(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5710103
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】フッ化有機化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 17/25 20060101AFI20150409BHJP
C07C 21/18 20060101ALI20150409BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20150409BHJP
B01J 27/10 20060101ALN20150409BHJP
【FI】
C07C17/25
C07C21/18
!C07B61/00 300
!B01J27/10 Z
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2008-548885(P2008-548885)
(86)(22)【出願日】2007年1月3日
(65)【公表番号】特表2009-522313(P2009-522313A)
(43)【公表日】2009年6月11日
(86)【国際出願番号】US2007000064
(87)【国際公開番号】WO2007079435
(87)【国際公開日】20070712
【審査請求日】2009年12月10日
(31)【優先権主張番号】60/755,486
(32)【優先日】2006年1月3日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100098590
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 隆
(72)【発明者】
【氏名】トゥン,シュー・スン
(72)【発明者】
【氏名】ムコパドヒャイ,スディップ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ダー ピュイ,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】マ,ジン・ジ
(72)【発明者】
【氏名】マーケル,ダニエル・シー
(72)【発明者】
【氏名】ボルツ,シェリル
(72)【発明者】
【氏名】ライト,バーバラ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップス,スティーヴン・ディー
(72)【発明者】
【氏名】フレミング,キム・エム
(72)【発明者】
【氏名】ファーグソン,スーザン
【審査官】
井上 千弥子
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第02996555(US,A)
【文献】
特開平02−017137(JP,A)
【文献】
特開平02−207043(JP,A)
【文献】
特開平06−087770(JP,A)
【文献】
特開平08−193039(JP,A)
【文献】
特表2001−509803(JP,A)
【文献】
特開平02−204437(JP,A)
【文献】
特開平02−204428(JP,A)
【文献】
特開平06−279328(JP,A)
【文献】
特開平02−017138(JP,A)
【文献】
特公昭42−022478(JP,B1)
【文献】
特開平01−207249(JP,A)
【文献】
特表2009−513719(JP,A)
【文献】
特表2009−513699(JP,A)
【文献】
特開平11−140002(JP,A)
【文献】
特開平08−169850(JP,A)
【文献】
国際公開第2005/012212(WO,A1)
【文献】
MONTANARI V,JOURNAL OF ORGANIC CHEMISTRY,米国,AMERICAN CHEMICAL SOCIETY,1992年,V57 N3,P5018-5019
【文献】
J. Phys. Chem. A,1997年,101(7),pp. 1334-1337
【文献】
J. Phys. Chem. A,1997年,101(48),pp. 9118-9124
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 17/00−21/22
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ化有機化合物の複数工程製造方法であって、式(IA):
CX3CF2CH3 (IA)
(式中、各Xは、独立に、H、F、Cl、IまたはBrであり、少なくとも1のXがClである)の少なくとも1つの化合物をフッ素化して、1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(HFC−245cb)を生成させる第1反応工程であって、Sb系および/またはFe系触媒の存在下で行われ、HFC−245cbについて少なくとも70%の選択率を有する工程、および、
該1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(HFC−245cb)を、2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(HFO−1234yf)へ脱フッ化水素する第2反応工程であって、少なくともニッケル系触媒または炭素系触媒の存在下で行われる工程を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記式(IA)の各XがFまたはClである方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記式(IA)の化合物が、少なくとも1,1,1−トリクロロ−2,2−ジフルオロプロパン(HCFC−242cb)を含む方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、式(III):
