(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、一般的な健康志向を反映して、主食となるパンなどのべーカリー製品において、糖質制限や食物繊維の摂取を目的とした製品への需要は高い。しかし、このような製品では、糖質源となる小麦粉の配合量が抑えられ、小麦蛋白に由来するグルテンの形成が抑えられるので、生地の成す骨格形成が不良となり、生地を焼成等したあとの製品にボリュームが出ないという問題があった。また、生地の取り扱い性に劣るという問題があった。また、食感としても、ボソボソしてしまい、ソフトな食感が得にくいという問題があった。
【0003】
このような問題に関連して、例えば下記特許文献1には、焙煎ふすま又は焙煎ぬかのいずれかと、グルテン及びおおばこ種皮(サイリウム)粉末を主成分とし、実質的に糖質(デンプン)を含有しない食品素材の発明が開示され(特許文献1の請求項1)、グルテンを用いて焙煎ふすま又は焙煎ぬかとつなぎの役目とし、微量におおばこ種皮(サイリウム)粉末を配合することにより、保水性やしっとり感を与え得ることが記載されている(特許文献1の段落0007)。
【0004】
また、例えば下記特許文献2には、小麦粉を含有しないパン様食品に用いるパン様食品素材であって、ふすまおよびぬかのうちの少なくとも一種と、小麦たんぱくと、増粘安定剤とを含有する一方、実質的に糖質(デンプン)を含有せず、前記増粘安定剤が、ジェランガム、ガラクトマンナン、グルコマンナン、カラヤガム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガムのうち少なくとも一種であることを特徴とするパン様食品素材の発明が開示され(特許文献2の請求項1)、増粘安定剤を配合することで、その食品素材からなる生地の粘性と保水性が向上し、しっとり感が得られ、さらに、グルテンの結合をサポートして、網目構造の形成が助けられ、ボリューム、釜伸び、保湿性(パサつきがなく、ソフトな食感)などが改善されることが記載されている(特許文献2の段落0015)。
【0005】
また、例えば下記特許文献3には、小麦粉を含有しないパン様食品に用いるパン様食品素材であって、ふすまおよびぬかのうちの少なくとも一種と、小麦たんぱくと、膨潤剤とを含有する一方、実質的に糖質(デンプン)を含有せず、前記膨潤剤は、寒天、カラギナン、カードラン、ゼラチンのうちの少なくとも一種を水に加熱溶解して膨潤しゲル化したもの、ワカメ、コンブ、およびモズクのうちの少なくとも一種であることを特徴とするパン様食品素材の発明が開示され(特許文献3の請求項1)、膨潤剤を配合することで、その食品素材からなる生地の粘性と保水性が向上してしっとり感を発現し、さらに、グルテンの結合をサポートして網目構造の形成を助け、その結果、生地の焼成時のボディー形成が向上して、食感、ボリュームにおいて優れたパン様食品が得られることが記載されている(特許文献3の段落0009)。
【0006】
また、例えば下記特許文献4には、低糖質を実現しながら良好な食味を得ることができるパン類や菓子類、さらには麺類などの加工食品を製造可能とする低糖質食品素材を提供することを目的として、外皮を剥いで超微粒粉とされた原料大豆を凍結乾燥又は噴霧乾燥して製造された豆乳粉と小麦由来の活性グルテンとを混合した低糖質食品素材であって、上記食品素材中の活性グルテンの含有量を5〜90重量%とし、残部を豆乳粉とし、糖質の含有量を少なくとも13.5重量%以下に調整されていることを特徴とする低糖質食品素材の発明が開示されている(特許文献4の請求項1)。
【0007】
また、例えば下記特許文献5〜7には、パン生地の混捏工程で原料粉として小麦粉および難消化性澱粉を添加するパンの製造方法において、その小麦粉の一部として高蛋白質含有量の超強力粉を添加するとともに、活性グルテンおよびグリアジンを添加することにより、多量の難消化性澱粉を添加しても、混捏したパン生地は伸展性、膨張性および弾力性を維持し、焼成したパンにおいて、ボリュームが小さくなり、形状が安定せずに均一性を欠いたり、またはクラストに亀裂が発生したりすることが防止され、または抑制されると記載されている(特許文献5の段落0010、特許文献6の段落0010、特許文献7の段落0010)。
