特許第5710067号(P5710067)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5710067非伝導性物質のパターニング処理方式を用いた電着ダイヤモンドワイヤーソー及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5710067
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】非伝導性物質のパターニング処理方式を用いた電着ダイヤモンドワイヤーソー及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B24D 11/00 20060101AFI20150409BHJP
   B24D 3/00 20060101ALI20150409BHJP
【FI】
   B24D11/00 G
   B24D3/00 340
   B24D3/00 320B
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-503587(P2014-503587)
(86)(22)【出願日】2012年3月19日
(65)【公表番号】特表2014-509957(P2014-509957A)
(43)【公表日】2014年4月24日
(86)【国際出願番号】KR2012001943
(87)【国際公開番号】WO2012138063
(87)【国際公開日】20121011
【審査請求日】2013年10月4日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0031177
(32)【優先日】2011年4月5日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】512039754
【氏名又は名称】イファ・ダイヤモンド・インダストリー・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100113664
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 正往
(74)【代理人】
【識別番号】110001324
【氏名又は名称】特許業務法人SANSUI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ ソカン
(72)【発明者】
【氏名】ソン ラチュ
(72)【発明者】
【氏名】パク サンウック
【審査官】 石田 智樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−254008(JP,A)
【文献】 特開2007−038317(JP,A)
【文献】 特開2007−324255(JP,A)
【文献】 特開2004−358640(JP,A)
【文献】 特開2006−231479(JP,A)
【文献】 特開平03−202281(JP,A)
【文献】 特開2007−203393(JP,A)
【文献】 特開平07−096454(JP,A)
【文献】 特開2012−157908(JP,A)
【文献】 特開平06−063828(JP,A)
【文献】 韓国特許第10−2005−0014522(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D 11/00
B24D 3/00 − 3/34
B24B 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ワイヤーの外周面に沿って予め定められたパターンでマスキングテープを付着してパターニング処理する工程;
(b)前記のパターニング処理された領域を除いた前記ワイヤーの外周面の残部領域にダイヤモンド砥粒を電着する工程;及び
(c)付着した前記マスキングテープを前記ワイヤーから除去する工程;を含み、
前記(a)工程は、前記マスキングテープに予め複数の穿孔ホールを前記ワイヤーの長さ方向に沿ってスパイラル状に配列して形成し、前記穿孔ホールが形成された前記マスキングテープを前記ワイヤーの外周面に付着する方式で行われることを特徴とする電着ダイヤモンドワイヤーソーの製造方法。
【請求項2】
(a)ワイヤーの外周面に沿って予め定められたパターンでマスキングテープを付着してパターニング処理する工程;
(b)前記のパターニング処理された領域を除いた前記ワイヤーの外周面の残部領域にダイヤモンド砥粒を電着する工程;及び
(c)付着した前記マスキングテープを前記ワイヤーから除去する工程;を含み、
前記(a)工程は、前記ワイヤーの長さ方向に沿ってスパイラル状の軌跡を有するように前記ワイヤーの外周面に対して穿孔ホールが形成された前記マスキングテープを付着する方式で行われることを特徴とする電着ダイヤモンドワイヤーソーの製造方法。