CX2=CClC(X)3 (III)
(ここで、各Xは、独立に、H、F、Cl、IまたはBrであり、但し、少なくとも1つのXは、Cl、IまたはBrである)の少なくとも1つの化合物を、式(IA)の少なくとも1つの化合物へ転換することにより、前記式(IA)の化合物を用意する工程を更に含む方法。
【請求項5】
フッ化有機化合物の複数工程製造方法であって、式(IA)
CX3CF2CH3 (IA)
(式中、Xは、独立に、H、FまたはClであり、少なくとも1のXがClである)の少なくとも1つの化合物をフッ素化して、1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(HFC−245cb)を生成させる第1反応工程であって、前記フッ素化第1反応工程が、式(IA)の化合物をSb系および/またはFe系触媒の存在下でHFと反応させて1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(HFC−245cb)を、HFC−245cbについて少なくとも70%の選択率で生成させることを含む工程、および、
該1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(HFC−245cb)を、2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(HFO−1234yf)へ脱フッ化水素する第2反応工程を含み、前記脱フッ化水素第2反応工程が、少なくともニッケル系触媒または炭素系触媒の存在下で行われる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ化有機化合物の新規な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロフルオロカーボン類(HFC’s)、特に、テトラフルオロプロペン(2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(HFO−1234yf)および1,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(HFO−1234ze)を含む)等のヒドロフルオロアルケンは、有効な、冷媒、消火剤、熱伝導媒体、高圧ガス(propellants)、起泡剤、発泡剤、気体誘電体、滅菌剤担体、重合媒体、粒子除去流体、担体流体、バフ掛け研磨剤、置換乾燥剤および強力循環作動流体であることが開示されている。地球のオゾン層を損なう可能性のあるクロロフルオロカーボン(CFCs)およびヒドロクロロフルオロカーボン(HCFCs)とは違って、HFCsは塩素を含まず、したがって、オゾン層に対して何ら脅威となるものではない。
【0003】
ヒドロフルオロアルケンを調製するための幾つかの方法は公知である。例えば、米国特許第4900874号(Iharaら)は、水素ガスとフッ化アルコールとを接触させることにより、フッ素含有オレフィンを作る方法を記載している。これは、商業規模の生産としては相対的に高い収率を与える方法であると思われるが、高温での水素ガスの取り扱いが、安全に関わる問題についての困難を提起する。また、例えば、現場での水素プラントの建設等の水素ガスの生産コストは、多数の状況において相当高いものとなり得る。
【0004】
米国特許第2931840号(Marquis)は、塩化メチルおよびテトラフルオロエチレンまたはクロロジフルオロメタンの熱分解によりフッ素含有オレフィンを作る方法を記載している。この方法は相対的に低い収率を与える方法であり、非常に多量の有機出発物質が、この方法では、必要ではないおよび/または重要ではない副生成物へ転換される。
【0005】
米国特許第2996555号(Rausch)は、酸素含有金属触媒、例えば、オキシフッ化クロム等が、式CX
3CF
2CH
3の化合物を2,3,3,3−テトラフルオロプロペンへ転換するために使用される、単一工程方法によるフッ素含有オレフィンの気相製造方法を記載している。この特許のこの実施例は、相対的に低い収率、即ち60%を生成する方法を記載している。
【0006】
トリフルオロアセチルアセトンおよび四フッ化硫黄からのHFO−1234yfの調製は開示されている。Banksら、Journal of Fluorine Chemistry、Vol.82、Iss.2、171頁〜174頁(1997年)を参照されたい。また、米国特許第5162594号(Krespan)は、テトラフルオロエチレンが、液相で別のフッ化エチレンと反応してポリフルオロオレフィン生成物を製造する方法を開示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
出願人は、ヒドロフルオロプロペンを含むフッ化有機化合物を製造する方法を見出した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
出願人は、好ましくは、式(I):
C(X)
3CF
2C(X)
3 (I)
の少なくとも1つの化合物を、式(II)
CF
3CF=CHZ (II)
(式中、各XおよびZは、独立に、H、F、Cl、IまたはBrである)の少なくとも1つの化合物へ転換する工程を含む、ヒドロフルオロプロペンを含むフッ化有機化合物を製造する方法であって、前記方法が、好ましくは、ある実施形態において実質的な量の酸素含有触媒を全く含まない方法を見出した。
【0009】
好ましくは、ZはHである。本明細書および全体を通して使用され、別途特に指示されない限り、「転換(converting)」と言う用語は、直接的に転換すること(例えば、単一反応においてまたは本質的に1組の反応条件下で、そしてその例は以降において記載される)および間接的に転換すること(例えば、2つ以上の反応によりまたは1組より多い反応条件を使用する)を含む。
