(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5710020
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】設定調整可能な非線形の支援補助力を備えた電気機械式制動力倍力装置
(51)【国際特許分類】
B60T 13/74 20060101AFI20150409BHJP
【FI】
B60T13/74 Z
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-542443(P2013-542443)
(86)(22)【出願日】2011年11月16日
(65)【公表番号】特表2013-544709(P2013-544709A)
(43)【公表日】2013年12月19日
(86)【国際出願番号】EP2011070231
(87)【国際公開番号】WO2012076304
(87)【国際公開日】20120614
【審査請求日】2013年6月10日
(31)【優先権主張番号】102010062785.2
(32)【優先日】2010年12月10日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−マルク リット
(72)【発明者】
【氏名】ハンス−ペーター ドムシュ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン マイヤー
(72)【発明者】
【氏名】リン フォイアーローア
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン デモント
(72)【発明者】
【氏名】マーティン−ペーター ボルツ
(72)【発明者】
【氏名】ヨヘン メンヒ
【審査官】
塚原 一久
(56)【参考文献】
【文献】
独国特許出願公開第102006027039(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 13/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設定調整可能な非線形の支援補助力を備えた電気機械式制動力倍力装置において、
ブレーキブースターピストン(10)と、
スレッドロッド(30)と、
前記スレッドロッド(30)を駆動する電気モーター(20)と、
前記スレッドロッド(30)の長手軸に沿って、前記スレッドロッド(30)に対して並進移動可能な設定調整手段(50)と、
前記ブレーキブースターピストン(10)に可変の補助力をかけるべく、当該ブレーキブースターピストン(10)に前記設定調整手段(50)を連結させるための連結伝動装置(40)と
を含み、
前記スレッドロッド(30)は、前記電気モーター(20)による前記スレッドロッド(30)の駆動によって前記設定調整手段(50)を前記スレッドロッドの長手軸に沿って移動させるために、前記設定調整手段(50)に連結されており、
前記連結伝動装置(40)は、少なくとも1つの第1のレバーアーム(41)と少なくとも1つの第2のレバーアーム(42)とを有しており、前記連結伝動装置(40)の第1及び第2のレバーアーム(41,42)はそれぞれ、前記設定調整手段(50)と前記ブレーキブースターピストン(10)の両側に対称的に配設されている、
ことを特徴とする、電気機械式制動力倍力装置。
【請求項2】
前記連結伝動装置(40)の第1のレバーアーム(41)は前記設定調整手段(50)とジョイント式に連結している、請求項1記載の電気機械式制動力倍力装置。
【請求項3】
前記連結伝動装置(40)は、第3のレバーアーム(43)を有しており、前記第2のレバーアーム(42)は前記第3のレバーアーム(43)とジョイント式に連結されており、前記第3のレバーアーム(43)は車両とジョイント式に連結されている、請求項1または2記載の電気機械式制動力倍力装置。
【請求項4】
前記第2のレバーアーム(42)は回転軸(60)を用いて前記ブレーキブースターピストン(10)とジョイント式に連結されており、前記第2のレバーアーム(42)の、前記回転軸(60)から前記第1のレバーアーム(41)方向の長さは、前記第2のレバーアーム(42)の、前記回転軸(60)から前記第3のレバーアーム(43)方向の長さよりも長い、請求項3記載の電気機械式制動力倍力装置。
