特許第5710167号(P5710167)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5710167ベンズイミダゾロン顔料のナノサイズの粒子を含む無極性の液体および固体相変化インク組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5710167
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】ベンズイミダゾロン顔料のナノサイズの粒子を含む無極性の液体および固体相変化インク組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/34 20140101AFI20150409BHJP
   C09D 11/322 20140101ALI20150409BHJP
【FI】
   C09D11/34
   C09D11/322
【請求項の数】2
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2010-166639(P2010-166639)
(22)【出願日】2010年7月26日
(65)【公開番号】特開2011-26599(P2011-26599A)
(43)【公開日】2011年2月10日
【審査請求日】2013年7月19日
(31)【優先権主張番号】12/509,161
(32)【優先日】2009年7月24日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12/819,418
(32)【優先日】2010年6月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リナ カルリーニ
(72)【発明者】
【氏名】シー ジェフリー アレン
(72)【発明者】
【氏名】ダレン マケイフ
【審査官】 牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第07503973(US,B1)
【文献】 特開平11−279467(JP,A)
【文献】 特開2003−026963(JP,A)
【文献】 特開2009−215553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00〜11/54
B41J 2/01〜 2/21
B41M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無極性キャリアと、
ベンズイミダゾロン顔料と、前記ベンズイミダゾロン顔料と非共有的に会合し、置換ピリジン誘導体を含む安定剤化合物と、を含むナノスケール顔料粒子組成物と、
を含むインク組成物であって、
前記ベンズイミダゾロン顔料は、ベンズイミダゾロンの1分子中に少なくとも1つのアゾ基を含み、ベンズイミダゾロン官能性部分を含有するカップリング成分とジアゾ成分との反応により合成され、
前記ジアゾ成分は、DC6及びDC7から選択される、インク組成物。
【化1】
ここで、*顔料前駆物質である前記ジアゾ成分のアミノ基(−NH2)に対する結合の点、および顔料構造におけるアゾ基(−N=N−)に対する結合の点を示し、
1〜R8は、独立して、H;ハロゲン;n=0〜6である(CH2nCH3;OH;CO2CH3;n=0〜5であるCO2(CH2nCH3;CONH2;(CO)R’(R’が、独立して、H、C65、n=0〜12である(CH2nCH3、又はn=1〜5である(CH2nN(CH32);OCH3;OCH2CH2OH;NO2;SO3H;又は下記の構造の基のいずれかであり、
【化2】
Aは、n=0〜6である−(CH2n−;n=0〜6である−[O−(CH2n−O]−;n=0〜6及びR=H又はCH3である−[O−CH2CHR)n]−;−(C=O)−;O;S;n=1〜6である−(CH2n−(C=O)−;又はn=1〜6である−(C=O)−(CH2n−(C=O)−である。
【請求項2】
前記安定剤化合物は、下記の構造のいずれかを有する前記置換ピリジン誘導体を含む、請求項1に記載のインク組成物。
【化3】














【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ナノスケールのベンズイミダゾロン顔料粒子組成物を含む無極性および相変化(または固形)インク組成物、および製造方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
インクジェットインク用の顔料は、大きな粒径および幅広い粒径分布を有しており、その組合せは、信頼できるインクの噴射に関して問題を引き起こし得る。顔料は、ミクロンサイズの結晶の大きな凝集体であり、多くの場合広い分布の凝集体サイズを有する。顔料の色特性は、凝集体サイズおよび結晶形態によって幅広く変化し得る。したがって、インクやトナー等に広範に適用し得る理想的な着色剤は、染料と顔料の両方の最も優れた特性、すなわち、1)優れた色特性(大きな色域、輝度、色相、鮮明な色)、2)色彩安定性と耐久性(熱、光、化学薬品、空気に対して安定な着色剤)、3)最小限または皆無の着色剤の移行、4)処理可能な着色剤(マトリックス中への分散および安定化が容易)、および5)安価な材料コストという特性を有するものである。上記の問題を最小限にするより小さいナノスケール顔料粒子に向けた対応がここでは必要である。信頼できるインク噴射性能を付与し、高品質およびロバストな画像を提供することができる、無極性の相変化(固体)インク組成物中でのそのようなナノスケール顔料粒子の使用が、ここではさらに必要である。さらにまた、ナノスケール顔料粒子を着色材料として含有するそのような相変化インク組成物を作製および使用するプロセスに対する必要性が存続している。現ナノスケール顔料粒子は、塗料、コーティング、電子写真トナー、ならびにその他の用途、例えば、着色されたプラスチックおよび樹脂、光電子画像形成コンポーネントおよび光学カラーフィルタ、写真コンポーネント、ならびに化粧品でも有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7,160,380号明細書
【特許文献2】国際公開第2006/132443号パンフレット
【特許文献3】米国特許出願公開第2006/0063873号明細書
【特許文献4】国際公開第2006/005536号パンフレット
【特許文献5】米国特許第5,679,138号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2007/0012221号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
改良されたナノスケールのベンズイミダゾロン顔料粒子組成物を含む無極性および相変化(または固形)インク組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施の形態では、無極性キャリアと、ベンズイミダゾロン顔料、およびベンズイミダゾロン顔料と非共有的に会合し、置換ピリジン誘導体を含む、立体的に嵩高い安定剤化合物を含むナノスケール顔料粒子組成物と、を含むインク組成物であって、会合している安定剤の存在が、粒子の成長および凝集を制限して、ナノスケールサイズの顔料粒子をもたらすインク組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本開示の実施形態は、ナノスケールのベンズイミダゾロン顔料粒子を含む、無極性の液体または固体の相変化インク組成物等のインク組成物を提供する。ナノスケール顔料粒子組成物は、立体的に嵩高い安定剤化合物からの官能基と非共有的に会合している少なくとも1つの官能性部分を有する有機ベンズイミダゾロン顔料を一般に含み、立体的に嵩高い安定剤化合物は、置換ピリジン誘導体を含む。その会合している立体的に嵩高い安定剤の存在が、粒子の成長および凝集を制限してナノスケール粒子を提供する。特に、置換ピリジン誘導体は、分子間および分子内で水素結合して、粒子の成長および凝集を制限することができる。
【0007】
ベンズイミダゾロン顔料は、ジアゾニウム塩前駆物質(またはジアゾ成分)としての置換芳香族アミンとベンズイミダゾロン官能性部分を含有するカップリング剤とから一般に誘導されたアゾ−ベンズイミダゾロンの種類のものである。アゾ−ベンズイミダゾロン顔料は、主にカップリング成分の化学組成によって黄色から赤そして茶褐色まで変動する色相の色を提供する。
【0008】
アゾ−ベンズイミダゾロン顔料の構造は、カップリング成分基上のアゾ基のN原子とその近くのヘテロ原子置換基のH原子との間の強い分子内水素結合の存在のため、1つより多い互変異性型をとることができる。
【0009】
アゾ−ベンズイミダゾロン顔料は、強い分子間水素結合のため、一次元の延長ネットワーク構造を形成することができる。証拠は、そのような顔料のX線回折パターンで見出されており、大きな分子間の間隔取りが、顔料分子のペアが分子間水素結合により強固に会合し、一次元の帯またはリボンの微細構造の組立てを形成していることを示唆している。
【0010】
これらの補強性の分子内または分子間の水素結合の存在は、アゾ−ベンズイミダゾロン顔料の高められた性能特性、例えば、高い熱安定性、高い耐光性、高い色移り耐性および高い耐溶剤性等に対するさらなる証拠を提供する。これらの顔料中のベンズイミダゾロン官能性部分は、分子間水素結合の形成を可能とし、高められた構造安定性を提供する重要な構造要素である。この部分は、一点および二重点の水素結合に容易に参入し、同じ官能性部分または異なる官能性部分を有するもう1つの化合物は、アゾ−ベンズイミダゾロン顔料と、例えば分子間水素結合による等、非共有的に会合することが可能であり得、したがって、かかる顔料に対して高い結合親和性を有する。顔料粒子の表面張力を低下し、2つ以上の顔料粒子または構造体の間の引力を中和させ、それによって顔料の化学的および物理的構造を安定化する「安定剤」として知られている化合物の群が存在する。これらの化合物は、「顔料に親和性のある」官能性部分を有しており、それらはまた1つ以上の疎水性基、例えば、アルキル基が構造中で直鎖状、環状または分枝状であることができ、合計で少なくとも6個以上の炭素を有する長いアルキル炭化水素基、またはアルキル−アリール炭化水素基、またはアルキレンオキシ基を有するポリマーおよび/またはオリゴマー鎖を保有する。かかる安定剤におけるさらなる疎水性基の存在は、いくつかの機能:(1)目標のビヒクルまたはマトリックス中のよりよい分散性のために顔料を親和性にすること、および(2)顔料粒子を取り巻く立体的に嵩高い層を提供し、それによって、制御されない結晶の凝集と最終的に粒子の成長をもたらす他の顔料粒子または分子の接近を防止または制限することができる。顔料と非共有的に会合する顔料に親和性のある官能性部分、ならびに他の顔料粒子に表面バリヤーを提供する1つ以上の立体的に嵩高い炭化水素基の両方を有する化合物は、「立体安定剤」と呼ばれ、通常の顔料および安定化が必要な他の粒子(例えば、塗料中のラテックス粒子、堅固なコーティング中の金属酸化物のナノ粒子)の表面特性を改めるさまざまな方法において使用されてきている。
【0011】
そのベンズイミダゾロン顔料/前駆物質は、選択された安定剤化合物と、ベンズイミダゾロン単位または分子ごとに、1つ以上の水素結合を形成することができる。そのベンズイミダゾロン顔料/前駆物質は、選択された安定剤化合物と、ベンズイミダゾロン単位ごとに、1つから4つ以上の水素結合を形成することができる。
【0012】
安定剤は、主にナノスケール顔料粒子を生成するために、顔料合成中の着色剤分子の自己集合を制限し、かつ/または顔料一次粒子の凝集の度合いを制限する機能を有する。安定剤は、その安定剤が顔料の粒径を制御する機能を可能にする十分な立体的な嵩を提供する炭化水素部分を有する。その炭化水素部分は、大部分が脂肪族であるが、他の実施形態においては芳香族基を組み込むこともでき、少なくとも6個または少なくとも12個の炭素あるいは少なくとも16個の炭素で、100個を超えない炭素を含む。その炭化水素部分は、直鎖状、環状または分枝状であるかのいずれかであり得、シクロアルキル環または芳香環等の環状部分を含んでいてもよいし、いなくてもよい。その脂肪族の分枝鎖は、各枝に少なくとも2個の炭素または少なくとも6個の炭素を有しており、100個の炭素を超えない長いものである。
【0013】
用語の「立体的な嵩高」は、顔料または顔料の前駆物質が非共有的に会合するようになるその大きさとの比較に基づく相対的用語であることが理解される。用語の「立体的な嵩」とは、顔料/前駆物質表面と水素結合している安定剤化合物の炭化水素部分が、他の化学物質(例えば、着色剤分子、顔料一次粒子または小さな顔料凝集体)の顔料/前駆物質表面に対する接近または会合を効果的に防止する三次元の空間体積を占めるときの状況を指す。安定剤は、いくつかの安定剤分子が、顔料/顔料前駆物質と非共有的に会合状態になるとき(例えば、水素結合、ファンデルワールス力、芳香族π−π相互作用またはその他)、その安定剤分子が効果的に顔料の一次粒子を遮断するための表面剤として作用し、それによって顔料粒子の成長を制限し、大部分がナノ粒子の顔料を提供するように十分に大きいその炭化水素部分を有さなければならない。
【0014】
適切な安定剤化合物は、両親媒性であり、顔料/顔料前駆物質との水素結合のために利用できるヘテロ原子を有する親水性または極性官能基、ならびに少なくとも6から100個の炭素を有し、大部分が脂肪族(または完全に飽和している)であるがいくらかのエチレン性不飽和基および/またはアリール基を含むことができる無極性または疎水性の立体的に嵩高い基を有する。
【0015】
置換ピリジン誘導体、特に1基置換および2基置換ピリジン誘導体も使用することができる。置換ピリジン誘導体としては、一般式5のものが挙げられる:
式5:
【化1】

