特許第5710089号(P5710089)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5710089緑色発光酸窒化物蛍光体、及びそれを用いた発光素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5710089
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】緑色発光酸窒化物蛍光体、及びそれを用いた発光素子
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/59 20060101AFI20150409BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20150409BHJP
   H01L 33/26 20100101ALI20150409BHJP
【FI】
   C09K11/59CPQ
   C09K11/08 J
   H01L33/00 180
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2007-167007(P2007-167007)
(22)【出願日】2007年6月25日
(65)【公開番号】特開2009-1760(P2009-1760A)
(43)【公開日】2009年1月8日
【審査請求日】2010年5月17日
【審判番号】不服2013-19140(P2013-19140/J1)
【審判請求日】2013年10月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊島 広朗
(72)【発明者】
【氏名】吉松 良
【合議体】
【審判長】 國島 明弘
【審判官】 日比野 隆治
【審判官】 山田 靖
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−85895(JP,A)
【文献】 特開2006−124674(JP,A)
【文献】 特開2005−325273(JP,A)
【文献】 特表2005−530917(JP,A)
【文献】 特表2006−503431(JP,A)
【文献】 特開2007−223864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K11/00-11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式CaEuSi
(ここで、
0.01≦a≦0.20、
0.8≦x/(w+a)≦0.9、
0<z/y<1.0、
1.1≦w/x≦1.24
0.5≦x/y≦0.69
0.9≦x/z≦1.2)
で表され、緑色帯域の発光波長を有することを特徴とする、緑色発光酸窒化物蛍光体。
【請求項2】
前記緑色発光酸窒化物蛍光体は、波長300nm以上400nm以下に励起帯を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の緑色発光酸窒化物蛍光体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の緑色発光酸窒化物蛍光体と、
蛍光体の励起光源としての紫外線発光ダイオードと、
を有することを特徴とする発光素子。
【請求項4】
赤色発光蛍光体と、青色発光蛍光体と、
を有することを特徴とする請求項3記載の発光素子。
【請求項5】
前記赤色発光蛍光体は、SrS:Eu、CaS:Eu、CaAlSiN:Eu及びLaS:Euのうち少なくともいずれか一つを含有し、
前記青色発光蛍光体は、(Ba,Sr)MgAl1017:Eu,Mn、(Ba,Sr,Ca,Mg)10(POCl:Eu、Sr(POCl:Eu及びZnS:Agのうち少なくともいずれか一つを含有する、
ことを特徴とする請求項4記載の発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑色発光酸窒化物蛍光体、及びそれを用いた発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオードは、発光効率が良く、鮮やかな色で発光する。そのため各種インジケータや光源として利用されている。
しかし、発光ダイオードは、優れた単色性ピーク波長を有するので、白色系の発光をすることが困難である。
【0003】
そこで、紫外線発光ダイオードと蛍光物質とを組み合わせ、紫外線発光ダイオードからの光と、その光により励起されて色変換された蛍光物質の発色との混色により白色系の光を生み出す技術が開示されている。
例えば、紫外線発光ダイオードにより青色蛍光体を励起し、その青色励起光によりYAG系蛍光体を励起する二段階励起により白色光を得る技術がある。
【0004】
しかし、このような二段階励起の方式は高発光効率の白色光を得ることは困難である。
そこで、紫外線発光ダイオードと青色、緑色、赤色蛍光体を組み合わせた3波長型の白色発光素子が開発されている。そして、緑色発光蛍光体としては、例えば希土類元素を発光中心に用いた酸化物系蛍光体がある。