【請求項5】
前記連結伝動装置(40)は、補償調整レバーアーム(44)を有し、前記第2のレバーアーム(42)は前記補償調整レバーアーム(44)を介して前記ブレーキブースターピストン(10)と連結され、前記第2のレバーアーム(42)の長手方向端部は車両とジョイント式に連結されている、請求項1または2記載の電気機械式制動力倍力装置。
【請求項6】
前記第2のレバーアーム(42)は、前記第1のレバーアーム(41)に対して、少なくとも2.5倍の長さを有する、請求項1から5いずれか1項記載の電気機械式制動力倍力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械式制動力倍力装置、とりわけ電気モーターにより設定調整可能な非線形の支援補助力を備えた電気機械式制動力倍力装置に関している。
【背景技術】
【0002】
制動力倍力装置とは、制動時のドライバーの負担を軽減するための支援装置のことであり、この装置はブレーキペダルの操作の際にマスターシリンダーに対する支援補助力を形成している。この支援補助力は、マスターシリンダーに対するブレーキペダル踏力のさらなる付加的助力となる。そのため、車両ブレーキペダルにおいて所望の制動作用を達成するのに必要となる操作力が軽減される。大抵の自家用車や軽運送車両に組み込まれている負圧式制動力倍力装置では、当該装置の支援補助力が、大気圧とエンジンブロックにおける負圧との間の圧力差を利用して形成されてきていた。
【0003】
しかしながら最新のディーゼルエンジンやFSI直噴エンジンのもとでは、いずれにせよ負圧式制動力倍力装置の作動のために使用できるエンジンブロックにおける圧力差はもはや存在しない。そのためこの種の最新エンジンのもとでは、ここにきて付加的に組み込むことのできる電気式負圧ポンプ又は内燃機関駆動式の負圧ポンプが、制動力倍力装置の作動に必要な真空状態を提供する。しかしながらこの負圧ポンプには、付属の比較的大きな組み込みチャンバーに必要とされるホース配管と、それに伴う車両重量の不所望な増加に基づく欠点が伴ってしまう。
【0004】
それに対して代替的ないわゆる電気機械式制動力倍力装置では、電気モーターが所定のトルクを形成し、このトルクが連結装置を用いて制動力倍力装置の支援補助力に変換される。
【0005】
WO2008/128811A1明細書からは、次のような電気機械式制動力倍力装置が公知である。すなわち電気モーターが可変の伝達比で機械的な伝動装置を駆動し、この伝動装置がマスターシリンダーに対する支援補助力を提供している電気機械式制動力倍力装置である。ここでの欠点は、前記の機械的伝動装置において、マスターシリンダーに対する支援補助力の可変の伝達比のためにラックとピニオンギヤからなる少なくとも1つの組み合わせ機構が必要とされることである。なぜならこの組み合わせ機構は基本的に当該装置内の遊びの原因にもなっているからである。さらに前記機械的伝動装置は、相応に大きな組み込み空間を備えた軸受けを必要とし、また精密に製造された高価な部材の取付けにもコストがかかってしまう。
【0006】
それ故に本発明の課題は、ブレーキシリンダーに対する支援補助力が、ブレーキペダルの位置に応じて可変に設定調整可能である、簡素化された機械式伝動装置を備えた電気機械式制動力倍力装置を提供することである。その他にも本発明による電気機械式制動力倍力装置では、装置内の遊びが低減されるべきであり、さらに当該電気機械式制動力倍力装置の製造と取付けに必要な構成部材も簡素化されるべきである。
【0007】
発明の開示
前記課題は、請求項1の特徴部分に記載された本発明による電気機械式制動力倍力装置によって解決される。
【0008】
本発明の別の有利な構成及び1実施例は従属請求項にも記載されている。
【0009】
本発明による、設定調整可能な非線形の支援補助力を備えた電気機械式制動力倍力装置の第1実施例によれば、
ブレーキブースターピストンと、
並進移動可能な設定調整手段と、
前記ブレーキブースターピストンに可変の補助力をかけるべく、当該ブレーキブースターピストンに前記設定調整手段を連結させるための非線形連結伝動装置とを含んでいる。
【0010】
さらに請求項1記載の制動力倍力装置は有利には、
スレッドロッドと、
前記スレッドロッドを駆動する電気モーターとを含み、前記スレッドロッドは、その駆動によって設定調整手段を当該スレッドロッドの長手軸に沿って移動させるために、前記設定調整手段に連結されている。