【0008】
また、例えば下記特許文献8には、i)a)約10重量%から約60重量%のバイタル小麦グルテンと、b)小麦タンパク質加水分解物を含み、バイタル小麦グルテンの小麦タンパク質加水分解物に対する重量比が約1:1から約8:1であるタンパク質成分と、ii)消化されやすい炭水化物原料、消化されにくい炭水化物原料およびこれらの混合物からなる群から選択される炭水化物成分であって、前記消化されにくい炭水化物原料は食物繊維、非吸収性炭水化物原料およびこれらの混合物から選択される炭水化物成分と、iii)水を含む液体成分とを含むことを特徴とする生地組成物の発明が開示され(特許文献8の請求項1)、小麦タンパク質加水分解物が存在すると、高濃度(生地組成物の約5重量%から約35重量%)のバイタル小麦グルテンを含む生地の粘弾性および機械加工性が有意に向上し、また、パン製品の官能性が向上すると記載されている(特許文献8の段落0024)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1〜8のように、低糖質食品原料を主体としたイースト発酵食品において、小麦粉の配合量が制限されることに付随する問題は、小麦由来のグルテンを添加することなどによって、ある程度は解消した。しかしながら、本発明者らの研究によれば、活性グルテンだけでは弾力が強すぎかえって生地の伸展性が悪く、ちぎれやすくなり、機械加工性に劣るという問題が生じた。また、生地を焼成等したあとの製品の内相の組織に筋が生じたり、空洞ができてしまったり、組織が硬くなったりする傾向があった。
【0011】
したがって、本発明の目的は、低糖質食品原料を主体としたイースト発酵食品において、小麦粉の配合量が制限されることに付随する、生地の機械加工性の不良や、生地を焼成等した後の内相の組織の不良を解消することができるイースト発酵食品用組成物、及び、それを利用したイースト発酵食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の第1は、低糖質食品原料と、活性グルテンと、還元処理グルテンと、イーストに資化可能な糖質原料とを含有することを特徴とするイースト発酵食品用組成物を提供するものである。
【0013】
本発明のイースト発酵食品用組成物においては、前記低糖質食品原料を15〜90質量%、前記活性グルテンを5〜30質量%、前記還元処理グルテンを5〜30質量%、前記イーストに資化可能な糖質原料を0.1〜10質量%含有することが好ましい。
【0014】
また、前記低糖質食品原料は、難消化性澱粉、大豆粉、及びフスマからなる群から選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
【0015】
また、前記低糖質食品原料として、前記難消化性澱粉を15〜70質量%、前記大豆粉及び/又は前記フスマを両者合計で0.1〜20質量%含有することが好ましい。
【0016】
また、前記低糖質食品原料として、前記大豆粉を15〜60質量%、前記難消化性澱粉及び/又は前記フスマを両者合計で0.1〜30質量%含有することが好ましい。
【0017】
また、前記低糖質食品原料として、前記フスマを15〜60質量%、前記難消化性澱粉及び/又は前記大豆粉を両者合計で0.1〜30質量%含有することが好ましい。
【0018】
また、更に、小麦粉を0.1〜30質量%含有することが好ましい。
【0019】
また、前記イーストに資化可能な糖質原料として、糖類を0.1〜10質量%含有することが好ましい。
【0020】
本発明のイースト発酵食品用組成物は、パン又は菓子の製造のために好適に用いることができる。
【0021】
一方、本発明の第2は、上記イースト発酵食品用組成物を用いて得られたイースト発酵食品を提供するものである。
【0022】
