(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の導電パターン層の前記上穴用開口部は、前記ロール方向と平行な方向に長軸を有する長円形又は楕円形であり、前記第2の導電パターン層の前記下穴用開口部は、正円形、又は前記ロール方向と平行な方向に長軸と有する長円形若しくは楕円形であることを特徴とする請求項1に記載の多層フレキシブルプリント配線板の製造方法。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化および高機能化がますます進展している。それにつれて、プリント配線板及びプリント配線板に搭載される部品に対する、高密度化の要求が高まっている。特に、携帯機器に使用されるパッケージ部品については、ピン数が増加するとともに、ピン間の狭ピッチ化が進んでいる。一方、プリント配線板に対しては、パッケージ部品を搭載するための配線ルール及び携帯機器への組み込みを考慮して、薄型化が要求されている。プリント配線板を薄型化するために、ポリイミドフィルム等の可撓性絶縁ベース材を出発材料としたフレキシブルプリント配線板を採用することが考えられる。
【0003】
また、従来、電子部品等を高密度に実装するのに有利であるビルドアップ型多層フレキシブルプリント配線板が知られている(特許文献1の
図15等を参照)。このビルドアップ型多層フレキシブルプリント配線板は、両面フレキシブルプリント配線板又は多層フレキシブルプリント配線板をコア基板(内層)として、このコア基板の両面又は片面に1〜2層程度のビルドアップ層(外層)を形成し、それにより、フレキシブルプリント配線板の高密度化を図ったものである。
【0004】
上述のように、ビルドアップ型多層フレキシブルプリント配線板は、プリント配線板の薄型化および高密度化の点で有利である。しかしながら、その構造上、内層にもめっき層を厚く形成する必要があることから、外層の配線を微細化することは困難である。そのため、チップサイズパッケージ(CSP:Chip Size Package)のような多ピン且つ狭ピッチのパッケージ部品を搭載することは困難であった。
【0005】
この問題を解決するため、いわゆるステップビア構造を有するビルドアップ型多層フレキシブルプリント配線板が知られている(特許文献1の
図5及び
図9参照)。このプリント配線板の製造方法の概略は次の通りである。まず、内層となるコア基板上に微細な配線を形成し、その後、コア基板に外層となるビルドアップ層を積層する。そして、レーザ加工により、大径の上穴と小径の下穴から構成される階段状のステップビアホール(二重穴)を形成する(特許文献1の
図9(14)参照)。その後、このステップビアホールの内壁(底面及び側面)にめっき処理を施すことにより、層間導電路として機能するステップビアを形成する(特許文献1の
図5及び
図9(15)参照)。ステップビア構造を採用することにより、外層の配線を微細化することが可能となるため、多ピン且つ狭ピッチのパッケージ部品の搭載に有利な多層フレキシブルプリント配線板を得ることができる。
【0006】
次に、
図7を用いて、従来のステップビア構造を有するビルドアップ型多層フレキシブルプリント配線板の構造及び問題点について説明する。
図7(1)は多層フレキシブルプリント配線板の上面図であり、
図7(2)は
図7(1)のA−A’線に沿う断面図であり、
図7(3)は
図7(1)のB−B’線に沿う断面図である。
【0007】
図7(1)、(2)及び(3)からわかるように、ステップビア51A、51B、51C及び51Dは、円形の上部層間導電路51aと円形の下部層間導電路51bを有する。上部層間導電路51aは、多層フレキシブルプリント配線板の表面のランド部52と、内層のランド部53とを電気的に接続する。一方、下部層間導電路51bは、多層フレキシブルプリント配線板の裏面のランド部54と、内層のランド部53とを電気的に接続する。
【0008】
従来のステップビアは、
図7(1)に示すステップビア51A,51B,51Dのように、上部層間導電路51a及び下部層間導電路51bが同心円状に形成されている。
【0009】
上記のステップビア構造を有するビルドアップ型多層フレキシブルプリント配線板は、例えば500μmピッチで300ピン前後のCSPを実装することは可能である。しかしながら、例えばセンサーモジュールに代表されるように、実装部品の多ピン化及び狭ピッチ化はますます進展しており、実装部品のピン数は数百から、多いものでは数千にまで増加している。部品を接合するためのランド部のピッチは実装部品の搭載パッドのピッチと同じ寸法であるから、実装部品の狭ピッチ化に合わせて、ランド部のピッチを狭くする必要がある。さらに、多層フレキシブルプリント配線板には、膨大なピンと接合されたランド部と所定のコネクタ部とを電気的に接続することが要求される。そのため、