【0005】
しかし、緑色発光の酸窒化物蛍光体についてはあまり研究・開発されていない。例えば、特許文献1には緑色発光酸窒化物が開示されているが、発光効率が高いものとはいえない。
【0006】
【特許文献1】特許第2005−248184号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、発光効率の高い緑色発光酸窒化物蛍光体を提供することを目的とするものである。即ち、紫外線発光ダイオードの高い発光効率の波長領域の光を効率よく吸収して発光する緑色発光酸窒化物蛍光体を提供することを目的とするものである
らに、そのような緑色発光酸窒化物蛍光体を用いた高輝度の発光素子を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、この発明の第1の観点に係る緑色発光酸窒化物蛍光体は、
一般式CaEuSi
(ここで、
0.01≦a≦0.20、
0.8≦x/(w+a)≦0.9、
0<z/y<1.0、
1.1≦w/x≦1.24
0.5≦x/y≦0.69
0.9≦x/z≦1.2)
で表され、緑色帯域の発光波長を有することを特徴とする。
【0012】
また、前記緑色発光酸窒化物蛍光体は、波長300nm以上400nm以下に励起帯を有する、とすることも可能である。
【0022】
また、上記目的を達成するため、この発明の第の観点に係る発光素子は、
この発明の第1の観点に係る緑色発光酸窒化物蛍光体と、
蛍光体の励起光源としての紫外線発光ダイオードと、
を有する、ことを特徴とする。
【0023】
また、赤色発光蛍光体と、青色発光蛍光体と、を有するとすることも可能である。
【0024】
また、前記赤色発光蛍光体は、SrS:Eu、CaS:Eu、CaAlSiN:Eu及びLaS:Euのうち少なくともいずれか一つを含有し、
前記青色発光蛍光体は、(Ba,Sr)MgAl1017:Eu,Mn、(Ba,Sr,Ca,Mg)10(POCl:Eu、Sr(POCl:Eu及びZnS:Agのうち少なくともいずれか一つを含有する、とすることも可能である。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る緑色発光酸窒化物蛍光体は、発光効率が高い
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
発明者らは鋭意研究を重ねた結果、
一般式M1ReM2
(ここで、
M1は、第II族元素若しくはSnを含有する金属、
M2は、Snを除く第IV族元素を含有する金属、
Reは付活剤であり、
0.01≦a≦0.20、
0.8≦x/(w+a)≦1.0、
0<z/y≦1.0)
で表される緑色発光酸窒化物蛍光体が、紫外線発光ダイオードの高い発光効率の波長領域の光を効率よく吸収して発光することを見いだした。
【0027】
(実施例1)
実施例1に係る緑色発光酸窒化物蛍光体(組成式Ca8.97Eu0.03Si1010)の励起スペクトルを図1に、発光スペクトルを図2に示す。
図1に示されるように、実施例1に係る緑色発光酸窒化物蛍光体は、波長300〜400nm付近に励起帯がある。約360nmに発光ピークがあり、紫外線発光ダイオードに対して効率よく発光する。
また、図2に示されるように、発光スペクトルの発光ピークの半値幅は約58nm程度であり、ブロードな発光ピークである。
【0028】
(実施例1に係る緑色発光酸窒化物蛍光体の製造方法)
原料粉末として、窒化カルシウム(Ca)と、酸化ケイ素(SiO)と、窒化ケイ素(Si)と、ユーロピウム化合物としての塩化ユーロピウム(EuCl)と、を準備する。
窒化カルシウム(Ca)は、アルゴン雰囲気中で原料としてのカルシウムを粉砕し、粉砕したカルシウムを窒素雰囲気中で窒化することにより得る。カルシウムの窒化反応は、600〜900℃で、約5〜6時間行う。原料としてのカルシウムはカルシウム単体のものを使用するのが望ましいが、イミド化合物、アミド化合物、酸化カルシウム等のカルシウム化合物を用いることも可能である。
窒化ケイ素(Si)は、アルゴン雰囲気中で原料としてのケイ素を粉砕し、粉砕したケイ素を窒素雰囲気中で窒化することにより得る。ケイ素の窒化反応は、800〜1200℃で、約5〜6時間行う。原料としてのケイ素はケイ素単体のものを使用するのが望ましいが、イミド化合物、アミド化合物を用いることも可能である。Si(NH等を使用することができる。
ユーロピウム化合物は、塩化ユーロピウム(EuCl)やフッ化ユーロピウム(EuF)等であってもよい。また、ユーロピウム化合物はイミド化合物やアミド化合物を用いることも可能である。酸化ユーロピウム(Eu)は市販の物を用いることができるが、高純度の物が望ましい。
