特許第5710010号(P5710010)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5710010自動定点保持型浮体構造体のための配電システム、当該配電システムを有する浮体構造体、および、当該配電システムを用いる配電方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5710010
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】自動定点保持型浮体構造体のための配電システム、当該配電システムを有する浮体構造体、および、当該配電システムを用いる配電方法
(51)【国際特許分類】
   H02H 3/26 20060101AFI20150409BHJP
【FI】
   H02H3/26 301A
【請求項の数】14
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-534250(P2013-534250)
(86)(22)【出願日】2011年10月12日
(65)【公表番号】特表2013-540416(P2013-540416A)
(43)【公表日】2013年10月31日
(86)【国際出願番号】EP2011067759
(87)【国際公開番号】WO2012052325
(87)【国際公開日】20120426
【審査請求日】2013年6月18日
(31)【優先権主張番号】10187884.1
(32)【優先日】2010年10月18日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ヘーヴェン
【審査官】 馬場 慎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−167647(JP,A)
【文献】 特開2009−55763(JP,A)
【文献】 特開昭62−207130(JP,A)
【文献】 特開平1−311820(JP,A)
【文献】 特開平6−86453(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 3/26
H02H 7/26
G01R 31/08
H02H 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動定点保持型浮体構造体のための配電システムであって、当該配電システムは、
負荷(123)が接続可能な第2のバス(103)を含む複数のバス(101、103、105、107)と、
第1のスイッチ(111)および第2のスイッチ(113)を含む複数のスイッチ(109、111、113、115)と、を有しており、
前記複数のバスは前記複数のスイッチを間に介してリング(117)を形成するよう接続されており、前記第2のバスは前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとの間に接続されており、
前記第1のスイッチを介して前記第2のバスに向かう方向に流れる第1の電流(149)が、所定の持続時間よりも長く所定の電流しきい値を超え、かつ、前記第2のスイッチを介して前記第2のバスに向かう方向に流れる第2の電流(145)が、前記所定の持続時間よりも長く前記所定の電流しきい値を超える場合、前記配電システムは前記第1のスイッチを開き、同時に前記第2のスイッチを開き、これにより、前記第2のバスを前記リングから切り離すように構成されている、配電システムにおいて、
前記第1のスイッチを介して前記第2のバスから離れる方向に流れる第1の逆方向性電流が、前記所定の持続時間よりも長く前記所定の電流しきい値を超える場合には、前記第1のスイッチは、前記第2のスイッチが開くことを阻止するための阻止信号を前記第2のスイッチに送るように構成されている、
配電システム。
【請求項2】
前記第1のスイッチは前記第1の電流および前記第1の電流の方向を決定するよう構成されており、前記第2のスイッチは前記第2の電流および前記第2の電流の方向を決定するよう構成されている、請求項1記載の配電システム。
【請求項3】
前記複数のバスは、前記第2のスイッチ(113)を介して前記第2のバスに接続された第3のバス(105)を含み、
前記複数のスイッチは前記第3のバスに接続された第3のスイッチ(115)を含んでおり、
前記第2のスイッチを介して前記第2のバスに向かう方向に流れる前記第2の電流(145)が、前記所定の持続時間よりも長く前記所定の電流しきい値を超える場合、前記第2のスイッチは、前記第3のスイッチが開くことを阻止するための阻止信号を前記第3のスイッチに送るように構成されている、
請求項1または2記載の配電システム。
【請求項4】
前記第2のバスに接続された少なくとも1つの発電機(119)をさらに有する、請求項1からのいずれか1項記載の配電システム。
【請求項5】
前記発電機(119)を前記第2のバスに接続する発電機スイッチ(121)をさらに有する、請求項記載の配電システム。
【請求項6】
前記負荷(123)は負荷スイッチ(125)を介して前記第2のバスに接続可能である、請求項1からのいずれか1項記載の配電システム。
【請求項7】
前記第1のスイッチ、前記第2のスイッチおよび前記第3のスイッチは、それぞれ、ロジックユニットを備えるプログラマブルリレーを有する、請求項に記載の配電システム。
【請求項8】
前記発電機スイッチ(121)は、ロジックユニットを備えるプログラマブルリレーを有する、請求項に記載の配電システム。
【請求項9】
前記負荷スイッチ(125)は、ロジックユニットを備えるプログラマブルリレーを有する、請求項に記載の配電システム。
【請求項10】
請求項1からのいずれか1項記載の配電システムを有する浮体構造体であって、前記浮体構造体は複数の電気モータ(123、623、823、1023、1223)を用いて自動定点保持される、ことを特徴とする浮体構造体。
【請求項11】
海上石油プラットフォームまたは海上掘削プラットフォームを支持するために構成されている、請求項10記載の浮体構造体。
【請求項12】
配電システムを用いる配電方法であって、
前記配電システムは、
負荷が接続可能な第2のバスを含む複数のバスと、
第1のスイッチおよび第2のスイッチを含む複数のスイッチと、を有しており、
前記複数のバスは前記複数のスイッチを間に介してリングを形成するよう接続されており、前記第2のバスは前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとの間に接続されており、