【0010】
本発明のある好ましい実施形態においては、式(I)の化合物は、一方の末端炭素上の各XがHであり、他方の末端炭素上の各Xが、独立に、F、Cl、IまたはBrから選択される化合物を含む。その様な好ましい実施形態は、式(IA):
C(X)
3CF
2CH
3 (IA)
の少なくとも1つのC3アルカンを、式(II)
CF
3CF=CHZ (II)
(式中、各Xは、独立に、F、Cl、BrまたはIである)の少なくとも1つの化合物へ転換する工程を含み、前記方法は、好ましくは、ある実施形態において実質的な量の酸素含有触媒を全く含まない。好ましくは、その様な実施形態におけるZはHである。
【0011】
好ましくは、式(I)の化合物は、少なくとも4つのハロゲンの置換基、なお更に好ましくは、少なくとも5つのハロゲンの置換基を含む。確かに大いに好ましい実施形態においては、本発明の転換工程は、式(IA)(ここで、各XはFである)の化合物を転換する工程を含む。好ましくは、式(IA)の化合物はペンタハロゲン化される。なお更に好ましくは、式(IA)のペンタハロゲン化プロパンは、三塩化二フッ化プロパン、五フッ化プロパン、およびこれらの組合せを含む。
【0012】
式(IA)の好ましい化合物としては、1,1,1−トリクロロ−2,2−ジフルオロプロパン(HCFC−242
cb)、および1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(HFC−245cb)が挙げられる。
【0013】
ある好ましい実施形態においては、式(I)の化合物を式(II)の少なくとも1つの化合物へ転換する工程は、式(I)の化合物を直接的に転換する工程を含む。その他の実施形態においては、式(I)の化合物を式(II)の少なくとも1つの化合物へ転換する工程は、式(I)の化合物を間接的に転換する工程を含む。
【0014】
その様な間接的転換の実施形態の例としては、式(I)の第1の化合物、例えば、HCFC−242
cbを、式(I)の第2の化合物、例えば、HFC−245cbへ転換し、次いで、第2の式(I)の化合物を式(II)の化合物へ転換する工程が挙げられる。ある更に特殊な間接的転換の実施形態においては、式(I)の化合物を転換する工程は、式(IA)による少なくとも1つのトリクロロジフルオロプロパン、好ましくは、CCl
3CF
2CH
3(HCFC−242
cb)を用意する工程および式(IA)による少なくとも1つのペンタフルオロプロパン、好ましくは、CF
3CF
2CH
3(HFC−245cb)を製造するのに有効な条件下でCCl
3CF
2CH
3(HCFC−242
cb)を反応させる工程を含み、CF
3CF
2CH
3(HFC−245cb)は次に、式(II)による少なくとも1つの化合物、好ましくは、HFO−1234yfを製造するのに有効な反応条件に好ましくは曝露される。好ましい実施形態においては、前記曝露工程は、前記反応の1つまたは複数を、気相および/または液相で、触媒、好ましくは金属系触媒の存在下で実施する工程を含む。その様な好ましい転換工程の例は、更に十分に以降で開示される。勿論、本発明の広い範囲においては、本明細書に含まれる教示から見て、任意の式(I)の化合物が、直接的にまたは間接的に、式(II)の化合物へ転換されてもよいことが意図される。
【0015】
ある好ましい実施形態においては、転換工程は、式(I)、好ましくは、式(IA)の化合物を、式(II)による少なくとも1つの化合物を製造するのに有効な反応条件の1つまたは複数の組に曝露する工程を含む。
【0016】
本発明の好ましい転換工程は、好ましくは、少なくとも約50%、更に好ましくは、少なくとも約75%、なお更に好ましくは、少なくとも約90%の式(I)の転換率を与えるのに有効な1つまたは複数の反応の使用を含む条件下で実施される。ある好ましい実施形態においては、転換率は少なくとも約95%、更に好ましくは、少なくとも約97%である。更に、ある好ましい実施形態においては、式(I)の化合物を式(II)の化合物を製造するために転換する工程は、少なくとも約45%、更に好ましくは、少なくとも約55%、更に好ましくは、少なくとも約75%の式(II)の選択率を与えるのに有効な条件下で実施される。ある好ましい実施形態においては、約95%以上の選択率が達成されてもよい。
【0017】
本発明のその他の態様においては、式(III):
C(X)
2=CClC(X)
3 (III)
(ここで、各Xは、独立に、H、F、Cl、IまたはBrであり、但し、少なくとも1つのXはCl、IまたはBrである)の少なくとも1つの化合物を、上述の式(I)の少なくとも1つの化合物へ転換することにより式(I)の化合物を製造するための方法が提供される。好ましい実施形態においては、不飽和炭素上の少なくとも1つのXはCl、IまたはBrであり、なお更に好ましくはClである。本発明のこの態様による例示的転換工程の詳細は実施例で与えられている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の1つの有利な態様は、相対的に高い転換および高い選択率の反応を使用して、所望のフルオロオレフィン、好ましくはC3フルオロオレフィンの製造を可能にする点である。更に、ある好ましい実施形態における本発明の方法は、相対的に魅力的な出発物質から、直接的にでもまたは間接的にでも、所望のフルオロオレフィンの製造を可能にする。
【0019】
