは、野生型マウスより低かった。Tg2576マウスのAM206処理は、テスト1週前処理群(Tg−AM206−1w)又は3週前処理群(Tg−AM206−3w)において、両方ともフリージングタイムが増加し(グループ当たりn=6、Mann−Whitney U テストによるKruskall−Wallis分析)、これは、海馬の記憶機能が増加したことを示す。
図3b】AM206の治療効果を示す図である。(b)手がかり恐怖条件付けテストにおいて、グループ間には何の差も示さなかった(グループ当たりn=6)。点線は、音響手がかりを示す。
図3c】AM206の治療効果を示す図である。(c)Y−迷路テストにおいて、Tg−AM206−1wマウスは、Tg−ctr−1wマウスよりさらによい循環行動を示す。Tg−AM206−3wマウスは、Tg−ctr−3wマウスと類似した循環行動を示す(グループ当たりn=5)。
図3d】AM206の治療効果を示す図である。(d)シナプトフィシン(Synaptophysin)発現は、コントロールTg2576マウスよりTg−AM206−1w及びTg−AM206−3wマウスでさらに高く、このことは、AM206がシナプス密度を増加させることを示す(グループ当たりn=6)。スケールバー、200μm。
図3e】AM206の治療効果を示す図である。(e)歯状回の顆粒細胞下層におけるダブルコルチン(Dcx)陽性細胞の数(矢印)も、Tg−AM206−1w及びTg−AM206−3wマウスがコントロールTg2576マウスより高く、このことは、神経発生を増強させることを示す(グループ当たりn=6)。スケールバー、50μm。P<0.05。**P<0.01。ns、有意差なし。バーは、平均±標準平均誤差を示す。
図4a】アンタゴミアの鼻腔伝達を示す図である。(a)鼻腔を介した伝達を行って24時間後、Cy3ラベルされたAM206は、嗅球、皮質及び海馬に分散した。ビヒクルを投与したコントロール脳は、何のCy3蛍光も発現しなかった。スケールバー、50μm。
図4b】アンタゴミアの鼻腔伝達を示す図である。(b)AM206を鼻腔伝達したTg2576マウス(Tg−IND−AM206)は、1週間後にウェスタンブロッティング(左側)及びデンシトメトリー(右側)に示されたように、ビヒクルを処理したTg2576コントロール(Tg−IND−ctr)と比較し、マウスの脳全体のBDNFレベルを増加させる。
図4c】アンタゴミアの鼻腔伝達を示す図である。(c)処理1週間後、文脈的恐怖条件付けテストを行い(グループ当たりn=5)、Tg−IND−ctrよりTg−IND−AM206でフリージングタイムがさらに長かった。
図4d】アンタゴミアの鼻腔伝達を示す図である。(d)手がかり条件付けテストでは、グループ間に何の差もなかった(グループ当たりn=5)。点線は、音響手がかりを示す。
図4e】アンタゴミアの鼻腔伝達を示す図である。(e)Y−迷路テストは、AM206の鼻腔伝達が、コントロールマウスと比較し、循環行動を増加させることを示した(グループ当たりn=5)。P<0.05。バーは、平均±標準平均誤差を示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明するが、これら実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲がこれら実施例に限定されないことは、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者にとっては自明なことであろう。
【実施例】
【0045】
実験材料及び実験方法
AD(アルツハイマー疾患)モデル
本実験は、AAALAC(Association for the Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Care International、国際実験動物管理公認協会)により認可されたソウル大学病院のIACUC(Institutional Animal Care and Use Committee)の許可を得て実施した。スウェーデン二重変異(スウェーデン変異;Lys670→Asn、Met671→Leu)を含むヒトアミロイド前駆体タンパク質の695アミノ酸イソフォームをプリオンプロモーターの調節下で発現するTg2576マウス(Taconic、Hudson、NY、USA)(Hsiao et al.、1996)をAD形質転換モデルとして利用した。形質転換及び野生型マウスを、独立したケージ及び室温(25℃)で飲水に自由に摂取できるようにしながら12時間の明暗サイクル条件下で維持し、7ヶ月齢又は12ヶ月齢でmiRNA分析に利用した。
【0046】
miRNAマイクロアレイ