本発明のイースト発酵食品は、パン又は菓子であることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、活性グルテンによって、小麦粉の配合量が制限されたイースト発酵食品であっても生地を焼成等したあとの製品にボリュームが得られるうえに、それに加えて還元処理グルテンを用いることによって、弾力が強すぎずに生地の伸展性が向上し、ちぎれにくく、機械加工性を向上させることができる。また、生地を焼成等したあとの製品の内相の組織の状態も良好となり、食味や食感が向上する。更に、イーストに資化可能な糖質原料によって、糖質が制限されていても、イースト発酵食品の品質のために必要なイースト発酵を促すことができる。その糖質原料はイーストに効率的に消費されるので、糖質制限の要請も満たしやすい。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のイースト発酵食品用組成物は、低糖質食品原料と、活性グルテンと、還元処理グルテンと、イーストに資化可能な糖質原料とを含有する、イースト発酵食品用の組成物であり、好ましくは乾燥粉体の形態をとる。乾燥粉体の形態によれば、保管や流通させるうえで便宜である。そして、水等を加えてイースト発酵食品の生地を成すように構成されている。
【0025】
本発明で用いる低糖質食品原料は、糖質が50質量%以下の食品原料をいう。ここでいう糖質とは、食物繊維を除いた炭水化物をいう。食物繊維の定量法としては、プロスキー法(No.985.29, Total Dietary Fiber in Foods, "Official Method of Analysis", AOAC, 15th ed., 1990, P.1105-1106)、酵素HPLC法(AOAC2001.03)、などが知られ、上記範囲を満たす食品原料であるかどうかは、それらの方法を用いて判断できる。
【0026】
上記低糖質食品原料としては、難消化性澱粉、大豆粉、フスマなどを好ましく例示することができる。
【0027】
難消化性澱粉は、消化吸収を受けにくい食用の澱粉をいう。詳細には、上記したプロスキー法による食物繊維の含量が50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、更により好ましくは70質量%以上である食用の澱粉をいう。
【0028】
難消化性澱粉は、澱粉質原料を物理的、酵素的及び/又は化学的に処理すること等により得ることができる。例えば、特開平4−130102号公報及び特開平10−313804号公報に記載された方法に従い、澱粉質原料、好ましくは高アミロース澱粉質原料を湿熱処理する方法が挙げられる。より具体的には、減圧ラインと加圧蒸気ラインとの両方を付設し、内圧、外圧共に耐圧性の密閉できる容器を用い、この容器内に上記澱粉を入れ、減圧した後、蒸気を導入して加圧加熱し、又はこの操作を繰り返して、澱粉を所定時間加熱した後、冷却することにより湿熱処理する方法である。また、例えば、特開平8−56690号公報に記載された方法に従い、澱粉質原料に脱分枝化酵素を作用させる方法が挙げられる。より具体的には、ゼラチン化デンプンの水性スラリーを、プルラナーゼ、イソアミラーゼ等の脱分枝酵素により脱分枝し、そして得られる生成物を老化させる方法である。
【0029】
難消化性澱粉の原料となる澱粉質原料としては、食用として利用可能なものであればよく、特に制限はない。例えば、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、小麦澱粉、米澱粉、サゴ澱粉、片栗澱粉、葛澱粉、蕨澱粉、サゴ澱粉などが挙げられる。また、ウルチ種、ワキシー種、ハイアミロース種のように、育種学的手法もしくは遺伝子工学的手法において改良されたものを用いてもよい。更に、各種加工澱粉を用いてもよい。酸処理、アルカリ処理、酸化処理、エステル化処理、エーテル化処理、リン酸化処理、架橋処理といった化学的処理、加熱処理、α化処理、湿熱処理、ボールミル処理、微粉砕処理といった物理的処理、酵素処理といった加工処理や、それらの2種以上の処理を施した澱粉を使用してもよい。
【0030】
難消化性澱粉としては、市販品を使用することもでき、例えば、「ファイバージムRW」(商品名、松谷化学工業株式会社製)、「アミロジェルHB−450」(商品名、三和澱粉工業株式会社製)、「日食ロードスター」(商品名、日本食品化工株式会社製)等を使用することができる。
【0031】