好ましくは、式(I)の化合物は、所望のフルオロオレフィンの1つまたは複数、好ましくは、式(II)の1つまたは複数の化合物を含む反応生成物を製造するのに有効な反応条件に曝露される。ある実施形態における曝露工程は、上述の通り、単一反応段階においておよび/または1組の反応条件下で有効に行われてもよいと考えられるが、転換工程は一連の複数の反応段階または複数の条件を含むことが多数の実施形態においては好ましい。本発明の1つの好ましい態様においては、転換工程は、(a)式(IA)の第1の塩素化化合物を、気相および/または液相反応で、少なくとも第1触媒の存在下で反応させて、式(IA)の少なくとも1つの化合物、好ましくは、五フッ化された、なお更に好ましくは、その他のハロゲン置換基を含まない式(IA)の化合物、例えば、HFC−245等を製造する工程;(b)式(IA)の化合物、好ましくは、五フッ化された式(IA)の化合物を、好ましくは、気相で、存在する場合は、第1触媒と同じかまたは異なっていてもよい触媒の存在下または不存在下で反応させて、式(II)の少なくとも1つの化合物、なお更に好ましくは、HFO−1234yfを製造する工程を含む。ある実施形態においては、触媒は、実質的な量の酸素含有触媒を含まない。それぞれの好ましい反応工程は、便宜のためであって必ずしも限定を目的とするものではなく使用される見出しとともに、以下で詳細に説明される。
【0020】
I.複数ハロゲン化式I(A)のフッ素化
合致する1つの好ましい反応工程は、式(IA)の化合物がフッ素および少なくとも1つのその他のハロゲンを含み、この化合物がフッ素化されて、少なくとも4つ、好ましくは5つのフッ素置換基を含み、なお更に好ましくはその他のハロゲン置換基を含まない式(IA)の化合物を製造するような、これらの反応により説明されてもよい。あるその様な好ましい実施形態、特に、その様な化合物がHCFC−242
cbを含む実施形態においては、本発明の転換工程は、初めに、前記化合物を、好ましくは、HFで、気相および/または液相でフッ素化することにより前記化合物を反応させて、HFC、好ましくは、少なくとも四フッ化されたHFC、例えば、HFC−245等を製造する工程を含む。好ましくは、この反応は、気相、液相、または両方であっても、少なくとも部分的に触媒化される反応である。ある好ましい実施形態においては、式(IA)の化合物、例えば、HCFC−242
cb等は、SbCl
5、SbF
5、SbF
3、TiCl
4、SnCl
4、FeCl
3、AlCl
3、AlF
3、およびこれらの2つ以上の組合せを含むがこれらに限定されない触媒の存在下で、液体HFと接触して、増加した数のフッ素置換基、好ましくは、フッ素置換基だけを有する式(IA)の化合物、例えば、CF
3CF
2CH
3を合成する。SbCl
5は多数の望ましい実施形態において極めて好ましいものであることが分かっている。その他の好ましい実施形態においては、この転換工程は、固体触媒としてSbCl
5/Cを使用する触媒的、連続的、気相反応方式で行われる。式(IA)の化合物の好ましいフッ素化は、好ましくは、少なくとも約50%、更に好ましくは、少なくとも約75%、なお更に好ましくは少なくとも約90%の式(IA)の転換率を与えるのに有効な条件下で行われる。ある好ましい実施形態においては、転換率は少なくとも約95%、更に好ましくは少なくとも約97%である。更に、ある好ましい実施形態においては、式(IA)の化合物の転換は、少なくとも約70%、更に好ましくは、少なくとも約75%、なお更に好ましくは、少なくとも約80%の収率で、少なくとも1つの五フッ化化合物(好ましくは、HFC−245)を製造するのに有効な条件下でその様な化合物を反応させる工程を含む。
【0021】
一般的に、フッ素化反応工程は、液相で、または気相で、あるいは気相と液相の組合せで行うことができ、反応は、バッチ式、連続、またはこれらの組合せで行うことができる。
【0022】
式(I)の化合物の好ましい気相フッ素化では、反応は少なくとも部分的に触媒化反応であり、好ましくは、式(I)の化合物を含む流れを1つまたは複数の反応容器、例えば、管状反応器等に導入することによる連続方式で行われる。ある好ましい実施形態においては、式(I)、好ましくは式(IA)の化合物を含む流れは、約150℃〜約400℃、好ましくは、約300℃の温度まで予備加熱され、所望の温度、好ましくは、約40℃〜約200℃、更に好ましくは、約50℃〜約150℃に維持された反応容器(好ましくは管状反応器)中へ導入され、そこで、好ましくは、触媒およびフッ素化剤、例えば、HF等と接触する。
【0023】
好ましくは、容器は、ハステロイ(Hastelloy)、インコネル(Inconel)、モネル(Monel)および/またはフッ素ポリマーの内張りの様な耐腐食性の材料からなる。
【0024】
好ましくは、容器は、反応混合物が所望の反応温度範囲で維持されることを確実にするための適切な手段と一緒に、触媒、例えば、適切なフッ素化触媒を充填した、固定または流動触媒床を含む。
【0025】
したがって、フッ化反応工程は、本明細書に含まれる全体の教示から見て、多種多様なプロセスパラメータおよびプロセス条件を使用して行われてもよいと考えられる。しかしながら、ある実施形態においては、この反応工程は気相反応を含み、好ましくは、触媒、なお更に好ましくはSb系および/またはFe系触媒(例えば、炭素上のFeCl
3等(本明細書では、便宜的にFeCl
3/Cとして表わされる))、およびこれらの組合せの存在下での気相反応を含むことが好ましい。
【0026】
一般的に、また、多種多様な反応圧力がフッ化反応に使用されてもよく、これは再び、使用される特定の触媒および最も望ましい反応生成物等の関連要因に左右される。反応圧力は、例えば、超大気圧、大気圧または真空下(減圧下)であることができ、ある好ましい実施形態においては、6.8〜1378.9kPa(約1〜約200psia)、なお更に好ましくは、6.8〜827.3kPa(約1〜約120psia)である。
【0027】
