特許第5710279号(P5710279)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5710279
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】光測距装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/42 20060101AFI20150409BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20150409BHJP
   G01C 3/00 20060101ALI20150409BHJP
   G02B 26/10 20060101ALI20150409BHJP
【FI】
   G01S17/42
   G01C3/06 120Q
   G01C3/00 120
   G02B26/10 C
   G02B26/10 104Z
【請求項の数】7
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2011-1121(P2011-1121)
(22)【出願日】2011年1月6日
(65)【公開番号】特開2012-141265(P2012-141265A)
(43)【公開日】2012年7月26日
【審査請求日】2013年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100078330
【弁理士】
【氏名又は名称】笹島 富二雄
(72)【発明者】
【氏名】猪俣 宏明
(72)【発明者】
【氏名】大塚 幹也
(72)【発明者】
【氏名】松原 達也
【審査官】 三田村 陽平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−232649(JP,A)
【文献】 特開2001−272206(JP,A)
【文献】 特開2004−028753(JP,A)
【文献】 特開2009−168472(JP,A)
【文献】 特開2004−301973(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48− 7/51
G01S 17/00−17/95
G01C 3/00− 3/32
G01B 11/00−11/30
G02B 26/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動部を直交二軸回りに揺動させてパルス光を対象領域内で走査し対象物体までの距離を投光時刻毎に計測する光測距装置において、
基準の物体について前記計測した距離の各データに基づき表面形状の凹凸判定をし、
前記可動部を各軸回りに揺動させる各駆動信号の電流値の少なくとも一方を、前記各データに基づく前記基準の物体の実測平面度と既知の平面度との誤差が閾値以内になるまで、凹凸判定結果に応じて変更する光測距装置。
【請求項2】
可動部を直交二軸回りに揺動させてパルス光を対象領域内で走査し対象物体までの距離を投光時刻毎に計測する光測距装置において、
基準の物体について前記計測した距離の各データを、前記可動部の各軸回りの揺動振幅を含む変換パラメータにより変換して得た点群データに基づき表面形状の凹凸判定をし、
前記変換パラメータの前記揺動振幅の少なくとも一方を、前記点群データに基づく前記基準の物体の実測平面度と既知の平面度との誤差が閾値以内になるまで、凹凸判定結果に応じて変更する光測距装置。
【請求項3】
前記可動部は、光反射面を有し、互いに直交する第1、第2軸回りに揺動可能に形成される構成とし、
前記可動部が揺動することによって前記光反射面に入射される光ビームを前記対象領域内で2次元走査する光走査部と、
前記可動部を前記第1軸回りに揺動させる第1駆動信号及び前記可動部を前記第2軸回りに揺動させる第2駆動信号をそれぞれ前記光走査部に出力して前記可動部を揺動駆動する駆動部と、
前記光反射面に向かって光ビームを投光する光源部と、
前記光源部から投光され、前記光反射面で反射走査された光ビームが前記対象領域内に存在する前記対象物体によって反射された反射光を受光する受光部と、
前記光ビームの投光時刻と前記受光部による反射光の受光時刻との時間差に基づいて、前記対象物体までの距離を計測する測距部と、
を備え、
前記光源部は、予め設定した投光時刻毎に前記光ビームを投光する構成とし、
予め設定する、前記投光時刻と、前記光源部から前記光反射面に向かう光ビームの入射光線ベクトルと、前記第1軸回りの第1揺動振幅と、前記第2軸回りの第2揺動振幅とを含む変換パラメータを用いて、前記測距部からの前記投光時刻毎の距離のデータを3次元空間上での位置を示す点群データに変換するデータ変換部と、
3次元形状が既知の前記基準の物体の表面形状の基準特徴度データとしての基準平面度データを予め有し、前記測距部により前記基準の物体までの距離を計測して得た前記投光時刻毎の距離のデータを前記データ変換部によって変換して得た前記基準の物体についての前記点群データに基づき前記基準の物体の表面形状の特徴度としての平面度を実測し、この実測平面度データと前記基準平面度データとの誤差が予め設定した閾値以内であるか否かを判定する判定部と、
前記判定部により前記誤差が前記閾値より大きいと判定された場合、予め設定され前記第1及び第2揺動振幅の実際の値を決定する前記第1及び第2駆動信号の電流値の少なくとも一方を、前記判定部により前記誤差が前記閾値以内であると判定されるまで、変更設定可能な設定変更部と、
を備えて構成することを特徴とする請求項1に記載の光測距装置。
【請求項4】
前記可動部は、光反射面を有し、互いに直交する第1、第2軸回りに揺動可能に形成される構成とし、
前記可動部が揺動することによって前記光反射面に入射される光ビームを対象領域内で2次元走査する光走査部と、
前記可動部を前記第1軸回りに揺動させる第1駆動信号及び前記可動部を前記第2軸回りに揺動させる第2駆動信号をそれぞれ前記光走査部に出力して前記可動部を揺動駆動する駆動部と、
前記光反射面に向かって光ビームを投光する光源部と、
前記光源部から投光され、前記光反射面で反射走査された光ビームが前記測定対象領域内に存在する前記対象物体によって反射された反射光を受光する受光部と、
前記光ビームの投光時刻と前記受光部による反射光の受光時刻との時間差に基づいて、前記対象物体までの距離を計測する測距部と、