さらに、加熱処理の際に蛍光体粒子の結晶成長を促進するような添加物であるフラックス材として塩化アンモニウム(NHCl)を準備する。なお、フラックス材は、フッ化アルミニウム(AlF)等のハロゲン化アンモニウム、NaCO、LiCO等のアルカリ金属炭酸塩、LiCl、NaCl、KCl等のアルカリハロゲン化物、CaCl、CaF、BaFのようなアルカリ土類金属のハロゲン化物、B、HBO、NaBのようなホウ酸塩化合物、LiPO、NHPOのようなリン酸塩等が使用できる。
そして、窒化カルシウム(Ca)は1.0960g、酸化ケイ素(SiO)は0.7510g、窒化ケイ素(Si)は0.3507g、塩化ユーロピウム(EuCl)は0.0192g秤量する。塩化アンモニウム(NHCl)は0.03g秤量する。
【0029】
これら原料粉末を、瑪瑙製若しくはアルミナ製乳鉢にて、15分間粉砕混合する。このような乾式の混合では、湿式の混合と比較して有機溶媒を乾燥させる工程がない点で有利である。
【0030】
次に、得られた原料粉末を、窒化ホウ素坩堝に充填し、電気炉にセットする。なお、得られた原料粉末は、アルミナ坩堝やアルミナトレイ、カーボン坩堝やカーボントレイ、窒化ホウ素トレイ等の耐熱容器に充填することも可能である。
そして、アンモニア雰囲気下で焼成する。なお、水素−窒素を混合させた還ガス元雰囲気中で焼成することも可能であり、さらには一酸化炭素気流中で焼成することも可能である。
【0031】
焼成する場合における圧力は1.1気圧である。焼成する場合における圧力は、1.00〜1.50気圧が良い。圧力が1.00気圧より低いと反応が十分に促進されない可能性があるからであり、一方、圧力が1.50気圧よりも高いと窒素ガスを閉じこめる容器を頑丈にする必要がありそのため製造装置が高価な物になる可能性があるからである。焼成する場合の圧力は、より好ましくは1.02〜1.3気圧、さらに好ましくは1.05〜1.2気圧にすると良い。
【0032】
焼成温度は1350℃である。焼成温度は、1000℃〜1400℃が良い。焼成温度が1000℃よりも小さいと反応の進行度が遅くて反応に時間がかかるおそれがあるからであり、一方、焼成温度が1400℃よりも大きいと予期せぬ副反応が生じるおそれがあるからである。焼成する温度は、より好ましくは1100〜1350℃が良い。
【0033】
焼成時間は3時間である。焼成時間は、3〜10時間で焼成するのが好ましい。
焼成が終了すると、徐々に冷却し、そして得られた焼成物を粉砕し混合する。これにより実施例1に係る緑色発光酸窒化物蛍光体(組成式Ca8.97Eu0.03Si1010)を得ることができる。その後さらに得られた緑色発光酸窒化物蛍光体をさらに再焼成することも可能である。
【0034】
なお、得られた緑色発光酸窒化物蛍光体は、平均粒子径が20〜220μm、特に80〜160μmのものである。平均粒子径が220μmを超えると、蛍光体の均一な分散が得られなくなるおそれがあり、また、他の蛍光体と併用した場合、色むらが起こるおそれがあるからである。一方、平均粒子径が20μmより小さいと、かえって強度が低下するおそれがあるからである。
【0035】
(実施例2〜5)
実施例2に係る緑色発光酸窒化物蛍光体は、組成式Ca2.97Eu0.03Si3.63.6である。実施例3に係る緑色発光酸窒化物蛍光体は、組成式Ca2.97Eu0.03Si4.53.0である。実施例4に係る緑色発光酸窒化物蛍光体は、組成式Ca2.97Eu0.03Si5.42.4である。実施例5に係る緑色発光酸窒化物蛍光体は、組成式Ca2.97Eu0.03Si6.02.0である。
【0036】
実施例2に係る緑色発光酸窒化物蛍光体は、原料粉末として、窒化カルシウム(Ca)を1.3711g、酸化ケイ素(SiO)を1.0311g、窒化ケイ素(Si)を0.5350g、塩化ユーロピウム(EuCl)を0.0739g、塩化アンモニウム(NHCl)を0.03g秤量する。そしてこれら原料粉末を粉砕混合し、窒化ホウ素坩堝に充填してアンモニア雰囲気下で焼成し、焼成後は徐冷して得られた焼成物を粉砕混合して得た。
【0037】
実施例3に係る緑色発光酸窒化物蛍光体は、原料粉末として、窒化カルシウム(Ca)を1.3531g、酸化ケイ素(SiO)を1.2720g、窒化ケイ素(Si)を0.3300g、塩化ユーロピウム(EuCl)を0.0729g、塩化アンモニウム(NHCl)を0.03g秤量する。そしてこれら原料粉末を粉砕混合し、窒化ホウ素坩堝に充填してアンモニア雰囲気下で焼成し、焼成後は徐冷して得られた焼成物を粉砕混合して得た。
【0038】
実施例4に係る緑色発光酸窒化物蛍光体は、原料粉末として、窒化カルシウム(Ca)を1.3326g、酸化ケイ素(SiO)を1.5033g、窒化ケイ素(Si)を0.1300g、塩化ユーロピウム(EuCl)を0.0718g、塩化アンモニウム(NHCl)を0.03g秤量する。そしてこれら原料粉末を粉砕混合し、窒化ホウ素坩堝に充填してアンモニア雰囲気下で焼成し、焼成後は徐冷して得られた焼成物を粉砕混合して得た。
【0039】
実施例5に係る緑色発光酸窒化物蛍光体は、原料粉末として、窒化カルシウム(Ca)を1.3164g、酸化ケイ素(SiO)を1.6500g、塩化ユーロピウム(EuCl)を0.0709g、塩化アンモニウム(NHCl)を0.03g秤量する。そしてこれら原料粉末を粉砕混合し、窒化ホウ素坩堝に充填してアンモニア雰囲気下で焼成し、焼成後は徐冷して得られた焼成物を粉砕混合して得た。