ある実施形態においては、不活性希釈ガス、例えば、窒素等は、その他の反応器供給物と組み合わせて使用されてもよい。
【0028】
触媒の使用量は、各実施形態に存在する特定のパラメータによって変動することが考えられる。
【0029】
II.式(II)への転換
合致する1つの好ましい反応工程は、式(I)、好ましくは、式(IA)の化合物が式(II)の化合物へ転換されるこれらの反応により説明されてもよい。ある好ましい実施形態においては、式(I)、好ましくは、式(IA)の化合物を含む流れは、約150℃〜約400℃、好ましくは、約350℃の温度まで予備加熱され、所望の温度、好ましくは、約300℃〜約700℃、更に好ましくは、約450℃〜約650℃に維持された反応容器中へ導入される。
【0030】
好ましくは、容器は、ハステロイ、インコネル、モネルおよび/またはフッ素ポリマーで内張りされたものの様な耐腐食性の材料からなる。好ましくは、容器は、反応混合物を所望の反応温度まで加熱するための適切な手段と一緒に、触媒、例えば、適切な触媒で充填された、固定または流動触媒床を含む。
【0031】
したがって、この反応工程は、本明細書に含まれる全体の教示から見て、多種多様なプロセスパラメータおよびプロセス条件を使用して行われてもよいと考えられる。しかしながら、ある実施形態においては、この反応工程は気相反応を含み、好ましくは、触媒、なお更に好ましくは炭素および/または金属系触媒、好ましくは、活性炭、ニッケル系触媒(例えば、Ni−メッシュ等)、およびこれらの組合せの存在下での気相反応を含むことが好ましい。その他の触媒および触媒支持体は、炭素上のパラジウム、パラジウム系触媒(酸化アルミニウム上のパラジウムを含む)を含めて使用されてもよく、多数のその他の触媒が、本明細書に含まれる教示から見て、特定の実施形態の要件によって使用されてもよいと期待される。勿論、任意のこれらの触媒または本明細書で名前が挙げられていないその他の触媒の2つ以上が組合せで使用されてもよい。
【0032】
使用される触媒および最も所望される反応生成物等の関連要因によって、多種多様の反応温度が使用されてもよいと考えられるが、一般的に、この工程のための反応温度は、約200℃〜約800℃、更に好ましくは、約400℃〜約800℃であるのが好ましい。ある好ましい実施形態においては、反応温度は、約300℃〜約600℃、なお更に好ましくは、ある実施形態においては、約500℃〜約600℃である。
【0033】
一般的に、また、多種多様な反応圧力が使用されてもよく、これは再び、使用される特定の触媒および最も望ましい反応生成物等の関連要因に左右される。反応圧力は、例えば、超大気圧、大気圧または真空下であることができ、ある好ましい実施形態においては、6.8〜1378.9kPa(約1〜約200psia)、ある実施形態においては、6.8〜827.3kPa(約1〜約120psia)である。
【0034】
ある実施形態においては、不活性希釈ガス、例えば、窒素等は、その他の反応器供給物と組み合わせて使用されてもよい。触媒の使用量は、各実施形態に存在する特定のパラメータによって変動することが考えられる。
【0035】
好ましくは、この項で説明されるその様な実施形態においては、式(I)の化合物の転換率は、少なくとも約30%、更に好ましくは、少なくとも約50%、なお更に好ましくは、少なくとも約60%である。好ましくは、その様な実施形態においては、式(II)の化合物、好ましくは、HFO−1234yfに対する選択率は、少なくとも約70%、更に好ましくは、少なくとも約80%、更に好ましくは、少なくとも約90%である。
【実施例】
【0036】
本発明の更なる特徴は、決して特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない以下の実施例で与えられる。
【0037】
(実施例1A〜1C)
CCl
3CF
2CH
3(242
cb)のHFによるCF
3CF
2CH
3(R245cb)への液相触媒的フッ素化
実施例1A
約327gのHF、約50gのCCl
3CF
2CH
3(242
cb)、および約75gのSbCl
5を、1Lのオートクレーブに充填した。反応混合物を120℃で、約6時間、5240.0kPa(約760psig)の圧力下で撹拌した。決められた反応時間後に、反応器を約0℃まで冷却し、次いで、約300mlの水を、オートクレーブ中へ、約45分間にわたってゆっくりと添加した。撹拌下での水の添加が完了後、反応器を約70℃まで加熱し、次いで、オーバーヘッドガスを別の収集シリンダーへ移した。CF
3CF
2CH
3の収率は、約100%の242
cb転換率水準で約82%であった。その他の主たる副生成物は痕跡量のCF
3CFClCH
3およびタール状物質であった。
【0038】
実施例1B
約327gのHF、約50gのCCl
3CF
2CH
3(242
cb)、および約75gのSbCl
5を、1Lのオートクレーブに充填した。反応混合物を約100℃で、約6時間、4274.7kPa(約620psig)の圧力下で撹拌した。反応後に、反応器を約0℃まで冷却し、次いで、約300mlの水を、オートクレーブ中へ、約45分間にわたってゆっくりと添加した。撹拌下での水の添加が完了後、反応器温度を約70℃まで上昇させ、次いで、オーバーヘッドガスを別の収集シリンダーへ移した。CF
3CF
2CH
3の収率は、約86%の242
cb転換率水準で約78%であった。その他の主たる副生成物は痕跡量のCF
3CFClCH
3およびその他のクロロフルオロプロパンであった。
【0039】
実施例1C
約327gのHF、約50gの1233xf、および約75gのSbCl
5を、1Lのオートクレーブに充填した。反応混合物を約80℃で、約6時間、3171.5kPa(約460psig)の圧力下で撹拌した。反応後に、反応器を約0℃まで冷却し、次いで、300mlの水を、オートクレーブ中へ、約45分間にわたってゆっくりと添加した。撹拌下での水の添加が完了後、反応器を室温まで冷却し、次いで、オーバーヘッドガスを別の収集シリンダーへ移した。CF