図7(2)からわかるように、ステップビア51A及び51B間(ステップビア51C及び51D間)には多数の微細な配線55,55,・・・が設けられている。
【0010】
例えば、ステップビアのピッチが400μm、微細な配線が形成される層(内層)におけるランド部の間隔が200μmの場合、
図7(2)に示すように内層のランド部53,53間に6本の配線55を配置した場合、配線55の配線ピッチは約30μmとなる。このように、配線55,55,・・・の設けられる領域は、多層フレキシブルプリント配線板の中でも最も小さいピッチを要求される領域である。ステップビア間に微細な配線を設けるためには、ランド部だけでなくステップビアホールの径についても、50〜100μm程度まで小さくする必要がある。
【0011】
従来、ステップビアホールを小径化しようとした場合、ロール状の可撓性ベース材料を用いることに起因してステップビアホールの上穴と下穴の位置合わせが困難になるという問題や、小径ビアホールである下穴へのめっき付きまわりが悪化する問題があった。次に、これらの問題について詳しく説明する。
【0012】
まず、ステップビアホールの上穴と下穴の位置ズレの問題について説明する。多層フレキシブルプリント配線板を製造する際、出発材料として可撓性絶縁ベース材の片面若しくは両面に銅箔が設けられた可撓性の銅張積層板が用いられる。この銅張積層板は長尺で、ロール状に巻き取られている。この長尺の銅張積層板を巻き出しロールにより巻き出しながら、シート領域と呼ばれる所定の領域ごとに露光等のプロセスを行う。そして、あるシート領域について処理を終えると銅張積層板をロール方向(搬送方向)に搬送し、次のシート領域について処理を行う。これを繰り返して、銅張積層板の表面の全てのシート領域について処理を終えると、次に、銅張積層板をひっくり返し、裏面について同様にシート領域単位で処理を行う。このように、多層フレキシブルプリント配線板の製造においては、可撓性の銅張積層板を巻き出し・巻き取りながら使用する。このため、ロール方向に銅張積層板の伸縮が生じ、露光時の位置合わせが困難になっている。
【0013】
図8を参照して、より具体的に説明する。
図8(1)及び(2)に示すように、長尺の両面銅張積層板61は、一端を巻き出しロール62により巻き取られ、他端を巻き取りロール63に巻き取られている。この両面銅張積層板61のシート領域64を単位として露光等の処理が行われる。あるシート領域64に対して処理が終了すると、巻き出しロール62及び巻き取りロール63が回転し、シート領域64をロール方向に搬送し、隣接する次のシート領域に対して処理を施す。このことからわかるように、巻き出しロール62から巻き出された両面銅張積層板61は、ロール方向に伸縮が生じやすい。この伸縮が問題になる工程として、フォトファブリケーション手法により、両面銅張積層板61の表面及び裏面にコンフォーマルマスクを形成する場合を考える。このコンフォーマルマスクは、コンフォーマルレーザ加工法を用いてステップビアホールを形成するために用いられるものである。
図8(2)に示すように、シート領域64の表面にレジスト層(図示せず)を形成した後、シート領域64上のアライメントマークM1と露光用のガラスマスクに形成されたアライメントマークM2を用いて位置合わせを行う。この位置合わせの後、露光及び現像を行い、所定のパターンに加工されたレジスト層が形成される。しかし、たとえ高精度の位置合わせが可能な装置を用いてアライメントマークM1,M2の位置合わせを精密に行ったとしても、両面銅張積層板61がロール方向に伸縮することに起因する位置ズレを十分に防止することは困難である。ステップビアホール形成用のコンフォーマルマスクを形成するために、両面銅張積層板61の両面にレジスト層を形成する場合、位置ズレの回避は特に困難である。なぜなら、それぞれ所定のパターンに加工されたレジスト層を両面銅張積層板61の両面に形成するには、通常、まず両面銅張積層板61の表面における複数のシート領域に順次レジスト層を形成し、その後、巻き取りロールに巻き取られた両面銅張積層板61をひっくり返して、別のガラスマスクを用いて裏面の露光をシート領域ごとに順次行い、裏面のシート領域にレジスト層を形成する。この際、表面を露光するときの両面銅張積層板61の伸縮度合いと、裏面を露光するときの両面銅張積層板61の伸縮度合いを完全に一致させることは実際上極めて困難である。