【0040】
実施例2〜5に係る緑色発光酸窒化物蛍光体の励起スペクトルを図3に示す。また、実施例2〜5に係る緑色発光酸窒化物蛍光体の発光スペクトルを図4に示す。
図3に示されるように、実施例2〜5に係る緑色発光酸窒化物蛍光体は、波長300〜400nm付近に励起帯がある。
実施例2に係る緑色発光酸窒化物蛍光体は350nmに近い位置に発光ピークがあり、実施例3に係る緑色発光酸窒化物蛍光体は340nmに近い位置に発光ピークがあり、実施例4に係る緑色発光酸窒化物蛍光体は340nmに近い位置に発光ピークがあり、実施例5に係る緑色発光酸窒化物蛍光体は330nmに近い位置に発光ピークがあり、実施例2〜5に係る緑色発光酸窒化物蛍光体は紫外線発光ダイオードに対して効率よく発光する。
また、図4に示されるように、実施例2に係る緑色発光酸窒化物蛍光体は、発光スペクトルの発光ピークの半値幅は約97nm程度であり、実施例3に係る緑色発光酸窒化物蛍光体は、発光スペクトルの発光ピークの半値幅は約107nm程度であり、実施例4に係る緑色発光酸窒化物蛍光体は、発光スペクトルの発光ピークの半値幅は約103nm程度であり、実施例5に係る緑色発光酸窒化物蛍光体は、発光スペクトルの発光ピークの半値幅は約103nm程度であり、いずれもブロードな発光ピークである。なお、実施例2に係る緑色発光酸窒化物蛍光体は、やや青緑色に発光する一方、実施例3に係る緑色発光酸窒化物蛍光体は、やや黄緑色に発光する。
【0041】
(実施例6〜8)
実施例6に係る緑色発光酸窒化物蛍光体は、組成式Ca2.97Eu0.03Si2.73.43.4である。実施例7に係る緑色発光酸窒化物蛍光体は、組成式Ca2.97Eu0.03Si2.73.93.0である。実施例8に係る緑色発光酸窒化物蛍光体は、組成式Ca2.97Eu0.03Si2.74.82.4である。
【0042】
実施例6係る緑色発光酸窒化物蛍光体は、原料粉末として、窒化カルシウム(Ca)を1.4472g、酸化ケイ素(SiO)を1.0158g、窒化ケイ素(Si)を0.4800g、塩化ユーロピウム(EuCl)を0.0780g、塩化アンモニウム(NHCl)を0.03g秤量する。そしてこれら原料粉末を粉砕混合し、窒化ホウ素坩堝に充填してアンモニア雰囲気下で焼成し、焼成後は徐冷して得られた焼成物を粉砕混合して得た。
【0043】
実施例7に係る緑色発光酸窒化物蛍光体は、原料粉末として、窒化カルシウム(Ca)を1.4351g、酸化ケイ素(SiO)を1.1692g、窒化ケイ素(Si)を0.3500g、塩化ユーロピウム(EuCl)を0.0773g、塩化アンモニウム(NHCl)を0.03g秤量する。そしてこれら原料粉末を粉砕混合し、窒化ホウ素坩堝に充填してアンモニア雰囲気下で焼成し、焼成後は徐冷して得られた焼成物を粉砕混合して得た。
【0044】
実施例8に係る緑色発光酸窒化物蛍光体は、原料粉末として、窒化カルシウム(Ca)を1.4146g、酸化ケイ素(SiO)を1.4185g、窒化ケイ素(Si)を0.1380g、塩化ユーロピウム(EuCl)を0.0762g、塩化アンモニウム(NHCl)を0.03g秤量する。そしてこれら原料粉末を粉砕混合し、窒化ホウ素坩堝に充填してアンモニア雰囲気下で焼成し、焼成後は徐冷して得られた焼成物を粉砕混合して得た。
【0045】
実施例6〜8に係る緑色発光酸窒化物蛍光体の励起スペクトルを図5に示す。また、実施例6〜8に係る緑色発光酸窒化物蛍光体の発光スペクトルを図6に示す。
図5に示されるように、実施例6〜8に係る緑色発光酸窒化物蛍光体は、波長300〜400nm付近に励起帯がある。
実施例6に係る緑色発光酸窒化物蛍光体は360nmに近い位置に発光ピークがあり、実施例7に係る緑色発光酸窒化物蛍光体は340nmに近い位置に発光ピークがあり、実施例8に係る緑色発光酸窒化物蛍光体は330nmに近い位置に発光ピークがあり、実施例6〜8に係る緑色発光酸窒化物蛍光体は紫外線発光ダイオードに対して効率よく発光する。
また、図6に示されるように、実施例6に係る緑色発光酸窒化物蛍光体は、発光スペクトルの発光ピークの半値幅は約83nm程度であり、実施例7に係る緑色発光酸窒化物蛍光体は、発光スペクトルの発光ピークの半値幅は約97nm程度であり、実施例8に係る緑色発光酸窒化物蛍光体は、発光スペクトルの発光ピークの半値幅は約100nm程度であり、いずれもブロードな発光ピークである。なお、実施例6に係る緑色発光酸窒化物蛍光体は、やや青緑色に発光する一方、実施例8に係る緑色発光酸窒化物蛍光体は、やや黄緑色に発光する。
【0046】
(実施例9〜11)
実施例9に係る緑色発光酸窒化物蛍光体は、組成式Ca2.97Eu0.03Si2.43.13.1である。実施例10に係る緑色発光酸窒化物蛍光体は、組成式Ca2.97Eu0.03Si2.44.22.4である。実施例11に係る緑色発光酸窒化物蛍光体は、組成式Ca2.97Eu0.03Si2.44.82.0である。