【0011】
特に有利には、前記連結伝動装置は、少なくとも1つの第1のレバーアームと少なくとも1つの第2のレバーアームとを有している。
【0012】
本発明による電気機械式制動力倍力装置では、可変の伝達比の実現のためのラックとピニオンギヤの組み合わせからなる機械的伝動装置の使用が省略できるようになる。なぜならここでは簡素化されたレバーアーム原理が適用されているからである。その結果として本発明による電気機械式制動力倍力装置では、複数の歯車を備えた装置に対する装置内の遊びが低減される。このことは、制御精度の向上とドライバーに対する快適性の向上をもたらす。
【0013】
本発明による電気機械式制動力倍力装置では、連結伝動装置が作動中にスレッドロッド上の設定調整手段の位置に依存して、非線形の支援補助力をブレーキブースターピストンに伝達し、その際の支援補助力は、連結伝動装置のレバーアームの選択された長さに比例して増幅される。前記連結伝動装置とは一般的に、回転運動を直線運動若しくは揺動運動に変換する、ないしは直線運動若しくは揺動運動を回転運動に変換する、伝動装置のことである。その他に前記伝動装置は不均一に変速される伝動装置でもある。本発明による支援補助力は、レバーアーム効果によってスレッドロッド上の設定調整手段の位置に応じて非線形的な特性となる。このことは、電気機械式制動力倍力装置にとって利点につながる。なぜならブレーキペダルの踏力の増加と共にこの非線形特性も増加するからである。
【0014】
本発明による電気機械式制動力倍力装置のさらなる利点は、連結伝動装置を用いた可変の伝達比実現のために必要な部材の僅かな数と簡単な構造形式にある。そのため本発明による連結伝動装置はもっとも簡単な構造形式によれば、このことに対して長さの異なる2つのレバーアームが必要となるだけである。これらのレバーアームはそれぞれ相互にジョイント式に並びに前記設定調整手段とブレーキブースターピストンにもジョイント式に連結している。これにより製造コストと取付けコストが大幅に低減する。コスト増の示唆が強いラックとピニオンギヤの組み合わせの取付け、並びに付属の軸受けの取付けは、本発明による電気機械式制動力倍力装置の場合には省略される。
【0015】
さらに本発明による電気機械式制動力倍力装置のさらに別の実施例によれば、前記連結伝動装置のレバーアームがそれぞれ、前記設定調整手段とブレーキブースターピストンの向かい側に対称的に配設されている。連結伝動装置においてその連結部とレバーの数を倍にして前記設定調整手段とブレーキブースターピストンのそれぞれの側に配置するならば、ブレーキブースターピストンと設定調整手段のそれぞれの側に作用する応力が補償され、それによってこれらの部材に対する不所望なモーメントは解消される。
【0016】
さらに有利には、前記連結伝動装置の第1のレバーアームは前記設定調整手段とジョイント式に連結されてもよい。有利にはこのジョイント式の連結部は特に回転に対する自由度を有する。ここでの連結は、前記連結伝動装置と設定調整手段との間の簡素で不所望な緊張のない直接的な連結を提供する。
【0017】
本発明による電気機械式制動力倍力装置では前記設定調整手段が一体式の部材であってもよい。それにより当該設定調整手段はその最も簡素な構造形式、例えばナットのような雌ねじの形態や、スレッドロッドの雄ねじに適合する内ネジの切られたブッシュの形態で構成されていてもよいし、連結伝動装置の第1のレバーアームにジョイント式に連結するための手段を有するものであってもよい。それに対してはさらに代替的に前記設定調整手段が一体式の部材であってもよい。
【0018】
さらに本発明による電気機械式制動力倍力装置では、スレッドロッドがブレーキブースターピストンの上方に配置されていてもよい。電気機械式制動力倍力装置の等価的代替手段によれば、前記スレッドロッドは、ブレーキブースターピストンの下方に配置されていてもよい。前記スレッドロッドと設定調整手段ないしブレーキブースターピストンの取付け位置は、この場合車輌メーカー側の希望に添って選択することが可能である。有利には、前記スレッドロッドの回転軸と前記ブレーキブースターピストンの対称軸は、垂直方向の共通の面に存在する。
【0019】
