【実施例1】
【0011】
本発明の実施形態を図に基づき説明する。1は本発明の蒸気滅菌器である。蒸気滅菌器
1は、骨組みされた基礎台2の上部にチャンバー3が配置され、基礎台2の下部収容室2
0には、チャンバー3内での滅菌のために使用する所定量の加熱用水を溜めたポリプロピ
レン製で内容量が約20リットル程度の注排水タンク8と、チャンバー3内を真空引きす
る真空ポンプ7と、真空ポンプ7の水封及び冷却用の水を溜める内容量が約20リットル
程度の冷却タンク9が収容され、下部収容室20の下側にスロープ板10が引き出し可能
に収容されるスロープ板収容部21が設けられ、チャンバー3内に収容した被滅菌物を高
温蒸気下で滅菌する。
【0012】
更に具体的には、基礎台2の周囲は外装ケース1Aで覆われた構成であり、外装ケース
1Aの内部には、立法形または縦長直方形に骨組みされた基礎台2の水平基板2Aに、前
面開口の円筒状の横型チャンバー3が固定状態に取り付けられ、チャンバー3の円形状の
前面開口を密閉状態に保持する蓋4が、チャンバー3の一側部(図では右側)においてヒ
ンジ部5にて開閉回動可能に支持されている。蓋4の開閉は取っ手部30によって行なう
。取っ手部30は、蓋4の前面に溶接等にて固定した蓋支持体30Bの左端側に設けられ
、蓋支持体30Bの右端側がヒンジ部5にて開閉回動可能に支持され、それによって、蓋
4が左右に開閉可能である。
【0013】
注排水タンク8と冷却タンク9は、それぞれ前後左右部にキャスタ36を取り付けたタ
ンク保持容器28、29に個別に取り出し自在に収容されており、下部収容室20の底板
20A上をキャスタ36の転がりによって、下部収容室20に収容取り出し可能に収容さ
れている。下部収容室20の前面開口部及びスロープ板収容部21の前面は、外装ケース
1Aの前面下部のドア1Dによって開閉可能である。
【0014】
蒸気滅菌器1の移動のために、基礎台2の底部の4隅部にキャスタ11が設けられてい
る。また、蒸気滅菌器1を所定位置に安定設置させるために、基礎台2の底部の左右前部
に、基礎台2に対してネジにて上下動可能に支持した設置ボルト12(以下、アジャスタ
12という)が設けられている。
【0015】
滅菌動作を行なうためには、被滅菌物の種類に応じた滅菌コースの選択、滅菌温度、滅
菌時間及びその他の設定等を行なうが、このような選択・設定及びこれらに係る表示のた
めの操作パネル部PAが、外装ケース1Aの前面上部に設けられている。蒸気滅菌器1を
運転可能状態とするために、電源スイッチ60をON状態にし、チャンバー3内に被滅菌
物を収納し、チャンバー3の前面開口を蓋4で密閉した状態において、蒸気滅菌器1はス
タンバイ状態となる。このスタンバイ状態は、操作パネル部PAに設けた表示部65にL
EDの点灯にて表示される。
【0016】
この状態で、操作パネル部PAに設けた滅菌条件設定スイッチ61によって、滅菌条件
を設定する。設定した滅菌条件の温度及び時間は、操作パネル部PAに設けた上下の表示
部63にそれぞれ表示される。この設定の後、操作パネル部PAに設けたスタートスイッ
チ62をON操作することにより、滅菌モードがスタート指令される。滅菌モードは、制
御部の動作によって、チャンバー3内が121℃〜134℃のように所定の高温蒸気の雰
囲気のもとで、被滅菌物の滅菌工程が行われる。滅菌モードの進行状況は、操作パネル部
PAに設けたプロセスモニタ64に順次表示されるので、それによって現在の進行状況を
視認できる。所定の滅菌工程の終了によって、チャンバー3内の高温蒸気が排気された後
、チャンバー3内を電気ヒータで加熱する乾燥工程を経て滅菌モードが終了し、表示部6
5のLEDが消灯する。
【0017】
基礎台2の下部に位置するスロープ板収容部21は、下部収容室20の底板20Aの下
側に位置しており、スロープ板収容部21の左右両側部には、前後水平方向に延びるレー