3CF
2CH
3の収率は約67%であった。唯一のその他の主たる副生成物は、不完全なフッ素化の結果生じた生成物および痕跡量のCF
3CFClCH
3を含む。
【0040】
実施例2
CCl
3CF
2CH
3(242
cb)のHFによるCF
3CF
2CH
3(R245cb)への気相触媒的フッ素化
558.8mm(22インチ)(12.7mm(1/2インチ)直径)モネル管気相反応器に、触媒として120ccの50重量%SbCl
5/Cを充填した。反応器を、3つの帯域(上部、中央および底部)を持つヒーターの内側に載置した。反応器温度を、反応器の内側中央で保持された特注の5点熱電対で読取った。反応器の入口を、電気的加熱により約300℃に保たれた予熱器に接続した。液体HFを、1時間当たり約1〜約1000g(g/時間)の実質的に一定流量で、ニードルバルブ、液体質量流量計、およびリサーチ制御バルブを通してシリンダーから予熱器中へ供給した。HFシリンダーを、シリンダー頂部空間中へ無水N
2ガス圧を加えることにより310.2kPa(45psig)の一定圧力に保った。有機反応体(242
cb)からなる供給物を、約10〜約120g/時間の範囲の速度で、約145℃に保たれたシリンダーからガスとして、調整弁、ニードルバルブ、およびガス質量流量計を通して供給した。有機供給物流を、また、約10〜約150g/時間の範囲の実質的に一定流量で、ニードルバルブ、液体質量流量計、およびリサーチ制御バルブを通してシリンダーから予熱器中へ、約105℃の液体として周期的に供給した。シリンダーから予熱器への有機体ラインは、一定温度のヒートトレースでの包装および電気的加熱により約265℃に保持した。全ての供給物シリンダーを、差によりこれらの重量を観察するために秤の上に載置した。別のリサーチ制御バルブで反応器出口ガスの流量を制御することにより、反応を、0〜689.4kPa(約0〜約100psig)の実質的に一定の反応器圧力で行った。反応器を出る出口ガスを、凝縮を防ぐためのホットボックスバルブ(hotbox valve)配列を介して接続されたオンラインGCおよびGC/MSにより分析した。反応器温度を約60℃〜約120℃に保持した。SbCl
5/C触媒を、ほぼ反応温度で、約8時間、344.7kPa(約50psig)の圧力下で、約50g/時間のHFで予備処理した。HF予備処理後、触媒を、Cl
2の約20sccmおよびHFの約50g/時間で更に4時間、更に処理した。次いで、予備処理した触媒を、約50g/時間のHFの存在下で有機反応体と接触させた。242
cbの転換率は、約60〜約70%の範囲であり、245cbに対する選択率は、反応が、触媒として50重量%のSbCl
5/Cを使用して、約120℃で、206.8kPa(約30psig)の圧力下で、約50g/時間のHFおよび20g/時間の242
cbの存在下で行われたときに約85%であった。約20重量%〜約60重量%の水性KOH洗浄溶液を通して反応器出口ガスを流し、次いで、洗浄溶液から、ドライアイスまたは液体N
2中に保持されたシリンダー中へ出口ガスを捕捉することにより生成物を収集した。次いで、生成物を蒸留により単離した。次の触媒をテストして、括弧内で示される様なHFC−245に対す選択率を有することが分かった:30重量%SbCl
5/C(選択率、81%);約3〜約6重量%FeCl
3/C(選択率、52%);SbF
5/C(選択率、87%);20重量%SnCl
4/C(選択率、32%);23重量%TiCl
4/C(選択率、27%)。使用された触媒温度は約60℃〜約120℃の範囲であった。SbCl
5/Cは、この気相変換にとって好ましい触媒であると考えられる。
【0041】
実施例3
CF
3CF
2CH
3のCF
3CF=CH
2への触媒的転換
558.8mm(22インチ)(12.7mm(1/2インチ)直径)モネル管気相反応器に、約120ccの触媒を充填した。反応器を、3つの帯域(上部、中央および底部)を持つヒーターの内側に載置した。反応器温度を、反応器の内側中央で保持された特注の5点熱電対で読取った。反応器の入口を、電気的加熱により約300℃に保たれた予熱器に接続した。HFC−245cbを、約65℃に保たれたシリンダーから、調整弁、ニードルバルブ、およびガス質量流量計を通して供給した。予備加熱器へのラインをヒートトレースして、凝縮を避けるために、電気的加熱により約65℃〜約70℃の実質的に一定の温度で保持した。供給物シリンダーを、差によりこれらの重量を観察するために秤の上に載置した。別のリサーチ制御バルブで反応器出口ガスの流量を制御することにより、反応を、0〜689.4kPa(約0〜約100psig)の範囲で実質的に一定の反応器圧力で行った。反応器を出るガス混合物を、凝縮を防ぐためのホットボックスバルブ配列を介して接続されたオンラインGCおよびGC/MSにより分析した。245cbの転換率は、約30〜約70%の範囲であり、HFO−1234yfに対する選択率は、反応条件により約90%〜約100%の範囲であった。20〜60重量%の水性KOH洗浄溶液を通して反応器出口ガスを流し、次いで、洗浄溶液から、ドライアイスまたは液体N
2中に保持されたシリンダー中へ出口ガスを捕捉することにより生成物を収集した。次いで、生成物を蒸留により実質的に単離した。結果を表1で一覧にする。
【0042】
【表1】
【0043】
(実施例4A〜4C)
HF/SbCl
5を使用した2,3−ジクロロプロペンからのCH
3CF
2CH
2Clの調製
実施例4A
7.57L(2ガロン)のオートクレーブに、約900g(8.1モル)の2,3−ジクロロプロペン、約405g(20.3モル)のHF、および約10g(0.033モル)のSbCl
