(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の足ヒレは、装着したままで陸上を歩いたり、ボート等に乗り降りするのが困難であった。また、無理をして足ヒレを装着したまま歩こうとしてもぎこちない歩行となり、また、ファッション性に乏しいため、ビーチやプールサイド等では恥ずかしいという問題もある。さらに、足ヒレを装着したままボート等に乗り降りしようとすると、足を踏み外す危険があり事故や怪我をするおそれがある。
【0005】
また、特許文献1に記載されたサイド型潜水用フィンは、脚部の外側に大きく広がる形状を有している。このため、水中において推進力を発生させる際、脚の外側にのみ大きな水の抵抗を受け、爪先が外方向に捻られる。よって、よほど筋力の強いユーザでない限りは、サイド型潜水用フィンを正しい向きでバタつかせることができず、十分な推進力が得られないという問題がある。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、装着したままでも陸上を歩いたりボート等に乗り降りでき、ファッション性および安全性が高く、筋力の弱いユーザや使用経験のないユーザであっても簡単に水中での推進力を得ることができる水中推進補助具およびこれを備えた水中用衣服を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る水中推進補助具は、脛の曲面形状に合わせて形成されており膝から足首にかけて装着されるベース部と、前記ベース部の左右両側面から向こう脛の曲面に連続しつつ左右外側に張り出された一対の前方フィンとを有している。
【0008】
また、本発明の一態様として、前記一対の前方フィンの後方位置には、前記ベース部の左右両側面からふくらはぎの曲面に連続しつつ左右外側に張り出された一対の後方フィンが設けられていてもよい。
【0009】
さらに、本発明の一態様として、前記一対の後方フィンは、前記一対の前方フィンよりも外方向に大きく張り出されていてもよい。
【0010】
また、本発明の一態様として、前記後方フィンの前面には、断面が凹状に湾曲された前面側凹状湾曲面が形成されているとともに、前記後方フィンの背面には、断面が凹状に湾曲された背面側凹状湾曲面が形成されており、前記前面側凹状湾曲面が、前記背面側凹状湾曲面よりも外側に配置されていてもよい。
【0011】
さらに、本発明の一態様として、前記一対の前方フィンにおいて左右それぞれの表面積は略同一であり、前記一対の後方フィンにおいて左右それぞれの表面積は略同一であってもよい。
【0012】
また、本発明の一態様として、前記ベース部は、向こう脛に沿って開口されていてもよい。
【0013】
さらに、本発明の一態様として、前記前方フィンと前記ベース部との間に形成される凹溝の溝幅が、上下中央部から上端部および下端部に向けてそれぞれ小さくなるように形成されていてもよい。
【0014】
また、本発明の一態様として、前記前方フィンの下端部には、後方側へ湾曲された後方湾曲部が形成されていてもよい。
【0015】
さらに、本発明の一態様として、足に履くことが可能なシューズ部を有しており、前記シューズ部の上面側には、左右両側端部から左右外側に張り出された一対の固定フィンが設けられていてもよい。
【0016】
また、本発明の一態様として、前記シューズ部は、靴底部分を左右方向にスリット状に貫通してなるフィン収納空間と、前記フィン収納空間の前端部または後端部に設けられる揺動軸と、前記揺動軸回りに揺動可能に軸支される一対の揺動フィンとを有しており、各揺動フィンは、前記フィン収納空間内に収容される収納位置と、前記フィン収納空間から左右方向に張り出される張出位置との間で揺動してもよい。
【0017】
さらに、本発明の一態様として、前記一対の揺動フィンは、前記張出位置に揺動されたときに前記一対の固定フィンよりも外方向に大きく張り出されていてもよい。
【0018】
また、本発明の一態様として、前記フィン収納空間の各開口部には線ファスナーが設けられており、前記線ファスナーは、スライダーを前記揺動軸側に移動させたときに閉じられてもよい。
【0019】