ル部材RLが、底板20Aに左右対向配置となるように取り付けられている。左右のレー
ル部材RLは、縦壁に前後水平方向に延びたガイド溝22が形成され、ガイド溝22の下
方において左右対向位置に内向きに形成した前後方向に延びた水平の支持レール23を形
成している。
【0018】
スロープ板10は、各タンク8、9の引き出し及び収納時の誘導面となる誘導板部10Aと、誘導板部10Aの左右両側に下向きに形成したフランジ10Bと、誘導板部10Aの後部から下方へ突出した左右一対の
ストップピン10Cを備えている。また、左右のガイド溝22には、抜け止め状態で左右のガイド溝22に前後移動可能に挿入された左右の支持軸24を備え、支持軸24とスロープ板10の後部連結軸部25とをそれぞれ回動可能状態に連結する連結部材26を備える。図示のものは、後部連結軸部25がフランジ10Bの後部に形成されている。
【0019】
スロープ板10は、スロープ板収容部21に収容された状態で、フランジ10Bを介し
て支持レール23に支持された状態である。スロープ板10は、スロープ板収容部21か
らの引き出しに伴って支持軸24が左右のガイド溝22を移動する。この引き出しに伴っ
て、スロープ板10はフランジ10Bを介して支持レール23上をスライドする。このス
ライド時の抵抗を少なくするために、フランジ10Bの前部及び後部で支持レール23上
をスライドする構成となっている。
【0020】
蒸気滅菌器1の移動時には、アジャスタ12はネジに沿った上昇回転にて、下端がキャ
スタ11の接地面GLよりも上方になるように調整されている。そして、蒸気滅菌器1を
設置する所定場所へ移動させた状態で、アジャスタ12をネジに沿った回転によって下降
させ、アジャスタ12の下端が接地面GLに設置した状態から更にネジに沿った回転によ
って、前側の左右のキャスタ11が接地面GLよりも浮き上がる状態とすることにより、
その場所に蒸気滅菌器1を安定設置できる。
【0021】
この設置状態において、
図4に示すように、スロープ板10はスロープ板収容部21に収容されている。スロープ板10の引き出しは、ドア1Dを開き、
図5及び
図6に示すように、
ストップピン10Cを含むスロープ板10の後端縁33が、下部収容室20の底板20Aの前端よりも前方位置となるように、スロープ板10をスロープ板収容部21から引き出すことによって行なわれる。この引き出しは、
図6に示すように、左右の支持軸24が左右のガイド溝22の前端に当接した時が最大引き出し位置となるように構成している。この最大引き出し状態において、
図7に示すように、連結部材26を介して行なわれる支持軸24を中心としたスロープ板10の後端縁33を上方回動させる操作によって、下部収容室20の底板20Aの前部に孔として形成した左右一対の係止部27に
ストップピン10Cを対応させる。この状態で、
図8に示すように、スロープ板10の後端縁33を下降させ、
ストップピン10Cを係止部27に挿入係止する。このように、最大引き出し位置となるようにすれば、
ストップピン10Cを係止部27に挿入係止する操作がし易くなる。
【0022】
このように、スロープ板10が係止部27に係止した状態にて、スロープ板10の前端
部は、接地面GLに当接し、誘導板部10Aが前方に低く傾斜したスロープを形成する状
態で安定保持される。この状態で、下部収容室20の前部において誘導板部10Aの後端
縁33が、下部収容室20の底板20Aよりも一段上に位置する停止段部35を形成する
。
【0023】
蒸気滅菌器1の運転中にタンク8、9が振動等にて前進しないように、タンク保持容器
28、29の前側または後側のキャスタ36が若干落ち込む窪み39が、下部収容室20
の底板20Aに形成されているが、何らかの原因にてタンク8、9が前進する場合でも、
タンク保持容器28、29のキャスタ36が停止段部35に当接し、その時点で前進が阻
止されるため、各タンク8、9が下部収容室20から脱落することが防止される。
