(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0003】
広範な種類のポリマー、およびそれらのポリマーから形成されたフィルムが知られている。このようなフィルムの重要な物理特性としては、気体、香気、および/または水蒸気などの蒸気に対する遮断性を含むバリヤー特性のほか、靱性、耐摩耗性および耐候性ならびに光透過性などの物理特性が挙げられる。包装用途などの広範な用途に使用されるポリマーフィルム物品を製造することも知られている。多くのこれらの物品は、様々な所望の物理特性および化学特性を達成するために異なるプラスチックの多層で構成される。
【0004】
従来、様々な物体を収容するための多層包装材料を製造するための材料として、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)およびポリエチレンテレフタレート(PET)等の合成高分子が広く使用されている。使用後、使用済みの包装材料の廃棄により、それらがしばしば施設に送られ、高温での焼却によって分解される。しかし、このような合成高分子の焼却は、典型的には、空気を汚染し、環境を汚染する物質を生成させる。これらの材料は、燃焼した際の発熱も大きく、燃焼処理中に焼却炉を損なう可能性がある。ポリ塩化ビニルなどの他の材料は、自己消火性を有するため、燃焼することができない。この問題を改善するための1つの共通の手段は、材料のリサイクルおよび再利用によるものであるが、リサイクルは、非常に高価で、しばしば経済的に実現可能でない。焼却またはリサイクルせずに廃棄されるこのような合成高分子材料は、典型的には、埋め地に埋められ、一般には分解せずに、廃棄物として永久的に場所を取る。
【0005】
これらの問題に鑑みて、生分解性ポリマーおよびそれらから形成された製造物は、ますます重要になりつつある。生分解性ポリマーは、典型的には、トウモロコシまたはサトウキビなどの毎年再生可能な資源から製造され、自然に生成され、自然に生成されたものを改質し、または合成的に製造してもよい。生分解性ポリマーの1つの特に望ましい一群は、ポリラクチドとも呼ばれるポリ乳酸(polylactic acids;PLAs)である。PLAsは、再生可能な資源から誘導される合成脂肪族ポリエステルである。トウモロコシデンプンまたはサトウキビの細菌発酵により、乳酸を製造し、次いでそれを縮合重合してPLAを形成する。
【0006】
ポリ乳酸は、燃焼時の発熱がポリエチレンの半分未満であり、土壌または水中で自然に分解するため望ましい。しかし、他のより望ましくない特性により、ポリエチレンまたはポリスチレンなどの従来のポリマーと比較して、プラスチック工業におけるPLAsおよび他の生分解性ポリマーの幅広い市場参入が制限されている。例えば、ポリラクチド、およびポリヒドロキシアルカノエート(PHAs)等の他の生分解性ポリマーは、気体および水分(湿気)のバリヤー特性が劣っており、包装材料としての使用、または気体および/または水分(湿気)に対する高バリヤー性が所望される他の用途における使用に十分に適さない。このような毎年再生可能な材料から製造されるフィルムは、変形時に騒音を発する傾向があり、優れた分解性を有する多くの組成物は、加工性が限定される。また、毎年再生可能な材料から製造されるフィルムは、気体および水分(湿気)のバリヤー特性が劣っていることに加えて、裂けやすく、ひび割れしやすい傾向があるため、現行では、軟質包装材料としての使用が制限されている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の多層フィルムおよび多層物品は、少なくとも1つの生分解性ポリマー層を含み、1つまたは複数の高バリヤー性吸湿防止層に任意選択で接着されることによって、複合フィルム構造体の吸湿防止特性(防湿特性)を向上させる。吸湿防止層は、存在する場合は、本明細書で特定する所望の水蒸気透過特性を達成しながら、好ましくは少なくとも約90%生分解する多層構造体を製造するのに十分小さい厚さを有することが好ましい。
【0014】
本発明の多層フィルムの生分解ポリマー層を製造するのに使用される好適な生分解性ポリマー材料としては、一般には、すべての自然に生成された生分解性ポリマー、改質された自然に生成された生分解性ポリマー、または自然に再生可能な資源から形成された1種または複数のポリマーから誘導されるのが好ましい合成的に製造された生分解性ポリマーが挙げられる。これらは、生分解性の脂肪族−芳香族コポリマー、少なくとも4個の炭素原子を有するラクチドまたはヒドロキシ酸の少なくとも一方から形成された単位を有する脂肪族ポリエステル、コハク酸および脂肪族ジオールから形成された単位を有するポリエステル、ポリヒドロキシアルカノエート、テレフタレート基の一部が少なくとも1つの脂肪族二酸で置換された改質ポリエチレンテレフタレートを含む。