前記方法は、
前記第1のスイッチを介して前記第2のバスに向かう方向に流れる第1の電流を決定するステップと、
前記第2のスイッチを介して前記第2のバスに向かう方向に流れる第2の電流を決定するステップと、
前記第1の電流が、所定の持続時間よりも長く所定の電流しきい値を超え、前記第2の電流が、前記所定の持続時間よりも長く前記所定の電流しきい値を超える場合、前記第1のスイッチを開き、同時に前記第2のスイッチを開くことにより、前記第2のバスを前記リングから切り離すステップと、
を含んでいる、方法において、
前記第1のスイッチを介して前記第2のバスから離れる方向に流れる第1の逆方向性電流が、前記所定の持続時間よりも長く前記所定の電流しきい値を超える場合には、前記第1のスイッチは、前記第2のスイッチが開くことを阻止するための阻止信号を前記第2のスイッチに送るステップをさらに含む、
配電方法。
【請求項13】
前記配電システムは、自動定点保持型浮体構造体のための配電システムである、請求項12に記載の配電方法。
【請求項14】
前記配電システムは、請求項1からのいずれか1項に従って構成されている、請求項12または13に記載の配電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有利には、最新の保護リレーにおいて利用可能なプログラマブルロジックを用いた方向性過電流故障保護のための、有利には自動定点保持型浮体構造体のための配電システムおよび配電方法に関する。有利には、本発明は、高信頼性が求められる自動定点保持型浮体構造体に見られるような複数の分離された電力システムに有利に適した、保護リレーにおけるプログラマブルロジックを用いる高められた配電における方向性故障電流保護に関する。さらに有利には、本発明は、有利には、故障に対する対策を取ることが可能な、配電システムがリング状接続形態を有する自動定点保持型浮体構造体のための配電システムに関する。配電システム中の故障のあるバスを,配電システムの残りのバスの動作に影響することなく分離することが目的とされる。
【背景技術】
【0002】
自動定点保持型の船および浮体構造体(たとえば海上プラットフォーム、石油プラットフォームまたは掘削プラットフォームもしくは掘削リグ)はプロペラまたはスラスタを使用して、定置作業が必要とされる位置にとどまり、この種の浮体構造体は、たとえば、有利には海底の掘削孔から石油および/またはガスを運ぶための掘削リグおよび/または生産リグを有する。電気的な推進力(プロペラまたはスラスタ)を用いるため、これらの浮体構造体は、海上の所望の位置を維持するためにおよびすなわち安全な海上作業を実現するために、推進機械に電気エネルギーを供給するための信頼性ある発電および配電に依存している。特に、この種の自動定点保持型(DP(Dynamic positioning))の浮体構造体は、甲板昇降型掘削リグおよびアンカーシステムが利用できない水深および地帯で用いることができる。
【0003】
従来の発電システムおよび配電システムは、いくつかの分離された配電グループ(典型的には2〜8個)が、1つのグループに故障が生じた場合に残りのグループが浮体構造体を定点保持するのに十分であるように動作するように設計されている。特に、従来のシステムでは、冗長な発電(たとえば多数の発電機)が、いくつかのグループに必要とされるか、または、従来の発電システムのすべてのグループに必要とされる。
【0004】
特に、いくつかの浮体構造体においては、冗長な複数のコンバータおよび複数のDCリンクを従来のシステムに用いて、分離された複数の発電・配電アイランドの間でエネルギー流を接続することにより、耐故障性の電力システムを得ている。このようにすることにより、過剰な数の発電機を稼働するという問題は避けられまたは少なくとも軽減されるが、高価なコンバータの列が形成される場合がある。したがって、付加的なコンバータによって発電システムまたは配電システムのコストが大きく増大しうる。さらに、この配電システムはメンテナンスがより手間がかかり、故障のさらなる発生源を含みうる。保護スキームの一部としての自動システムなどの浮体構造体管理システムの使用は、いくつかの計画において評価されてきたが、応答時間に関する問題のためにいくぶん諦められていた。電気故障保護のための付加的なシステムに依存することは望ましくない場合がある。これはまた船級協会および多くの顧客にとっても受け容れがたい場合がある。
【0005】
EP1940002A2には、リレー装置および対応する方法が開示されており、これにおいては、部分差動領域に流れ込む故障電流の方向に対して第1の値が割り当てられ、部分差動領域から流れ出す故障電流の方向に対して第2の値が割り当てられ、故障電流に割り当てられた2つの値が比較され、故障電流が部分差動領域に流れ込むのか否かが判別される。これにより、各ノードは中央プロセッサ304とインタフェースし、処理、意思決定等のためのノードデータを送信する。
【0006】
文献US3,553,968には、比較的深い水深に配置されかつ強固に固定された直立レグにより支持された、固定型海上プラットフォームが開示されている。
【0007】
文献EP1335470A2には、故障が順方向なのか逆方向なのかを決定するための方向距離リレー要素を有する、配電ライン保護用の方向性比較型距離リレーシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】EP1940002A2
【特許文献2】US3,553,968
【特許文献3】EP1335470A2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
故障対応に関して改善され、それと同時に多数の発電機またはコンバータを必要としない、自動定点保持型浮体構造体用の配電システムおよび配電方法が求められていた。さらに、配電システムにおける1つの事故または故障によって浮体構造体がその位置を外れない配電システムおよび配電方法が求められていた。
【0010】
差動保護は故障のあるバスを分離するためにネットワークにおいてよく用いられる。石油生産および掘削に用いられる浮体構造体においては、過渡的状態によって差動保護システムによる異常なトリップが生じる場合がある。これらの過渡的状態は、周波数、電圧および高調波成分に関して、陸上の電力システムについて通常みられるよりもより大きな変動を引き起こす、より小さい孤立したネットワークにおいて、大容量のモータや負荷を始動させることにより生じる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は独立請求項に記載の発明により解決される。本発明の有利な実施形態は従属請求項に記載されている。
