特許第5710028号(P5710028)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5710028能動負荷管理の使用を通じて配分可能な運転用予備力エネルギーキャパシティを推定及び供給するシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5710028
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】能動負荷管理の使用を通じて配分可能な運転用予備力エネルギーキャパシティを推定及び供給するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/32 20060101AFI20150409BHJP
   G06Q 50/06 20120101ALI20150409BHJP
【FI】
   H02J3/32
   G06Q50/06
【請求項の数】14
【全頁数】43
(21)【出願番号】特願2013-552597(P2013-552597)
(86)(22)【出願日】2012年2月1日
(65)【公表番号】特表2014-509177(P2014-509177A)
(43)【公表日】2014年4月10日
(86)【国際出願番号】US2012023488
(87)【国際公開番号】WO2012106431
(87)【国際公開日】20120809
【審査請求日】2013年10月2日
(31)【優先権主張番号】13/019,867
(32)【優先日】2011年2月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513196119
【氏名又は名称】コンサート インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(72)【発明者】
【氏名】フォーブス、ジュニア.、ジョセフ、ダブリュ.
【審査官】 田中 寛人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−142113(JP,A)
【文献】 特開平11−055856(JP,A)
【文献】 特開2007−151371(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3129836(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0063228(US,A1)
【文献】 特開2010−081722(JP,A)
【文献】 特開2004−222470(JP,A)
【文献】 特開2005−158020(JP,A)
【文献】 特開2009−245361(JP,A)
【文献】 特開2006−288162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F19/00−19/28
G06Q10/00−10/10
30/00−30/08
50/00−50/20
50/26−99/00
H02J3/00−5/00
13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上のサービスポイントのために稼動している電力設備の運転用予備力を推定するための方法であって、
前記1以上のサービスポイントに配置されている少なくとも第1の装置のセットによって少なくとも1の期間において消費される電力量を判定することにより、電力消費データを生成し、
前記電力消費データを記憶手段に記憶し、
少なくとも前記第1の装置のセットへ供給される電力が低減される間である制御イベントの発生を判定し、当該制御イベントは、電力設備からの運転予備力の要求に応じて、需要者が電力低減に自発的に参加する少なくとも前記第1の装置のセットに対して実行されるものであり、
前記制御イベントの発生の前において、当該制御イベントが生じないという仮定の下で少なくとも前記記憶された電力消費データに基づいて、当該制御イベントが発生すると予測される第1の期間において予測される前記第1の装置のセットの電力消費傾向を推定し、
前記制御イベントの発生の前において、少なくとも前記第1の装置のセットの前記予測された電力消費傾向に基づいて、当該制御イベントの結果として得られる予想節約エネルギーを判定し、
前記制御イベントの発生の前において、前記1以上のサービスポイントに位置する第2の装置のセットに蓄積された電力量を判定することにより、蓄電データを生成し、
前記制御イベントの発生の前に、前記予想節約エネルギー及び蓄電データに基づいて、利用可能な運転用予備力の量を判定する、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記方法は、さらに、前記制御イベントの開始の後に前記利用可能な運転用予備力を配分する、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電力設備は、再生可能エネルギー源によって生成された再生可能エネルギーの少なくとも一部を利用し、
前記利用可能な運転用予備力は、前記再生可能エネルギー源が発電不足の間に調整予備力を提供するために配分される、
ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、さらに、前記第1の制御イベントの開始の後に、前記利用可能な運転用予備力の配分を管理する、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
第1の制御イベントの発生の判定は、自動発電制御コマンドの受信に応じて第1の制御イベントの発生を判定することを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
予想節約エネルギーの判別は、
1以上の装置が前記制御イベントの影響を受ける各サービスポイント毎の中間的な予想節約エネルギーを判別し、
複数のサービスポイントの前記中間的な予想節約エネルギーを合計し、前記予想節約エネルギーを得る、ことを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
予想節約エネルギーの判定は、サービスポイント毎に実行される、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
予想節約エネルギーの判定は、電力設備単位で実行される、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の装置のセットは、1以上の電気またはハイブリッド自動車を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
1以上の遠隔地に配置されたサービスポイントであって、それぞれ、稼動時に電力を消費する装置を少なくとも1つ含むサービスポイントに、電力サービスを提供する電力設備であって、当該電力設備は、
記憶手段と、
前記記憶手段に接続された少なくとも1のプロセッサと、を備え、
前記少なくとも1のプロセッサは、
少なくとも第1の装置のセットによって少なくとも1の期間に消費される電力量を判定することにより、電力消費データを生成し、
前記電力消費データを記憶手段に記憶し、
少なくとも前記第1の装置のセットへ供給される電力が低減される間である制御イベントの発生を判定し、当該制御イベントは、電力設備からの運転予備力の要求に応じて、需要者が電力低減に自発的に参加する少なくとも前記第1の装置のセットに対して実行されるものであり、
前記制御イベントの発生の前において、当該制御イベントが生じないという仮定の下で少なくとも前記記憶された電力消費データに基づいて、当該制御イベントが発生すると予測される第1の期間において予想される前記第1の装置のセットの電力消費傾向を推定し、
前記制御イベントの発生の前において、少なくとも前記第1の装置のセットの前記予測された電力消費傾向に基づいて、当該制御イベントの結果として得られる予想節約エネルギーを判定し、
前記制御イベントの発生の前において、前記1以上のサービスポイントに位置する少なくとも第2の装置のセットに蓄積された電力量を判定することにより、蓄電データを生成し、
前記制御イベントの発生の前に、前記予想節約エネルギー及び蓄電データに基づいて、利用可能な運転用予備力の量を判定する、
ことを特徴とする電力設備。
【請求項11】
前記少なくとも1のプロセッサは、さらに、自動発電制御コマンドの受信に応じて前記制御イベントの発生を判定する、
ことを特徴とする請求項10に記載の電力設備。
【請求項12】
前記少なくとも1のプロセッサは、さらに、前記制御イベントの開始の後に前記利用可能な運転用予備力を配分する、ことを特徴とする請求項10に記載の電力設備。
【請求項13】
エネルギーを、1以上の要求している電力設備へ、当該1以上の要求している電力設備の運転用予備力として少なくとも提示する仮想電力設備であって、
記憶手段と、
前記記憶手段に接続された少なくとも1のプロセッサと、を備え、
前記少なくとも1のプロセッサは、
前記プロセッサに対して遠隔地に配置された第1の装置のセットによって少なくとも1の期間に消費される電力量を判定することにより、電力消費データを生成し、
電力消費データを前記記憶手段に記憶し、
前記第1の装置のセットへ供給される電力が低減される間である制御イベントが発生すると判定し、当該制御イベントは、電力設備からの運転予備力の要求に応じて、需要者が電力低減に自発的に参加する少なくとも前記第1の装置のセットに対して実行されるものであり、
前記制御イベントの発生の前において、当該制御イベントが生じないという仮定の下で少なくとも前記記憶された電力消費データに基づいて、当該制御イベントが発生すると予測される第1の期間において予測される前記第1の装置のセットの電力消費傾向を推定し、
前記制御イベントの発生の前において、少なくとも前記第1の装置のセットの前記予測された電力消費傾向に基づいて、当該制御イベントの結果として得られる予想節約エネルギーを判定し、
前記制御イベントの発生の前において、前記プロセッサに対して遠隔地に配置された第2の装置のセットに蓄積された電力量を判定することにより、蓄電データを生成し、
前記制御イベントの発生の前に、前記予想節約エネルギー及び蓄電データに基づいて、運転用予備力の量を判定し、
前記制御イベントの開始に続いて、少なくとも1の要求している電力設備へ配分される運転用予備力の量を管理する、
ことを特徴とする仮想電力設備。
【請求項14】
前記少なくとも1のプロセッサは、さらに、自動発電制御コマンドの受信に応じて前記制御イベントが生じると判別する、
ことを特徴とする請求項13に記載の仮想電力設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力供給及び発電システムの分野に係り、より詳細には、能動負荷管理を用いて電力設備に配分可能な運転用予備力エネルギーキャパシティを推定及び/または供給し、予備キャパシティを電力設備または一般の電力市場(例えば、全国高圧送電線網)に利用可能とするシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気施設のサービスエリアにおける電力需要はコンスタントに変化する。かかる電力需要の変化は、時宜にかなっていないと、望ましくない変動を電力線の周波数に引き起こす。かかる変化する需要に応えるためには、電力設備がその供給力またはキャパシティを調整しなければならない(例えば、需要が増加した場合にキャパシティを大きくしたり、需要が減少した場合には供給力を減少させる)。しかしながら、電力は経済的に蓄積することができないものであるので、電力設備は定期的に電気線上に新たなキャパシティを加えるか、あるいは、既存のキャパシティをオフラインにするかのいずれかを行う必要があり、これによって需要に応えて周波数を維持する。新たなキャパシティを電気線上に加えることは、典型的には「運転用予備力(operating reserve)」と呼ばれる電力設備の予備電力を利用することを含む。図1に、電力設備の典型的なエネルギーキャパシティを示すテーブルを図示する。図示するように、運転用予備力は、典型的には、3種類の電力を含む。すなわち、いわゆる「調整予備力(regulating reserve)」、「瞬動予備力(spinning reserve)」、及び「非瞬動予備力(non-spinning reserve)」又は「補助的予備力(supplemental reserve)」である。運転用予備力の様々な種類を後述して詳細に説明する。
【0003】
需要における通常の変動は、典型的には電力線の周波数に影響を与えないが、特定のアクティビティ、例えば、既存の発電機の出力の増減、または、新たな発電キャパシティの追加によって影響を受け、あるいは、それに適応する。当該適応は、一般的に、「経済給電(economic-dispatch)」と呼ばれる。「偶発性予備力(contingency
reserve)」と呼ばれる電力の一種は、追加の発電キャパシティであり、経済給電が変化する(増加する)需要に一致するようにするために利用可能である。偶発性予備力は、2種類の運転用予備力を含む。すなわち、瞬動予備力と、非瞬動予備力である。従って、運転用予備力は、一般的には、調整予備力と、偶発性予備力とを含む。
【0004】
図1に示すように、瞬動予備力は、すでにオンライン(例えば、電力システムに接続されていること)の追加の発電キャパシティであり、従って、即座に利用可能、あるいは、決定されたニーズの後の短い期間内(例えば、ノース・アメリカン・エレクトリック・リライアビリティ・コーポレーション(NERC)の定義によれば、10から15分以内)に利用可能となる。より詳細には、偶発性予備力を「瞬動予備力」に分類するためには、予備電力キャパシティが下記の基準に合致しなければならない。
a)送電系統に接続されること。
b)測定可能あるいは検証可能であること。
c)電力設備から配分されてから典型的には10から15分以内に負荷に完全に対応可能であること。ここで、瞬動予備力を配分するまでの時間的要求は、一般的には、送電系統のオペレータまたは他の調整電力設備、例えばNERCの影響を受ける。
【0005】
非瞬動予備力(補助的予備とも呼ばれる)は、オンラインではない追加の発電キャパシティであるが、瞬動予備力と同じ期間で応答することが求められるものである。典型的には、追加の電力を経済給電として利用する必要がある場合、電力設備は、その非瞬動予備力を使用する前に、その瞬動予備力を使用する。これは、(a)瞬動予備力キャパシティを発電する方法が、典型的には、非瞬動予備力を発電するための従来のワンウェイの需要応答方法等と比較して低コストであること、あるいは、(b)非瞬動予備力を発電することによる消費者への影響が、環境的配慮等の他の考慮すべき事項のために瞬動予備力を発電するために利用される選択肢よりも望ましくないため、である。例えば、瞬動予備力は、すでに電力設備の送電系統に接続されているタービンのローターのトルクを増加すること、あるいは、送電系統に接続されている燃料セルを利用することによって発電することができる。一方、非瞬動予備力は、単に、消費者側に接続された暖房/冷却システム等の抵抗的及び誘導的負荷をターンオフするだけで発電することができる。しかしながら、瞬動予備力あるいは非瞬動予備力の利用は、電力設備の追加コストにつながる。これは、燃料コスト、従来の需要応答による消費者側へのインセンティブ、メンテナンス、などが原因である。
【0006】
需要が急激にかつ定量的に変化し、電力設備の電気系統において線周波数に実質的な変動が生じた場合、電力設備はそれに対応して線周波数を修正しなければならない。そのようにするため、電力設備は、典型的には、自動発電コントロール(Automatic Generation Control,AGC)処理またはサブシステムを備えており、電力設備の調整予備力を制御する。需要に実質的な変化が生じたか否かを判断するため、各電力設備はそのエリア・コントロール・エラー(ACE)をモニタしている。電力設備のACEは、電力設備の接続線における予想的な実際の電力フローの差異に、電力設備の周波数バイアス設定によって定まる定数を掛けた、供給電力の実際の及び予想的な周波数の差異を加えたものと等しい。従って、ACEは、一般に下記のとおりに表すことができる。
ACE=(NI−NI)+(−10B)(F−F) (数1)
ここで、NIはすべての接続線の実際の電力フローの合計であり、NIは全ての接続線の予想的なフローの合計であり、Bは電力設備の周波数バイアス設定であり、Fは実際の線周波数であり、Fは予想された線周波数(典型的には、60Hz)である。
【0007】
上記のACEについての式を参考にすると、接続線上のキャパシティに対する負荷量は、量(NI−NI)を正または負にする。需要が供給またはキャパシティよりも大きい場合(すなわち、電力設備の発電または供給量が負の場合)、量(NI−NI)は負となり、これは典型的にはACEを負にする。一方、需要が供給よりも小さい場合、量(NI−NI)は正となり(すなわち、電力設備の発電または供給が過剰の場合である)、これは典型的にはACEを正とする。需要(例えば、負荷)またはキャパシティの量は、直接的に量(NI−NI)に影響を与える。従って、ACEは負荷に対する発電キャパシティの目安である。典型的には、電力設備はAGC処理を行ってそのACEをゼロにできるだけ近づくように維持しようと試みる。
【0008】
ACEがゼロ付近に維持されない場合は、線周波数が変化し、電力設備の系統に接続された電力消費装置に問題を引き起こす。理想的には、電力設備に接続された線へ供給される電力の総量は、負荷(電力消費装置)によって消費される電力及び任意の時間における送電線ロスの総量と等しくなければならない。しかしながら、実際の電力システムの運転においては、電力設備の発電による機械的な全電力は、負荷に消費される電力及び送電線ロスの総量と等しくない場合が多い。供給される電力と消費される電力とが等しくない場合、システムは、(例えば、発電機へ多量の電力がある場合)発電機がより速く回転するように加速して線周波数を上げるか、(例えば、発電機へ十分な電力がない場合)減速を行って線周波数を下げる。従って、線周波数の変動は、過剰な供給、及び過剰な需要によって生じる。
【0009】
AGCを利用して線周波数の変動に対応するには、典型的には、電力設備は「調整予備力」を利用する。これは、図1に示す運転用予備力の一種である。調整予備力は、必要に応じて、線周波数を一定にするために利用される。従って、調整予備力は、必要な場合には略即座に(例えば、約5分未満の数秒)利用可能でなくてはならない。ガバナは典型的には、電力設備の発電システム内に組み込まれており、個別の発電機の出力を増減して負荷における分毎の変化に対応し、これによって電力設備の調整予備力を利用可能にしたり切り離したりする。
