(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5710003
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】スプリングピン
(51)【国際特許分類】
F16B 21/12 20060101AFI20150409BHJP
F02M 59/44 20060101ALI20150409BHJP
【FI】
F16B21/12 K
F02M59/44 F
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-529602(P2013-529602)
(86)(22)【出願日】2011年8月31日
(65)【公表番号】特表2013-543089(P2013-543089A)
(43)【公表日】2013年11月28日
(86)【国際出願番号】EP2011065013
(87)【国際公開番号】WO2012038216
(87)【国際公開日】20120329
【審査請求日】2013年3月25日
(31)【優先権主張番号】102010041340.2
(32)【優先日】2010年9月24日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】アンジェロ サンタマリア
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ドゥット
(72)【発明者】
【氏名】ヨヘン アレカー
【審査官】
村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−329315(JP,A)
【文献】
実開昭59−142487(JP,U)
【文献】
独国特許出願公開第02505878(DE,A1)
【文献】
米国特許第03442170(US,A)
【文献】
米国特許第01810749(US,A)
【文献】
実開昭58−106523(JP,U)
【文献】
特開2010−077892(JP,A)
【文献】
独国特許発明第19927856(DE,C2)
【文献】
米国特許第03630261(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 21/12
F02M 59/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空円筒状の収容部(28)内にプレス嵌めされるスプリングピンであって、該スプリングピン(30)はスリーブ状に形成されていて、その周面に、前記スプリングピン(30)の長手方向で貫通する少なくとも1つのスリット(44;54)を有しており、該スリットによって前記スプリングピン(30)は半径方向で弾性的に変形可能であるスプリングピンにおいて、
前記スプリングピン(30)の半径方向の弾性はその全長(L)にわたって変化していて、前記スプリングピン(30)の半径方向の弾性率は、前記収容部(28)内に配置される長さ区分(x)の領域では、前記収容部(28)の外側に配置された端部領域よりも小さく、
前記貫通するスリット(44;54)に加えて付加的に、該スリットに対して周方向でずらされて配置された少なくとも1つの別のスリット(46;56)を有していて、該別のスリットは、前記スプリングピン(30)の全長(L)の一部(y)にわたってのみ延びていて、
少なくとも1つの前記別のスリット(46;56)の、前記スプリングピン(30)の周方向の幅(c)は、前記スプリングピン(30)のプレス嵌め方向(32)で増大していることを特徴とするスプリングピン。
【請求項2】
前記スプリングピン(30)の半径方向の弾性は、前記スプリングピン(30)を前記収容部(28)にプレス嵌めする方向(32)で増大する、請求項1記載のスプリングピン。
【請求項3】
少なくとも1つの前記別のスリット(46;56)は、前記スプリングピン(30)の周面に、前記貫通するスリット(44;54)の少なくともほぼ直径上反対側に配置されているか、又は、複数の前記別のスリット(46;56)は、前記スプリングピン(30)の周面にわたって少なくともほぼ均一に分配配置されている、請求項1又は2記載のスプリングピン。
【請求項4】
少なくとも1つの前記別のスリット(46;56)は、前記スプリングピン(30)のプレス嵌め方向(32)側端部を起点として延びている、請求項1から3までのいずれか1項記載のスプリングピン。
【請求項5】
少なくとも1つの前記別のスリット(56)の端部領域は、丸み(R)を有して形成されている、請求項1から4までのいずれか1項記載のスプリングピン。
【請求項6】
前記スプリングピン(30)の壁厚さ(s)がプレス嵌め方向(32)で減少する、請求項1から5までのいずれか1項記載のスプリングピン。
【請求項7】
内燃機関の燃料噴射装置用の燃料高圧ポンプであって、ケーシング(10)を有していて、該ケーシング(10)内には少なくとも1つのポンプエレメント(18)が配置されていて、該ポンプエレメント(18)は、駆動軸(14)によって行程運動するように駆動される1つのポンプピストン(20)を有しており、前記駆動軸(14)は前記ケーシング(10)の外側で、連結装置(26)を介して内燃機関の駆動装置に結合可能である、内燃機関の燃料噴射装置用の燃料高圧ポンプにおいて、