複数の実施形態において、一般式5のピリジン誘導体は、同じものか異なるものであり得る置換基R〜Rを有する。式5におけるR〜Rについての官能基の適切な例としては、H、アミド基(−NH−(C=O)−R’)および(−(C=O)−NH−R’);アミン基(−NH−R’);尿素基(−NH−(C=O)−NH−R’);カルバメートまたはウレタン基(−NH−(C=O)−O−R’)および(O−(C=O)−NH−R’);エステル基(−(C=O)−O−R’)または(−O−(C=O)−R’);オリゴ−もしくはポリ−[エチレングリコール]等の分枝状もしくは直鎖状アルキレンオキシ鎖;およびアルコキシ基(−OR’)を挙げることができ、但し、さまざまな官能基のすべてにおいて基R’は、アルキル基中にO、S、またはN等のヘテロ原子を含んでいてもよい主に直鎖状もしくは分枝状アルキルまたは脂環式の基である。
【0016】
いくつかの実施形態においては、例示的な置換ピリジン誘導体としては、一般式6のもの:
式6:
【化2】

(但し、各Xは、独立して、−N(H)−または−O−を表し、RおよびRは、独立して、アルキル基中にO、S、またはN等のヘテロ原子を含有していてもよい、直鎖状もしくは分枝状アルキルまたは脂環式の基を表す)が挙げられる。RおよびR基の非限定的な具体例としては、限定はされないが:
【化3】

および
【化4】

(但し、mおよびnは、独立して、0〜約30の整数を表す)が挙げられる。
【0017】
これらの2基置換ピリジン誘導体は、望ましくは両親媒性の化合物である。つまり化合物には顔料に親和性のある基、例えば、顔料のベンズイミダゾロン官能性部分と水素結合が可能である2,6−ピリジンジカルボキシレートエステルまたはジカルボキサミド部分が挙げられる。この水素結合は、顔料の分子間水素結合ネットワークを妨げ、それによって粒子の成長および凝集を防止または制限することができる可能性がある。化合物は、また、立体的バリヤー層を顔料表面に提供する嵩高い脂肪族基も含み、それは、その他の着色剤分子が接近してより大きな結晶を形成することを制限または追い払うのにも役立つ。
【0018】
上記の式5の基R〜Rのいずれかは、また、一般式、
【化5】

の2つ以上のピリジル基を架橋する2官能性の構造のもの等であり得、適切な2官能性基RおよびRの例としては、−(CH;−X−(CHX;−[(XCHCH]X−;−[(C=O)−(CH−(C=O)]−;−X−[(C=O)−(CH−(C=O)]−X−;−X−[(C=O)−X−(CH−X−(C=O)]−X−;−[(C=O)−X−(CH−X−(C=O)]−(但し、Xは、O、S、またはNHとして定義され、整数nは1〜50である)が挙げられ;基Rに関しては、大きな分枝状アルキル化基、例えば、
【化6】
,
【化7】

および
【化8】

(但し、X、XおよびXは、O、S、またはNHのいずれかであると定義され、XおよびXは、同じ物であってもなくてもよい)も挙げられる。
【0019】
置換ピリジン誘導体の具体例としては、限定はされないが、表1から表12の以下の化合物が挙げられる。
【0020】
【表1】
【0021】
【表2】
【0022】
【表3】
【0023】
【表4】
【0024】
【表5】
【0025】
【表6】
【0026】
【表7】
【0027】
【表8】
【0028】
【表9】
【0029】
【表10】
【0030】
【表11】
【0031】
【表12】
【0032】
2および/または6位で置換されているピリジン誘導体(表1、RおよびRそれぞれ)は、既知の化学変換を使用して市販の材料から調製される。一例として、2位と6位の両方がアミド[ピリジル]−(C=O)−NHRまたはエステル[ピリジル]−(C=O)−OR等のカルボキシル化官能基である2,6−2基置換ピリジンの合成に関しては、第1のステップは、適切な有機溶媒(すなわち、テトラヒドロフラン、THF、またはジクロロメタン、CHCl)中の触媒量のN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)の存在下で、塩化オキサリルまたは塩化チオニル等の適切な試薬を使用して、2,6−ピリジンジカルボン酸を対応する塩化アシルへ転化することを含む。次いで、第2のステップでは、その酸塩化物基を、トリエチルアミン等の酸捕捉性の非求核性塩基の存在下で、適切な、立体的に嵩高い第一級または第二級アルキルアミンまたはアルコールと反応させる。
【0033】
逆2−モノアミドまたはジアミドピリジン誘導体も、既知の化学変換を使用して市販の材料から調製される。一例として、2,6−ジアミノピリジンを、トリエチルアミン等の非求核性塩基の存在下で、1つ以上の当量の適切なアルカン酸塩化物と反応させて、[ピリジル]−NH−(C=O)−R等の2位と6位の両方が逆カルボキシルアミドである望ましい2,6−ジアミドピリジン化合物を提供する。アルカン酸塩化物が市販されていないならば、それは、適切な有機溶媒(すなわち、テトラヒドロフラン、THF、またはジクロロメタン、CHCl)中の触媒量のN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)の存在下で、塩化オキサリルまたは塩化チオニル等の適切なハロゲン化試薬により、対応するアルカンカルボン酸を転化することにより容易に調製される。
【0034】
上記の安定剤、およびそれらの組合せは、いずれも、ナノスケール顔料粒子の調製において、0.5重量%から50重量%、1重量%から25重量%までのように変動する量で使用することができる。
【0035】
「ナノスケール」、「ナノスコープ」、または「ナノサイズ」に対してd50によって表される「平均の」顔料粒径は、150nm未満、または1nm〜120nm、または10nm〜100nmである。
【0036】
アゾ−ベンズイミダゾロン顔料のナノ粒子は、一般に1つ以上のプロセスステップで合成される。その顔料ナノ粒子は、合成中の反応媒体中で直接生成されるが、そのような顔料ナノ粒子の意図した用途のための表面の化学的性質を調整するために、任意の合成後の改良が可能である。そのバルクのアゾ−ベンズイミダゾロン顔料は、最初のプロセスにおいてジアゾ化およびカップリング反応を用いることによって合成し、次いで、その顔料の固形分は、第2のプロセスステップを用いて、その粗製のバルク顔料を、良溶媒を用いて分子状に溶解し、続いて非溶剤の制御された添加により顔料の沈殿を引き起こす顔料再沈殿法により、ナノ粒子の形態に変換することができる。また、ジアゾ化およびカップリングプロセスによるアゾ−ベンズイミダゾロン顔料ナノ粒子の直接合成も使用することができ、望ましい。これらのプロセスを、下のスキーム1および2において概略的に示す。
【0037】
スキーム1:
【化9】