を備え、
前記光源部は、予め設定した投光時刻毎に前記光ビームを投光する構成とし、
予め設定する、前記投光時刻と、前記光源部から前記光反射面に向かう光ビームの入射光線ベクトルと、前記第1軸回りの第1揺動振幅と、前記第2軸回りの第2揺動振幅とを含む変換パラメータを用いて、前記測距部からの前記投光時刻毎の距離のデータを3次元空間上での位置を示す点群データに変換するデータ変換部と、
3次元形状が既知の前記基準の物体の表面形状の基準特徴度データとしての基準平面度データを予め有し、前記測距部により前記基準の物体までの距離を計測して得た前記投光時刻毎の距離のデータを前記データ変換部によって変換して得た前記基準の物体についての前記点群データに基づき前記基準の物体の表面形状の特徴度としての平面度を実測し、この実測平面度データと前記基準平面度データとの誤差が予め設定した閾値以内であるか否かを判定する判定部と、
前記判定部により前記誤差が前記閾値より大きいと判定された場合、前記変換パラメータの前記第1及び第2揺動振幅の少なくとも一方を、前記判定部により前記誤差が前記閾値以内であると判定されるまで、変更設定可能な設定変更部と、
を備えて構成することを特徴とする請求項2に記載の光測距装置。
【請求項5】
前記設定変更部は、前記判定部により前記誤差が前記閾値より大きいと判定された場合、前記変換パラメータの前記第1及び第2揺動振幅の少なくとも一方を、前記判定部により前記誤差が前記閾値以内であると判定されるまで、変更設定可能な構成を有し、
前記設定変更部で前記変更設定する対象を選択切替可能な変更対象選択部を備えたことを特徴とする請求項に記載の光測距装置。
【請求項6】
前記設定変更部により前記変更設定を行う校正モードと、前記測距部により前記対象物体までの距離を測定する通常測距モードとに切替設定可能なモード設定部を備えたことを特徴とする請求項3〜5のいずれか1つに記載の光測距装置。
【請求項7】
前記基準物体の表面形状は、平面であり、
前記判定部は、前記基準特徴度データとして基準平面度データを有し、前記基準物体の表面形状の特徴度として平面度を実測し、この実測平面度データと前記基準平面度データとの誤差が予め設定した閾値以内であるか否かを判定し、
前記設定変更部は、前記判定部により、前記誤差が閾値より大きいと判定された場合であって、前記点群データに基づく表面形状が前記光走査部に対して凸形状である判定されたときは、前記変更設定の対象の値を予め定めた所定量だけ小さくし、前記点群データに基づく表面形状が前記光走査部に対して凹形状であると判定されたときは、前記変更設定の対象の値を予め定めた所定量だけ大きくすることが可能なこと特徴とする請求項3〜6のいずれか1つに記載の光測距装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ビームを対象領域内で走査して該対象領域内に存在する物体の距離を計測する光測距装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光ビームを対象領域内で、例えば、リサージュ走査して、対象領域内に存在する対象物までの距離を計測する光測距装置が知られている。この種の光測距装置は、例えば、光ビームを投光する光源部と、この光源部から出射された光ビームを対象領域内で二次元走査する可動部を備えた光走査部(二次元ガルバノミラー)と、光走査部を駆動する駆動部と、対象領域内の対象物によって反射された光ビームを受光する受光部と、光ビームの投光タイミングと反射光の受光タイミングとの時間差に基づいて対象物までの距離を計測する測距部と、を備えて構成されている。上記駆動部は、例えば、光走査部の直交する二軸(x軸、y軸)回りの各共振周波数近傍の周波数を有する二つの駆動信号を光走査部にそれぞれ供給し、これにより、光走査部の可動部をx軸回り及びy軸回りに、所定の揺動振幅(最大値)及び揺動周期で揺動駆動している(特許文献1参照)。
【0003】
ところで、この種の光測距装置において、光源部から所定の投光タイミングで投光される光ビームを可動部によって二次元走査したときに、光ビームを対象領域内の意図する位置に投光させるためには、各投光タイミングにおける可動部の各軸回りの揺動角度がそれぞれ意図する角度になるように校正されていなければならない。実際の可動部の各揺動角度が意図した角度からずれてしまっている場合、光測距装置は、実際の光ビームの投光位置が意図した位置からずれているにも関わらず、そのずれた位置からの反射光に基づいて距離を算出し、その算出した距離をあたかも対象領域内の意図した位置までの距離として測距してしまうことになる。ここで、各投光タイミングにおける各揺動角度の値は、供給される各駆動信号の電流値に応じて定まる可動部の各軸回りの揺動振幅(最大値)により、大きく左右されるため、この各揺動振幅(最大値)は、光測距装置の測距精度を左右する重要なパラメータである。
【0004】
しかしながら、駆動信号の電流値に応じて定まる実際の各揺動振幅(以下において、「実揺動振幅」と言う。)は、二次元ガルバノミラーの製造ばらつきや経時変化等により変動する可能性もある。そのため、一般的に、この種の光測距装置においては、出荷時や出荷後のメンテナンス時等に、例えば、各実揺動振幅を実測し、この実揺動振幅が設計許容範囲外である場合は、駆動信号の電流値を調整して、実揺動振幅が設計許容範囲に収まるようにしたり、逆に設計値を実測した実揺動振幅に合わせて光測距装置に再設定したりして校正している。この実揺動振幅の求める方法としては、例えば、平面板にレーザ光の走査軌跡を投影し、投影された走査軌跡外縁幅を目視にて計測し、この計測した走査軌跡外縁幅と二次元ガルバノミラーから平面板までの距離とに基づいて、実揺動振幅を求める方法が知られている。しかし、二次元光走査においては、レーザ光を例えば平面板に向けて投影したときの走査軌跡外縁は糸巻き状に歪んでしまい、走査軌跡自体も歪んでしまうという特性があるため、走査軌跡外縁幅に基づく測定では一般的に精度良く実揺動振幅を測定することができないという問題がある。
【0005】