特に有用な生分解性ポリマーとしては、非限定的に、PLA;PLA誘導体;ポリ乳酸/脂肪族ポリエステルコポリマー;ポリグリコール酸ポリマー;ポリカプロラクトン;ポリ乳酸/カプロラクトンコポリマー;グリコリド、ラクチドおよびε−カプロラクトンから形成された単位を有するターポリマー;ポリエステルアミド;ポリヒドロキシブチレート;ポリ(3−ヒドロキシ酪酸);ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート);ポリヒドロキシブチレート−ヒドロキシバレレートコポリマー;ポリコハク酸ブチレン;ポリ(コハク酸ブチレン/アジペート);ポリコハク酸ブチレン−コ−アジペート−コ−テレフタレート;ポリ(カプロラクトン−コハク酸ブチレン);ポリ炭酸エステル;ポリ(コハク酸ブチレン/カーボネート);ポリコハク酸エチレン;ポリコハク酸エチレンアジペートコポリマー;ポリ(アジピン酸ブチレン/テレフタレート);ポリエチレンテレフタレートコポリマー;ポリエチレンテレフタレート−コ−スクシネート;ポリ(アジピン酸テトラメチレン/テレフタレート);ポリセバシン酸エチレン;ポリビニルアルコール;キトサン;キトサン/セルロースポリマー;酢酸セルロース系ポリマー;熱可塑性デンプン系および変性デンプン系ポリマー;他の多糖類およびタンパク質から形成されたポリマー;1,4−ブタンジオール、コハク酸、アジペートおよび乳酸のコポリマーまたはターポリマー;ならびに上記物質の組合せ;を含む、ホモポリマーおよびコポリマーが挙げられる。好ましいものは、ポリマーに応じて、1000Mn以上、より好ましくは約1000Mnから500,000Mn、最も好ましくは約1000Mnから約100,000の数平均分子量を有するポリマーである。
【0015】
生分解性ポリマーは、当技術分野で良く知られており、広く市販されている。良く知られている有用な生分解性ポリマーとしては、非限定的に、デラウェア州WilmingtonのE.I.du Pont de Nemours and Companyから市販されているBIOMAX(登録商標)改質ポリエチレンテレフタレートポリマー;ドイツのBASF社から市販されているECOFLEX(登録商標)石油系脂肪族−芳香族コポリマー;BASF社のポリマーを含むECOVIO(登録商標)ポリ乳酸;イタリアのNovamont社から市販されているMATER−BI(登録商標)デンプン系ポリマー;ミネソタ州MinnetonkaのNatureWorks LLCから市販されているNATUREWORKS(登録商標)PLAポリマー;カナダOntarioのBI−AX International Inc.から市販されているEVLON(登録商標)PLAポリマー;日本の三井化学株式会社から市販されているLACEA(登録商標)PLAポリマー;日本の三菱化学株式会社から市販されているGS PLA(商標)ポリマーおよびBIOGREEN(商標);日本のダイセル化学工業株式会社から市販されているCELGREEN(商標)ポリマー;日本の東洋紡績株式会社から市販されているVYLOECOL(登録商標)ポリ乳酸ポリマー;日本の昭和高分子株式会社から市販されているBIONELLE(商標)ポリマー;日本の株式会社日本触媒から市販されているLUNARE(商標)ポリマー;および日本の株式会社クラレから市販されているMOWIOL(登録商標)およびKURARAY POVAL(登録商標)ポリマーが挙げられる。最も好ましい生分解性ポリマーは、ポリ乳酸ポリマー、および100%生物ベースの材料であるポリマーであり、それらが、石油系資源でなく、毎年再生可能な天然資源から完全に製造されることを意味する。
【0016】
本発明の好ましい実施形態において、生分解ポリマー層は、約15.0g/m
2から60g/m
2、より好ましくは約15.0g/m
2から35.0g/m
2の好ましい基材重量を有する。より詳細には、生分解性ポリマー層は、好ましくは、以下の特性を有するポリ乳酸層を含み、ここで、48ゲージ(ga)、15.5g/m
2(gsm)の層が最も好ましい。
【0018】
生分解性ポリマー層は、1つまたは複数の吸湿防止層に任意選択で接着される。高バリヤー性コーティングを生分解性ポリマーフィルム基材の一面または両面に施用すると、気体および水分(湿気)のバリヤー特性が著しく向上するとともに、このコーティングをヒートシール性材料として使用することによって、優れたヒートシール特性の追加の利点が得られる。生分解性ポリマーフィルムの一面または両面に付着させた防湿コーティングは、毎年再生可能な材料から形成された他のフィルム構造体と比較して、フィルムの変形時に観察されるノイズレベルを有意に低下させ、ペットフード袋などの軟質フィルムパッケージとしての使用のために一層望ましくなる。
【0019】
本明細書に用いられているように、吸湿防止層は、ASTM F1249に記載の手順で測定した場合に、1日当たり約0.5g/645.2cm
2(100in
2)から1日当たり約45g/645.16cm
2(100in
2)、より好ましくは1日当たり約4g/645.16cm
2(100in
2)から1日当たり約35g/645.16cm
2(100in
2)、最も好ましくは1日当たり約10g/645.16cm
2(100in
2)から1日当たり約30g/645.16cm
2(100in
2)の水蒸気透過率(MVTR)を有する熱可塑性ポリマー層を含む。これらのMVTR要件を達成するための最低限のコーティング重量は、インライン加工二軸延伸層に対しては0.07lb/reamであり、通常のオフラインコーティングに対しては1.2lb/reamである。
【0020】
これらの吸湿防止特性を有する好適な吸湿防止層としては、非限定的に、ポリ塩化ビニリデン(PVdC)、ポリビニルアルコール(PVOH)、ポリ酢酸ビニル(PVA)、ポリエチレンおよびポリプロピレンを含むポリオレフィン、ポリアミド、押出可能なグレードのエチレン酢酸ビニル(EVA)、押出可能なグレードのエチレンアクリル酸(EAA)、エチレンビニルアルコールコポリマー(EVOHs)、およびポリアミド/EVOH/ポリアミド共押出物などのそれらの組合せが挙げられる。最も好ましくは、吸湿防止層は、ポリ塩化ビニリデンポリマーを含む。上記パーム値(perm values)を達成する吸湿防止層は、上記パーム値を達成し、少なくとも90%生分解可能な多層フィルムを製造するために、約0.05lb/reamから約5.0lb/ream、より好ましくは約0.07lb/reamから約2.5lb/reamのコーティング重量を有することができる。本発明の最も好ましい実施形態において、吸湿防止層は、以下の特性を有するポリ塩化ビニリデン層を含み、ここで、1.0lb/ream(ppr)のフィルムが最も好ましい。