前記ポンプピストン(20)の所定の行程位置をマーキングするために、前記駆動軸(14)の、前記ケーシング(10)の外側に位置する領域に設けられた収容部(28)に、スプリングピン(30)がプレス嵌めされていて、該スプリングピン(30)は請求項1から6までのいずれか1項記載のように形成されている、内燃機関の燃料噴射装置用の燃料高圧ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景技術
本発明は、請求項1の上位概念に記載の形式のスプリングピンを起点としている。
【0002】
このようなスプリングピンはISO規格13337により公知である。このようなスプリングピンは、中空円筒状の収容部、例えば孔にプレス嵌めするために設けられている。スプリングピンはスリーブ状に形成されていて、その周面に、スプリングピンの長手方向で貫通する1つのスリットを有している。このスリットによってスプリングピンには半径方向の弾性が得られ、このような弾性により、収容部へのピンのプレス嵌めが容易になる。スリットはスプリングピンの全長にわたって一定の幅を有している。このスプリングピンがその全長の一部にわたってしか収容部にプレス嵌めされておらず、従ってスプリングピンの一部は収容部から突出している場合には、この突出部分は、収容部内に配置された部分よりも拡開されるので、この突出部分が変形されていることが確認された。スプリングピンの周りに殆ど構成スペースが存在しない場合、収容部の外側に位置するスプリングピンの部分は別の構成部分と接触する恐れがあるので、この部分の変形は問題となり得る。スプリングピンは例えば燃料高圧ポンプで使用され、この場合、スプリングピンは、駆動軸に設けられた収容部内にプレス嵌めされる。燃料高圧ポンプは、それぞれ1つのポンプピストンを備えた単数又は複数のポンプエレメントを有しており、このポンプピストンは駆動軸によって行程運動するように駆動される。内燃機関に燃料高圧ポンプを組み付ける場合、駆動軸は内燃機関の駆動装置、例えば内燃機関のシャフトに結合される。この場合、ポンプピストンは、燃料高圧ポンプの燃料圧送を、内燃機関において必要な燃料噴射に同期的に行うために、内燃機関の駆動装置に関して規定された位置に位置していなければならない。この場合、スプリングピンによって、ポンプピストンが例えばその上死点にある場合の駆動軸の回転位置がマーキングされる。駆動軸は、連結装置を介して内燃機関の駆動装置に結合されて、この場合、スプリングピンは連結装置の近傍に位置しており、その収容部から突出する部分は連結装置に接触する恐れがあり、これによりノイズ及び損傷が生じる恐れがある。
【0003】
発明の開示
発明の利点
これに対し、請求項1の特徴を備えた本発明のスプリングピンは、スプリングピンの収容部外側に位置する部分の変形が僅かであるように保つことができるという利点を有している。
【0004】
従属請求項には本発明によるスプリングピンの好ましい構成及び別の構成が記載されている。請求項3の構成によれば、スプリングピンの変化可能な弾性を簡単に得ることができる。請求項4には、変化可能な弾性を得るためのスプリングピンの選択的な構成が記載されている。
【0005】
次に、本発明の実施例を図面につき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】燃料高圧ポンプを概略的に示した縦断面図である。
【
図2】燃料高圧ポンプのスプリングピンの第1実施例を示した側面図である。
【
図3】スプリングピンの第2実施例を示した図である。
【
図4】スプリングピンの第3実施例を示した図である。
【0007】
実施例の説明
図1には、内燃機関の燃料噴射装置用の燃料高圧ポンプが示されている。このポンプはケーシング10を有していて、このケーシング10内には回転駆動される駆動軸14が回転軸線15を中心として回転可能に支承されている。駆動軸14は少なくとも1つのカム16を有していて、このカムは多重カムであっても良い。このポンプは少なくとも1つの又は複数のポンプエレメント18を有していて、ポンプエレメント18はそれぞれ1つのポンプピストン20を有している。このポンプピストン20は、駆動軸14の回転軸線15に対して少なくともほぼ半径方向で行程運動を行うように、駆動軸14のカム16によって少なくとも間接的に駆動される。駆動軸14はケーシング10から突出しており、連結装置26を介して内燃機関の駆動装置に結合可能である。この駆動装置は、内燃機関のシャフトであって良く、例えば内燃機関のカムシャフト又はクランクシャフト又はバランスシャフトであって良い。燃料高圧ポンプが1つ又は2つのポンプエレメント18しか有していない場合は特に、ポンプエレメント18による燃料圧送は、内燃機関の燃料噴射に同期して行われる必要がある。このような理由から、駆動軸14と内燃機関のシャフトとは互いに正確に規定された角度位置において連結装置26を介して互いに結合されていなければならない。ポンプピストン20の位置をマーキングするために、駆動軸14の、ケーシング10から突出した端部領域に設けられた収容部28にはスプリングピン30がプレス嵌めされている。スプリングピン30が所定の回転位置にある場合、例えば上方に向かって垂直に延びている場合、ポンプピストン20は所定の行程位置、例えば上死点に位置している。
【0008】