この問題を解決するため、この種の光測距装置においては、テンプレートを用いて実揺動振幅を測定する方法が知られている。このテンプレートは、例えば、光走査部から対象領域内に向かう光ビームの方向(走査方向)と、平面板と光測距装置本体との予め定めた位置関係(距離、傾き)とに基づいて所定の揺動振幅毎に求めた走査軌跡の外縁等が、各走査軌跡を求める際に用いた揺動振幅とが対応付けて描かれた紙等から成るものである。そして、このテンプレートを平面板に貼り付け、平面板と光測距装置本体をテンプレート作成時に用いた位置関係(距離、傾き)になるように設置し、実際の走査軌跡をテンプレートに投影し、投影された走査軌跡の外縁がテンプレート上に予め描かれたどの走査軌跡に略一致するかを目視で確認し、その略一致したテンプレート上の走査軌跡に対応する揺動振幅を実揺動振幅として、実揺動振幅を測定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−157796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、この種の光測距装置の出荷前等に、上記の様にテンプレートを用いて実揺動振幅を測定する場合、作業者が例えば平面板と光測距装置本体を、テンプレートに描く走査軌跡を求める際に用いた位置関係(距離、傾き)と一致するように配置させることは困難であった。したがって、この種の光測距装置の実揺動振幅の測定においては、テンプレート作成用に予め定めた位置関係と実際の位置関係との間にずれが生じてしまう可能性があるため、実揺動振幅の測定精度は、作業者等による光測距装置本体と平面板等の設置精度によって左右される。また、投影された走査軌跡の外縁がテンプレート上に予め描かれたどの走査軌跡に略一致するかを作業者等による目視で行っていたため、読取誤差が生じるおそれもあった。これらの結果、テンプレートを用いて実揺動振幅を測定し、測定結果に応じて駆動信号の電流値を調整したり、設計値を実測した実揺動振幅の値に合わせて光測距装置に再設定したりして、各投光タイミングにおける可動部の各軸回りの揺動角度がそれぞれ意図する角度になるように校正しても、その校正精度は、実揺動振幅測定時の作業者の設置精度や読取精度等の作業精度に左右されるという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、このような課題に着目してなされたものであり、作業者等による作業精度に影響されることなく、各投光タイミングにおける可動部の各軸回りの揺動角度がそれぞれ意図する角度になるように、精度良く校正可能な光測距装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る本発明による光測距装置は、可動部を直交二軸回りに揺動させてパルス光を対象領域内で走査し対象物体までの距離を投光時刻毎に計測する光測距装置において、基準の物体について前記計測した距離の各データに基づき表面形状の凹凸判定をし、前記可動部を各軸回りに揺動させる各駆動信号の電流値の少なくとも一方を、前記各データに基づく前記基準の物体の実測平面度と既知の平面度との誤差が閾値以内になるまで、凹凸判定結果に応じて変更する。
【0010】
請求項2に係る本発明による光測距装置は、可動部を直交二軸回りに揺動させてパルス光を対象領域内で走査し対象物体までの距離を投光時刻毎に計測する光測距装置において、基準の物体について前記計測した距離の各データを、前記可動部の各軸回りの揺動振幅を含む変換パラメータにより変換して得た点群データに基づき表面形状の凹凸判定をし、前記変換パラメータの前記揺動振幅の少なくとも一方を、前記点群データに基づく前記基準の物体の実測平面度と既知の平面度との誤差が閾値以内になるまで、凹凸判定結果に応じて変更する。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る本発明による光測距装置によれば、基準物体までの距離を投光時刻毎に測定し、この測定した距離の各データに基づき基準物体の表面形状の凹凸判定をし、上記各データに基づく基準の物体の実測平面度既知の平面度との誤差が予め設定する閾値以内になるまで、可動部を各軸回りに揺動させる各駆動信号の電流値の少なくとも一方を凹凸判定結果に応じて変更することで、実機の揺動振幅をそれぞれ校正することができる。したがって、請求項1に係る本発明による光測距装置によれば、実平面度既知の平面度との誤差の閾値を適切に設定するだけで、凹凸判定結果に応じて実機の揺動振幅を目標値に精度良く合わせ込むことができるため、作業者等による作業精度に影響されることなく、各投光時刻における可動部の各軸回りの揺動角度がそれぞれ意図する角度になるように、精度良く校正可能な光測距装置を提供することができる。
【0012】
請求項2に係る本発明による光測距装置によれば、基準の物体までの距離を投光時刻毎に測定し、可動部の各軸回りの揺動振幅を含む変換パラメータにより上記測定した距離の各データを変換して得た点群データに基づいて、基準の物体の表面形状の凹凸判定をし、変換パラメータの揺動振幅の少なくとも一方を、点群データに基づく基準の物体の実測平面度既知の平面度との誤差が予め設定する閾値以内になるまで、凹凸判定結果に応じて変更することで、変換パラメータの揺動振幅をそれぞれ校正ことができる。したがって、請求項2に係る本発明による光測距装置によれば、実測平面度既知の平面度との誤差の閾値を適切に設定するだけで、凹凸判定結果に応じて変換パラメータの揺動振幅の値を実機の揺動振幅の値に精度良く合わせ込むことができるため、作業者等による作業精度に影響されることなく、各投光時刻における可動部の各軸回りの揺動角度がそれぞれ意図する角度になるように、精度良く校正可能な光測距装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態による光測距装置の概略構成を示すブロック図である。
図2】光測距装置の光走査部として二次元ガルバノミラーの構成を示す図である。
図3】光反射面への入射光線と、光反射面で反射走査された走査光線と、光反射面の法線とについて説明するために簡略化した二次元ガルバノミラーの概略図であり、(a)は斜視図、(b)はZX面側からみた図、(c)はZY面側から見た図である。
図4】基準物体までの距離を測定している状況を示す図である。
図5】ZY面及びZX面に投影した点群画像のイメージ図であり、(a)はZY面に投影した点群画像が凹形状、(b)はZY面に投影した点群画像が凸形状、(c)はZX面に投影した点群画像が凹形状、(d)はZX面に投影した点群画像が凸形状の場合を示す。
図6】上記第1実施形態による光測距装置の動作を示すフロー図である。
