特許第5710169号(P5710169)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 積水ハウス株式会社の特許一覧 ▶ 奥地建産株式会社の特許一覧 ▶ 台灣▲ほあ▼司企業股▲ふん▼有限公司の特許一覧

<>
  • 特許5710169-壁構成部材の固定金具及び固定構造 図000002
  • 特許5710169-壁構成部材の固定金具及び固定構造 図000003
  • 特許5710169-壁構成部材の固定金具及び固定構造 図000004
  • 特許5710169-壁構成部材の固定金具及び固定構造 図000005
  • 特許5710169-壁構成部材の固定金具及び固定構造 図000006
  • 特許5710169-壁構成部材の固定金具及び固定構造 図000007
  • 特許5710169-壁構成部材の固定金具及び固定構造 図000008
  • 特許5710169-壁構成部材の固定金具及び固定構造 図000009
  • 特許5710169-壁構成部材の固定金具及び固定構造 図000010
  • 特許5710169-壁構成部材の固定金具及び固定構造 図000011
  • 特許5710169-壁構成部材の固定金具及び固定構造 図000012
  • 特許5710169-壁構成部材の固定金具及び固定構造 図000013
  • 特許5710169-壁構成部材の固定金具及び固定構造 図000014
  • 特許5710169-壁構成部材の固定金具及び固定構造 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5710169
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】壁構成部材の固定金具及び固定構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/80 20060101AFI20150409BHJP
   E04B 2/56 20060101ALI20150409BHJP
   E04B 2/74 20060101ALI20150409BHJP
【FI】
   E04B1/80 100F
   E04B2/56 622G
   E04B2/74 511G
【請求項の数】5
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2010-170957(P2010-170957)
(22)【出願日】2010年7月29日
(65)【公開番号】特開2012-31611(P2012-31611A)
(43)【公開日】2012年2月16日
【審査請求日】2013年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000121729
【氏名又は名称】奥地建産株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500568860
【氏名又は名称】台灣▲ほあ▼司企業股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(74)【代理人】
【識別番号】100142572
【弁理士】
【氏名又は名称】水内 龍介
(74)【代理人】
【識別番号】100084629
【弁理士】
【氏名又は名称】西森 正博
(72)【発明者】
【氏名】仲野 綾
(72)【発明者】
【氏名】野口 悟志
(72)【発明者】
【氏名】木村 充伸
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 渉
(72)【発明者】
【氏名】王 明宏
【審査官】 五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−028893(JP,A)
【文献】 特開平07−119313(JP,A)
【文献】 特開平10−252191(JP,A)
【文献】 特開2006−070507(JP,A)
【文献】 特開平10−252190(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/24
E04B 1/80
E04B 2/56