【0010】
連邦エネルギー規制委員会(FERC)及びNERCは、需要者側マネージメント(DSM)を、需要の変化に対応する追加の手法として提案している。DSMは電力設備がピーク期間における需要を減らす動作を行うようにする方法である。DSMの例としては、節電を促進すること、ピーク期間における電力価格を変更すること、直接的な負荷制御等を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国公開特許公報第2009/0062970号
【特許文献2】米国公開特許公報第2009/0063228号
【特許文献3】米国公開特許公報第2010/0235008号
【特許文献4】米国公開特許公報第2011/0022239号
【特許文献5】米国特許第7715951号公報
【特許文献6】米国公開特許公報第2010/0161148号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
DSMを用いて需要の増加に対応する現在のアプローチは、DSMによって除かれた予測負荷の平均量を概算する統計とともに、負荷を遮断する一方向のスイッチを利用することを含む。統計的なアプローチは、電力設備がDSMの負荷制御の結果として系統から除かれる実際の負荷を測定することができないために採用されている。加えて、現在のDSMアプローチは、100あるいはそれ以上のサービスポイント(家庭用途及び/またはビジネス用途)毎の単一の電力計測メータを用いることに限定されている。従って、現在のDSMアプローチは、予測を行って実際に除かれた負荷を測定する際に実際のデータよりもむしろ統計的な傾向及びサンプルによって影響を受けるので、適切ではない。
【0013】
さらに近年では、FERC及びNERCは、DSMの構成要素として、フレキシブル負荷形状化プログラムのコンセプトを提案している。当該プログラムは、消費者に、タイミング及びDSMの負荷制御の信頼性を考慮して、その嗜好を電力設備側に知らせることができるようにする。しかしながら、負荷形状化プログラムを用いたDSMアプローチは、調整予備力または瞬動予備力を実現するための基準の全てに適応するわけではない。当該基準としては、例えば、15分以内に配分可能とする、ということが挙げられる。加えて、発電源を配分可能な電力とみなすためには、電力設備に供給される前に24時間の予測が必要となる。現在のDSMアプローチは、統計に非常に強く依拠しているために事前の24時間の正確な予測を容易とすることはできない。
【0014】
従って、電力設備には、正確な予測とともにフレキシブルな負荷形状化技術を用いて運転用予備力、特に、調整及び/または瞬動予備力を生成することが求められている。さらに、消費者がその電力消費の嗜好を電力設備側に分かるようにして電力設備においてその嗜好を利用して増加した需要に対応して線周波数の調整を維持できるようにするといった2方向のアプローチへ消費者を参加させることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の1の観点によれば、1以上のサービスポイントのために稼動している電力設備の運転用予備力を推定するための方法であって、前記1以上のサービスポイントに配置されている少なくとも第1の装置のセットによって少なくとも1の期間において消費される電力量を判定することにより、電力消費データを生成し、前記電力消費データを記憶手段に記憶し、少なくとも前記第1の装置のセットへ供給される電力が低減される間である制御イベントの発生を判定し、前記制御イベントの発生の前において、当該制御イベントが生じないという仮定の下で少なくとも前記記憶された電力消費データに基づいて、当該制御イベントが発生すると予測される第1の期間において予測される前記第1の装置のセットの電力消費傾向を推定し、前記制御イベントの発生の前において、少なくとも前記第1の装置のセットの前記予測された電力消費傾向に基づいて、当該制御イベントの結果として得られる予想節約エネルギーを判定し、前記制御イベントの発生の前において、前記1以上のサービスポイントに位置する第2の装置のセットに蓄積された電力量を判定することにより、蓄電データを生成し、前記制御イベントの発生の前に、前記予想節約エネルギー及び蓄電データに基づいて、利用可能な運転用予備力の量を判定する、
ことを特徴とする方法が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の1の観点によれば、正確な予測とともにフレキシブルな負荷形状化技術を用いて運転用予備力、特に、調整及び/または瞬動予備力を生成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】基本的な負荷の電力要求と電力設備に利用可能な運転用予備力を示すテーブルである。
図2】本発明に従って、能動負荷管理システムが追加の運転用(例えば、調整、運転、及び/または非運転)予備力を電力設備に供給する様子を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に係る、IPに依拠した能動負荷管理システムの一例を示すブロック図である。
図4図3に示す電力負荷管理システムにおける能動負荷監督装置の一例を示すブロック図である。
図5図4の能動負荷監督装置または電力設備の他の部位におけるサンプリング記憶手段の生成の一例を示すブロック図である。
図6】本発明の一実施形態に係る、消費者が環境依存型の電力消費装置についてデバイスパフォーマンス及び節電傾向を指定するためのウェブブラウザインターフェイスの一例を示す画面図である。
図7】本発明の別の実施形態に係る、消費者が環境依存型の電力消費装置についてデバイスパフォーマンス及び節電傾向を指定するためのウェブブラウザインターフェイスの一例を示す画面図である。
図8】本発明の例示的な実施形態に係る、電力消費装置の電力消費を経験的に分析し、当該電力消費の分析の結果であるデータサンプルを記憶手段に保存する方法を示す動作フローチャートである。
図9】本発明の例示的な実施形態に係る、電力消費装置の電力消費を予想する方法を示す動作フローチャートである。
図10】本発明の例示的な実施形態に係る、電力消費装置の電力消費傾向を推定する方法を示す動作フローチャートである。
図11】本発明の例示的な実施形態に係る、制御イベントの間に電力消費装置への電力遮断を通じて節電を予想する方法を示す動作フローチャートである。
図12】本発明の例示的な実施形態に係る、予想された期間に電力設備の負荷プロファイルを示すグラフであって、実際の電力消費とともに、制御あり、なしの場合に決定された予想電力消費を示すグラフである。
図13】本発明の例示的な実施形態に係る、仮想電力設備を実現するためのシステムを示すブロック図である。
図14図3に示す能動負荷管理システムに用いる能動負荷クライアント及び家庭用またはスマートブレーカー負荷センタの一例を示すブロック図である。
図15】本発明の代替的な例示の実施形態に係る方法であって、能動負荷クライアント等の制御装置に、データをALD100等の中央コントローラに提供させるとともに電力を電力設備の電力系統に供給させて中央コントローラに利用可能な運転用予備力を予想及び供給させるための方法を示す動作フローチャートである。
図16】本発明の別の例示的な実施形態に係る、電力設備への運転用予備力を予測して供給する方法を示す動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の例示的な実施形態を詳細に説明するにあたり、当該実施形態は、主に、装置の構成要素と、個別のサービスポイント(例えば、個別の契約者拠点)及び電力設備のサービスエリア全体での電力負荷を能動的にモニタリングして管理するとともに、当該電力負荷のモニタリング及び管理による節電予想によってもたらされる、利用可能なまたは配分可能な運転用予備力を決定するプロセスステップとの組み合わせに係ることが理解されるべきである。そこで、装置及び方法の構成要素が、適宜図中の参照番号によって示されるが、当該図面は本発明の実施形態の理解を容易にするために特定の詳細のみを示して本開示の詳細を明瞭にしているが、当該詳細は以下の説明に基づいて当業者にとって容易に理解されうるであろう。
【0019】
本明細書において、例えば、「第一」及び「第二」、「上部」及び「下部」等の関連語は、一の実体あるいは要素を他の実体あるいは要素から区別するためのみに使用され、当該実体あるいは要素間で特定の物理的なあるいは論理的な関連性や順序を必要とするものではない。「備える」、「含む」、その他の類似の語は、非排他的な包含をカバーする目的で用いられ、要素のリストを含むプロセス、方法、物、または装置は、それらの要素を含むだけでなく、特記していない、あるいは、当該プロセス、方法、物、または装置に付き物な他の要素を含む場合もある。任意の目的物または動作手段とともに使用される「複数の」の語は、2以上の当該目的物または動作を指す。物の名称に付随する「a」、「an」の冠詞は、特定の限定的説明がない限り、上記要素を含むプロセス、方法、物、または装置において追加の同一要素を含まないものとする。
【0020】
また、「ジグビー(ZigBee)」の語は、規格802.15.4または他の後継の規格に準拠してIEEE(Institute of Electronics & Electrical Engineers)に採用された任意の無線通信プロトコルを示し、「ブルートゥース」の語は、IEEE規格802.15.1または他の後継規格に採用された近距離通信プロトコルを示す。「High Speed Packet Data Access(HSPA)」の語は、サード・ジェネレーション・パートナーシップ・プロジェクト(3GPP)、Global System for Mobile Communications(GSM)規格の発展を参照して第3世代のユニバーサル・モバイルテレコミュニケーションズ・システム(UMTS)プロトコル(例えば、3GPPリリース7またはそれ以降のもの)を超えてテレコミュニケーションズ・インダストリー・アソシエーション(TIA)、インターナショナル・テレコミュニケーション・ユニオン(ITU)、その他のモバイルテレコミュニケーション規格団体に採用された任意の通信プロトコルを示す。「ロングタームエボリューション(LTE)」の語は、GSMベースのネットワークの音声、映像及びデータ規格であってHSPA(例えば、3GPPリリース8またはそれ以降のもの)に代わるものとして予期される規格の発展を参照してサード・ジェネレーション・パートナーシップ・プロジェクト(3GPP)、TIA、ITU、その他のモバイルテレコミュニケーション規格団体に採用された任意の通信プロトコルを示す。「Code Division Multiple Access(CDMA)Evolution
Date-Optimized(EVDO)Revision A(CDMA EVDO Rev. A)」の語は、規格TIA−856Rev.Aに基づいてITUに採用された通信プロトコルを示す。「GPS」の語は、当業者によく知られているように、グローバルポジショニングシステムを示し、任意のポジショニングユニットまたはソフトウェアの使用をも意味する。
【0021】
「設備」、「電気設備」、「電力設備」、「電気力設備」の語は、電力を発電してその消費者に分配するものをいう。ここで、消費者は、電力を発電電力設備から購入してさらにその需要者に分配し、または、太陽発電、風力発電、負荷制御等の代替的な電力源によって現実にまたは仮想的に発電された電力を、FERC電力系統等を介して発電または電力配分電力設備に供給するものを含む。従って、電力設備は、発電電力設備、自治体、電力会社、個別のシステムオペレータ(ISO)、系統オペレータ、地域送電機関(RTO)、または、負荷延期または他の非供給メカニズムによって少なくとも電力の一部を仮想的に供給する仮想電力設備を含む。「エネルギー」及び「電力」の語は、互いに置き換え可能な語である。「運転用予備力」、「瞬動予備力」、「調整予備力」、「非瞬動予備力」、「補助的予備力」、及び「偶発性予備力」の語は、本発明が属する分野において既知の語であり、それらの語の用法及び相関関係は、上記の段落[0003]から[0006]及び[0010]に開示されている。「環境」の語は、装置またはサービスポイントに関連した空気の温度、湿度、気圧、風速、降雨量、水温等(例えば、温水ヒータまたはスイミングプールの水の温度)の一般的な条件を示す。本明細書で用いられる「装置」の語は、電力消費装置、電力蓄積装置、及び/または発電装置を意味し、これらの語を使用する特定の文脈を通じて理解されるところである。電力消費装置に関しては、サービスポイントにおいて、主に異なる2種類の装置がある場合がある。すなわち、環境依存型の装置と、環境非依存型の装置とである。環境依存型の装置は、温度、湿度、気圧、または他の様々な特性等の環境の特性を検出する1以上のセンサに基づいて電源をオンオフしたりその動作特性を変更する任意の電力消費装置である。環境依存型の装置は、その動作が直接的に環境に影響を与え、及び/あるいは、環境から影響を受ける。環境非依存型の装置は、任意の環境センサからの入力によらずに電源をオンオフしたりその動作特性を変更する任意の電力消費装置である。一般的に、環境非依存型の装置は、その動作が直接的に環境に影響を与えることがなく、また環境から影響を受けることもないが、当業者にとっては、環境非依存型の装置の動作が間接的に環境に影響を与え、また場合によっては環境から影響を受けることがあることは容易に認識されるところである。例えば、冷蔵庫や他の家電は、その動作中に熱を発生することが当業者にとっては理解されうることである。従って、当該装置の近傍の空気の温度を上げる。電力消費装置は、電気を用いる任意の抵抗負荷消費装置及び/または誘導性装置(例えば、モータ)を含む場合がある。いくつかの装置は、その測地地点を変更することが可能であり、及び/またはその機能を変更することも可能である。例えば、電気またはハイブリッド電気自動車は、一のサービスポイントから他のサービスポイントに移動し、電力消費装置として機能する(例えば、そのバッテリに蓄積された電気を消費する)とともに、その一方で、電力蓄積装置としても機能する(例えば、そのバッテリが完全あるいは部分的に充電されている間で当該自動車が移動手段として使用されていない間)。
【0022】
以下に説明するシステムの実施形態や構成要素は、1以上の既存のプロセッサと、当該1以上のプロセッサを制御して特定の非プロセッサ式回路とともに電力設備の利用可能あるいは配分可能な運転用(例えば、調整及び運転)予備力を判定する機能の一部、ほとんど、あるいは全てを実現するための特徴的な記憶されたプログラムインストラクションとから構成される。当該運転用予備力は、以下に記載する1以上の能動負荷管理システムにおける負荷のモニタリング及び管理の結果である節電予想から得られるものである。非プロセッサ型の回路は、電波受信機、電波発信機、アンテナ、モデム、信号装置、計時回路、電源回路、リレー、メータ、メモリ、スマートブレーカー、電流センサ、及びユーザ入力装置を含むが、これらに限定されるものではない。これらの装置の機能は、情報を記憶して分配し、電力負荷管理システムにおける装置間での信号を制御する方法のステップとして解釈されうる。あるいは、一部または全ての機能は、プログラムインストラクションが記憶されていない状態機械、または、1以上のアプリケーションスペシフィックインテグレーテッドサーキット(ASIC)によって実現され、当該ASICにおいては各機能またはそれらの機能の組み合わせがカスタムロジックとして実現される。言うまでもなく、上述したアプローチの組み合わせが適用可能である。これら機能のための方法及び手段が本明細書に開示される。さらに、当業者にとっては、多大な努力と、例えば、時間、現在の技術、及び経済的に考慮すべき事項によって動機づけされた設計の選択を行うことがあったとしても、本明細書の開示によって当該開示のコンセプトや原理に触れることにより、当業者は、必要以上の実験を行うことなく、容易にソフトウェアインストラクション、プログラム、集積回路(IC)の作成、及び、非プロセッサ型の回路の適宜の配置及び機能的な集積が可能となる。
【0023】
一般的に、本発明は1以上のサービスポイントでサービスを行う電力設備用の運転用予備力(例えば、運転及び/または調整予備力)を推定するシステム及び方法を提供する。1の実施形態においては、電力設備は能動負荷管理システム(ALMS)を備え、遠隔で、1以上のサービスポイントに位置するとともに電力を電力設備から授受して電力消費データを生成する少なくとも1つの装置が少なくとも1の期間に消費する電力を判別する。電力消費データは、記憶手段に周期的に記憶されて更新される。ALMSまたはその制御要素、例えば、能動負荷監督装置(ALD)は、制御イベントの開始の前に、1以上の装置への電力が遮断あるいは低減される制御イベント用の予測される将来の期間を判定する。ALMSまたはその制御要素は、(i)制御イベントの期間において予測される装置の電力消費傾向を、少なくとも記憶された電力消費データに基づいて推定し、(ii)少なくとも推定された装置の電力消費傾向に基づいて、制御イベントの結果である節電予想を決定し、また、節電予想に基づいて運転用(例えば、調整及び/または運転)予備力を決定する。決定された運転用予備力は、既存の電力系統(例えば、連邦エネルギー規制委員会)を介して現在の電力設備または電力市場に利用可能となる。1の実施形態においては、ALDは、内部記憶手段(例えば、データベース、マトリックス、または他の記憶媒体)に、個別サービスポイントにおける個別の装置が通常の動作及び制御イベントの間にどの位電力を消費するか、あるいは、どのように動作するかを示す測定データを記憶する。電力消費データは、装置の動作状況(例えば、電流引き込み、デューティサイクル、動作電圧)を定期的に(例えば、周期的)サンプリングすることによって更新される。ALDが電力設備の電力系統用に最初にALMSにインストールされた場合、調整及び瞬動予備力を予測するためのデータがほとんどない。しかしながら、時間の経過に伴い、より多くのデータサンプルが利用されるようになり、記憶手段内のデータの質が改善される。当該記憶手段は電力消費及び節電の両方を予想するために利用される。これらの予想は1のサービスポイント全体、サービスポイントのグループ、あるいは電力設備全体毎に集約することができる。
【0024】