マウス又はヒト用miRNAマイクロアレイキットを使用して行った(Agilent miRNA Microarray 8×15K kits、Agilent、Santa Clara、CA)。マウス脳から抽出したRNAを二匹分ずつ一つに集めた。冷凍されたヒト側頭皮質(temporal cortex)サンプルは、ボストン大学アルツハイマー病センター(Boston University Alzheimer’s Disease Center、Boston、MA)の脳バンクから得た。本発明者らは、マウスサンプルを下記のRNAクオリティー基準に適したものを利用した:260/280比率>1.8、260/230比率>2.0、28S/18S rRNA比率>1.6、及びRNA完全性数(RNA integrity number)>8.0。ヒト剖検サンプルは、RNAの死後分解(post−mortem degradation)を経るため、アルツハイマーとコントロールサンプルは、死後の期間を合わせた。
【0047】
Real−Time PCR
miRNAのReal−time PCRは、miRNA検出キット(mirVana qRT−PCR miRNA Detection Kit)及びプライマーセット(Applied Biosystems、Foster City、CA)を利用して行った。内在性snoRNA202検出キット(endogenous snoRNA202 detection kit、Ambion−Applied Biosystems)を使用してレベルを測定し、miRNAレベルの規準化に使用した。miRNAを、35サイクルで増幅した後、1.0%アガーロスゲル電気泳動で可視化した。BDNF mRNA発現のためのReal−time PCRは、遺伝子発現キット(TaqMan gene expression assay、Applied Biosystems)のプライマー及びプローブを使用して行った。
【0048】
miRNAのin situ ハイブリダイゼーション
ロックド核酸(LNAs)を利用して、miRNAのin situにおける発現を分析した。前記LNAsは、miRNA検出に必要な短いプローブに対してハイブリッド形成温度を大きく増加させ、強化された厳密条件(stringency)が利用されるようにするバイ−サイクリックRNA類似体である(Obernosterer et al.、2007)。miRNA検出に利用されるLNAプローブは、Exiqonで購入し、DIG 30 endラベリングキット(Roche)を利用して凍結切片化組織をラベリングした(Obernosterer et al.、2007)。
【0049】
miRNAのターゲット遺伝子予測
miRNA成熟配列データベースをmiRBase(http://www.mirbase.org)から得た。マウス遺伝子3’−非解読部位(UTR)にあるmiRNAターゲット候補位置を見つけるために、3種のターゲット予測プログラムを利用した:TargetScan(http://www.targetscan.org)(Lewis、2005);PicTar(http://pictar.mdc−berlin.de/)(Krek、2005)、及びmicroT(http://diana.cslab.ece.ntua.gr/microT/)(Kiriakidou、2004)。
【0050】
アルツハイマーマウスのアンタゴミア(antagomir)処理
マウスに1%ケタミン(ketamine、30mg/kg)及びキシラジンヒドロクロライド(4mg/kg)を腹腔注射してマウスを麻酔した。30ゲージハミルトン注射器を使用して、0.5nmolのアンタゴミアAM206(2’−O−methylated−5’−cca cac acu ucc uua cau ucc a−3’)又はスクランブル配列対照アンタゴミア(2’−O−methylated−5’−aag gca agc uga ccc uga agu u−3’)(Bioneer、Daejon、South Korea)を含む1μLのPBS(phosphate−buffered saline)を、下記の座標で第三脳室に5分間注入した:ブレグマ(bregma)から前後方向(antero−posterior)、−1.06mm;左右方向(medio−lateral)、0.00mm;背腹方向(dorso−ventral)、−2.4mm。注射針を、注入後さらに5分間座標に維持した後、穏やかに除去した。AM206の拡散を可視化するために、マウスに、AM206の代わりにCy3ラベルされたAM206(Cy3−2’−O−methylated−5’−cca cac acu ucc uua cau ucc a−3’、Bioneer)を注入した。AM206の鼻腔投与のために、マウスを麻酔して、仰臥位で頭部を直立姿勢(upright position)にした。AM206又はCy3ラベルされたAM206 5nmolを含む0.1%v/vジエチルピロカーボネートで処理された蒸留水24μLを2分毎に各外鼻孔にピペットで4μLずつ落として投与した(計6分画(fractions))。コントロールTg2576マウスは、週齢を合わせて同量のビヒクル(vehicle)で処理した。
