【実施例】
【0055】
本発明は、添付の図面を参考にした以下の好適な実施例の説明からより明瞭に理解されるであろう。しかしながら、実施例および図面は単なる図示および説明のためのものであり、本発明の範囲を定めるために利用されるべきものではない。本発明の範囲は請求の範囲によってのみ定まる。添付図面において、複数の図面における同一の部品番号は、同一または相当部分を示す。
【0056】
1つの実施例または計算例に関連して説明および/または図示した特徴は、1つまたはそれ以上の他の実施例または計算例において同一または類似な形で、および/または他の実施例の特徴と組み合わせて、または、その代わりに利用することができる。
【0057】
以下、本発明の実施例1が図面にしたがって説明される。
図1に示すように、本実施例において、靴はアウトソール1、ミッドソール2および足の上面を覆うアッパー3を備える。なお、本発明の効果を発現するためには、ミッドソールが低硬度で、アウトソールが高硬度であることが好ましい。
【0058】
アウトソール1は路面等に接地し、靴と路面等との間の滑りを抑制するもので、ミッドソール2よりも耐摩耗性の高い素材で形成される。アウトソール1の素材としては、熱可塑性エラストマーやゴムなどの柔軟なエラストマーを主成分ないし主体とする、非発泡体や発泡体を採用することができる。
【0059】
アウトソール1の物性(機械的性質)は、一般に、ミッドソール2のヤング率および硬度よりも大きいヤング率および硬度に設定され、例えばアスカー硬度Haで、55°〜75°程度が採用されてもよい。
【0060】
ミッドソール2はアウトソール1の上に配置され、着地時において生じる衝撃を緩衝する。ミッドソール2としては、例えばEVAなどの熱可塑性樹脂の発泡体が採用されてもよい。
【0061】
図1〜
図3Cに示すように、前記アウトソール1は、路面に接地する接地面10を有する複数の突条1Pと、前記複数の突条1Pの間で定義される複数本の縦溝1Lを有する。本実施例のように、アウトソール1は突条1Pの間に横溝1Wを有していてもよい。
なお、作図の都合上、
図3Aにおいて突条1Pの形状は直方体に設定された。
【0062】
本実施例のように、
図2の前記複数の突条1Pおよび縦溝1Lは足の内側11の前足部1F、中足部1Mおよび後足部1Bの概ね全域にわたって設けられていてもよい。前記突条1Pおよび縦溝1Lは前足部1Fおよび後足部1Bの各々の少なくとも一部の領域において、前後方向Yまたは斜め前後方向に延び、前記アウトソール1の長軸1Aとなす角B1,B2が0°〜35°の範囲に設定されている。
【0063】
前記前足部1F、中足部1Mおよび後足部1Bとは、それぞれ、図示しない足の前足、中足および後足を覆う部位を意味する。前記前足は5本の中足骨および14個の趾骨等からなる。前記中足は舟状骨、立方骨および3個の楔状骨等からなる。前記後足は距骨および踵骨等からなる。
【0064】
前記アウトソール1の長軸1Aとは、アウトソール1や靴の先端と後端とを通る仮想のラインを意味する。前記足の内側11とは、前記長軸1Aに直交する仮想の横断ライン14がアウトソール1の内外の縁と交差する2つの点の中点Oを前後方向Yに連ねた仮想の曲線13よりも内側の領域を意味する。また、「主領域を2等分した縁側の半分と中央寄りの半分」における「2等分」とは、「前記横断ライン14がアウトソール1の内の縁と交差する点と、中点Oと、の中点を前後方向Yに連ねた仮想の曲線によって、前記内側の領域を2つに分けること」を意味する。
【0065】
図2の前記アウトソール1は、前記アウトソール1の先端から前記内側11の前足部1Fを後方に向かい前記長軸1Aの長さの10%の長さで定義される先端領域ATと、前記先端領域ATの後端から前記内側11の前足部1Fを後方に向かい前記長軸1Aの長さの30%の長さで定義される主領域AMとを有する。
【0066】