代替的な実施形態においては、記憶手段内に記憶されたデータサンプルのそれぞれを区別するための追加のデータを用いてもよい。当該追加のデータは、例えば、外気温度、週のうちの曜日、時刻、湿度、太陽光、風速、高度、窓やドアの配置、気圧、サービスポイントの電力効率比率、サービスポイントで使用されているインシュレーション等の変化する要因と関連付けされている。これら全ての変化する要因は、装置の電力消費に影響を与える。変化する要因データのうちのいくつかは、公共のソース、例えば、ローカル、州、または国の気象サービス、カレンダー、及び公表された情報から得ることができる。他の変化する要因データは、個人的に、ユーザインプットやサービスポイント近傍(例えば、居住空間またはビジネス空間)に配置された湿度、高度、温度(例えば、サーモスタット)、光学センサ等のセンサから得ることができる。
【0025】
図2は、本発明に従って動作しているALMSがどのようにして追加の運転用(例えば、調整、瞬動、及び/または非瞬動)予備力を電力設備に供給するかを示すブロック図である。本発明に従って動作するALMSを使用しない場合、電力設備は、図の左側に示すように、その基本負荷プラス調整予備力、瞬動予備力及び非瞬動予備力に等しいキャパシティを有する。一方、本発明に従って動作するALMSを使用した場合には、サービスポイントにおける、例えば空調機、加熱炉、温水ヒータ、プールのポンプ、ウォッシャ、ドライヤ、ボイラー、及び/または他の誘導あるいは抵抗負荷等の装置への電力の遮断または低減によって選択的にサービスポイントから引かれた追加の運転用予備力を、電力設備は、好ましくは、調整、瞬動、及び/または非瞬動予備力(図2参照)として用いることができるようになる。
【0026】
本発明は、図3から図16を参照することによってより詳細に理解できる。図中において、同様の要素には同様の参照番号を付している。図3は、本発明に係るIPベースの能動負荷管理システム(ALMS)10の一例を示し、当該ALMS10は、電力設備において利用され、当該電力設備は既存の発電電力設備あるいは仮想の電力設備である。ALMS10についての下記の説明は、本発明の実施形態に係る特定の開示に限定されている。ALMS10のより一般的及び詳細な説明が、本発明者の米国特許出願第11/895909号すなわち2009年3月5日に公開された米国公開特許公報第2009/0062970号に開示されている。これら文献の内容を、参照として本明細書に取り込むものとする。米国公開特許公報第2009/0062970号は、例えば居住またはビジネス用のサービスポイントにおける装置への電力を遮断または低減するための制御イベントの実行の一例を詳細に説明している。ALMS10を用いて仮想電力設備を実現することは、2007年12月13日に出願され、現在継続中の本発明者の米国特許出願第12/001819号に詳細に開示されている。当該特許出願は、2009年3月5日に公開された米国公開特許公報第2009/0063228号に対応し、その内容を本明細書に参照として取り込むものとする。
【0027】
ALMS10は、1以上の電力設備制御センタ(UCC)200(図中1つのみ示す)と、1以上のサービスポイント20(図中一例として1の居住用サービスポイントを示す)に配置された1以上の能動負荷クライアント(ALC)300(図中1つのみ示す)との間に接続された能動負荷監督装置(ALD)100を介した電力配分をモニタリングして管理する。ALD100は、電力設備制御センタ200及び各能動負荷クライアント300と直接的、あるいは、インターネットプロトコル(IP)や他の(IPまたはイーサネット)接続プロトコルを用いたネットワーク80を介して通信を行う。例えば、ALD100は、例えば、GSM、ANSI C12.22、Enhanced Data GSM Environment(EDGE)、HSPA、LTE、Time Division Multiple Access(TDMA)、または、CDMA2000、CDMA Revision A、CDMA Revision B、CDMA EVDO Rev. Aを含むCDMAデータ規格等の1以上の無線通信プロトコルを用いた1以上の基地局90(図中1つのみ示す)を介して動作するRFシステムを利用して通信を行う。あるいは、または、追加的に、ALD100は、デジタルサブスクライバーライン(DSL)接続、IPベースのケーブルテレビジョン接続、または、それらの組み合わせを介して通信を行う。図3に示す例示的な実施形態においては、ALD100は、1以上の能動負荷クライアント300と、基地局90までの既存のIPベースの通信(例えば、基幹線上で)と、基地局90から能動負荷クライアント300までのHSPAまたはEVDOプロトコルを利用した無線チャンネルとの組み合わせを介して通信する。基地局90とサービスポイント20あるいは能動負荷クライアント300との間の距離は、典型的には、「ラストマイル」と呼ばれるが、実際にマイルである必要はない。ALD100は、個別のサーバ、サーバ内のブレード、分散コンピュータ環境、またはハードウェアとソフトウェアの他の組み合わせを含む様々な態様で実現されるが、これらに限定されるものではない。以下の開示においては、ALD100が、本発明の理解を容易にするために個別のサーバとして具体化される例を説明する。従って、以下に説明するALD100のサーバ態様は、米国公開特許公報第2009/0062970及び2009/0063228号におけるALD100についての説明と対応する。
【0028】
各能動負荷クライアント300は、好ましくは、特定のアドレス(例えば、IPアドレス)を通じてアクセス可能であり、当該能動負荷クライアント300が関連付けられた(接続されたまたはサポートされた)サービスポイント20(例えば、ビジネスまたは居住スペース内)に配置された個別のスマートブレーカーモジュールまたはインテリジェント家電60の状態を制御してモニタリングする。各能動負荷クライアント300は、好ましくは、1の居住または商業的需要者と関連付けされている。1の実施形態においては、能動負荷クライアント300は、居住負荷センタ400と通信を行い、当該居住負荷センタ400は、能動負荷クライアント300からの信号に応じてオン(アクティブ)オフ(インアクティブ)スイッチングするスマートブレーカーモジュールを含む。スマートブレーカーモジュールは、例えば、シュネイダーエレクトリックSAによって新たなインストールの際に商標「スクウェアD」が付されたスマートブレーカーパネル、または、イートンコーポレーションによって新たなインストールの際に商標「カトラーハンマー」が付されたスマートブレーカーパネルを含む。既存の古い建物の場合、個別の識別及び制御のための手段を含むスマートブレーカーが用いられる。典型的には、各スマートブレーカーは、単一の家電(例えば、ウォッシャ/ドライヤ30、温水ヒータ40、HVACユニット50、またはプールポンプ70)を制御する。代替的な実施形態においては、「スマートブレーカー」と同様に動作する、IPアドレスを付与可能なリレーまたは装置コントローラがスマートブレーカーの代わりに用いられるが、制御下にある負荷とともにインストールされ、個別の家電60、HVACユニット40、プールポンプ70、温水ヒータ40、または電力設備あるいは需要者によって選択される他の制御可能な負荷のスタートアップ電力、定常状態電力、電力特性、デューティサイクル、及び電力/負荷プロファイルを測定する。
【0029】
加えて、能動負荷クライアント300は、既存の通信プロトコル(例えば、IP、Broadband over Powerline (BPL)の応用、これは、公表された仕様またはHOMEPLUGパワーラインアライアンスもしくはインスティチュートオブエレクトリカルアンドエレクトロニックエンジニアズ(IEEE)によって開発されたもの、イーサネット、ブルートゥース、ジグビー、ワイファイ(IEEE802.11プロトコル)、HSPA、EVDO等を含む)の1以上の応用を介して直接的に(例えば、居住負荷センタ400と通信することなく)個別のスマート家電を制御する。典型的には、スマート家電60は、通信機能を備えた電力制御モジュール(図示せず)を備える。電力制御モジュールは、電源とインラインの態様で、実際の家電と電源との間において家電に内蔵される(例えば、電力制御モジュールが家庭またはビジネス用の電源出力と接続され、当該家電用の電源コードが電力制御モジュールに接続される)。従って、電源制御モジュールが家電60の電源を落とすように指示を受けた場合、実際に家電60に供給されている電力を遮断する。あるいは、スマート家電60は、家電に直接的に集積された電力制御モジュールを備え、当該電力制御モジュールは、指示を受けて家電の動作を直接的に制御する(例えば、スマートサーモスタットが当該機能を発揮して設定温度を上げたり下げたり、HVACユニットをオンオフし、あるいは、ファンをオンオフする)。
【0030】
能動負荷クライアント300は、さらに、1以上の変動要因センサ94に接続されてもよい。当該センサ94は、内部及び/または外部温度、内部及び/または外部湿度、時刻、花粉数、降雨量、風速、及び他の要素またはパラメータ等変動要因であって装置の動作に影響を及ぼす変動要因の変化をモニタリングするために用いられる。
【0031】
図4を参照する。ALD100は、サービスを提供する者だけでなく需要者に対して主要なインターフェイスとして機能し、以下に後述して詳細に説明するとともに米国公開特許公報第2009/0062970号に開示された設置済みの能動負荷クライアント300に対して制御メッセージを送信するとともにデータを集めるシステムコントローラとして機能する。図4に示す例示的な実施形態においては、ALD100は個別のサーバとして具体化され、電力設備制御センタ(UCC)セキュリティインターフェイス102と、UCCコマンドプロセッサ104と、マスタイベントマネージャ106と、ALCマネージャ108と、ALCセキュリティインターフェイス110と、ALCインターフェイス112と、ウェブブラウザインターフェイス114と、需要者サインアップアプリケーション116と、需要者個別設定138と、需要者レポートアプリケーション118と、節電アプリケーション120と、ALC診断マネージャ122と、ALDデータベース124と、サービス配分マネージャ126と、トラブルチケットジェネレータ128と、コールセンタマネージャ130と、カーボンセービングアプリケーション132と、設備電力/カーボン(P&C)データベース134と、メータ読みアプリケーション136と、セキュリティ装置マネージャ140と、装置コントローラ144と、1以上のプロセッサ160(1つのみ図示)とを備える。ALD100のいくつかの要素の動作の詳細を、本発明に従って使用した場合を例に説明する。ALD100の残りの要素の動作の詳細については米国公開特許公報第2009/0062970号及び2009/0063228号に開示されており、当該文献においては、ALD100は、また、個別のサーバの態様で説明されている。
【0032】
1の実施形態においては、サンプリング記憶手段は、電力設備へ配分可能な運転用予備電力またはエネルギー(例えば、瞬動及び/または調整予備力)の決定を容易にするために用いられる。図5のブロック図に、一例として、サンプリング記憶手段500を図示する。図5に示すように、サンプリング記憶手段500は、装置のモニタリングデータと、特定の条件下で具体的に装置(例えば、図5に示す温水ヒータ40)がどのように動作したかを総括的に示す他のデータとを記憶する手段である。記憶手段500は様々な態様を採用することができ、例えば、マトリックスやデータベースの態様を採用する。1の実施形態においては、サンプリング記憶手段500は、ALD100のALDデータベース124内に具体化される。あるいは、サンプリング記憶手段500は、ALD100の任意の場所に設けられ、もしくは、ALD100の外部に設けられる。サンプリング記憶手段500は、サービスポイント20または電力設備に位置する装置のすべての電力消費データを所有する。電力消費データは、電流引き込み、使用または消費されたエネルギー/電力、節約されたエネルギー/電力、ドリフトまたはドリフトレート、電力時間、最大環境変化に対するユーザ設定、及びまたは期間(時、曜日及びカレンダーの日付)を含むが、これらに限定されるものではない。総括的に説明すると、当該データは、通常の動作の間と、1以上の装置への電力が一時的に遮断または低減される制御イベントの間に装置がどのように動作したかを示すものである。当該データは、受動的サンプリング(例えば、特定のサービスポイント20での、当該サービスポイント20に関連付けされた能動負荷クライアント300による装置の定期的なモニタリング)、及び/または能動的サンプリング(例えば、能動負荷クライアント300またはALD100によるデータ取得のための装置への直接ポーリング)によって取得することができる。以下に説明するように、サンプリング記憶手段500は、装置の電力消費傾向を推定または予想するとともに制御イベントの結果である予想節約電力/エネルギーを決定するためにALD100またはALMS10の他の要素に用いられる。節電予想は、記憶手段500内の電力消費データに基づいて節電アプリケーション120を用いることで決定することができる。
【0033】
図6は、需要者個別設定アプリケーション138の実行中にユーザ(例えば、需要者)に提示する画面の一例を示す。図示する画面は、HVACユニット50、湿度器、またはプールヒータ等の環境依存型の装置に対する需要者が好む設定を行うための画面である。図示する画面は、1の実施形態においては、需要者が、コンピュータ、スマートフォン、または他の同様の装置からインターネットアクセス可能なウェブポータル98(以下、「需要者ダッシュボード」という)にアクセスした場合に、当該ウェブポータルを介して需要者に提示される。図3に示すように、需要者ダッシュボード98は、サービスポイント20のインターネットプロバイダを介してALD100に接続され、または、米国公開特許公報第2009/0063228号に開示された能動負荷クライアント300を通じてインターネットサービスが提供される場合には需要者インターネットアプリケーション92によって実現される。需要者ダッシュボード98は、ALD100への効率的なアクセスを提供する。ALDウェブブラウザインターフェイス114は、需要者ダッシュボード98からの入力を受け付け、また需要者に提示すべき情報を需要者ダッシュボード98に出力する。需要者ダッシュボード98は、サービスポイント20からアクセスすることが可能であってもよいし、または、遠隔から、好ましくはユーザ名とパスワードを用いてインターネットアクセス可能な装置からアクセス可能であってもよい。従って、需要者ダッシュボード98は、好適にはセキュアなウェブベースのインターフェイスであり、ALD100によって制御される装置に関連した好みを設定するために需要者に利用されるものであり、需要者側のサービスポイント20に配置され、制御された装置及び/またはサービスポイントの状況及びパラメータに関連して需要者個別設定アプリケーション138または需要者サインアップアプリケーション116から要求された情報を提供するためのものである。需要者の好みは、例えば、制御イベント嗜好(例えば、時間、持続期間)、料金管理嗜好(例えば月額の最大に関するゴールまたは目標)、環境特性に関する最大/最小の境界設定等を含む。
【0034】
図7は、需要者個別設定アプリケーション138の他の部分を実行中に需要者ダッシュボード98を介して需要者に提示される画面の別の例を示す。図7は、温水ヒータ40、プールポンプ70またはスプリンクラーシステムのウォーターポンプ(例えば降雨センサを含む場合には、当該ウォーターポンプも環境依存型の装置である)等の環境非依存型の装置に対して需要者の好む設定がどのようにして行われるのかを示す。ウェブブラウザインターフェイス114を用いて、需要者はALD100と通信を行い、当該ALD100によってALDデータベース124または記憶手段500に記憶されている需要者個別設定138を指定する。個別設定138は、負荷制御イベントが許容される期間、負荷制御イベントが禁止される期間、特定のサービスポイント20における動作環境の最大許容変化(例えば、最大及び最小温度及び/または湿度)、1日のうちの異なる時刻における装置の通常の動作状況、及び、サービスポイント20において能動負荷クライアント300を通じてALD100によって制御される装置の動作に関する他の個別の好みを指定する。
【0035】
上記において示唆したように、本発明は、環境依存型の装置の「ドリフト」を追跡して考慮するようにしてもよい。当該ドリフトは、環境依存型の装置によってモニタリングされている環境特性(例えば、温度)が、当該環境依存型の装置によって維持されている設定値から変動(例えば温度上昇または温度低下)した場合に生ずる。当該変動またはドリフトは、通常の場合でも生じるし、制御イベント中にも生じる。従って、ドリフトとは、装置によって電力、あるいは、少なくとも実体的な電力が消費されていない際に、モニタリングされている環境特性が設定値から快適性の境界の上限または下限に変化するまでに必要な時間をいう。換言すると、ドリフトとは、大幅な電力を消費することがない状態(例えば、HVACユニットコンプレッサに電力を供給してはいないが関連したデジタルサーモスタット及びHVACユニットの制御システムには電力を供給しているような状態)で、モニタリングしている環境特性が設定値から変化した場合の変化の割合を示す。サービスポイント20において1以上の環境特性を制御するHVACユニット50等の装置は、サービスポイント20において環境の影響を受けることは当業者にとって明らかである。これは、アクティベーション/ディアクティベーションが、サービスポイント20において検出された1以上の環境特性に基づくものだからである。例えば、冷却モードで室内温度を華氏77度に維持しようとしているHVACユニット50は、室内温度が実質華氏77度よりも高い場合には駆動され、従って、HVACユニット50が動作している環境の影響を受ける。
【0036】
ドリフトの反対語は、「電力時間(power time)」であり、これは、検出された環境特性が快適性の境界から大きなあるいは実体的な電力が環境依存型の装置に供給される設定値に変化するまでに必要な時間である。換言すると、「電力時間」は、モニタリングされた環境特性が、快適性の境界から大きな電力消費を伴う設定値に変化する際の変化の割合である。あるいは、「ドリフト」は、モニタリングされた環境特性が、環境依存型の装置の電源が一般的にオフされた後に好ましくないレベルとなるまでの時間と考えることもできる。一方、「電力時間」は、モニタリングされた環境特性が、環境依存型の装置に電力が一般的に供給あるいは再供給された後に好ましくないレベルから目的のレベルに変化するまでの時間と考えることもできる。
【0037】
環境依存型の装置の電力消費データは、上述のように能動的または受動的に集められ、ドリフト及び少なくとも環境依存型の装置の動作地点内における環境特性の変動を定める電力時間(変化の割合、温度勾配、またはサービスポイント20あるいは他の動的式(f{x}))を決定するために実験的に用いられ、これにより、サービスポイント20または環境依存型の装置の「明確な特徴(fingerprint)」または電力使用/消費パターンもしくは傾向を一意に決定することが可能となる。