さらに前記設定調整手段は、作動中にブレーキブースターピストンに対する支援補助力の増加と共にそこから離れるように動いていてもよい。その際には前記設定調整手段に対する基準点として、ブレーキペダルが操作されていない場合の初期位置が選択されてもよい。この設定調整手段の初期位置は電気モーターのすぐ近くにある。
【0020】
本発明による電気機械式制動力倍力装置のさらなる別の有利な実施例によれば、前記連結伝動装置は、第3のレバーアームを有しており、前記第2のレバーアームは前記第3のレバーアームとジョイント式に連結されており、前記第3のレバーアームは車両とジョイント式に連結されている。それによりとりわけ第2のレバーアームの長手端部は第3のレバーアームとジョイント式に連結される。この第3のレバーアームは、設定調整手段が作動中にスレッドロッド上を往復運動すると同時に、連結伝動装置からの応力をブレーキブースターピストンに緊張なしで伝達するために設けられている。
【0021】
本発明による電気機械式制動力倍力装置のさらに別の有利な実施例によれば、前記第2のレバーアームは回転軸を用いて前記ブレーキブースターピストンとジョイント式に連結されており、前記第2のレバーアームの、前記回転軸から前記第1のレバーアーム方向の長さは、前記第2のレバーアームの、前記回転軸から前記第3のレバーアーム方向の長さよりも長い。この装置構成のもとでは、連結伝動装置のレバーアームの長さの設計仕様によって、非線形の支援補助力の特性と、最大限可能な支援補助力の設定を行うことが可能になる。
【0022】
本発明による電気機械式制動力倍力装置のさらに有利な構成によれば、前記連結伝動装置が補償調整レバーアームを有し、前記第2のレバーアームは前記補償調整レバーアームを介して前記ブレーキブースターピストンと連結され、前記第2のレバーアームの長手方向端部は車両とジョイント式に連結されている。この装置構成は、ブレーキブースターピストンと連結伝動装置との間の緊張のない結合のための代替的手段を表しており、ここでは作動中のブレーキブースターピストンの運動に対する垂直方向の補償調整が可能である。その際前記補償調整レバーアームの一方の長手方向端部がジョイント式にブレーキブースターピストンと連結され、それに対して別の長手方向端部は第2のレバーアームと、第2のレバーアームの長手方向に沿った所定の箇所においてジョイント式に連結される。
【0023】
本発明による電気機械式制動力倍力装置の別の有利な構成によれば、前記設定調整手段が共通のコンタクト領域においてスレッドロッドを完全に取り囲んでいてもよい。これに対して前記設定調整手段はナットのような雌ねじ形態や、スレッドロッドの雄ねじに適合する内ネジの切られたブッシュの形態で構成されてもよい。
【0024】
さらに本発明による電気機械式制動力倍力装置の別の有利な構成によれば、前記第2のレバーアームの長さの、前記第1のレバーアームの長さに対する比は、少なくとも2.5倍である。この2つのレバーアームの長さの比は、最大限可能な支援補助力の他に、作動中の設定調整手段の種々異なる位置に対する支援補助力の経過も定める。その際の非線形の経過特性は特に有利な結果として現れる。それに対して代替的に前記比が2.5よりは小さく、1.5よりも大きいならば(すなわち1.5〜2.5の間ならば)、この条件は、特に小出力のエンジンを備えた車両において十分に満たされる。なぜならそのような小型車のケースでは制動力倍力装置が制動に対して、相応に小さな支援補助力しか必要としないからである。
【0025】
本発明による電気機械式制動力倍力装置のさらに別の有利な構成によれば、ブレーキペダルがさらに別の連結伝動装置を介してブレーキブースターピストンに連結されていてもよい。それにより、特にブレーキブースターピストンは別の連結伝動装置のレバーアームと堅固に連結され得る。さらにこのレバーアームは、ブレーキブースターピストンの対称軸に対して同軸に配置されていてもよい。さらに代替的にブレーキブースターピストンは別の連結伝動装置のレバーアームとジョイント式に連結されていてもよい。
【0026】
本発明の有利な実施例は、以下の明細書で図面に基づいて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明による電気機械式制動力倍力装置の第1実施例の概略図
【
図2】ブレーキブースターピストンと車両への連結伝動装置のレバーアームの連結が変更されている本発明による電気機械式制動力倍力装置の第2実施例の概略図