大豆粉は、食用として利用可能なものであればよく、特に制限はない。大豆を粉砕して乾燥して得られた大豆粉であってもよく、もしくは大豆を乾燥後に乾燥して粉砕して得られた大豆粉であってもよい。大豆の全部を用いて得られた大豆粉であってもよく、もしくは外皮等の一部を除いて得られた大豆粉であってもよい。また、全脂大豆粉、脱脂大豆粉のいずれも用いることができる。大豆粉は焙煎したものを用いてもよく、これにより独特の食味を有するイースト発酵食品を得ることもできる。
【0032】
フスマは、穀類の外皮の粉砕物をいう。例えば、小麦のフスマ、大麦のフスマ、米糠などが挙げられる。また、穀類の外皮としては、大豆やトウモロコシの外皮なども挙げられる。フスマは焙煎したものを用いてもよく、これにより独特の食味を有するイースト発酵食品を得ることもできる。
【0033】
低糖質食品原料としては、上記に例示した難消化性澱粉、大豆粉、及びフスマ以外にも、小麦ファイバー、大豆ファイバー、セルロース、難消化性デキストリン、ポリデキストロースなども好ましく例示することができる。
【0034】
本発明において用いられる活性グルテンは、小麦粉と水とを混捏したとき、その生地中に小麦蛋白質のチオール基のS−S結合の形成をともなって発達する、パンなどのイースト発酵食品の組織の骨格を形成する成分をいう。詳細には、小麦蛋白質であるグリアジンとグルテニンとの複合体を主な構成成分とし、その総蛋白含有量が、典型的には60〜95質量%であり、より典型的には65〜90質量%であり、更により典型的には70〜85質量%である小麦蛋白質含有物である。活性グルテンは、通常、粉体状製品として市場に流通しており、その紛体状製品を水等に戻したときには、生地様の伸展性や弾力性を呈する。
【0035】
活性グルテンは、小麦粉と水とを混捏した生地から澱粉等の水溶性成分を洗い流して、その残留物を回収すること等により得ることができる。例えば、「エマソフトM−1000」(商品名、理研ビタミン株式会社製)、「AグルG」(商品名、グリコ栄養食品株式会社製)等が市販されているので、これらのものを用いてもよい。
【0036】
本発明において用いられる還元処理グルテンは、上記グルテンが還元処理されることにより、小麦蛋白質のチオール基のS−S結合が形成されにくく、水等で戻したときの生地様の性質が、活性グルテンとは異なる性質となるようにした改質グルテンをいう。詳細には、グルテンを調製する過程で、もしくはその調製の後に、乾燥物換算で、グルテン100質量部に対して還元剤を好ましくは0.005〜0.5質量部、より好ましくは0.01〜0.3質量部、更により好ましくは0.02〜0.1質量部配合することによって得られる改質グルテンをいう。還元剤は、グルテンを調製した後、もしくは予め調製されたグルテンに添加してもよいが、グルテンを調製する際に、小麦粉と水とを混捏する過程で添加することがより好ましい。これにより、グルテンと還元剤が複合体を形成するので、グルテンに対する還元剤の作用が維持されやすい。
【0037】
還元剤としては、ピロ亜硫酸ナトリウム、グルタチオン、システイン、などが挙げられる。特に、還元作用が強いことから、ピロ亜硫酸ナトリウムが好ましい。
【0038】
本発明において用いられるイーストに資化可能な糖質原料は、食用として利用可能であって、且つイースト発酵を促す栄養源となることができる糖質原料であればよく、特に制限はない。例えば、砂糖、ブドウ糖、ショ糖、果糖、麦芽糖等の糖類などが挙げられる。その糖質原料は、イースト発酵食品用組成物中に0.1〜10質量%含有することが好ましく、1〜8質量%含有することがより好ましく、3〜6質量%含有することが更により好ましい。上記範囲未満であると、イースト発酵が弱くなり、イースト発酵食品となったときの組織やボリュームが不良となる傾向があるので好ましくない。上記範囲を超えると、イースト発酵食品となったときに残存し、糖質制限の効果が得にくいので好ましくない。
【0039】
本発明のイースト発酵食品用組成物は、難消化性澱粉、大豆粉、及びフスマからなる群から選ばれた少なくとも1種の低糖質食品原料を15〜90質量%、活性グルテンを5〜30質量%、還元処理グルテンを5〜30質量%、イーストに資化可能な糖質原料を0.1〜10質量%含有することが好ましく、上記低糖質食品原料を30〜50質量%、活性グルテンを7〜15質量%、還元処理グルテンを7〜15質量%、イーストに資化可能な糖質原料を3〜6質量%含有することがより好ましい。