スキーム2:
【化10】
【0038】
上記のスキーム1および2における概略的反応で示されているもののようなアゾ−ベンズイミダゾロン顔料(本明細書では単にベンズイミダゾロン顔料と称する)のナノスケールの粒子を作製する方法は、少なくとも1つ以上の反応を含む直接合成プロセスである。ジアゾ化は、適切に置換されている芳香族アミンまたはアニリン前駆物質が、直接または間接的に、その対応するジアゾニウム塩に転化される重要反応ステップである。その通常の反応手順は、その前駆物質の水溶液を、亜硝酸HNO(亜硝酸ナトリウムの塩酸等の希薄な酸溶液との反応により、現場で発生する)等の効果的なジアゾ化剤によるか、または市販されているかまたは濃硫酸中で亜硝酸ナトリウムを混合することによって調製することができるニトロシル硫酸(NSA)を用いて処理することを含む。そのジアゾ化反応は、酸性の水溶液中で、ジアゾニウム塩を熱的に安定に保つために冷たい温度で行われるが、室温で行うこともできる。その反応は、媒体中に溶解しているか、またはその媒体中に固体粒子として微細に懸濁しているジアゾニウム塩の形成をもたらす。
【化11】
【0039】
【化12】
【0040】
第2の溶液または固体懸濁液は、ベンズイミダゾロンカップリング成分(最も普通には、上に示した構造CC1またはCC2)を、一般的には溶解を助けるためのアルカリ性溶液の水性媒体中に溶解または懸濁させることによって調製し、次いでその後、酸および/または塩基により処理して、そのベンズイミダゾロンカップリング成分をジアゾニウム塩溶液との反応に必要な緩衝化した酸性水溶液または緩衝化した微細な懸濁液にする。適切な酸、塩基および緩衝剤としては、水酸化ナトリウムまたはカリウム、酢酸、および酢酸ナトリウムが挙げられる。カップリング剤の溶液または微細な懸濁液は、マイナーな共溶媒として、有機溶媒(例えば、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、メタノール、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等)等のその他の液体を含有することができる。その第2の溶液は、任意の界面活性剤、および前述の立体的に嵩高い安定剤化合物をさらに含有する。この第2の溶液は、ジアゾニウム塩溶液の周囲温度または約10℃から約75℃までのその他の適切な温度での制御された添加を必要とするカップリング反応である最後の反応ステップを行い、それによって水性スラリー状の懸濁した沈殿物としての顔料固形物を生成するためのより大きな容器に入れる。顔料粒子の品質および特性−例えば、平均の微結晶サイズ、粒子の形および粒子分布等−に影響を及ぼすいくつかの化学的および物理的プロセスパラメータが存在し、これらのプロセスパラメータとしては、反応物としての出発のジアゾ成分およびカップリング成分の相対的化学量論組成、反応物添加の順序と速度、合成において使用される任意の界面活性剤および/または立体安定剤化合物のタイプと相対量(負荷)、液体媒体中の化学種の相対濃度、液体媒体のpH、カップリング反応中の温度、撹拌速度、着色力を増すための加熱等任意の合成後のプロセスステップの能力、そしてまた、最後の粒子の回収および乾燥のための方法も挙げられる。
【0041】
単一のアゾ基を含むアゾ−ベンズイミダゾロン顔料の調製に対しては、出発のジアゾおよびカップリング成分は、ほぼ化学量論的な比(または1:1のモル比)で提供する。カップリング成分は、カップリング媒体中で限定された溶解性を有し得るのに対し、ジアゾ成分は一般に溶解し、カップリング成分のモル数に対して非常に小過剰のジアゾ成分、約0.01から約0.25モル当量まで、または約0.01から約0.10モル当量までの過剰のジアゾ成分を使用することが有利である。ほんのわずかなモル過剰のジアゾ成分を有することによって、不溶性のカップリング成分のすべてが顔料生成物に完全に転化される。その過剰のジアゾ成分は、次に最終生成物を洗浄することによって除去される。過剰の不溶性カップリング成分が使用される場合は、未反応のカップリング成分が最終の製品混合物中に残留し、洗浄によって除去することが困難で、ナノスケール顔料の特性に影響を及ぼす可能性がある。
【0042】
反応条件は、顔料粒子の品質および特性に影響を及ぼし得る。ジアゾ化反応に対して、液体媒体は、ジアゾ成分、すなわちジアゾニウム塩反応物の濃度が、約0.1M〜約1.0M、または約0.2Mから約0.80Mまで、または約0.30Mから約0.60Mまでを超えないように維持しなければならない。望ましくは水溶性で酸混和性試薬、例えば亜硝酸ナトリウムまたはニトロシル硫酸等であるジアゾ化剤の量は、使用されるジアゾ成分のモル量とほぼ化学量論的(または、1:1のモル比)であるべきであるが、非常に小過剰のジアゾ化剤を、ジアゾ成分前駆物質のモル数に対して、約0.005〜約0.20モル当量の過剰なジアゾ化剤の範囲内で使用してもよい。使用することができる酸のタイプとしては、塩酸および硫酸等の適切な鉱酸、ならびに酢酸およびプロピオン酸等の有機酸、またはさまざまな組合せを挙げることができる。着色剤の合成で使用されるジアゾ化反応に対して、その酸反応物は、反応性のニトロシル化種およびその反応において形成される結果としてのジアゾニウム塩を可溶化するための水溶液として供給される。酸反応物の濃度は、ジアゾ前駆物質(限定試薬)のモル数に対して過剰量で使用され、この量は、ジアゾ前駆物質のモル数に対して約1.5から約5.0まで、または約2.0〜約4.0過剰のモル当量の酸の範囲であり得る。
【0043】
ジアゾ化反応は、得られるジアゾニウム塩生成物が熱力学的に安定であることを確保するために低温で行う。そのジアゾ化反応は、−10℃から約5℃まで、または−5℃から約3℃まで、または−1℃から約2℃までの温度で行われる。ニトロシル化剤が、上で開示した合計のジアゾニウム塩濃度を提供するために水溶液中に加えられ、このニトロシル化剤の水溶液がゆっくり加えられる速度は、その反応の規模によって変動し得る。その添加速度は、ジアゾ化反応の過程を通して−10℃と約5℃の間または−1℃〜約2℃に内部温度を維持することによって制御する。そのニトロシル化剤の完全な添加に続いて、ジアゾ化反応混合物は、0.25時間から約2時間、撹拌することができる。
【0044】
同様に、開示されている立体的に嵩高い安定剤化合物の多くも、それらは極性の水素結合基および水性媒体中の可溶化に抵抗する長鎖のアルキルも有する両親媒性の構造であるために、カップリング成分および/または顔料の不十分な溶解特性を有する。カップリング反応のステップが成功するためには、ジアゾニウム塩溶液の添加の前に、カップリング成分および立体的に嵩高い安定剤の効果的な濡れおよび混合が確保される必要がある。ジアゾニウム塩と反応する前のカップリング成分混合物中で良好な混和性および濡れを有することによって、立体安定剤とカップリング剤との間の水素結合の相互作用の事前の形成が促進され、現れるベンズイミダゾロン顔料ナノ粒子の粒径および形態に有利に影響を及ぼすことができる。
【0045】
実施形態のカップリング成分混合物は、ベンズイミダゾロン顔料を合成するための適切なカップリング成分、立体的に嵩高い安定剤化合物、アルカリ性塩基の成分、少なくとも1つの酸緩衝成分、および任意の水混和性有機溶媒を含んでいる。使用されるカップリング成分の量は、前に説明したように、ジアゾ成分と化学量論的(または1:1のモル比)である。しかしながら、カップリング成分は、カップリング媒体中で限定された溶解性を有し得るのに対し、ジアゾ成分は溶解し、カップリング成分のモル数に対して非常に小過剰の約0.01から約0.25モル当量まで、または約0.01から約0.10モル当量までの過剰のジアゾ成分を使用することができる。ほんのわずかなモル過剰を有することによって、不溶性のカップリング成分のすべてが顔料生成物に完全に転化される。アルカリ性塩基は、カップリング成分を水溶液中に溶媒和化し、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム等の無機塩基から、あるいは、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、Dytekシリーズのアミン、DABCO(1,8−ジアゾビシクロ[2.2.2]オクタン)等を含む第三級アルキルアミン等の有機非求核性塩基から選択される。カップリング成分のモル数に対して、塩基の過剰が、約2.0から約10.0まで、または約3.0から8.0までのモル当量で変動するアルカリ性塩基の過剰量を使用することができる。酸は、塩基成分およびカップリング成分を中和し、緩衝処理した水性媒体中のカップリング成分の微細な再沈殿を引き起こす。普通の無機酸および有機酸、例えば、塩酸または酢酸等を使用することができ、カップリング成分混合物を準備するためにアルカリ性塩基の成分の合計量に対して1:1のモル比が使用され、それは、弱酸性の緩衝媒体を提供する。
【0046】
立体安定剤化合物は、固体または液体の形で、あるいは有機溶媒中の溶液としてカップリング混合物中に直接導入することができる。加えられる立体安定剤化合物の量は、その立体安定剤が有機溶媒中に分散、乳化または溶解できる形にされる限りは変化させることができ、ベンズイミダゾロン顔料の最終収量(質量)を基準として、約0.01重量%から約50重量%まで、または約0.5重量%から約25重量%まで、約5重量%から約10重量%までであり得る。水混和性有機溶媒を、それがジアゾニウム塩反応物または残留ニトロシル化種と反応しないことを条件として、使用することができ、例としては、脂肪族アルコール、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ジメチルスルホキシド、エチルメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、アルキレングリコール、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、Dowanol(登録商標)等およびそれらのモノ−またはジ−アルキルエーテル、等が挙げられる。特に適切な溶媒としては、脂肪族アルコール、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールおよびn−ブタノール、ジメチルスルホキシド、およびテトラヒドロフラン、またはそれらの組合せが挙げられる。任意の有機溶媒の量は、カップリング成分混合物の合計液体体積を基準として約0から約50体積%まで、好ましくは約2から約20体積%までの範囲であり得る。
【0047】
安定剤化合物の分散、乳化または可溶化を促進するために、任意の有機溶媒の存在下であっても、加熱または高せん断混合を使用することができる。特定の実施形態において、良好な分散を達成するためには、安定剤を水性カップリング媒体中に、10〜100℃の範囲の温度で組み込むこともまた有利である。その安定剤は、また、約3から12までの範囲のpHの水性カップリング媒体に導入することができる。その安定剤は、pHが2〜9、または4〜7の間で変化するカップリング混合物に加えることができることが望ましい。その安定剤は、適切な混合および分散が起こり得る限りは、カップリング混合物に任意の適切な速さで加えることができる。