【0012】
提案される、配電保護のための配電システムおよび方法は、一実施形態では、自動定点保持型の船および/または浮体構造体に用いられるが、故障後の継続的な稼働が望まれる他の用途、有利には海中配電システムなどにも適用可能である。
【0013】
有利には、提案される、配電保護のための配電システムおよび方法は、従来のバス差動保護の代わりに、保護リレーにおけるロジックを用いる。
【0014】
一実施形態では、配電システムは、故障に対してシステムを保護するように適合される。それゆえ、配電システムはたとえばさらに電力システム保護システムの特徴を参照するかまたは有する。有利には、保護リレーにおけるロジックは配電システムまたは電力システムの保護システムに含まれ、方向性故障電流の検出が、たとえばループ型電力ネットワークにおける区別を実現するために用いられる。
【0015】
自動定点保持型浮体構造体は本配電システムの1つの可能な用途に過ぎず、本発明はこの使用の場合に限定されない。
【0016】
一実施形態では、自動定点保持型浮体構造体(たとえば、船、石油プラットフォームまたは掘削リグ)のための(配電のための)配電システムが提供され、当該配電システムは、負荷(たとえばプロペラ、スラスタまたは他の種類の電気モータ、あるいは、電池または発電機などの電気供給装置)が(直接または間接的に)接続可能な第のバスを含む複数のバス(それぞれ、銅棒などの導体を含んでなる)と、第1のスイッチおよび第2のスイッチを含む複数のスイッチ(閉状態と開状態をとることができ、有利には制御可能なスイッチであってよく、有利にはプログラマブルでありかつロジック動作の計算および/または実行を可能とするリレーおよび遮断器を有してよい)と、を有している。ここで、複数のバスは複数のスイッチを間に介して(挿入して)リングを形成する(これにより、バスがスイッチに接続され、このスイッチが別のバスに接続され、この別のバスが別のスイッチに接続され、同様にして、最後のスイッチが第1のバスに接続されて、バスとスイッチとが交互に配列されたリング状の構成または環状の構成が形成される)よう接続されており、第のバスは第1のスイッチと第2のスイッチとの間に(有利にはコンバータを含まずに)接続されている。ここで、第1のスイッチを介して第のバスに向かう方向に流れる第1の電流が、所定の持続時間(たとえば0.2s〜1s)よりも長く所定の電流しきい値(たとえば1000A〜10000A)を超え、かつ、(別の隣接するバスから)第2のスイッチを介して第のバスに向かう方向に流れる第2の電流が、所定の持続時間よりも長く所定の電流しきい値を超える場合、配電システムは第1のスイッチを開き(これにより、第1のスイッチは開状態をとる)、同時に第2のスイッチを開く(これにより、第2のスイッチは開状態を取る)。したがって、第1のスイッチおよび第2のスイッチを開放することにより、第のバスがリングから切り離される。有利には、送信システムは、リングから第のバスを切り離すために保護リレーにおけるロジックを用いる。これにより、第1のスイッチおよび第2のスイッチのそれぞれは、ロジック機能を提供するロジックユニットを含むプログラマブルリレーを有しており、第のバスは、第1のスイッチおよび第2のスイッチにおけるロジック機能を用いて識別される。有利には、第1のスイッチおよび第2のスイッチによって、中央プロセッサを必要とせずに第1のスイッチおよび第2のスイッチの開閉を制御するロジック機能を用いて第のバスがリングから自立的に切り離される。
【0017】
本願において、「スイッチ」の語は、2つの導体(たとえばバス)の間の電気接続を、有利には制御されたやり方で、開閉可能とする(制御可能な)装置を意味する。スイッチは、たとえば、回路遮断器(電気接続を実際に確立する要素を表す)、および、回路遮断器の開閉を制御する制御装置、たとえば(プログラマブル)リレー(有利にはロジック回路を有する)を有してもよい。
【0018】
有利には、第のバスにおいて故障が発生したとき、大電流が第1のスイッチを介して第のバスへ流れ、また、大電流が第2のスイッチを介して第のバスへ流れる。有利には、第1のスイッチの開放と第2のスイッチの開放は、たとえば、特定用途に適合された所定の時間−電流特性曲線に従って行われる。有利には、第1のスイッチが遮断器とスマートリレー(プログラマブルロジックを含んでなる)を有し、かつ、第2のスイッチが遮断器と遮断器を制御するスマートリレーを有する場合、故障の生じた第のバスは、たとえば、第1のスイッチおよび第2のスイッチを除いたリングのすべてのスイッチの開放を阻止することにより検出される。ここで、(第1のスイッチおよび第2のスイッチを除く)すべての他のスイッチの開放は、すべての他のスイッチに適切な阻止信号を送信し、第1のスイッチおよび第2のスイッチに送信しないことにより、阻止される。有利には、対応する遮断器(スイッチを形成する遮断器およびリレー)を制御するリレーにおけるロジックがリング構造に用いられて、故障のあるバスを識別して、故障のあるバスをリングから切り離し、これにより、故障のあるバスはリングから分離され、したがってリングは開かれる。それでも、開放されたリングでは、複数のバスのすべての残りのバスは、互いに接続されたままである。これにより、残りのバスに接続された1つ以上の負荷に電気エネルギーを供給するためにより少数の発電機が必要なだけである。これにより、配電システムの効率が改善され、配電システムのコストは従来の配電システムに比べて低減される。
【0019】
有利には、配電システムは、ループに接続された複数の電力バスを有する。1つのバス(第のバス)に故障が生じた場合、第のバスのみが両端で切り離され、残りのすべての発電機および配電システムは動作状態にあり、互いに接続されたままである。これにより、所与の故障状態において動作するためにはより少数の冗長な発電機が必要とされるだけである。これにより、メンテナンス、燃料消費および排出は低減される。(第のバスにおける)1つの電気故障が発生し、この故障を修復しないままでも、配電システムを含む浮体構造体の動作は維持可能である。他のアイランドが冗長な発電容量を有するにもかかわらず1つのアイランドが電力不足となりうるという問題を避けながら、配電システムは、第1の故障の後も1つの接続されたシステムとして維持される。