【0040】
また、本発明の一つの態様においては、低糖質食品原料として、難消化性澱粉を15〜70質量%、大豆粉及び/又はフスマを両者合計で0.1〜20質量%含有することが好ましく、難消化性澱粉を20〜50質量%、大豆粉及び/又はフスマを両者合計で5〜15質量%含有することがより好ましい。
【0041】
また、本発明の別の態様においては、低糖質食品原料として、大豆粉を15〜60質量%、難消化性澱粉及び/又はフスマを両者合計で0.1〜30質量%含有することが好ましく、大豆粉を20〜40質量%、難消化性澱粉及び/又はフスマを両者合計で5〜20質量%含有することがより好ましい。
【0042】
また、本発明の更に別の態様においては、低糖質食品原料として、フスマを15〜60質量%、難消化性澱粉及び/又は大豆粉を両者合計で0.1〜30質量%含有することが好ましく、フスマを20〜50質量%、難消化性澱粉及び/又は大豆粉を両者合計で5〜20質量%含有することがより好ましい。
【0043】
なお、低糖質食品原料として難消化性澱粉のみであると、水等を加えて生地を成すときの吸水性が悪く、パサついた食感となる場合があるが、大豆粉及び/又フスマを併用することで、その吸水性が向上し、また、ソフトでしっとりとした食感となる。
【0044】
本発明のイースト発酵食品用組成物は、更に、小麦粉を0.1〜30質量%含有することが好ましく、3〜25質量%含有することがより好ましく、5〜20質量%含有することが更により好ましい。上記範囲の小麦粉を配合することによって、糖質制限の要請を満たしつつ、生地の取り扱い性を向上させることができると共に、食味を向上することができる。小麦粉は焙煎したものを用いてもよく、これにより独特の食味を有するイースト発酵食品を得ることもできる。
【0045】
上記イースト発酵食品用組成物には、例えば、食塩、油脂、脱脂粉乳等の乳原料、全卵粉末等の卵原料、アセスルファムカリウム、ネオテーム、スクラロース、エリスリトール、還元パラチノース等の低カロリー甘味料、ベーキングパウダー等の膨張剤、ジェランガム、キサンタンガム、グアーガム等の増粘剤、グリセリン脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸ナトリウム、ステアロイル乳酸カルシウム等の乳化剤、麦麹、酵素、α加工澱粉等の生地改良剤、ビタミン、ミネラル、カルシウム等の栄養強化剤、ドライイースト、イーストフード、pH調整剤、保存料、風味料などを適宜含むことができる。ただし、本願発明の構成及びその作用効果を妨げないようにするためには、これらは、イースト発酵食品用組成物中に50質量%以下の含有量で含有することが好ましく、40質量%以下の含有量で含有することがより好ましく、30質量%以下の含有量で含有することが更により好ましい。
【0046】
本発明のイースト発酵食品用組成物は、例えば、食パン、ロールパン、菓子パン、ハンバーガーバンズ、デニッシュペストリー、ドーナツ、速製パン(マフィン、アメリカンビスケット等)、ピザ等のパン類や、スポンジケーキ、パウンドケーキ、ケーキマフィン、蒸しパン、蒸しケーキ、中華まん、パイ等の菓子類などに好適に用いることができる。即ち、これらイースト発酵食品の生地の原料として好適に用いることができる。
【0047】
上記イースト発酵食品用組成物は、水を加えればそのままイースト発酵食品の生地を成すように構成されていてもよく、食塩、砂糖、油脂、全卵、膨張剤、イーストなどのイースト発酵食品の原料が適宜添加されて、イースト発酵食品の生地を成すように構成されていてもよい。イースト発酵食品用組成物の生地中の割合は、乾燥物換算で30〜100質量%であることが好ましく、35〜90質量%であることがより好ましく、40〜80質量%であることが更により好ましい。上記範囲未満であると、本発明のイースト発酵食品用組成物以外の原料によって、糖質制限の要請を満たしづらいので好ましくない。
【0048】