【0047】
実施例9に係る緑色発光酸窒化物蛍光体は、原料粉末として、窒化カルシウム(Ca)を1.5376g、酸化ケイ素(SiO)を1.0022g、窒化ケイ素(Si)を0.4200g、塩化ユーロピウム(EuCl)を0.0829g、塩化アンモニウム(NHCl)を0.03g秤量する。そしてこれら原料粉末を粉砕混合し、窒化ホウ素坩堝に充填してアンモニア雰囲気下で焼成し、焼成後は徐冷して得られた焼成物を粉砕混合して得た。
【0048】
実施例10係る緑色発光酸窒化物蛍光体は、原料粉末として、窒化カルシウム(Ca)を1.4864g、酸化ケイ素(SiO)を1.3042g、窒化ケイ素(Si)を0.1450g、塩化ユーロピウム(EuCl)を0.0801g、塩化アンモニウム(NHCl)を0.03g秤量する。そしてこれら原料粉末を粉砕混合し、窒化ホウ素坩堝に充填してアンモニア雰囲気下で焼成し、焼成後は徐冷して得られた焼成物を粉砕混合して得た。
【0049】
実施例11に係る緑色発光酸窒化物蛍光体は、原料粉末として、窒化カルシウム(Ca)を1.4759g、酸化ケイ素(SiO)を1.4800g、塩化ユーロピウム(EuCl)を0.0795g、塩化アンモニウム(NHCl)を0.03g秤量する。そしてこれら原料粉末を粉砕混合し、窒化ホウ素坩堝に充填してアンモニア雰囲気下で焼成し、焼成後は徐冷して得られた焼成物を粉砕混合して得た。
【0050】
実施例9〜11に係る緑色発光酸窒化物蛍光体の励起スペクトルを図7に示す。また、実施例9〜11に係る緑色発光酸窒化物蛍光体の発光スペクトルを図8に示す。
図7に示されるように、実施例9〜11に係る緑色発光酸窒化物蛍光体は、波長300〜400nm付近に励起帯がある。
実施例9に係る緑色発光酸窒化物蛍光体は360nmに近い位置に発光ピークがあり、実施例10に係る緑色発光酸窒化物蛍光体は340nmに近い位置に発光ピークがあり、実施例11に係る緑色発光酸窒化物蛍光体は340nmに近い位置に発光ピークがあり、実施例9〜11に係る緑色発光酸窒化物蛍光体は紫外線発光ダイオードに対して効率よく発光する。
また、図8に示されるように、実施例9に係る緑色発光酸窒化物蛍光体は、発光スペクトルの発光ピークの半値幅は約60nm程度であり、実施例10に係る緑色発光酸窒化物蛍光体は、発光スペクトルの発光ピークの半値幅は約100nm程度であり、実施例11に係る緑色発光酸窒化物蛍光体は、発光スペクトルの発光ピークの半値幅は約100nm程度であり、いずれもブロードな発光ピークである。なお、実施例9に係る緑色発光酸窒化物蛍光体は、やや青緑色に発光する。
【0051】
次に、表1に、上述した実施例1〜11における蛍光体組成式を一覧として示す。
【0052】
【表1】
【0053】
次に、表2に実施例1〜11における蛍光体組成式の組成比、及び、x/(w+a)及びz/yを示す。
【0054】
【表2】
【0055】
(緑色発光酸窒化物蛍光体を用いた発光素子)
図9は、本実施例に係る緑色発光酸窒化物蛍光体を用いた発光素子111の断面図である。発光素子111は、前面に透明基板101を備える。また、発光素子111は、ドーム状に形成された透明樹脂103の内側に発光ダイオード105を配置する。
透明樹脂103は、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、等で構成される。なお、シリコン樹脂若しくはエポキシ樹脂を透明樹脂103として用いる方が、蛍光体粉の分散性が良い。
【0056】
蛍光体の粉を透明樹脂中に分散させる場合、蛍光体粉と透明樹脂との合計に対するその蛍光体粉の重量割合は、通常0.1〜20重量%、好ましくは0.3〜15重量%である。この範囲よりも蛍光体が多すぎると蛍光体粉の凝集により発光効率が低下することがあるからであり、一方、少なすぎると今度は樹脂による光の吸収や散乱のため発光効率が低下することがあるからである。透明樹脂中には、色斑(ムラ)を防止するため増量剤を添加してもよい。
発光ダイオード105は紫外線発光ダイオードInGaNまたはGaNが用いられている。
【0057】
透明樹脂103にはそれぞれ赤、緑、青色発光の三種類の蛍光体粉末102を混入してあり、透明樹脂の表面はミラー104として作用するようにミラー加工を施してある。赤色発光蛍光体にはSrS:Euを用いる。青色発光蛍光体にはSr(POCl:Euを用いる。そして、緑色発光酸窒化物蛍光体にはCa8.97Eu0.03Si1010を用いる。
赤、緑、青色の各色発光の蛍光体はその紫外線発光ダイオード105に励起されて、これにより透明基板101から白色光が放射される。そのため、発光素子111は白色発光素子である。
【0058】
なお、透明樹脂103に拡散剤を含有させることにより、紫外線発光ダイオード105からの指向性を緩和させて視野角をさらに増大させることも可能である。拡散剤としては、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ケイ素等を用いることができる。さらに透明樹脂103はドーム状に形成されるが、これを所望の形状に形成することにより、紫外線発光ダイオード105からの発光を収束させたり拡散させたり等のレンズ効果をもたらすことが可能である。