【0020】
有利には、母線の差動保護の必要性がなくなる。母線の差動保護は、過渡状態の問題や掘削または生産リグの通常動作時によく見られる状態におけるトリップ(故障時の開放)を生じうる。このような異常なトリップはDP2またはDP3クラスの浮体構造体について重要である。提案のシステムは最初の電気故障の後でも、DP2またはDP3クラスに従って継続動作可能である。この場合、DP2の浮体構造体は第2の電気故障の後でも定点保持する必要があり、DP3クラスの浮体構造体は電気的または機械的性質の第2の故障の後でも定点保持する必要がある。これは、第1の故障の修復を待つ間、浮体構造体の継続された動作を可能とする。
【0021】
有利には、複数の発電および配電アイランド(複数のバス)同士を1つの閉じられたリングに接続されるように標準的な回路遮断器を用いて接続することにより、発電または配電システムを有する浮体構造体のために複数の冗長な発電機を動作させる必要がなくなる。これによりさらに、第1の故障後に配電構成を再構成する必要なく、故障後に、1つの接続されたバスとしての配電の継続動作が可能となる。一実施形態では、保護スキームでは、他の部分(配電システムの他のバス)を切り離すこと無く、故障のある部分(第のバス)のみが(排他的に)分離される。
【0022】
これにより、故障のある部分または故障のあるバス(第のバス)は、スイッチにおける(有利にはスイッチを制御する保護リレーにおける)ロジック機能またはプログラマブルロジック能力を用いて識別可能である。有利には、保護リレー(たとえばシーメンス社SIPROTEC(商標)保護リレー)が配電システムにおいて用いられ、適用される。シーメンス社SIPROTEC(商標)保護リレーは組み込みロジックおよびさらに組み込まれた電流電圧測定能力を有する。これらのリレーは、配電システムの、標準的で広く用いられている構成要素である。これらはよく実証された保護装置であり、その組み込み特性により、付加的なコントローラまたはプログラマブルロジックコントローラ(PLC)を用いることなく、ロジック動作を保護スキームの一部とすることができる。
【0023】
配電システムの提案される接続形態およびバスの故障の場合に配電システムからこのバスを分離可能であることにより、メンテナンスの必要性および燃料コストは低減され、動作状態で稼働するため必要な発電機はより少数となる。さらに、発電システムに関するより高いアベイラビリティが実現され、これにより、電気故障発生後の、オペレータの介入すらない、動作継続が可能となる。故障のある部分のみが切り離され、残りのシステムは、1つの接続された発電および配電システムとして動作継続する。さらに、いくつかの他の従来の耐故障発電システムにおいて必要とされるような、付加的な複数のコンバータとDCリンクの必要性は排除される。したがって、複雑性および初期投資は低減可能である。さらに、標準的なよく実証された構成要素のみを用いて一実施形態の配電システムを構築できる。
【0024】
一実施形態では、第1のスイッチ(有利にはリレーにより制御される遮断器を有する)は第1の電流および第1の電流の方向を決定(有利には、測定、導出および/または計算)するよう構成されており、第2のスイッチは第2の電流および第2の電流の方向を決定(有利には、測定、導出および/または計算)するよう構成されている。これにより、第のバスが配電システムから分離される状況は容易に決定される。さらに、従来の構成要素(たとえば電流測定能力を有するプログラマブルリレー)は配電システムを構築するために用いることができる。
【0025】
一実施形態では、第1のスイッチは、第1のスイッチを介して第のバスから離れる方向に流れる第1の逆方向性電流(第1の電流の流れる方向とは反対方向に流れる電流)が、所定の時間よりも長く所定の電流しきい値を超える場合に、第2のスイッチが開くことを阻止するための阻止信号(該阻止信号はトリップ阻止信号67とも示される)を第2のスイッチに送る(第1のスイッチと第2のスイッチとの間の通信、有利には第1のスイッチから第2のスイッチへの通信のための、第1のスイッチと第2のスイッチとの間の信号線を要する)ように構成されている。この状況において、第のバスは電流シンクではなく、別のバスが電流シンクでなければならず、したがって、別のバスが故障を有するはずである。この状況において、第のバスは故障のあるバスではなく、配電システムから切り離されるべきではない。それゆえ、有利には、第2のスイッチは第のバスの配電システムへの接続を維持するために、開放されるべきではない。ここで、第2のスイッチが有するリレーのロジック処理能力を用いることができる。
【0026】
一実施形態では、第2のスイッチが第1のスイッチから阻止信号を受信せず、かつ、第のバスに向かう方向に第2のスイッチを介して流れる第2の電流が、所定の時間よりも長く所定の電流しきい値を超える場合、および、有利にはさらに第のバスにおける電圧が所定の電圧しきい値以下である場合、第2のスイッチが開くように構成されている。有利には、第2のスイッチは複数のスイッチのうちの他のすべてのスイッチから阻止信号を受け取らない。有利には、複数のスイッチのすべてのスイッチが、阻止信号を受け取らない2つのスイッチ(第1のスイッチおよび第2のスイッチ)を除いて、(複数のスイッチのうちの別のスイッチから)阻止信号を受け取る。次いで阻止信号を受け取らない2つのスイッチが開かれ、配電システムから阻止信号を受け取らない2つのスイッチの間でバスが切り離される。ここで、スイッチのロジック処理能力および電流測定能力および電圧測定能力が用いられる。
【0027】
一実施形態では、第2のスイッチを介して第のバスに向かう方向または第のバスから離れる方向に流れる第3の電流が、別の所定の時間よりも長く別の所定の電流しきい値を超える場合に、第2のスイッチは開くように構成されている、なお、別の所定の電流しきい値は所定の電流しきい値よりも大きく、および/または、別の所定の時間は所定の時間よりも長い。第3の電流トリップは方向性電流について開放が生じなかった場合に生じる。第2のスイッチを構築するために(および有利にはさらにすべての他のスイッチを構築するために)プログラマブルリレーを用いることにより、第2のスイッチが開放されるべき状態または状況を定めるためのさらなる状態および関係を含めることができる。これにより、故障のバスを決定するためのより高い柔軟性が実現される。
【0028】
