【0015】
さらに、焙煎は、下記(1)から(3)の要件を満たすものであると、一層好ましい。
(1)
焙煎前の碾茶中のタンニンの含有率を40%以上減少させること
(2)
焙煎前の碾茶中のカフェインの含有率を40%以上減少させること
(3)
焙煎前の碾茶中のテアニンの含有率を70%以上減少させないこと
碾茶を上記(1)の要件を満たすように焙煎することにより、得られる粉末茶は、タンニンの含有量が少なく苦渋味のないものとなり、カテキン酸化物生成により、とろみの軽減となる。上記(2)の要件を満たすように焙煎することにより、得られる粉末茶は、カフェインの含有率が少なく苦みのない幼児、子供、老人、不眠症者等でも飲用可能なものとなり、上記(3)の要件を満たすように焙煎することにより、得られる粉末茶は、テアニンによる茶本来の旨味と、焙煎によって生じたアミノカルボニル反応生成物による旨味とを有するものとなる。なお、焙煎は、
焙煎前の碾茶中のタンニンおよび/またはカフェインの含有率を50%以上減少させるものであるとより好ましい。
【実施例】
【0018】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例の態様に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更することが可能である。たとえば、下記の実施例においては、焙烙鍋に収納した茶葉を五徳で加熱することによって焙煎しているが、工業化する際には、茶葉の収納器具や加熱器具を、同様な効果を生じる大型のものに変更することが可能である。加えて、実施例、比較例における粉末茶の特性の評価方法は、以下の通りである。
【0019】
<成分評価>
下記の実施例1〜8、および比較例1、2、3において、碾茶、抹茶および茎茶の焙煎処理前後の粉末茶に含まれるタンニン、カフェイン、テアニンの各成分を、茶成分分析計(静岡製機株式会社製 GT−8)を用いて近赤外分光分析法によって調べた。また、カテキン酸化物は、高速流体クロマトグラフ法によって測定した。
【0020】
<味覚評価>
得られた粉末茶を約3g計量し、約70度の湯50mlに投入して攪拌し、粉末茶を温湯中に分散させることによって飲用物(お茶)を得た。そして、その飲用物を飲用し、下記の3つの観点で味覚を官能評価した。なお、官能評価は、異なる5名が別々に行い、数の多かったもの(○、△、×のいずれか)を最終的な評価結果とした。
[香り]
○・・茶本来の香ばしい香りがするもの、あるいは焙煎香気がするもの
△・・香る程度が低いもの
×・・ほとんど香りがしないもの、あるいは、焦げたような香りがするもの
[滋味]
○・・茶本来の滋味を感じるもの、あるいは焙煎茶の滋味を感じるもの
△・・滋味の程度が低いもの
×・・ほとんど滋味を感じないもの
[苦渋味]
○・・ほとんど苦渋味を感じないもの
△・・多少の苦渋味を感じるもの
×・・苦渋味を感じるもの
[とろみ]
○・・とろみが気にならないもの
△・・とろみの軽減があるもの
×・・とろみがあるもの
【0021】
<実施例1>
茶園製造の碾茶(被覆栽培された覆下茶葉を原料とし、その茶葉を揉まずに乾燥した後、葉脈、茎を除いて葉肉のみとしたもの)約100gを焙烙鍋を用いて、20℃×45%RHの雰囲気下で、五徳を利用して約80℃の温度で20分間に亘って焙煎した。そして、その焙煎後の碾茶を、20℃45%RHの雰囲気下で粒径5μm程度の粉状に細粉砕することによって実施例1の粉末茶を得た。そして、得られた粉末茶の成分、味覚等を、上記した方法によって評価した。また、焙煎前の茶葉(碾茶)の成分も評価した。実施例1の粉末茶の評価結果を表1に示す。
【0022】
<実施例2>
焙煎温度を110℃に変更するとともに、焙煎時間を10分に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例2の粉末茶を得た。そして、得られた粉末茶を、実施例1と同様な方法によって評価した。実施例2の粉末茶の評価結果を表1に示す。
【0023】
<実施例3>
焙煎温度を160℃に変更するとともに、焙煎時間を5分間に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例3の粉末茶を得た。そして、得られた粉末茶を、実施例1と同様な方法によって評価した。実施例3の粉末茶の評価結果を表1に示す。
【0024】
<実施例4>