【0048】
反応物の添加の順序は、1)立体安定剤(そのまままたは有機溶媒中のいずれか)をカップリング成分のアルカリ溶液中に直接加え、その後酸成分を加えて緩衝処理した酸性媒体中でカップリング成分の微細な再沈殿を引き起こすか、または2)カップリング成分のアルカリ溶液および立体安定剤(そのまままたは有機溶媒中のいずれか)を用意した酸成分の水溶液に別々に連続して加え、酸性条件下で立体安定剤化合物を存在させてカップリング成分の微細な再沈殿を引き起こすものであり得る。これらのプロセスにおいては、両方とも、カップリング成分は、非共有的に会合した立体安定剤化合物を含む微粒子懸濁液の状態となっている。
【0049】
最終のカップリング反応に対して、立体安定剤が存在する中でのこれらの主要な反応物の添加の順序および速さは、最終のベンズイミダゾロン顔料粒子の物理的および性能特性に対して影響を有し得る。複数の実施形態においては、工業的顔料製造において通常実施される通りに「連続的添加」法を使用したが、2種の顔料前駆物質(ジアゾおよびカップリング成分)は、さまざまな時点で、分散または乳化した立体安定剤化合物を既に含有する最終反応混合物に連続的に添加される。例えば、反応物添加のこの連続的方法に従い、m=11およびn=9である表4の立体安定剤化合物#23を使用するPigment Yellow151ナノ粒子の合成では、形成した粒子は、短くなった棒状の一次粒子および凝集体であり、約2〜約5の範囲の長さ:幅のアスペクト比を有することがSEM/STEM画像形成により観察され、動的光散乱により測定すると、約50nm〜約200nm、より典型的には約75nm〜約150nmの範囲である平均粒径を有した。
【0050】
カップリング反応混合物の内部温度は、ベンズイミダゾロン顔料ナノ粒子の水性スラリーを生成させるためには、約10℃から約60℃まで、または約15℃〜約30℃の範囲であり得る。30℃より高い内部温度は、最終顔料の粒径が望ましくないように増加する原因となり得る。化学反応を加熱する利点として、速い反応時間およびベンズイミダゾロン顔料の色の発現のような最終生成物の成長が挙げられるものの、加熱は、望ましくない粒子の凝集および結晶粒粗大化を促進することが知られている。
【0051】
反応を速めるために、内部温度を高めることに代わるものは、撹拌速度を高めることである。顔料が形成される際、その混合物はかなり増粘し、十分な混合を達成するためには強力な機械的撹拌を必要とする。スラリーの粘度を非常に少量の界面活性剤、例えば、数滴の2−エチルヘキサノールを加えることによって低下させることが可能であり得、それはまた、特により大きな規模のこの反応において有益な脱泡効果を提供することもできる。粘度および発泡を制御するための界面活性剤の利点と組み合わされた反応混合物を激しく撹拌している間に出されるせん断力は、また、顔料ナノ粒子の粒度および粒度分布を低下させる相乗的な利点も提供することができる。
【0052】
顔料ナノ粒子のスラリーは、これ以上処理も加工もせず、代わりに真空濾過または遠心分離法によって直ちに分離する。色発現を助けるために濃酢酸中で製品を煮沸することを必要とした既知のプロセスに反して、立体的に嵩高い安定剤化合物が使用される場合はそのような後からの処理は必要ない。その顔料固形分は、顔料の粒子表面としっかりと会合または結合していない過剰な塩または添加剤を除去するために、脱イオン水で存分に洗浄することができる。その顔料固形分は、熱によるバルク乾燥の間の一次ナノ粒子の融合を防ぐために、高真空下の凍結乾燥によるか、または約25〜50℃の温度での真空オーブン乾燥によって乾燥させる。得られる顔料は、TEM(透過電子顕微鏡)によって画像化すると、約50nmから約150nmまで、主に約75nm〜約125nmの長さを有する棒状のナノ粒子を示す主にナノスケールの一次粒子およびゆるく塊になった高品質のナノスケールの粒子凝集体からなる。これらの粒子を、n−ブタノール中のコロイド分散体として、動的光散乱技術によって、平均粒径、Z平均またはd50について測定したとき、その値は、約80nmから約200nmまで、または約100nmから約150nmまで変動した。ここで、平均粒径d50またはZ平均は、液体分散の中でブラウン運動により回転して形を変えている非球形顔料粒子の流体力学半径を、動いている粒子から散乱される入射光線の強度を測定することによって測定する光学技術の動的光散乱によって測定されることを述べておかなければならない。
【0053】
上記の方法を用いるナノスケールのベンズイミダゾロン顔料粒子の形状は、棒状であるが、いくつかのその他の形態の1つ以上であることができ、ナノスケール顔料粒子のアスペクト比は、1:1から約10:1まで、または1:1と5:1の間の範囲であり得る。
【0054】
より小さい粒径を有するPigment Yellow 151およびPigment Red 175等のベンズイミダゾロン顔料の顔料粒子を、立体的に嵩高い安定剤を使用しない界面活性剤単独の使用(例えば、ロジンタイプの表面剤のみを使用)により、採用される濃度およびプロセス条件によっては、上記の方法によって同様に調製することもできようが、その顔料生成物は、ナノスケールの粒子を主に示すことはなく、またその粒子は均一な形態を示さないであろう。立体的に嵩高い安定剤化合物を使用しない場合、上記の方法は、平均粒子直径が150nmから1000nmを超え、約5:1を超える大きな(長さ:幅の)アスペクト比を有する幅広い分布の細長い棒状の粒子の凝集体を一般に生成する。そのような粒子は、コーティング応用のためのマトリックス中に湿潤および/または分散させるのがどちらも非常に困難であり、一般に不十分な色特性を与える。適切な立体的に嵩高い安定剤化合物の、場合によって少量のロジンタイプの界面活性剤またはアルコールエトキシレート等の適切な界面活性剤と組み合わせた使用は、前述の合成方法を用いることにより、ナノスケールの寸法、より狭い粒径分布、および約5:1未満の低いアスペクト比を有する最小の顔料粒子を提供するであろう。
【0055】
このプロセスの有利な点としては、ベンズイミダゾロン顔料の粒径および意図した最終用途適用のための組成を調製する能力が挙げられ、その用途は、相変化、ゲルベースおよび放射線硬化性のインク、固形および無極性液体インク、溶剤系インクと水性インクおよびインク分散体を含めたトナーおよびインクならびにコーティング等である。圧電式インクジェット印刷における最終用途の適用に対して、ナノスケール粒子は、信頼できるインクジェット印刷を確保し、顔料粒子の凝集によって引き起こされる噴射の妨害を防ぐために有利である。さらに、ナノスケール顔料粒子は、印刷された画像の高められた色特性を提供するために有利である。
【0056】
形成されたナノスケール顔料粒子組成物は、さまざまなインク組成物中、例えば、通常のペン、マーカー等で使用されるインクを含めた液状(水性または非水性)インクビヒクル中等、液体インクジェットインク組成物、固形または相変化インク組成物等における、例えば、着色剤として使用することができる。例えば、その有色のナノ粒子は、約60℃〜約130℃の融解温度を有する固形および無極性相変化インク、溶剤系液体インクまたはUV硬化性等の放射線硬化性液体インク、および水性インクさえも含めたさまざまなインクビヒクル中に配合することができる。
【0057】
無極性の液体および固体相変化インク組成物は、キャリア、着色剤、ならびに溶媒、ワックス、酸化防止剤、粘着性付与剤、スリップ助剤、硬化性モノマーおよび/またはポリマー等の硬化性成分、1種以上の任意の添加剤、例えば、ゲル化剤、分散剤、開始剤、増感剤、湿潤剤、殺生剤、保存剤等を含む。形成したナノスケールのベンズイミダゾロン顔料粒子は、そのようなインク中で着色剤として、または機械的ロバスト性を高めるためのナノ充填剤として使用することができる。
【0058】
無極性の液体および固体相変化インク組成物は、1種以上の着色剤を含有する。顔料、染料、顔料と染料の混合物、顔料の混合物、染料の混合物等を含めた任意の望ましい、または効果的な着色剤をインク組成物中に使用することができる。インク組成物中に使用する着色剤は、完全に、形成したナノスケールのベンズイミダゾロン顔料粒子からなる。しかし、ナノスケールのベンズイミダゾロン顔料粒子は、その他の着色材料と組み合わせて使用することができ、その場合、ナノスケールのベンズイミダゾロン顔料粒子は、実質的に着色材料の大部分(約90重量%または約95重量%以上等)を構成することができるか、着色材料の大半(少なくとも50重量%以上等)を構成することができるか、または、着色材料の一部分(約50重量%未満等)を構成することができる。大きなサイズの市販の顔料よりナノ顔料を使用する2つの主要な利点は、ナノ顔料がインク配合物の信頼できる噴射(印刷ヘッド信頼性)を確保すること、およびインク組成物内の顔料の負荷の低減を可能にする、ナノ顔料の色性能の向上である。ナノスケールのベンズイミダゾロン顔料粒子は、画像ロバスト性等のその他の性質を向上させるために、着色剤として機能するように、および/またはナノ充填剤として機能するように、その他のさまざまな量でインク組成物中に含むこともできる。
【0059】
無極性インク組成物は、液体でも固体でもよいキャリア材料、または2種以上のキャリア材料の混合物も含む。液体インク組成物に関しては、そのようなインクのためのキャリアとしては、非プロトン性および無極性の液体、例えばシクロヘキサノン等;エーテル、例えばジメトキシエタン等;トルエン等の芳香族炭化水素;o−、p−、とm−キシレンおよびそれらの混合物;モノ−およびジクロロベンゼン;リモネン、ピネン、カンフェン、ファルネセン等のテルペノイド溶媒;および直鎖状もしくは分枝状脂肪族炭化水素、例えば、ヘキサン、パラフィン炭化水素等;ならびにそれらの混合物を挙げることができる。例えば、約1〜約30個の炭素原子を有する適切な直鎖状および分枝状脂肪族炭化水素の例としては、イソパラフィン炭化水素フラクションの狭い部分である、Exxon Corporation製の炭化水素のISOPAR(商標)シリーズが挙げられる。その他の適切な溶媒材料としては、例えば、Exxon Corporationから入手できるn−パラフィンの組成物である液体のNORPAR(商標)シリーズ、Phillips Petroleum Companyから入手できる液体のSOLTROL(商標)シリーズ、およびShell Oil Companyから入手できる液体のSHELLSOL(商標)シリーズが挙げられる。
【0060】