【0022】
存在する場合、吸湿防止層を、中間接着性プライマー層を介して、生分解性ポリマー層に任意選択で接着することができる。コーティングなどの当技術分野における任意選択の適切な手段によって、接着性プライマー層を生分解性ポリマー層の上にあるいは吸湿防止層の上に直接付着させることができる。接着性プライマー層およびすべての接着性結着層を含む、本明細書に記載されている各接着層は、当業者が決定するであろう任意選択の好適な接着性材料を含むことができる。好適な接着剤としては、非限定的に、ポリウレタン、エポキシ、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリエステル、アクリル、改質ポリオレフィン無水物、およびそれらの混合物が挙げられる。改質ポリオレフィン組成物は、不飽和ポリカルボン酸およびそれらの無水物からなる群から選択される少なくとも1種の官能性成分を有する。これらの不飽和カルボン酸および無水物としては、マレイン酸および無水物、フマル酸および無水物、クロトン酸および無水物、シトラコン酸および無水物、イタコン酸および無水物等が挙げられる。
【0023】
好ましくは、接着性プライマー層は、1または2成分のウレタンである。好ましいウレタン系接着剤は、例えば、ドイツ、デュッセルドルフに本拠地を置くHenkel Technologies社から市販されており、TYCEL(登録商標)の商品名でLiofol Company(Henkel Technologies社の一部門)から市販されているポリウレタンを含む。
【0024】
本明細書に記載されている各接着性プライマー層または接着性結着層は、約0.5lb/reamから約6lb/ream、より好ましくは約1.0lb/reamから約4.0lb/reamの好ましいコーティング重量を有する。より詳細には、接着層は、好ましくは、以下の特性を有し、ここで、1.5lb/ream(ppr)のフィルムが最も好ましい。
【0026】
図1(縮尺どおりに描かれていない)に例示された本発明の一実施形態において、生分解性ブックカバーとして特に有用である多層物品200が提供される。この実施形態において、多層物品200は、一方の面が耐カール性外側保護層260に接着され、他方の面が、任意選択の中間接着性プライマー層220を介して、任意選択の吸湿防止層230の第1の表面に接着された生分解性ポリマー層210を含む。耐カール性外側保護層260は、好ましくは、良好な耐引っ掻き性、耐熱性、耐摩耗性、耐破壊性および表面損傷抵抗性および優れた耐薬品性、ならびに低いカール傾向を有する実質的に透明のポリマー層を含む。外側保護層260は、シリカあるいはポリエチレンワックスまたはポリプロピレンワックスを含むワックスなどの、1種または複数の耐引っ掻き添加剤を含むこともでき、外側保護層260に良好な滑り特性をも付与することができる。特に、耐引っ掻き添加剤を加えると、好ましくは、層260の摩擦係数(COF)を低下させ、COFが約0.5から約0.4の中程度の滑り性または約0.2未満の高滑り性を有するようになる。この調整可能なCOFは、製造者にとってのフィルムの処理能力(スループット)を向上させることになる。耐引っ掻き高滑り添加剤は、好ましくは、外側保護層の約0.5重量%から約5重量%、より好ましくは約1重量%から約3重量%、最も好ましくは約1重量%から約2重量%を構成する。保護層の好ましいポリマー組成を実施例4および5に示す。外側保護層260は、好ましくは、低光沢特性をも有する。このことは、実施例4および5に記載されており、そこに記載されている外側保護層は多層フィルムに艶消面仕上げを与えている。
【0027】
図1に示すように、多層物品200は、接着層240を介して、吸湿防止層230の第2の表面に接着された紙基材250をさらに含む。接着層240および接着性プライマー層220は、既に列記した接着性材料のいずれかを含むことができ、コーティングなどの当技術分野における任意選択の適切な手段によっていずれかの隣接層の表面に付着させ得る。紙基材250は、普通紙および厚紙(例えばボール紙)を含む、本の表紙の用紙として一般に使用される任意の紙をベースとする基材を含むことができる。紙は、それが接触する空気の相対湿度および温度に応じて、周囲の雰囲気から水分(湿気)を迅速に吸収することになることが知られている。紙による水の吸収および放出の結果として、水分含有量の変化に起因する紙の膨張および収縮による望ましくない寸法変化が起こり得る。この問題を解決するためのこれまでの試みは、紙表面を保護するために、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリエステルなどのポリマーフィルムを下部の紙シートに積層することであった。しかし、これらの材料の吸湿特性により、このようなコーティングされた紙構造体がカールする傾向を示していた。これは、コーティングされた紙構造体がブックカバーを含むときに特に問題になる。
【0028】