E04B 2/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁軸組(80)の屋内側に内壁パネル等の壁構成部材(90)を固定するための固定金具(1)であって、前記壁軸組(80)の屋内側に配設される金具本体(2)と、前記金具本体(2)を前記壁軸組(80)に止め付けるための止め付け部材(3)と、前記壁構成部材(90)を前記金具本体(2)に押し付け固定するための押し付け部材(4)とを備え、前記金具本体(2)は、前記壁軸組(80)に設置する屋外側設置部(20)と、前記壁構成部材(90)を設置する屋内側設置部(21)と、これら屋外側設置部(20)と屋内側設置部(21)とを連結する連結部(22)とを備え、前記止め付け部材(3)は、前記金具本体(2)の屋外側設置部(20)よりも屋内側に配された基端部(30)と、この基端部(30)から屋外方向に延出されて、隣接する壁軸組(80)(80)間の縦目地部(82)若しくは壁軸組(80)の貫通穴に挿通される挿通部(31)と、この挿通部(31)の先端部分に形成されて、前記壁軸組(80)の屋外側に係止可能とされた係止部(32)とを備え、前記金具本体(2)に対して前記止め付け部材(3)が屋内外方向に移動可能に配され、前記金具本体(2)の屋外側設置部(20)と前記止め付け部材(3)の基端部(30)との間に、前記金具本体(2)を前記壁軸組(80)に止め付けた状態において、前記金具本体(2)を屋外方向に付勢するとともに、前記止め付け部材(3)を屋内方向に付勢するバネ部材(5)が介装され、前記押し付け部材(4)は、前記金具本体(2)の前記屋内側設置部(21)を貫通して、前記止め付け部材(3)の前記基端部(30)のボルト穴(33)に螺合された固定ボルト(40)と、この固定ボルト(40)の頭部(41)に着脱可能に取り付けられて、前記壁構成部材(90)を屋外方向に押圧する押さえプレート(42)とを備えていることを特徴とする壁構成部材の固定金具。
【請求項2】
前記金具本体(2)は、略コ字枠状に形成され、前記バネ部材(5)は、前記金具本体(2)の枠内に収容されている請求項1記載の壁構成部材の固定金具。
【請求項3】
前記金具本体(2)の屋外側設置部(20)に、前記固定ボルト(40)の先端部分が挿通可能とされたボルト逃がし穴(25)が形成されている請求項1又は2に記載の壁構成部材の固定金具。
【請求項4】
前記金具本体(2)の屋内側設置部(21)に着脱可能に装着されて、前記屋内側設置部(21)と前記壁構成部材(90)との間に介在されるふかし部材(60)を備えた請求項1乃至3のいずれかに記載の壁構成部材の固定金具。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の固定金具(1)を用いて、壁軸組(80)の屋内側に壁構成部材(90)を固定した固定構造であって、前記壁軸組(80)の屋内側に配設した前記金具本体(2)を、前記止め付け部材(3)によって前記壁軸組(80)に止め付けて、前記バネ部材(5)の付勢力を利用して前記金具本体(2)の屋外側設置部(20)と前記止め付け部材(3)の係止部(32)とで前記壁軸組(80)を挟持し、前記壁軸組(80)の屋内側に建て込んだ前記壁構成部材(90)を、前記押し付け部材(4)によって前記金具本体(2)に押し付け固定したことを特徴とする壁構成部材の固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、住宅等の建物の内壁部において、壁軸組の屋内側に内壁パネル等の壁構成部材を固定するための固定金具及びこれを用いた壁構成部材の固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、住宅等の内壁部において壁軸組の屋内側に内壁パネルを固定するための固定金具として、例えば特許文献1及び特許文献2に開示されているものが知られている。この固定金具70は、図13及び図14に示すように、隣接する壁軸組80、80における隣り合う軸柱81、81の屋内側に配設される金具本体71と、この金具本体71の屋外側(裏面)に取り付けられたバネ部材72と、金具本体71の屋内側に嵌合可能とされたふかし部材73と、金具本体71を軸柱81、81に止め付けるための止め付け部材74と、隣接する内壁パネル90、90における隣り合う縦枠材91、91を金具本体71に嵌合したふかし部材73に押し付け固定するための押し付け部材75とを備えている。
【0003】