ナノスケールサイズの顔料を、溶解性が保証されたさまざまなポリマーおよびその他のインク成分と共に分散させるのに使用することができるその他のキャリア液または溶媒としては、主にポリ不飽和脂肪酸からなる乾性油、例えば、キリ油、ダイズ油、アマニ油、ベニバナ油、ヒマワリ油、カノーラ油、ケシ油、エノ油、オイチシカ油、クルミ油、さまざまな魚油、およびそれらの適切な混合物が挙げられる。使用することができるさらにその他のキャリア液または溶媒としては、非乾性油、例えば、パラフィン油、ナフテン油、イソパラフィン油、牛脚油、菜種油、綿実油、ヒマシ油、オリーブ油、ヤシ油、シクロメチコンおよびジメチコン等のシリコーン油、フタル酸ジアルキル、例えば、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジオクチルおよびアジピン酸ジオクチルを含めたジエステル系油、バラ油等の精油、ならびにそれらの適切な混合物が挙げられる。
【0061】
固体の無極性(または相変化)インクジェットインク組成物に関しては、そのキャリアは、1種以上の有機またはポリマー化合物を含むことができる。そのような固体インク組成物のためのキャリアは、一般に、室温(約20℃〜約25℃)で固体であるが、印刷面上に噴出するために、プリンタの動作温度で液体になる。したがって、固体インク組成物のための適切なキャリア材料としては、例えば、ジアミド、トリアミド、テトラアミド等を含めたアミドを挙げることができる。適切なトリアミドとしては、例えば、米国特許出願公開第2004−0261656号で開示されているものが挙げられる。モノアミド、テトラアミド、それらの混合物を含めた脂肪酸アミド等のその他の適切なアミドが、例えば、米国特許第4,889,560号、同第4,889,761号、同第5,194,638号、同第4,830,671号、同第6,174,937号、同第5,372,852号、同第5,597,856号、および同第6,174,937号、ならびに英国特許第2238792号で開示されている。アミドをキャリア材料として使用する実施形態においては、ジアミドおよびテトラアミド等のその他のアミドと比較してより立体的な構造を有すると考えられているため、トリアミドが特に有用である。
【0062】
固体インク組成物中で使用することができるその他の適切なキャリア材料としては、例えば、イソシアネート由来の樹脂およびワックス、例えば、ウレタンイソシアネート由来の材料、尿素イソシアネート由来の材料、ウレタン/尿素イソシアネート由来の材料、それらの混合物等が挙げられる。
【0063】
さらなる適切な固体インクキャリア材料としては、パラフィン、微結晶性ワックス、ポリエチレンワックス、エステルワックス、アミドワックス、脂肪酸、脂肪酸アルコール、脂肪酸アミドおよびその他のワックス状材料、スルホンアミド材料、さまざまな天然源から作製された樹脂状材料(例えば、トール油ロジンおよびロジンエステル等)、ならびに多くの合成樹脂、オリゴマー、ポリマーおよびコポリマー、例えば、エチレン/ビニルアセテートコポリマー、エチレン/アクリル酸コポリマー、エチレン/ビニルアセテート/アクリル酸コポリマー、ポリアミドを有するアクリル酸のコポリマー等、イオノマー等、ならびにそれらの混合物が挙げられる。これらの材料の1種以上も、脂肪酸アミド材料および/またはイソシアネート由来の材料を有する混合物中に使用することができる。
【0064】
インク組成物は、場合によって、粘度調整剤を含有する。適切な粘度調整剤の例としては、ステアロン等の脂肪族ケトン等が挙げられる。存在する場合、任意の粘度調整剤は、任意の望ましい、または効果的な量、例えば、インクの約0.1〜約99、または約1〜約30、または約10〜約15質量パーセントでインク中に存在することができる。
【0065】
これらのナノスケール顔料は、さまざまな媒体中に分散させることができる。ナノスケール顔料の分散およびコーティングの能力を支援するポリマーバインダー(ポリマー分散剤)としては、ロジン天然物の誘導体、アクリル系ポリマー、スチレン系コポリマー、α−オレフィンのコポリマー、例えば、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、1−トリアコンテン等のコポリマー、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、ビニルピロリジノンのコポリマー、ポリエステルコポリマー、ポリアミドコポリマー、およびアセタールのコポリマーが挙げられる。ポリマー分散剤のその他の例としては、限定はされないが、ポリ(ビニルブチラール−co−ビニルアルコール−co−ビニルアセテート)、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリビニリデンジフルオリド、MOR−ESTER49000(登録商標)等のポリエステル、ポリカーボネートポリマー、例えば、Lexan(登録商標)およびMerlon(登録商標)M−39、ならびにポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(スチレン−b−4−ビニルピリジン)、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリオール、例えば、Pluronic(登録商標)およびPluronic(登録商標)Rポリマー、グリコールポリマー、例えば、ポリエチレングリコールポリマーおよびそれらの誘導体、ポリスルホン、ポリアリールエーテル、ポリアリールスルホン等が挙げられる。少なくとも2種のポリマーの適切な混合物も、ナノスケール顔料を液体媒体中に分散させるのに使用することができる。
【0066】
多くの市販の分散剤、例えば、BYK−Chemieのもの、Efka添加剤、およびLubrizolは、顔料をさまざまな液体媒体中に分散させるのによく適している。しかし、例えば、コーティングを生成するのに着色分散体を使用することが適切な場合、ポリマー樹脂を着色分散体中に含んで、コーティング基材に対する塗膜の凝集的および粘着的な補強を援助することが有益である。例えば、連続インクジェット印刷またはドロップオンデマンドインクジェット印刷によるもの等、基材上に小さい、位置合わせされた滴が得られた場合、着色分散体またはインク中へのポリマー樹脂の包含により、その後、画像の光沢またはざらつき等の画像の望ましい様相を改善することができる。
【0067】
インクへのその他の任意の添加剤としては、清澄剤、粘着性付与剤、接着剤、可塑剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0068】
液体または固体の無極性インク組成物中のキャリアは、任意の望ましい、または効果的な量でインク中に存在することができる。例えば、キャリアは、インクの約0.1〜約99質量パーセント、または約50〜約98質量パーセント、または約75〜約90質量パーセントの量で存在することができる。
【0069】
本開示の無極性固体(相変化)インク組成物は、一般に、約50℃より高い、または約50℃〜約160℃以上の融点を有する。固体インク組成物は、約70℃〜約140℃、または約80℃〜約120℃の融点を有する。固体インク組成物は、噴射温度(一般に、約75℃〜約140℃、または約80℃〜約130℃または約100℃〜約120℃等)で、一般に、約2〜約30センチポアズ、または約5〜約20センチポアズまたは約7〜約15センチポアズの溶融粘度も有する。固体インクの硬度は粘度が低いと減少する傾向にあるため、望ましい程度の画像ロバスト性を保持しながら信頼できる噴射性能を確保するように、粘度が可能な限り低いことが望ましい。
【0070】
インク組成物は、場合によって、インクを使用する印刷ヘッドのタイプおよび版式次第でもよいその他の機能材料も含有することができる。例えば、インク組成物は、一般に、基材に直接印刷するモードまたは間接もしくはオフセット印刷転移システムにおいて使用することを意図している。
【0071】
インク組成物は、任意の望ましい、または適切な方法により調製することができる。着色された無極性固体(相変化)インク組成物の調製は、顔料分散体の作製の動作の間に、無極性固体インク成分を部分的または完全に顔料分散体へ包含することを含むことができる。これは、さまざまな入力エネルギーによる、さまざまな顔料濃度、さまざまな温度での顔料の分散も含むことができる。顔料は、さまざまな手段により分散するように、少なくとも1種の分散剤の有無に関わらず、加工することができる。
【0072】
顔料は、任意の適切な分散装置中の適切な粉砕媒体により、少なくとも1種の分散剤の有無に関わらず、任意の協力剤の有無に関わらず、加工することができる。無極性の固体相変化インク組成物は、成分の一部またはすべてを組み合わせること、その混合物を少なくともその融点、例えば約70℃〜約120℃まで加熱すること、および実質的に均一および一定な溶融物が得られるまでその混合物を撹拌することにより調製し得る。顔料が選択した着色剤である場合、その溶融混合物は、インクビヒクル中の顔料の分散をもたらすように、磨砕機またはボールミル装置での粉砕に付してもよい。
【実施例】
【0073】
(比較例1)
Pigment Yellow151の調製(立体安定剤なし、界面活性剤なし):
250mLの丸底フラスコにアントラニル酸(6.0g、Sigma−Aldrich、Milwaukee、WI(ウィスコンシン州)から入手できる)、脱イオン水(80mL)および5MのHCl水溶液(20mL)を加える。その混合物を室温ですべての固形物が溶解するまで撹拌し、次いで、0℃まで冷却する。亜硝酸ナトリウム(3.2g)の溶液を脱イオン水(8mL)に溶解させ、次いで、アントラニル酸の溶液に、0〜5℃の混合物内の内部温度範囲を維持する速度で滴下して加える。ジアゾ化が完了したら、その溶液をさらに0.5時間撹拌する。カップリング反応の前に、希釈された尿素水溶液のアリコートを使用して、過剰な亜硝酸イオンを破壊する。カップリング成分のための2番目の混合物を、500−mLの容器に脱イオン水(100mL)および水酸化ナトリウム(5.5g)を加えること、撹拌して溶解させること、次いで、5−(アセトアセタミド)−2−ベンズイミダゾロン(10.5g、TCI America、Portland、OR(オレゴン州)から入手できる)を、すべての固形物が溶解するまで勢いよく撹拌しながらこの溶液に添加することにより調製する。次いで、氷酢酸(15mL)、5MのNaOH溶液(30mL)および脱イオン水(200mL)を含有する別の溶液を、勢いよく撹拌しながらカップリング成分のアルカリ性溶液に滴下して加えると、その後、そのカップリング成分は粒子の白色懸濁液として沈殿し、その混合物は弱酸性となる。カップリング反応のために、冷たいジアゾ化混合物を、勢いよく撹拌しながらカップリング成分の懸濁液に滴下してゆっくり加え、顔料の赤みがかった黄色のスラリーを生成する。そのスラリーを室温でさらに2時間撹拌すると、その後、その顔料を真空濾過により単離し、大量の脱イオン水により複数回洗浄し(各250mLで3回)、次いで、凍結乾燥させる。顔料の赤みがかった黄色の顆粒が得られ、TEM画像は、200〜500nmの範囲の粒子直径を有し、高アスペクト比を有する、棒の形をした粒子の大きな凝集体を示す。
【0074】
[実施例1]
表3の置換ピリジン立体安定剤#20の合成:
【化13】