【0038】
需要者は、設定値を快適性の上限と下限との間の任意の位置に設定して、ウェブブラウザインターフェイス114を介して需要者の好み138を入力することにより、快適性の上限と下限の境界を決定する。通常動作時には、環境依存型の装置は、好適な環境特性または装置の設定値に近い特性を維持しようとする。しかしながら、環境依存型または環境非依存型にかかわらず、すべての装置はデューティサイクルを有し、当該デューティサイクルは、装置がいつ動作するかを指定するものである。これは、多くの装置は、常時動作しているわけではないためである。環境依存型の装置については、デューティサイクルは、制御される環境特性が設定値となった場合(または、設定値の許容誤差または変動の範囲内となった場合)に終了する。設定値となった後に、環境依存型の装置は、一般的にターンオフし、環境特性が、快適性の境界まで「ドリフト」(上昇または下降)するようになる。環境特性(例えば、温度)が境界に達した場合、環境依存型の装置は一般的には再度始動または電源が投入され、環境特性が設定値に到達するまで動作する。この際、デューティサイクル及び電力時間が終了する。
【0039】
ドリフトは、また、制御イベントにおいても生じうる。制御イベントは、一時的に、装置への電力の供給を減らし、停止し、あるいは中断する動作である。制御イベントの間、環境依存型の装置によってモニタリングされ、及び/または制御される環境特性は、当該環境特性が境界に到達するまで快適性の(上限または下限の)境界に向かってドリフトする。環境特性が一度境界に到達すると、一般的に、ALMS10は、装置への電力を元に戻すか増加し、環境特性が再度設定値に到達するようにする。
【0040】
例えば、HVACユニット50は、設定値として、華氏72度を有し、最低および最大快適性境界として華氏68および76度を有するとする。寒い日には、制御イベントはHVACユニット50への電力を遮断し、サービスポイント20内でのモニタリングされた温度を快適性の最低境界温度まで変化させる。サービスポイント20内のモニタリングされた温度が一度快適性の最低境界温度に到達すると、制御イベントが終了し、HVACユニット50への電力が元に戻されるか増加し、これによってモニタリングされた温度が設定値まで上昇するようになる。同様だが反対のことが暖かい日に行われる。本実施形態において、「ドリフト」はHVACユニット50が設定値から快適性の上限または下限の境界に変化するまでの時間に対する変化の割合である。同様に、「電力時間」は、HVACユニット50がモニタリングされた温度を快適性の上限または下限の境界から設定値まで変化させる際に必要な時間に対する変化の割合である。本発明の1の実施形態においては、ドリフト及び電力時間は、環境依存型または環境非依存型の装置あるいはサービスポイント20毎に計算及び記録される。
【0041】
別の実施形態においては、ドリフト及びALDデータベース124から利用可能な他の測定データは、各環境依存型または環境非依存型の装置あるいはサービスポイント20毎の電力消費傾向またはパターンを生成するために用いられる。他の測定データは、空き時間、スリープ時間、制御イベントが許容されている時間、及び/または他の変化する要因を含む。
【0042】
エネルギー効率がよい構成における環境は、ドリフトの割合が低いという傾向を有する。従って、当該構成において動作する環境依存型の装置は、長期間制御イベントの対象となる場合がある。これは、設定値に設定された後、モニタリングされた環境特性がドリフトによって快適性の境界となるまでに必要な時間が、効率が悪い構成と比較して長いためである。
【0043】
別の実施形態において、ALD100は、節電のために最適化されたドリフトを備えるサービスポイント20を特定してもよい。節電アプリケーション120は、各サービスポイント20毎、及び/またはサービスポイント20における各環境依存型の装置毎にドリフトを計算し、装置及び/またはサービスポイント20の電力消費データの一部としてドリフト情報をALDデータベース124に記憶する。従って、制御イベント中のドリフトによって節約された電力は、サービスポイント20における環境依存型の装置によって節約された全体の電力を増加させる。
【0044】
図8は、本発明の1の実施形態に係る、ALD100によって実行されるステップを示す動作フローチャート800の一例を示し、当該フローチャートに従って、ALD100は装置の電力使用を分析し、当該分析によって得られるデータサンプルを記憶手段500に記憶する。図8に示すステップは、受動的サンプリングアルゴリズムを実現するためのものである。図8に示すステップは、好ましくは、ALD100のメモリ(図示せず)に記憶されたコンピュータインストラクションのセット(ソフトウェア)として実現され、ALD100の1以上のプロセッサ160に実行されるものである。
【0045】
当該ロジックフローに従って、能動負荷クライアント300は、サービスポイント20内の、例えば、ウォッシャ/ドライヤ30、温水ヒータ40、HVACユニット50、スマート家電60、プールポンプ70、あるいは当該サービスポイント20内の他の装置にポーリングを行い、現時点での測定値を得る。能動負荷クライアント300から現在の測定値データを得ると、ALCインターフェイス112は、データをALCマネージャ108に送信する。ALCマネージャ108は、データをサンプリング記憶手段500に記憶する。これは、図8に示す動作フローに基づいて、ALDデータベース124内で実現される。
【0046】
以下に説明する情報は、図8の動作フロー用のパラメータである。すなわち、装置のID、温度モード(暖房または冷房)、デューティサイクル、装置によって測定された現在の温度、及び装置によって測定された以前の温度である。温度測定値は、それぞれ、装置IDと、設定値(これは環境依存型の装置のみに有益である)と、(上述したような)変動要因の測定データと、を含む。
【0047】
最初に、ALD100は、装置が任意の、あるいは、少なくとも相当量のエネルギーを使用したか否かを判別する(802)。装置がエネルギーを使用していない場合、ロジックフローを終了する。そうでない場合には、ALD100は、データサンプルに基づいて、データサンプルの持続期間と、装置がオンであった持続期間と、装置がオフであった持続期間とを判別する(804)。次に、ALD100は、受信したデータが環境依存型の装置あるいは環境非依存型(例えば、2進状態)の装置のいずれかから送信されたものかを判別する(806)。受信したデータが環境依存型の装置から送信されたものである場合、ALD100は、装置によって分毎に消費されたエネルギーを判別し(808)、装置がドリフトしているか電力供給を受けているかを判別する(810)。装置によってモニタリングされている環境特性が当該装置のモードと反対方向に変化している場合(例えば、装置が冷房モードに設定されているが室温が上昇している場合、あるいは、装置が暖房モードに設定されているが室温が下がっている場合)、ALD100は、装置がドリフトしていると判別する。そうでない場合は、装置はドリフトしていない。
【0048】
装置がドリフトしている場合、ALD100は、ドリフトの割合(例えば、度/分)を判定する(814)。一方、装置がドリフトしていない場合には、ALD100は、電力時間の割合を判定する(812)。ドリフトの割合または電力時間の割合が計算されると、ALD100は、装置の現在の動作状況において、当該装置についてすでに測定された記録、例えば、設定値及び他の変動要因(例えば、外気温))がサンプリング記憶手段500内に存在するか否かを判別する(880)。そのような記録がない場合、ALD100は、例えば、装置ID、記録の時間、現在の設定値、現在の外気温、分毎に消費されたエネルギー、電力時間の割合、及びドリフトの割合(ここで、電力時間の割合またはドリフトの割合のいずれかは、すでに判別されているものとする)を用いて新たな記録を生成する(882)。しかしながら、既存の記録がある場合には、ALD100は、新たなデータ(消費エネルギー、ドリフトの割合、電力時間の割合を含む)を、既存のデータを利用して平均化することによって既存のデータを更新し(884)、当該結果を記憶手段500に記憶する。
【0049】
ALD100が、受信したデータは環境非依存型の装置から送信されたものであると判別した場合(806)、ALD100は、装置によって分毎に消費されたエネルギーを判定し(842)、さらに、装置によって分毎に節約されたエネルギーを判定する(844)。次に、ALD100は、記憶手段500内(例えば、ALDデータベース(124))を検索し、適切な期間について装置に関して記録があるか否かを判別する(890)。既存の記録がない場合、ALD100は、装置ID、記録の時間、現在の時間ブロック、分毎に消費されたエネルギー、及び分毎に節約されたエネルギーを用いて新たな記録を生成する(892)。一方、既存の記録がある場合には、ALD100は、時間ブロック毎の新たなデータ(エネルギー使用量及びエネルギー節約量を含む)を時間ブロック毎の既存のデータを用いて平均化することにより、既存の記録を更新し(894)、その結果を記憶手段500に記憶する。環境非依存型の装置の場合には、エネルギー消費量及びエネルギー節約量は、時間のブロックまたは期間と関連付けて記憶する。
【0050】
図9は、本発明の1の実施形態にかかる、任意の環境設定において将来予測される装置のエネルギー消費をALD100に予想または推定させるステップを含む動作フローチャート900の一例を示す。図9のステップは、好ましくは、ALD100のメモリ(図示せず)に記憶されたコンピュータインストラクションのセット(ソフトウェア)として実現され、ALD100の1以上のプロセッサ160によって実行される。1の実施形態においては、図9の動作フローは電力設備のオペレータまたはALD100の他のオペレータが、例えば、制御イベントが発生している期間等の将来の特定の期間における装置のエネルギー消費を予想することを望んだ場合にALD100の節電アプリケーション120によって実行される。
【0051】
図9の動作フローには、パラメータとして以下の情報が提供される。すなわち、装置ID、将来の期間の始点、将来の期間の終点、装置の管理モード、及び、環境非依存型の装置についてのバイナリー制御要因、である。管理モードは、「制御」または「通常」のいずれかであり、制御イベントまた通常運転時において装置が測定対象となっているか否かを示すものである。バイナリー制御要因とは、好ましくは、環境非依存型の装置についてのものであり、当該装置のデューティサイクルを示す。例えば、温水ヒータ40が20%のデューティサイクルで動作する場合、バイナリー制御要因は0.2である。
【0052】
最初に、ALD100(例えば、節電アプリケーション120)は、始点及び終点に基づいて、将来の期間を決定する(902)。将来の期間は、本発明の負荷制御手法を採用する電力設備、または、本発明の負荷制御手法を採用した電力設備から運転用予備力の供給を要求した2番手の電力設備によって決定される。対象となる期間を決定したのち、節電アプリケーション120は、将来の期間において制御イベントを実行することによって節約される電力量を予想または推定する処理を開始する。従って、節電アプリケーション120は、制御イベントにおいて制御対象となる装置を分析する。そのため、節電アプリケーション120は、装置には環境依存型の装置と環境非依存型(2進状態)の装置との両方が含まれているか否かを判別する(904)。各環境依存型の装置については、節電アプリケーション120は、装置が環境制御(例えば、暖房または冷房)モードであるか否かを判別する(920)。次に、節電アプリケーション120は、制御イベントの将来の期間において予期される装置の設定値を読み出し(922)、制御イベント中の期間において予測される外部環境特性(例えば、外気温)の情報を取得する(924)。節電アプリケーション120は、将来の期間における装置の予測される電力消費傾向について予想を立てる(926)。1の実施形態においては、ステップ926における予想の決定は、図10とともに以下に詳細に説明するベストマッチアルゴリズムを用いることによって実現され、図8の論理フローに従って測定されて記憶された設定値の各組み合わせ毎の装置の傾向、外部環境特性(例えば、温度)、及び期間とベストマッチする記憶手段内の記録がサーチされる。装置の電力消費傾向は、制御イベントが発生しなかったとした場合に装置によって消費されることが予測されるエネルギー量、ひいては、制御イベント中に単位時間毎に節約されると推定または予測されるエネルギー量を決定するために利用される。節電アプリケーション120は、単位時間毎に節約される電力を、将来の制御イベント期間で乗算し(928)、制御イベントが行われなかった場合における装置によって消費される総予想エネルギー量を決定する。節電アプリケーションは、提案された制御イベントが行われないときに、装置によって消費される総予想エネルギー量をリターンする(980)。
【0053】
しかしながら、節電アプリケーション120が、提案された制御イベントが環境非依存型の装置に影響を及ぼすと判断した場合(904)、節電アプリケーション120は、制御イベントの提案された期間において装置の電源オンまたはオフが現在スケジュールされているか否かを判別する(960)。次に、節電アプリケーション120は、特定の制御イベント期間についての時間ブロックのリストを生成、取得、または決定する(962)。節電アプリケーション120は、将来の制御イベントの期間における装置の電力消費傾向についての予想を立てる(964)。1の実施形態においては、ステップ964における予想の決定は、図10とともに以下に詳細に説明するベストマッチアルゴリズムを用いることによって実現され、図8の論理フローに従って測定されて記憶された設定値の各組み合わせ毎の装置の傾向、外部環境特性(例えば、温度)、及び期間とベストマッチする記憶手段内の記録がサーチされる。装置の電力消費傾向は、制御イベントが発生しなかったとした場合に装置によって消費されることが予測されるエネルギー量、ひいては、制御イベント中に単位時間毎に節約されると推定または予測されるエネルギー量を決定するために利用される。次に、節電アプリケーション120は、単位時間毎に節約される電力を、将来の制御イベント期間で乗算し(968)、制御イベントが行われなかった場合における装置によって消費される総予想エネルギー量を決定する。予想節約エネルギーが過去の制御イベントにおける電力消費に基づく場合(970)、節電アプリケーション120は、総エネルギー量をバイナリー制御要因で乗算し(972)、制御イベントがない場合において装置によって消費される予想エネルギー量を決定する。節電アプリケーションは、提案された制御イベントが行われないときに、装置によって消費される総予想エネルギー量をリターンする(980)。
【0054】
図9に示す動作フローは、電力設備によって電力が供給されたあるいはサポートされたサービスポイントにおける各制御対象の装置、複数のサービスポイントにおける複数の制御対象の装置、もしくは全てのサービスポイントにおける全ての制御対象の装置毎に実行可能であることは、当業者にとっては容易に理解できるところである。装置による総予想エネルギー消費は、電力設備によって電力が供給された、単一のサービスポイント全体で、1のグループ内の全てのサービスポイントで、及び/または、全てのグループで集計される。
【0055】
図10は、本発明の例示的な実施形態に係る、ALD100が装置の電力消費傾向を予測するために実行するステップを含む動作フローチャート1000の一例を示す。図10のアルゴリズムまたは動作フローは、図9のステップ926及び964を実現する1の実施形態を提供する。図10の動作フローは、本発明の1の実施形態に従って、サンプリング記憶手段500内のどの記録が、将来の制御イベント中において予想される装置のエネルギー消費/節約について任意の環境または動作設定と近似するかを判別するためのものである。図10のステップは、好ましくは、ALD100のメモリ(図示せず)に記憶されたコンピュータインストラクションのセット(ソフトウェア)として実現され、ALD100の1以上のプロセッサ160によって実行される。図10の動作フローは、特定の設定における装置の電力消費傾向とベストマッチする記録をサンプリング記憶手段から特定または決定する際にはALD100によって開始される。
【0056】
1の実施形態においては、図10の動作フローは上述した図9の動作フローの実行中に呼び出される。当該呼び出しを行った際に、図9の動作フローが、検索される記録の種類を示すパラメータとともに図10の動作フローを提供する。当該パラメータとしては、装置ID、デューティモード(オンまたはオフ)、(例えば、提案された将来の制御イベントの期間に対応する)期間、設定値デルタ、1以上の環境特性(例えば、外気温)に関連するデルタまたは変動、及び時間ブロックデルタであるが、これらに限定されるものではない。デューティモードは、装置のデューティサイクルを示す。デューティモードがTRUEまたはオンの場合、多量の電力が消費されている。デューティモードがFALSEまたはオフの場合、多量の電力は消費されていない(すなわち、節電が図られている)。デューティサイクルは、各スイッチ制御、2進状態、あるいは、環境に関わらずオンオフする環境非依存型の装置毎に存在する。HVAC装置50については、デューティモードは常時オンである。設定値デルタは、記憶手段内のマッチする記録を検索する間、変動する可能性のある設定値の度合いである。外部温度/環境特性デルタは、記憶手段内でマッチする記録を検索する際に、外気温または他の環境特性に関するデータが変動する場合の温度または他の環境特性の変化の数である。時間ブロックデルタは、記憶手段内でマッチする記録を検索する際に時間ブロックが変動する場合の時間量である。
【0057】
最初に、ALD100は、要求された記憶手段内検索が、環境依存型の装置または環境非依存型の装置のいずれに関連しているかを判別する(1002)。当該検索が環境依存型の装置に関連している場合、ALD100は、装置ID、デューティモード、環境特性(例えば、温度)設定値、及び関連する外部環境特性データと一致する電力消費の記録をサンプリング記憶手段500内で発見するよう試みる(1004)。電力消費の記録は、例えば、消費電力、電流引き、デューティサイクル、動作電圧、動作インピーダンス、電力消費の期間、設定値、(利用可能であれば)電力消費中の周辺及び外部温度、及び/または他のエネルギー消費に関するデータ等の電力消費データを含む。上述する電力消費検索基準の全てに一致する記録がある場合、当該記録は、与えられた環境設定に最も近似してマッチする記録として用いられる。完全一致結果がない場合には(1010)、ALD100は、与えられた環境設定とは若干異なる記録を検索する。1の実施形態では、ALD100は、設定値デルタ及び外部温度/環境特性デルタを関連した記録の参照のためのガイドとして用いて、環境関連検索条件(例えば、温度設定値及び/または外気/周辺温度)を漸次的に増減する(1012)。検索条件のこのような漸次/反復の変化は、関連する記録が見つかるか、あるいは、(例えば、設定値デルタ及び/または他のパラメータデルタに示される)適応限度に到達するまで継続される。