【0014】
また、上記の露光プロセスにおいては、
図8(1)からわかるように、1回の露光により露光される両面銅張積層板61上の露光エリア66のロール方向の長さは、両面銅張積層板61の幅に対して例えば約1.5〜2倍にすることが好ましい。これにより、1つのシート領域64から取れる製品(多層フレキシブルプリント配線板)65の数を増やし、生産性を向上させることができる。しかし、露光エリア66を両面銅張積層板61のロール方向に大きくするにつれて、露光光の平行度を確保するのが難しくなるほか、露光エリア66の
図8(1)中左右の端にいくほど両面銅張積層板61の伸縮に伴う位置ズレが大きくなる。即ち、生産性を向上させるために露光エリア66を両面銅張積層板61のロール方向に対して広げると、両面銅張積層板61の伸縮が位置合わせ精度に与える影響が大きくなってしまう。
【0015】
上記の理由により、
図7(1)及び(3)に示すステップビア51Cの下部層間導電路51bは、ロール方向(図中上下方向)に対して許容量以上の位置ズレを生じている。このような大きな位置ズレが発生する場合、ステップビアホールを形成するときにコンフォーマルマスクが適正に機能せず、ステップビアホールの内壁に微小な凹みやえぐれ等が発生する。このため、ステップビアホールの内壁にめっき層を形成する際、めっき液等の更新性が悪いために内壁の凹み部分にめっき層が形成されず、その結果、
図7(3)に示すようなボイド56が発生する。このようなボイド56が発生するとめっき層が破断し易くなり、層間導電路としてのステップビアの信頼性が低下する虞がある。
【0016】
なお、
図7(1)ではステップビア51Cにのみ位置ズレが生じているが、実際には、コンフォーマルレーザ加工法などを用いてステップビアホールを形成する場合、可撓性のベース材料がロール方向に伸縮することにより、ステップビア51Cの近傍のステップビア(例えばステップビア51A,51B,51D)にも位置ズレが生じる可能性が高い。
【0017】
高密度実装に対応するためには、上述のようにステップビアホールの径を100μm以下にすることが必要となる。しかし、この程度までステップビアホールの小径化が進むと、わずか20〜30μm程度の位置ズレが発生するだけで
図7のステップビア51Cのような状態になってしまう。
【0018】
次に、ステップビアホールを小径化した場合における、めっき付きまわり形状の悪化について説明する。ステップビアホールの内壁にめっき処理を施し、層間導電路であるステップビアを形成する際、ステップビアホールの上穴の径が小さい(例えばφ100μm以下)場合には、めっき前処理における洗浄液や、めっき処理におけるめっき液等の更新性が悪い。その結果、
図7(2)及び(3)のステップビア51Aの下部層間導電路51bに示すように、めっきの付きまわり不良が発生することがある。より具体的には、ステップビアホール内壁に形成されるめっき層の厚みの設計上の下限値を10μmとしたとき、この下限値の1/2以下の厚みになる箇所が発生する場合がある。このような場合、温度サイクル等の熱衝撃によりめっき層が破断するおそれがあり、ステップビアの層間導電路としての信頼性を確保することができない。
【0019】
従来、2層間を電気的に接続する層間接続部に関して、長円形状等の非正円形を有するブラインドビアホール及びスルーホールが知られている(特許文献2、3及び4参照)。しかしながら、これらの文献はいずれも、ステップビア構造を対象としたものではなく、小径のステップビアホールを形成する際における、可撓性のベース材料の伸縮に起因した位置合わせ精度の低下という課題及びこれに対する解決手段を何ら開示していない。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る多層フレキシブルプリント配線板について説明する。
【0030】
なお、各図において同等の機能を有する構成要素には同一の符号を付し、同一符号の構成要素の詳しい説明は繰り返さない。また、図面は模式的なものであり、実施形態に係る特徴部分を中心に示すものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。
【0031】
まず、
図1乃至
図3を参照して、本実施形態に係るステップビア構造を有する多層フレキシブルプリント配線板の製造方法を説明する。
【0032】
(1)まず、可撓性絶縁ベース材11(例えば厚さ25μmのポリイミドフィルム)の両面に、それぞれ厚さ1μmの銅箔12および銅箔13を有する両面銅張積層板14を準備する。この両面銅張積層板14は巻き出しロールに巻かれたロール状のものである。