そして、この固定金具70を使用して、壁軸組80の屋内側に内壁パネル90を固定するには、まず止め付け部材74を、隣接する壁軸組80、80における隣り合う軸柱81、81間の縦目地部82に挿通させながら、金具本体71を、軸柱81、81における屋内側の内側面にバネ部材72を介して押し付ける。そして、この状態から金具本体71を90度回転させて、止め付け部材74の係止部76を縦目地部82の屋外側開口端に係止させることで、金具本体71を壁軸組80、80に止め付ける。このとき、バネ部材72の弾性復帰力によって止め付け部材74が屋内方向に付勢されて、止め付け部材74の係止部76が縦目地部82の屋外側開口端にしっかりと押し付けられることで、止め付け部材74の係止状態が維持され、金具本体71の脱落が防止される。続いて、内壁パネル90を壁軸組80の屋内側に建て込んだ状態で、金具本体71に螺合してある押し付け材75の固定ボルト77を締め付けることで、隣接する内壁パネル90、90における隣り合う縦枠材91、91をふかし部材73に押し付け固定する。これにより、内壁パネル90が固定金具70を介して壁軸組80の屋内側に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−252191号公報
【特許文献2】特開2003−193592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の固定金具70においては、金具本体71の屋外側に取り付けたバネ部材72の弾性復帰力によって、止め付け部材74を屋内方向に付勢して、止め付け部材74の係止状態を維持することができるものの、バネ部材72が軸柱81、81における屋内側の内側面に直接押し付けられた状態となっているので、金具本体71を90度回転させるときに、バネ部材72によって軸柱81、81の塗装等が剥がされて、軸柱81、81を傷付けてしまうおそれがあった。
【0006】
また、バネ部材72は、止め付け部材74を屋内方向に付勢するだけでなく、同時に金具本体71も屋内方向(軸柱81、81から離間する方向)に付勢しているので、止め付け状態の金具本体71が屋内外方向にがたつき易くなるおそれもあった。
【0007】
さらに、上記の固定金具70では、金具本体71における固定ボルト77の螺合位置が、軸柱81、81への設置部分(押し付け部分)に形成されているので、固定ボルト77を少しでもねじ込み過ぎると、固定ボルト77の先端部分が金具本体71よりも屋外側に突出して、軸柱81、81に干渉することになり、金具本体71の回転を阻害してしまう。このため、固定ボルト77の先端部分が金具本体71よりも屋外側に突出しないように、固定ボルト77の出寸法(ねじ込み量)を綿密に管理する必要があり、面倒であった。
【0008】
そこで、この発明は、上記の不具合を解消して、壁軸組に対して内壁パネル等の壁構成部材を簡単且つ良好に固定することができる固定金具及びこれを用いた壁構成部材の固定構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の固定金具1は、壁軸組80の屋内側に内壁パネル等の壁構成部材90を固定するためのものであって、前記壁軸組80の屋内側に配設される金具本体2と、前記金具本体2を前記壁軸組80に止め付けるための止め付け部材3と、前記壁構成部材90を前記金具本体2に押し付け固定するための押し付け部材4とを備え、前記金具本体2は、前記壁軸組80に設置する屋外側設置部20と、前記壁構成部材90を設置する屋内側設置部21と、これら屋外側設置部20と屋内側設置部21とを連結する連結部22とを備え、前記止め付け部材3は、前記金具本体2の屋外側設置部20よりも屋内側に配された基端部30と、この基端部30から屋外方向に延出されて、隣接する壁軸組80、80間の縦目地部82若しくは壁軸組80の貫通穴に挿通される挿通部31と、この挿通部31の先端部分に形成されて、前記壁軸組80の屋外側に係止可能とされた係止部32とを備え、前記金具本体2に対して前記止め付け部材3が屋内外方向に移動可能に配され、前記金具本体2の屋外側設置部20と前記止め付け部材3の基端部30との間に、前記金具本体2を前記壁軸組80に止め付けた状態において、前記金具本体2を屋外方向に付勢するとともに、前記止め付け部材3を屋内方向に付勢するバネ部材5が介装されていることを特徴とする。
【0010】