図7】第2実施形態による光測距装置の概略構成のブロック図である。
図8】上記第2実施形態による光測距装置の動作を示すフロー図である。
図9】第3実施形態による光測距装置の概略構成のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1実施形態による光測距装置の概略構成を示すブロック図である。
本実施形態による光測距装置1は、パルス状のレーザ光を対象領域内で二次元走査して対象領域内に存在する物体までの距離を計測(測距)するものである。
【0015】
本実施形態による光測距装置1は、図1に示すように、二次元走査可能な光走査部2と、光走査部2を駆動する駆動部3と、レーザ光を所定の投光タイミングで投光する光源部4と、投光された光ビームの反射光を受光する受光部5と、光ビームを反射した物体までの距離を計測する測距部6と、測距部6からの距離データを予め設定する変換パラメータを用いて3次元空間上での位置を示す点群データに変換するデータ変換部7と、データ変換部7からの点群データに基づき所定の判定を行う判定部8と、予め設定する駆動電流を変更設定する設定変更部9と、モード設定部10と、画像生成部11と、表示部12と、を備え、駆動電流を変更設定可能な構成である。
【0016】
前記光走査部2は、光反射面(ミラー)を有する可動部が互いに直交する第1軸回り及び第2軸回りに揺動可能に形成されており、この可動部が揺動することによって、光反射面に入射される光ビームを対象領域内で二次元走査(例えば、リサージュ走査)することが可能である。このような光走査部2としては、例えば、本出願人により提案された特許第2722314号公報に記載の二次元走査型の半導体ガルバノミラー(以下単に「二次元ガルバノミラー」という)を用いることができる。
【0017】
図2は、光走査部2の具体例としての二次元ガルバノミラー20の構成を示している。
図2に示すように、二次元ガルバノミラー20は、枠状の固定部21と、固定部21の内側に配置されて一対の第1トーションバー22,22によって揺動可能に支持された外側可動部23と、外側可動部23の内側に配置されて第1トーションバー22,22に軸方向が直交する一対の第2トーションバー24,24によって揺動可能に支持された内側可動部25と、を備える。
【0018】
内側可動部25の中央部には光反射面(ミラー)26が形成され、外側可動部23及び内側可動部25の周縁部にはそれぞれ第1駆動コイル27、第2駆動コイル28が形成されている。第1駆動コイル27の端部は、固定部21に形成された第1電極端子29,29に接続され、第2駆動コイル28の端部は、固定部21に形成された第2電極端子30,30に接続されている。
【0019】
また、第1駆動コイル27に磁界を作用させる一対の第1永久磁石31,31及び第2駆動コイル28に磁界を作用させる一対の第2永久磁石32,32が固定部21を挟んでそれぞれ対向配置されている。なお、固定部21、第1トーションバー22,22、外側可動部23、第2トーションバー24,24及び内側可動部25は、半導体基板から一体的に形成されている。
【0020】
二次元ガルバノミラー20は、第1駆動コイル27及び第2駆動コイル28に流れる電流と、第1永久磁石31,31及び第2永久磁石32,32による磁界と、によって外側可動部23及び内側可動部25にローレンツ力が作用し、その結果、内側可動部25が第1軸回り及び第2軸回りに揺動する。内側可動部25がこのように揺動することによって光反射面26に入射される光ビームが対象領域内で二次元走査される。
【0021】
また、二次元ガルバノミラー20の後述する各投光タイミングtclkにおける第1軸回りの揺動角度φ、第2軸回りの揺動角度φは、例えば、第1駆動信号と第2駆動信号との位相差はないものとし、各投光タイミング(時刻)tclkを二次元ガルバノミラー20の走査開始時刻を時刻の始まりとして起算する場合、例えば、下記の(1)及び(2)式により表される。
【数1】
【数2】
但し、φxmaxは第1軸回りの揺動振幅である第1揺動振幅(最大値)、φymaxは第2軸回りの揺動振幅である第2揺動振幅(最大値)、Tは第1軸回りの揺動周期である第1揺動周期、Tは第2軸回りの揺動周期である第2揺動周期、tclkは光ビームが光源部4から投光される時刻、をそれぞれ示す。なお、第1揺動振幅φxmax及び第2揺動振幅φymaxは、供給される駆動信号(後述する第1及び第2駆動信号)の電流値に応じて定まり、光測距装置の測距精度等を決定する重要なパラメータである。しかしながら、駆動信号の電流値に応じて定まる実際の各揺動振幅(実揺動振幅)は、例えば、二次元ガルバノミラー20の製造プロセスの変動に起因して設計許容範囲を超えてばらついしまい、また、光走査部等の経時変化等により変動する可能性もある。そのため、出荷時や出荷後のメンテナンス時等に、所定の電流値の駆動信号を供給したときの各実揺動振幅を測定し、測定した各実揺動振幅が設計許容範囲外である場合は、各駆動信号の電流値を調整して、各実揺動振幅が設計許容範囲に収まるように校正することが必要とされる。また、第1揺動周期T、第2揺動周期Tは、後述する第1及び第2駆動信号の駆動周波数に基づく周期に予め設定されている。
以下において、第1駆動信号の電流値に応じて定まる実際の第1揺動振幅φxmaxを実第1揺動振幅φ’xmaxと言い、第2駆動信号の電流値に応じて定まる実際の第2揺動振幅φymaxを実第2揺動振幅φ’ymaxと言う。
【0022】
図3は、静止状態の二次元ガルバノミラーの光反射面26に光ビームが投光され、対象領域に向かって光ビームが反射している状態を示している。ここで、図3(a)に示すように、第1トーションバー22,22の中心軸をx軸(第1軸)とし、第2トーションバー24,24の中心軸をy軸(第2軸)とし、光反射面26の中央の点をXYZ直交座標系の原点Oとする。すなわち、静止状態における光反射面26の法線はXYZ直交座標系のZ軸と一致する。以下に、光反射面26への入射光と、光反射面26の法線と、光反射面26で反射走査された走査光について説明する。
【0023】
まず、光反射面26への入射光は、光反射面26の中央(原点O)に向かって光源部4から投光されるように予めその光軸が調整されている。入射光は、例えば、静止状態における光反射面26の法線(すなわち、Z軸)に対して所定の入射角θ0を成して入射するように設定されている。例えば、図3(b)に示すように入射光をZX面に投影した場合、法線に対してθx0の角度で入射し、図3(c)に示すように入射光をZY面に投影した場合、法線に対してθy0の角度で入射するように設定されている。ここで、入射光を、XYZ直交座標系の単位ベクトルで表した単位入射光線ベクトルaは、下記の(3)式により表される。