前記主領域AMにおいて、前記複数の突条1Pの接地面10の面積の総和は前記主領域AMの過半の面積である。前記主領域AMの前端部には、前記複数の突条1Pおよび前記複数の縦溝1Lが設けられている。
【0067】
前記アウトソール1は、前記主領域AMを前後方向Yに3等分した前方の第1領域AM1、前記第1領域AM1に隣接する第2領域AM2および後方の第3領域AM3を有する。
【0068】
前記第1領域AM1の複数の突条1Pおよび縦溝1Lは前方に延びるに従い前記長軸1Aに近づく傾きB1を有する。一方、前記第3領域AM3の複数の突条1Pおよび縦溝1Lは後方に延びるに従い前記長軸1Aに近づく傾きB2を有する。
【0069】
かかる傾きB1,B2の利点について説明する。
図4Aおよび
図4Bは、それぞれ、WO2010/038266A1において開示された歩行および走行中の荷重中心(体重心)の移動軌跡101を示す。なお、100はアウトソール1に形成された長い太い溝で、移動軌跡101が長軸1A(
図2)に近づくように設定されたものである。
一方、
図4Cは本発明者が計測した摩擦力Fの分布を示す。
【0070】
前記
図4Cの力Fの分布から分かるように、
図2の第3領域AM3においては、力Fが長軸1Aに対し前記傾きB2に近い方向に作用するだろう。一方、
図4Aおよび
図4Bの移動軌跡101は、爪先が離地する寸前に足の外側12に向かい、したがって、力Fは
図2の前記第1領域AM1の前記傾きB1に近い方向に作用するだろう。
【0071】
図2のアウトソール1において、前記主領域AMを2等分した縁側の半分と中央寄りの半分のうち、前記中央寄りの半分において、前記複数の突条1Pの接地面10の面積の総和は前記中央寄りの半分の過半の面積に設定されている。
【0072】
更に、前記主領域AMに接し前記主領域AMの後端から前記内側11の前足部1Fを後方に向かい前記長軸1Aの長さの5%の長さで定義される副領域ASを前記アウトソール1は有する。前記副領域ASにおいて、前記複数の突条1Pの接地面10の面積は前記副領域ASの半分の過半の面積に設定されている。
【0073】
本実施例のように、アウトソール1の外側12には、横長または斜め方向に延びる別の複数の突条1Qが設けられていてもよい。一方、
図5Aおよび
図5Bに示す実施例2のように、外側12には縦長で前後方向または斜め前後方向に延びる複数の突条1Qが設けられていてもよい。
【0074】
図2の前記アウトソール1は、路面に接地する接地面10を有する複数の別の突条1Qの間で定義される斜め溝1Gを更に備える。
前記複数の別の突条1Qおよび斜め溝1Gは足の外側12の前足部1Fの前半部分の少なくとも一部の領域において斜め前後方向に延び、かつ、前方に延びるに従いアウトソール1の外縁に向かって延びる。前記突条1Qおよび斜め溝1Gと前記アウトソール1の長軸1Aとなす角B3は20°〜45°の範囲に設定されていてもよい。前記内側の突条1Pと前記外側の突条1Qとのなす角B5は10°〜60°の範囲に設定されていてもよい。
【0075】
かかる前足部1Fの前半部分の構造は、
図4Aおよび
図4Bで示される軌跡101に沿って荷重が移動し離地する際に、アウトソール1と路面との間の摩擦力を増大させるだろう。
【0076】
一方、
図2のアウトソール1の外側12の後端部分には、別の複数の突条1Qおよび斜め溝1Gが設けられている。前記外側12の後端部分の突条1Qおよび斜め溝1Gは、それが後方に向かうに従い長軸1Aから遠ざかるような傾きを有する。かかる後端部分の構造はファーストストライク時にドライな路面に対し大きな摩擦力を発揮するだろう。
【0077】
つぎに、本発明の前足の蹴り出し時の効果を明瞭にするために、本発明者が行った解析および電子計算機を用いた摩擦係数Fcの計算(シミュレーション)について説明する。
【0078】
まず、前記計算の仮定について説明する。