【0058】
ALD100が検索結果は、環境非依存型の装置に関連するものであると判別した場合(1002)、ALD100は、装置ID、デューティモード、及び(制御イベントの将来予測される時間に対応する)動作時間に一致する電力消費記録をサンプリング記憶手段500部内で発見するように試みる(1040)。上記検索基準に一致する記録が見つからない場合(1070)、ALD100は、検索条件を変更して与えられた環境設定と若干異なる記録を検索する。1の実施形態においては、ALD100は、任意のデューティモードにおける動作時間を漸次的に増減して(1072)その検索範囲を変更する。反復検索は、関連する記録が見つかるか、あるいは、(時間ブロックデルタまたは他のパラメータデルタによって示される)適応限度に到達するまで継続される。検索の結果として得られた記録は、それを要求するプログラム(例えば、図9の動作フロー)に提供される(1060)。図10の動作フローの結果は、与えられた環境または提案された制御イベント設定と最も合致する1以上の電力消費記録の組み合わせであって、サンプリング記憶手段500から得られた電力消費記録である。
【0059】
図11は、本発明の1の実施形態に係る、制御イベントにおける装置への電力の遮断または低減によって得られる節電をALD100に予想させるために実行されるステップを含む動作フローチャート1100の一例を示す。図11のステップは、好ましくは、ALD100のメモリ(図示せず)に記憶されたコンピュータインストラクションのセット(ソフトウェア)として実現され、ALD100の1以上のプロセッサ160によって実行される。図9の動作フローとともに、図11の動作フローは、電力設備またはALD100のオペレータが、制御イベントにおける特定の動作期間において装置についての節電を予想したい場合に節電アプリケーション120によって実行される。
【0060】
図11の動作フローには、パラメータとして以下の情報が提供される。すなわち、図9とともに説明したように、装置ID、制御イベントの始点、制御イベントの終点、及びバイナリー制御要因である。最初に、ALD100(例えば、節電アプリケーション120)は、例えば図9の動作フローを用いて、制御イベント中の予測された期間における通常動作での装置のエネルギー消費/電力消費を予想する(1102)。次に、節電アプリケーション120は、図9に示す動作フローを用いて、制御イベント中の装置の電力消費を予想する(1104)。例えば、装置のデューティサイクル、設定値、ドリフトもしくはドリフトの割合、電力時間及び他のパラメータによっては、装置は電源オンと予想されて制御イベントの期間における任意の時間だけ電力を消費する。従って、通常動作(すなわち、制御イベントが行われていない場合)における電力消費の予測される量と、制御イベント下での電力消費の予測される量とは、制御イベントの結果である節電を正確に算定するために決定される。2種類の予想電力消費値が決定された後、節電アプリケーション120は、2つの値の差異を計算する(1106)。当該差異は、制御イベントの期間における装置の予想される電力消費である。予想される電力消費は、制御イベント下においては実感できないため、当該電力消費は制御イベント下で節約された電力の量に直接的に対応する。節電アプリケーション120は、予想節電値をリターンする(1108)。節電アプリケーション120は、電力設備によって電力が供給されたサービスポイント20における全ての制御された装置毎、グループ内のサービスポイントにおける全ての制御された装置毎、または、全てのサービスポイントのグループにおける全ての制御された装置毎に集計され、制御イベントの結果として節電の総計を得るために予想される節電を集計しうることは、当業者にとっては容易に理解できるところである。
【0061】
ALMS10を利用する他の背景事情としては、他の再生可能エネルギー源との組み合わせが考えられる。例えば、風力発電、太陽光発電等の再生可能エネルギー源の数は、環境によって異なる。すなわち、当該エネルギー源は、一定の割合で発電するものではない。例えば、風速は秒毎に異なるものである。風力発電タービンは、多量の風がある場合に大きな電力を発電することができ、風がない場合には発電が完全にストップする。太陽光パネルは、快晴の日には多量の電力を発電できるが、曇りの日には発電量は小さく、夜には実質的に発電しない。
【0062】
そこで、再生可能エネルギーを利用する電力設備は、当該エネルギー源からの発電不足または発電過剰を補償する必要がある。再生可能エネルギー源が発電不足である場合、ALMS10は、上述したプロセスを実行して追加の運転用予備力を供給し、これによって再生可能エネルギー源の発電不足を補うとともに、それによる結果、例えば、出力周波数の変動をも補う。例えば、風力または太陽光エネルギー源を利用する電力設備は、ALMS10をさらに電力設備の配電システムに適用し、発電不足の間に調整予備力を供給する。
【0063】
図12は、所定の期間における電力設備の「負荷プロファイル(load profile)」を示すグラフであって、本発明の例示的な実施形態に従って、制御イベントあり、なしの場合で決定された予想エネルギー消費とともに実際のエネルギー消費を示す。負荷プロファイルグラフは、以下を描写する。
a)ベースライン電力消費1202。これは、特定の期間における全ての制御された装置の可能性のある負荷または電力消費の合計である。
b)制御イベントがない場合に、電力設備によって電力が供給される全てのサービスポイント(または選択されたサービスポイント)における全ての制御される装置に対する予想される中断可能な負荷利用1204(すなわち、制御イベントがある場合の予想的負荷またはエネルギー消費)。予想される中断可能な負荷利用は、図9の動作フローを実行する1の実施形態によって決定される。予想される中断可能な負荷利用性1204は、全ての制御される装置が、需要者の好みによって100%の時間制御されている場合に当該装置の負荷を示す。予想される中断可能な負荷利用1204は、図11の動作フローを実行する1の実施形態によって決定されてもよい。
c)制御イベント中に電力設備によって電力が供給される全てのサービスポイント(または選択されたサービスポイント)における全ての制御される装置への予想される中断可能な負荷利用性1206(すなわち、制御イベントがない場合に消費される予想的なエネルギー)。予想される中断可能な負荷利用性1206は、全ての制御される装置が、需要者の好みによって100%の時間制御されている場合に当該装置の負荷を示す。
d)電力設備によって電力が供給された全てのサービスポイント(または選択されたサービスポイント)における全ての制御される装置の実際の中断可能な負荷利用1208。実際の中断可能な負荷利用1208は、全ての制御される装置によって現在利用されている電力である。
この種の負荷プロファイルグラフは、電力設備によって電力が供給されたサービスポイント20における全ての制御される装置毎、グループ内の全てのサービスポイントにおける制御される装置毎、あるいは、すべてのグループ内の制御される装置毎に生成される。
【0064】
図12の負荷プロファイルグラフにおいて、契約に基づくキャパシティをグラフ上部に直線で示す。当該直線は、ベースライン電力消費1202である。ベースライン電力消費1202は、電力設備が供給すべき義務を負う電力の総量を示す。実際の中断可能な負荷利用1208は、電力設備によって制御される全ての装置の実際の電力利用である。負荷プロファイルグラフの下部に示す予想される中断可能な負荷利用1204は、制御イベントがある場合に予想される利用されるエネルギーを示し、予想される中断可能な負荷利用性1206は、制御イベントがない場合に予想エネルギー利用を示す。予想される中断可能な負荷利用1204と予想される中断可能な負荷利用性1206との差は、調整予備力、瞬動予備力、及び非瞬動予備力を含む運転用予備力に用いられるキャパシティである。
【0065】
通常、電力設備がそのピークキャパシティに近いエネルギー需要に直面した場合、電力設備は、自発的に節電予想(すなわち、上述したようなフレキシブルな負荷形状予想)に参加する需要者に対して制御イベントの実行を試みる。典型的には、これらの制御イベントは、電力設備が非瞬動予備力を利用することを防止するのに十分なキャパシティを提供する。しかしながら、十分な数の需要者が、手動で、節電予想から外れるように決定する場合もあり、その結果、電力設備が、自発的に予想に参加する残りの需要者からの瞬動予備力ニーズに合致する十分なエネルギーを回復することができなくなる場合がある。このような状況は、例えば、休日や週末の日で非常に暑い日に多くの人が自宅にいる場合に生じうる。このような場合、電力設備は、非瞬動予備力を使用したり、あるいは、予備キャパシティが欠乏する危険性にさらされる。このような状況において、電力設備は「非常制御」モードとなる。非常制御モードでは、電力設備は、節電予想に自発的に参加する需要者とそうでない需要者との両方を含む需要者の全ての好みを無効化する場合がある。非常制御の間、電力設備はALD100を用いて環境依存型の装置の設定を通常の快適な好みの範囲外(ただし、生命に危険を冒さない範囲)に調整する。非常制御の実行により、電力設備は、電力需要を受け入れ可能なレベルまで戻すことができる。
【0066】
ALMS10を使用することにより、電力設備は、非常制御状況の可能性を軽減することが可能になる。例えば、需要者が制御イベントから除かれるようにした場合には、ALMS10は、本明細書に開示する技術を用いて、自発的な制御イベントの対象となりうる新たな需要者を探す。同様に、制御イベントに参加している制御された装置が需要者の好み(例えば、需要者の装置が制御イベントに参加している時間)によって制御イベントから除かれるようになった場合、ALD100は当該装置を制御イベントから除き、それらを自発的な他の制御された装置に置き換える。置き換えられた装置は、好ましくは、制御イベントから除かれた装置から得られていた予備電力と少なくとも同じ量だけの予備電力を据え置きによって供給する。従って、本発明のシステム10は、非常制御の実行の前に、電力設備が制御イベントを他の需要者に分散できる可能性を上昇させる。
【0067】
さらなる実施形態においては、図3に示すALMS10全体が、IPベース、リアルタイム、温度依存、検証可能な、インタラクティブ、双方向、及び自動発電制御(AGC)コマンドに反応する専用のネットワークに組み込まれ、制御イベントの実行を通じて運転用予備電力を発電する。
【0068】
本発明の追加的な実施形態においては、図5の動作フローを用いて記憶手段500に記憶されるサンプリングデータは、電力消費に関する他の要因(以下、「変動要因」という)、例えば、週のうちの曜日、湿度、太陽光の量、または住居内の人数を含む。この追加のデータは、予想電力消費及び予想節電をこれら追加の要因に基づいてより正確にする。当該データを用いるため、ALD100は、ALMS10内及び/または外部のデータ元、例えば、天気データベース、ナショナルウェザーレポーティングステーション等からの天気速報、外部センサ94、またはリアルタイムもしくは周期的に利用可能な商業上の天候に関連した入力装置、カレンダー、及びボランティアによるフィードバックから追加的なデータを入手する。変動要因計測値のいくつかは、公共の情報源から利用可能であり、その他は私的な情報源から利用可能である。
【0069】
本発明の他の代替的な実施形態においては、送電線ロスが図11の予想されるエネルギー節電の判定の際に考慮される。当業者にとっては、電力設備により、当該電力設備から離れた装置へ供給される電力量は、装置が要求する電力量と電力設備の発電電力設備と装置の場所との間の送電線のロスによる電力量との合計と等しいことは容易に理解されるところである。従って、制御イベントによってもたらされる予想節電は、制御イベントが実行されてさらに制御イベントが行われない場合に第1の節電が行われる間の単一のサービスポイント、複数のサービスポイント、または電力設備のサービスエリア全体における制御された装置によって消費されることが予測される電力量を判定し、また、制御イベントが行われて第2の節電が行われる間に制御された装置へ電力が供給されないことによって送電線上で損失とならない電力の予測量を判定し、第1及び第2節電を合計することによって決定することができる。
【0070】
本発明のさらなる実施形態においては、上述した技術を利用して電力設備によって決定された運転用予備力(例えば、瞬動予備力または調整予備力)は、図13に示すように、要求している電力設備1306に販売することができる。当該図面は、基本的に、米国公開特許公報第2009/0063228号の図9の複製である。米国公開特許公報第2009/0063228号において開示されているように、節約された電力は、販売用の電力設備による制御イベントの開始の後(例えば、当該制御イベントの間、及び/または制御イベントの完了後)、要求している電力設備1306に配分することができる。販売用電力設備は、仮想電力設備1302または図13に示すサービス電力設備1304であり、その詳細は米国公開特許公報第2009/0063228号に開示されている。あるいは、第三者機関が、制御イベントの実行の後に、ALMS10の運転及びその結果である運転用予備力の要求している電力設備1306への配分を管理する機関となりうる。
【0071】
さらに別の実施形態においては、電力設備のALD100が、図11の動作フローに従って電力設備によって電力が供給されている各サービスポイント20毎の予想節電を判定し、電力設備によって電力が供給されている全てのサービスポイントに渡る予想節電を総計し、上述したように運転用予備力を決定するための予想節電の合計を取得する。
【0072】
さらなる実施形態においては、図10の動作フローを用いて記憶手段500からベストマッチするデータポイントを検索して記憶手段500内の期間と制御イベントの期間とが一致しない場合における装置の電力消費の傾向を予測する代わりに、あるいは加えて、ALD100は、記憶手段500が、制御イベントの予測される期間の前後の期間における各装置の電力消費データを含んでいるか否かを判別し、当該データが含まれる場合には、制御イベントの期間において装置に消費されると予測される電力量に対応する値を、制御イベントの予測される期間の前後の期間における各装置の電力消費データに基づいて補間する。
【0073】
さらに別の実施形態においては、要求している電力設備は、供給元電力設備からの運転用予備電力を取得する方法を実行する。この実施形態においては、要求している電力設備は、運転用予備電力が必要となる移送時間よりも十分に前に運転用予備電力を供給元電力設備に要求し、これによって運転用予備電力の測定可能かつ検証可能な負荷制御式の発電を容易とする。運転用予備電力の負荷制御式の発電は、図7から12を参照して詳細に説明した運転用予備力の決定の結果得られる。要求している電力設備は、供給元電力設備から、当該供給元電力設備が移送時間で運転用予備電力を供給する旨のアクノリッジを受信する。次に、移送時間及びその後の期間に、要求している電力設備は、供給元電力設備から運転用予備電力の少なくとも一部を受け取る。
【0074】
さらなる実施形態においては、運転用予備力の決定技術は、米国公開特許公報第2009/0063228号に開示された仮想電力設備1302に適用される。例えば、仮想電力設備1302は、1以上の要求している電力設備1306に、当該要求している電力設備1306の運転用予備力として電力を少なくとも提案することが可能である。この場合、仮想電力設備1302は、他の構成要件とともに、記憶手段500と、(例えば、ALD100内の)プロセッサ160とを備える。この実施形態では、プロセッサ160は、少なくとも1の期間内に、少なくとも1の装置によって消費される電力を遠隔で判定し、電力消費データを生成する。プロセッサ160は、さらに、電力消費データを記憶手段500に記憶可能に構成されており、適宜、装置への電力が低減される制御イベントの予測される将来の期間を判定する。プロセッサ160は、さらに、制御イベントの実行の前に、当該制御イベントの期間における装置による予測される電力消費傾向を、少なくとも記憶された電力消費データに基づいて推定可能に構成されている。プロセッサ160は、さらに、制御イベントの実行の前に、制御イベントの結果である予想節電を、少なくとも装置の予測される電力消費傾向に基づいて判定する。さらに、プロセッサ160は、制御イベントの実行の前に、予想節電に基づいて運転用予備力を判定可能に構成されている。運転用予備力を判定した後、プロセッサ160は、要求している電力設備1306またはそれ以外の電力設備に運転用予備力を供給可能である旨の提案をすることができるように構成されている。
【0075】
さらに別の実施形態においては、サービスポイント20は、さらに、電力設備から供給されたエネルギー、あるいは、1以上の任意の発電装置96(図3では1つのみ図示)から供給されたエネルギーを現場で蓄積する1以上の蓄電装置62(図3では1つのみ図示)を備えてもよい。蓄電装置62は、一次的には、蓄電に用いられ、あるいは、典型的には、蓄電は二次的な目的で、電力消費等の他の一次的な目的のために用いられる。通常、蓄電装置62は、電力系統に接続され、後に使用または消費できる電力を付加的に蓄積する。蓄電装置62の一例は、電気自動車またはハイブリッド自動車であり、サービスポイントにおける充電ステーションを介して電力系統に接続される。使用されていないときには、蓄電装置62は、サービスポイント20の出力端に接続され、電力設備の電力系統から電力を引いて蓄積する。蓄電装置62は、後に接続が解除され、その一次目的に用いられる。電気自動車の一例として、蓄電装置62は、移動の目的のために接続が解除される。あるいは、蓄電装置62は、充電の後に、同種の発電装置96の電力源として用いられる。例えば、電気自動車は、サービスポイント20のソケットに接続され、その残りの蓄積された電力の一部または全部を、例えば自動車の所有者がしばらくの間自動車を使用しない場合に、電力設備の電力系統に供給する。このような場合、自動車の所有者は、蓄積された電力を商品として効果的に扱って、電力を高ピークの負荷時間で電力設備の電力系統に供給するか、低ピークの負荷時間で電力系統からの電力を受け取るか消費するか選択することができる。あるいは、蓄電装置62の所有者は、蓄電装置62に蓄積されたエネルギーを、サービス電力設備1304または要求している電力設備1306が蓄積されたエネルギーを求めている場合に、運転用予備力として利用可能なエネルギーとして考慮することが可能である。