【0024】
次に、光反射面26の法線は、静止状態においてはZ軸と一致するが、走査時(揺動時)においては、第1軸回りの揺動角度φ及び第2軸回りの揺動角度φに応じてその向きが変化する。光反射面26の法線を、XYZ直交座標系の単位ベクトルで表した単位法線ベクトルnは、静止状態における単位法線ベクトルnとx軸(第1軸)回りの回転行列Rとy軸(第2軸)回りの回転行列Rとに基づいて定まる変動値であり、例えば、下記の(4)式により表される。
【数4】
なお、静止状態における単位法線ベクトルn、x軸回りの回転行列R、y軸回りの回転行列Rは、下記の(5)式〜(7)式により、それぞれ表される。
【数5】
【数6】
【数7】
【0025】
また、光反射面26で反射走査された走査光をXYZ直交座標系の単位ベクトルで表した単位走査光線ベクトルb(bx、by、bz)は、例えば、下記の(8)式により表される。
【数8】
この(8)式に、上記(3)式の単位入射光線ベクトルa(ax、ay、az)と(4)式の単位法線ベクトルn(nx、ny、nz)を代入すれば、単位走査光線ベクトルb(bx、by、bz)を求めることができる。
【0026】
図1に戻って、前記駆動部3は、光走査部2を揺動駆動させるものである。この駆動部3は、外側可動部23及び内側可動部25をx軸回りに揺動させる第1駆動信号(例えば、パルス電流)を、例えば、外側可動部23が有するx軸回りの共振周波数近傍の周波数に合わせて設定された駆動周波数で、第1電極端子29,29を介して第1駆動コイル27に供給すると共に、内側可動部25をy軸回りに揺動させる第2駆動信号(例えば、パルス電流)を、内側可動部25が有するy軸回りの共振周波数近傍に設定された駆動周波数で、第2電極端子30,30を介して第2駆動コイル28に供給する。この第1及び第2駆動信号の各電流値と、x軸回り及びy軸回りの各駆動周波数は、予め初期設定されている。
【0027】
前記光源部4は、光走査部2の内側可動部25に形成された光反射面26に向かって、予め設定した投光タイミングtclk毎に、光ビーム(例えば、パルス状のレーザ光)を投光するものであり、光源41と、投光光学系42と、を含む。投光タイミングtclkは、例えば、対象領域内において割り当てられた各画素に光ビームが照射されるように光源部4に予め設定されている。投光タイミングtclkは、例えば、光走査部2の走査開始時刻を時刻の始まりとした投光時刻として記憶されている。
【0028】
光源41は、例えばレーザダイオードであり、予め設定した投光タイミングtclkで発光してパルス状のレーザ光を出射する。
【0029】
投光光学系42は、光源41が発したレーザ光を好ましい状態とするものであり、例えばコリメータレンズを含み、光源41が発したレーザ光を平行光に変換する。そして、光源部4から投光されたレーザ光は、光走査部2の光反射面26で反射されて対象領域内を二次元走査される。
【0030】
前記受光部5は、光源部4から投光され、光反射面26で反射走査された例えばレーザ光(すなわち、図1に示す走査光)が対象領域内に存在する物体によって反射されたレーザ光(反射光)を受光して検知するものであり、例えばフォトセンサを用いることができる。なお、受光部5は、反射光を直接受光するものであってもよいし、光走査部2(光反射面26)を介して反射光を受光するものであってもよい。
【0031】
前記測距部6は、光源部4による光ビームの投光タイミングtclkと受光部5による反射光の受光タイミングとの時間差に基づいて物体の距離を計測するものであり、光源部4の投光タイミングtclkと受光部5の受光タイミングとを入力し、両者の時間差(光飛行時間)に基づいて、光ビームを反射した物体までの距離を計測する。測距部6による距離の計測は、対象領域内の各照射位置(各画素)において、すなわち、光源部4からの光ビームの投光タイミングtclk毎に行なわれ、その計測結果(投光タイミング毎の距離データL)が画像生成部11に出力される。また、測距部6は、計測結果を後述するデータ変換部71と画像生成部11に出力する。
【0032】
前記データ変換部7は、測距部6からの投光タイミング毎の距離データLを予め設定した変換パラメータを用いて3次元空間上での位置を示す点群データに変換するものであり、本実施形態においては、測距部6からの距離データLを変換するデータ変換回路71と、変換パラメータを記憶するパラメータ記憶部72とを含んで構成されている。変換パラメータは、例えば、投光タイミングtclkと、光源部4から光反射面26に向かうレーザ光の単位ベクトルである単位入射光線ベクトルaと、第1揺動振幅φxmaxと、第2揺動振幅φymaxと、第1揺動周期Tと、第2揺動周期Tとから成る。この点群データは、例えば、XYZ直交座標系のデータである。この点群データの並びにより、測距部6によって測距された物体の表面の形状が分かる。
【0033】
前記データ変換回路71は、測距部6から出力された投光タイミング毎の距離データLを入力して、この距離データを、例えば、XYZ直交座標系の点群データに変換する回路である。具体的には、データ変換回路71は、まず、パラメータ記憶部72に予め設定されている変換パラメータ(tclk、φxmax、φymax、T、T)と、前述した式(1)及び式(2)を用いて、投光タイミング毎の第1揺動角度φと第2揺動角度φを求める。次に、求めた第1揺動角度φ及び第2揺動角度φと、式(4)〜式(7)を用いて、投光タイミング毎の単位法線ベクトルnを求める。そして、求めた単位法線ベクトルnと、式(3)の単位入射光線ベクトルaを式(8)に代入して、投光タイミング毎の単位走査光線ベクトルb(bx、by、bz)を求める。最後に、求めた単位走査光線ベクトルb(bx、by、bz)を、測距部6からの投光タイミング毎の距離データLを用いて、L倍することによりXYZ直交座標系の空間上での位置を示す点群データを求める。この点群データは、判定部8と画像生成部11に出力される。
【0034】