低カール/耐カール性の外側保護層260および生分解性ポリマー層210の両方を兼ね備える本発明の多層構造体は、この問題を克服する。層を20.32cm×20.32cm(8インチ×8インチ)に垂直交差切断し、分度器でカールの程度を測定することによって、耐カール特性を評価することができる。このカール試験法を用いると、外側保護層260は、約10%から約90%の相対湿度の湿度で、好ましくは、約90度未満、より好ましくは約45度未満、最も好ましくは約30度未満だけカールすることになる。好適な耐カール性材料としては、非限定的に、ポリアミド、ポリエステル、アクリルポリマー、ポリウレタン、エポキシまたはそれらの組合せなどの熱可塑性ポリマーが挙げられる。最も好ましくは、外側保護層は、アクリルポリマー、エポキシ、ポリウレタン、またはそれらの組合せを含む。
【0029】
典型的な用途において、層210、任意選択の層220、層230および層260は、一体的に接着された構造体に成形され、続いて紙の層に熱的に積層され、切断されてブックカバーを形成する。これは、当技術分野で広く知られる方法によって実施される。また、多層構造体200は、ASTM D882試験法によって測定した場合に、約344.7MPa(50,000psi)以下、より好ましくは約275.8MPa(40,000psi)以下、最も好ましくは約206.8MPa(30,000psi)以下の好ましい引張強度を有し;ASTM D1922−06aエルメンドルフ引裂試験法によって測定した場合に、機械方向に、横方向に、または機械方向および横方向の両方において、約20グラム以下、より好ましくは約15グラム以下、最も好ましくは約10グラム以下のエルメンドルフ引裂強度を有する。さらに、生分解性ポリマー層および外側保護層の各々は、ASTM D1922−06aエルメンドルフ引裂試験法によって測定した場合に、機械方向に、横方向に、または機械方向および横方向の両方において、好ましくはそれぞれ、約20グラム以下、より好ましくは約15グラム以下、最も好ましくは約10グラム以下のエルメンドルフ引裂強度を示す。
【0030】
この第2の実施形態において、1種または複数の微粒子充填剤を任意選択で吸湿防止層230または外側保護層260に加えることによって、多層物品200に艶消、サテンまたは高光沢仕上げを与えることも望ましい。例えば、ポリマーをフィルムに成形する前に、シリカまたはアルミナなどの微粒子耐火性充填剤を熱可塑性ポリマーに均一に溶融混合することによって、異なる表面仕上げを有するポリマーシートを製造することが知られている。例えば、耐火性充填剤をポリマー前駆体と混合してあらゆる凝集物を分解し、次いで前駆体を重合する。これらの必要に応じた表面仕上げは、紙基材または厚紙基材に積層する際に、本発明のフィルムを、ブックカバーまたは他の物品としての使用にとって非常に魅力的なものにする。
【0031】
表面仕上げの種類を規定する主要な要因は、フィルムの光沢度である。本発明では、艶消表面仕上げは、ASTM D2457光沢測定法によって測定すると、20以下、より好ましくは約10以下の光沢度を有することになる。本発明では、サテン表面仕上げは、ASTM D2457によって測定すると、約20から約70、より好ましくは約50から約70の光沢度を有することになる。本発明では、高光沢表面仕上げは、ASTM D2457によって測定すると、約70から約180、より好ましくは約100から約180の光沢度を有することになる。
【0032】
充填剤の装填量、充填剤粒径、ならびに吸湿防止層の表面積および密度を含み、光沢度に影響を与えるいくつかの要因が存在する。典型的には、2%の装填量によってサテン仕上げが得られることになるが、艶消仕上げを得ることもできる。吸湿防止層が厚い場合(例えば、コーティング重量が2.0lb/ream以上である場合)、および充填剤が防湿性ポリマーより低い密度を有する場合(例えば、シリカ充填剤の密度は、通常1gm/cm
3未満であり;防湿性ポリマーは、典型的には、1gm/cm
3を超える密度を有する)、充填剤の大部分は、バリヤー層の加熱および乾燥中に上面に移動することができる。これによって、バリヤー層表面の充填剤濃度が高くなり、艶消仕上げが形成されることになる。
【0033】
本発明の目的では、耐火性充填剤は、高温、すなわち吸湿防止層を形成するポリマーの融点と少なくとも同程度の高い温度に曝されても、その物理的形状および化学特性を保持する能力を有する材料である。好適な充填剤としては、粒状性を有するものを含む無機充填剤、ならびにそれらの混合物が挙げられる。好ましい充填剤としては、ガラス、シリカガラス、セラミック、石綿、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、石膏、ならびに他の無機および炭素繊維が挙げられる。有用な充填剤としては、また、珪灰石、絹雲母、石綿、タルク、雲母、クレー、カオリン、ベントナイト、およびケイ酸アルミナを含むケイ酸塩、ならびにチタン酸カリウムが挙げられる。他の顆粒充填剤としては、アルミナ、シリカ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、チタニア、酸化亜鉛などの金属酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムおよびドロマイトなどの炭酸塩;硫酸カルシウムおよび硫酸バリウムを含む硫酸塩;窒化ホウ素、ガラスビーズ、炭化ケイ素、ならびにここに具体的に示されていない他の材料が挙げられる。これらの充填剤は、中空であってもよく、例えば、ガラスマイクロスフェア(ガラス微球体)、シランバルーン、炭素バルーンおよび中空ガラス繊維であってもよい。好ましい耐火性充填剤は、耐火性酸化物、最も好ましくは耐火性金属酸化物である。より詳細には、好ましい充填剤としては、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、チタニア、酸化クロム、酸化ゲルマニウムおよび他の混合金属酸化物、カオリン、焼成カオリン鉱物、葉ろう石(ピロフィライト)、焼成葉ろう石、モンモリロナイト、焼成モンモリロナイト、雲母およびそれらの混合物が挙げられ、シリカが最も好ましい充填剤である。