【請求項3】
(a)ワイヤーの外周面に沿って予め定められたパターンでマスキングテープを付着してパターニング処理する工程;
(b)前記のパターニング処理された領域を除いた前記ワイヤーの外周面の残部領域にダイヤモンド砥粒を電着する工程;及び
(c)付着した前記マスキングテープを前記ワイヤーから除去する工程;を含み、
前記(a)工程は、予め複数の穿孔ホールが形成された前記マスキングテープを前記ワイヤーの外周面に付着する方式で行われることを特徴とする電着ダイヤモンドワイヤーソーの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法により得られ、ワイヤーの外周面に沿って予め定められたパターンで該ワイヤーの長さ方向にダイヤモンド砥粒が電着されていることを特徴とする電着ダイヤモンドワイヤーソー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非伝導性物質のパターニング処理を用いた電着ダイヤモンドワイヤーソー及びその製造方法に関し、特に、シリコンインゴット、サファイアウエハーなどの半導体切削加工に用いられるダイヤモンドワイヤーソーの製造工程を容易にすることは勿論、製造費減縮及び製品品質改善をもたらす技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤーソーイング(wire sawing)は、ワイヤー又はこのようなワイヤーに複数のダイヤモンド砥粒を突出形成して設けられるワイヤーソーを用いて、シリコンインゴット、サファイアウエハーなどの切削加工は勿論、研削加工も行える技術である。
【0003】
このとき、ワイヤーには高張力特性の金属材質を用いるが、鋼線、ニッケル線、ニクロム線などがその例に該当し、その他にも多様な素材を用いる。
【0004】
このようなワイヤーの長さ方向に沿ってその外周面にダイヤモンド砥粒を電着形成することによって、電着ダイヤモンドワイヤーソーが製造される。
【0005】
しかし、従来の場合、このようなワイヤーソーの製造において、ワイヤー上にダイヤモンド砥粒を特定形状の配列で電着することに困難を伴うため、多量の製品を連続的且つ効率的に製造するには無理があった。
【0006】
それゆえ、電着ダイヤモンドワイヤーソーの製造単価が高く、製造工数も増加せざるをえない問題があった。
【0007】
このために、関連製造業界においては、より低い費用で、より工程効率を高めることができる電着ダイヤモンドワイヤーソーの製造方法に対する開発に拍車をかけたが、未だに合理的な製造方法に対する方案が提示されていない実情にある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ワイヤーの外周面に沿って非伝導性物質を事前にパターニング処理した後、ダイヤモンド砥粒を電着することによって、非伝導性物質のない領域のみにダイヤモンド砥粒を電着できるようにして工程効率を改善すると同時に、製造単価の低減及び製品品質の向上を図ることができる電着ダイヤモンドワイヤーソー及びその製造方法を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、ワイヤーの注入と同時に、複数の方向にマスキング液をインクジェット方式で噴射してパターニング処理した後、ダイヤモンド砥粒を容易に電着する方式の電着ダイヤモンドワイヤーソー及びその製造方法を提供することにある。
【0010】
本発明の更に他の目的は、ワイヤーの注入時にワイヤーを回転させると同時に、一方向のみにマスキング液をインクジェット方式で噴射してパターニング処理した後、ダイヤモンド砥粒を容易に電着する方式の電着ダイヤモンドワイヤーソー及びその製造方法を提供することにある。
【0011】
本発明の更に他の目的は、ワイヤーの全面を非伝導性物質でコーティング処理した後、露光及びエッチング過程を経てパターニング処理することで、その後のダイヤモンド砥粒を容易に電着する方式の電着ダイヤモンドワイヤーソー及びその製造方法を提供することにある。
【0012】
本発明の更に他の目的は、ワイヤーの表面に対してダイヤモンド砥粒が電着される特定領域のみにおいて、穿孔ホールが形成された非伝導性テープをワイヤーに付着してパターニング処理することで、ダイヤモンド砥粒を容易に電着できる方式の電着ダイヤモンドワイヤーソー及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するための本発明の思想によると、(a)ワイヤーの注入時に前記ワイヤーの外周面に対して複数の方向にマスキング液を印刷してパターニング処理する工程;及び(b)前記のパターニング処理された領域を除いた前記ワイヤーの外周面の残部領域にダイヤモンド砥粒を電着形成する工程;を含む電着ダイヤモンドワイヤーソーの製造方法を提供することができる。