より具体的には、前記金具本体2は、略コ字枠状に形成され、前記バネ部材5は、前記金具本体2の枠内に収容されている。また、前記押し付け部材4は、前記金具本体2の屋内側設置部21を貫通して、前記止め付け部材3の基端部30のボルト穴33に螺合された固定ボルト40と、この固定ボルト40の頭部41に着脱可能に取り付けられて、前記壁構成部材90を屋外方向に押圧する押さえプレート42とを備えている。さらに、前記金具本体2の屋外側設置部20に、前記固定ボルト40の先端部分が挿通可能とされたボルト逃がし穴25が形成されている。
【0011】
さらにまた、前記金具本体2の屋内側設置部21に着脱可能に装着されて、前記屋内側設置部21と前記壁構成部材90との間に介在されるふかし部材60を備えている。
【0012】
この発明の壁構成部材の固定構造は、上記の固定金具1を用いて、壁軸組80の屋内側に壁構成部材90を固定したものであって、前記壁軸組80の屋内側に配設した前記金具本体2を、前記止め付け部材3によって前記壁軸組80に止め付けて、前記バネ部材5の付勢力を利用して前記金具本体2の屋外側設置部20と前記止め付け部材3の係止部32とで前記壁軸組80を挟持し、前記壁軸組80の屋内側に建て込んだ前記壁構成部材90を、前記押し付け部材4によって前記金具本体2に押し付け固定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明の固定金具においては、金具本体の屋外側設置部とこれよりも屋内側に位置する止め付け部材の基端部との間に介装したバネ部材によって、金具本体を屋外方向に付勢する(屋外側設置部を壁軸組の屋内側に押し付ける)とともに、止め付け部材を屋内方向に付勢する(係止部を壁軸組の屋外側に押し付ける)ことで、これら屋外側設置部と係止部とによって壁軸組を挟持した状態で、金具本体を壁軸組に止め付けることができるようになっている。
【0014】
このため、金具本体の壁軸組への止め付けに際して、バネ部材が壁軸組に干渉せず、バネ部材によって壁軸組を傷付けてしまうといった不具合が生じることがない。特に、略コ字枠状に形成した金具本体の枠内に、バネ部材を収容することによって、壁軸組との干渉を確実に防止することができる。しかも、金具本体を、屋内外方向にがたつきを生じさせることなく、壁軸組に強固に安定した状態で止め付けることができ、この金具本体に対して押し付け固定する壁構成部材の施工状態を良好に維持することができる。
【0015】
また、押し付け部材の固定ボルトを、金具本体の屋外側設置部よりも屋内側に位置する止め付け部材の基端部のボルト穴に螺合させることで、固定ボルトを十分にねじ込まない限り、その先端部分が金具本体の屋外側設置部よりも屋外側に突出せず、金具本体の壁軸組への止め付けに際して固定ボルトの先端部分が壁軸組に干渉しないことから、固定ボルトの出寸法(ねじ込み量)を綿密に管理しなくても済み、施工性の向上を図ることができる。さらに、固定ボルトの頭部に取り付けた押さえプレートによって、壁構成部材を屋外方向に押圧することで、その押圧面積を広く確保して、固定ボルトの締付力を壁構成部材に効果的に伝達して、壁構成部材を強固に安定した状態で押し付け固定することができる。
【0016】
さらにまた、金具本体の屋外側設置部にボルト逃がし穴を形成して、固定ボルトの十分なねじ込みを許容(固定ボルトの屋外方向への移動量を大きく確保)することで、例えば厚みや形状等の異なる各種の壁構成部材の押し付け固定を幅広く行うことができ、施工性の向上を図ることができる。
【0017】
また、金具本体の屋内側設置部に着脱可能なふかし部材を用いることで、壁軸組に対して壁構成部材を大きく離間させた状態で固定させることができ、壁構成部材の固定形態にバリエーションを持たせて、施工性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】この発明の一実施形態に係る固定金具を用いた内壁パネルの固定構造を示す横断面図である。
図2】同じくその要部を示す横断面図である。
図3】固定金具の斜視図である。
図4】固定金具の正面図である。
図5】固定金具の側断面図である。
図6】固定ボルトの頭部への押さえプレートの装着動作を示す斜視図である。
図7】固定金具の止め付け動作を示す斜視図である。
図8】固定金具の止め付け動作を示す平面図である。
図9】内壁パネルの建て込み動作を示す斜視図である。
図10】内壁パネルの建て込み動作を示す斜視図である。
図11】別の実施形態に係る固定金具を用いた内壁パネルの固定構造を示す横断面図である。
