(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下で、図面を参照して、実施例を組み合わせて本発明について詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明の実施例に基づくスポットカラーのキャリブレーション方法のフロチャート図を示しており、
スポットカラーの目標値を確定するステップS10と、
印刷機器から出力されるカラーブロックのスポットカラーの測定値がスポットカラーの目標値に近づくように、列挙型ループ処理で印刷機器をキャリブレーションするステップS20とを含む。
【0011】
関連する技術の中では単点に基づいてキャリブレーションを行うのに対して、本実施例では、列挙メカニズムを採用する。関連する技術は良好な校正メカニズムがないのに対して、本実施例ではループ処理方式を採用する。本実施例はループ処理列挙方式を用いることにより、印刷機器から出力されるスポットカラーが目標スポットカラーに速やかに近づき、かつ更に正確となる。
【0012】
好ましくは、ステップS10において、カラーカードにおけるスポットカラーカラーブロックを測定し、測定された色度値をスポットカラーの目標値とする。また、他の方式によりスポットカラーの目標値を取得しても良く、例えばユーザから具体的なスポットカラー色度値を直接的に提供することができることが明らかである。
【0013】
図2は本発明の最適な実施例に基づいて列挙型ループ処理で印刷機器をキャリブレーションするフロチャート図を示しており、列挙型ループ処理で印刷機器をキャリブレーションするステップにおいて
(1)スポットカラーの目標値をスポットカラーの標準値として設定し、
(2)スポットカラーの標準値を中心に複数のスポット色度値を設定し、前記スポットカラーの標準値と前記複数のスポット色度値は一組のスポットカラーの列挙値を構成し、
(3)印刷機器においてスポットカラーの列挙値で印刷を行い、出力してカラーターゲット図を取得し、
(4)カラーターゲット図における各々のカラーブロックを測定して各々のカラーブロックのスポットカラーの測定値を取得し、
(5)各々のスポットカラーの測定値とスポットカラーの目標値との色差を確定し、
(6)色差が最も小さいスポットカラーの測定値に対応するカラーブロックのスポットカラーの列挙値を確定し、
(7)設定された範囲内で前記確定されたスポットカラーの列挙値を補正して新たなスポットカラーの標準値とし、
(8)前記ステップ2〜7を繰り返して実行し、最も小さい色差にリバウンドが発生すると、ループ処理を終了すると共に、色差が最も小さいスポットカラーの測定値に対応するカラーブロックのスポットカラーの列挙値を最終的な印刷値として確定することを含む。
【0014】
当該最適な実施例におけるアルゴリズムが簡単であり、かつコンピュータプログラムにより実現され易いものである。
【0015】
好ましくは、印刷機器の色空間はLabであり、スポットカラーの標準値を中心に複数のスポット色度値の設定において、
Labステップサイズをそれぞれ下式、即ち、
で示すように確定し、ここで、m、z、kはそれぞれLabのステップサイズ数であり、
スポットカラーの標準値L
標準、a
標準、b
標準を中心とし、L
ステップi、a
ステップi、b
ステップiをそれぞれステップサイズとして、m*z*k個のスポット色度値を得る。
【0016】
当該最適な実施例におけるアルゴリズムが簡単であり、かつコンピュータプログラムにより実現され易いものである。常用される色空間はLabを除き、RGB、CMYKなどが挙げられる。本発明の技術案を実現する方法は前記Labの最適な実施例と同じため、その説明を省略する。
【0017】
好ましくは、この方法は、さらに、L
標準、a
標準、b
標準とスポットカラーの目標値L
目標、a
目標、b
目標との色差ΔL、Δa、Δbに基づいて、m、z、kの大きさを確定することを含み、ここで、m、z、kの大きさの順序はΔL、Δa、Δbの順序に対応している。
【0018】
ΔL>Δa>Δbであれば、Labステップサイズ数はそれぞれm、z、kであり、即ち、Labステップサイズの個数はそれぞれ、
【0019】