【0034】
ASTM D2457光沢測定法によって測定した場合の艶消面を得るために、耐火性充填剤は、任意選択の吸湿防止層230または外側保護層260またはその両方に、層の重量に基づき、約2重量パーセントから約30重量パーセント、より好ましくは約5重量パーセントから約20重量パーセントの量で存在していてもよい。ASTM D2457によって測定した場合のサテン面を得るために、耐火性充填剤は、好ましくは、層230および/または層260に、層の重量に基づき、約2重量パーセントから約30重量パーセント、より好ましくは約5重量パーセントから約15重量パーセントの量で存在する。ASTM D2457によって測定した場合の光沢面を得るために、耐火性充填剤は、好ましくは、層230および/または層260に、層の重量に基づき、約1重量パーセントから約10重量パーセント、より好ましくは約1重量パーセントから約3重量パーセントの量で存在する。以上に説明したように、充填剤の装填量、充填剤粒径、ならびに吸湿防止層の表面積および密度を含むいくつかの要因が光沢度に影響を与える。よって、これらの範囲は、適正に重複しており、異なる様々な表面仕上げを達成するための手段が当業者によって容易に決定されるであろう。また、当技術分野で良く知られているように、少量の充填剤を使用して、光沢度に影響を与えずに、表面損傷抵抗性および耐引っ掻き性を向上させることができる。
【0035】
耐火性充填剤は、好ましくは、約0.5μmから約10μm、より好ましくは約1.0μmから約3.0μmの範囲の平均粒径を有する。特に好ましい実施形態において、充填剤の粒径は、耐火性充填剤の0.1%から約25%、好ましくは約10%から約20%が約4μmから約5μmの範囲の平均粒径を有し、耐火性充填剤の残りが約1.5μmから約2μmの範囲の平均粒径を有する、二峰性分布を有する。充填剤をシラン、チタン酸塩または別のカップリング剤で処理することができる。
【0036】
図2(縮尺どおりに描かれていない)に例示された本発明の別の実施形態において、生分解性包装材料として特に有用である多層物品300が提供される。この実施形態において、多層物品300は、任意選択の中間接着性プライマー層320を介して、吸湿防止層330の第1の表面に接着された生分解性ポリマー層310を含み、この吸湿防止層330は、ナノコンポジットを含む。本明細書に用いられているように、ナノコンポジットは、ナノクレーとしても知られるナノメートルスケールのクレーと混合された熱可塑性ポリマーを含む。ナノコンポジットおよびそれらを形成するための方法は、当技術分野で良く知られている。ナノクレーは、モンモリロナイト、ピロフィライト、ヘクトライト、バーミキュライト、ベイジライト、サポナイト、ノントロナイト、フルオロマイカまたはそれらの組合せなどの材料を含むことができる。熱可塑性ポリマー形成層330は、層230について以上に指定した材料のいずれかを含むことができるが、好ましくは、ヒートシール性ポリオレフィンなどのヒートシール性ポリマー、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデン、アクリルポリマー、押出可能なグレードのエチレン酢酸ビニル(EVA)、押出可能なグレードのエチレンアクリル酸(EAA)、およびそれらの組合せを含む。本発明の好ましい実施形態において、前記クレーは、前記ナノコンポジットの約0.5から約5.0重量パーセント、より好ましくは前記ナノコンポジットの約3.0から約5.0重量パーセントを構成する。熱可塑性ポリマーは、好ましくは、前記ナノコンポジットの約95.0から約99.5重量パーセント、より好ましくは前記ナノコンポジットの約95.0から約97.0重量パーセントを構成する。
【0037】
接着性プライマー層420を介して吸湿防止層430に接着された生分解性ポリマー層410を含む生分解性パッケージ400の概略図を
図3(縮尺どおりに描かれていない)に例示する。図に示されるように、パッケージは、好ましくは、吸湿防止層430をそれ自体の上に重ね、少なくとも部分的にそれ自体にシールして、層430が前記パッケージの最内層を構成するように、製品あるいはペットフードなどの製品470を収容するのに好適な筐体を形成することによって形成される。パッケージ400を、パッケージが空気またはヘリウムなどの気体製品を収容するバルーンに成形することもできる。バルーンは、当技術分野における従来の手段によって形成されてもよく、層430をそれ自体の上に重ねることを必ずしも必要としない。パッケージ400の1つの製造方法において、単一の多層フィルムを使用し、フィルムをそれ自体の上に折り合わせて、開放上端および開放側端を有する重なり部分を形成した後、重なり部分の上端および側端を典型的には熱および圧力でそれら自体にシールして、パッケージを形成する。このような技術は、当業者に通常理解されている。別法において、好ましくは類似または同一の構造の2つの多層複合体を使用し、層430が前記パッケージの最内層を構成するように重ねる。重複する層を互いにヒートシールするのが最も好ましいが、当業者が通常理解するように、ポリウレタンなどの接着性材料、感圧接着剤(PSAs)およびエポキシ等による任意選択の別法を用いて層を接着することができることを理解されたい。