【0076】
本発明のALMS10は、バッテリまたは電気自動車等の蓄電装置をサービスポイント20において含むこと、あるいは使用することをサポートしている。再度図3を参照して、蓄電装置62は、エネルギーを蓄積及び/または配分するために用いられる。蓄電装置62がサービスポイント20に配置されており、電力線及び/またはローカルな発電電力設備96から電力を受け取っている場合、サービスポイント20の制御装置(例えば、能動負荷クライアント300)は、ALD100等の中央制御手段に通知をする。ALD100は、蓄電装置62に供給及び蓄積された電力量ならびに蓄電活動の期間の記録をALDデータベース124に記憶する。ALD100は、米国特許出願第12/783415号に開示されるように、蓄電活動に関連するカーボンフットプリント及びカーボンクレジットを判定する。当該米国特許出願は、2010年9月16日に公開された米国公開特許公報第2010/0235008号に対応し、この文献の内容を参照として本明細書に取り込む。
【0077】
蓄電装置62が電力系統にエネルギーを送電または配分するために使用された場合、能動負荷クライアント300は、再度ALD100に通知する。ALD100は、配分された電力量及び配分動作の期間をALDデータベース124に記録する。ALD100は、また、米国特許公開公報第2010/0235008号に開示されているように、配分動作に関連したカーボンフットプリント及びカーボンクレジットを判定する。例えば、電力配分動作に関連したカーボンフットプリント及びカーボンクレジットを判定するため、ALD100は、配分及び蓄電動作の間に電力系統から蓄電装置62が配置されたサービスポイント20を含むサービスエリアへ供給された電力に関連した発電ミックスを判定する。次に、ALD100は、電力蓄積動作に関連したカーボンクレジットを電力配分動作に関連したカーボンクレジットから除算して、蓄電及び配電活動によるカーボンクレジットの総量を決定し、得られたクレジットをサービスポイント20または蓄電装置の所有者に関連付けし、得られたクレジットを設備電力/カーボンデータベース134に記憶する。従って、蓄電装置62が、電力設備から供給されるエネルギーの多くが二酸化炭素を排出しないエネルギー源、例えば、風力発電からのものである夜の間に、電力設備によって充電され、電力設備から供給されるエネルギーの多くが二酸化炭素を排出するエネルギー源、例えば、石炭やガスによる発電からのものであるその日の間及びピーク時間に放電または配電された場合、エネルギーの配分は、サービスポイント20または米国公開特許公報第2010/0235008号に開示された蓄電装置の所有者によって得られたカーボンクレジットの総量となる。
【0078】
1の実施形態においては、蓄電装置62に蓄積された電力は、(例えば、ALD100等の中央制御手段を介して)ALMS10によって管理される。当該管理は、蓄電装置62が電力を引き出したりあるいは蓄積した場合の制御と、電力設備が運転用予備力等を必要とした際に蓄電装置62に蓄積された電力を利用すること、とを含む。蓄電装置62が電力引きを行った際に行う制御は、系統から蓄電装置62が電力引きを行うにベストな時間を特定して、例えば、当該蓄電動作に伴うカーボンフットプリントを最小化し、あるいは、電力設備によって消費される運転用予備力を低減することを含む。蓄電装置62に蓄積された電力を用いたALMS10の制御により、電力設備は、緊迫したニーズの間、例えば、AGCコマンドに応じて周波数規制を維持しなければならない場合や、あるいは、電圧低下や停電を避けるために運転用予備力を供給しなければならない場合に、蓄電装置62から電力引きを行うことができるようになる。電力設備1304、1306からALMS10への要求に応じて蓄電装置62からの電力引きが可能となることにより、需要者へ警報が送信され、これは、例えば、需要者ダッシュボード98を通じて行われる。需要者は、蓄電装置の管理への参加を促進するために、報酬や、金銭的クレジット、あるいは他の利益を得ることができる。
【0079】
ALMS10による蓄電装置62の管理は、需要者ダッシュボード98(例えば、別途の蓄電装置管理アプリケーション、需要者側エネルギープログラムの一部、等の需要者サインアップアプリケーション116への延長)を介して行われる。需要者ダッシュボード98は、需要者に、蓄電装置62に電力を蓄積する目的で蓄電装置62を電力系統に接続する好ましい時間、及び、蓄電装置62から電力を配分する目的で蓄電装置62を電力系統に接続する好ましい時間を報知し、例えば、需要者側で得られるカーボンクレジット(carbon credits)を最大化する。さらに、需要者は、需要者ダッシュボード98を介して、蓄電装置または装置62がALMS10によってサービス電力設備1304または要求している電力設備1306への運転用予備力として利用されている旨を表示する。需要者が、電気自動車やハイブリッド自動車等の蓄電装置62に蓄積された電力が所定の理由でALMS10に利用可能である旨を表示した場合、需要者は、装置の種類、装置のパラメータや仕様(充電レート、放電レート、総容量、及び/または充電器の種類を含む充電及び放電パラメータまたは特性を含むが、これらに限定されない)等の蓄電装置62に関連した情報、蓄電装置62が充電のために接続可能な制御可能な装置の制御モジュールのID、及び、他の情報を、需要者ダッシュボード98を介してALD100に入力することにより当該情報を提供する。
【0080】
さらに、電気自動車またはハイブリッド自動車等の蓄電装置62は、無線通信技術を採用し、当該蓄電装置62が関連情報(例えば、装置の種類、充電状況、装置パラメータあるいは仕様、位置(例えば、蓄電装置62がGPS等の位置判別機能を有する場合)、最後の充電以降の時間等)を、通信インターフェイス308を介して広域無線ネットワーク上でALD100に直接送信する。当該情報を用いて、ALD100または能動負荷クライアント300は、時間経過とともに電力がどの程度蓄電されているか、及び/または、どの程度配分されたかを判別する。また、蓄電装置の位置、充電状況、及び他のパラメータを知ることにより、ALD100または他の中央制御手段は、当該情報を考慮して負荷のバランスをとり、系統への供給を増し(例えば、蓄電装置62を系統の特定のエリアに向けて再充電または電力配分をするため)、あるいは、蓄電装置62を含むサービスエリアにおける電力不足に対応することができる。例えば、1の実施形態においては、ALD100は、電気自動車等の移動式の蓄電装置62から情報を集め、当該蓄電装置62から電力設備によって特定された系統ポイントにおける系統へ電力を供給して供給不足状態を補い、あるいは運転用予備力を供給する際に1以上の電力設備と価格について交渉する。
【0081】
あるいは、(特に、急速充電機能を利用している)電気自動車等の特定の蓄電装置62の負荷により、当該装置の負荷を電力の再スタートの際に系統へ接続することは、望ましくない出力スパイクを生じさせることがある。これは、電力設備が偶発性予備力をコールド負荷ピックアップに使用しない限り、系統にダメージを与える。従って、再スタートの間における系統の負担を軽減するため、偶発性予備力を軽減する間に、ALD100は、例えば本発明者に共有され、現在継続中の米国特許出願第12/896307号に開示された再スタート制御技術を採用して、影響を受けうる電力設備のサービスエリアへの電力の再供給を知的に制御する。当該米国出願は、2011年1月27日に公開された米国公開特許公報第2011/0022239号に対応する。この文献の内容を、参照として本明細書に取り込む。系統のエリアに渡る電気自動車の位置の更新を定期的に受信することにより、ALD100は、電気自動車の再充電の系統への影響を予期及び想定することができる。従って、電力不足状態の後の再スタート制御の間、ALD100は、サービスポイント20を含む、再充電を必要とする電気自動車が集まっているエリアを判別することができるとともに、これらのエリアを再スタートアルゴリズムで構築して電気自動車が集まっているサービスポイント20が同時に再スタートしないようにすることができる。あるいは、各蓄電装置62は、それ自体がサービスポイントとして効果的に利用され、能動負荷クライアント300と同様の機能を有する独自の制御装置を有する。当該制御装置は、広域無線ネットワークまたは他の通信ネットワークを介してALD100と通信し、米国公開特許公報第2011/0022239号に開示されるように、再スタート制御処理に関して能動負荷クライアント300として動作する。例えば、再充電(特に、急速充電)の間の電気自動車による実質的な負荷のために、ALD100は、再スタート制御の実行の目的で、各電気自動車をサービスポイント(または、少なくとも電力不足の影響を受けているサービスエリアにおける各電気自動車として)として扱う。あるいは、ALD100は、移動式蓄電装置の位置情報を有効に利用し、系統に余剰のキャパシティを戻し、電力不足からの回復を補助する(例えば、電力不足からの回復状況において電力設備の運転用予備力として用いる)。これは、蓄電装置20に関連した需要者プロファイルによって許容され、ALD100は、電力設備に対し電力配分または供給についての価格を交渉しうる。
【0082】
関連する制御装置を介して無線ネットワーク上で直接移動式蓄電装置62から当該装置の位置情報を受信する代わりに、ALD100は、装置62が配置されたサービスポイント20における能動負荷クライアント300からレポートメッセージを受信することによって当該装置62の位置を判定する。例えば、サービスポイント20における、あるいは、再充電ステーション内にある能動負荷クライアント300または同様の制御装置は、再充電の目的で、蓄電装置62がサービスポイントまたはステーションに接続されたことを検出する。このとき、制御装置は、蓄電装置からID情報を取得し、取得した情報をALD100に提供する。ALD100は、サービスポイント/再充電ステーションの位置に基づいて、装置の位置を判定する。
【0083】
別の実施形態では、蓄電装置62は、そのホームまたはベースサービスポイント以外のサービスポイントにおける電力系統に接続される。例えば、電気またはハイブリッド自動車は、当該自動車の所有者または使用者が訪問した住居において接続されうる。このような例の場合、蓄電装置62(電気またはハイブリッド自動車)は、上述した中央制御手段によって引き続き管理される。蓄電装置62が電力系統に接続されて当該系統から電力を受け取る場合、訪問先のサービスポイントに設けられた能動負荷クライアント300等のサービスポイント制御装置は、中央制御手段(例えば、ALD100)に通知を行い、蓄電装置62のIDを提供する。ALD100は、電力消費量及び蓄電動作の期間をALDデータベース124または装置IDに関連した他の記憶手段の入力欄に記録する。ALD100は、また、米国公開特許公報第2010/0235008号に開示されるように、蓄電動作に関連したカーボンフットプリント及びカーボンクレジットを判定する。
【0084】
蓄電装置62が電力系統へエネルギーの送出または配分に用いられる場合、当該蓄電装置62が現在配置されているサービスポイントにおける能動負荷クライアント300は、ALD100に、蓄電装置62のIDを通知する。ALD100は、配分された電力量と、配電動作の期間とをALDデータベース124に記録する。ALD100は、米国公開特許公報第2010/0235008号に開示されるように、配電動作に関連したカーボンフットプリントとカーボンクレジットとを判定する。次に、ALD100は、蓄電及び配電動作によって得られるカーボンクレジットの総量を、蓄電動作に関連したカーボンクレジットを配電動作に関連したカーボンクレジットから除算することによって判定し、得られたクレジットを蓄電装置のホームまたはベースサービスポイント20もしくは蓄電装置の所有者に関連付け、得られたクレジットを設備電力/カーボンデータベース134に記憶する。
【0085】
図4に戻り、蓄電装置62の蓄電及び配電動作に関連したデータは、ALCインターフェイス112及びセキュリティインターフェイス110を介して、該当するサービスポイント制御装置(例えば、能動負荷クライアント300)から中央制御手段(例えば、ALD100)によって受信される。当該データは、ALCマネージャ108によって処理されてALDデータベース124へ送られる。カーボンセービングアプリケーション124は、当該データを用いて節電量及び二酸化炭素削減量を計算し、これらは、設備電力/カーボンデータベース134に記憶される。節電アプリケーション120は、当該データを用いて蓄電装置62に蓄積された電力量を判定し、この蓄電量は、電力設備1304、1306への運転用予備力として利用可能である。
【0086】
移動式の蓄電装置62を把握するため、ALDデータベース124は、任意で、各サービスポイント20に関連する全ての制御された装置及び蓄電装置62のIDを記憶する。電力消費装置または蓄電装置62による電力の消費、配分、または蓄電を報告する場合、能動負荷クライアント300は、装置IDを、当該装置に関連するデータに含め、これによってALD100が当該データをALDデータベース124内において適切な装置及び/またはサービスポイントに関連付けを行えるようにする。この場合、ALDデータベース124内で蓄電装置に関連付けされたサービスポイント20は、配電が電力設備のサービスエリア内で行われたかそうでないかに関わらず、蓄電装置62から系統へ電力を配電することによって得られたカーボンクレジットの総量を受信する。電気自動車またはハイブリッド自動車等の特定の移動式の蓄電装置62は、以下に後述して詳細に説明するように、当該装置62が移動した様々な場所において運転用予備力として当該装置62を利用することを容易にする。
【0087】
図14は、図3に示すALMS10の1実施形態に係る、能動負荷クライアント300(制御装置)と、居住負荷センタ400との一例を示すブロック図である。図示する能動負荷クライアント300は、(例えば、リナックスベースの)運転システム302と、状況応答型発電機304と、スマートブレーカーモジュール制御部306と、通信インターフェイス308と、セキュリティインターフェイス310と、IPベースの通信変換機312と、装置制御マネージャ314と、スマートブレーカー(B1−BN)カウンタマネージャ316と、IPルータ320と、スマートメータインターフェイス322と、スマート装置インターフェイス324と、IP装置インターフェイス330と、電力配分装置インターフェイス340と、イベントスケジューラ344とを備える。本実施形態において、能動負荷クライアント300は、サービスポイント20(例えば、需要者の住居または事業所)の現場に配置されたコンピュータまたはプロセッサベースの制御システムから構成される。能動負荷クライアント300の主要な機能は、サービスポイント20に配置された制御可能な装置の電力負荷レベルを管理することである。これは、能動負荷クライアント300により、需要者の利益のために監視されて制御される。例示的な実施形態においては、能動負荷クライアント300は、ダイナミックホストコンフィグレーションプロトコル(DHCP)クライアント機能を備え、これによって能動負荷クライアント300は自身の、及び/または、管理下にある1以上の制御可能な装置402〜412、60のIPアドレスを動的に要求することが可能である。これにより、ホストIPネットワーク上のDHCPサーバが能動負荷クライアント300とALD100との間の通信を容易にする。能動負荷クライアント300は、さらに、ルータ機能を備え、当該能動負荷クライアント300のメモリ内にある、割り当てられたIPアドレスのルーティングテーブルを管理し、これによって能動負荷クライアント300から制御可能な装置402〜412、60へのメッセージの送達を容易とする。能動負荷クライアント300は、また、電力配分機能(例えば、電力配分装置インターフェイス340)を備え、サービスポイント20における発電装置96及び/または蓄電装置62から配分可能な電力に関する情報をALD100に提供する。能動負荷クライアント300の構成要件の多くは、米国特許第7715951号及び米国公開特許公報第2009/0063228号、第2010/0179670号、第2010/0161148号、第2010/0235008号に開示されている。これら全ての文献の内容を、参照として本明細書に取り込む。本発明の1以上の実施形態に係る、能動負荷クライアント300の動作に関する追加的な詳細と、当該動作に関連する特定の構成要件とを、以下に説明する。
【0088】
図15を参照する。当該図面は、本発明の代替的な実施形態に係る、能動負荷クライアント300等のサービスポイント制御装置がデータをALD100等の中央制御手段に提供するとともに、電力を電力設備の電力系統に供給するために実行するステップを含む動作フローチャート1500の一例を示す。図15の方法は、中央制御手段がサービスポイント20における1以上の蓄電装置62に電力が完全または部分的に蓄電されることによる利用可能な運転用予備力を予想及び配分することを支援するために制御装置によって実行される動作ステップを提供する。図15のステップは、好ましくは、制御装置のメモリ(図示せず)に記憶されたコンピュータインストラクションのセット(ソフトウェア)として実現され、当該制御装置の1以上のプロセッサによって実行される。例えば、サービスポイント制御装置が能動負荷クライアント300である場合、図15の動作フローは、主に、電力配分装置インターフェイス340、装置制御マネージャ314、及びイベントスケジューラ344によって実行される。蓄電装置62が電気自動車である場合の1の実施形態においては、図15の方法を実現する制御装置は、電気自動車に利用可能とするため、充電ステーションと一体とされうる。
【0089】
電気自動車、ハイブリッド自動車、またはバッテリ等の1以上の蓄電装置62は、1以上のサービスポイント20において電力系統に接続される。蓄電装置62が電気またはハイブリッド自動車である場合、サービスポイント20は、自動車を(例えば、プラグインまたは無線式の自動車充電器を介して)再充電可能な自動車再充電ステーションを含む。各サービスポイント20における能動負荷クライアント300または同様の制御装置は、電力配分装置インターフェイス340を介してサービスポイント20において蓄電装置62が存在することを検出する(1501)。例えば、電力配分装置インターフェイス340は、スイッチング回路を含み、当該スイッチング回路は、蓄電装置62または発電装置96が通信可能に能動負荷クライアント300、または、能動負荷クライアント300と接続された制御モジュールと接続された場合、その旨を検出する。当該制御モジュールは、サービスポイント20における自動車再充電ステーションまたは他の系統接続点に一体とされうる。あるいは、各再充電ステーションは、それぞれ、能動負荷クライアント300または他の同様の機能を有する制御装置を備える。しかしながら、充電ステーションに組み込まれた制御装置は、少なくとも本発明の1以上の実施形態を実行するのに必要な機能さえ備えていれば、能動負荷クライアント300の機能の全てを備えていなくてもよい。