100mLの丸底フラスコに1.02g(6.09mmol)の2,6−ピリジンジカルボキシレート(Sigma−Aldrich、Milwaukee、WI)および20mLの無水テトラヒドロフラン(THF)を加える。その懸濁液を不活性雰囲気下で撹拌する。この懸濁液に、2.2mL(0.0252mol)の塩化オキサリル(Sigma−Aldrich、Milwaukee、WI)を滴下して加え、その後、3滴のN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を触媒として滴下して加える。10分後、固形物のすべてが完全に溶解させ、室温での撹拌をさらに1時間継続する。次いで、その溶媒を回転蒸発により除去し、二酸塩化物の油状の残渣を真空中で乾燥させる。
【0075】
250mLの丸底フラスコに4.10g(0.0115mol)のPA−24一級アミン(Air Products Ltd.の1事業部のTomah productsから入手)および40mLの無水THFを加える。その溶液を不活性ガスで酸素なしでパージし、次いで、0℃まで冷却する。次いで、20mLの無水THF中の2,6−ピリジンジカルボン酸ジクロリドの冷却した溶液(ステップI)を、そのアミンを含有する上記の溶液に滴下してゆっくり加える。トリエチルアミン(2.5mL、0.0179mol)を添加し、その反応物を室温までゆっくりと温めながら撹拌する。反応の完了後、10mLの脱イオン水および40mLの酢酸エチルをその混合物に添加し、底部の水層を除去する。その有機層を脱イオン水により洗浄し、分離する。その溶媒を回転蒸発により除去し、残った残留生成物を真空中で乾燥させて、NMR分光分析によると高純度である粘稠な琥珀油(4.85g、収率95%)を生じさせた。
【0076】
[実施例2]
表4の置換ピリジン立体安定剤#23の合成
【化14】