図10Aのグラフに示すように、アウトソール材の摩擦係数は、平均接触圧力に対して、累乗近似が可能であることが実験より分かった。蹴り出しの際に必要となるエリアはおよそ40mm角の範囲であり、その際に負荷される垂直荷重は800N前後である。すなわち、垂直荷重は約0.5Mpa程度であると考えられる。
【0079】
すべり過程における突条の倒れは、
図10Bの曲げ変形と
図10Cのせん断変形の成分が混在している。高い摩擦係数を発揮させるためには、突条の曲げ変形を抑制し、せん断変形を促すことが有効となる。以下の(3.0)〜(3.2)式を用いることで、無次元パラメータRsにより、突条の変形におけるせん断変形成分と曲げ変形成分の比率を予測することが可能となる。
【0080】
Rs=δs/δb・・・(3.0)
δb=3Ft・H/I・Ea・・・(3.1)
δs=Ft・H/G・k・A・・・(3.2)
但し、
Ft:突条の接地面に負荷される摩擦力
I:試験片x(長さ方向)−y(横方向)断面のx軸方向に対する断面2次モーメント
Ea:アウトソール材の初期弾性率
G:せん断弾性率
なお、せん断弾性率Gはアウトソール材が等方性材料であることから、アウトソール材の弾性率Eとポアソン比0.46を基に算出した。また、本実験で使用した試験片は全て矩形断面であるためせん断補正係数kは、ティモシェンコ梁理論を基に2/3に設定した。
【0081】
実験結果の一例を
図11Aおよび
図11Bに示す。接触面積率は、実際の接触面積を突条の表面の面積で除して得られる無次元パラメータである。接触面積率が1の場合、突条面全体が床面と接触していることを意味する。同図より、前記パラメータRsと接触面積率及び摩擦係数との関係を対数近似で表すことが可能であることが分かる。このことから、前記パラメータRsを用いることで、所定形状の突条について接触面積の予測が可能であると判断できる。
【0082】
摩擦係数Fcの算出は以下の(1)〜(5)の手順で行った。
(1)40mm×40mmの領域における突条の平坦面の総面積を算出する。
(2)設定した突条の寸法を基に無次元パラメータRsを算出する。
(3)無次元パラメータRsを
図11Aに示す対数近似式に代入し得られた値と前記平坦面の総面積との積から、実際に床面に接触するであろうと想定される接触面積を算出する。
(4)垂直荷重800Nを前記手順(3)にて算出した接触面積で除することで平均接触圧力を算出する。
(5)平均接触圧力を
図10Aに示す累乗近似式に代入し、摩擦係数Fcを算出する。
【0083】
なお、前記(3.0)−(3.2)式から分かるように、前記パラメータRsを求める際にアウトソール材の初期弾性率(ヤング率)Eaはせん断弾性率Gで除すことになり、計算上は何ら影響が出ない。また、ミッドソール材の初期弾性率(ヤング率)Emも計算式には含まれていない。しかし、実際のソールの変形の挙動を考慮すると、一般にアウトソール材の初期弾性率(ヤング率)Eaは1〜5Mpa程度に設定され、ミッドソール材の初期弾性率(ヤング率)Emは0.5〜1.0Mpa程度に設定するのが好ましいだろう。
【0084】
図12Aは摩擦係数Fcの算出に用いた仮想のサンプルの形状を示す。このサンプルの形状は、
図2の実施例1および
図5Aの実施例2の突条の形状に近似しており、したがって、以下に設定された突条1Pの接地面10の幅Pwや長さPlなどのパラメータの値は、前記両実施例においても適用できるだろう。また、以下の計算は全てドライな表面における摩擦係数Fcを算出した。
【0085】
図12Bおよび
図13は縦溝の深さLdおよび突条の幅Pwを変化させ他のパラメータは以下の値に固定して、摩擦係数Fcを計算した。
Mt:ミッドソールの厚さ14(mm)
Bt:アウトソールのベース厚さ2(mm)
Lw:縦溝の幅0.5(mm)
Pl:突条の長さ19(mm)
Wd:横溝の深さ1(mm)