【0051】
文脈的及び手がかり的恐怖条件付け(Contextual and cued fear conditioning)
恐怖条件付けは、従来方法(Jeon et al.、2008)にしたがって、恐怖条件付けショックチャンバシステム(Coulbourn Instruments、Whitehall、PA、米国)で実施した。条件付けのために、マウスを恐怖条件付け装置チャンバに5分間置いた後、28−sアコースティック条件付け刺激を与えた後、非条件付け刺激として床グリッドに2秒間0.7mAショックを印加した。前記過程を60秒間隔で3回繰り返した。文脈的記憶を評価するために、条件付け24時間後、マウスをアコースティック刺激無しに訓練装置に再び移した後、萎縮行動を5分間観察した。手がかり記憶を評価するために、条件付け24時間後、異なる匂い、床及び視覚を有するチャンバにマウスを移して、その行動を5分間モニタリングした。前記試験の最終3分間、動物をアコースティック刺激に露出させた。呼吸運動を除いた運動の欠如を示すクラウチング位置で定義される萎縮行動の長さを測定し、恐怖反応を定量化した(Jeon et al.、2008)。
【0052】
Y迷路試験
Y−迷路試験を従来の方法に従って行った(Sarter et al.、1988)。迷路を黒色プラスチックで、それぞれのアームを長さ35cm、高さ15cm、幅5cmとして製作して、同一な角度に配置した。マウスの一つのアームの末端に配置して、迷路を通って5分間自由に移動するようにした。アーム進入のシリーズを視覚的に記録し、マウスの踵がアーム内に完全に位置した場合を、アーム進入に成功したと評価した。交差回数(Alternation)は、オーバーラッピングトリプレットセットの三つのアームへの連続的な進入で定義した。%交差回数は、実際:可能性(actual to possible)の比で計算した。
【0053】
ウェスタンブロッティング
麻酔されたマウスを断頭で屠殺し、脳を直ちに摘出した。各脳のホモジネートに対して、従来の方法によって、ウェスタンブロッティングのために処理し(Lee et al.、2009)、この場合、BDNF(brain−derived neurotrophic factor、Abcam)、IGF−1(insulin−like growth factor−1、Abcam)、Notch3(Abcam)、MEOX2(Abcam)又はβ−アクチン(Santa Cruz Biotechnology)に対する抗体を利用した。増強化学発光試薬(Pierce、Rockford、IL、USA)でブロットを現像し、デジタル的にスキャニングした(GS−700;Bio−Rad、Hercules、CA、米国)。それぞれのバンドのβ−アクチンに対する相対的光学密度を、Molecular AnalystTMソフトウェア(Bio−Rad)を利用して測定した。脳ホモジネートにおいてAβ40及びAβ42のレベルは、Aβ Ultrasensitive ELISAキット(Invitrogen)を利用して測定した。
【0054】
Tg2576マウスの組織学分析
マウスを麻酔して、心臓に10mLの冷たい塩水及び10mLの4%パラホルムアルデヒドを含む0.1M PBSを灌流させた。20μm厚の切片を4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール、ハリエニシダ(Ulex europaeus)Iレクチン(Vector Laboratories、Burlingame、CA)又はMAP2(microtubule−associated protein 2、Chemicon−Millipore、Billerica、MA)、GFAP(glial fibrillary acidic protein、Santa Cruz Biotechnology、Santa Cruz、CA)、シナプトフィシン又はダブルコルチン(Abcam、Cambridge、MA)に対する抗体で染色した。海馬に対するシナプトフィシン染色の光学的密度を求めるために、各マウスから三つの連続した冠状面組織切片(500μm間隔、ブレグマから前後方向に約−1.5mmから−2.5mm)を、Image−J(National Institutes of Health、Bethesda、MD)を使用して分析した。値は、コントロールTg2576マウスとの相対値で示した。隣り合う三つの海馬セクション(500μm間隔)において、歯状回の顆粒下層でダブルコルチン免疫反応細胞の数を測定して、歯状回の長さ(1200μm)により規準化した。
【0055】
二重ルシフェラーゼ試験(Dual luciferase assay)