図12】ふかし部材を備えた固定金具の斜視図である。
図13】従来の固定金具を用いた内壁パネルの固定構造を示す横断面図である。
図14】従来の固定金具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。この発明の一実施形態に係る固定金具1は、図1及び図2に示すように、壁軸組80の屋内側に壁構成部材としての内壁パネル90を固定するためのものである。
【0020】
壁軸組80は、左右一対の軸柱81、81及び上弦材、下弦材を方形枠状に組み付けてなる枠体内に、耐力ブレース等を差し渡すことよって構成されている。軸柱81、81及び上弦材、下弦材は、例えば溝型鋼からなり、それら開放部分が枠内を向くようにして組み付けられている。そして、複数の壁軸組80は、横並びに配置されて、隣接する壁軸組80、80同士がボルト等によって連結されている。なお、これら壁軸組80の屋外側には、複数の外壁材85が横並びに取り付けられる。
【0021】
内壁パネル90は、左右一対の縦枠材91、91及び複数の横桟材を方形枠状に組み付けなる枠体内に、断熱材92を屋外側にはみ出るように充填することによって構成されている。縦枠材91、91及び横桟材は、例えば木製の角材からなり、縦枠材91、91においては、屋内側の角部を切り欠いてなる略L字状の切欠部91a、91aが形成されている。なお、このような切欠部91a、91aは、必ずしも形成する必要はない。また、断熱材92は、例えば容易に変形可能なグラスウールやポリスチレンフォーム等からなり、その左右の側端部92a、92aは薄肉状に形成されて、縦枠材91、91の屋外側の外側面に張り付けられている。そして、複数の内壁パネル90は、横並びに配置されて、隣接する内壁パネル90、90の隣り合う縦枠材91、91(以下、単に「内壁パネル90、90の縦枠材91、91」と称する。)が、隣接する壁軸組80、80の隣り合う軸柱81、81(以下、単に「壁軸組80、80の軸柱81、81」と称する。)に、複数の固定金具1を介して固定されている。なお、これら内壁パネル90の屋内側には、例えば石膏ボード等からなる複数の内壁材95が横並びに取り付けられる。
【0022】
固定金具1は、図3乃至図5に示すように、壁軸組80、80の軸柱81、81の屋内側に配設される金具本体2と、この金具本体2を軸柱81、81に止め付けるための止め付け部材3と、内壁パネル90、90の縦枠材91、91を金具本体2に押し付け固定するための押し付け部材4とを備えている。
【0023】
金具本体2は、壁軸組80、80の軸柱81、81における屋内側の内側面に設置する屋外側設置部20と、内壁パネル90、90の縦枠材91、91における屋外側の外側面を設置する屋内側設置部21と、これら屋外側設置部20と屋内側設置部21の他端部同士を連結する連結部22とを一体に備え、全体的に略コ字枠状に形成されている。これら屋外側、屋内側の設置部20、21及び連結部22の両側端部は、枠内方向へ向けて折り曲げられ、これにより一対のコ字状の補強用リブ23、23が構成されて、金具本体2の剛性が高められている。
【0024】
屋外側設置部20には、その一端部において開放する第1の凹状切欠24aと、他端部において開放する第2の凹状切欠24bが形成されている。また、屋外側設置部20の中央部付近には、ボルト逃がし穴25が形成されている。屋内側設置部21の中央部付近には、ボルト挿通穴26が形成されている。連結部23には、その一部を枠内方向へ折り曲げることによって、屋外側及び屋内側の設置部20、21に対して略平行に配されたボルト挿通穴27付きのボルト案内片28が形成されている。
【0025】
止め付け部材3は、金具本体2の屋外側設置部20よりも屋内側(具体的には屋外側設置部20とボルト案内片28との間)において、屋外側及び屋内側の設置部20、21に対して略平行に配された平板状の基端部30と、この基端部30から屋外方向に延出されて、壁軸組80、80の軸柱81、81間(具体的には軸柱81、81のウエブ間)の縦目地部82に挿通される帯板状の挿通部31と、この挿通部31の先端部分に形成されて、軸柱81、81の屋外側における縦目地部82の屋外側開口端に係止可能とされた係止部32とを一体に備え、金具本体2に対して屋内外方向に移動可能に配されている。
【0026】