Ww:横溝の幅1(mm)
【0086】
図12Bは突条1Pの長手方向に沿って推進力が負荷される場合の摩擦係数Fcの値を示し、
図13は突条1Pの幅方向に沿って力が負荷される場合のそれを示す。
【0087】
図12Bの図表から、摩擦係数Fcの値は縦溝の深さLdには無関係で、突条の幅Pwの増加と共に増大することが分かる。本計算においては、突条の幅Pwが大きい程、接触面積が大きくなるためである。
【0088】
しかし、
図13の図表から、突条1Pの幅方向に沿って力が負荷される場合、前記縦溝の深さLdに対する前記突条1Pの前記接地面の幅Pwの比Pw/Ldが2倍または3倍よりも小さいと、図表中に太線のラインで仕切ったように、摩擦係数Fcの値が著しく低下している。したがって、前記比Pw/Ldは2倍以上が好ましく、3倍以上が更に好ましいだろう。
【0089】
一方、
図13の図表から、突条1Pの幅方向に沿って力が負荷される場合、前記縦溝の深さ(突条の高さ)Ldに対する前記突条1Pの前記接地面の幅Pwの比Pw/Ldが2倍〜20倍であると、より好ましくは比Pw/Ldが3倍〜20倍であると、図表中に太線のラインで仕切ったように、摩擦係数Fcが大きな値となる。
【0090】
ここで、
図2および
図5Aなどの実際の靴のアウトソール1において考察する。
アウトソール1はミッドソール2(
図1)よりも比重が大きい。したがって、走行や歩行の速度や効率を考慮すると、アウトソール1の厚さは薄いのが好ましい。一方、アウトソール1の耐久性を考慮すると、アウトソール1の厚さは厚いのが好ましい。したがって、競技用ないし一般のランニング用の場合、アウトソール1の厚さは1.0mm〜5.0mm程度が好ましいだろう。
【0091】
他方、縦溝の深さLdは、アウトソール1の摩耗や前記アウトソール1の厚さ、急な屈曲の防止を考慮すると、0.2−2.5mmが好ましく、0.4−2.0mmが更に好ましく、0.5−1.5mmが最も好ましいだろう。
【0092】
前記突条の幅Pwが大きすぎると、極めて小さい土や砂などの粒が路面上に存在する場合に、転がり接触による横滑りが生じ易いかもしれない。したがって、前記縦溝の深さLdの最も好ましい範囲との関係上、比Pw/Ldは15倍以下が更に好ましいだろう。
なお、突条の高さLdと幅Pwとの間には、座屈現象を呈しないためには、オイラーの公式から導かれる細長比Ea・(Pw/Ld)
2が4/3よりも大きな値であるのが好ましい。
【0093】
つぎに、
図12Aの縦溝の幅Lwおよび突条の長さPlの値について考察する。
図14は縦溝の幅Lwおよび突条の長さPlを変化させ、他のパラメータは以下の値に固定して前記摩擦係数Fcを計算した値を示す。なお、
図14〜
図25の計算例は突条1Pの長手方向に沿って推進力が負荷された場合について算出したものである。
Mt:ミッドソールの厚さ14(mm)
Bt:アウトソールのベース厚さ2(mm)
Ld:縦溝の深さ1(mm)
Pw:突条の幅5(mm)
Wd:横溝の深さ1(mm)
Ww:横溝の幅1(mm)
【0094】
図14の図表から、縦溝の幅Lwが大きくなると、摩擦係数Fcが小さくなり、一方、突条の長さPlが大きくなると、摩擦係数Fcが大きくなるであろうことが分かる。
図2および
図5の実際のアウトソール1の製造および
図14の摩擦係数Fcの値に照らして考察すると、縦溝の幅Lwは0.05〜1.5mmが好ましく、0.1〜1.0mmが最も好ましいだろう。また、摩擦係数Fcは、突条の長さPlが15mmを超えるとPlが無限大の場合と近い値になる。したがって、突長の長さPlは15mm以上で、かつ、ソールの全長にわたる長さ以下に設定されるのが好ましいだろう。
【0095】
つぎに、
図12Aの突条の幅Pwと突条の長さPlとの関係について考察する。
図15は突条の幅Pwおよび突条の長さPlの値を変化させ、他のパラメータは以下の値に固定し、前記摩擦係数Fcを計算した値を示す。