【0024】
また、スロープ板10が係止部27に係止し誘導板部10Aが前方に低く傾斜したスロ
ープを形成する状態において、各タンク8、9をそれぞれ引き出す場合、一旦、タンク保
持容器28、29のキャスタ36が一旦停止段部35に当接し、引き出しが一旦停止する
が、キャスタ36がこの停止段部35を乗り越えるように更に強く引っ張ることによって
、タンク保持容器28、29と共に各タンク8、9が引き出せる。そして、スロープ板1
0の誘導板部10A上をキャスタ36が転がりつつ、各タンク8、9を前方へ移動できる
。
【0025】
このように、タンク8、9をそれぞれ引き出す場合、一旦、タンク保持容器28、29
のキャスタ36が停止段部35に当接するため、そのとき一呼吸置いた状態でタンク8、
9の引き出しが行なえることとなり、引き出しを安定且つ安全に行なえるものとなる。ま
た、タンク8、9の引き出しは、キャスタ36が停止段部35を乗り越えなければならな
いため、停止段部35を高くし過ぎれば、引き出し抵抗が大きくなって引き出し難い。こ
のため、図示のように、誘導板部10Aの後端縁33が下部収容室20の底板20Aの前
部に略水平状態で載るように、下部収容室20の底板20Aと略並行に誘導板部10Aの
後端縁33を形成し、停止段部35の高さが誘導板部10Aの後端縁33の厚さ相当(例
えば2〜3mm)にすれば、タンク8、9の前方への移動脱落の防止と、引き出しのし易
さが達成できる。
【0026】
下部収容室20への各タンク8、9の収容は、引き出しの場合とは逆方向へ各タンク8
、9を押すことによって、スロープ板10の誘導板部10A上をキャスタ36が転がりつ
つ、キャスタ36が段部35から下部収容室20の底板20A上へ押し込まれることによ
り、下部収容室20への各タンク8、9の収容が終わる。
【0027】
下部収容室20へ各タンク8、9を収容した状態で、
図7に示すように、
ストップピン1Cが係止部27の孔から脱するように、スロープ板10の後部を持ち上げた後、連結部材26を介して行なわれる支持軸24を中心としたスロープ板10の後端縁33の下方回動によって、
ストップピン10Cを含むスロープ板10の後端縁が、下部収容室20の底板20Aの前方を通ってスロープ板収容部21の前部へ移動して
図6に示す状態とする。この状態で、スロープ板10を後方へ水平方向に押すことによって、スロープ板10は、左右のフランジ10Bを介して左右の支持レール23上をスライドしつつ、左右の支持軸24が左右のガイド溝22を移動して、スロープ板収容部21へ収容され、
図4に示す状態となる。なお、
図6に示す状態において、スロープ板10の後部が若干下降した場合、連結部材26の中間部が支持レール23に当接する状態に構成すれば、スロープ板10を引き出した状態での後部の下降を制限することができるため、スロープ板10の収容操作をし易くなる。
【0028】
下部収容室20へ収容した各タンク8、9と、スロープ板収容部21へ収容されたスロ
ープ板10とは、
図2に示すように、下部収容室20の前面開口部のドア1Dを閉めるこ
とによって、ドア1Dによって前方への飛び出しが防止される。
【0029】
タンク8、9の引き出し時及び収容時の安定性を考慮して、スロープ板10を厚さ1.
6mm程度の金属板で構成した場合、スロープ板10は比較的重量が大となる。その場合
、スロープ板10の引き出し及び収容時の抵抗を少なくするために、支持軸24のガイド
溝22の内側面に当接して回転するローラ37が、左右の支持軸24にそれぞれ取り付け
ている。また、左右の支持軸24がそれぞれ回転しつつ左右のガイド溝22に前後移動可
能であるように、支持軸24が構成されている。このため、スロープ板10の引き出し及
び収容作業がし易く、安定して容易に行なえるものとなる。ガイド溝22からの支持軸2
4の抜け止めとして、抜け止め部材38が支持軸24の外端部に取り付けられている。