【0038】
最も好ましくは、吸湿防止層430は、層430の重複部分の間に接着材料を使用することなく、それ自体にヒートシールすることを可能にするヒートシール性ポリマーを含む。ヒートシール法は、フィルム表面間に強い層間結合を形成する。ヒートシール技術は、当技術分野で良く知られており、熱を加えて、ポリマー層の部分を融解させ、互いに融着させることを含む。ヒートシール温度は、特定の吸湿防止層の特性に応じて異なることになる。しかしながら、すべてのポリマーフィルムがヒートシール性を有するわけではない。概して、ヒートシール温度は、好ましくは、約150℃から約400℃、より好ましくは約250℃から約350℃の範囲であり、ヒートシール圧は、約0.069MPa(10psi)から約0.69MPa(100psi)、より好ましくは約0.28MPa(40psi)から約0.69MPa(100psi)の範囲である。
【0039】
本発明のパッケージにおいて、吸湿防止層430は、ナノメートルスケールのクレーを含むナノコンポジットを含んでいても、含んでいなくてもよい。加えて、任意選択とされる層を含む、または含まない、本明細書に記載の多層構造体200または300を利用して、生分解性パッケージをこのように形成できることも理解されたい。フィルムは、層上または層間に印刷標示をさらに有することができる。当該印刷は、典型的には、構造体の内部表面上に存在し、施用方法は当技術分野で良く知られている。本明細書に用いられているように、印刷標示は、典型的には、生分解性ポリマー層上に施用されることになる。
【0040】
上記いずれかの添加剤に加えて、本明細書に記載の各生分解性ポリマー層、吸湿防止層、接着層および他のポリマー層は、その使用が当業者に良く知られている1種または複数の従来の添加剤を任意選択で含むこともできる。組成物の加工を向上させるとともに、それらから形成される製造物または物品を向上させる上でこれらの添加剤の使用が望まれ得る。それらの例としては、酸化および熱安定剤、潤滑剤、離型剤、難燃剤、酸化阻害剤、酸化掃去剤(oxidation scavengers)、染料、顔料および他の着色剤、紫外線吸収剤および安定剤、微粒子または繊維充填剤を含む有機または無機充填剤、補強剤、成核剤、可塑剤、ならびに当技術分野で知られている他の従来の添加剤が挙げられる。それらを、例えば、組成物全体の約10重量%までの量で使用することができる。代表的な紫外線安定剤としては、様々な置換レゾルシノール、サリチル酸塩、ベンゾトリアゾールおよびベンゾフェノン等が挙げられる。好適な潤滑剤および離型剤としては、ステアリン酸、ステアリルアルコールおよびステアラミドが挙げられる。代表的な難燃剤としては、デカブロモジフェニルエーテル等を含む有機ハロゲン化化合物、ならびに無機化合物が挙げられる。染料および顔料を含む好適な着色剤としては、硫化カドミウム、セレン化カドミウム、二酸化チタン、フタロシアニン、ウルトラマリンブルー、ニグロシンおよびカーボンブラック等が挙げられる。代表的な酸化および熱安定剤としては、ハロゲン化ナトリウム、ハロゲン化カリウム、ハロゲン化リチウムなどの周期律表の第I族元素金属のハロゲン化物;ならびにハロゲン化銅;さらに塩化物、臭化物、ヨウ化物が挙げられる。また、ヒンダードフェノール、ヒドロキノン、芳香族アミン、ならびに上記グループの置換された構成要素およびそれらの組合せが挙げられる。代表的な可塑剤としては、カプロラクタムおよびラウリルラクタムなどのラクタム、o,p−トルエンスルホンアミドおよびN−エチル,N−ブチルベニルスルホンアミドなどのスルホンアミド、および上記のいずれかの組合せ、ならびに当技術分野で知られている他の可塑剤が挙げられる。
【0041】
多層フィルム構造体の各層が異なる厚さを有していてもよいが、生分解性ポリマー層の厚さは、好ましくは、約10μmから約50μm、より好ましくは約12μmから約25μm、最も好ましくは約12μmから約15μmである。吸湿防止層の厚さは、好ましくは非常に薄く、好ましくは約0.03μmから約6μm、より好ましくは約0.3μmから約3.0μm、より好ましくは約0.3μmから約1.5μmである。各実施形態において、選択された防湿性ポリマーの吸湿防止層は、本明細書に特定されるパーム値を達成しながら、好ましくは少なくとも約90%生分解性の多層構造体を製造するのに十分な可能な限り最小の厚さを有することが最も好ましい。従って、たいていの実施形態において、吸湿防止層は、約4μm以下の厚さを有することになるが、典型的には、多層フィルム全体の厚さの少なくとも約0.6%を構成することになる。各接着性プライマー層および接着性結着層の厚さは、好ましくは、約1μmから約30μm、より好ましくは約3μmから約20μm、最も好ましくは約5μmから約15μmである。耐カール性外側保護層の厚さは、好ましくは、約10μmから約50μm、より好ましくは約12μmから約25μm、最も好ましくは約12μmから約15μmである。紙基材は、特定の用途に必要な厚さに応じて広範な厚さを有することができる。本発明の多層フィルム全体(任意選択の紙基材を除く)は、約400μmから約650μm、より好ましくは約425μmから約625μm、最も好ましくは約450μmから約600μmの好ましい全厚を有する。これらの厚さが好ましいが、特定の必要性を満たしながら、本発明の範囲に収まる他の厚さのフィルムが製造されてもよいことが理解されるべきである。
【0042】