また、本発明に係る水中用衣服は、上述したいずれかに記載の水中推進補助具を備えている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、装着したままでも陸上を歩いたりボート等に乗り降りでき、ファッション性および安全性が高く、筋力の弱いユーザや使用経験のないユーザであっても簡単に水中での推進力を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る水中推進補助具1の一実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明では、人の脚を意味する用語として、膝からくるぶしまでの間の部分を「脛(shank)」とし、くるぶしから下の部分を「足(foot)」として使い分けることとする。
【0023】
本実施形態の水中推進補助具1は、
図1から
図6に示すように、膝から足首にかけて装着されるベース部2と、このベース部2の左右両側面から左右外側に張り出された一対の前方フィン3,3と、これら一対の前方フィン3,3の後方位置において、ベース部2の左右両側面から左右外側に張り出された一対の後方フィン4,4と、足に履くことが可能なシューズ部5とを有している。以下、各構成部について説明する。
【0024】
ベース部2は、水中推進補助具1をユーザの両脚に装着させるためのものである。本実施形態において、ベース部2は、弾力性や耐久性に優れたゴム素材や合成樹脂等によって形成されている。また、ベース部2は、
図1から
図6に示すように、膝からくるぶしまでの間の脛の曲面形状に合わせて形成されており、その内面が脛と密着するようになっている。
【0025】
一方、ベース部2は、向こう脛(脛の前面部分)に沿って開口された前方開口21と、ふくらはぎ(脛の後面部分)に沿って開口された後方開口22とを有しており、向こう脛およびふくらはぎが露出するようになっている。このような開口21,22により装着のし易さや清涼感が高められる。また、前方開口21からベース部2に至る形状は向こう脛に沿って当該向こう脛から連続的な曲面を描くように形成されており、水中での抵抗力を低減するようになっている。また、同様に後方開口22からベース部2に至る形状はふくらはぎに沿って当該ふくらはぎから連続的な曲面を描くように形成されており、後方側に脚を蹴り上げる際に抵抗力を低減するようになっている。
【0026】
なお、本実施形態では、ベース部2に前方開口21や後方開口22を設け、ユーザの身体の一部もフィンとして利用することで軽量化を図っているが、この構成に限定されるものではない。例えば、ベース部2に前方開口21や後方開口22を設けることなく、レッグウォーマーのような筒状の構成にしてもよい。また、ベース部2が脛から外れてしまうのを防止するため、ベース部2の上端部近傍に帯状の透明ベルト(図示せず)を設け、締め付けて装着するようにしてもよい。
【0027】
前方フィン3は、水をかき分けることにより推進力を発生させるものである。本実施形態において、前方フィン3は左右一対で構成されており、
図1に示すように、ベース部2の左右両側面から向こう脛の曲面に連続しつつ左右外側に張り出されている。これにより、各前方フィン3は、向こう脛によって両側にかき分けられた水を受けて捕捉するとともに、当該水を後方へ押し出しながら受け流すことにより、推進力を発生させるようになっている。
【0028】
また、本実施形態において、前方フィン3は、
図2および
図7に示すように、向こう脛に沿って凹溝31が形成されており、水を捉えやすくなっている。一方、前記凹溝31の溝幅が上下中央部から上端部および下端部に向けてそれぞれ小さくなるように形成されており、水中で水を徐々に捉えるとともに、徐々に逃がしやすくなっている。さらに、本実施形態では、
図4に示すように、前方フィン3の下端部には、後方側へ湾曲された後方湾曲部32が形成されている。このため、前方フィン3,3の前面側で受けた水を下端部から背面側へスムーズに流すようになっている。
【0029】
なお、本実施形態において、前方フィン3は、ベース部2と同様の素材によって形成されているが、この構成に限定されるものではなく、しなり具合や剛性のバランスを考慮して適宜異なる素材を選択してもよい。例えば、前方フィン3の横幅が比較的小さい場合には、硬い素材を使用し、横幅が比較的大きい場合には柔らかい素材を使用してもよい。また、基端部は硬く、先端部に向けていくに従って滑らかに柔らかくなる素材を使用してもよい。