一実施形態では、複数のバスは、第2のスイッチを介して第のバスに接続された第のバスを含み、複数のスイッチは第のバスに接続された(但し第のバスと第のバスとの間にではなく)第3のスイッチを含んでおり、第2のスイッチを介した第のバスに向かう方向の第2の電流が、所定の時間よりも長く所定の電流しきい値を超える場合、第2のスイッチは、第3のスイッチが開くことを阻止するための阻止信号を第3のスイッチに送るように構成されている。これにより、他のすべてのバス(第のバスを除く)を配電システムから分離しないために、第のバスを複数のバスのうちの別のバスと接続する第3のスイッチが閉状態に維持される。これにより、故障のある第のバスが配電システムから切り離されたときに、第のバス(故障のあるバス)のみが環状の配電システムから分離され、ループに接続されておらずリングを形成しない線形のまたはチェーン状の配電システムを実現することが保証される。
【0029】
一実施形態では、第のバスに接続された少なくとも1つの発電機をさらに有する。発電機は第のバスに電気エネルギーを供給することができる。有利には、配電システムは1つ以上の発電機を有してよく、ここで、有利には、各バスについて1つの発電機が接続可能である。第のバスの配電システムからの分離には、第のバスに接続された発電機の配電システムからの分離も含みうる。さらに、第のバスの配電システムからの分離は、第のバスに接続されたすべての負荷の配電システムからの分離を含みうる。したがって、第のバスに接続された負荷または発電機において故障が生じた場合に、第のバスが配電システムから分離されない場合がある。さらに、故障は第のバスに接続された負荷または発電機のいずれかにおいても生じることなく、第のバス自体に生じてもよい(たとえば地絡)。
【0030】
一実施形態では、配電システムは、発電機を第のバスに接続する発電機回路遮断器(発電機スイッチともいう)をさらに有する。発電機回路遮断器は電流測定能力および/または電圧測定能力を有する(プログラマブル)リレーにより制御される。したがって、発電機自体の故障の場合には、それは第のバスから高速に分離可能であり、第のバスを配電システムから分離する必要性は排除される。有利には、発電機スイッチの時間−電流特性曲線は、故障が第のバス自体にではなく発電機において生じた場合に、第のバスを配電システムに接続された状態に維持する(依然としてリングが形成される)ために、発電機スイッチが第1のスイッチまたは第2のスイッチが開く前に開くようなものであってよい。これにより、配電システムのリング構造は発電機のうちの1つの故障の場合に維持可能である。
【0031】
一実施形態では、負荷はたとえば負荷回路遮断器(負荷スイッチともいう)を介して第のバスに接続される。有利には、たとえば、その負荷回路遮断器は電流測定能力および電圧測定能力を有しかつロジック計算を提供する(プログラマブル)リレーにより制御される。有利には、負荷スイッチの時間−電流特性は、負荷スイッチが、故障が負荷において生じた場合に第のバスを環状の配電システムに接続された状態に維持するために、第1のスイッチおよび第2のスイッチが開く前に開くようなものである。これにより、故障が配電システムに接続された負荷においてのみ生じたとき、配電システムは有利なリング状構造に維持可能である。有利には、1つ以上の負荷装置が複数のバスのそれぞれに接続可能である。
【0032】
一実施形態では、第3のスイッチ、発電機スイッチおよび負荷スイッチの少なくとも1つはロジックユニットを備えるプログラマブルリレーを有する。有利には、シーメンス社SIPROTEC(商標)保護リレーを用いることができる。
【0033】
一実施形態では、上述の配電システムを有する浮体構造体(たとえば浮遊海上プラットフォーム、掘削リグ、石油プラットフォーム)であって、浮体構造体は、負荷として電力バスに接続された複数の(プロペラまたはスラスタに接続された)電気モータを用いて自動定点保持される。浮体構造体は、電気モータにより駆動される1つ以上のプロペラまたはスラスタを動かすことにより、特定の(海中または海上の)位置に維持可能である。
【0034】
有利には、DPクラス2の浮体構造体について2室(line-up)スイッチギア構成が考えられ、ここでは、それは2つのスラスタを失うことが許容され、1つは第1の故障において、もう1つは後の第2の故障においてである。DPクラス2の浮体構造体においては、電気故障のみが考慮される。浮体構造体は電気故障後にその動作を安全に終了可能でなければならない。耐故障システムに関して、浮体構造体は特定の種類の第1の故障の後に生じる第2の故障についても同じことをしなければならない。このような第1の故障には、遮断器、発電機、スラスタまたはバスの故障が含まれる。
【0035】
別の実施形態では、DPクラス3の浮体構造体についての4室スイッチギア構成が考えられ、ここでは、それは3つのスラスタを失うことが許容され、1つは第1の故障、他の2つは第2の故障である。DP3クラスの浮体構造体において、すべての区画に影響する故障も考慮しなければならない。これには一区画全体の火災または浸水が含まれる。提案される耐故障システムに関して、状態は第1の故障は電気構成要素たとえば遮断器、発電機、スラスタまたはバスの故障に限定される。第2の故障は一区画全体に影響する可能性があり、浮体構造体はそのような故障の後にその動作を安全に完了することができる。このような故障は2つのスラスタの喪失となり、さらに1つは第1の(電気)故障の結果として故障しうる。
【0036】
一実施形態では、DPクラス3の浮体構造体についての8室スイッチギア構成が考えられ、これにおいては、それは2つのスラスタの喪失が許容され、1つは第1の故障、もう1つは後の第2の故障である。DPクラス3の浮体構造体のための4室スイッチギア構成と同様に、発電機およびバスそれぞれが独自の分離された耐火区画に設けられている。この構成は浮体構造体の建造をより高額とするが、2つの故障の後に残る6つのスラスタを有することを補償可能である。この構成は、4室スイッチギアを有するDPクラス3の浮体構造体において用いられるべきよりもより少数のスラスタを可能とし、これにおいては、浮体構造体は2回の故障の後に残る5つのスラスタのみを有しうる。
【0037】
有利には、DPクラス2の浮体構造体のための2室スイッチギアは2つの分離された区画を有し、DPクラス3の浮体構造体のための4室スイッチギアは4つの独立な区画を有し、DPクラス3の浮体構造体のための8室スイッチギアは8つの独立な区画を有し、その内部に、配電システムのいくつかの構成要素が設置される。
【0038】