スプリングピン30の端部は、例えば駆動軸14に設けられた孔である収容部28から突出している。連結装置26はスプリングピン30の近傍に位置しているので、収容部28から突出したスプリングピン30の端部が著しく変形されている場合、連結装置26はスプリングピン30に接触する恐れがある。
【0009】
スプリングピン30は、通常の標準的なスプリングピン同様にばね鋼から製造されていて、スリーブ状であって、半径方向弾性変形可能に形成されていて、収容部28内に矢印方向32でプレス嵌めされている。しかしながらスプリングピン30はその全長Lにわたって収容部28内にプレス嵌めされているのではなく、部分長さxにわたってのみプレス嵌めされていて、プレス嵌め方向32とは反対側のスプリングピン30の端部領域は収容部28から突出している。本発明によれば、スプリングピン30の半径方向の弾性はその全長Lにわたって一定ではなく、異なっている。特に、スプリングピン30の半径方向の弾性率は、収容部28内に配置される長さ区分xの領域では、収容部28の外側に配置された端部領域よりも僅かである。
【0010】
図2には、第1実施例によるスプリングピン30が示されている。スプリングピン30はスリーブ状に形成されていて、その周面に、スプリングピン30の全長Lにわたって貫通している1つのスリット34を有している。このスリット34は、スプリングピン30の周方向で見て、スリット34の幅bがプレス嵌め方向32で増大するように形成されていて、即ち、スリット34は、プレス嵌め方向32とは反対側の端部における幅b1を起点として、プレス嵌め方向32側の端部における幅b2となるように幅広になる。これにより、スプリングピン30の半径方向の弾性率は、プレス嵌め方向32の側の端部領域で最小であり、プレス嵌め方向32とは反対側の端部領域で最大である。従ってスプリングピン30は、プレス嵌め方向32側の、収容部28内に配置された長さ区分xの領域では、プレス嵌め方向32とは反対側の端部領域におけるよりも半径方向で圧縮され易い。収容部28にスプリングピン30をプレス嵌めする際には、収容部28内に位置するスプリングピン30の領域xは弾性的に圧縮され、収容部28の外側にとどまるスプリングピン30の端部領域は拡開されない、または殆ど拡開されない。
【0011】
図3には、第2実施例によるスプリングピン30が示されている。この場合、スプリングピン30はその全長Lにわたって貫通する1つのスリット44を有しており、このスリット44は周方向で見て、ほぼ一定の幅bを有している。この貫通するスリット44に加えて付加的に、スプリングピン30はこのスリット44に対して周方向でずらされて配置された少なくとも1つの別のスリット46を有しているが、このスリット46は、スプリングピン30の全長Lの一部にわたってしか延びていない。好ましくはスリット44に対して、直径上反対側のスプリングピン30の周面に位置する1つだけの別のスリット46が設けられていて良い。選択的には、スプリングピン30の全周にわたって好ましくは均一に分配配置された2つ又はそれ以上の別のスリット46が設けられていても良い。少なくとも1つの別のスリット46は、プレス嵌め方向32側のスプリングピン30の端部から長さyにわたって延びている。スプリングピン30の少なくとも1つの別のスリット46の長さyは、例えば、収容部28内に配置されているスプリングピン30の長さxよりも小さいか又は、長さxと少なくともほぼ同じである。少なくとも1つの別のスリット46はその全長yにわたってほぼ一定の幅cを有していて、このスリット46はほぼ長方形に形成されている。少なくとも1つの別のスリット46の端部は、長方形の延在ではなく、円形に形成されていても良い。
【0012】
図4には、第3実施例によるスプリングピン30が示されている。第3実施例では、第2実施例の場合と同様に、ほぼ一定の幅bを有する貫通するスリット54に加えて付加的に、このスリット54に対して周方向でずらされて配置された少なくとも1つの別のスリット56が設けられている。少なくとも1つの別のスリット56は、スプリングピン30のプレス嵌め方向32側端部から長さyにわたって延びている。スプリングピン30の少なくとも1つの別のスリット56の長さyは、例えば、収容部28内に配置されているスプリングピン30の長さxよりも小さいか又は、長さxと少なくともほぼ同じである。少なくとも1つの別のスリット56の幅cは、スプリングピン30のプレス嵌め方向32側端部から、プレス嵌め方向32とは反対側に向かって減少しているので、スリット56は細くなっている。少なくとも1つの別のスリット56はほぼ三角形状に形成されている。少なくとも1つの別のスリット56の端部は、曲率半径Rを有する丸みを有して形成されている。第2実施例と同様に、好ましくはスリット54の少なくともほぼ直径上反対側に位置する1つだけの別のスリット56が設けられていて良く、または、スプリングピン30の全周にわたって好ましくは少なくともほぼ均一に分配配置されている複数の別のスリット56が設けられていて良い。
【0013】
上述した構成に対して選択的又は付加的に、スプリングピン30の壁厚さsはスプリングピン30の全長Lにわたって異なっていても良い。特に、スプリングピン30の壁厚さsはプレス嵌め方向32で減少し、これにより、スプリングピン30の半径方向の弾性率はプレス嵌め方向32で減少する。