基端部30には、その中央部付近においてバーリング加工を施すことによって、ボルト穴33を有する短筒状突起が形成されている。挿通部31は、金具本体2の屋外側設置部20における第1の凹状切欠24a内を貫通して屋外方向に延出されており、その長さ寸法が縦目地部82の奥行き寸法よりも僅かに大きくなっている。係止部32は、挿通部31の先端部分を幅広に形成することによって構成されており、その幅寸法が縦目地部82の幅寸法よりも大きくなっていて、縦向き状態とすることで縦目地部82に対して挿入させることができ、横向き状態とすることで縦目地部82の屋外側開口端に係止させることができるようになっている。
【0027】
そして、金具本体2の屋外側設置部20と止め付け部材3の基端部30との間には、バネ部材5が介装されている。このバネ部材5は、例えば金属製の板バネからなり、金具本体2の屋外側設置部20に重合状態で当接する第1当接片50と、止め付け部材3の基端部30に重合状態で当接する第2当接片51と、これら第1当接片50と第2当接片51とを連結する一対の波形状のバネ片52、52を一体に備え、金具本体2の枠内に収容された状態となっている。
【0028】
第1当接片50の中央部付近には、ボルト逃がし穴53が形成されている。また、第1当接片50には、金具本体2の屋外側設置部20における第2の凹状切欠24bを介して枠外に張り出して、軸柱81、81間の縦目地部82に嵌り込む位置決め片54が突設されている。なお、位置決め片54の先端部分は、丸められた状態となっていて、軸柱81、81との接触に際して、軸柱81、81を傷付けることがないように配慮されている。また、第2当接片51の中央部付近に形成された嵌合穴には、基端部30の短筒状突起が嵌り込んだ状態となっている。さらに、一対のバネ片52、52間には、ボルト挿通用間隙55が確保されている。
【0029】
押し付け部材4は、屋内側から金具本体2の屋内側設置部21のボルト挿通穴26及び連結部22のボルト案内片28のボルト挿通穴27に挿通されて、止め付け部材3の基端部30のボルト穴33に螺合された固定ボルト40と、この固定ボルト40の頭部41に着脱可能に装着されて、内壁パネル90、90の縦枠材91、91を屋外方向に押圧する押さえプレート42とを備えている。
【0030】
固定ボルト40は、その頭部41にドライバー等の工具を係合させるための十字溝43が形成されていて、工具を使用した回転操作によってボルト穴33に対するねじ込み量を調整することで、金具本体2及び止め付け部材3に対して屋内外方向に移動可能となっている。また、固定ボルト40の頭部41を屋外方向へ押し込むことで、止め付け部材3をバネ部材5の付勢力に抗して屋外方向へ移動させることができるようになっている。この固定ボルト40の先端部分は、バネ部材5のバネ片52、52間のボルト挿通用間隙55、第1当接片50のボルト逃がし穴53及び金具本体2の屋外側設置部20のボルト逃がし穴25を通って、金具本体2の屋外側設置部20よりも屋外側へ突出可能となっている。
【0031】
押さえプレート42は、図6に示すように、固定ボルト40の頭部41よりも大径の円盤状に形成されていて、その中央部付近には、略T字状の切れ込み44を有する段落ち部45が形成されている。そして、切れ込み44を利用して固定ボルト40の頭部41を段落ち部45に嵌め込むことで、押さえプレート42が固定ボルト40の頭部41に装着される。これにより、固定ボルト40の頭部41の面積が拡大した状態となり、固定ボルト40の締付力を内壁パネル90、90の縦枠材91、91に効果的に伝達することができる。
【0032】
次に、上記構成の固定金具1を使用して、壁軸組80の屋内側に内壁パネル90を固定する方法について説明する。まず、隣接する壁軸組80、80間に生じる各縦目地部82に対して、複数の固定金具1を上下方向に間隔をあけて取り付ける。なお、固定金具1としては、後述する内壁パネル90の建て込みに配慮して、固定ボルト40の頭部41から押さえプレート42を取り外した状態のものが使用されている。
【0033】
それぞれの固定金具1の取り付けに際しては、図7(a)及び図8(a)に示すように、止め付け部材3の係止部32が縦向き状態となるように固定金具1を保持して、その止め付け部材3を屋内側から壁軸組80、80の軸柱81、81間の縦目地部82に挿入して、金具本体2の屋外側設置部20を軸柱81、81の屋内側の内側面に当接させる。
【0034】