【0014】
前記(a)工程において、前記マスキング液の印刷は、前記ワイヤーの外周面に対向して複数の印刷ノズルが互いに同一の挟み角を有するように配置され、注入される前記ワイヤーの外周面上に予め定められたパターン経路に沿って前記マスキング液を印刷することが望ましい。
【0015】
このとき、前記マスキング液の印刷は、インクジェット方式で具現することができる。
【0016】
前記(b)工程において、前記ダイヤモンド砥粒が電着される前記ワイヤーの外周面の残部領域は、前記ワイヤーの長さ方向に沿ってスパイラル状を有するように形成されることが望ましい。
【0017】
また、本発明の他の一つの思想によると、(a)ワイヤーの注入時、前記ワイヤーが回転すると同時に、前記ワイヤーの外周面に対して一方向にマスキング液を印刷してパターニング処理する工程;及び(b)前記のパターニング処理された領域を除いた前記ワイヤーの外周面の残部領域にダイヤモンド砥粒を電着する工程;を含む電着ダイヤモンドワイヤーソーの製造方法を提供することができる。
【0018】
前記(a)工程において、前記マスキング液の印刷は、前記ワイヤーの外周面に対向して単一の印刷ノズルが離隔して配置され、注入と同時に回転する前記ワイヤーの外周面上に予め定められたパターン経路に沿って前記マスキング液が印刷されるように、前記印刷ノズルの印刷周期が調節される方式によって行われることが望ましい。
【0019】
また、本発明の更に他の思想によると、(a)ワイヤーの外周面をマスキング液で全面コーティングする工程;(b)前記マスキング液が全面コーティングされた前記ワイヤーを予め定められたパターンで露光し、エッチングを実施してパターニング処理する工程;及び(c)前記のパターニング処理された領域を除いた前記ワイヤーの外周面の残部領域にダイヤモンド砥粒を電着形成する工程;を含む電着ダイヤモンドワイヤーソーの製造方法を提供することができる。
【0020】
前記(b)工程において、前記露光は、UV光を照射する方式で行われることが望ましい。
【0021】
また、本発明の更に他の思想によると、(a)ワイヤーの外周面に沿って予め定められたパターンでマスキングテープを付着してパターニング処理する工程;(b)前記のパターニング処理された領域を除いた前記ワイヤーの外周面の残部領域にダイヤモンド砥粒を電着形成する工程;及び(c)付着した前記マスキングテープを前記ワイヤーから除去する工程;を含む電着ダイヤモンドワイヤーソーの製造方法を提供することができる。
【0022】
前記(a)工程において、前記マスキングテープを付着して前記ワイヤーの外周面をパターニング処理する方法は、前記マスキングテープに予め複数の穿孔ホールを前記ワイヤーの長さ方向に沿ってスパイラル状に配列して形成し、前記穿孔ホールが形成された前記マスキングテープを前記ワイヤーの外周面に付着する方式を用いることができる。
【0023】
また、前記(a)工程において、前記マスキングテープを付着して前記ワイヤーの外周面をパターニング処理する方法は、前記ワイヤーの長さ方向に沿ってスパイラル状の軌跡を有するように前記ワイヤーの外周面に対して前記マスキングテープを付着する方式を用いることもできる。
【0024】
一方、本発明の更に他の思想によると、ワイヤーの外周面のうち一部の領域に非伝導性物質パターンが形成されており、前記ワイヤーの外周面のうち残りの領域にダイヤモンド砥粒が電着されていることを特徴とする電着ダイヤモンドワイヤーソーを提供することができる。
【0025】
このとき、非伝導性物質は、前記ワイヤーの長さ方向に沿ってスパイラル状の軌跡を有するように形成することができる。
【0026】
つまり、前記ダイヤモンド砥粒は、前記ワイヤーの長さ方向に沿ってスパイラル状の軌跡を有するように形成することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る電着ダイヤモンドワイヤーソー及びその製造方法の効果としては、ワイヤーにダイヤモンド砥粒を電着する工程の前に、予めダイヤモンド砥粒の電着が排除されるべきワイヤーの外周面に沿って非伝導性物質を事前にパターニング処理することによって、製造工程の効率性改善を通して、製造単価の低減、製品品質の向上を図ることができ、その結果、製品競争力が向上し得るという有利な効果がある。
【0028】
特に、本発明は、前記非伝導性物質パターニング工程に関する望ましい実施例として、四つの望ましい実施形態を提示する。
【0029】
第一の実施例は、ワイヤーの注入と同時に、ワイヤーの外周面に対して複数の方向にマスキング液をインクジェット方式で噴射してパターニング処理した後、ダイヤモンド砥粒を電着する形態である。
【0030】