ΔLの数値が最大となると、輝度のシミュレーションが不正確であることが分かり、即ち、今回のループ処理時に輝度値Lの検索範囲を増大して適切なキャリブレーションを行い、キャリブレーションの精度を高める。1回目のループ処理時に、L、a、bのいずれかをステップサイズ数が最大となる項目としてデフォルトに指定することができる。
【0020】
好ましくは、スポットカラーの測定値とスポットカラーの目標値の色差を下式、即ち、
で示すように確定し、ここで、L
測量i、a
測量i、b
測量iはそれぞれn個のカラーブロックの測定色度値である。
【0021】
好ましくは、設定された範囲内で前記確定されたスポットカラーの列挙値L
列挙、a
列挙、b
列挙を補正して新たなスポットカラーの標準値とするステップにおいて、
ここで、L
測定、a
測定、b
測定は最も小さい色差に対応するスポットカラーの測定値であり、ratは設定された補正係数である。
【0022】
当該最適な実施例におけるアルゴリズムが簡単であり、かつコンピュータプログラムにより実現され易いものである。
【0023】
図3は、本発明の実施例に基づくスポットカラーのキャリブレーション装置の概略図を示しており、
スポットカラーの目標値を確定する目標モジュール10と、
印刷機器から出力されるカラーブロックのスポットカラーの測定値がスポットカラーの目標値に近づくように、列挙型ループ処理で印刷機器をキャリブレーションするキャリブレーションモジュール20とを備える。
【0024】
好ましくは、前記キャリブレーションモジュール20は、
スポットカラーの目標値をスポットカラーの標準値として設定する標準値モジュールと、
スポットカラーの標準値を中心として複数のスポット色度値を設定し、前記スポットカラーの標準値と前記複数のスポット色度値とで一組のスポットカラーの列挙値を構成する列挙値モジュールと、
印刷機器においてスポットカラーの列挙値で印刷を行い、出力してカラーターゲット図を取得するように構成されるカラーターゲットモジュールと、
カラーターゲット図における各々のカラーブロックを測定して各々のカラーブロックのスポットカラーの測定値を取得する測定モジュールと、
各々のスポットカラーの測定値とスポットカラーの目標値との色差を確定する色差モジュールと、
色差が最も小さいスポットカラーの測定値に対応するカラーブロックのスポットカラーの列挙値を確定する確定モジュールと、
設定された範囲内で前記確定されたスポットカラーの列挙値を補正して新たなスポットカラーの標準値とする補正モジュールと、
前記列挙値モジュール、前記カラーターゲットモジュール、前記測定モジュール、前記色差モジュール、前記確定モジュールと前記補正モジュールの動作が繰り返して実行され、最も小さい色差にリバウンドが発生すると、ループ処理を終了すると共に、色差が最も小さいスポットカラーの測定値に対応するカラーブロックのスポットカラーの列挙値が最終的な印刷値と確定されるように制御する制御モジュールとを備える。
【0025】
好ましくは、印刷機器の色空間がLabであり、前記列挙値モジュールにより、Labステップサイズをそれぞれ下式、即ち、
で示すように確定し、ここで、m、z、kはそれぞれLabのステップサイズ数であり、
スポットカラーの標準値L
標準、a
標準、b
標準を中心とし、L
ステップi、a
ステップi、b
ステップiをそれぞれステップサイズとして、m*z*k個のスポット色度値を得る。
【0026】
以下で、1台のEpsonインクジェットプリンタのスポットカラーキャリブレーションを例として本発明の技術案を説明する。
【0027】
実験条件:
用紙:Fantac190
測定装置:x-rite Eye-One iSis
出力装置:Epson Stylus Pro 7880
【0028】
ステップ1:現在の標準的スポットカラーに基づいて、その周辺のn個のスポットカラーの色度値を算出して出力する。
【0029】
目標スポットカラーのLab値をそれぞれL
目標、a
目標、b
目標として設定し、現在ループ処理している標準的Lab値をそれぞれL
標準、a
標準、b
標準とした時に、1回目のループ処理において、標準的Lab値は目標Lab値である。
【0030】
本実施例における目標スポットカラーは、PANTONEスポットカラーベースの中のPANTONE 3425 CHを選択し、その数値を下記式で示すように取る。
【0031】
(1)Labの検索範囲の確定