前記パラメータ記憶部72は、変換パラメータとしての、例えば、投光タイミングtclkと、単位入射光線ベクトルa(ax、ay、az)と、第1揺動振幅φxmaxと、第2揺動振幅φymaxと、第1揺動周期Tと、第2揺動周期Tの各データを記憶するものである。各データの初期値としては、設計値が記憶されている。
【0035】
ここで、走査時における実際の投光タイミングtclkと、第1揺動周期Tと、第2揺動周期Tは、例えば光測距装置内のシステムクロック周波数の精度により高精度に設定されており、パラメータ記憶部72に記憶されている値(設計値)とほぼ一致している。また、レーザ光が光反射面26に向かう方向は、例えば、光源部4と可動部(外側可動部23及び内側可動部25等)を位置決めする部品等の製作精度で高精度に調整可能であるため、実際の単位入射光線ベクトルa(ax、ay、az)についても、パラメータ記憶部72に記憶されている値(設計値)とほぼ一致している。このように、パラメータ記憶部72に記憶されている投光タイミングtclkと、入射光線ベクトルa(ax、ay、az)と、第1揺動周期T及び第2揺動周期Tのデータについては、実際の製品における値との誤差は無視できるほどである。
【0036】
一方、実第1揺動振幅φ’xmaxと実第2揺動振幅φ’ymaxは、前述したように二次元ガルバノミラー20の経時変化等に起因して設計許容範囲をこえて変動してしまうことがあり、その変動量は、上記投光タイミングtclkや各揺動周期T、Tや単位入射光線ベクトルa(ax、ay、az)のばらつき程度と比較すると、無視できないほど大きくなってしまう場合がある。したがって、パラメータ記憶部72に設計値として記憶されている第1揺動振幅φxmax及び第2揺動振幅φymaxについては、実第1揺動振幅φ’xmaxと実第2揺動振幅φ’ymaxとの誤差が無視できない場合がある。したがって、変換パラメータのうち実際の値が不確かなデータは第1揺動振幅φxmax及び第2揺動振幅φymaxだけである。
【0037】
前記判定部8は、3次元表面形状が既知の基準物体の表面形状の基準特徴度データを予め有し、測距部6により基準物体までの距離を計測して得た投光タイミング毎の距離データLをデータ変換部7によって変換して得た基準物体についての点群データに基づき表面形状の特徴度を実測し、この実測特徴度データと基準特徴度データとの誤差が予め設定した閾値以内であるか否かを判定するものである。判定部8は、判定結果を設定変更部9に出力する。
【0038】
前記設定変更部9は、判定部8により実測特徴度データと基準特徴度データとの誤差が予め設定した閾値より大きいと判定された場合、駆動部3に予め設定され実第1揺動振幅φ’xmax及び実第2揺動振幅φ’の値を決定する第1及び第2駆動信号の電流値の少なくとも一方を、判定部8により上記誤差が閾値以内であると判定されるまで、変更設定可能なものである。設定変更部9は、例えば、初期状態では各駆動信号の電流値を変更設定するように設定されておらず、モード設定部10によって後述する校正モードに設定されない限り、予め設定された第1及び第2駆動信号の電流値を変更設定しないように構成されている。
【0039】
前記モード設定部10は、設定変更部9により、変更設定を行う校正モードと、測距部6により、物体までの距離を測定する通常測距モードとに切替設定可能なものであり、本実施形態において、校正モードとは、予め設定された第1及び第2駆動信号の電流値を変更して、変換パラメータの第1揺動振幅φxmax及び第2揺動振幅φymaxの値を実第1揺動振幅φ’xmax及び実第2揺動振幅φ’ymaxの値に精度良く合わせ込むモードである。したがって、装置のオペレータ等は、実第1揺動振幅φ’xmax及び実第2揺動振幅φ’ymaxを校正する場合は、モード設定部10で装置を校正モードに設定し、通常の測距を行う場合は、通常測距モードに設定すればよい。
【0040】
図4は、基準物体までの距離を測定している状況を示している。本実施形態においては、図4に示すように、基準物体は、その表面形状が平面である物体(例えば、壁)である。本実施形態において、判定部8は、具体的には、基準特徴度データとして基準平面度データを有し、基準物体の表面形状の特徴度として平面度を実測し、この実測平面度データと基準平面度データの誤差が予め定めた閾値以内であるか否かを判定する。設定変更部9は、判定部8により、実測平面度データと基準平面度データとの誤差が閾値より大きいと判定された場合であって、点群データに基づく表面形状が光走査部4に対して凸形状であるとき(図5(a),図5(c)の場合)は、変更設定の対象の値、すなわち、本実施形態においては、第1及び第2駆動信号の電流値、の少なくとも一方を予め定めた所定量だけ小さくし、光走査部4に対して凹形状であるとき(後述する図5(b),図5(d)の場合)は、第1及び第2駆動信号の電流値の少なくとも一方を予め定めた所定量だけ大きくするように構成されている。なお、上記にて基準物体は、例えば、壁であるとしたが、床であってもよい。
【0041】
また、設定変更部9は、第1及び第2駆動信号の電流値を変更する場合、具体的には、判定部8による点群データに基づく表面形状の凹凸判定に応じて、例えば、まず、第1駆動信号の電流値を変更し、判定部8により平面度が閾値より大きいと再判定された場合は、判定部8による凹凸判定に応じて、第2駆動信号の電流値を変更する。そして、駆動電流変更後の実測平面度データと基準平面度データとの誤差が閾値以内であると判定されるまで、駆動電流の変更を繰り返す。なお、駆動電流の変更の順番は上記とは逆に、第2駆動信号の電流値を先に変更するようにしてもよい。また、上記のように片方ずつ変更する場合に限らず、両方の駆動電流を一度に変更するようにしてもよい。
【0042】
前記画像生成部11は、測距部6によって計測された距離に基づいて対象領域についての、一般的な距離画像(図示省略)を生成する。距離画像は、例えば、各投光タイミングにおける光ビームの各照射位置において計測された距離毎に色が異なる画像となるように生成される。そして、画像生成部11で生成された距離画像は表示部12に出力される。表示部12は、ディスプレイを備え、画像生成部11から出力された距離画像を表示する。この距離画像によって対象領域内に存在する物体を認識できることはもちろん、物体までの距離、物体の姿勢の変化なども視覚的に確認することが可能となる。
【0043】
本実施形態において、画像生成部11は、さらに、データ変換部7からの点群データに基づいて対象領域内の物体についての三次元の点群画像を生成可能である。そして、画像生成部11で生成された三次元の点群画像は、表示部12に出力されて、ディスプレイに表示される。この点群画像によって、物体の表面の形状を視覚的に確認することが可能となる。