第二の実施例は、ワイヤーの注入時にワイヤーを回転させると同時に、一方向のみにマスキング液をインクジェット方式で噴射してパターニング処理した後、ダイヤモンド砥粒を電着する形態である。
【0031】
第三の実施例は、ワイヤーの全面を非伝導性物質でコーティング処理し、露光及びエッチング過程を経てパターニング処理した後、ダイヤモンド砥粒を電着する形態である。
【0032】
第四の実施例は、ワイヤーの表面に対してダイヤモンド砥粒が電着される特定領域のみにおいて、穿孔ホールが形成された非伝導性テープをワイヤーに付着してパターニング処理した後、ダイヤモンド砥粒を電着する形態である。
【0033】
これらの方法によって、電着ダイヤモンドワイヤーソーの製造過程における工程自動化を行うことができ、工数短縮及び費用低減は勿論、より品質が向上した製品を大量生産するのに有利な技術的効果を伴う。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の第1の実施例に係る非伝導性物質のパターニング処理方式を用いた電着ダイヤモンドワイヤーソーの製造方法を示すフローチャートである。
図2】本発明の第1の実施例に係る非伝導性物質のパターニング処理方式を用いた電着ダイヤモンドワイヤーソーの製造方法を説明するために示した工程図である。
図3】本発明の第2の実施例に係る非伝導性物質のパターニング処理方式を用いた電着ダイヤモンドワイヤーソーの製造方法を示すフローチャートである。
図4】本発明の第2の実施例に係る非伝導性物質のパターニング処理方式を用いた電着ダイヤモンドワイヤーソーの製造方法を説明するために示した工程図である。
図5】本発明の第3の実施例に係る非伝導性物質のパターニング処理方式を用いた電着ダイヤモンドワイヤーソーの製造方法を示すフローチャートである。
図6】本発明の第3の実施例に係る非伝導性物質のパターニング処理方式を用いた電着ダイヤモンドワイヤーソーの製造方法を説明するために示した工程図である。
図7】本発明の第4の実施例に係る非伝導性物質のパターニング処理方式を用いた電着ダイヤモンドワイヤーソーの製造方法を示すフローチャートである。
図8】本発明の第4の実施例に係る非伝導性物質のパターニング処理方式を用いた電着ダイヤモンドワイヤーソーの製造方法を説明するために示した工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の利点及び特徴、そして、それらを達成する方法は、添付の図面と共に詳細に後述している各実施例を参照すれば明確になるだろう。しかし、本発明は、以下で開示する各実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で具現可能である。ただし、本実施例は、本発明の開示を完全にし、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであって、本発明は請求項の範疇によって定義されるものに過ぎない。また、本発明を説明するにおいて、関連する公知技術などが本発明の要旨を不明瞭にし得ると判断される場合、それについての詳細な説明は省略する。
【0036】
本発明に係る電着ダイヤモンドワイヤーソーの製造方法の望ましい四つの実施例に関して説明する前に、ワイヤーソーの簡単な構造について説明する。
【0037】
ワイヤーソーイングは、ワイヤーソーを用いて、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)などの多様な金属被削材を切削及び研削することは勿論、最近は、チップパッケージ、プラスチック及び樹脂成形物などにまでその被削材の範囲を拡大している技術である。
【0038】
ワイヤーソーは、高張力のワイヤーと、その外周面に沿って電着形成される砥粒とを含む構造からなる。
【0039】
このとき、ワイヤーは、鋼線、ニッケル線、ニクロム線などの材質からなり、砥粒は、ダイヤモンド、炭化シリコン(SiC)などの硬度及び切削性に優れる材質からなる。
【0040】
特に、ダイヤモンド砥粒がワイヤー上に電着されて形成されるワイヤーソーは、電着ダイヤモンドワイヤーソーという。電着ダイヤモンドワイヤーソーは、最近、シリコンインゴット、サファイアウエハーなどの半導体切削加工においてその活用度が高い。
【0041】
以下では、本発明に係る電着ダイヤモンドワイヤーソーの製造方法に対する望ましい四つの実施例を説明する。
【0042】
[第1の実施例]
【0043】
図1は、本発明の第1の実施例に係る非伝導性物質のパターニング処理方式を用いた電着ダイヤモンドワイヤーソーの製造方法を示すフローチャートである。そして、図2は、本発明の第1の実施例に係る非伝導性物質のパターニング処理方式を用いた電着ダイヤモンドワイヤーソーの製造方法を説明するために示した工程図である。
【0044】