5を充填した。内容物を、撹拌しながら約100℃まで、約19時間加熱した。最大圧力は約285psig(およそ2000kPa)であった。内容物を温かい間に、ドライアイストラップに順に接続された、氷を含むフッ素ポリマー容器中へ放出した。有機層を分離し、洗浄して残留酸を除去し、約811.9gの粗生成物を得た。これは、GC分析により、41%のCH
3CF
2CH
2Cl、約34.5%のCH
3CFClCH
2Cl、21%のCH
3CCl
2CH
2Cl、および約1.8%の出発物質を含んでいた。転換率は約97%であり、一方、ハロプロパンの一緒にした収率は76.7%であった。実質的に純粋なCH
3CF
2CH
2Clを分別蒸留により得た。オートクレーブは、また、約77.8gの黒色残渣を含んでいた。
【0044】
実施例4B
反応体を約18時間、約120℃に加熱した以外は実施例4Aを繰り返した。その様にして得た粗有機層は、約58.8%のCH
3CF
2CH
2Cl、約28.3%のCH
3CFClCH
2Cl、および約9.8%のCH
3CCl
2CH
2Clからなっていた。ハロプロパンの一緒にした収率は約74%であった。
【0045】
実施例4C
触媒を使用しなかった以外は実施例4Aを繰り返した。その様にして得た粗有機層は、約58.7%のCH
3CF
2CH
2Cl、約25.9%のCH
3CFClCH
2Cl、および約12.2%のCH
3CCl
2CH
2Clからなっていた。ハロプロパンの一緒にした収率は約80%であった。この実施例は、SbCl
5触媒が、所望のCH
3CF
2CH
2Clの量の増加または有用な生成物の合計収率の増加には有効ではなかったことを示す。
【0046】
実施例5
2,3−ジクロロプロペンのCH
3CFClCH
2Clへの転換
7.57L(2ガロン)のオートクレーブを排気し、約1500gの2,3−ジクロロプロペン(約13.4モル)を充填した。次いで、冷却機に接続された内部冷却コイルにより約−5℃まで冷却した。約1500g(75モル)を添加し、冷却機を停止し、内容物を、撹拌しながら約20〜約25℃の範囲の温度までゆっくりと加熱した。およそ18時間後に、内容物を、氷水中へ放出する前に約5℃まで冷却した。有機相を分離し、約1Lの水で洗浄し、乾燥し(MgSO
4)、濾過して、約1554gの生成物混合物を得た。GC分析は、粗生成物が、約86.5%のCH
3CFClCH
2Cl、約3.8%のCH
3CF
2CH
2Cl、および約2.8%のCH
3CCl
2CH
2Clを含んでいたことを示した。同様の結果は約50℃の温度で得られたが、CH
3CFClCH
2Clの量は僅かに減少し、CH
3CF
2CH
2Clの量は僅かに増加した。
【0047】
実施例6
CH
3CCl
2CH
2ClのCH
3CF
2CH
2Clへの転換
オートクレーブを、約100gのCH
3CCl
2CH
2Clおよび約44gのHFで充填し、内容物を、撹拌しながら約130℃まで約20.5時間加熱した。生成物を、実施例1の説明通りに実質的に処理して約70gの粗生成物を得た。これは、GC面積%を基準にして、約43.8%のCH
3CF
2CH
2Cl、約23.1%のCH
3CFClCH
2Cl、および約30.3%のCH
3CCl
2CH
2Clを含んでいた。オートクレーブは、また、約1.9gの暗色残渣を含んでいた。
【0048】
実施例7
CH
3CFClCH
2ClおよびCH
3CCl
2CH
2Clの混合物のCH
3CF
2CH
2Clへの転換
約666gのCH
3CFClCH
2Cl、約268gのCH
3CCl
2CH
2Cl、約474gのHFおよび約11gのSnCl
4の混合物を、一緒に撹拌しながら、約114℃まで約18時間加熱した。粗生成物は約89%のCH
3CF
2CH
2Clを含んでいた。
【0049】
実施例4〜7の結果を基にすると、塩素化アンチモン触媒、例えば、SbCl
5等の使用は、コスト増加によりある実施形態においては好ましくない可能性があり、幾つかの実施形態では収率または転換率で所望の改善を与えない可能性があり、また、多量の副生成物残渣を生成する可能性がある。ある実施形態においては、したがって、触媒なしで反応を行うことが好ましい。しかしながら、SnCl
4の使用は、その使用が低温での使用を可能とし、粗生成物において高い割合のCH
3CF
2CH
2Clをもたらすので、CH
3CF
2CH
2Clが所望の生成物である実施形態においては好ましいものと言える。
【0050】
(実施例8A〜8C)
CH
3CF
2CCl
3の調製
CH
3CF
2CH
3のCH
3CF
2CCl
3への光塩素化は、参照として本明細書に組み込まれるJACS、59(1937年)2436頁で言及されている。
【0051】
実施例8A−CH3CF2CH2Clの光塩素化
光塩素化を、約−5℃に設定された循環冷却浴の使用で冷却された石英ジャケット中に置かれた100−W Hgランプを使用して行った。石英ジャケットを、約400ml容量のガラス反応器中へ挿入した。反応器を、−8.5℃に設定された第2循環浴に接続された冷却コイルの使用で冷却されたグリコール−水浴に置いて、外部から冷却した。反応器に、熱電対、撹拌棒、および、調整した流量計を経てシリンダーから塩素ガスを導入するためのガス入口管を設置した。出口ガスは、水冷コンデンサー、空気トラップ、およびHClおよび塩素を除去するためにNaOHおよびNa
2SO
3を含むスクラバーに通した。
【0052】
反応器に、約98.6%純度の約250.5gのCH
3CF
2CH
2Clを充填し、約−5.5℃の実質的に一定の温度まで冷却した。次いで、塩素シリンダーを開け、流量を23g/時間に設定した。その後直ちに、ランプを作動させた。およそ0.5時間後に、反応器内容物の温度は約−3±0.5℃で安定した。
【0053】