可能なターゲット遺伝子の3’−UTR位置に対するオリゴヌクレオチドを、5’−末端及び3’−末端にSacI及びXbaIの制限酵素サイトを含めてデザインした。その後、pmirGLO二重ルシフェラーゼmiRNAターゲット発現ベクター(Promega、Madison、WI)でサブクローニングした。BDNFの全体3’−UTRシーケンス(SwitchDB、Menlo Park、CA)を有するトランスフェクション用のルシフェラーゼレポーターコンストラクションを用いた。24ウェルプレートにHeLa細胞(ウェル当たり5×10細胞)を撒いて24時間培養後、細胞を30pmolのmiRNA−206二重鎖(又はスクランブルされたmiRNA二重鎖;Bioneer、Daejon、South Korea)及び50ngのルシフェラーゼ発現ベクターでリポフェクタミン(Lipofectamine 2000、Invitrogen、Carlsbad、CA)を利用してトランスフェクションした。ホタル(Firefly)及びウミシイタケ(Renilla)ルシフェラーゼ活性は、48時間後、二重ルシフェラーゼレポーター1000アッセイシステム(Promega)を使用して評価し、規準化した値(ホタルルシフェラーゼ活性/ウミシイタケルシフェラーゼ活性)を分析のために用いた。
【0056】
樹状突起スパイン(dendritic spine)密度の分析
E17 C57BL/6マウス胚芽からプライマリー海馬ニューロンを培養した。ニューロンを、ポリリジンコートされたカバースリップ上で、星状細胞フィーダー層上に懸濁することで培養し、N2培地(Invitrogen)中で維持した。Aβオリゴマーを作製するために、5mM Aβ42ペプチド又はスクランブルAβペプチド(Millipore)を含むDMSO(dimethylsulfoxide)を、冷たい培養培地を用いて100μMに希釈した後、10分間超音波処理して、4℃で24時間放置した。培養3週後、ニューロンを5μM Aβオリゴマーで処理した。これと同時に、培養培地に500nMのAM206又はスクランブルアンタゴミアを加えた。48時間後、ニューロンを40分間4%パラホルムアルデヒドで固定し、ローダミンラベルされたファロイジン(Invitrogen)で染色して、共焦点顕微鏡(LSM510 Meta Confocal microscope、Carl Zeiss)で樹状突起スパインを観察した。各グループで30個の細胞から無作為に選別された100個の樹状突起セグメントにおけるスパインの数をカウントした。密度は、10μmの樹状突起長さに対して算出した。
【0057】
データ分析及び統計
miRNA発現のためのヒートマップ(Heat maps)をZ−スコアを利用して製作した。二つのグループ間の比較のためにMann−Whitney U テストを用い、三つ以上のグループ間の比較のためにKruskall−Wallis変化分析を用いた。また、死後グループ間の比較のために、Mann−Whitney U テストを用いた。全ての統計的分析は、SPSS(version 17.0、SPSS Inc.、Somers、NY)を用いて行った。0.05未満の両側検定p値が統計的に有意であることを示す。
【0058】
実験結果
アルツハイマーモデルにおけるmiR−206の上方調節
アルツハイマーモデルにおいて変化したmiRNAの一つがBDNFの調節に重要なmiRNAであるという仮説に基づいて、本発明者らは、まずマイクロアレイを利用し、7月齢及び12月齢の野生型(WT)及びアルツハイマーの形質転換モデルのTg2576マウス間のmiRNAを比較した(図1a)。Tg2576マウスにおいて、7月齢では増加したAβ42発現を示し、12月齢では記憶に障害があることが確認された。7月齢及び12月齢マウスにおいて最も上方調節されたmiRNAは、miR−206であることを確認した。Real−time PCRにより12月齢Tg2676マウスでmiR−206の上方調節が確認された(図1b)。
【0059】
in situハイブリダイゼーションも、12月齢Tg2576マウスの脳でmiR−206の拡散した発現が増加することを示した(図1c)。これと同様に、real−time PCRは、Neuro−2aマウスの神経芽細胞腫細胞においてAβ42がmiR−206のレベルを増加させるが、HUVEC(human umbilical vein endothelial cells)ではそうではないことを示した(図1d)。このような知見がヒトアルツハイマー疾病に関連があるかどうかを評価するため、アルツハイマー患者(Braak stage V、clinical dementia rating[CDR]3)及びほぼ同じ年齢と性別の四人の非アルツハイマーコントロール群(Braak stage I、CDR0)からのヒト上側頭皮質(superior temporal cortex)サンプルでmiR−206のレベルを測定した。我々の脳バンクにおいて、略3時間〜3.5時間の死後期間は、剖検でヒト脳組織を得る最も短い実際的な時間である。ヒト剖試料は、RNAの死後分解を経るため、28S/18S rRNA比率及びRNA integrity numberは、マウスの場合、死後2時間後に減少する。アルツハイマー及びコントロールサンプルは、死後間隔を揃えて比較されて、このような条件でreal−time PCRを通じて、アルツハイマー脳においてmiR−206が上方調節されたことを確認した(図1e)。