100mLの丸底フラスコに1.04g(0.00623mol)の2,6−ピリジンジカルボキシレート(Sigma−Aldrich、Milwaukee、WI)および20mLの無水テトラヒドロフラン(THF)を加える。その懸濁液を不活性雰囲気下で撹拌する。この懸濁液に2.2mLの(0.0252mol)の塩化オキサリル(Sigma−Aldrich、Milwaukee、WI)を滴下して加え、その後、3滴のN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を触媒として滴下して加える。15分後、固形物のすべてが溶解し、室温での撹拌をさらに2時間継続する。次いで、その溶媒を回転蒸発により除去し、二酸塩化物の油状の残渣を真空中で乾燥させる。
【0077】
3つ口の100mLの丸底フラスコに2,6−ピリジンジカルボン酸ジクロリド(ステップI由来の生成物)および5mLの無水THFを加え、その混合物を不活性雰囲気下で撹拌する。ISOFOL20(Sasol America、TX(テキサス州)から入手した分枝状アルコール)を2.5Mの無水THF溶液として調製し、次いで、その6mLを上記の酸塩化物溶液にゆっくりと添加する。次いで、その反応混合物を還流下で1.5時間加熱する。次いで、その混合物を室温まで冷却し、少量の脱イオン水で失活させる。その有機溶媒を回転蒸発により除去して、NMR分光分析によると高純度のものである粘稠な黄色油(4.54g、100%)としての生成物を得る。
【0078】
[実施例3]
置換ピリジン立体安定剤を有するPigment Yellow151ナノ粒子の合成:
アントラニル酸のジアゾ化を、0.72g(5.25mmol)のアントラニル酸、10mLの脱イオン水、2.6mLの5M塩酸、1mLの5.9M NaNO(5.93mmol)を使用すること以外は比較例1と同じ手順で実施する。30分の撹拌後、冷たいジアゾニウム塩溶液を室温でゆっくりと、以下の方法で調製したカップリング成分の懸濁液に添加する:
【0079】
実施例1に従って調製した立体安定剤化合物(0.210g、0.249mmol、または理論顔料収量の10重量%)を、1.21g(5.19mmol)の5−アセトアセチルアミノ−ベンズイミダゾロン(TCI Americaから入手)、7.2mLの5M水酸化ナトリウム水溶液、および76mLの脱イオン水を含有する溶液で乳化する。10分の急速な機械撹拌の後、2.2mLの濃氷酢酸をエマルジョンに添加し、それにより、微細な白色のカップリング成分の懸濁液を得る(ジアゾニウム塩溶液による反応に関して)。
【0080】
6時間の撹拌後、黄色の顔料固形分を、Supor0.8μmフィルタ膜織物(PALL Corp.)を通す真空濾過により分離する。その顔料のウェットケーキを脱イオン水中に再スラリー化し、次いで、凍結乾燥の前に真空濾過によりさらに2回分離し、その後、その顔料生成物を明るい黄色の粉末(2.02g)として得る。その顔料固形分の電子顕微鏡分析(SEM/STEM)は、20〜300nmの間の範囲の長さを有し、その大半が約100nm未満である、圧倒的に小さな細長い一次ナノ粒子を示す。その試料のコロイド溶液(n−BuOH、0.01mg/mL)の動的光散乱(DLS)分析は、101nmの平均流体力学的有効径(Deff)を示した(PDI=0.235)。
【0081】
[実施例4]
置換ピリジン立体安定剤を有するPigment Yellow151ナノ粒子の合成:
1.79g(13.1mmol)のアントラニル酸、30mLの脱イオン水、および6.5mLの5M塩酸を撹拌しながら温度計を備えた3つ口丸底フラスコに入れて混合する。内部温度を0℃より下に維持する速度で2.5mLの冷たい5.7MのNaNO水溶液(15.7mmol)を添加する前に、その透明な溶液を0℃より下まで冷却する。冷たいジアゾ溶液をさらに30分撹拌し、その後、室温でゆっくりと、以下の方法で調製したカップリング成分の懸濁液に添加する:
【0082】
実施例2に従って調製した立体安定剤化合物(0.5g、0.686mmol、理論顔料収量の10重量%)を、3.05g(13.1mmol)の5−アセトアセチルアミノ−ベンズイミダゾロン(TCI America)、18mLの5M水酸化ナトリウム水溶液、および200mLの脱イオン水を含有する溶液に熱い状態で添加し、その混合物を急速に機械撹拌下で乳化する。10分後、5.5mLの濃氷酢酸をそのエマルジョンに添加し、それにより、微細な白色のカップリング成分の懸濁液を得る(ジアゾニウム塩溶液による反応に関して)。
【0083】
一晩の撹拌後、その黄色の顔料固形分を、Supor0.45μmフィルタ膜織物(PALL Corp.)を通す真空濾過により分離する。その顔料のウェットケーキを脱イオン水中に再スラリー化し、次いで、凍結乾燥の前に真空濾過によりさらに2回分離し、その結果、明るい黄色の粉末(4.80g)が生じる。その顔料固形分の電子顕微鏡分析(SEM/STEM)は、20〜200nmの間の範囲の長さを有し、その大半が約100nm未満である、圧倒的に小さな細長い一次ナノ粒子を示す。その試料のコロイド溶液(n−BuOH、0.01mg/mL)の動的光散乱(DLS)分析は、143nm(PDI=0.186)の平均流体力学的有効径(Deff)を示した。
【0084】
(インク例1)
Pigment Yellow151ナノ粒子を有する固体インク配合物の調製:
実施例3で作製したPY151ナノ粒子に基づいてインクを作製した。Union Processから入手できるSzegvari01磨砕機に、Hoover Precision Products,Incから入手できる直径1/8インチの440Cグレード25の鋼球1800.0gを加えた。以下の成分を同時に添加し、120℃で600mLのビーカー中で溶融混合した:Baker Petroliteの蒸溜ポリエチレンワックス76.7g、トリアミドワックス(米国特許第6,860,930号に記載のトリアミド)21.2g、Crompton Corporationから市販されているS−180 19.8g、Arakawa Corporationから市販されているKE−100樹脂19.1g、Crompton Corporationから入手できるNaugard−445(酸化防止剤)0.3g、およびChevron Corporationから入手できるOLOA11000 14.37g。得られた溶液を定量的に磨砕機(attritor)の容器に移動させた。磨砕機の容器に実施例3のPY151ナノ粒子6.2gを添加した。その着色混合物を一晩、19時間かけて175RPMで磨砕させると、続いて、そこで得られた、優れた易流動性の挙動を示すインクをその溶融状態で排出し、鋼球から分離した。
【0085】
(インク例2)
PY151ナノ粒子を有する着色固体インク配合物の濾過および凍結融解性能:
次いで、インク例1と同様に調製したインクを、Advantec MFS,Incから入手できるKST−47濾過装置中の1ミクロンのフィルタを通して首尾よく濾過した。次いで、インクに対するさらなるストレスとして、濾過したインクを凍結させ、次いで、翌日に120℃で再溶融させ、そこで再び1ミクロンのフィルタを通して首尾よく濾過した。インクのアリコートを沈降管に移動させ、そこでインクを120℃で7日間オーブンに入れたままにした。インクの分離は観察されず、そのことは、インク中のPigment Yellow151ナノ粒子の安定化が保持されたことを示した。市販の大きなサイズの黄色の顔料を無極性の固体インクビヒクル中に配合および分散させる本発明者らの試みが失敗し、そのため、インク例1のこのインクが、1ミクロンのフィルタを通して首尾よく濾過できる可能性のある、実証済の黄色の着色された無極性固体インクを表すことに留意されたい。
【0086】
(インク例3)
Pigment Yellow151ナノ粒子を有する固体インク配合物の調製:
実施例2で作製したPY151ナノ粒子に基づいてインクを作製した。Union Processから入手できるSzegvari01磨砕機に、Hoover Precision Products,Incから入手できる直径1/8インチの440Cグレード25の鋼球1800.0gを加えた。以下の成分を同時に添加し、120℃で600mLのビーカー中で溶融混合した:Baker Petroliteの蒸溜ポリエチレンワックス65.8g、トリアミドワックス(米国特許第6,860,930号に記載のトリアミド)22.3g、Crompton Corporationから市販されているS−180 35.6g、Arakawa Corporationから市販されているKE−100樹脂20.1g、Crompton Corporationから入手できるNaugard−445(酸化防止剤)0.3g、およびLubrizol Corporationから入手できるLubrizol2153 11.5g。得られた溶液を定量的に磨砕機の容器に移動させた。磨砕機の容器に実施例2で作製したPY151ナノ粒子9.5gを添加した。その着色混合物を一晩、19時間かけて175RPMで磨砕させると、続いて、そこで得られた、優れた易流動性の挙動を示すインクを、その溶融状態で放出し、鋼球から分離した。
【0087】
(インク例4)
PY151ナノ粒子を有する固体インク配合物の濾過および凍結融解性能:
次いで、インク例3のインクを、Advantec MFS,Incから入手できるKST−47濾過装置中の1ミクロンのフィルタを通して首尾よく濾過した。次いで、インクに対するさらなるストレスとして、濾過したインクを凍結させ、次いで、続いて翌日に120℃で再溶融させ、そこで再び1ミクロンのフィルタを通して首尾よく濾過した。インクのアリコートを沈降管に移動させ、そこでインクを120℃で7日間オーブンに入れたままにした。インクの分離は観察されず、そのことは、インク中のPigment Yellow151ナノ粒子の安定化が保持されたことを示した。
【0088】
インク例3および4のインクは、また、Xerox Phaser8860固体インクジェットプリンタで首尾よく噴射させ、得られた印刷物は画質が適度に一定であった。
【0089】
無極性液体分散体の調製:
無極性液体キャリア中のさまざまな顔料の分散性および熱安定性を確認するために、低蒸気圧を有する不活性および無極性溶媒であり、多くのピエゾ式インクジェットインクと類似の粘度、25℃で約15センチポアズを有するため、Isopar Vを使用することが簡便であった。
【0090】
(比較例2)
無極性の液体顔料分散体:
市販のC.I.Pigment Yellow151の分散体を以下の方法で作製した。30mLのボトルに0.42gのOLOA11000(Chevron Oronite Company LLCから入手できる)、6.48gのIsopar V(Univar Canada Ltd.から入手できる)を添加し、撹拌させてOLOA11000を溶解させた。この均一な溶液にHoover Precision Products,Incから入手できる直径1/8インチの440Cグレード25の鋼球70.0g、および0.28gのC.I.Pigment Yellow151顔料(Clariant Corporationから入手できる)を添加し、ボトルが約90RPMで4日間回転するように調整した速度であり、その温度はほぼ25℃であったボールミル上に置いた。その分散体を4日間粉砕した後、1.5gの得られた分散体を1ドラムのバイアルに移動させ、120℃のオーブンに入れたままにし、そこで分散体の粘度および熱安定性を定性的に評価した。その低粘度分散体は、120℃でまずまずの安定性しか示さず、120℃で6日間の加熱後にそのビヒクルからの一部の顔料粒子のわずかな沈降が明らかになり、120℃で13日間の加熱後に粒子の大きな沈降が発生した。
【0091】
[実施例5]
無極性の液体顔料分散体:
市販のC.I.Pigment Yellow151顔料(Clariant Corporationから入手できる)の代わりに実施例2で作製したPigment Yellow151ナノ粒子を使用したこと以外は、上記の比較例2と同じ方法で別の分散体を形成した。
【0092】
[実施例6]
無極性の液体顔料分散体:
実施例2に従って調製したPigment Yellow151ナノ粒子の別の合成バッチを使用して、実施例5と同じ方法で別の分散体を形成した。
【0093】
動的光散乱による粒径評価のための希釈分散体の調製:
分散体の比較例2で形成した分散体ならびに実施例5および6の無極性液体分散体を、動的光散乱法による粒径評価の間に顔料濃度の影響を排除するように希釈することが簡便であった。以下の方法は、全体的に、前述の分散体のそれぞれに適用した試料調製技法を要約したものである。10グラムの0.1重量%OLOA11000のIsopar V溶液を含有する清浄な30mLのボトルに、4滴の分散体を添加し、次いで、10秒間穏やかに超音波処理した。11回の試験それぞれの5回の測定を完了するように、新しく形成した希釈分散体の十分な部分をガラスキュベットに移動させ、次いで、Zetasizer HT粒径分析器(型番ZEN3600、Malvern Instruments Ltd.製)に入れた。1ドラムのバイアル中の分散体の周期的サンプリングを、120℃のオーブンで熟成させながら、無極性液体分散体の実施例5および6からのものを含めた、試験したこの、およびその他のIsopar V分散体について実施した。市販の(大きなサイズの)PY151顔料により作製した無極性分散体の比較例2と、本発明のPY151ナノ粒子により作製した実施例5および6の着色分散体との間の劇的な粒径分布の差から判断して、測定した強度値のZ−平均(Zavg)直径と、強度値の多分散性指数(PDI)を比較することが簡便であり、すべての値を表13にまとめた。
【0094】
【表13】
【0095】
表13のZavgの結果は、市販のPigment Yellow151顔料(Clariant Corporationから入手)を含有する分散体が、ボールミル粉砕後に、本発明の実施例のPY151ナノ粒子を含有するボールミル粉砕した分散体と比較して、約2倍大きい粒径を有していたことを明らかに示す。120℃で13日間熟成させたさまざまな分散体試料の多分散性指数は、本発明の実施例のPY151ナノ顔料を含有する分散体が、市販のPY151顔料を含有する分散体の比較例2より安定であったことを示した。
【0096】
ガラス上でのその濡れおよび脱濡れの能力で例示される分散体の細度は、分散体の品質の1つの指標である。流体系分散体の不十分な濡れは、一般に、それ自体がガラス基材上で不十分なフィルム品質を有すること、例えば、明らかな粒状性および非連続相を示すことを明らかにする。そのような系は、未分散ならびに/あるいは凝集および集塊した顔料粒子の少なくとも一部を含有する。対照的に、流体系分散体のガラス基材上の優れた濡れは、例えば、非常に高い透明フィルム品質を有することを特徴とし、したがって顔料粒子の大多数が十分に分散したことを示す。経時的および高温での分散体の安定性は、上記の方法で定性的に評価できる。分散体の比較例2ならびに分散体の実施例5および6で調製し、120℃でガラスバイアル中で熟成させたIsopar V液体の無極性分散体の品質の視覚的評価を完了し、表14にまとめた。
【0097】
【表14】
【0098】
本発明のPY151ナノ顔料を含有する調製した無極性液体分散体の小さくてより熱的に安定な粒径分布を、市販のPigment Yellow151により調製した無極性液体分散体と比較した。より小さくてより熱的に安定な本発明のPY151粒径分布により、本発明のナノスケールPY151顔料は、ピエゾ式インクジェット印刷用インクを含めたインクジェット印刷用インクでの使用によりいっそう適切になる。
【0099】
[好ましい態様]
(1)請求項1に記載の組成物であって、ジアゾ成分の基が、DC〜DC
【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