図1(1)中の面銅張積層板14は、ロール状の両面銅張積層板14の一端を巻き出しロールからロール方向に引き出した両面銅張積層板14の一部を示す断面図である。
図1(1)中、ロール方向は紙面垂直方向であり、水平方向がロール材料の幅方向である。
【0033】
(2)次に、両面銅張積層板14の銅箔12上のシート領域にレジスト層(図示せず)を形成する。このレジスト層の厚みは形成する配線層の厚みの1.2〜2倍程度が好ましい。なぜなら、レジスト層の厚みが配線層の厚みの1.2倍より薄い場合は、セミアディティブ工法によりめっきを行った際に、めっき厚みのばらつきにより、めっき皮膜がレジスト層の厚み以上に成長し、その結果、配線不良となる場合があるためである。一方、レジスト層の厚みが配線層の厚みの2倍より厚い場合は、微細な配線を形成することが困難になり、やはり配線不良となる場合がある。よって、ここでは、設計上の配線の厚みを10μmとし、レジスト層の厚みを15μmとした。
【0034】
(3)次に、前工程において形成された銅箔12上のレジスト層に対して露光および現像処理を行い、レジスト層を所定のパターンにパターニングする。これにより、
図1(1)に示すように、両面銅張積層板14の銅箔12上にめっきレジスト層15Aを形成する。このめっきレジスト層15Aは、後述するように、セミアディティブ工法によって所望の導電パターン層を形成するために用いられる。
【0035】
その後、両面銅張積層板14をロール方向に搬送しつつ、シート領域ごとに上記の工程を行い、めっきレジスト層15Aを形成する。両面銅張積層板14の表面の全てのシート領域についてめっきレジスト層15Aを形成し終えると、巻き取りロールに巻き取られた両面銅張積層板14をひっくり返し、その後、一端を巻き出しながら、下記のように裏面の処理を行う。
【0036】
(4)次に、両面銅張積層板14の銅箔13上のシート領域にレジスト層(図示せず)を形成する。このレジスト層の厚みは、銅箔12上のレジスト層の場合と同様の理由で15μmとした。
【0037】
(5)次に、前工程において形成された銅箔13上のレジスト層に対して露光および現像処理を行い、レジスト層を所定のパターンにパターニングする。これにより、
図1(2)に示すように、両面銅張積層板14の銅箔13上にめっきレジスト層15Bを形成する。このめっきレジスト層15Bは、前述のめっきレジスト層15Aと同様、セミアディティブ工法によって所望の導電パターン層を形成するために用いられる。
【0038】
(6)次に、
図1(3)からわかるように、めっきレジスト層15A及び15Bが形成された両面銅張積層板14の両面に対して電解銅めっきを行う。これにより、めっきレジスト層15A及び15Bの開口部に露出した銅箔12及び銅箔13上にそれぞれ、電解銅めっき層16及び17を形成する。ここでは、電解銅めっき層16,17の厚みは10μmとした。
【0039】
(7)次に、
図1(3)に示すように、めっきレジスト層15A及び15Bを剥離した後、フラッシュエッチングにより、電解銅めっき層16,17で被覆されていない銅箔12及び銅箔13を除去する。このフラッシュエッチングには、シード層(銅箔12及び銅箔13)に含まれる金属に対する選択性を有するエッチャントを用いる。例えば、シード層がニッケルを含有する場合、エッチャントとして、硝酸と塩酸の混合液を用いることができる。
【0040】
ここまでの工程で、
図1(3)及び(4)に示すように、銅箔12(13)及び電解銅めっき層16(17)から構成される導電パターン層を、可撓性絶縁ベース材11の両面に有する両面回路基材18を得る。
図1(4)は両面回路基材18の上面図を示している。
図1(3)及び(4)からわかるように、導電パターン層は、所定の位置に開口部を有する。両面回路基材18の表面に形成された導電パターン層の開口部であるコンフォーマルマスク19(上穴用開口部)は、ステップビアホールの上穴を形成するために機能する。一方、両面回路基材18の裏面に形成された導電パターン層の開口部であるコンフォーマルマスク20(下穴用開口部)は、ステップビアホールの下穴を形成するために機能する。本工程において、コンフォーマルマスク19に対してコンフォーマルマスク20の位置がずれてしまうと、ステップビアホールの下穴は上穴に対して位置ズレを起こす。その結果、前述のように、ボイドの発生やめっき付きまわり形状の悪化によりステップビアの信頼性が低下する。しかし、本実施形態では、