この状態で、図8(b)に示すように、固定ボルト40の頭部41を屋外方向に押し込むことで、固定ボルト40が螺合する止め付け部材3を、バネ部材5の付勢力に抗して(バネ部材5を圧縮させながら)屋外方向へ移動させて、止め付け部材3の係止部32を縦目地部82の屋外側開口端よりも屋外側へ僅かに突出させる。
【0035】
続いて、図7(b)及び図8(c)に示すように、この状態から金具本体2を時計周り又は半時計回りに90度回転させて、固定ボルト40の頭部41の押し込みを解除することで、止め付け部材3の横向き状態となった係止部32を縦目地部82の屋外側開口端に係止させて、金具本体2を軸柱81、81に止め付ける。また、位置決め片54が縦目地部82の屋内側開口端に嵌り込んで、金具本体2の回転が規制される。これにより、固定金具1が軸柱81、81に跨るようにして取り付けられる。
【0036】
このとき、バネ部材5は、金具本体2の屋外側設置部20と止め付け部材3の基端部30との間に介装されて、金具本体2の枠内に収容された状態となっているので、軸柱81、81に干渉することがなく、金具本体2を90度回転させても、従来のようにバネ部材5によって軸柱81、81の塗装等が剥がされて、軸柱81、81を傷付けてしまうといった不具合が生じることはない。しかも、固定ボルト40が螺合されている止め付け部材3の基端部30は、金具本体2の屋外側設置部20よりも屋内側に配されていて、固定ボルト40を十分にねじ込まない限り、その先端部分が金具本体2の屋外側設置部20よりも屋外側に突出しないことから、従来のように固定ボルト40の出寸法(ねじ込み量)を綿密に管理しなくても、固定ボルト40の先端部分を軸柱81、81に干渉させずに済み、金具本体2の90度回転が阻害されることはない。
【0037】
また、上記の金具本体2の止め付け状態においては、バネ部材5の弾性復帰力によって、金具本体2が屋外方向(屋外側設置部20を軸柱81、81における屋内側の内側面に押し付ける方向)に付勢されるとともに、止め付け部材3が屋内方向(係止部32を縦目地部82の屋外側開口端に押し付ける方向)に付勢されていて、金具本体2の屋外側設置部20と止め付け部材3の係止部32とによって軸柱81、81を挟持するようにして、止め付け部材3の係止状態を維持している。このため、金具本体2は、屋内外方向にがたつきを生じることなく、軸柱81、81に強固に安定した状態で止め付けられている。
【0038】
そして、複数の固定金具1を、上述したように軸柱81、81に跨って順次取り付けて、隣接する壁軸組80、80間に生じる各縦目地部82に対して上下方向に間隔をあけて配設した後、これら固定金具1を介して複数の内壁パネル90を壁軸組80に固定する。
【0039】
内壁パネル90の固定に際しては、図9及び図10に示すように、その両端部に位置する縦枠材91、91の屋外側の外側面を、隣り合う縦目地部82、82に配設した複数の固定金具1における金具本体2の屋内側設置部21に当接させるようにして、内壁パネル90を壁軸組80の屋内側に順次建て込む。これにより、一つの固定金具1における金具本体2の屋内側設置部21に対して、隣接する内壁パネル90、90の隣り合う縦枠材91、91が設置された状態となる。
【0040】
このとき、内壁パネル90、90の縦枠材91、91間に、固定金具1の固定ボルト40が挟み込まれた状態となっている。また、内壁パネル90、90の縦枠材91、91間には、切欠部91a、91aが向き合うことによって屋内側に開放する凹所93が上下方向に沿って形成されていて、この凹所93に固定ボルト40の頭部41が配された状態となっている。
【0041】
この状態で、それぞれの固定ボルト40の頭部41に押さえプレート42を装着した後、ドライバー等の工具を使用して固定ボルト40をねじ込んで屋外方向へ移動させることで、押さえプレート42が、内壁パネル90、90の縦枠材91、91間の凹所93に収容された状態で、縦枠材91、91を屋外方向へ押圧する。このとき、固定ボルト40の屋外方向へ移動量が大きくなっても、固定ボルト40の先端部分は、バネ部材5の第1当接片50のボルト逃がし穴53及び金具本体2の屋外側設置部20のボルト逃がし穴25を通って、縦目地部82に入り込んでいくことから、支障をきたすことはない。
【0042】
そして、上記の押さえプレート42による押圧によって、内壁パネル90、90の縦枠材91、91が固定金具1の金具本体2の屋内側設置部21に押し付け固定され、これによって壁軸組80の屋内側に内壁パネル90が固定されるようになっている。