Mt:ミッドソールの厚さ14(mm)
Bt:アウトソールのベース厚さ2(mm)
Ld:縦溝の深さ1(mm)
Lw:縦溝の幅0.5(mm)
Wd:横溝の深さ1(mm)
Ww:横溝の幅1(mm)
【0096】
図15の図表中に太線で示したように、比Pl/Pwの値が1.8倍〜300倍である場合には、高い摩擦係数Fcが得られることが分かる。なお、突条の幅Pwが大きいほど摩擦係数Fcの値も大きくなるが、前述の横滑りを考慮すると、突条の幅Pwは3−15mmが好ましく、3.5−12mmが更に好ましく、4−10mmが最も好ましいだろう。
【0097】
つぎに、
図12Aの突条の幅Pwと縦溝の幅Lwとの関係について考察する。
図16は突条の幅Pwおよび縦溝の幅Lwの値を変化させ、他のパラメータは以下の値に固定し、前記摩擦係数Fcを計算した値を示す。
Mt:ミッドソールの厚さ14(mm)
Bt:アウトソールのベース厚さ2(mm)
Ld:縦溝の深さ1(mm)
Pl:突条の長さ27(mm)
Wd:横溝の深さ1(mm)
Ww:横溝の幅1(mm)
【0098】
図16の図表中に太線で示したように、比Pw/Lwが2倍未満であると摩擦係数Fcの値が小さく、比Pw/Lwが2倍以上又は4倍以上であると、摩擦係数Fcの値が大きい。したがって、前記比Pw/Ldは2倍以上に設定され、好ましくは、4倍以上に設定される。
なお、製造上や前記横滑りの問題を考慮すると前記比Pw/Ldは100倍以下に設定される。
【0099】
つぎに、
図12Aの突条の幅Pwに対する突条の長さPlの長さ比Pl/Pwと縦溝の幅Lwに対する突条の幅Pwの幅比Pw/Lwとの関係について考察する。
図17は長さ比Pl/Pwおよび幅比Pw/Lwの値を変化させ、他のパラメータは以下の値に固定し、前記摩擦係数Fcを計算した値を示す。
Mt:ミッドソールの厚さ14(mm)
Bt:アウトソールのベース厚さ2(mm)
Ld:縦溝の深さ1(mm)
Wd:横溝の深さ1(mm)
Ww:横溝の幅1(mm)
【0100】
図17の図表中に太線で示したように、長さ比Pl/Pwが1.8倍〜200倍で、かつ、幅比Pw/Lwが2倍〜100倍においては、高い摩擦係数Fcの値が得られることが分かる。
【0101】
なお、接地面積を40mm角として近似計算したため、Pl/Pwが1.5倍である場合と1.8倍である場合において摩擦係数Fcの値が互いに同じ値に算出されている。しかし、正確な接地面積は長さ比Pl/Pwが大きいほど大きくなり、Pl/Pwは1.8倍以上に設定される。
【0102】
また、長さ比Pl/Pwの値が5倍の場合と200倍の場合とで摩擦係数Fcの値が同一になって表れている。したがって、長さ比Pl/Pwは4倍以上が好ましく、5倍以上が更に好ましいだろう。
【0103】
一方、幅比Pw/Lwの値が2倍以上であると、摩擦係数Fcの値が大きくなり、更に、幅比Pw/Lwが4倍以上であると、摩擦係数Fcの値が著しく大きくなる。したがって、幅比Pw/Lwは2倍以上に設定され、好ましくは、4倍〜100倍に設定される。
【0104】
つぎに、
図18の図表に示すように、種々のパラメータを変化させて摩擦係数Fcを算出した。ex.502,503,508,509は
図18の太線で囲ったように、低い摩擦係数Fcとなった。これら4つのex.におけるパラメータの共通点は横溝の深さWdが他の例に比べ大きいことである。すなわち、一般に、横溝の深さWdは0〜1.5mmが好ましく、0〜1.0mmが更に好ましいであろう。
【0105】
つぎに、
図19Aおよび
図19Bの突条1Pおよび縦溝1Lの断面形状が摩擦係数Fcに与える影響について検討した。縦溝1Lの断面形状としては
図19Aの「開口部より奥の方が幅広な略台形状」の溝(アリ溝)および
図19Bの略V型の溝について検討した。
【0106】
図19Aおよび