図1(4)に示すように、コンフォーマルマスク19は長円形状に形成され、この長円の長軸はロール方向に平行である。このため、可撓性絶縁ベース材11(両面銅張積層板14)がロール方向に伸縮することによって、コンフォーマルマスク19に対してコンフォーマルマスク18がロール方向に位置ズレを起こしたとしても、ロール方向の位置ズレ許容量が大きいため、正常なステップビアホールを形成することができる。
【0041】
なお、本実施形態では、コンフォーマルマスク19の長円の長軸の長さを、短軸の長さの2倍とした。即ち、長軸の長さを160μmとし、短軸の長さを80μmとした。一方、
図1(4)からわかるように、コンフォーマルマスク20は正円形状(直径60μm)に形成した。この場合、ロール方向と90°で交わる方向(即ち、両面銅張積層板14の幅方向)に対する位置ズレ許容量は、±10μm以内である。それに対して、ロール方向の位置ズレ許容量は±50μm以内となり、伸縮の発生する方向に対する位置ズレ許容量を大幅に増大させることができる。
【0042】
(8)次に、
図2(1)に示すように、両面回路基材18の裏面(
図2(1)中下側)に、接着材層24(例えば厚さ15μm)を介して、片面銅張積層板23を積層接着する。この片面銅張積層板23は、可撓性絶縁ベース材21(例えば厚さ25μmのポリイミドフィルム)の片面に、例えば厚さ12μmの銅箔22を有するものである。片面銅張積層板23は、可撓性絶縁ベース材21が接着剤層24に接するように両面回路基材18の裏面に積層される。なお、接着材層24は、ローフロータイプのプリプレグ、又はボンディングシート等の流れ出しの少ない接着剤を用いて形成することが好ましい。
(9)次に、
図2(2)に示すように、コンフォーマルマスク19の側(
図2(2)中上側)からレーザ光を照射し、コンフォーマルマスク19及び20を用いてコンフォーマルレーザ加工を行う。これにより、上穴26と下穴27とを有するステップビアホール(導通用孔)25を形成する。上穴26は可撓性絶縁ベース材11を貫通し、底面に電解銅めっき層17が露出している。下穴27は、上穴26と連通しており、接着剤層24と可撓性絶縁ベース材21を貫通している。また、下穴27は上穴26よりも径が小さく、下穴27の底面には銅箔22が露出している。前述のように、本工程のレーザ加工を行う際に、コンフォーマルマスク19は上穴26を形成するためのマスクとして働き、コンフォーマルマスク20は下穴27を形成するためのマスクとして働く。なお、ステップビアホール25を形成するレーザ加工において、UV−YAGレーザ、炭酸レーザ、エキシマレーザ等のレーザ光を用いることが可能である。
【0043】
ここで、本工程のレーザ加工の詳細について説明する。加工用レーザとしては、加工速度が速く、生産性に優れた炭酸ガスレーザ(三菱電機(株)製,ML605GTXIII-5100U2)を用いた。アパーチャー等によりレーザのビーム径を200μmに調整した後、パルス幅10μSec,パルスエネルギー5mJのレーザパルスを5ショット照射して、ステップビアホール25を形成した。レーザのビーム径を長円形のコンフォーマルマスク19の長軸の長さよりも大きく調整しておき、コンフォーマルマスク19の長円の中心を狙ってレーザパルスを照射することで、長円形の上穴26及び正円形の下穴27を好適に形成することができる。なお、レーザのビーム径をコンフォーマルマスク19の長軸の長さよりも大きく調整できない場合は、照射ターゲット位置を長軸上の例えば3又は4つの点に分けて、レーザパルスを長軸方向にシフトさせながら照射するようにしてもよい。ガルバノミラーを揺動させることによって、レーザビームの照射ターゲット位置を、長軸の長さよりも広範囲に移動させることができる。よって、照射ターゲット位置を分割しても、生産性に影響を及ぼすことなくレーザ加工を行うことができる。上記のレーザ条件により、従来の同心円状のステップビアホールと同様にして、長円形の上穴26を有するステップビアホール25を形成することが可能である。
【0044】
(10)次に、ステップビアホール25内の樹脂残渣を除去するためのデスミア工程として、プラズマ処理及びウェットエッチングを行う。このエッチングにより、
図2(2)に示すように、ステップビアホール25内の銅箔13は除去される。
【0045】
(11)次に、電解銅めっき層16上およびステップビアホール25の内壁に、導電化処理とそれに続く電解銅めっき処理を施す。これにより、