イースト発酵食品の製造方法としては、特に制限はなく、上記イースト発酵食品用組成物に水等を加えて生地を調製し、生地中のイーストを発酵させ、成形等を施し、焼成、油ちょう、蒸熱処理、電子レンジ調理等により加熱処理すればよい。なお、生地を調製したり成形したりする過程でもイースト発酵が起こるが、必要なら、室温で5〜300分程度、冷蔵で3〜72時間程度静置することにより、イースト発酵を促すことができる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0050】
<実施例1〜
3、
参考例1、比較例1〜4>
[ミックス粉試料の調製]
表1に示す配合で各原料を混合し、実施例1〜
3、
参考例1、及び比較例1〜4のミックス粉試料を調製した。
【0051】
なお、難消化性澱粉としては、「ファイバージムRW」(商品名、松谷化学工業株式会社製)を用い、加工デンプンとしては、α化エーテル架橋タピオカ澱粉を用い、生地改良剤としては、剥皮した麦粒を含む原料に麹菌を培養して得られた麦麹を、更に乾燥、粉砕した麦麹粉末(特許第3648403号公報)を用い、乳化剤としては、コハク酸モノグリセリドを用い、増粘剤としては、アルギン酸プロピレングリコールエステルを用いた。
【0052】
また、活性グルテンとしては小麦由来の粉末状活性グルテンを用い、酵素処理グルテンとしては小麦由来のグルテンを酵素分解したものを用い、還元処理グルテンとしては、小麦由来のグルテンをピロ亜硫酸ナトリウムで還元処理したものを用いた。
【0053】
【表1】
【0054】
即ち、実施例1を基準としてみたとき、比較例1ではグルテンとして活性グルテンのみを使用し、比較例2ではグルテンとして還元処理グルテンのみを使用し、比較例3では還元処理グルテンの代わりに酵素処理グルテンをメーカー推奨量で使用し、実施例2では小麦粉とグラニュー糖の配合量を減らし、比較例4では小麦粉とグラニュー糖を配合せず、実施例3では活性グルテンの配合量を減らし、還元処理グルテンの配合量を増やし、
参考例1では活性グルテンの配合量を増やし、還元処理グルテンの配合量を減らした。
【0055】
[試験例1]
上記で調製した各ミックス粉試料100質量部に対し、油脂10質量部、パン用酵母3.5質量部、全卵10質量部、水60〜70質量部を加えて混捏し、それを生地に用いて、ノータイム法によりワンローフを作製した。
【0056】
各ミックス粉試料に関し、生地調製時の作業性、生地の伸展性と弾力性のバランス、パンのボリューム、外観、内相、及び食味について、官能評価を行った。評価基準としては、下記のとおり、パンのボリュームについては得られたパンのボリュームの数値範囲ごとに点数化し、それ以外はパネラーによる相対評価基準で不良(1点)から良好(5点)までを5段階にして、パネラー7名による多数意見を採用して、点数付けした。
・作業性:/1点;生地形成が遅く、ミキシング耐性無く、生地がべたつく/〜/5点;生地形成が早く、ミキシング耐性があり、生地のべたつきが少ない/
・伸展性と弾力性のバランス:/1点;生地の伸展性と弾力性のバランスが悪い/〜/5点;生地の伸展性と弾力性のバランスが良い/
・ボリューム:1点;1,800cc未満、2点;1,800cc以上〜2,000cc未満、3点;2,000cc以上〜2,100cc未満、4点;2,100cc以上〜2,200cc未満、5点;2,200cc以上
・外観:/1点;ケービングあり、しわが多く、パイルが出ていない/〜/5点;ケービングなく、しわが少なく、パイルが出ている/
・内相:/1点;筋があり、硬く、空洞できてしまっている/〜/5点;筋が無く、ソフトでキメ細かい/
・食味:/1点;甘さが弱く、口どけが悪い/〜/5点;適度な甘さがあり、口どけが良い/
【0057】
【表2】
【0058】
その結果、グルテンとして活性グルテンと還元処理グルテンを併用した実施例1のミックス粉試料では、生地形成が早く、ミキシング耐性があり、生地のべたつきも少なく、生地調製時の作業性が非常に良かった。また、生地の伸展性と弾力性のバランスが非常に良かった。更に、パンのボリューム、外観、内相、食味についても良好であった。
【0059】
それに対して、グルテンとして活性グルテンのみを使用した比較例1では、生地形成が遅く、ミキシング耐性無く、生地がべたつき、生地調製時の作業性が非常に悪かった。また、パンの内相も筋があり、空洞ができてしまっており、不良であった。これは、生地の弾力性が強すぎて伸展性に乏しく、生地がちぎれやすく、物理的に損傷を受けやすくなっているためと考えられた。