【0030】
さらに、本実施形態では、水を補足しやすくするため、
図7に示すように、前方フィン3の端部が前方に向けて湾曲されている。しかしながら、この構成に限定されるものではなく、少なくとも左右外側に張り出していればよい。
【0031】
後方フィン4は、前方フィン3と同様、左右一対で構成されており、前方フィン3で受け損ねた水をかき分けることにより推進力を発生させるものである。本実施形態において、後方フィン4は、
図1から
図6に示すように、一対の前方フィン3,3の後方位置において、ベース部2の左右両側面からふくらはぎの曲面に連続しつつ左右外側に張り出されている。また、各後方フィン4,4は、各前方フィン3,3よりも外方向に大きく張り出されている。これにより、前方フィン3で受け損ねた水を効果的に受けて捕捉し、水の抵抗を分散させるとともに、当該水を後方へ押し出しながら受け流すことにより、より大きな推進力を発生させるようになっている。したがって、前方フィン3,3を小さめに形成して抵抗を小さくしても後方フィン4,4によって推進力をカバーすることができる。
【0032】
また、本実施形態では、
図7に示すように、後方フィン4の前面には、断面が凹状に湾曲された前面側凹状湾曲面41が形成されており、後方フィン4の背面には、断面が凹状に湾曲された背面側凹状湾曲面42が形成されている。そして、前面側凹状湾曲面41が、背面側凹状湾曲面42よりも外側に配置されている。これにより、前面側凹状湾曲面41は、後方フィン4の外側へ逃げようとする水を捕捉しやすくなっている。
【0033】
また、後方フィン4の背面には、背面側凹状湾曲面42の外側に、断面が凸状に湾曲された凸状湾曲面43が形成されている。このため、膝を曲げる際には、背面側凹状湾曲面42が水を受けてある程度の推進力を発生させる。一方、背面側凹状湾曲面42でかき分けられた水は、凸状湾曲面43によって外側へスムーズに受け流されるため、膝を曲げる際に後方フィン4が受ける水の抵抗を低減するようになっている。
【0034】
さらに、本実施形態では、一対の前方フィン3,3において左右それぞれの表面積は略同一に形成されており、一対の後方フィン4,4において左右それぞれの表面積も略同一に形成されている。このため、各脚にかかる水の抵抗が左右で略同一となり、捻れ方向の負荷が発生しないようになっており、脚や膝への負担をできるだけかけないようになっている。なお、本発明において、略同一とは完全同一のみならず、上記効果を享受できる範囲内であれば、製造誤差等によって多少異なっている状態を含む概念である。
【0035】
なお、前方フィン3,3および後方フィン4,4の張り出し幅(横幅)は、陸上を歩いたりボート等に乗り降りする際に邪魔にならない程度のサイズに設定されている。このようなサイズであっても、上下方向に長い面積を有しているため、水を受けて推進力を発生させる機能は確保される。
【0036】
シューズ部5は、足を被覆して保護するものである。本実施形態において、シューズ部5は、ベース部2と同様の素材によって形成されており、短靴と同様の基本構造を有している。一方、シューズ部5の上面側には、
図1および
図8(a)、(b)に示すように、左右両側端部から左右外側に張り出された一対の固定フィン51,51を有している。これら各固定フィン51は、
図8(c)に示すように、上面が凹状の湾曲面に形成されている。このため、足の甲部分で両側にかき分けられた水を受けて捕捉するとともに、当該水を後方へ押し出しながら受け流すことにより、推進力を発生させるようになっている。
【0037】
また、本実施形態において、シューズ部5は、
図9および
図10に示すように、靴底部分を左右方向にスリット状に貫通してなるフィン収納空間52と、このフィン収納空間52の後端部に設けられる揺動軸53と、この揺動軸53回りに揺動可能に軸支される一対の揺動フィン54,54とを有している。この構成により、各揺動フィン54,54は、フィン収納空間52内に収容される収納位置(