図2(3)に示すように、ステップビアホール25の内壁(側面と底面)及び電解銅めっき層16の上に電解銅めっき層28を形成する。層間導通を確保するために、電解銅めっき層28の厚みは、例えば15〜20μmとする。これにより、上部層間導電路29a及び下部層間導電路29bを有するステップビア29が形成される。ステップビア29の上部層間導電路29aは、表面側のランド部30と内層のランド部17bを電気的に接続するものであり、下部層間導電路29bは内層のランド部17bと裏面側のランド部31を電気的に接続する。
【0046】
本工程のめっき処理は、ステップビアホール25の開口面が片側(図中上側)のみであることから、ステップビアホール25の開口面側に対してのみめっき処理を施す、いわゆる片面めっきとした。このため、裏面の銅箔22上には電解銅めっき層28は形成されない。なお、片面めっきは、裏面の銅箔22を覆うようにめっきマスクを形成した後にめっき処理を行うことで実現してもよいし、めっき装置若しくはめっき治具等に遮蔽板を設けた後にめっき処理を行うことで実現してもよい。このように両面めっきではなく片面めっきにすることで、銅箔22上に余分な銅めっき皮膜が形成されず、銅箔22の膜厚が厚くなることを防ぐことができる。銅箔22が薄く保たれることにより、銅箔22を高精度に加工して、ランド部等の微細なパターンを形成することが可能となる。
【0047】
(12)次に、
図2(4)に示すように、フォトファブリケーション法を用いて電解銅めっき層28を所定のパターンに加工することにより、ランド部30を形成する。同様に、フォトファブリケーション法を用いて銅箔22を所定のパターンに加工することにより、裏面にランド部31を形成する。
【0048】
以上の工程を経て、本実施形態に係るステップビア構造を有する多層フレキシブルプリント配線板32を得る。この後、必要に応じて、はんだ付けが不要な部分には保護用のフォトソルダーレジスト層を形成し、ランド部等の表面には半田めっき、ニッケルめっき、金めっき等の表面処理を施す。その後、複数の多層フレキシブルプリント配線板32,32,・・・が作製されたロール材料を、シート領域毎にカットする。最後に、金型による抜き打ち等により外形加工を行う。なお、ロール材料のカットは、めっきレジスト層15A及び15Bの形成後かつ外形加工前であれば、任意の工程で行うことができる。
【0049】
次に、
図3を用いて、本実施形態に係る多層フレキシブルプリント配線板の構造について詳しく説明する。
【0050】
図3は、本実施形態に係る長穴ステップビア構造を有する多層フレキシブルプリント配線板32の上面図および断面図である。
図3(1)は多層フレキシブルプリント配線板32の上面図である。
図3(2)は
図3(1)のA−A’線に沿う断面図であり、
図3(3)は
図3(1)のB−B’線に沿う断面図である。
【0051】
図3(1)、(2)及び(3)からわかるように、多層フレキシブルプリント配線板32に形成されたステップビア29は、長円形の上部層間導電路29aと正円形の下部層間導電路29bを有する。
【0052】
また、多層フレキシブルプリント配線板32の表面にはランド部30が設けられ、裏面にはランド部31が設けられている。ランド部31は、ステップビアの開口面がないため平坦性が良く、従って部品を実装するためのランドとして好適である。
【0053】
内層の配線17a及びランド部17bは、前述の製造工程において電解銅めっき層17を加工して形成されたものである。この配線17aは、多層フレキシブルプリント配線板32のランド部17bと、外部とのコネクタ部とを電気的に接続する。ランド部17bは、ステップビア29により、ランド部30及びランド部31と電気的に接続されている。
【0054】
配線17a及びランド部17bについて、
図4を用いて詳しく説明する。
図4は、
図3(2)のC−C’線に沿う断面図を示している。この
図4からわかるように、配線17aは、上部層間導電路29a(上穴26)の長軸方向と平行に走るものとして、ステップビア29,29間に配置されている。このように配線17aを配置することにより、配線17aの配線密度を低下させずに、ステップビア29(上穴26)の開口面積を大きくすることができる。
【0055】
次に、ステップビアホールの上穴(コンフォーマルマスク19)及び下穴(コンフォーマルマスク20)の寸法と、位置ズレ許容量との関係について、数値を用いて具体的に説明する。
【0056】
表1は、従来の上穴、下穴ともに正円形の場合と、本実施形態の上穴が長円形、下穴が正円形の場合のそれぞれについて、位置ズレ許容量の長軸短軸比をまとめたものである。ここで、“位置ズレ許容量の長軸短軸比”とは、長軸方向の位置ズレ許容量(x)と短軸方向の位置ズレ許容量(y)の比(x/y)を意味する。
【表1】
【0057】