図2は、図1を通して説明する本発明の第1の実施例に係る電着ダイヤモンドワイヤーソーの製造方法をより具体的に確認できる工程過程を図式化したものであって、図1を通して各工程を説明するときに図2を参照することにする。
【0045】
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施例の詳細な工程を説明する。
【0046】
パターニング処理工程(ST110)
【0047】
本工程(ST110)は、ワイヤーの表面、すなわち、外周面に沿ってダイヤモンド砥粒を電着する前に、電着工程の効率性のためにワイヤーの外周面に予め定められたパターン状にマスキング液を印刷する工程である。
【0048】
図2の(a)を参照すると、本工程をより具体的に確認することができる。
【0049】
図示したように、一方向に注入されるワイヤー110の外周面に対して複数の方向(図面では3つの方向)にマスキング液が噴射されて印刷処理される。
【0050】
より効果的なマスキング液の印刷処理のために、複数の印刷ノズル(図示せず)を用いることができる。
【0051】
このときの印刷ノズルは、インクジェット方式でマスキング液をワイヤー110の外周面に印刷処理する構成であって、通用するインクジェットプリンティングノズルなら如何なる形態のものでも利用可能である。
【0052】
ただし、印刷ノズルは、ワイヤー110の外周面に対向して互いに同一の挟み角で複数形成されることが望ましいが、図示したように、その挟み角が120゜で構成された3つからなり、このような個数は本発明の範疇を制限しない。
【0053】
直進して注入されるワイヤー110の外周面に沿って、前記3つの印刷ノズルからマスキング液が順次噴射されてから印刷されることによって、ワイヤーの外周面をパターニング処理することができる。
【0054】
このとき、パターニング経路は、製造工程の前に使用者によって設定された経路に従うことができ、製造されるべき目標形状の電着ダイヤモンドワイヤーソーの形状に応じてそのパターン経路も少しずつ異なる形に設定されても構わない。
【0055】
このように、本工程(ST110)を終了したワイヤーの外周面上には、後述する工程でダイヤモンド砥粒が電着形成される領域を除いた全範囲に対してマスキング液がパターニング処理される。
【0056】
ダイヤモンド砥粒電着工程(ST120)
【0057】
本工程(ST120)は、以前の工程でパターニング処理された領域以外のワイヤーの外周面に沿ってダイヤモンド砥粒を電着する工程である。
【0058】
ダイヤモンド砥粒の電着は、ワイヤーにニッケルの電気めっきを行うとき、ニッケルめっき液に含まれたダイヤモンド砥粒が共にワイヤーに付着する方式で実施することができ、その他にも公知の多様な方式で実施することができる。
【0059】
図2の(b)を参照すると、本工程をより具体的に確認することができる。
【0060】
図示したように、ワイヤー110の外周面上でダイヤモンド砥粒120が電着形成される領域を除いては、マスキング液を用いたパターニング処理が行われることを確認することができる。
【0061】
ここで、ダイヤモンド砥粒120が電着形成されるワイヤー110の外周面の残部領域、すなわち、以前の工程(ST110)でパターニングが処理されていない領域は、ワイヤー110の長さ方向に沿ってスパイラル状の連続的な軌跡を有することを確認することができる。
【0062】
このような領域上にダイヤモンド砥粒120が均一に電着形成されることによって、全長さ範囲で均一な切削又は研磨特性を有する電着ダイヤモンドワイヤーソーを製造することができる。
【0063】
本発明の第1の実施例を通して製造される電着ダイヤモンドワイヤーソーにおいては、図2の(c)に示したように、均一且つ精密な螺旋軌跡に沿ってダイヤモンド砥粒をワイヤー上に電着することができる。
【0064】
併せて、全工程過程を体系的に管理することができ、均一で高品質な製品を提供することができる。
【0065】
図1及び図2を参照して説明したように、本発明の第1の実施例は、たった2工程を含む構成のため、電着ダイヤモンドワイヤーソーの製造において、製造工程の効率的な管理が容易であり、費用低減及び工数短縮の効果をもたらす。
【0066】
[第2の実施例]
【0067】
図3は、本発明の第2の実施例に係る非伝導性物質のパターニング処理方式を用いた電着ダイヤモンドワイヤーソーの製造方法を示すフローチャートである。そして、図4は、本発明の第2の実施例に係る非伝導性物質のパターニング処理方式を用いた電着ダイヤモンドワイヤーソーの製造方法を説明するために示した工程図である。
【0068】
ここで、図4は、図3を通して説明する本発明の第2の実施例に係る電着ダイヤモンドワイヤーソーの製造方法をより具体的に確認できる工程過程を図式化したものであって、図3を通して各工程を説明するときに図4を参照することにする。