【0044】
図5(a)〜図5(d)は、ZY面及びZX面に投影した点群画像のイメージ図である。図5(a)はZY面に投影した点群画像が凹形状、図5(b)はZY面に投影した点群画像が凸形状、図5(c)はZX面に投影した点群画像が凹形状、図5(d)はZX面に投影した点群画像が凸形状の場合のイメージ図である。なお、図5(a)〜図5(d)においては、図の簡略化のため投影された点群画像を線で表したが、実際は点が離散的に、描画されている。
【0045】
次に、以上のような構成を有する光測距装置1の実揺動振幅の校正動作について、図6等に基づいて説明する。なお、下記の説明において、光測距装置1は、装置のオペレータ等によって、表面形状が既知の基準物体(例えば、壁等)の前に設置されており、起動(電源ON)後、オペレータ等によるモード設定部10の操作によって、装置は校正モードに設定されており、校正の事前準備が完了(STEP0)しているものとして説明する。
【0046】
まず、基準物体に対する測距動作について説明する。駆動部3は、初期設定された各駆動周波数で第1及び第2駆動信号を、第1及び第2駆動コイル27,28にそれぞれ供給することにより、内側可動部25を二次元方向に揺動させる。同時に、光源部4は、2次元方向に揺動する内側可動部25の光反射面26に、予め設定された投光タイミングtclkでパルス状のレーザ光を投光する。そして、光反射面26で反射走査されたレーザ光は、対象領域内で二次元走査され、対象領域内に存在する基準物体(壁等)によって反射され、受光部5で受光される。ここで、測距部6はレーザ光の投光タイミングと受光タイミングとの時間差に基づいて基準物体まで距離を投光タイミング毎に計測する(STEP1)。そして、測距部6は計測結果(投光タイミング毎の距離データL)をデータ変換回路71と画像生成部11に出力する。画像生成部11は、測距部6からの計測結果に基づき距離画像を生成する。そして、生成された距離画像が表示部12に表示される(STEP2)。次に、データ変換回路71は、測距部6からの投光タイミング毎の距離データLを、XYZ直交座標系の点群データに変換する(STEP3)。データ変換回路71は、算出した点群データを判定部8と画像生成部11に出力する(STEP4)。判定部8は、点群データの並びから基準物体の表面の平面度を実測し、この実測平面度データと予め設定した基準平面度データとの誤差が予め定めた閾値以内であるか否かを判定する(STEP5)。ここで、実測平面度データと基準平面度データとの誤差が閾値より大きいと判定された場合(STEP5否定)は、STEP6に進む。ここで、設定変更部9は、判定部8により点群データに基づく表面形状が光走査部に対して凸形状であると判定されている場合は、例えば、駆動部3に記憶されている第1及び第2駆動信号の電流値の少なくとも一方を予め定めた所定量だけ小さくし、光走査部に対して凹形状であると判定されている場合は、駆動部3に記憶されている第1及び第2駆動信号の電流値の少なくとも一方を予め定めた所定量だけ大きくする(STEP6)。そして、STEP1に戻り、STEP1〜STEP5までの動作を行い、電流値変更後の実測平面度データと基準平面度データとの誤差が閾値以内であると判定(STEP5肯定)されるまで、STEP1〜STEP6の動作を繰り返す。そして、誤差が閾値以内で有る場合(STEP5肯定)は、STEP7に進む。この時、閾値が適切に設定されていれば、実第1揺動振幅φ’xmax及び実第2揺動振幅φ’ymaxは、パラメータ記憶2に設定されている目標値に略一致する。このようにして、変換パラメータの各揺動振幅を目標にして、各駆動信号の電流値に応じた各実揺動振幅をそれぞれ校正して、校正が完了する(STEP7)。
【0047】
このように、本実施形態による光測距装置1によれば、基準物体までの距離を測定したときの測距部6からの距離データを予め設定した変換パラメータを用いて点群データに変換し、この点群データに基づき、基準物体の表面形状の特徴度を実測し、この実測特徴度データと予め設定した基準特徴度データとの誤差が予め設定する閾値以内になるまで、予め設定した第1及び第2駆動信号の電流値の少なくとも一方を変更することで、変換パラメータの第1揺動振幅φxmax及び第2揺動振幅φymaxを目標にして、実第1揺動振幅φ’xmax及び実第2揺動振幅φ’ymaxをそれぞれ校正することができる。したがって、本実施形態による光測距装置によれば、各実揺動振幅の目標値を変換パラメータとして設定し、実測特徴度データと基準特徴度データとの誤差の閾値を適切に設定するだけで、各実揺動振幅を目標値に精度良く合わせ込むことができるため、作業者等による作業精度に影響されることなく、各投光タイミングにおける可動部の各軸回りの揺動角度がそれぞれ意図する角度になるように、精度良く校正可能な光測距装置を提供することができる。
【0048】
また、本発明による光測距装置によれば、例えば、光走査部の経時変化により各実揺動振幅が設計許容範囲からはずれてしまった場合や、出荷前の校正時の光測距装置周囲の温度と、出荷後の光測距装置の設置場所の温度が異なる場合であっても、経時変化や温度差に応じて適切に駆動電流値を微調整して、各実揺動振幅を設計許容範囲に収まるように校正することができる。
【0049】
次に、本発明の第2実施形態による光測距装置について説明する。
図7は、本発明の第2実施形態による光測距装置の概略構成を示す部分ブロック図である。なお、図1の第1実施形態と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。本実施形態においては、変換パラメータの第1揺動振幅φxmax及び第2揺動振幅φymaxの値を実第1揺動振幅φ’xmax及び実第2揺動振幅φ’ymaxの値に精度良く合わせ込むことが可能な構成を説明する。
【0050】
本実施形態において、設定変更部9は、判定部8により実測特徴度データと基準特徴度データとの誤差が予め設定した閾値より大きいと判定された場合、変換パラメータの第1揺動振幅φxmax及び第2揺動振幅φymaxの少なくとも一方を、判定部8により上記誤差が閾値以内であると判定されるまで、変更設定可能に構成されている。設定変更部9は、例えば、初期状態では変換パラメータの各揺動振幅を変更設定するように設定されておらず、モード設定部10によって校正モードに設定されない限り、変換パラメータの各揺動振幅を変更設定しないように構成されている。本実施形態において、校正モードとは、変換パラメータの第1揺動振幅φxmax及び第2揺動振幅φymaxの値を、実第1揺動振幅φ’xmax及び実第2揺動振幅φ’ymaxの値に精度良く合わせ込むモードである。