一実施形態では、浮体構造体は浮遊海上石油プラットフォームまたは海上掘削プラットフォームを支持するために構成されている。浮体構造体は海中に少なくとも部分的に沈められてもよい。
【0039】
配電システムに関して開示され、記載され、または、言及された特徴(独立にまたは組み合わせて)は、配電方法にも(独立にまたは組み合わせて)適用可能である。
【0040】
一実施形態では、自動定点保持型浮体構造体のための配電システムを用いる、有利には上述の配電システムを用いる配電方法が提供され、該配電システムは、負荷が接続可能な第のバスを含む複数のバスと、第1のスイッチおよび第2のスイッチを含む複数のスイッチと、を有する。ここで、複数のバスは複数のスイッチを間に介してリングを形成するよう接続されており、第のバスは第1のスイッチと第2のスイッチとの間に接続されている。ここで、該方法は、第1のスイッチを介して第のバスに向かう方向に流れる第1の電流を決定(有利には、測定、導出、計算および/または推定)するステップと、第2のスイッチを介して第のバスに向かう方向に流れる第2の電流を決定するステップと、第1の電流が、所定の持続時間よりも長く所定の電流しきい値を超え、第2の電流が、所定の持続時間よりも長く所定の電流しきい値を超える場合、第1のスイッチを開き、同時に第2のスイッチを開くことにより、第のバスをリングから切り離すステップと、を含む。ここで、第1のスイッチおよび第2のスイッチのそれぞれは、ロジック機能を提供するロジックユニットを含むプログラマブルリレーを有しており、第のバスは、第1のスイッチおよび第2のスイッチにおけるロジック機能を用いて識別される。
【0041】
本発明の実施形態について、異なるカテゴリーの発明に関して記載されている。有利には、いくつかの実施形態は、方法のカテゴリーの請求項に関して記載され、他の実施形態は装置のカテゴリーの請求項でもって記載されている。しかし、当業者は上記または下記の記載から、他に言及しない限り、1つのカテゴリーの発明に属する特徴の任意の組み合わせに加えて、異なるカテゴリーの発明に属する特徴同士の任意の組み合わせ、有利には、方法のカテゴリーのクレームの特徴と装置のカテゴリーのクレームの特徴との任意の組み合わせも、本願書類に開示されているものと見なされることは理解するであろう。
【0042】
本発明の上記の態様および他の態様は、以降に記載される実施形態における実施例から明らかであり、実施形態における実施例を参照して説明される。本発明は、実施形態における実施例を参照して以下より詳細に説明されるが、本発明はこれに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】一実施形態における配電システムを概略的に示す。
図2図1に示す配電システムに用いられるリレーの時間−電流特性極性を示すグラフである。
図3図1に示される配電システムに用いられるリレーに用いられるロジック図を示す。
図4図1に示される配電システムに用いられるリレーに用いられるロジック図を示す。
図5図1に示される配電システムに用いられるリレーに用いられるロジック図を示す。
図6】一実施形態における配電システムを示す。
図7】一実施形態における配電システムを示す。
図8】別の実施形態における配電システムを示す。
図9】別の実施形態における配電システムを示す。
図10】また別の実施形態における配電システムを示す。
図11】また別の実施形態における配電システムを示す。
図12図1に示される配電システムを有する浮体構造体を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図面中の記載は概略的なものである。異なる図面中、同様のまたは同一の要素には同じ参照符号または最初の一桁のみが対応する参照符号と異なる参照符号が付されている。
【0045】
図1は一実施形態における配電システム100を概略的に示す。配電システム100は複数のバスを有し、そのうち、第1のバス101と、第2のバス103と、第3のバス105と、第4のバス107とが示されている。バスは複数のスイッチによって互いに接続されており、そのうち、スイッチ109、111、113、115のみが示されている。各バスは各スイッチによって連続的に交互に接続されて、交互に設けられた各バスと各スイッチによりリング117が形成される。
【0046】
発電機119はスイッチ121を介してバス103に接続され、バス103に電気エネルギーを供給する。バス103に供給される電気エネルギーは、負荷スイッチ125を介してバス103に接続された負荷123によって消費される。発電機127は発電機スイッチ129を介してバス105に接続され、バス105に電気エネルギーを供給する。負荷131はスイッチ133を介してバス105に接続され、負荷131に電気エネルギーを供給する。
【0047】
バス103はスイッチ111を介してバス101に接続され、バス103はスイッチ113を介してバス105に接続されている。有利には、スイッチ111はリレー137により制御される遮断器135(ノーマリクローズ(N.C.))を有する。図示の実施形態では、リレー137は、プログラマブルであり、ロジック回路を有するシーメンス社SIPROTEC(商標)リレーである。また、リレー137は、バス103からバス101へ流れる電流を測定しまたはバス101からバス103へ流れる電流を測定するための、電流測定能力および電圧測定能力を有する。スイッチ113は、遮断器を開状態または閉状態に設定するようリレー141によって制御される遮断器139を有する。示される実施形態では、リレー137および141の両方がシーメンス社SIPROTEC(商標)リレーであり、これによって、ロジック処理が実行可能であり、隣接するバス間をリレーを介して流れる電流および電圧を測定可能である。
【0048】
配電システム100の通常動作の間、複数のバスが交互の(閉状態の)スイッチにより接続され、環状構造またはリング構造を形成している。これにより、発電機119または127により生成された電気エネルギーは任意のバスに接続された任意の負荷に配電可能である。これにより、十分な電力の信頼性ある供給がバスに接続されたすべての負荷に提供される。
【0049】
通常動作(故障が生じていない)時には、スイッチ109、111、113および115のすべての遮断器が閉じられている。発電機119、127はたとえば定格電流300A(アンペア)であり、たとえば少なくとも3sの間、900Aの持続的な故障電流を維持する。
【0050】