【0069】
まず、図3を参照して、本発明の第2の実施例の詳細な工程を説明する。
【0070】
パターニング処理工程(ST210)
【0071】
本工程(ST210)は、ワイヤーの表面、すなわち、外周面に沿ってダイヤモンド砥粒を電着する前に、電着工程の効率性のためにワイヤーの外周面に予め定められたパターン状にマスキング液を印刷する工程である。
【0072】
ただし、図1において説明したパターニング工程(ST110)と比較すると、その相違点は明らかである。すなわち、上述した第1の実施例の場合はワイヤー注入時にワイヤーが直進するが、これと異なり、ここで説明する第2の実施例の場合はワイヤー注入時にワイヤーが回転しながら直進する。
【0073】
併せて、回転して注入されるワイヤーの外周面に対して一方向にマスキング液が印刷処理されるという点において、本発明の第2の実施例は上述した第1の実施例と異なっている。
【0074】
図4の(a)を参照すると、本工程をより具体的に確認することができる。
【0075】
図示したように、一方向に注入されるワイヤー110は回転する。
【0076】
このとき、回転するワイヤー110の外周面に対して一方向にマスキング液が噴射されて印刷処理される。
【0077】
このような工程においても、より効果的なマスキング液の印刷処理のために印刷ノズルを用いることができ、上述した第1の実施例と同様にインクジェット方式を用いることができる。
【0078】
回転して注入されるワイヤー110の外周面に対して離隔して一側のみに配置された印刷ノズルからマスキング液が噴射されて印刷されるが、予め定められたパターン経路に沿って印刷するために、前記印刷ノズルの印刷周期が調節されることが望ましい。
【0079】
すなわち、ワイヤー110の注入速度及び回転数と連動し、前記印刷ノズルから噴射されて印刷されるマスキング液の噴射周期が調節されることが望ましい。
【0080】
こうして、使用者によって設定されたパターン経路に沿ってマスキング液をワイヤーの外周面上に印刷処理することができる。
【0081】
ここで、使用者によって設定されたパターン経路とは、製造されるべき目標形状の電着ダイヤモンドワイヤーソーの形状に応じて少しずつ異なる形に設定することができる。
【0082】
このように、本段階(ST210)を終了したワイヤーの外周面上には、後述する段階でダイヤモンド砥粒が電着される領域を除いた全範囲に対してマスキング液がパターニング処理される。
【0083】
ダイヤモンド砥粒の電着工程(ST220)
【0084】
本工程(ST220)は、以前の工程でパターニング処理された領域以外のワイヤーの外周面に沿ってダイヤモンド砥粒を電着形成する工程である。
【0085】
図4の(b)を参照すると、本工程をより具体的に確認することができる。
【0086】
図示したように、ワイヤー110の外周面上でダイヤモンド砥粒120が電着される領域を除いては、マスキング液を用いたパターニング処理が行われていることを確認することができる。
【0087】
ここで、ダイヤモンド砥粒120が電着されるワイヤー110の外周面の残部領域、すなわち、以前の工程(ST210)でパターニング処理されていない領域は、ワイヤー110の長さ方向に沿ってスパイラル状の連続的な軌跡を有することを確認することができる。
【0088】
このような領域上にダイヤモンド砥粒120が均一に電着形成されることによって、全長さ範囲で均一な切削又は研磨特性を有する電着ダイヤモンドワイヤーソーを製造することができる。
【0089】
このような本工程(ST220)の過程は、図1において説明した第1の実施例のダイヤモンド砥粒の電着段階(ST120)と同一又は類似する形に実施することができる。
【0090】
このように本発明の第2の実施例による場合にも、たった2工程を含む構成のため、製造工程の効率的な管理が容易であり、費用低減は勿論、工数短縮を通して生産性向上を図ることができる。
【0091】
[第3の実施例]
【0092】
図5は、本発明の第3の実施例に係る非伝導性物質のパターニング処理方式を用いた電着ダイヤモンドワイヤーソーの製造方法を示すフローチャートである。そして、図6は、本発明の第3の実施例に係る非伝導性物質のパターニング処理方式を用いた電着ダイヤモンドワイヤーソーの製造方法を説明するために示した工程図である。
【0093】
ここで、図6は、図5を通して説明する本発明の第3の実施例に係る電着ダイヤモンドワイヤーソーの製造方法をより具体的に確認できる工程過程を図式化したものであって、図5を通して各工程を説明するときに図6を参照することにする。
【0094】
まず、図5を参照して、本発明の第3の実施例の詳細な工程を説明する。
【0095】
マスキング液の全面コーティング工程(ST310)