表1には、上穴の長軸の長さが異なる3つの例を示している。即ち、上穴の長軸の長さは、例1では120μmであり、例2では160μmであり、例3では240μmである。短軸の長さはいずれ例も80μmである。このように、上穴(コンフォーマルマスク19)の長軸の長さは、短軸の長さの1.5〜3倍程度とすることが好ましい。1.5倍より小さい場合、位置ズレ許容量が十分でない可能性がある。一方、3倍より大きい場合、位置ズレ許容量は増加するものの、前述のステップビアホール25をレーザ加工で形成するのに要する時間が増加し、その結果、生産性が低下する可能性がある。
【0058】
表1に示すように、長軸の長さと短軸の長さの比は、例1、例2及び例3において、それぞれ1.5倍、2倍及び3倍である。この長軸の長さと短軸の長さの比をそれぞれ“位置ズレ許容量の長軸短軸比”に変換すると、3倍、5倍、9倍となる。このように、本実施形態によれば、長軸方向の位置ズレ許容量を短軸方向の位置ズレ許容量(即ち、従来の位置ズレ許容量)に比べて、3倍乃至9倍と大幅に増大させることができる。
【0059】
以上説明したように、本実施形態では、ステップビアホール25の上穴26を長円形とし、且つ下穴27を正円形とする。これにより、下穴27用のコンフォーマルマスク20の長軸方向の位置ズレに対する許容量を、従来よりも大幅に増大させることができる。このため、多層フレキシブルプリント配線板の製造過程において可撓性絶縁ベース材11がロール方向(搬送方向)に伸縮した場合にも、正常なステップビアホール25を形成することができる。その結果、本実施形態によれば、層間導電路として信頼性の高いステップビア29を有する多層フレキシブルプリント配線板を得ることができる。
【0060】
さらに、従来に比べてステップビアホール25の上穴26が大きくなるため、ステップビアホールの内壁にめっき処理を施す際における、めっき液等の更新性が向上する。このため、めっき付きまわりの安定したステップビアを形成できる。その結果、本実施形態によれば、層間導電路としてのステップビアの信頼性をさらに向上させることができる。
【0061】
次に、
図5を用いて、本実施形態に係るステップビアホールの変形例について説明する。
図5(1)〜(4)はいずれも、ロール方向(図中上下方向)に対する位置ズレ許容量を増加させることが可能なステップビアホールの上面図を示している。
【0062】
図5(1)に示すステップビアホール101は、上穴101aだけでなく、下穴101bも長円形に形成されている。このような形状の場合にも、従来の同心円状のステップビアホールと比較して、長軸方向に対する位置ズレ許容量を増加させることができる。また、この変形例の場合、下穴101bの開口面積も従来の正円形に比べて大きくなるので、めっき液等の更新性をさらに向上させることができる。
【0063】
図5(2)に示すステップビアホール102は、長円形の上穴102aと、楕円形の下穴102bとを有する。下穴102bが楕円形であるため、めっき液等の更新性を向上させることができるとともに、回転方向(
図5(2)中の矢印の方向)の位置ズレマージンを増大させることができる。つまり、前述のめっきレジスト層15Bを形成するためにレジスト層を露光する際、下穴102bの角が長円形と比較して丸い分だけ、
図5(1)のステップビアホール101よりも回転方向に対する位置ズレの許容量を増加させることができる。
【0064】
図5(3)に示すステップビアホール103は、正円形の上穴103aと、長円形の下穴103bとを有する。
図5(3)に示すように、長円形の下穴103bは長軸がロール方向と直交する方向に設けられているものの、上穴103aが正円形であるため、回転方向(
図5(3)中の矢印の方向)に対する位置ズレ許容量を増大させることができる。
【0065】
図5(4)に示すステップビアホール104は、略正方形の上穴104aと、略長方形の下穴104bとを有する。この略長方形の下穴104bは、長辺がロール方向と直交する方向に設けられているものの、上穴104aが略正方形であるため、回転方向(
図5(4)中の矢印の方向)に対する位置ズレ許容量を増加させることができる。
【0066】
上記の変形例に限らず、各々の例の上穴と下穴を組み合わせることができる。例えば、上穴と下穴がともに楕円形のステップビアホールでもよい。この下穴の長軸の方向は上穴の長軸の方向と平行である。また、正円形の上穴と、略長方形の下穴から構成されるステップビアホールでもよい。この下穴の長辺の方向はロール方向と垂直な方向である。
【0067】