【0060】
ADモデルにおけるアンタゴミア−206の治療学的応用
アルツハイマーモデルにおけるmiR−206の持続的な上方調節は、これを利用したターゲット遺伝子探索を可能にし、実際、TargetScan、PicTar及びmicroTは、マウス及びヒト3’−UTRs部位でBDNFをコーディングする三つの推定miRNA−206のターゲットを発見した(図2a)。本発明者らは、Tg2576マウスの月齢によってmiR−206のレベル増加及びBDNFのタンパク質レベルが減少することを見出し、これを裏付けた。
【0061】
さらに試験するために、マウスBDNF mRNAの推定結合部位(BDNF#1、#2、#3)及びBDNF mRNAの3’−UTRを含む、ターゲットとなり得る位置を有するmiR−206及びルシフェラーゼベクターでHeLa細胞をトランスフェクションさせた。BDNF mRNAの全3’−UTR及びBDNF#3を有するベクターを含む細胞において、miR−206のトランスフェクションは、ルシフェラーゼ活性を減少させ、このことは、miR−206が3’−UTRへの結合を介して直接的にBDNF mRNAの翻訳を抑制することを示す(図2b)。また本発明者らは、miR−206を中和するアンタゴミアAM206でコトランスフェクションしたNeuro−2a細胞及びHUVECにおいて、BDNFのタンパク質レベルが減少するということを見出した(図2c)。Neuro−2a細胞においてAβオリゴマーの処理は、miR−206を増加させ、BDNF mRNAレベルの減少無しにBDNFタンパク質レベルを減少させ、このことは、BDNFの翻訳抑制を示す(図2d)。AβオリゴマーによるBDNFタンパク質レベルの減少は、細胞をAM206処理することにより回復した(図2e)。プライマリーマウス海馬ニューロンにおいてAβオリゴマーは、AM206処理を通じて回復された樹上突起の密度を減少させた(図2f)。
【0062】
このような結果は、miR−206によりBDNF発現が下方調節され得、したがって、アルツハイマーが進行する可能性を示唆する。インビボ(in vivo)でmiR−206の機能を調べるために、Cy3ラベルされたAM206(Cy3−AM206)を12月齢Tg2576マウスの第三脳室に注入して、Cy3−AM206は、一日後、海馬及び周辺組織に拡散したことが観察された(図2g)。Ulex−レクチン陽性内皮細胞、GFAP(glial fibrillary acidic protein)陽性グリア細胞及びMAP2陽性神経細胞によりCy3−AM206が検出された(図2h)。実際、スクランブルアンタゴミアと比較し、AM206を脳室内に注入した12月齢Tg2576マウスは、1週後にBDNFの脳レベルが非常に増加した(図2i)。さらに、Tg2576マウスのAM206注入は、CREB(cAMP response element binding)を活性化させ、c−JNK(Jun N−terminal kinase)及びGSK−3β(glycogen synthase kinase 3β)を非活性化させた。これは、BDNFシグナリングが増加することを示す。
【0063】
アンタゴミア−206は、ADマウスにおいて記憶力及びシナプス再生を増加させた
次いで、本発明者らは、BDNF増強の治療効果を、12ヶ月目の記憶テストの各1週前又は3週前にTg2576マウスの第三脳室にAM206を注入することによって確認することを探求した。文脈的恐怖条件付けテストにおいて、Tg2576コントロールマウスのためのフリージングタイムが野生型マウスに比べてさらに低く、このことは、Tg2576マウスの海馬記憶に障害があることを示す(図3a)。注入後、1週及び3週目のフリージングタイムは、両方ともコントロールTg2576マウスよりAM206処理したTg2576マウスの方がさらに高く、このことは、少なくとも3週間AM206が海馬記憶機能を増加させることを示す。扁桃体が重要な役割をする手がかり条件付け試験においては、グループ間に差はなかった(図3b)。Y−迷路テストにおいて、注入1週後にAM206で処理されたTg2576マウスは、Tg2576コントロールマウスよりさらに良好な行動を示した(図3c)。その反面、AM206は、皮質又は海馬の全体プラーク面積には何の影響もないことを、チオフラビンS染色により確認し、またAβ40又はAβ42の脳レベルには影響を及ぼさないことを、ELISAで測定して確認した。したがって、AM206マウスによる記憶向上は、Aβレベルの変化によるものというより、メカニズムによるものであることが分かる。