図9)と、フィン収納空間52から左右方向に張り出される張出位置(
図10)との間で揺動するようになっている。
【0038】
本実施形態において、各揺動フィン54,54は、
図9および
図10に示すように、前方の外側が凸湾曲形状に形成されているとともに、前方の内側には段差部54aが形成されている。また、フィン収納空間52の各開口部には線ファスナー55が設けられており、開閉可能に構成されている。各線ファスナー55は、スライダー56を揺動軸53側に移動させたときに閉じられるように取り付けられている。
【0039】
上記の構成により、
図10に示すように、各揺動フィン54,54を張出位置まで揺動させた後、スライダー56を閉じる方向に移動させると、段差部54aに当接したところでストップする。このため、線ファスナー55は、各揺動フィン54,54が収納方向へ揺動するのを規制するストッパーとして機能するようになっている。また、各揺動フィン54,54を収納位置まで揺動させた後、線ファスナー55を閉じると、各揺動フィン54,54が完全に収納されるようになっている。
【0040】
なお、本実施形態では、揺動軸53がフィン収納空間52の後端部に設けられているため、スライダー56を前方から後方へ移動させたときに閉じられるように線ファスナー55を取り付けているが、この構成に限定されるものではない。すなわち、揺動軸53がフィン収納空間52の前端部に設けられている場合には、スライダー56を後方から前方へ移動させたときに閉じられるように線ファスナー55を取り付ければ同様のストッパー機能を発揮する。また、本実施形態では、揺動フィン54の張り出し度合いを一定にするために、段差部54aを設けているが、必ずしも形成されていなくてもよい。
【0041】
また、本実施形態において、各揺動フィン54,54は、張出位置に張り出されたときに、各固定フィン51,51よりも外方向に大きく張り出されている。これにより、固定フィン51で受け損ねた水を受けて捕捉し、水の抵抗を分散させるとともに、当該水を後方へ押し出しながら受け流すことにより、より大きな推進力を発生させるようになっている。
【0042】
なお、固定フィン51および揺動フィン54の張り出し幅(横幅)は、前方フィン3および後方フィン4と同様、陸上を歩いたりボート等に乗り降りする際に邪魔にならない程度のサイズに設定されている。このようなサイズであっても、前後方向に長く形成されているため、水を受けて推進力を発生させる機能は確保される。なお、本実施形態では、揺動フィン54が収納可能に構成されているため、揺動フィン54の張り出し幅を大きめに設定しても、陸上では収納すれば邪魔にならない。
【0043】
つぎに、本実施形態の水中推進補助具1による作用について説明する。
【0044】
本実施形態の水中推進補助具1を用いて、水中で推進力を得る場合、
図1に示すように、ユーザの膝から足首にかけてベース部2を装着するとともに、シューズ部5を足に履く。これにより、シューズ部5は足の爪先側にフィン等の嵩張る部材を有しない上、本実施形態の各フィン3,4,51,54は邪魔にならない横幅に形成されているため、装着したまま歩いたりボート等に乗り降りしても、全く邪魔にならず安全性が高い。
【0045】
また、水中推進補助具1は、従来の足ヒレとは一線を画する斬新で近未来的なデザインであるため、ファッション性が高くスマートな印象を誘起させる。さらに、本実施形態では、ベース部2が前方開口21および後方開口22を有することで、着脱がし易くなり、清涼感も高められる。また、装着したユーザの脚線美を強調する上、水中推進補助具1を軽量化するため、陸上および水中での機動性を向上させる。
【0046】
さらに、本実施形態では、
図9に示すように、揺動フィン54が、収納位置に揺動された状態で線ファスナー55を閉じることで、フィン収納空間52内に収納される。このため、陸上での歩行時等に、不意に揺動フィン54がフィン収納空間52から飛び出してしまうことがない。一方、
図10に示すように、揺動フィン54を張出位置に揺動させた状態で線ファスナー55を閉じると、スライダー56が段差部54aに当接し、揺動フィン54が収納方向へ揺動するのを規制する。このため、揺動フィン54は迅速かつ簡単に張出位置で固定される。
【0047】