その他、上穴がロール方向と平行な方向な長軸を有する楕円形であって、下穴が正円形、若しくは上穴と同じ方向に長軸を有する楕円形であってもよい。
【0068】
次に、
図6を用いて、本実施形態に係る多層フレキシブルプリント配線板への部品の実装例について説明する。
図6(1)は、本実施形態に係る多層フレキシブルプリント配線板に部品44が実装された様子を示す上面図である。
図6(2)は
図6(1)のA−A’線に沿う断面図である。
図6(1)からわかるように、部品44は部品搭載領域41に実装されている。
【0069】
図6(2)からわかるように、部品44は多層フレキシブルプリント配線板32の裏面のランド部31にバンプ45を介して実装されている。これにより、ランド部30に実装する場合に比べて平坦度の高い状態で部品44を実装することができる。その結果、接合部分にボイド等が発生する虞がなく、信頼性の高い接合を得ることができる。
【0070】
図6(1)からわかるように、多層フレキシブルプリント配線板32の内層に設けられた配線17aは、部品搭載領域41A(41B)から配線領域42A(42B)を通ってコネクタ部43A(43B)に引きまわされており、部品搭載領域41のランド部31と、コネクタ部43A,43Bとを電気的に接続している。より詳細には、部品搭載領域41の上半分の領域である部品搭載領域41Aのランド部31とコネクタ部43Aを電気的に接続する配線17aは、部品搭載領域41Aに配置されたランド部31から配線領域42Aを通ってコネクタ部43Aに引き回されている。同様に、部品搭載領域41の下半分の領域である部品搭載領域41Bのランド部31とコネクタ部43Bを電気的に接続する配線17aは、部品搭載領域41Bに配置されたランド部31から配線領域42Bを通ってコネクタ部43Bに引き回されている。
【0071】
実装された部品44は、例えば、ピン数が非常に多いセンサーモジュールであり、微細な配線17aの引きまわし方向は略1方向に限定される。このような場合には、ステップビア29の長軸方向に走るように配線17aを設けることで、配線17aの配線密度を損なうことなく、ステップビア29の開口部の面積を大きくすることが可能である。
【0072】
以上説明したように、本実施形態では、ステップビアホールの上穴を長円形とし、その長軸方向がフレキシブルプリント配線板のロール材料のロール方向に対して平行になるようにする。これにより、ステップビアホール用のコンフォーマルマスクを形成する露光工程において、可撓性のベース材料がロール方向に伸縮した場合にも、正常なステップビアホールを形成することが可能となる。その結果、本実施形態によれば、層間導電路として信頼性の高いステップビアを有する多層フレキシブルプリント配線板を得ることができる。
【0073】
さらに、本実施形態では、従来のステップビアホールに比べて上穴が大きくなるため、ステップビアホールの内壁にめっき層を形成する際における、めっき液等の更新性が向上する。このため、めっき付きまわり形状の良好なステップビアを形成できる。即ち、本実施形態によれば、層間導電路としてさらに信頼性の高いステップビアを有する多層フレキシブルプリント配線板を得ることができる。
【0074】
また、本実施形態によれば、位置ズレ許容量の増大により、露光エリアをロール方向に広げて1つのシート領域の面積を拡大することができる。これにより、1つのシート領域から取れる多層フレキシブルプリント配線板の数を増やすことができ、生産性を向上させることができる。
【0075】
以上の本実施形態の奏する効果から明らかなように、本発明によれば、新たな工程や装置を導入することなく、安価に且つ安定的に、小径のステップビア構造を有する多層フレキシブルプリント配線板を製造することができる。
【0076】
なお、本発明に係るステップビアホールの上穴及び下穴の形状は、上述の実施形態及び変形例に限定されるものではない。より一般的には、可撓性のベース材料のロール方向に対する、コンフォーマルマスク19(上穴26)の径とコンフォーマルマスク20(下穴27)の径の差が、ロール方向と垂直な方向に対する、コンフォーマルマスク19(上穴26)の径とコンフォーマルマスク20(下穴27)の径の差よりも大きければよい。このようにすることで、ロール方向に対する位置ズレ許容量を増加させることが可能となる。
【0077】
上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形を想到できるかもしれないが、本発明の態様は、上述した実施形態に限定されるものではない。特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。