図19Bは縦溝の深さLd(=縦溝の接地面側の幅Lw1)および縦溝の非接地面側の幅Lw2の値を変化させ、他のパラメータは以下の値に固定し、前記摩擦係数Fcを計算した値を示す。
なお、
図19Aにおける突条1Pの基本的な幅Pwは5.0mmに設定した。
【0107】
Mt:ミッドソールの厚さ14(mm)
Bt:アウトソールのベース厚さ2(mm)
Pl:突条の長さ20(mm)
Wd:横溝の深さ1(mm)
Ww:横溝の幅1(mm)
【0108】
これらの例から分かるように、縦溝1Lは
図19Aのアリ溝形状であってもよいが、
図19BのV型断面である場合には摩擦係数Fcの値が低下する。すなわち、
図19Bの太線で囲った部分においては摩擦係数Fcの値が低い。その理由は縦溝1LがV型断面であると突条1Pの接地面10の面積が減少するからである。
【0109】
つぎに、
図20Aおよび
図20Bの突条1Pの縦断面形状が摩擦係数Fcに与える影響について検討した。縦溝1Lの断面形状としては
図20Aの逆台形および
図20Bの台形について検討した。
【0110】
図20Aおよび
図20Bにおいて突条1Pの接地面の長さPl1および非接地面の長さPl2を変化させ、他のパラメータは以下の値に固定し、前記摩擦係数Fcを計算した値をこれらの図に示す。
Mt:ミッドソールの厚さ14(mm)
Bt:アウトソールのベース厚さ2(mm)
Ld:縦溝の深さ1(mm)
Lw:縦溝の幅0.5(mm)
Pw:突条の幅5(mm)
Wd:横溝の深さ1(mm)
Ww:横溝の幅1(mm)
【0111】
これらの図表に示された摩擦係数Fcの値から分かるように、前記突条1Pの縦断面の形状が摩擦係数Fcに与える影響は小さいだろう。
【0112】
つぎに、
図21〜
図23に示すように、突条1Pの表面に細く、かつ、浅い溝Gsがある場合について検討した。各溝Gsの形状および寸法は各図表に示す通りである。
図21の場合、溝Gsは突条1Pの長手方向に延び、
図22の場合、溝Gsは突条1Pの幅方向に延び、
図23の場合、溝Gsは突条1Pに対し斜め方向に延びている。
【0113】
図21の場合、溝Gsを3本に設定した。また、
図22および
図23においては溝Gsを5mmピッチに設定した。
その他の各パラメータについては下記の値に固定した。
Mt:ミッドソールの厚さ14(mm)
Bt:アウトソールのベース厚さ2(mm)
Ld:縦溝の深さ1(mm)
Lw:縦溝の幅0.5(mm)
Pw:突条の幅5(mm)
Pl:突条の長さ無限大
Wd:横溝の深さ1(mm)
Ww:横溝の幅1(mm)
【0114】
図21に示された摩擦係数Fcの値から、細い縦の溝Gsがある場合、細い溝Gsの幅Vwが0.4mmであると、摩擦係数Fcの値の低下が若干大きいことが分かる。したがて、突条1Pの表面に縦長の溝Gsを設ける場合0.4mm以下に設定するのが好ましい。換言すれば、少なくとも0.3mmよりも浅い溝は本発明の縦溝1Lに含まれないと考えることができる。
【0115】
図22に示された摩擦係数Fcの値から細く浅い横長の溝Gsがある場合、同溝Gsの深さVdが0.4mmであると、摩擦係数Fcの値の低下が大きいことが分かる。したがって突条1Pの表面に横方向に溝Gsを設ける場合0.4mm以下に設定するのが好ましい。換言すれば、少なくとも0.3mmよりも浅い横溝は本発明の横溝1Wに含まれないと考え、前記浅い横溝の存在を無視してもよいと考えることができる。
【0116】
図23に示された摩擦係数Fcの値から、浅い斜め方向に延びる溝Gsについても前記
図22の浅い横溝Gsがある場合と同様に考えることができる。
【0117】
図24は突条1Pの表面に複数の突起Ppが存在する場合について摩擦係数Fcの値を計算した結果を示す。
下記の各パラメータを固定し、突起Ppの高さと、突条1Pの面積に対する突起Ppの総面積の比を変化させて摩擦係数Fcを算出した。
Mt:ミッドソールの厚さ14(mm)