【0059】
(その他の実施形態)
なお、本実施例に係る発光素子は、暖色系や寒色系等の色調の光を発光する発光素子としてもよい。勿論、緑色単色の発光素子としてもよい。
【0060】
上述の実施例では、組成式Ca8.97Eu0.03Si8.01010(実施例1)、組成式Ca2.97Eu0.03Si3.03.63.6(実施例2)、組成式Ca2.97Eu0.03Si3.04.53.0(実施例3)、組成式Ca2.97Eu0.03Si3.05.42.4(実施例4)、組成式Ca2.97Eu0.03Si3.06.02.0(実施例5)、組成式Ca2.97Eu0.03Si2.73.43.4(実施例6)、組成式Ca2.97Eu0.03Si2.73.93.0(実施例7)、組成式Ca2.97Eu0.03Si2.74.82.4(実施例8)、組成式Ca2.97Eu0.03Si2.43.13.1(実施例9)、組成式Ca2.97Eu0.03Si2.44.22.4(実施例10)、組成式Ca2.97Eu0.03Si2.44.82.0(実施例11)の緑色発光酸窒化物蛍光体について、紫外線発光ダイオードに対して効率よく発光することを示した。
【0061】
同様に、(Ca2.97Eu0.03Ge3.03.63.6)、(Ca2.97Eu0.03Zr3.03.63.6)、(Ca2.97Eu0.03Ti3.03.63.6)、(Ba2.97Eu0.03Si3.03.63.6)、(Ba2.97Eu0.03Ge3.03.63.6)、(Ba2.97Eu0.03Zr3.03.63.6)、(Ba2.97Eu0.03Ti3.03.63.6)、(Sr2.97Eu0.03Si3.03.63.6)、(Sr2.97Eu0.03Ge3.03.63.6)、(Sr2.97Eu0.03Zr3.03.63.6)、(Sr2.97Eu0.03Ti3.03.63.6)、(Mg2.97Eu0.03Si3.03.63.6)、(Mg2.97Eu0.03Ge3.03.63.6)、(Mg2.97Eu0.03Zr3.03.63.6)、(Mg2.97Eu0.03Ti3.03.63.6)、(Zn2.97Eu0.03Si3.03.63.6)、(Zn2.97Eu0.03Ge3.03.63.6)、(Zn2.97Eu0.03Zr3.03.63.6)、(Zn2.97Eu0.03Ti3.03.63.6)、(Sn2.97Eu0.03Si3.03.63.6)、(Sn2.97Eu0.03Ge3.03.63.6)、(Sn2.97Eu0.03Zr3.03.63.6)、(Sn2.97Eu0.03Ti3.03.63.6)等についても、紫外線発光ダイオードに対して効率よく発光する。
【0062】
また、(Ca2.97Eu0.03Ge2.44.82.0)、(Ca2.97Eu0.03Zr2.44.82.0)、(Ca2.97Eu0.03Ti2.44.82.0)、(Ba2.97Eu0.03Si2.44.82.0)、(Ba2.97Eu0.03Ge2.44.82.0)、(Ba2.97Eu0.03Zr2.44.82.0)、(Ba2.97Eu0.03Ti2.44.82.0)、(Sr2.97Eu0.03Si2.44.82.0)、(Sr2.97Eu0.03Ge2.44.82.0)、(Sr2.97Eu0.03Zr2.44.82.0)、(Sr2.97Eu0.03Ti2.44.82.0)、(Mg2.97Eu0.03Si2.44.82.0)、(Mg2.97Eu0.03Ge2.44.82.0)、(Mg2.97Eu0.03Zr2.44.82.0)、(Mg2.97Eu0.03Ti2.44.82.0)、(Zn2.97Eu0.03Si2.44.82.0)、(Zn2.97Eu0.03Ge2.44.82.0)、(Zn2.97Eu0.03Zr2.44.82.0)、(Zn2.97Eu0.03Ti2.44.82.0)、(Sn2.97Eu0.03Si2.44.82.0)、(Sn2.97Eu0.03Ge2.44.82.0)、(Sn2.97Eu0.03Zr2.44.82.0)、(Sn2.97Eu0.03Ti2.44.82.0)等についても、紫外線発光ダイオードに対して効率よく発光する。
【0063】
また、(Ca2.99Eu0.01Ge3.03.63.6)、(Ca2.95Eu0.05Ge3.03.63.6)、(Ca2.93Eu0.07Ge3.03.63.6)、(Ca2.90Eu0.10Ge3.03.63.6)、(Ca2.87Eu0.13Ge3.03.63.6)、(Ca2.85Eu0.15Ge3.03.63.6)、(Ca2.83Eu0.17Ge3.03.63.6)、(Ca2.80Eu0.20Ge3.03.63.6)等についても、紫外線発光ダイオードに対して効率よく発光する。
【0064】
また、付活剤はEuについて示したものであるが、付活剤がLa、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Mn、Bi、Sbであっても本実施例に係る緑色発光酸窒化物蛍光体は紫外線発光ダイオードに対して効率よく発光する。