水中では、水中推進補助具1を装着したユーザが膝を屈伸運動させると、各フィン3,4,51,54が水を受けて後ろに押し出し、大きな推進力を発生させる。具体的には、膝を曲げた状態から伸ばした場合、ユーザの向こう脛が水を後方へ押し出しながらかき分け、推進力を発生させる。このとき、向こう脛の曲面に連続しつつ左右外側に張り出された前方フィン3が、向こう脛で左右両側にかき分けられた水をスムーズに受けて捕捉し、当該水を後方へ受け流すことにより、推進力を発生させる。
【0048】
また、本実施形態では、前方フィン3とベース部2との間に形成される凹溝31の溝幅が上下中央部から上端部および下端部に向けてそれぞれ小さくなるため、上端部からは水を捉えやすく、下端部からは水を逃がしやすい。さらに、本実施形態では、前方フィン3の下端部に設けられた後方湾曲部32が、水をスムーズに後方へ流して水の抵抗を低減する。
【0049】
また、本実施形態では、前方フィン3よりも左右外側に張り出され、前面側凹状湾曲面41を有する後方フィン4が、前方フィン3で受け損ねた水を受けて捕捉する。このため、水の抵抗が分散されるとともに、当該水を後方へ押し出しながら受け流すことにより、より大きな推進力を発生させる。さらに、本実施形態では、前方フィン3および後方フィン4の表面積が左右で略同一に形成されているため、ユーザの脛にかかる水の抵抗が左右で略同一となり、捻れ方向の負荷を発生しない。
【0050】
また、膝を曲げた状態から伸ばした場合、シューズ部5では、足の甲が水をかき分け、推進力を発生させる。このとき、各固定フィン51,51が、足の甲部分で両側にかき分けられた水を受けて捕捉し、当該水を後方へ押し出しながら受け流すことにより、推進力を発生させる。また、各固定フィン51,51よりも左右外側に大きく張り出された各揺動フィン54,54が、固定フィン51で受け損ねた水を受けて捕捉し、水の抵抗を分散させる。そして、当該水を後方へ押し出しながら受け流すことにより、より大きな推進力を発生させる。
【0051】
一方、膝を伸ばした状態から曲げた場合、ユーザのふくらはぎが水を押し出しながらかき分け、推進力を発生させる。このとき、ふくらはぎの曲面に連続しつつ左右外側に張り出された後方フィン4が、ふくらはぎで左右両側にかき分けられた水をスムーズに受けて捕捉し、当該水を後方へ受け流すことにより、推進力を発生させる。
【0052】
本実施形態において、後方フィン4では、背面側凹状湾曲面42が水を受けて後方へ押し出し、ある程度の推進力を発生させる。このとき、背面側凹状湾曲面42は、前面側凹状湾曲面41よりも内側に配置されているため、膝を曲げた状態から伸ばす場合に発生させる推進力よりも小さいが、その分当該動作に必要なモーメントも小さくて済み、脚を曲げやすい。そして、背面側凹状湾曲面42でかき分けられた水は、凸状湾曲面43がスムーズに後方や外方へ流すため、膝を曲げる際に後方フィン4が受ける水の抵抗を低減する。
【0053】
以上のように、本実施形態の水中推進補助具1は、ユーザの脛やふくらはぎ、足の甲といった身体の一部もフィンの一部として利用するため、コンパクトでスマートなデザインながらも最大限の推進力を発生させる。
【0054】
以上のような本実施形態によれば、以下のような効果を奏する。
1.水中推進補助具1を装着したままでも陸上を歩いたりボート等に乗り降りでき、ファッション性および安全性に優れている。
2.ライフセービング、スキューバダイビング、スキンダイビング、ウォータースポーツ、水中工事等のように、水中での迅速な移動を必要とするユーザに対して、水中における推進を補助することができ、実用性に優れている。
3.筋力の弱いユーザや使用経験のない初心者であっても簡単に水中で推進力を得ることができる。
4.脚でかき分けた水を前方フィン3および後方フィン4によって受け、膝を支点とした屈伸運動エネルギーを効率的に推進力へ変化させることができる。
5.後方フィン4が前方フィン3の左右方向へ逃げた水を捉えるとともに、揺動フィン54が固定フィン51の左右方向へ逃げた水を捉え、エネルギー効率を向上することができる。
6.水中推進補助具1を介して各脚にかかる負荷を左右均等にでき、脚が捻れるのを防止し、推進力を効果的に発生させることができる。