コーティング、押出/共押出、積層(ラミネーション)、グラビアコーティング、押出コーティングおよび押出ラミネーション技術を含む多層フィルムの製造に有用な従来の方法によって、本発明の多層フィルムを製造することができる。典型的な共押出法において、個々の層のポリマー材料が、同様の数の押出機の送り込みホッパーに供給され、各押出機が、1つまたは複数の層の材料を処理する。個々の押出機からの溶融および可塑化流が、マルチマニホールドダイに直接供給され、次いで層状構造体に並列されて統合されるか、または混合ブロックで層状構造体に統合され、次いでシングルマニホールドまたはマルチマニホールド共押出ダイに供給される。これらの層は、ポリマー材料の単一の多層フィルムとしてダイから排出される。ダイから排出された後、フィルムは、第1の制御された温度キャスティングロール上にキャストされ、第1のロールの回りを通過し、次いで第2の制御された温度ロール上に達する。制御された温度ロールは、フィルムがダイから排出された後にフィルムの冷却速度を主として制御する。さらなるロールを採用してもよい。別の方法において、フィルム形成装置は、当技術分野でインフレーションフィルム(blown film)装置と称されるものであり、この装置はバブルインフレーションフィルム(bubble blown film)用マルチマニホールド円形ダイヘッドを含み、これを通じて可塑化フィルム組成物が送り込まれ、フィルムバブルを形成し、このフィルムバブルが最終的に崩壊してフィルムに成形され得る。フィルムおよびシート積層体を形成するための共押出法は、広く知られている。典型的な共押出技術は、米国特許第5,139,878号明細書および米国特許第4,677,017号明細書に記載されている。共押出フィルムの1つの利点は、フィルム層の各々の溶融層、ならびに任意の他のフィルム層を、一体のフィルム構造体に統合することによって、1つのプロセス工程で多層フィルムを形成することである。
【0043】
あるいは、最初に個々の層を個別の層として形成し、次いで中間接着層を用いて、または用いずに熱および圧力下で互いに積層することができる。積層(ラミネーション)技術は、当技術分野で良く知られている。典型的には、積層は、複数の層を一体のフィルムに統合させるのに十分な熱および圧力の条件下で個々の層を互いの上に置く(重ねる)ことによって実施される。典型的には、複数の層が互いの上に置かれ(重ねられ)、当技術分野で良く知られている技術によって、この組合せたものを一対の加熱積層ローラのニップに通す。積層加熱を約37.78℃(100°F)から約148.9℃(300°F)、好ましくは約65.56℃(150°F)から約121.1℃(250°F)、より好ましくは約65.56℃(150°F)から約93.33℃(200°F)の範囲の温度、約137.9kPa(20psi)から約551.6kPa(80psi)、より好ましくは約275.8kPa(40psi)から約413.7kPa(60psi)の範囲の圧力で、約10秒間から約3分間、好ましくは約20秒間から約1分間にわたって行うことができる。
【0044】
従来のコーティング技術、または押出コーティングなどの他の非押出堆積法も好適である。押出コーティングは、約4μm以下の厚さを有する吸湿防止層を生分解性ポリマー層上に付着させるための好ましい方法である。これは、このような吸湿防止層が、その厚さのフィルムに効果的に押し出すことができないほど薄いためである。押出コーティングは、溶融ポリマーを固体支持体上に付着させ、冷却シリンダー上に通し、その接触部でポリマーが支持体に接着する方法である。
【0045】
層間接着を向上させるために、生分解性ポリマー層および/または吸湿防止層および/または他の層にコロナ処理を任意選択で施すことができる。コロナ処理は、隣接層に接着する能力を向上させる電荷を層の表面に与えるコロナ放電工程に材料の層を通す方法である。吸湿防止層上で実施する場合は、好ましくは、生分解性ポリマー層に接着した後にコロナ処理を実施する。好ましくは、1つまたは複数の層に約0.5から約3kVA−分/m
2のコロナ処理を施す。より好ましくは、コロナ処理レベルは、約1.7kVA−分/m
2である。好適なコロナ処理装置は、ウィスコンシン州Menomonee FallsのEnercon Industries Corp.および英国Thame OxonのSherman Treaters Ltdから入手可能である。好ましくは、コロナ処理された1つまたは複数の層の表面ダインレベルは、36ダインを超え、より好ましくは42ダインを超え、最も好ましくは50ダインを超える。
【0046】
本発明の好ましい実施形態において、吸湿防止層および/または生分解性ポリマー層は、一軸または二軸延伸される。最も好ましくは、吸湿防止層および生分解性ポリマー層の両方が二軸延伸フィルムである。好ましくは、本発明において、吸湿防止層および/または生分解性ポリマー層は、その機械方向(縦方向)および横方向の各々において、1.5:1から5:1の延伸率で二軸延伸されたフィルムである。本発明の目的では、延伸率という用語は、延伸方向の寸法の増加を示すものである。好ましくは、吸湿防止層および生分解性ポリマー層の両方が同時に二軸延伸される。例えば、インラインコーティング法において、吸湿防止層および生分解性ポリマー層が最初に互いに接着され、次いでこの複合した可塑化層が、機械方向および横方向の両方において同時に共に二軸延伸される。これにより、強度および靱性特性が著しく向上する。オフラインコーティング法において、生分解性ポリマー層は、典型的には、(例えば、押出コーティングによる)吸湿防止層の施用前に二軸延伸される。この場合、生分解性ポリマー層のみが延伸される。