例えば、(Ca2.97La0.03Si3.03.63.6)、(Ca2.97Ce0.03Si3.03.63.6)、(Ca2.97Pr0.03Si3.03.63.6)、(Ca2.97Nd0.03Si3.03.63.6)、(Ca2.97Sm0.03Si3.03.63.6)、(Ca2.97Gd0.03Si3.03.63.6)、(Ca2.97Tb0.03Si3.03.63.6)、(Ca2.97Dy0.03Si3.03.63.6)、(Ca2.97Ho0.03Si3.03.63.6)、(Ca2.97Er0.03Si3.03.63.6)、(Ca2.97Tm0.03Si3.03.63.6)、(Ca2.97Yb0.03Si3.03.63.6)、(Ca2.97Lu0.03Si3.03.63.6)、(Ca2.97Mn0.03Si3.03.63.6)、(Ca2.97Bi0.03Si3.03.63.6)、(Ca2.97Sb0.03Si3.03.63.6)等についても、紫外線発光ダイオードに対して効率よく発光する。
【0065】
また、M1とM2は、複数の金属を含有することも可能である。例えば、(Ba1.0Ca1.97Eu0.03Si3.03.63.6)、(Sr1.0Ca1.97Eu0.03Si3.03.63.6)、(Sn1.0Ca1.97Eu0.03Si3.03.63.6)、(Ca2.97Eu0.03Si2.0Ge1.03.63.6)、(Ca2.97Eu0.03Si2.0Zr1.03.63.6)、(Ca2.97Eu0.03Si2.0Ti1.03.63.6)、(Ba1.0Sr1.0Ca0.97Eu0.03Si3.03.63.6)、(Sr1.0Mg1.0Ca1.97Eu0.03Si3.03.63.6)、(Sn1.0Zn1.0Ca1.97Eu0.03Si3.03.63.6)、(Ba1.0Sr1.0Ca0.97Eu0.03Si2.0Ge1.03.63.6)、(Sr1.0Mg1.0Ca1.97Eu0.03Si2.0Zr1.03.63.6)等についても、紫外線発光ダイオードに対して効率よく発光する。
【0066】
また、上述の実施例では、原料粉末として、窒化カルシウム(Ca)と、酸化ケイ素(SiO)と、窒化ケイ素(Si)と、塩化ユーロピウム(EuCl)と、を混合させた。もっとも、本発明に係る緑色発光酸窒化物蛍光体はかかる実施例に限定されない。カルシウム化合物としては、炭酸カルシウム(CaCO)、亜塩素酸カルシウム(Ca(ClO)、亜硫酸カルシウム(CaSO)、亜リン酸カルシウム(CaPHO)、アルミノケイ酸一カルシウム(CaO・Al)、過塩素酸カルシウム(Ca(ClO)等を用いることも可能である。
また、原料粉末として、カルシウム化合物の代わりに、炭酸バリウム(BaCO)や硫酸バリウム(BaSO)、塩化バリウム(BaCl)、硝酸バリウム(BaNO)、水酸化バリウム(Ba(OH))、過酸化バリウム等のバリウム化合物を用いることも可能である。
また、原料粉末として、カルシウム化合物の代わりに、炭酸ストロンチウム(SrCO)や硫酸ストロンチウム(SrSO)、臭化ストロンチウム(SrBr)等のストロンチウム化合物を用いることも可能である。
さらには、これらのカルシウム化合物、ストロンチウム化合物及びバリウム化合物を混合して用いることも可能である。
また、原料粉末として、カルシウム化合物の代わりに、炭酸マグネシウム(MgCO)や硫酸マグネシウム(MgSO)、臭化マグネシウム(MgBr)等のマグネシウム化合物を用いることも可能である。
また、原料粉末として、カルシウム化合物の代わりに、塩化亜鉛(ZnCl)、炭酸亜鉛(ZnCO)、硫酸亜鉛(ZnSO)、臭化亜鉛(ZnBr)等の亜鉛化合物を用いることも可能である。
また、原料粉末として、カルシウム化合物の代わりに、塩化スズ(SnCl)、硫酸スズ(SnSO)等のスズ化合物を用いることも可能である。
さらには、これらのカルシウム化合物、バリウム化合物、ストロンチウム化合物、マグネシウム化合物、亜鉛化合物及びスズ化合物を混合して用いることも可能である。
【0067】
また、酸化ケイ素(SiO)の代わりに、一酸化ゲルマニウム(GeO)や二酸化ゲルマニウム(GeO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化チタン(TiO)を用いることもできる。さらには、これらの酸化物を混合して用いることも可能である。
【0068】
また、窒化ケイ素(Si)の代わりに、窒化ゲルマニウム(Ge)、窒化ジルコニウム(ZrN)、窒化チタン(TiN)を用いることもできる。さらには、これらの窒化物を混合して用いることも可能である。
【0069】