【
図3】ブレーキペダル距離と制動力倍力装置の支援補助力Fとの間の所望の非線形の関係を示した図
【0028】
実施例の説明
図1には本発明による電気機械式制動力倍力装置の概略図が示されている。なお以下の明細書では同じ構成部材には同じ参照符号が付される。
【0029】
本発明による電気機械式制動力倍力装置は、ブレーキブースターピストン10を含んでいる。このブレーキブースターピストン10は、マスターシリンダー100に対して、車両200(図示せず)の制動力のための支援補助力を形成している。このブレーキブースターピストン10の支援補助力は、設定調整手段50を備えた電気モーター20の共同作業のもとで形成されており、形成された支援補助力は連結伝動装置40を介してブレーキブースターピストン10に伝達されている。前記連結伝動装置40は、前記設定調整手段50と共同作業しており、その位置に応じて当該連結伝動装置40の可変の伝達比を実現している。前記連結伝動装置40は、簡素なレバーアーム方式に従って動作しており、ここでは連結伝動装置40に対する設定調整手段50の引張り応力が、当該連結伝動装置40の可変のレバーアームの長さに比例して増幅される。
【0030】
電気モーター20は、ブレーキブースターピストン10の上方に配置されており、ここではブレーキブースターピストン10の対称軸と電気モーター20の対称軸が共通の垂直平面内に存在している。電気モーター20の被駆動軸は、スレッドロッド30によって形成されており、このスレッドロッド30は電気モーター20から出発してブレーキブースターピストン10の対称軸に対して実質的に平行に延在している。スレッドロッド30上には設定調整手段50が設けられており、この設定調整手段50は、スレッドロッド30の雄ねじに適合する内ネジの切られたブッシュの形態で構成されていてもよい。前記設定調整手段50は、例えばその全長に亘って前記スレッドロッド30の外周面、ないしは2つの部材間の共通のコンタクト領域を完全に取り囲んでいる。そのためこの設定調整手段50は前記スレッドロッド30に配置され、当該スレッドロッド30の回転のもとで当該スレッドロッド30に沿って移動する。
【0031】
前記連結伝動装置40は、第1のレバーアーム41と、第2のレバーアーム42と、第3のレバーアーム43とを含んでいる。これらのアームはそれぞれ回転軸を介して相互にジョイント式に連結されている。この場合2つのレバーアームの連結のもとでそれぞれ1つの回転自由度のみが許容される。ここでは連結伝動装置40のレバーアーム41,42,43が実質的に垂直平面内に配置され、それらの運動が当該垂直平面上で経過する。連結伝動装置40の第1のレバーアーム41は、設定調整手段50とジョイント式に連結される。第2のレバーアーム42は、回転軸60を介してブレーキブースターピストン10とジョイント式に連結される。その際回転軸60はブレーキブースターピストン10の外周面の領域において当該対称軸を通る水平平面内で配設されている。第3のレバーアーム43(これはブレーキブースターピストン10の下方に配置されている)は、そのさらに別の長手方向端部でもって車両200の軸受け、例えば車両ボディに連結している。
【0032】
連結伝動装置40の全てのレバーアームと回転軸は、ブレーキブースターピストン10と設定調整手段50のそれぞれの各側に配置され、それによって、ブレーキブースターピストン10の各側に導入された応力が補償調整され、それに伴い不所望なトルクが当該ブレーキブースターピストン10ないし設定調整手段50に作用することはない。
【0033】
制動力の増幅が何も必要ないときには、前記設定調整手段50は、その初期位置Aにある(この初期位置はスレッドロッド30の長手軸上で電気モーター20の一番近くにある)。電気機械式制動力倍力装置の作動中に支援補助力が必要になった場合には、電気モーター20は活動化し、これによって設定調整手段50は、その初期位置Aから電気モーター20から離れる方向でさらなる別の位置Bまで移動する。その際設定調整手段50は、スレッドロッド30の長手軸に沿って並進運動のみを行う。設定調整手段50の移動中は、連結伝動装置40との連結を介して応力が当該連結伝動装置40に導入される。この応力は、当該連結伝動装置40のレバーアーム41,42,43の位置に応じて異なるレベルで増幅され、そこからブレーキブースターピストン10に伝達される。