7.前方開口21および後方開口22によって斬新なデザインを実現しつつ、軽量化でき、女性や子供でも簡単に使用することができる。
8.シューズ部5によって、足の運動エネルギーからも推進力を発生させることができる。
9.シューズ部5に対して揺動フィン54を簡単に出し入れでき、張出位置での固定や収納位置への収納を容易化することができる。
10.後方フィン4は、膝を曲げた状態から伸ばす場合、および膝を伸ばした状態から曲げる場合のいずれにおいても推進力を発生させることができる。
11.ユーザの身体をフィンの一部として有効に機能させることができる。
【0055】
なお、上述した本実施形態では、ベース部2とシューズ部5とが分離された分離型の水中推進補助具1として構成されているが、この構成に限定されるものではない。すなわち、
図11に示すように、ベース部2とシューズ部5とが一体的に形成された一体型の水中推進補助具6として構成してもよい。この一体型の水中推進補助具6によれば、足首付近に継ぎ目がないため、余計な水の抵抗を受けることがなく、膝の屈伸運動にかかる負荷が低減する。
【0056】
また、上述した本実施形態では、水中推進補助具1を素肌に直接装着しているが、この構成に限定されるものではない。すなわち、
図12に示すように、ウェットスーツやドライスーツ等のように、水中で着用する水中用衣服7の上から装着してもよい。この場合、水中推進補助具1,6の内周面と水中用衣服7の外表面にはそれぞれ面ファスナー等を設け、迅速かつ簡単に一体化および取り外しができるように構成しておくことが好ましい。しかしながら、この構成に限定されるものではなく、水中推進補助具1と水中用衣服7とを一体的に形成し、前方フィン3、後方フィン4、固定フィン51および揺動フィン54を直接、水中用衣服7に取り付けてもよい。
【0057】
なお、本発明に係る水中推進補助具1およびこれを備えた水中用衣服7は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0058】
例えば、上述した本実施形態では、水中推進補助具1としてのベース部2およびシューズ部5を同時に使用しているが、いずれか一方のみを単独で使用してもよい。また、上述した本実施形態では、脚部用の水中推進補助具1を想定しているが、この構成に限定されるものではなく、肘から手首にかけて装着可能な腕用ベース部と、この腕用ベース部の左右両側面から前腕の曲面に連続しつつ左右外側に張り出された一対の腕用フィンとを有する、腕用の水中推進補助具として構成してもよい。
【0059】
さらに、上述した本実施形態では、前方フィン3、後方フィン4、固定フィン51および揺動フィン54はいずれも表面が滑らかな曲面状に形成されているが、この構成に限定されるものではない。すなわち、水の表面張力によってウォーターカーテンが形成される範囲内であれば、各フィン3,4,51,54に小さな貫通孔や細いスリット等を形成してもよい。これにより、推進力を低下させることなく水中推進補助具1が軽量化され、剛性の高い素材であっても可撓性が向上するため、装着時の動きやすさが向上する。
【0060】
また、上述した本実施形態では、前方フィン3および後方フィン4の両方を備えているが、前方フィン3あるいは後方フィン4のいずれか一方のみを備えるようにしてもよいし、一つのフィンのみを備える場合には、脛の真横に近い位置に配置してもよい。
【0061】
また、上述した本実施形態では、揺動フィン54を揺動可能に構成しているが、この構成に限定されるものではない。固定フィン51と同様、揺動フィン54をシューズ部5と一体的に形成してもよい。これにより、靴底部分の構造が簡素化されて製造コストが低減する。
【課題】 装着したままでも陸上を歩いたりボート等に乗り降りでき、ファッション性および安全性が高く、筋力の弱いユーザや使用経験のないユーザであっても簡単に水中での推進力を得ることができる水中推進補助具およびこれを備えた水中用衣服を提供する。
【解決手段】 水中推進補助具1は、脛の曲面形状に合わせて形成されており膝から足首にかけて装着されるベース部2と、前記ベース部2の左右両側面から向こう脛の曲面に連続しつつ左右外側に張り出された一対の前方フィン3,3とを有している。