上述の実施例では、付活剤として塩化ユーロピウム(EuCl)を用いた。もっともこれに限定されない。塩化ランタン、硝酸ランタン、硝酸セリウム、塩化セリウム、硝酸第1セリウムアンモニウム、硝酸2アンモニウムセリウム、酸化プラセオジム、塩化プラセオジム、塩化ネオジム、酸化ネオジム、塩化サマリウム、塩化ガドリニウム、酸化ガドリニウム、塩化テルビウム、酸化テルビウム、塩化ジスプロシウム、酸化ジスプロシウム、塩化ホルミニウム、酸化ホルミニウム、酸化エルビウム、塩化ツリウム、酸化ツリウム、酸化イッテルビウム、塩化イッテルビウム、酸化ルテチウム、塩化マンガン、硝酸マンガン、硫酸マンガン、炭酸マンガン、硫酸ビスマス、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、三塩化アンチモン、五酸化アンチモン、三酸化アンチモン、硫酸アンチモン等を用いることができる。
【0070】
上述の実施例に係る発光素子111では、赤色発光蛍光体にはSrS:Euを、青色発光蛍光体にはSr(POCl:Euを、緑色発光酸窒化物蛍光体にはCa8.97Eu0.03Si1010を用いた。
もっとも、これに限定されない。赤色発光蛍光体には、CaS:Eu、CaAlSiN:Eu及びLaS:Eu等を用いることができる。また、青色発光蛍光体は、(Ba,Sr)MgAl1017:Eu,Mn、(Ba,Sr,Ca,Mg)10(POCl:Eu及びZnS:Ag等を用いることができる。さらに、緑色発光酸窒化物蛍光体には、本実施例に係る種々の緑色発光酸窒化物蛍光体を用いることができる。
【0071】
さらに、発光素子111では、本実施例に係る緑色発光酸窒化物蛍光体に加えて、以下に示す緑色発光酸窒化物蛍光体を混合して使用することも可能である。例えば、BaMgAl1627:Eu、MnやBaMgAl1017:Eu、Mnで表されるユーロピウム付活アルミン酸塩蛍光体、(MgCaSrBa)Si:Euで表されるユーロピウム付活アルカリ土類シリコンオキシナイトライド系蛍光体、BaSiO:Euで表されるユーロピウム付活アルカリ土類金属珪酸塩系蛍光体等を、本実施例に係る緑色発光酸窒化物蛍光体に加えて使用することも可能である。
【0072】
上述の実施例では、原料粉末を乾式で混合した。もっとも湿式で混合することも可能である。湿式で混合するためにアセトン、IPA(イソプロピルアルコール)、エタノール等の有機溶媒を用いる。水で混合することも可能であるが、有機溶媒を用いることが好ましい。アセトン等の有機溶媒と秤量した原料とに、さらにジルコニアボールを加えて、セラミックス製ボールミルに入れ、12時間混合する。混合時間は1時間以上24時間以下の範囲で行うことが好ましい。混合が終了するとジルコニアボールを篩により分離させ、その後、有機溶媒を乾燥させ、原料粉末を得る。なお、カルシウム化合物としての窒化カルシウム(Ca)は乾式混合の時のみ使用可能であるため、炭酸カルシウム(CaCO)、亜塩素酸カルシウム(Ca(ClO)等の他のカルシウム化合物を用いる。
【0073】
上述の実施例では、紫外線発光ダイオードとしてInGaNまたはGaNが用いられた。もっともこれに限定されない。発光素子を形成するための発光ダイオードとしては、InAlGaN、AlGaN、BAlGaN、BInAlGaN等を用いることが可能である。
【0074】
本実施例に係る緑色発光酸窒化物蛍光体の製造方法において、あらかじめ、窒化ケイ素(Si)と酸化ケイ素(SiO)を0.9MPaの圧力下で反応させてSi−O−N系前駆体を合成し、その後に、窒化カルシウム(Ca)と塩化ユーロピウム(EuCl)とを混合させて原料粉末を得て、その原料粉末を焼成することも可能である。
原料に窒化ケイ素(Si)を用いる場合、1300℃以上の高温で焼成すると窒化ケイ素(Si)の分解飛散する場合がある。窒化ケイ素(Si)が分解飛散すると、目的とする組成の蛍光体を得ることが困難であり、高純度な緑色発光酸窒化物蛍光体が得られない可能性がある。そこで、窒化ケイ素(Si)の分解飛散による蛍光体純度の低下を抑制するために、あらかじめ(Si)と酸化ケイ素(SiO)を0.9MPaの圧力下で反応させてSi−O−N系前駆体を合成するのである。
【図面の簡単な説明】
【0075】
図1】実施例1に係る緑色発光酸窒化物蛍光体の励起スペクトルを説明する図である。
図2】実施例1に係る緑色発光酸窒化物蛍光体の発光スペクトルを説明する図である。
図3】実施例2〜5に係る緑色発光酸窒化物蛍光体の励起スペクトルを説明する図である。
図4】実施例2〜5に係る緑色発光酸窒化物蛍光体の発光スペクトルを説明する図である。
図5】実施例6〜8に係る緑色発光酸窒化物蛍光体の励起スペクトルを説明する図である。
図6】実施例6〜8に係る緑色発光酸窒化物蛍光体の発光スペクトルを説明する図である。
図7】実施例9〜11に係る緑色発光酸窒化物蛍光体の励起スペクトルを説明する図である。
図8】実施例9〜11に係る緑色発光酸窒化物蛍光体の発光スペクトルを説明する図である。
図9】実施例にかかる発光素子を説明する図である。
【符号の説明】
【0076】
101 透明基板
102 三種類の蛍光体粉末
103 透明樹脂
104 ミラー
105 発光ダイオード
111 実施例に係る発光素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9