n個のスポットカラー色度値を算出する際に、Labの3つの項目のステップサイズ数の組み合わせがm*z*kであると仮定され、m、z、kは等しくない可能性があるので、L、a、bとm、z、kの間の対応関係を確定し、即ち、Labの検索範囲を確定する必要がある。
【0032】
本実施例では、L、a、bステップサイズ数を3*3*kの組み合わせとした場合に、即ち、3つの項目のうちに最大なステップサイズ数がk(k>3)であり、他の2つの項目のステップサイズ数が共に3である。n個のカラーブロックの目標スポットカラーの周辺での対称性を確保するために、選択される列挙点個数nと最大なステップサイズ数kは下記の通りである。即ち、
【0033】
下記表現式に基づいて、前回のループ処理における最小の色差に対応する測定値と目標値のL、a、bとの差をそれぞれ算出する。
ここで、L
測定、a
測定、b
測定は前回のループ処理で選択されたカラーブロックに対応する測定値を表す。
ΔL、Δa、Δbのうちに最大値に対応する項目のステップサイズ数はkであり、即ち、検索範囲が最大である。
【0034】
(2)n個のスポットカラーの色度値の算出
1回目のループ処理において、Lのステップサイズ数の最大値がkであり、下記表現式に基づいてn個の点のLab値を算出する。
L値の算出:
ここで、L
ステップjはLのk個のステップサイズ数である。
a値の算出:
ここで、a
ステップ0、a
ステップ1、a
ステップ2はaのステップサイズ値である。
b値の算出:
ここで、b
ステップ0、b
ステップ1、b
ステップ2はbのステップサイズ値である。
【0035】
本実施例では、前記各式中のパラメータを下記のように設定する。即ち、
【0036】
1回目のループ処理時に算出された54個のスポットカラーのLab値は表1に示す如くである。
表1 1回目のループ処理時における54個のスポット色度値
【0037】
(3)n個のスポットカラーカラーブロックの出力
図4に示すように、標準値に基づいて検索された54個のスポットカラーであり、それぞれのスポットカラーカラーブロックは1つのスポット色度値に対応する。Lab値がそれぞれ異なるため、カラーブロックの間には輝度変化が存在している。当該n個のスポットカラーを1枚のカラーターゲット図に作成すると共に、各々のスポットカラーを命名し、透明度、色域などのパラメータを設置してPDF形式で記憶し、インクジェットプルーフィング装置で出力する。
図4における各々のカラーブロックは輝度が変化している緑色ブロックである。ここでは、下記の点を説明しておきたい。即ち、印刷や出版の都合で、
図4はモノクロ画像としてレンダリングされるしかできない。本文では、できるかぎり文言で説明を行う。
【0038】
ステップ2:各々のスポットカラーのカラー差を算出すると共に順序を並べる。
【0039】
測定装置により、ステップ1において出力されたn個のスポットカラーカラーブロックの色度値を測定すると共に、下記式に基づいて各々のスポットカラーの色差を算出する。
ここで、L
測定i、a
測定i、b
測定iはn個のカラーブロックの測定色度値である。
【0040】
前記算出された色差ΔEiを大きい順に並べ、かつ各々のカラーブロックに対応する印刷値及び測定値も色差に従い順序を並べる。即ち、順序を並べた色差と印刷値、測定値は一対一に対応している。
【0042】
ステップ2で算出された1回目のループ処理における各々のカラーブロックの最小色差は2.05であり、下記表現式に基づいて現在の標準値を補正し、この補正値を2回目のループ処理における標準値とする。
ここで、L
測定、a
測定、b
測定は最小の色差に対応する測定色度値であり、ratは補正係数であり、スポットカラーの補正幅を制御する。
【0043】
本実施例における補正係数ratを経験値0.8とし、1回目のループ処理後の最小色差が対応する標準値、測定値及び補正値は表2に示す如くである。
表2 1回目のループ処理結果及び補正値
【0045】
ステップ3で算出された2回目の繰り返し印刷の標準値は下記の通りである。
1回目のループ処理における最小の色度値に対応する測定値及び目標値に基づいてLabの3つの項目の差をそれぞれ算出し、結果は
【0046】
上記式から分かるように、Δbは最大であるため、bのステップサイズ数はkである。下記式に基づいてn個の点のLabの値を算出する。
L値の算出:
ここで、L
ステップ0、L
ステップ1、L
ステップ2はLのステップサイズ値である。