【0043】
また、このような内壁パネル90の固定に際して、隣接する内壁パネル90、90における断熱材92、92の側端部92a、92aを、固定金具1の金具本体2を包み込むようにして、壁軸組80、80の軸柱81、81と内壁パネル90、90の縦枠材91、91との間に生じる隙間に介在させることで、内壁部において断熱材92を途切れさせることなく連続させて、断熱性を良好に維持するようにしている。
【0044】
図11は、別の実施形態に係る固定金具1を用いた内壁パネル90の固定構造を示している。この固定金具1においては、壁軸組80に対して内壁パネル90をより大きく離間させた状態で固定するように、金具本体2に対して着脱可能に装着されて、金具本体2の屋内側設置部21と内壁パネル90、90の縦枠材91、91との間に介在されるふかし部材60を備えている。
【0045】
このふかし部材60は、図12に示すように、金属板を略溝状に折曲形成してなり、金具本体2の屋内側設置部21に設置される屋外側設置片61と、内壁パネル90、90の縦枠材91、91における屋外側の外側面を設置する屋内側設置片62と、これら屋外側設置片61と屋内側設置片62の一端部同士を連結する連結片63とを一体に備えている。
【0046】
屋外側設置片61には、その一部を屋外方向へ切り出してなる係合突起64が形成され、さらに固定ボルト40を挿通させるボルト挿通穴65が形成されている。屋内側設置片62には、固定ボルト40を挿通させるボルト挿通穴66が形成されている。また、金具本体2の屋内側設置部21には、そのボルト挿通穴26を囲むように周方向に間隔をあけて3つの係合穴67a、67b、67cが形成されている。なお、固定ボルト40としては、上記実施形態の固定ボルト40よりも長尺なものが使用されている。
【0047】
そして、ふかし部材60における屋外側設置片61のボルト挿通穴65及び屋内側設置片62のボルト挿通穴66に固定ボルト40を挿通させた状態で、ふかし部材60の屋外側設置片61における係合突起64を、金具本体2の屋内側設置部21における係合穴67a、67b、67cに選択的に係合させることで、金具本体2の屋内側設置部21にふかし部材60が装着されるようになっている。
【0048】
ここで、係合突起64を係合穴67aに係合させることで、金具本体2の連結部22とふかし部材60の連結片63とが略同一面上に配された状態となって、ふかし部材60に対して内壁パネル90、90の縦枠材91、91の双方が設置可能となり、隣接する内壁パネル90、90を双方ともふかすことができるようになっている。また、係合突起64を係合穴67b又は係合穴67cに係合させることで、金具本体2の連結部22とふかし部材60の連結片63とが略直交するように配された状態となって、ふかし部材60に対して内壁パネル90、90の縦枠材91、91のうちの一方が設置可能となり、他方については金具本体2の屋内側設置部21に設置して、隣接する内壁パネル90、90のうちの一方のみをふかすことができるようになっている。
【0049】
なお、その他の構成及び作用効果は、上記実施形態と同様であり、図11及び図12において、上記実施形態と同様の機能を有する部材については同符号を付してある。
【0050】
この発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で上記実施形態に多くの修正及び変更を加え得ることは勿論である。例えば、この発明の固定金具によって壁軸組の屋内側に固定する壁構成部材としては、内壁パネルだけに限らず、開口部用の枠材や各種の下地材等であっても良い。また、止め付け部材において、その挿通部を壁軸組に形成した貫通穴に挿通させて、その係止部を壁軸組の屋外側に係止させることで、金具本体を壁軸組に止め付けるようにしても良い。
【符号の説明】
【0051】
1・・固定金具、2・・金具本体、3・・止め付け部材、4・・押し付け部材、5・・バネ部材、20・・屋外側設置部、21・・屋内側設置部、22・・連結部、25・・ボルト逃がし穴、30・・基端部、31・・挿通部、32・・係止部、33・・ボルト穴、40・・固定ボルト、41・・頭部、42・・押さえプレート、60・・ふかし部材、80・・壁軸組、82・・縦目地部、90・・内壁パネル(壁構成部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14