【0090】
能動負荷クライアント300は、代替的には、電力配分装置インターフェイス340を介して蓄電装置62からの登録及び/または認証リクエストを受信することにより、サービスポイント20に蓄電装置62が存在することを判別する。能動負荷クライアント300は、直接(例えば、能動負荷クライアント300が自動車再充電システム内に配置されている場合)、または、蓄電装置62と、例えば自動車再充電ステーション内の能動負荷クライアント300との間に接続された制御可能な装置(例えばジグビー、ワイファイ、またはBPL制御モジュール)を介して当該リクエストを受信する。電力配分装置インターフェイス340は、装置制御マネージャ314に、蓄電装置62が存在することを通知し、すなわち、蓄電装置62に関する情報(例えば、装置の種類、装置パラメータまたは仕様(充電及び放電パラメータまたは特性を含む)、蓄電装置62が充電のために接続された制御可能な装置に関連した制御モジュール識別子、等)を適応可能な通信プロトコル(例えば、IP、HSPAまたはLTE上)を介してALD100に提供する。代替的または追加的には、サービスポイント需要者が、蓄電装置62がサービスポイントに含まれるまたは含まれることになることを、蓄電装置に関連する情報(例えば、装置の種類、装置パラメータまたは仕様(充電及び放電パラメータまたは特性を含む)、蓄電装置が充電のために接続された制御可能な装置に関連した制御モジュール識別子、等)を需要者個別設定138(例えば、需要者プロファイル)として需要者ダッシュボード98を介してALD100に入力することにより、ALD100に報知する。蓄電装置62が電気自動車またはハイブリッド電気自動車である場合、装置への需要者プロファイルは、自動車を充電するためのパラメータ(例えば、好ましい充電期間、好ましい電気料金価格等)を含み、当該パラメータは、電気自動車への電力設備の価格設定に合致し、需要者に、運転用予備力が通常必要とされない時間、いわゆる「オフピーク」に自動車を充電することを促進する料金的インセンティブを与える。料金的インセンティブは、「タイムオブユーズ(TOU)」プライスポイントとも呼ばれ、電力設備のオプションとして電気自動車特有のものである。需要者プロファイルは、また、マーケットシグナルと入札ルールとを含み、これらは、蓄電装置62の充電を、瞬動予備力を配分するためのコールに応じて短時間で終わらせることを可能にする。当該コールは、例えば、ALD100等の中央制御手段を介して電力設備から受信することができる。
【0091】
能動負荷クライアント300が、ALD100に、サービスポイント20において蓄電装置62が電力系統に接続された旨を通知した後、ALD100は、蓄電装置62に対する電力の流れを能動負荷クライアント300へメッセージを送信することによって管理する。この場合、能動負荷クライアント300は、定期的に、または、ポーリングに応答して、ALD100に、サービスポイント20における蓄電装置または装置62に蓄積された電力量を報知し、ALD100は、当該ALDの制御下においてサービスポイント20で利用可能な運転用予備力の量を推定する際に上述した電力を考慮することができる。例えば、1の実施形態においては、能動負荷クライアント300(またはサービスポイント20における他の制御装置)は、サービスポイント20における蓄電装置または装置62によって蓄積された電力量を判定する(1503)。能動負荷クライアント300は、電力配分装置インターフェイス340を介して各蓄電装置62から蓄電レポートを受信することにより、あるいは、蓄電装置62が充電された時間長及び蓄電装置の充電特性(例えば、蓄電装置62の充電レートまたはプロファイル)に基づいて蓄電量を推定することにより、上述の判定を行う。能動負荷クライアント300は、蓄電装置62が未だサービスポイント20において電力系統に電気的に接続されているが、電力系統から電力を受け取っていないことを判別する(例えば、電気自動車再充電ステーション内の電流計または制御モジュールによって判別する)ことにより、蓄電装置62が完全に充電されたことを判定する。あるいは、蓄電装置62は、電力配分装置インターフェイス340を介して能動負荷クライアント300にメッセージを送信し、当該能動負荷クライアント300に、装置が完全または部分的に充電された状態である旨を報知する(蓄電装置の蓄電量についても同様に能動負荷クライアント300に任意で報知する)。特定のサービスポイント20において各蓄電装置62に蓄電または推定された電力量は、サービスポイント20の能動負荷クライアント300に記憶される。
【0092】
サービスポイント20における蓄電装置または装置62に蓄積された電力量を判定した後、能動負荷クライアントは、ALD100に、蓄電量を報告する(1505)。蓄電量の報告は、蓄電装置毎、または、サービスポイント毎に行われる。蓄電情報は、ALD100の中央記憶手段(例えば、ALDデータベース)または当該ALD100がアクセス可能な記憶手段に記憶される。上述して詳細に説明したように、中央記憶手段は、また、制御イベントを通じてALD100が予想または推定可能な利用可能な運転用予備力に基づくサービスポイント20における制御された装置についての電力消費データを記憶する。電力設備1304、1306に対して継続的に、または、少なくとも定期的に、蓄電装置62から配分された電力で、及び/または負荷延期制御イベントを通じて節約された電力で、運転用予備力を供給するため、ALD100は、ALDの一般的な制御下におけるサービスポイント20の蓄電装置62からの蓄電量と、制御イベントの間の負荷延期によってサービスポイント20から利用可能になる予想節約エネルギーとを合計して利用可能な運転用予備力の総量を判定する。
【0093】
ALD100から、運転用予備力が求められた場合(例えば、電力設備1304、1306からの要求、一例として、ISOまたはAGCコマンドからのマーケットシグナル、電力設備のAGCシステムからのレギュレーションアップ(「Reg Up」)リクエストまたは信号、に応じて)、ALD100は、1以上の能動負荷クライアント300に、各蓄電装置62を放電して任意に制御イベントを開始するように指示する。従って、指示を受けた各能動負荷クライアント300は、ALD100から電力配分指示を受信し(1507)、それに応じて1以上の蓄電装置62から電力系統への電力の流れを制御し(1509)、これによって運転用予備力への電力設備からのニーズに応える。電力配分指示は、制御イベント指示(例えば、「遮断」メッセージ)の一部を形成し、または、能動負荷クライアント300に別途送信される。電力配分指示は、蓄電装置62に蓄電されていて系統に配分される電力の所定の量またはパーセンテージを示す。当該所定の量またはパーセンテージは、サービスポイント20毎の需要者プロファイルにおいて指定され、または、装置の種類(例えば、放電限度等の装置のパラメータ)に基づいて判定される。例えば、需要者プロファイルは、蓄電装置62から配分される電力が、蓄電装置のキャパシティの50%または75%未満となるように制限する。運転用予備力の供給に関連して制御イベントがサービスポイント20に対して実行され、また、サービスポイント20において蓄電装置62が充電中である場合、サービスポイント300(例えば、サービスポイント全体、または、例えば自動車充電ステーション内)における能動負荷クライアント300は、蓄電装置62または関連する制御モジュールに、充電動作を中止するよう指示し、当該蓄電装置62に供給される電力を、運転用予備力として利用可能にする。能動負荷クライアント300が、電力配分イベント(これは、電力低減制御イベントと同一である)が終了したことを判別した場合(1511)、能動負荷クライアント300は、再度、蓄電装置62を充電する(1513)。
【0094】
図16を参照する。この図は、本発明の代替的な実施の形態に係る、ALD100等の中央制御手段が完全または部分的に充電された蓄電装置62に蓄積された電力によって得られる利用可能な運転用予備力を推定(例えば、予想)及び供給するために実行するステップを含む動作フローチャート1600の一例を示す。図16のステップは、好ましくは、中央制御手段のメモリ(図示せず)に記憶されたコンピュータインストラクションのセット(ソフトウェア)によって実現され、当該中央制御手段の1以上のプロセッサ160によって実行される。図16の動作フローは、運転用予備力が要求される前に、及び/または要求に応じて、マスタイベントマネージャ106及びALCマネージャ108によって実行されてもよい。
【0095】
図16の動作フローによれば、中央制御手段は、1以上のサービスポイント20に配置された装置62に蓄積された電力量を判定し(1601)、蓄電データを生成する。上述したように、中央制御手段は、サービスポイント20に配置された制御装置、または、例えば装置62が直接中央制御手段と通信する機能を有する場合には、任意で直接装置62から、充電状況及び他の装置パラメータを受信する。装置62が電気自動車の場合、制御装置は、電気自動車充電ステーション内に配置され、充電ステーション制御装置が、充電ステーションに電気的に接続された電気自動車に対する電力の流れを制御する。あるいは、制御装置(例えば、能動負荷クライアント300)は、例えば、サービスポイントへの主電力パネルまたは電力メータの近傍のようなより一般的な態様でサービスポイント20に配置され、複数の装置に対する電力の流れを制御する。さらに、各電気自動車は、それぞれ、制御装置を備え、当該制御装置は、中央制御手段と無線ネットワークを介して通信する。当該通信には、充電状況、その他中央制御手段が蓄電量を判定できるようにする情報を含む。中央制御手段は、蓄電データまたは装置62に関する情報を、ALDデータベース124等の記憶手段のそれぞれの入力欄に記憶する(1603)。装置62に蓄積された電力量に関する判定及びデータの記憶は、定期的または周期的に行われ、中央制御手段は、蓄電データの更新を維持する。
【0096】
蓄電装置62に蓄電され、電力設備のサービスエリアを介して配分された電力量を判定した後、中央制御手段は、少なくとも、蓄電データに基づいて、利用可能な運転用予備力の現在の量を判定する(1605)。中央制御手段は、蓄電データ並びに、例えば、装置62及び/または当該装置62が配置されたサービスポイントに関連した需要者プロファイル等の他の情報に基づいて、FERCまたはNERCレギュレーション下で求められる時間内に系統に配分可能な蓄積電力量を判定し、運転用予備力として適用する。例えば、中央制御手段は、需要者プロファイル制約(例えば、キャパシティパーセンテージ制限)を考慮して、どの装置62が系統に接続されているか、また装置62に蓄積された電力使用の制限を判別し、装置62に蓄積された電力による現在利用可能な運転用予備力の量を判定する。電気自動車等の蓄電装置は、系統に間欠的に接続及び分離され、電力設備のサービスエリアに渡り、または、電力設備のサービスエリア間を移動するので、運転用予備力として利用可能な蓄積電力は、定期的に変化する。中央制御手段は、蓄電量の変化及び運転用予備力として利用可能な蓄積された電力量を追跡し、運転用予備力要求(例えば、AGCコマンド)に応じるため、利用可能な運転用予備力を推定する。1の実施形態においては、装置62またはサービスポイント制御装置によって報告される、当該装置62に蓄積された電力量は、利用可能な運転用予備力を判定するのに利用される。代替的に、及び、より好ましくは、蓄電量(蓄電データ)は、制御イベントの結果である予想節電とともに、そして、任意であるがサービスポイント20における発電装置96による発電とともに考慮の対象となり、システムにおける利用可能な運転用予備力の総量が判定される。従って、サービスポイントにおける蓄電装置62に蓄積された電力量の判定は、図2〜13を参照して説明した上述の利用可能な運転用予備力の判定(1605)と統合され、それにより、中央制御手段によって判定(1605)された利用可能な運転用予備力の量は、制御イベントによってもたらされる予想節電と、電力設備のサービスエリア内の蓄電装置62から利用可能な蓄積電力との両方を考慮に入れたものとなる。
【0097】
利用可能な運転用予備力が判定された後に、中央制御手段は、電力設備から運転用予備力の要求を受信したかを判別する(1607)。中央制御手段から運転用予備力が要求されている場合、中央制御手段は、電力設備1304、1306から、例えば、ISOからのマーケットシグナル、または、「Reg Up」リクエストまたは信号等の電力設備のAGCシステムからのAGCコマンドとして運転用予備力の要求を受信する。当該要求が受信されると、中央制御手段は、現在利用可能な運転用予備力で要求を満たすことができるか否かを判別する(1609)。運転用予備力への要求を満たすことができないと判別した場合、中央制御手段は、その旨を電力設備に報知するか、及び/または、当該要求に応答しない。運転用予備力への要求を満たすことができると判別した場合には、中央制御手段は、蓄電装置62から電力設備がアクセス可能な系統への蓄積された電力の流れを管理する(1611)。例えば、中央制御手段は、1以上の制御装置(例えば、能動負荷クライアント300)に、その蓄電装置62から系統へ配電させるように指示を行い、また任意であるが制御イベントを開始する。1の実施形態においては、中央制御手段は、系統に配分可能な電力があると判別した蓄電装置に関連する各制御装置に電力配分指示を送信し、電力設備の運転用予備力への要求を満たすようにする。電力配分指示は、制御イベント指示(例えば、「カット」メッセージ)の一部であり、または、別途に制御装置に送信される。電力配分指示は、蓄電装置62に蓄電され、系統に配分される所定の電力量またはパーセンテージを示す。当該所定の電力量またはパーセンテージは、サービスポイント20についての需要者プロファイル内で指定され、または、装置の種類(例えば、装置のパラメータにより、放電限度)に基づいて決定される。例えば、需要者プロファイルは、蓄電装置62から配分可能な電力を、蓄電装置62のキャパシティの50%または75%未満に制限する。サービスポイント20において運転用予備力の配分とともに制御イベントが開始され、また、当該サービスポイント20において蓄電装置62が充電中である場合、中央制御手段によってなされた制御イベント指示は、サービスポイント300(例えば、サービスポイント全体または自動車充電ステーション内)における制御装置に、蓄電装置62または関連する制御モジュールに対して充電動作を停止し、運転用予備力として利用可能な蓄電装置62へ供給される電力を生成するよう指示させる。電力配分イベント(これは、電力低減制御イベントと同一である)が完了すると、制御装置は、再度、蓄電装置62を充電する。
【0098】
オンデマンドで運転用予備力の源となる蓄電装置62を用いる1の例示的な実施形態においては、ALMS10内の電気自動車またはハイブリッド自動車(「電気自動車」と総称する)サブシステムを用いる。このサブシステムは、能動負荷クライアント300等の制御装置を自動車充電ステーション内または電気自動車自体の内部に備え、電気自動車が中央制御手段(例えば、ALD100)から充電情報を受信可能とする。本実施形態においては、電気自動車は、その電力の一部または全てを、(例えば中央制御手段からの)指示を受信して配分可能な独自の能力を有し、当該電気自動車は、電力設備(系統オペレータまたはISO)、NERC、FERC、または、瞬動及び非瞬動予備力を含む運転用予備力についての価格を定期的に発行するエンティティからの信号に応じて充電または電力配分を行う。電気自動車は、その電力消費及び系統内での異なる位置への電力配分能力により、系統オペレータの独特の使用を象徴している。系統の構成要素は、不動で、そのインフラストラクチャーに異なる負荷(Volt/Var/KVA)を有しているため、ALMS10及びその構成要素(例えば、ALD100及び能動負荷クライアント300)を介して系統上の電気自動車の影響を制御する能力は、系統の安定性を維持するために重要である。本実施形態においては、その「ホーム」または基礎的位置(例えば、電気自動車の所有者に関連したサービスポイント)に位置する電気自動車は、能動負荷クライアント300等の制御装置を備えた充電ステーションを用いる。充電ステーションは、環境非依存型であり、電気自動車のバッテリまたはバッテリバンクを充電するのに抵抗装置として機能する。ALMS10を利用または契約している需要者は、電気自動車についての電力設備の価格設定に合致する、電気自動車充電プロファイルを(例えば需要者ダッシュボード98を介して)設定する。電力設備の価格設定は、「オフピーク」(すなわち、運転用予備力が要求されていない時間)に電気自動車を充電することに対する料金的インセンティブを含む。料金的インセンティブの一例としては、「タイムオブユーズ(TOU)」プライスポイントがあり、これは、電気自動車に特有であるが、そうでない場合もある。さらに、需要者プロファイルは、ALMS10を介して電力設備からの運転用予備力の配分のコールに応じて(例えば、ALD100から自動車に関連した能動負荷クライアント300、その充電ステーション、または当該充電ステーションが配置されたサービスポイントへの制御メッセージに応じて)短期間電気自動車の充電を中断するためのマーケットシグナル及び入札ルールを含む。
【0099】