図1には、バス103において短絡143が発生した、という特定の故障シナリオが示されている。短絡143はたとえばバス103の地絡故障により生じる。他の実施形態では、故障状態は異なる事象によって生じうる。短絡143のため、大電流が発電機119から短絡143に流れる。さらに、スイッチ109、111、113および115のノーマリクローズ状態において、大電流が発電機127からバス105、スイッチ113(閉状態)を介してさらに流れ、短絡143に向かう。さらに、大電流がバス101、閉状態のスイッチ111、バス103を介して短絡143へと流れる。これらの大電流は配電システムから過剰量の電気エネルギーを引き出し、したがってこれは望ましくない。一実施形態では、配電システム100は、配電システムの他の負荷、たとえば、負荷131に電気エネルギーを継続して供給可能とするために、リング構造117から故障のあるバス103(故障が発生したバス)を切り離すよう構成されている。
【0051】
故障はバス103に生じた(そして負荷123や発電機119において生じていない)ため、発電機スイッチ121または負荷スイッチ125を開いて、発電機119または負荷123をそれぞれ配電システムから切り離すだけでは問題は解決されない。逆に、配電システム100はスイッチ111および113を開いて、バス103を配電システム100から切り離し、これにより故障電流がバス105からバス103に向かって、かつ、バス101からバス103に向かって流れないように構成されている。
【0052】
スイッチ113はバス105からバス103に流れる電流145を検出し、バス105とバス107とを接続するスイッチ115に信号線147を介して阻止信号を送る。故障はバス105において生じていないので、スイッチ115に送られた阻止信号はスイッチ115を閉状態に維持する。
【0053】
さらに、スイッチ111はバス101からバス103へ流れる電流149を検出し、この電流を検出すると、スイッチ111はスイッチ109に信号線151を介して阻止信号を送る。電流149がバス101からバス103へ流れる場合、バス101は故障のあるバスではありえないので、スイッチ109が受け取る阻止信号はスイッチ109を閉状態に維持する。さらに、スイッチ109およびさらにスイッチ115はリング117内の隣接する各スイッチに阻止信号を送り、これらのスイッチを閉状態に保持する。最終的に、スイッチ111および113を除く、リング117内のすべてのスイッチは阻止され、したがってスイッチ111および113は開状態をとる。これにより、故障のあるバス103は配電システム100から分離され、配電システム100は開かれてリング構造はもはや形成されない。故障のあるバス103を配電システムから分離した後、他のバスに接続された(バス103に接続されていない)消費装置または負荷、たとえば負荷131は、適切な継続動作を保証するために、電気エネルギーが供給される。
【0054】
図2はスイッチ109、111、113、115、121、125、129、133(有利にはこれらのスイッチが有するリレーの特定の特性)の時間−電流特性曲線のグラフを示す。図2の横軸には電流(A)が示されており、縦軸には時間(s)が示されており、これらのスケールは対数表示である。曲線253、255、257、259は、どの電流と時間の流れの組み合わせにおいて、どのスイッチがトリップするのか、すなわち故障時に開くのかを示す。曲線253はスイッチ125および133に適用される。曲線259はスイッチ109、111、113について適用される(無方向性)。曲線255はスイッチ109、111、113、115に適用される(方向性)。曲線257はスイッチ121および129に適用される。
【0055】
曲線253はたとえば負荷123をバス103に接続する負荷スイッチ125の特性を示す。有利には、負荷スイッチ123は、約30×100Aから200×100A(またはこれよりも高い)の間の電流が約0.02sまたはこれよりも長く続いたときに、開状態をとる。このようにして、故障のある負荷は、他のすべてのスイッチが開く前に、非常に高速に、図1に示される配電システム100から分離可能である。
【0056】
さらに、図2の曲線255は、それらがバス103へ流れる方向性電流145および149を検出するときの、スイッチ111および113の時間−電流特性を示す。これにより、電流145、149が特定の期間にわたり特定値をとるか、または、特定のしきい値を超えると推定されるとき、スイッチ111、113は開状態をとる。
【0057】
曲線257は発電機119をバス103に接続する発電機スイッチ121の特性または発電機127をバス105に接続する発電機スイッチ129の特性を示す。(隣接するバスを接続する)種々のスイッチ109、111、113、115の時間−電流特性曲線の形状は、非常に類似するかまたは同じであるが、負荷スイッチ125、133の特性曲線とは異なり、発電機スイッチ121および129の特性とも異なりうる。有利には、時間−電流特性曲線の形状は特定の用途に依存する。図1に示される発電機119のための発電機スイッチ121は図2に示される曲線257に従ってトリップする。リレー137はバス103からバス101へ流れる電流を監視しない。したがって、リレー137はスイッチ113のリレー141に阻止信号(トリップの阻止信号67)を発しない。バス103の左側に発電がない場合、スイッチ111のリレー137は何も行わない。(バス101に接続される発電がある場合、スイッチ111のリレー137もトリップし、バス103の左側の故障をクリアする)。スイッチ113のリレー141はたとえば発電機127により生成される約900Aの方向性故障電流145を監視する。リレー141はスイッチ111のリレー137からの阻止信号を受け取らない。さらに、リレー141は不足電圧を監視する。リレー141はバス103への方向性故障電流を監視し、図2に示される曲線255に従うトリップを作動させる。リレー141はスイッチ111のリレー137に阻止信号を発しない。約4000A以下の故障レベルについて、リレー141は発電機127のための発電機スイッチ129より前にトリップさせ、故障をクリアする。
【0058】
方向性故障電流のトリップレベルは最小容量の発電機から出力可能な継続する3秒間の故障電流以下に設定されなければならない。ネットワークが閉ループとして動作するとき、方向性故障電流のトリップレベルは、最小容量の発電機から出力可能な継続する3秒間の故障電流の半分以下に設定されなければならない。その理由は、閉バスループのライン上の1つの発電機からの故障電流は、両方の方向から短絡位置に向かって進むからである。DP動作に関して、動作する発電機の最小数は2である。