【0064】
AM206がBDNF発現を増加させるため、海馬シナプトフィシンレベル及びダブルコルチン陽性細胞の数への影響を測定した。Tg2576コントロールマウスでは、野生型マウスに比べシナプトフィシンレベルが低かった(図3d)。テスト1週前又は3週前のTg2576マウスへのAM206注入は、Tg2576コントロールマウスと比較し、シナプトフィシン発現を増加させ、このことは、シナプス密度を増加させることを示す。さらに、Tg2576コントロールマウスにおいて、海馬歯状回においてダブルコルチン陽性細胞が野生型マウスより少数であるにもかかわらず、染色1週前又は3週前にAM206を注入したマウスは、Tg2576コントロールマウスよりさらに多いダブルコルチン陽性細胞を示した(図3e)。このことは、海馬の神経発生が増加することを示す。
【0065】
アンタゴミアの鼻腔投与効果
治療上の鼻腔投与は、嗅覚神経経路に沿って鼻腔から血液脳関門(blood−brain barrier)を介して直接的に脳に伝達することにより、薬物を迅速に脳にアクセスさせることが容易であるため、薬物伝達方法のうち、この便利な非侵襲性方法は、アルツハイマー患者に効果的である。本発明者らは、アンタゴミアが同様にこのルートを経由して伝達されるかどうかを評価した。実際に、鼻腔伝達されたCy3ラベルAM206は、24時間後、マウスの嗅球、皮質及び海馬から検出された(図4a)。多数のMAP2陽性神経細胞、Ulex−レクチン陽性内皮細胞及び少数のGFAP陽性グリア細胞がCy3−AM206でラベルされた。鼻腔投与されたAM206は、ビヒクル投与から1週後のTg2576マウスと比較して、BDNFの脳レベルを増加させた(図4b)。さらに、1週後のY−迷路テスト(図4e)及び恐怖条件付けテスト(図4c及び4d)による測定結果によると、AM206の鼻腔伝達は、マウスの記憶能力を増加させた。これらの結果は、鼻腔を介したアンタゴミアの脳への伝達が実現可能であることを示す。
【0066】
考察
アルツハイマー疾患におけるmiRNAの役割及び変化についての以前の研究では、BACE1/β−セクレターゼの発現又はNF−κB誘導炎症を調節するmiR−29a/b−1、miR−107、miR−146a、miR−298及びmiR−328などの多様なmiRNAを同定した。miR−206は、通常、筋肉組織で発現し、筋形成及び神経筋接合部の再生に関与する。miR−206のレベルは、正常の脳では非常に低いが、アルツハイマーでは異常に高く発現する。実験的に、脳におけるmiR−206の上方調節は、脳虚血及び神経毒性への露出後に観察される。ヒト場合、筋萎縮性側索硬化症患者の前頭皮質でmiR−206発現が増加し、統合失調症患者では、miR−206の遺伝的変異が観察された。さらに、本発明の結果は、miR−206がBDNFレベルを抑制することにより、アルツハイマーの発病にも関与するということを示す。したがって、本発明は、アルツハイマーの治療にmiR−206調節因子を利用してアプローチしなければならない明白な理由を提供する。
【0067】
アルツハイマーモデルにおいて、レンチウイルスベクターを介するか、タンパク質注入ポンプ又は神経幹細胞を利用する場合、BDNFを大脳に伝達することができ、記憶能力及びシナプス密度を向上させる。しかし、神経栄養因子を脳に伝達することは、侵襲的な施術が必要であり、中和抗体の発生により、苦痛を受けるようになる。本発明は、AM206の鼻腔伝達が脳内BDNFを向上させるための実現可能な代替方法であることを示し、アンタゴミアを利用した同様のアプローチを通じて、他の脳疾患にも応用可能性を提示する。
【0068】
−参考資料−
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【0069】
本発明の好ましい実施例について記述したが、本発明の精神の範囲内にあるそれらの変形及び修正が、当業者にとって明白であることは理解されるであろう。また、本発明の範囲は、添付された特許請求の範囲及びそれらの均等物によって決定されることは理解されるであろう。
図1a
図1b
図1c
図1d
図1e
図2a
図2b
図2c
図2d
図2e
図2f
図2g
図2h
図2i
図3a
図3b
図3c
図3d
図3e
図4a
図4b
図4c
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図4e
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]