焙煎温度を180℃に変更するとともに、焙煎時間を3分間に変更した以外は、実施例3と同様にして実施例4の粉末茶を得た。そして、得られた粉末茶を、実施例1と同様な方法によって評価した。実施例4の粉末茶の評価結果を表1に示す。
【0025】
<実施例5>
焙煎温度を200℃に変更するとともに、焙煎時間を2分間に変更した以外は、実施例3と同様にして実施例5の粉末茶を得た。そして、得られた粉末茶を、実施例1と同様な方法によって評価した。実施例5の粉末茶の評価結果を表1に示す。
【0026】
<実施例6>
抹茶約100gを、焙烙鍋を用いて、20℃×45%RHの雰囲気下で、五徳を利用して約110℃の温度で10分間に亘って焙煎することによって実施例6の粉末茶(焙煎抹茶)を得た。なお、当該焙煎前の抹茶中の全遊離アミノ酸の含有率は約4%であり、タンニンの含有率は約10%であった。そして、得られた粉末茶の成分、味覚等を、上記した方法によって評価した。また、焙煎前の茶葉(抹茶)の成分も評価した。実施例6の粉末茶の評価結果を製造方法とともに表1に示す。
【0027】
<実施例7>
焙煎温度160℃に変更するとともに焙煎時間を3分間に変更した以外は、実施例6と同様にして実施例7の粉末茶を得た。そして、得られた粉末茶を、実施例1と同様な方法によって評価した。実施例7の粉末茶の評価結果を表1に示す。
【0028】
<実施例8>
焙煎前の茶葉を茎茶(茎棒を主成分とする茶葉)に変更し、焙煎温度を170℃に変更するとともに、焙煎時間を15分間に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例8の粉末茶を得た。そして、得られた粉末茶を、実施例1と同様な方法によって評価した。また、焙煎前の茶葉(茎茶)の成分も評価した。実施例8の粉末茶の評価結果を表1に示す。
【0029】
<比較例1>
碾茶を焙煎しなかった以外は、実施例1と同様にして比較例1の粉末茶を得た。そして、得られた粉末茶を、実施例1と同様な方法によって評価した。比較例1の粉末茶の評価結果を表1に示す。
【0030】
<比較例2>
抹茶の焙煎を行わなかったこと以外は、実施例6と同様にして比較例2の粉末茶を得た。そして、得られた粉末茶を、実施例1と同様な方法によって評価した。比較例2の粉末茶の評価結果を表1に示す。
【0031】
<比較例3>
茎茶の焙煎を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして比較例3の粉末茶を得た。そして、得られた粉末茶を、実施例1と同様な方法によって評価した。比較例3の粉末茶の評価結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
表1から、焙煎処理を施した実施例1〜8の粉末茶は、香り、滋味、苦渋味とも良好で、とろみが低減した飲用に好適なものであることが分かる。さらに、焙煎温度を110℃〜180℃に調整した実施例2〜4,6〜8の粉末茶は、香り、滋味、苦渋味、とろみ低減とも特に良好であることが分かる。また、焙煎処理を施した実施例1〜4の粉末茶(碾茶を原料とするもの)は、80℃で焙煎処理した実施例1を除いて、焙煎前の茶葉(比較例1)に比べて、タンニンの含有率が40%以上減少し、カフェインの含有率が40%以上減少しているとともに、テアニンの含有率が70%以上減少していないことが分かる。また、抹茶に焙煎処理を施した実施例6、7の粉末茶も、実施例2〜4の粉末茶と同様に、焙煎前の茶葉に比べて、タンニンの含有率が40%以上減少し、カフェインの含有率が40%以上減少しているとともに、テアニンの含有率が70%以上減少していないことが分かる。さらに、焙煎処理を施した実施例8の粉末茶(茎茶を原料とするもの)も、実施例2〜4の粉末茶と同様に、焙煎前の茶葉に比べて、タンニンの含有率が40%以上減少し、カフェインの含有率が40%以上減少しているとともに、テアニンの含有率が70%以上減少していないことが分かる。なお、100℃以下で焙煎した焙煎温度80℃の実施例1の粉末茶は、タンニン、カフェイン、およびテアニンの含有率に大きな変化が見られないことが分かる。さらに、焙煎温度を110℃〜200℃に調整した実施例2〜8の粉末茶においては、カテキン酸化物の増加が認められ、とろみの低減と対応することが分かる。
【0034】
それに比べて、茶葉に焙煎処理を施さなかった比較例1〜3の粉末茶は、滋味、苦渋味とも不良で、粉末茶としての飲用には不向きであることが分かる。また、焙煎処理を施さなかった比較例1〜3の粉末茶は、タンニン、カフェイン、テアニン、およびカテキン酸化物の含有率に大きな変化が見られないことが分かる。