【0047】
本発明の多層フィルムの水蒸気透過率(MVTR)を、ASTM F1249に記載の手順を介して測定することができる。好ましい実施形態において、本発明による多層フィルム全体は、例えば、ミネソタ州ミネアポリスのMocon社から入手可能な水蒸気透過率測定装置によって測定した場合に、37.8℃および100%相対湿度(RH)で全フィルムが約310g/m
2/日(約20g/100in
2/日)以下、好ましくは全フィルムが約62から約310g/m
2/日(約4から約20g/100in
2/日)、より好ましくは全フィルムが約155から約310g/m
2/日(約10から約20g/100in
2/日)のMVTRを有する。
【0048】
本発明の様々な実施形態に鑑みて、最も好ましい物品構造体としては、a)高滑り性艶消仕上げ保護層/PLAフィルム/接着剤/PVdC/接着剤/紙、または高滑り性艶消仕上げ保護層/PLAフィルム/接着剤/紙を含むブックカバー;およびb)二軸延伸PLA/任意選択の印刷標示/接着剤/PVdCまたはPVdCナノコンポジットを含む包装フィルム;が挙げられる。本発明の多層フィルムは、本明細書に記載の構造体の形成に特に有用であるが、他の生分解性物品をそれらから製造することができ、それらの使用を限定することを意図しない。
【0049】
以下の非限定的な実施例は、本発明を例示する役割を果たす。
【実施例】
【0050】
実施例1〜3および比較例1〜3
本発明の実施例1〜3および比較例1〜3では、PVdCコーティング(ケンタッキー州OwensboroのOwensboro Specialty Polymers,LLCから市販されているDARAN(登録商標)8730)を、CAPRAN(登録商標)EMBLEM(商標)2500ポリアミドフィルム(ニュージャージ州MorristownのHoneywell International Incから市販されている)およびEVLON(登録商標)25ミクロン二軸延伸PLAフィルム(BI−AX International,Incから市販されている)の両方に、0.13lb/ream、1.7lb/reamおよび2.4lb/reamの乾燥コーティング重量で付着させ、2週間硬化させた。MVTRデータをASTM E96 50%RHウェットカップ法に基づいて記録し、対照サンプルと比較した。試験結果の概要を以下の表1に示す。
【0051】
【表4】
【0052】
上記結果により、本発明の多層生分解性フィルムは、1.7ppr以上の吸湿防止層(すなわちPVdC)を施用すると、水分透過性が実質的に減少したことが示される。発明のフィルムは、ナイロン/PVdCフィルムと類似の性能を達成するが、生分解性という利点が付加されている。
【0053】
実施例4〜5および比較例4〜5
21.6%の全固体含有量を有し、本明細書では「溶液A」と特定される溶液から、艶消外側保護層を形成するための組成物を製造した。溶液Aは、5.9%のUCAR(登録商標)VAGHビニル樹脂粉末(ミシガン州ミッドランドのDow Chemical Companyから市販されている高分子量ヒドロキシル官能性の部分的に加水分解された塩化ビニル/酢酸ビニル樹脂);3.0%のRESIMENE(登録商標)797(ミズーリ州セントルイスのMonsanto Chemical Companyから市販されているメチロール化メラミンホルムアルデヒド樹脂);4.9%のNACURE(登録商標)155(コネチカット州NorwalkのKing Industries,Incから市販されている架橋触媒);9.6%のBECKOSOL(登録商標)12−093アルキド樹脂(ノースカロライナ州DurhamのRichold,Incから市販されている);2.9%のSYLOID(登録商標)378シリカ(W.R.Grace&Co.から市販されている);2.0%のSYLYSIA(登録商標)310シリカ(日本の有限会社Y.K.F.コーポレーションから市販されている);1.0%のACRYLOID(登録商標)B67アクリル樹脂(ペンシルベニア州フィラデルフィアのRohm and Haas Companyから市販されている);および酢酸プロピルとトルエンの69.5%溶媒混合物;の混合物で構成されていた。
【0054】
DARAN(登録商標)8730を0.13lb/reamで25.4μm(1mil)のEVLON(登録商標)PLAフィルム上に付着させて、PLAの水蒸気透過率を60ga(ゲージ)のCAPRAN(登録商標)EMBLEM(商標)1500と同程度まで低下させた。次いで、148.9℃(300°F)でオーブン乾燥しながら、従来のグラビアコーティング法を用いて、溶液AをこのPVdCがコーティングされた25.4μm(1mil)のEVLON(登録商標)PLA、および手を加えていないCAPRAN(登録商標)EMBLEM(商標)1500の両方に、0.5lb/reamおよび1.0lb/reamの乾燥コーティング重量で付着させた。接着性、ASTM D2457の60°光沢度、耐熱性および耐メチルエチルケトン(MEK)性を記録して、フィルム性能を測定した。それらの結果の概要を以下の表2に示す。得られたフィルムは、高い耐引っ掻き性および高い滑り特性をも達成した。
【0055】
【表5】
【0056】
本発明を好ましい実施形態に関して詳細に示し、説明したが、本発明の主旨および範囲から逸脱することなく様々な変更および修正を加えることができることを当業者なら容易に理解することができる。請求項は、開示された実施形態、上述の代替物およびそれらの同等物すべてを包括すると解釈されることを意図する。