a値の算出:
ここで、a
ステップ0、a
ステップ1、a
ステップ2はaのステップサイズ値である。
b値の算出:
ここで、b
ステップjはbのk個のステップサイズ値である。
【0047】
本実施例の2回目のループ処理で各ステップサイズ値を下記のように設定する。
【0048】
標準値及びステップサイズ値に基づいて生成された54個のカラーブロックは表3に示す如くである。
表3 2回目のループ処理における54個のスポット色度値
【0049】
この54個のカラーブロックを出力し、各々のカラーブロックの色差を測定すると共に順序を並べて、最小の色差の値が1.16であることが得られる。ステップ3の補正公式に基づいてスポットカラー補正を行う。補正値は表4に示す如くである。
表4 2回目のループ処理結果及び補正値
得られた3回目の繰り返し印刷の標準値は下記の通りである。
【0050】
1回目のループ処理での最小の色度値に対応する測定値及び目標値に基づいてLabの3つの項目の差をそれぞれ算出して、結果は
【0051】
上記式から分かるように、Δaは最大であるため、aのステップサイズ数はkである。下記式に基づいてn個の点のLabの値を算出する。
L値の算出:
ここで、L
ステップ0、L
ステップ1、L
ステップ2はLのステップサイズ値である。
a値の算出:
ここで、a
ステップjはaのk個のステップサイズ値であり、
b値の算出:
ここで、b
ステップ0、b
ステップ1、b
ステップ2はbのステップサイズ値である。
【0052】
本実施例では、前記各式のL、a、bのステップサイズ値は下記の通りである。
【0053】
標準値及びステップサイズ値に基づいて生成された54個のカラーブロックは表5に示す如くである。
表5 3回目のループ処理における54個のスポット色度値
【0054】
この54個のカラーブロックを出力し、各々のカラーブロックの色差を測定すると共に順序を並べる。本実施例では、今回のループ処理で最小の色差が0.54である。補正値は表6に示す如くである。
表6 3回目のループ処理結果及び補正値
【0055】
繰り返し印刷を引き続き行い、各スポット色度値は表7に示す如くである。
表7 4回目のループ処理における54個のスポット色度値
【0056】
印刷測定により得られた4回目のループ処理における最小の色差は0.71であり、リバウンドが発生するから、ループ処理を引き続き行わない。3回目のループ処理で色度値が0.54であるカラーブロックに対応するスポット色度値を、このスポットカラーのキャリブレーション結果として格納する。
【0057】
以上の記載から分かるように、本発明の実施例で提供される列挙型ループ処理でスポットカラーのキャリブレーション方法及び装置は、ターゲットスポットカラーの周辺のn個のカラーブロックを検索すると共に、キャリブレーションをループ処理する方法によりスポットカラーシミュレーションを実現する。即ち、プルーフィング装置の色域を広げないことを前提としてスポットカラーの色差を低下させてコストを節約する。また、当該方法及び装置はスポットカラーの検索範囲を増大しており、かつ測定色度値に基づいてターゲットスポットカラーの補正をループ処理しているため、スポットカラーのキャリブレーション効率及びシミュレーション精度をより一層高めている。
【0058】
当業者は知っているように、前記本発明の各モジュール又は各ステップは共通の計算装置により実現可能である。それらは単独の計算装置に集中するか、或いは複数の計算装置からなるネットワークに分散しており、好ましくは、それらは計算装置に実行可能なプログラムコードにより実現することができる。これによって、それらを記憶装置に記憶して計算装置により実行するか、或いはそれらを各集成回路モジュールとして作成するか、或いはそれらのうちの複数のモジュール又はステップを単独の集成回路モジュールとして作成することにより実現可能となる。したがって、本発明は如何なる特定のハードウェアとソフトウェアの結合に制限されるものではない。
【0059】
前述したものは、本発明の最適な実施例に過ぎず、本発明を制限するものではない。本発明の精神及び範囲から逸脱しないかぎり、当業者は本発明に対して様々な変更や変形を行うことができるのが明らかである。これらの変更や等価な置換や改良などは本発明の特許請求の範囲及び均等的な範囲に該当すれば、本発明の範囲内に含まれる。