および
【化21】
,
からなる群から選択され、
但し、は、顔料前駆物質中のアミノ基(−NH)に対する結合の点、および顔料構造におけるアゾ基(−N=N−)に対する結合の点を示し、
〜Rは、独立して、H;ハロゲン;n=0〜6である(CHCH;OH;R’がH、(CHCH、またはCを表し、nが1から約6までの数を表すアルコキシル基−OR’;COH;COCH;n=0〜5であるCO(CHCH;CONH;(CO)R’(R’が、独立して、H、C、n=0〜12である(CHCH、またはn=1〜5である(CHN(CHを表すことができる);OCH;OCHCHOH;NO;SOH;または次の構造の基:
【化22】

【化23】

【化24】

および
【化25】
のいずれかを表し、
DCおよびDCにおいては、R’は、H、(CHCH、またはCを表し、nは、1〜約6の数を表し、
Aは、n=0〜6である−(CH−;n=0〜6である−[O−(CH−O]−;n=0〜6およびR=HまたはCHである−[O−CHCHR)]−;−(C=O)−;O;S;n=1〜6である−(CH−(C=O)−;およびn=1〜6である−(C=O)−(CH−(C=O)−を表す
ことを特徴とする組成物。
【0100】
(2)請求項1に記載の組成物であって、求核性カップリング成分の基が、CCおよびCC
【化26】

【化27】

からなる群から選択され、但し、R、R10、R11、R12、およびR13は、すべて独立して、H、Br、Cl、I、F、CH、またはOCHを表し、は、アゾ基に対する結合の点を示すことを特徴とする組成物。