【0096】
本工程(ST310)は、ワイヤーの外周面をマスキング液で全面コーティングする段階である。
【0097】
この工程においてワイヤーの外周面をマスキング液で全面コーティングする過程は、後述する工程のフォトマスキング技法によってワイヤーの外周面にマスキング液を一定パターンで処理するための先行工程としての意味を有する。
【0098】
図6の(a)は、ワイヤー110の外周面をマスキング液で全面コーティングするための工程作業図を開示する。
【0099】
図示したように、進入するワイヤー110をマスキング液で満たされた容器内に浸漬させ、ワイヤー110の外周面にマスキング液を十分にコーティングさせる。ただし、図6の(a)に示したコーティング方法は、本発明の望ましい一つの実施形態であって、本発明が必ずしもこのようなコーティング方式に制限される必要はない。
【0100】
パターニング処理工程(ST320)
【0101】
本工程(ST320)は、以前の工程でマスキング液で全面コーティングされたワイヤー110を予め定められたパターン状に露光し、エッチングを実施してパターニング処理する工程である。
【0102】
この工程で実施される、マスキング液が全面コーティングされたワイヤー110を予め設定されたパターンで露光してエッチングを実施することによって外周面に所定のパターニングをする方法は、一種のフォトマスキング方法と同一又は類似する方法であるといえる。フォトマスキング方法は、半導体又はLCD工程において広く知られている工程方法であるので、これについての説明は省略する。
【0103】
この露光工程は、UV光を照射する方式で行うことができる。予め定められたパターンで露光した後でエッチングを実施すると、ワイヤーの外周面上にパターニングが実施される。
【0104】
このような工程を経てワイヤーの外周面上にマスキング液が部分的にパターニングされた状態は、図6の(b)を通して確認することができる。
【0105】
図面では、パターニングされた形状が、上下に互いに離隔して交互に形成された複数の矩形状のパターンに見えるが、このような具体的な形状は本発明の範疇を制限しない。
【0106】
ダイヤモンド砥粒の電着工程(ST330)
【0107】
本工程(ST330)は、以前の工程でパターニング処理された領域以外のワイヤーの外周面に沿ってダイヤモンド砥粒を電着する工程である。
【0108】
図6の(c)を参照すると、以前の工程での露光及びエッチング後に残った非伝導性物質がコーティングされた部分以外の領域にダイヤモンド砥粒120が電着される状態を確認することができる。
【0109】
すなわち、ダイヤモンド砥粒120は、ワイヤー110の外周面上で、マスキング液がコーティングされた部分以外の残部領域において均一に電着形成することができる。
【0110】
ここで、ダイヤモンド砥粒120が電着されるワイヤー110の外周面の残部領域は、前記ワイヤー110の長さ方向に沿ってスパイラル状の連続的な軌跡を有することが分かる。
【0111】
このようにワイヤー110の外周面に均一にダイヤモンド砥粒120が電着されることによって、本発明に係る電着ダイヤモンドワイヤーソーは、全長さ範囲で均一な切削又は研磨品質を有することができる。
【0112】
こうして、本工程(ST330)の工程過程は、図1及び図3において説明した第1の実施例及び第2の実施例のダイヤモンド砥粒の電着工程(ST120、ST220)と同一又は類似する形に実施することができる。
【0113】
[第4の実施例]
【0114】
図7は、本発明の第4の実施例に係る非伝導性物質のパターニング処理方式を用いた電着ダイヤモンドワイヤーソーの製造方法を示すフローチャートである。そして、図8は、本発明の第4の実施例に係る非伝導性物質のパターニング処理方式を用いた電着ダイヤモンドワイヤーソーの製造方法を説明するために示した工程図である。
【0115】
ここで、図8は、図7を通して説明する本発明の第4の実施例に係る電着ダイヤモンドワイヤーソーの製造方法をより具体的に確認できる工程過程を図式化したものであって、図7を通して各工程を説明するときに図8を参照することにする。
【0116】
まず、図7を参照して、本発明の第4の実施例の詳細な工程を説明する。
【0117】
マスキングテープ付着を通したパターニング処理工程(ST410)
【0118】
本工程(ST410)は、ワイヤーの外周面にマスキングテープを付着する方式でワイヤーに非伝導性物質をパターニング処理する工程である。
【0119】
この工程での非伝導性物質のパターニング方法は、上述した本発明の第1の実施例、第2の実施例及び第3の実施例とは差別化された特徴を有する。
【0120】
すなわち、非伝導性物質として、マスキング液を用いる方式ではなく、テープ状に事前に製作されたマスキングテープをワイヤーの外周面に巻き付ける方式で非伝導性物質をパターニング処理する。