電力設備に運転用予備力が配分されているイベントの間、系統オペレータ、または、リソース供給のための電力設備の需要者による入札の応答としてISOに要求され、電気自動車は、運転用予備力要求に対応するように変更されその関連した需要者プロファイル指示が報知される。例えば、ISOは、通常のマーケットシグナルを通じて同期予備力/瞬動予備力を配分する。この場合、地域送電機関(RTO)またはISOによって画定されたルールによっては、運転用予備力の要求は、10〜15分以内の応答を必要とする。ALMS10が、運転用予備力の要求を満たすことができると判別した場合、ALD100は、「カット」メッセージを、電気自動車への電力供給を制御する能動負荷クライアント300に送信し、自動車充電動作を中断させる。「カット」メッセージは、電気自動車を含むサービスポイント20における制御イベントに関連して送信され、あるいは、運転用予備力のコールに応じて電気自動車を含む蓄電装置62からのみ電力を配分できる配電イベントのみにおいて送信される。能動負荷クライアント300は、「カット」メッセージが送信された時点での、充電完了のパーセンテージ、及び/または電気自動車のバッテリから利用可能なエネルギー量を含む電気自動車の充電状況を判別し、ALD100に対し、電気自動車の充電状況、能動負荷クライアントの「カット」メッセージへの対応可能性、除かれた負荷の測定値を報告する。ALD100は、当該ALDの制御下における能動負荷クライアント300から受信したデータを、ALDデータベース124等の記憶手段に記憶し、電気自動車または他の蓄電装置62から配分可能な総電力、及び/または除かれた負荷の総量等の関連情報を、ISOに、当該ISOのルールの下で電力設備、系統オペレータ、RTOまたはISOに対応するように指定されたフォーマットで提供する。
【0100】
AGCサブシステムに要求される調整予備力に関し、ALMS10(例えば、ALD10)は、電力設備、系統オペレータ、RTOまたはISOによってACE式に従って利用されたAGCサブシステムからテレメトリーコマンドを受信する。当該コマンドは、周波数及び電圧偏差を示すACE式における差異を示す。例えば、「Reg Up」コマンドは、ACEをゼロに戻すために電力を系統へ戻す必要がある旨を示し、一方、「Reg Down」コマンドは、ACEをゼロに戻すために電力を系統から除く必要がある旨を示す。これら「Reg Up」、「Reg Down」コマンドは、要求しているエンティティまたはNERC、FERC等の管理組織によって定められた時間ウィンドウ内にALMS10(例えばALD100)によってアクノリッジされる必要がある。AGCコマンドは、また、電力設備用のACE式を含み、これによってALD100が、ACEをゼロ近辺に戻す際に必要となる適切な応答を判別することができるようになる。ACE式が受信されると、ALDは、能動負荷クライアント300への「カット」メッセージまたは「ターンオン」メッセージを生成し、ACE内の周波数偏差を補償するとともに、AGCサブシステムによって指示されたとおりに偏差を補正する。1の実施形態においては、能動負荷クライアント300は、「Reg Up」コマンドに応答して自動車のバッテリに蓄積された電力を系統に配分し、当該コマンドは、ACE式(及び制御された系統の周波数)を適切(例えば、ACE=0)に戻すためにより多くの電力が必要である旨を示す。
【0101】
本発明は、また、電気自動車の移動性についても考慮している。変電所、変圧器、及び送電ならびに配電線は、不動であり、それら系統要素の各関連負荷は、日のうちの異なる時間における系統の全体負荷によって異なる。従って、自動車の「ホーム」位置から離れたまたは外部の位置である様々な充電ステーションへの電気自動車の移動は、電力設備に、系統を通じた電気自動車負荷パターンを、特に、自動車が定期的または反復して同一の位置(例えば、職場、レストラン、ショッピングモール等)において再充電することに関して作成可能とする。電気自動車の移動パターンは、自動車(例えば、自動車の一体型GPSユニットまたは他のGPSユニットであって当該自動車に使用されるもの。例えば、移動式GPSユニットや、GPS機能が内蔵され、自動車の内蔵された制御装置と近距離無線通信を介して通信を行う携帯電話またはスマートフォン)からの位置データをALD100が受信することに基づいて判別することもできる。自動車の移動パターンを知得することにより、電力設備が、電気自動車の地域充電及び配電ポイントを発展させることが可能となり、この場合は、ALMS10によるより精密な制御が必要となりうる。1の実施形態においては、ホームまたは外部の任意の充電ステーションにおける能動負荷クライアント300は、自動車がステーションの近傍に位置している(例えば電気的または通信的にステーションと接続されている)場合に、自動車からデータを受信し、自動車のバッテリのパラメータを計測し、ALD100から需要者及び系統関連情報を受信することにより、電気自動車の「状態」、電気自動車に関連した需要者の好み、及び現在の系統の状態(例えば、電気自動車のバッテリの充電パーセンテージ、需要者の好み、電力設備/系統オペレータの好み、ISOによって報告された現在の市場状況)を判別する。
【0102】
さらなる実施形態においては、電気自動車には、当該電気自動車が、ALMS10からパケットネットワーク上で、上述した様々な無線ネットワーク構成(例えば、GSM、HSPA、LTE、CDMA等)で容易とされる機械対機械(M2M)接続を介してモバイルで関連する情報を送信中に、需要者及び系統に関連した情報(例えば、運転用予備力の開放要求に関する情報を含む)が提供される。ALMS10(例えば、ALD100)からM2M接続を介して電気自動車に送信される情報は、当該電気自動車が移動している間、あるいは、ホーム充電ステーションもしくは外部の充電ステーションにおいて、当該電気自動車に、系統の状態、市場価格、運転用予備力のニーズを定期的に更新した態様で提供する。電気自動車に提供された状態情報は、当該自動車に、需要者プロファイル及び市場状況及び/またはALD100が実行可能な電力設備・系統の運転による特定の無効化に基づいて様々なシステム条件を報知する。加えて、電気自動車は、制御装置を含み、当該制御装置は、M2M情報パケットをALD100に送信してその位置、現在の充電状況、及び他のパラメータを報知する。ALD100は、これらの情報を、電力設備に潜在的な負荷問題を報知するために利用し、当該電力設備から、ALD100に管理された制御装置(例えば、能動負荷クライアント300)が特定の位置及び特定の時間での電気自動車の再充電を許容するか否かについてのフィードバックを受信する。電気自動車によって提供される情報は、また、ALD100に、キャパシティ(例えば、運転用予備力)を必要としている電力設備のサービスエリア内において余剰のキャパシティ(例えば、目的地に達するのに要求されたよりも多いキャパシティ、または、現在移動していないこと)に関連して電気自動車から電力を配分することを交渉する機会を提供する。
【0103】
電気自動車についてのデータは、その最後に知られたアドレス位置(これは、例えば、電気自動車から無線でその能動負荷クライアント300または他の制御装置によって報告されるGPS座標に基づいて決定される)とともにデータベースに記憶される。当該データベースの一例は、ALMS10内の、「EVCVLR」(Electric Vehicle Charging Visitor Location Register)データベースである。また、電気自動車がその「ホーム」充電ステーションに戻った場合、電気自動車についてのデータは、ALMS10内の対応する「HLR」(Home Location Register)データベースに記憶される。電気自動車は、各充電ステーションを登録するとともに当該充電ステーションに認証され、当該充電ステーション(外部/訪問先またはホーム)と電気自動車との間で送受信される情報のセキュリティレベルを維持する。EVCVLR及びHLRデータベースの入力欄は、需要者に、外部の地点への移動と、系統への運転用予備力の供給のための電力配分または充電中断イベント等のイベントへの参加を許容する。当該イベントへの参加は、電気自動車の所有者が、そのホーム充電ステーションから離れている間に、運転用予備力を提供することについて補償を受けることを可能にする。追加的に、または代替的に、ALMS10内にEVCVLR及びHLRデータベースを設けることにより、自動車のホーム電力設備サービスエリア外または、能動負荷クライアント300等のALMS制御装置を含まないもしくは関連していない地点においてまたは充電ステーションを介して単純な充電器(例えば、そのALMSレポーティング制御装置を含まない充電器)によって充電する電気自動車の「清算」を会計する方法を提供する。いずれの使用状況においても、ALMS10は(例えば、電気自動車からALD100への通信を介して)、自動車の位置(これは、例えば、GPS等によって決定される)と、ALMS10内の好み設定(例えば、需要者プロファイル)を登録し、電力設備、系統オペレータ、RTO、またはISOから位置/測地特定コマンドを受信し、系統の状況に応え、あるいは、入札応答等の市場状況に応じて運転用予備力を供給する。
【0104】
電力設備の要求に応じて運転用予備力を予想して供給する上述した方法は、ALMS10によって利用され、仮想電力設備1302を実現する。当該電力設備は、図13を参照して詳細に説明されており、また、米国公開特許公報第2009/0063228号に概略的に開示されている。このような場合、仮想電力設備13−2は、例えば、ALD100が提供するALDデータベース124及びプロセッサ160のような記憶手段とプロセッサとを備える。この場合、プロセッサは、上述した様々な運転用予備力予想及び配電機能を実行するようにプログラミングされ、あるいは、実行可能に構成されている。例えば、仮想電力設備1302は、電力消費データを生成するための少なくとも1の期間において、プロセッサを介して、遠隔地にある装置(例えば、電力設備のサービスエリア内のサービスポイント20における電力消費装置)の第1のセットによる消費電力量を判定可能である。仮想電力設備1302は、また、プロセッサを介して、遠隔地にある装置(例えば、電力設備のサービスエリア内のサービスポイント20におけるバッテリ、または電気若しくはハイブリッド自動車等の蓄電装置62)の第2のセットに蓄積されている電力量を判定可能で、蓄電データを生成する。プロセッサは、電力消費データ及び蓄電データを記憶手段に記憶する。
【0105】
後の時点(すなわち、電力消費データ及び蓄電データが記憶手段に記憶された後)において、仮想電力設備1302は、プロセッサを介して、装置の第1のセットへの電力供給が低減される制御イベントが生じることを判別する。当該判別は、電力設備からの要求に応じて行われる。例えば、電力設備のAGCシステムは、Reg Upコマンド等のAGCコマンドを生成し、負荷の低減及び/または供給の増加を要求し、電力設備によって供給される電力の周波数を補正して安定化(すなわち、調節)する(すなわち、電力設備のACEを略ゼロと等しくする)。当該状況及び調整予備力へのニーズは、電力設備が、典型的には、その電力を風力発電、太陽発電等の電力設備の再生可能エネルギー源に頼っている間に、当該再生可能エネルギー源による発電不足によって生じうる。制御イベントが生じると判別した場合、仮想電力設備1302は、制御イベントが開始される前において、かつ、制御イベントが生じないという前提の下で、プロセッサを介して、少なくとも記憶された電力消費データに基づいて、第1の期間における装置の第1のセットによる電力消費傾向を推定する。ここで、制御イベントは、第1の期間の間に生じると予測される。当該推定の実行は、図8図11を参照してその一例をすでに上述している。
【0106】
制御イベントが予測される期間における装置の第1のセットによる電力消費傾向を推定した後、仮想電力設備1302は、さらに、制御イベントの開始の前に、プロセッサを介して、少なくとも装置の第1のセットによる予測された電力消費傾向に基づいて、制御イベントの結果として得られる予想節電を判定可能である。予想節電は、サービスポイント毎、または、電力設備単位で判定されうる。仮想電力設備1302、及び、その関連する中央制御手段(例えば、ALD100)が複数のサービスポイント20における装置をローカル制御装置(例えば、能動負荷クライアント300)を介して制御する場合、仮想電力設備のプロセッサは、1以上の装置が制御イベントの影響を受ける各サービスポイント20毎の中間的な予想節電を判定し、すべてのサービスポイント20の中間的な予想節電を合算し、電力設備単位、または、少なくとも総計の予想節電を得る。単一のサービスポイント20における予想節電は、サービスポイント20における各制御された電力消費装置が制御イベントへ参加することによって得られる予想節電であるとともに、サービスポイント20において制御イベントがない場合には充電電力を受けることになる各蓄電装置62の充電を中断することによって得られるものである。
【0107】
仮想電力設備1302は、制御イベントの開始の前に、プロセッサを介して、予想節電及び記憶された電力データに基づいて運転用予備力の量を判定することが可能である。従って、電力消費装置が様々な時間にどのように動作することが予測されるのかを正確にかつ過去の実績に基づいて知得し、また、仮想電力設備1302による制御のためにどの程度蓄積された電力が利用可能かを知得することにより、仮想電力設備1302は、リアルタイムで、要求している電力設備からの運転用予備力のニーズに合致するための能力を正確に予想することができ、従って、要求している電力設備に対して運転用予備力を供給するために有益な方法で入札することができる。仮想電力設備1302が要求された運転用予備力を供給するようにした場合、仮想電力設備1302は、さらに、プロセッサを介して、制御イベントの開始に続いて、要求している電力設備への運転用予備力の必要とされる量を配分、及び/または、その配分を管理する。
【0108】
代替的な実施形態においては、例えば、運転用予備力要求(例えば、ISOマーケットシグナルまたはAGCReg Upコマンド)において示されている、要求している電力設備の運転用予備力のニーズによっては、仮想電力設備1302は、電力削減または負荷繰り延べのための制御イベントを開始することなく、単に蓄電装置62から電力を配分する。これは、運転用予備力として利用可能に蓄積されるとともに、仮想電力設備1302が取得可能な電力が、電力設備の運転用予備力ニーズに十分に合致している場合である。
【0109】
電力設備の要求に応じて運転用予備力を予想して供給する上述した方法は、ALMS10が組み込まれた任意の電力設備によって利用されることは、当業者にとっては容易に理解することができることであろう。当該ALMSは、中央制御手段と、例えば上述したALD100や能動負荷クライアント300によって実現される装置のセットと、を備える。従って、サービス電力設備1304は、本発明を採用してその運転用予備力を予想及び供給し、または、当該運転用予備力を開放された市場(これは例えば、ISOマーケットシグナルに応答したものである)に売り出す。
【0110】
上述したように、本発明は、ALD等の中央制御手段と、能動負荷クライアント等の地理的地域(例えば、1以上の電力設備のサービスエリア)に渡って分散された複数の制御装置とを備えたALMSを用いて、運転用予備力キャパシティを判定して供給し、蓄積された電力を、電力系統に接続された蓄電装置から配分するシステム及び方法を含む。電力設備がそのネガティブ負荷を超えて電力を要求する場合、当該電力設備は、その運転用予備力を使用するか、または、他の電力設備から、FERC系統を介して追加の電力を入手する必要がある。上述したように、運転用予備力は、瞬動予備力と調整予備力とを含む。瞬動予備力は、電力システムに既に接続されている追加の発電キャパシティであり、従って、瞬時に利用可能である。調整予備力は、また、電力系統に接続され、線周波数の変動に応じた非常に短時間の通知に基づいて供給されるキャパシティである。本発明の1の実施形態においては、ALD等の中央制御手段は、瞬動予備力及び/または調整予備力を、電力系統に接続された蓄電装置の電力を配分することにより、電力設備に利用可能とする。他の実施形態においては、中央制御手段は、蓄電装置から配分された電力を、制御イベントを介した電力蓄積と合算し、要求している電力設備へ運転用予備力を供給する。従って、ALMSの使用により、電力設備は、電力供給の中断による節電及びサービスポイントに蓄積された電力から利用可能となる瞬動予備力または他の運転用予備力を判定または予想することができる。供給された運転用予備力は、測定可能であるとともに検証可能であり、数時間前または数日前に事前に予想可能である。従って、当該予想を、開放された市場における他の電力設備に販売することが可能である。
【0111】
上述したように、ALMS10は、フレキシブルな負荷形状化プログラムの一種を実現するように考慮されている。しかしながら既存の負荷制御プログラムとは反対に、ALMS10に実現される負荷形状化プログラムは、知られているリアルタイムの需要者の好みに基づいて装置(負荷または蓄電装置)の選択的な制御の結果として得られる運転用予備力の量を予想する。また、その通信及び制御メカニズムによって、ALMS10は、節電とともに、再生可能エネルギークレジットとともにカーボンクレジット及びオフセットを判定するために設定されたプロトコル及び取り決めに合致するようにアクティブで、リアルタイムで、検証可能で、かつ測定可能な運転用予備力(例えば、調整、瞬動、及び/または非瞬動予備力)を予想可能である。ALMS10によって得られた情報は、単に需要者の好み及びデータのサンプルであるだけではなく、実際の電力消費情報である。
【0112】
上述の説明において、本発明を具体的な実施形態とともに説明した。しかしながら、様々な変更、応用が添付の特許請求の範囲に記載された本発明の要旨を逸脱しない範囲で可能であることは、当業者にとって明らかであろう。例えば、図8の受動的サンプリングアルゴリズム、図9の予想エネルギー使用アルゴリズム、図10のベストサンプリングマッチアルゴリズム、及び図11の予想節電アルゴリズムは、1以上の均等物によって実行することができる。また、能動負荷クライアント300によって実行される上述した全ての機能は、サービスポイントに位置する代替的な制御装置(例えば、電気自動車再充電ステーションまたは他の制御装置)によって実行されてもよい。さらに、ALD100によって実行される上述した全ての機能は、1以上の電力設備と1以上のサービスポイント制御装置との間で通信可能に接続された代替的な中央制御手段によって実行されてもよい。従って、本明細書及び図面は限定のためのものではなく、例示のためのものであり、かかる応用は本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0113】
利益、他の利点、及び課題を解決するための手段を本発明の特定の実施形態に関して説明した。しかしながら、利益、利点、課題を解決するための手段及び要素が、これらの利益、利点、または解決手段をより明確にすることは、特許請求の範囲に記載された特徴または要素を重要で、必須で、または本質的であると解釈するべきではない。本発明は、本願の中間処理において行われる補正及び均等物を含む添付の特許請求の範囲の記載のみによって画定される。
【符号の説明】
【0114】
10 能動負荷管理システム
100 能動負荷監督装置
20 サービスポイント
300 能動負荷クライアント
62 蓄電装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図16