【0034】
電気機械式制動力倍力装置の最大限可能な支援補助力は、設定調整手段50が終端位置Cにある場合には(この位置は設定調整手段50が電気モーター20から最も離れたところにある)、連結伝動装置40を介してブレーキブースターピストン10に伝達される。前記設定調整手段50は作動中は2つの可能な限界位置A及びCの間でスレッドロッド30の長手軸に沿って軸方向の並進運動を実行する。その際の当該連結伝動装置40の伝達比はそのつど可変である。
【0035】
ブレーキペダル80は、別の連結伝動装置70を介してブレーキブースターピストン10に連結され、この場合別の連結伝動装置70のレバーアームが当該ブレーキブースターピストン10と堅固に連結される。このレバーアームはさらにブレーキブースターピストン10の対称軸と同軸に配置されている。
【0036】
図2にはブレーキブースターピストン10と車両200(図示せず)への連結伝動装置40の連結が変更されている本発明によるさらに別の電気機械式制動力倍力装置が示されている。ここでの電気モーター20、スレッドロッド30、設定調整手段50、ブレーキブースターピストン10、及び別の連結伝動装置70は、
図1の電気機械式制動力倍力装置と同一なものであるので、以下の明細書では、連結伝動装置40の構造に関する違いと連結伝動装置40とそのブレーキブースターピストン10への連結に関する違いのみを説明する。
【0037】
連結伝動装置40は、第1のレバーアーム41と、第2のレバーアーム42と、補償調整レバーアーム44とを含んでいる。第1のレバーアーム41は、設定調整手段50とジョイント式に連結され、それに対して第1のレバーアーム41の別の長手方向端部は、第2のレバーアーム42にジョイント式に連結されている。第2のレバーアーム42のさらに別の長手方向端部は、回転軸47を介して車両200の軸受けにジョイント式に連結される。この場合前記軸受けはブレーキブースターピストン10の下方にある。
【0038】
補償調整レバーアーム44は、回転軸45を介してブレーキブースターピストン10の外周面とジョイント式に連結されている。この場合前記回転軸45は、ブレーキブースターピストン10の端部区分領域における当該ブレーキブースターピストン10の対称軸を通る水平平面内に配置される。補償調整レバーアーム44の別の長手方向端部は、別の回転軸46を介して第2のレバーアーム42とジョイント式に連結されている。その際にさらなる回転軸46は第2のレバーアーム42の全長を非対称に分割し、さらに回転軸45のように実質的に垂直位置に存在する。補償調整レバーアーム44の長さは、ほぼ第1のレバーアーム41の長さに相当している。作動中に前記設定調整手段50が初期位置Aから後続の位置BないしCの方向に移動すると、当該補償調整レバーアーム44は、前記連結伝動装置40が支援補助力を緊張なしでブレーキブースターピストン10に導入することを引き起こし、前記補償調整レバーアーム44は作動中は垂直方向で僅かな移動しか実施しない。
【0039】
前記連結伝動装置40はブレーキブースターピストン10と設定調整手段50の両側において対称的に配置され、それによって、レバーアーム41、42、44がそれぞれ当該ブレーキブースターピストン10の両側に配置されている。
【0040】
図3には、ブレーキペダルの距離sと制動力倍力装置の支援補助力Fとの間の望ましい非線形の関係が示されている。
【0041】
レバーアーム作用に基づいて、制動力倍力装置の支援補助力Fとブレーキペダルの距離sとが相互に非線形の関係にあり、このことは当該制動力倍力装置の機能性にとって利点となる。そのためブレーキペダルの弱い操作しかなかった場合には、制動力倍力装置の支援補助力は何も形成されない。それに対してブレーキペダルの強い操作があった場合には、可及的に迅速な車両の制動のために当該制動力倍力装置の非常に大きな支援補助力が必要である。
図3による支援補助力Fの特性を備えた電気機械式制動力倍力装置のできるだけ簡素な構造に対しては、本発明による電気機械式制動力倍力装置の連結伝動装置の回転軸とレバーアームの前述してきたような配置構成によって本発明による電気機械式制動力倍力装置を類似の形態で実現することができる。
【0042】
図3の非線形の関係は質的に、ブレーキペダル踏力と制動力倍力装置の支援補助力とからなるマスターシリンダーに作用する応力全体に対しても当て嵌まる。