光塩素化を約7時間続行し、約79.4%の転換率が達成された。約309.3gになる粗生成物の組成は、約19.2%のCH
3CF
2CH
2Cl、約50.9%のCH
3CF
2CHCl
2および約24.8%のCH
3CF
2CCl
3であった。実質的に純粋なCH
3CF
2CCl
3を分別蒸留により得た。
【0054】
450−W Hgランプも使用することができた。時間に対するCH
3CF
2CHCl
2対CH
3CF
2CCl
3の比は、100−ワットランプの場合と本質的に同じであった。
【0055】
実施例8B−CH3CF2CHCl2の光塩素化
実施例8Aで説明したものと同じ方法で、約296.8gのCH
3CF
2CHCl
2(約97.4%純度、約1.9%のCH
3CF
2CCl
3を含む)を、100−W Hgランプを使用して、約−4℃の温度で、約22.3g/時間の塩素供給量で光塩素化した。約2.5時間後に、反応器内容物の組成は、約58.2%のCH
3CF
2CHCl
2および約39.9%のCH
3CF
2CCl
3であった。したがって、CH
3CF
2CCl
3に対する選択率は、約40%のCH
3CF
2CHCl
2転換率で約97%であった。
【0056】
実施例8C
CH
3CF
2CH
2ClおよびCH
3CF
2CHCl
2の混合物の光塩素化
実施例8Aおよび8Cで見出された選択率は、本発明の多数の実施形態にとって望ましいものと考えられる。しかしながら、それらの実施例で達成された転換率の限界はある種の用途では要求を下回る可能性がある。転換率は、それらの実施例においては2つの要因により限定されることが考えられる。1つの要因はCH
3CF
2CCl
3の融点(53℃)であり、もう1つは、高転換率での低選択率である。後者は、その様な収率の損失が受入れられないある種の商業的実施形態に関連して問題となる可能性がある。したがって、比較的高転換率で高い選択率を保持するためには、ある実施形態においては、光塩素化を、CH
3CF
2CHCl
2の100%未満の転換率で行い、この材料を新たなCH
3CF
2CH
2Clと一緒に、好ましくは次のバッチで再利用することが有利である。好ましい実施形態においては、製造されるCH
3CF
2CHCl
2の量は、再利用される材料として添加される量にほぼ等しい。
【0057】
約202.4gのCH
3CF
2CH
2Clおよび約110.7gのCH
3CF
2CHCl
2の混合物を、実施例8Aで記載した様に、100−ワット Hgランプを使用して、約−4℃の温度で、約22.2g/時間の塩素供給量で光塩素化した。約8.4時間の照射時間後、CH
3CF
2CH
2Clの転換率は約90%を超えた。粗生成物の組成は、約6.9重量%のCH
3CF
2CH
2Cl、45.2重量%のCH
3CF
2CHCl
2、および43.5重量%のCH
3CF
2CCl
3であった。CH
3CF
2CHCl
2の量は、初期に、時間と共に増加し、約5時間後に最大約55重量%に達した。
【0058】
(実施例10A〜10C)
2,3−ジクロロプロペンの転換
実施例10A
活性炭支持体上の、約65ccの50重量%SbCl
5を約95℃の温度で用意する。この触媒を、外径12.7mm(1/2インチ)×長さ914.4mm(36インチ)のモネル管に充填した。2,3−ジクロロプロペンを有機供給物原料として使用した。HFおよびCl
2での通常の触媒活性後に、Cl
2流量を止め、HF供給量を約47g/時間の速度に調整した。その後直ぐに、2,3−ジクロロプロペン供給を、約20〜25g/時間の速度で開始した。HF/有機体モル比は11.5/1であった。圧力は137.8kPa(約20psig)であった。接触時間は約6.73秒であった。反応器流出液試料を、分析前に酸を吸収させるために脱イオン水を含むTedlarガスサンプルバッグに集めた。次いで、バッグを、バッグ中に存在する有機体が完全に気化するのを確実にするために約60℃に加熱した。GC/MSの結果は、約93.3%の面積を持つ1−クロロ−2,2−ジフルオロプロパン(262ca)である主要生成物を示した。また、約3.7面積%の1,2,2−トリフルオロプロパン(263ca)および約3.4面積%の272caも存在する。2,3−ジクロロプロペンの転換率は約100%であった。
【0059】
実施例10B
この実施例は、実施例10Aと同様に行われたが、反応温度は約135℃であった。接触時間は約6.07秒であった。バッグサンプルのGC/MSの結果は、1−クロロ−2,2−ジフルオロプロパン(262ca)に対して約72.8面積%、1,2−ジクロロ−2−フルオロプロパン(261ba)に対して約15.11面積%、263caに対して約4.8面積%、2,2−ジフルオロプロパン(272ca)に対して約4.1面積%および1,1,1,2,2,3,3,4,4−ナノフルオロヘキサンに対して約2.6面積%を示す。
【0060】
実施例10C
この実施例は、実施例10Aと同様に行われたが、反応温度は約195℃であった。接触時間は約5.29秒であった。バッグサンプルのGC/MSの結果は、1−クロロ−2,2−ジフルオロプロパン(262ca)に対して約38.59面積%、1,2−ジクロロ−2−フルオロプロパン(261ba)に対して約29.3面積%、263caに対して約4.7面積%、272caに対して約20.12面積%および1,1,1,2,2,3,3,4,4−ナノフルオロヘキサンに対して約7.3面積%を示す。
【0061】
この様に、本発明の幾つかの特定の実施形態を説明したが、種々の変化、変更、および改良は当業者には容易に生じる。この開示によって明らかに為されるその様な変化、変更、および改良は、本明細書で明示的に言及されていなくてもこの記載の一部であることが意図され、本発明の精神および範囲内にあることが意図される。したがって、先の記載は、単なる例であって限定を目的とするものではない。