Bt:アウトソールのベース厚さ2(mm)
Ld:縦溝の深さ1(mm)
Lw:縦溝の幅0.5(mm)
Pw:突条の幅5(mm)
Pl:突条の長さ20(mm)
Wd:横溝の深さ1(mm)
Ww:横溝の幅1(mm)
【0118】
図24の太線で囲って示すように、同総面積の比が大きく、かつ、突起の高さが低い場合には、摩擦係数Fcは然程低下しないだろう。換言すれば、細く浅い溝により突条1Pの表面に模様を付した場合については、同模様による凹凸を無視できると考えてもよい。
【0119】
図25は突条1Pの表面に小さな直方体状のディンプルDp又は小突起(Dp)が設けられた場合の摩擦係数Fcの値を示す。ディンプルの場合には小突起の縦欄の値がマイナス値で表示されている。
【0120】
下記の各パラメータを固定し、小突起の高さ又はディンプルの深さと、突条1Pの面積に対する接地面積の比を変化させて、摩擦係数Fcの値を算出した。
Mt:ミッドソールの厚さ14(mm)
Bt:アウトソールのベース厚さ2(mm)
Ld:縦溝の深さ1(mm)
Lw:縦溝の幅0.5(mm)
Pw:突条の幅5(mm)
Pl:突条の長さ20(mm)
Wd:横溝の深さ1(mm)
Ww:横溝の幅1(mm)
【0121】
図25の摩擦係数Fcの値から、突条1Pの表面に小さなディンプルがあっても、突条1Pの表面の接地面積が確保されれば、摩擦係数Fcに与える影響は小さいと考えられる。一方、小突起は摩擦係数Fcの値を著しく低下させる。小突起は接地の面積を小さくするだけでなく、曲げ変形を呈するであろうから、突条1Pの表面に設けないのが好ましい。
【0122】
図26A〜
図26Fは突条1Pの他の配置や形状を示す。
図26Aのように、突条1Pは千鳥配列されていてもよい。また、
図26Bのように、突条1Pは互いに異なる幅Pwや長さPlであってもよい。
【0123】
図26Cに示すように、突条1Pの平面形状は台形や平行四辺形であってもよい。
図26Cの場合、突条1Pの幅は前端の幅Pwfと後端の幅Pwbとの平均値で求めることができる。
【0124】
図26Dのように、突条1Pは樽型や、逆に中央が括れた形状であってもよい。
【0125】
図26Eのように、突条1Pや縦溝1Lは波形であってもよい。この場合、波形の振幅V1が大きかったり、あるいは、波の波長V2が小さい場合には、縦溝1Lに横溝の成分が含まれることになり、摩擦係数Fcの低下を招くだろう。
【0126】
図26Fは突条1Pの切り欠き1C等により横溝が形成されている場合を示す。切り欠き1Cの深さが0.5mmを超え、かつ、切り欠き1Cの幅が突条1Pの幅Pwの0.5倍以上である場合には、摩擦係数Fcの低下を招くだろう。一方、切り欠き1Cの深さが0.5mm以下で、かつ、切り欠き1Cの幅が突条1Pの幅Pwの0.5倍未満である場合には、摩擦係数Fcの低下は小さく本発明に含まれると考えることができる。
【0127】
以上のとおり、図面を参照しながら好適な実施例を説明したが、当業者であれば本明細書を見て、自明な範囲で種々の変更および修正を容易に想定するであろう。
たとえば、ミッドソールは設けられなくてもよい。また、アウトソール1は、前足部および/または後足部の少なくとも一部の領域に設けられていればよく、さらに前足部および/または後足部において一部が欠けていても、つまり縦溝や横溝にミッドソール2が露出していてもよい。ここで、ミッドソール2が露出している場合には、「縦溝の深さ」とは、「アウトソール1に設けられる溝の深さ」から算出しても、「アウトソール1を貫通してミッドソール2にまで設けられる溝の深さ」から算出してもよい。
本発明の突条は足の内側の前足部または後足部のいずれか一方にあってもよい。それらの場合も前記各実施例やシミュレーションの例が適用されてもよい。
したがって、そのような変更および修正は、請求の範囲から定まる本発明の範囲内のものと解釈される。