【0059】
図3はスイッチ109、111、113および115が有する保護リレーのロジック図を示し、これは、スイッチ111または113のリレーが、検出された電流145または149の上流のスイッチに阻止信号を送る状態を示す。スイッチ111および113はリレー137および141をそれぞれ有し、これらはそれぞれORゲート361を有する。端子363において、ORゲート361はスイッチに隣接するバスから過電流が存在することを示す情報を受け取る。端子365において、ORゲート361はバスから地絡電流が存在することを示す情報を受け取る。端子363および365において受け取られる信号の(少なくとも)1つがロジックHigh信号であるならば、ORゲート361は端子367においてロジックHigh信号を出力し、それはバスの反対側のスイッチ(たとえば、図に示されるスイッチ109および115)に送られるべき阻止信号として用いられうる。
【0060】
図4図1に示される回路遮断器113(または111)を制御するリレー141(または137)の動作のロジック図を示す。有利には、図4は、故障のあるバス103を配電システム100から分離するために、回路遮断器113(または111)が開かれる状態を示すまたは表すロジック図を示す。ロジック回路469は、遅延器471と、ANDゲート473と、遅延器475と、ANDゲート477と、ORゲート479とを有する。遅延器471はバスへの方向性過電流を示す情報を受け取り、この信号を時間T1分遅延させてANDゲート473に送る。さらに、ANDゲート473は反転された別のスイッチからの阻止信号を受け取る。さらに、ANDゲート473は阻止信号がなく、かつ、当該バスへの方向性過電流があり、当該バス上の不足電流がある場合、ANDゲート473はロジックHigh信号を出力する。
【0061】
方向性過電流についてトリップ(故障の際の開放)を可能とするため、以下の条件が存在しなければならない。
【0062】
・故障電流が流れるバスの反対側のリレーから受け取る阻止信号がない。
【0063】
・方向性故障電流が検出される。バスの反対側におけるリレーが阻止信号を発する時間を可能とするために、この電流信号に対する時間遅延T1が存在する。この遅延はたとえば適切なリレー調整を提供するために選択される。適切な時間はたとえば、150〜300msである。いくつかの電力システムに関して、より短い時間が必要とされ、それは、今日市販されている保護リレーにおいて使用可能なものよりもより高速なロジックを必要としうる。
【0064】
・バスの不足電圧が検出される。
【0065】
バスの反対側のリレーに、そうすべき場合に阻止信号を発しさせない故障が存在する場合、リレーはいずれにせよ遅延T2の後、方向性過電流でトリップする。特に、T2はT1よりも長くなければならない。遮断器は無方向性過電流でトリップされる。
【0066】
図5は、シーメンス社SIPROTEC(商標)リレーおよび方向性地絡について図4に記載されるロジック回路469の一部を開示する。ここで、ANDゲート573は端子574において方向性過電流を示す情報を、および、端子576において不足電流を示す情報を受け取る。ORゲート579はANDゲート573の結果を受け取り、端子580において方向性地絡を示す情報を受け取る。
【0067】
図6および7は、一実施形態におけるDP2クラスの浮体構造体のための2室スイッチギア(SWG)の主単線結線図を示す。図6および7の2つの部分に示される配電システム600は、中間スイッチ611により接続される8個のバスを有する。スイッチ611は図1に示されるスイッチ111として構成され、したがって、それぞれリレーおよび遮断器を有する。各リレーは対応する遮断器を制御する。図6において、配電システム600のこれらの構成要素は、第1の区画に配置されて示され、図7は別の分離された区画に配置された配電システム600のこれらの構成要素を示す。バス601はスイッチ611により接続され、リング構造を形成している。2つの異なる区画に配置されている配電システム600の各部分は、2本のケーブル602により互いに接続されている。
【0068】
図8および9はDP3クラスの浮体構造体型配電システム800のための4室スイッチギアの主単線結線図を示す。第1の区画および第2の区画に含まれる配電システムの各部分が図8に示されており、第3の区画および第4の区画に配置された配電システム800の各部分が図9に示されている。8個のバス801はスイッチ811を使用して互いに接続されて、リング構造を形成している。異なる区画に配置された配電システム800の各部分は4本のケーブル802により互いに接続されている。発電機819(図示の実施形態では8つの発電機が設けられている)はバスに電気エネルギーを供給し、バスから負荷823に供給される(図示の実施形態では8個のスラスタが負荷として接続されている)。
【0069】
図10および11は、DP3クラスの浮体構造体型の配電システム1000のための8室スイッチギアの主単線結線図を示す。第1〜第4の区画を含む配電システム1000の各部分が図10に示されており、第5〜第8の区画に配置される配電システム1000の各部分が図11に示されている。複数のバス1001は複数のスイッチ1011により接続されてリング構造を形成している。発電機1019はバスに電気エネルギーを供給し、バスから複数の負荷1023に供給される。
【0070】
図12は、図1、6および7、8および9、または、図10および11に示される配電システムを用いることができる浮体構造体1280を概略的に示す。浮体構造体1280は2つのフロート1282(海中に沈められる)を有し、各フロートは4つのスラスタ1223を有する。スラスタ1223は、浮体構造体1280の安全な動作のために、配電システム(図示せず)たとえば上述のシステム1000、システム600、システム800またはシステム1000により電気エネルギーが供給される。
【0071】
「含む」、「有する」の語は他の要素またはステップを排除するものではなく、「1つの」の記載は複数を排除するものではない。さらに、異なる実施形態と関連して記載された要素は組み合わされてもよい。請求項中の参照符号は請求項の発明の範囲を限定するものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12