【0121】
本工程(ST410)は、2つの形態で実施することができる。
【0122】
第一の実施形態は、図8の(a)に示したように、予めダイヤモンド砥粒が電着される領域上に複数の穿孔ホールが形成されたマスキングテープを直接ワイヤー110の長さ方向に巻き付ける方式である。
【0123】
この場合、複数の穿孔ホールは、マスキングテープ上に予めスパイラル状の軌跡を有するように配置して形成することができる。このような複数の穿孔ホールを介してダイヤモンド砥粒120を電着することができる。
【0124】
第二の実施形態は、図面には示していないが、予めダイヤモンド砥粒が電着される領域を除いては、ワイヤーの外周面に沿ってマスキングテープをスパイラル状に傾斜するように巻き付ける方式である。
【0125】
この場合のマスキングテープには、予め別途の穿孔ホールを形成する必要がない。
【0126】
すなわち、マスキングテープを巻き付けるときに所定の離隔間隔を置き、その離隔間隔内でダイヤモンド砥粒が均一に電着形成されるようにする。
【0127】
ダイヤモンド砥粒の電着工程(ST420)
【0128】
本工程(ST420)は、以前の工程でマスキングテープの付着によってパターニング処理された後、穿孔ホール又は離隔間隔を介してワイヤーの外周面上にダイヤモンド砥粒が電着形成される工程である。
【0129】
図8の(b)を参照すると、マスキングテープ内で、スパイラル状の配列で備えられた複数の穿孔ホール内にダイヤモンド砥粒120が電着されている状態を確認することができる。
【0130】
マスキングテープの除去工程(ST430)
【0131】
本工程(ST430)は、上述した前工程(ST410、ST420)においてワイヤーの外周面に沿ってスパイラル状にダイヤモンド砥粒が電着形成された後、マスキングテープを除去する仕上げ工程である。
【0132】
図8の(c)を参照すると、ワイヤー110の外周面で長さ方向に沿ってダイヤモンド砥粒120がスパイラル状の連続的な軌跡を有して規則的に電着形成されていることを確認することができる。
【0133】
このような方法で製造された電着ダイヤモンドワイヤーソーは、全長さ範囲において均一かつ向上した切削又は研磨品質を有することができる。
【0134】
上述したように、本発明に係る電着ダイヤモンドワイヤーソー及びその製造方法によると、ワイヤーにダイヤモンド砥粒を電着する工程の前に、ダイヤモンド砥粒の電着が排除されるべきワイヤーの表面区間に対して非伝導性物質をパターニング処理する。
【0135】
これによって、電着ダイヤモンドワイヤーソーの製造工程を効率化することができ、製造単価を低減させることができ、均一な製造工程過程を通して製品の品質を向上させることができる。
【0136】
特に、本発明は、前記非伝導性物質パターニング工程に関する望ましい実施例として四つの望ましい実施形態を提示する。
【0137】
第一の実施例は、ワイヤーの注入と同時に、ワイヤーの外周面に対して複数の方向にマスキング液をインクジェット方式で噴射してパターニング処理した後、ダイヤモンド砥粒を電着する形態である。
【0138】
第二の実施例は、ワイヤーの注入時にワイヤーを回転させると同時に、一方向のみにマスキング液をインクジェット方式で噴射してパターニング処理した後、ダイヤモンド砥粒を電着する形態である。
【0139】
第三の実施例は、ワイヤーの全面を非伝導性物質でコーティング処理し、露光及びエッチング過程を経てパターニング処理した後、ダイヤモンド砥粒を電着する形態である。
【0140】
第四の実施例は、ワイヤーの表面に対してダイヤモンド砥粒を電着させる特定領域のみにおいて、穿孔ホールが形成された非伝導性テープをワイヤーに付着してパターニング処理した後、ダイヤモンド砥粒を電着する形態である。
【0141】
これらの実施例は、電着ダイヤモンドワイヤーソーの製造工程を自動化することができ、工数短縮を通してより向上した製品を大量生産するのに適しているという長所がある。
【0142】
以上では、本発明の耐久寿命増加及び切削品質改善をもたらし得る電気めっき処理された固定砥粒型ワイヤーソーに対する具体的な実施例に関して説明したが、本発明の範囲から逸脱しない限度内では多様な実施形態が可能であることは当然である。
【0143】
すなわち、上述した実施例は、全ての面で例示的なものであって、限定的なものではないと理解すべきであり、本発明の範囲は、上述した詳細な説明よりも後述する特許請求の範囲によって示され、その特許請求の範囲の意味及び範囲、そして、その等価概念から導出される全ての変更又は変形された形態は本発明の範囲に含まれるものと解釈しなければならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8