【0060】
また、グルテンとして還元処理グルテンのみを使用した比較例2では、比較例1と同様に、生地調製時の作業性が非常に悪く、加えて、パンの外観についても、ケービングあり、しわが多く、パイルが出ておらず、不良であった。また、パンのボリュームが実施例1に比べ9割程度しか達しなかった。更に、パンの内相が硬く、不良であった。これは、生地の伸展性はよいものの、弾力性が乏しく、生地の発酵によって生じるガスをうまく保持できないためと考えられた。
【0061】
また、活性グルテンとともに、還元処理グルテンの代わりに酵素処理グルテンを併用した比較例3では、いずれの評価項目においても顕著に不良であった。
【0062】
また、実施例1に比べ小麦粉とグラニュー糖の配合量を減らした実施例2では、パンのボリュームにおいて若干劣るものの、総じて良好な結果が得られた。
【0063】
また、実施例1に比べ小麦粉とグラニュー糖を配合しなかった比較例4では、パンのボリュームが実施例1に比べ8.5割程度しか達しなかった。また、パンの外観、内相、食味についても不良であった。これはグラニュー糖及び小麦粉が配合されないため酵母による発酵が不良であるためと考えられた。
【0064】
また、実施例1に比べ活性グルテンの配合量を減らし、還元処理グルテンの配合量を増やした実施例3では、作業性、パンのボリュームにおいて若干劣るものの、総じて良好な結果が得られた。
【0065】
また、実施例1に比べ活性グルテンの割合を増やし、還元処理グルテンの配合量を減らした
参考例1では、作業性、パンの内相において若干劣るものの、総じて良好な結果が得られた。
【0066】
<実施例5>
上記で調製した実施例1のミックス粉試料100質量部に対し、油脂5質量部、インスタントドライイースト1質量部、膨脹剤1質量部、水45質量部を加えて混捏し、それを生地に用いて、常法に従い中華まんを作製した。
【0067】
その結果、生地形成が早く、ミキシング耐性があり、生地のべたつきが少ないなど、生地の取り扱い時の作業性は良好であった。また、食味・食感が良好であって、好ましい中華まんを作ることができた。
【0068】
<実施例6>
上記で調製した実施例1のミックス粉試料100質量部に対し、油脂15質量部、パン用酵母4質量部、膨脹剤1質量部、全卵15質量部、水55質量部を加えて混捏し、それを生地に用いて、常法に従いドーナツを作製した。
【0069】
その結果、生地形成が早く、ミキシング耐性があり、生地のべたつきが少ないなど、生地の取り扱い時の作業性は良好であった。また、食味・食感が良好であって、好ましいドーナツを作ることができた。
【0070】
<実施例7,8>
表3に示す配合で各原料を混合し、実施例7,8のミックス粉試料を調製した。
【0071】
なお、原料は上記で調製したミックス粉試料と同様のものを用いた。
【0072】
【表3】
【0073】
上記で調製した実施例7,8のミックス粉試料100質量部に対し、油脂10質量部、パン用酵母3.5質量部、全卵10質量部、水90質量部を加えて混捏し、それを生地に用いて、ノータイム法によりワンローフを作製した。
【0074】
その結果、大豆粉を主体とした実施例7とフスマを主体とした実施例8のいずれのミックス粉試料でも、生地調製時の作業性は良好であって、生地の伸展性と弾力性のバランスが良く、パンのボリューム、外観、内相、及び食味についても良好なパンを作ることができた。
【課題】低糖質食品原料を主体としたイースト発酵食品において、小麦粉の配合量が制限されることに付随する、生地の機械加工性の不良や、生地を焼成等した後の内相の組織の不良を解消することができるイースト発酵食品用組成物を提供することにある。また、それを利用したイースト発酵食品を提供する。
【解決手段】低糖質食品原料と、活性グルテンと、還元処理グルテンと、イーストに資化可能な糖質原料とを含有するイースト発酵食品用組成物を得る。低糖質食品原料としては、難消化性澱粉、大豆粉、及びフスマからなる群から選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。このイースト発酵食品用組成物は、パン又は菓子の製造のために好適に用いることができる。