【0051】
設定変更部9は、判定部8により、実測平面度データと基準平面度データとの誤差が閾値より大きいと判定された場合であって、点群データに基づく表面形状が光走査部4に対して凸形状であるとき(図5(a),図5(c)の場合)は、変更設定の対象の値、すなわち、本実施形態においては、変換パラメータの各揺動振幅、の少なくとも一方を予め定めた所定量だけ小さくし、光走査部4に対して凹形状であるとき(後述する図5(b),図5(d)の場合)は、変換パラメータの各揺動振幅の少なくとも一方を予め定めた所定量だけ大きくするように構成されている。
【0052】
また、設定変更部9は、変換パラメータの各揺動振幅を変更する場合、具体的には、判定部8による点群データに基づく表面形状の凹凸判定に応じて、例えば、まず、第1揺動振幅φxmaxを変更し、判定部8により平面度が閾値より大きいと再判定された場合は、判定部8による凹凸判定に応じて、第2揺動振幅φymaxを変更する。そして、変換パラメータ(各揺動振幅)変更後の実測平面度データと基準平面度データとの誤差が閾値以内であると判定されるまで、変換パラメータの各揺動振幅の変更を繰り返す。なお、各揺動振幅の変更の順番は上記とは逆に、第2揺動振幅φymaxを先に変更するようにしてもよい。また、上記のように片方ずつ変更する場合に限らず、両方の揺動振幅を一度に変更するようにしてもよい。
【0053】
なお、変換パラメータの全ての値が実機と略一致している場合、測距部により基準物体までの距離を計測して得た投光タイミング毎の距離データをデータ変換部によって変換して得た基準物体についての点群データに基づき、判定部によって実測した実測平面度データと基準平面度データは、略一致するはずである。また、変換パラメータのうち投光タイミングと揺動周期と入射光線ベクトルについては、一般的に実機における値と略一致するように予め設定可能なものであるが、第1揺動振幅φxmax及び第2揺動振幅φymaxについては、例えば、二次元ガルバノミラーの製造ばらつきや経時変化等によってばらついてしまうため、変換パラメータのうち実機における値が不確かなデータは各揺動振幅だけである。したがって、上記のように、変換パラメータのうち各揺動振幅を変更して、判定部によって実測した特徴度と基準特徴度が一致した場合、変更後の変換パラメータの第1及び第2揺動振幅は、各実揺動振幅と略一致している。
【0054】
次に、以上のような構成を有する光測距装置1の校正動作について、図8等に基づいて説明する。下記の説明において、光測距装置1は、装置のオペレータ等によって、表面形状が既知の基準物体(例えば、壁等)の前に設置されており、起動(電源ON)後オペレータ等によるモード設定部10の操作によって、装置はモードモードに設定されており、校正の事前準備が完了(STEP0)しているものとして説明する。なお、STEP6’以外のSTEPの動作については、第1実施形態と同じであるため説明を簡略化する。
【0055】
まず、基準物体までの距離を投光タイミング毎に計測する(STEP1)。そして、測距部6は計測結果をデータ変換回路71と画像生成部11に出力する。画像生成部11は、距離画像を生成する。表示部12は距離画像を表示する(STEP2)。次に、データ変換回路71は、測距部6からの距離データLを、XYZ直交座標系の点群データに変換し、点群データを判定部8と画像生成部11に出力する(STEP3,4)。判定部8は、点群データの並びから基準物体の表面の平面度を実測し、実測平面度データと基準平面度データとの誤差が閾値以内であるか否かを判定する。ここで、誤差が閾値より大きいと判定された場合(STEP5否定)は、STEP6’に進む。設定変更部9は、判定部8により点群データに基づく表面形状が光走査部に対して凸形状であると判定されている場合は、変換パラメータの第1揺動振幅φxmax及び第2揺動振幅φymaxの少なくとも一方を予め定めた所定量だけ小さくし、光走査部に対して凹形状であると判定されている場合は、変換パラメータの第1揺動振幅φxmax及び第2揺動振幅φymaxの少なくとも一方を予め定めた所定量だけ大きくする(STEP6’)。そして、STEP1に戻り、STEP1〜STEP5までの動作を行い、変換パラメータ変更後の実測平面度データと基準平面度データとの誤差が閾値以内であると判定(STEP5肯定)されるまで、STEP1〜STEP6の動作を繰り返す。そして、誤差が閾値以内で有る場合(STEP5肯定)は、STEP7に進む。この時、閾値が適切に設定されていれば、変更後の変換パラメータの第1揺動振幅φxmax及び第2揺動振幅φymaxの値は、実第1揺動振幅φ’xmax及び実第2揺動振幅φ’ymaxの値に略一致する。このようにして、変換パラメータの各揺動振幅の値を、各実揺動振幅の値に精度良く合わせ込み、校正が完了する(STEP7)。
【0056】
このように、本実施形態による光測距装置1によれば、第1実施形態に係る発明による光測距装置1と異なり、変換パラメータの第1揺動振幅φxmax及び第2揺動振幅φymaxの少なくとも一方を、実測特徴度データと予め設定した基準物体の表面形状の基準特徴度データとの誤差が予め設定する閾値以内になるまで、変更することで、実機の第1及び第2揺動振幅を目標にして、変換パラメータの第1及び第2揺動振幅をそれぞれ校正することができる。したがって、本実施形態による光測距装置1によれば、実測特徴度データと基準特徴度データとの誤差の閾値を適切に設定するだけで、変換パラメータの各揺動振幅の値を各実揺動振幅の値に精度良く合わせ込むことができるため、作業者等による作業精度に影響されることなく、各投光タイミングにおける可動部の各軸回りの揺動角度がそれぞれ意図する角度になるように、精度良く校正可能な光測距装置を提供することができる。
【0057】
なお、前述した第1実施形態において、設定変更部9は、判定部8により実測特徴度データと基準特徴度データとの誤差が閾値より大きいと判定された場合、上記第2実施形態と同様に、変換パラメータの第1揺動振幅φxmax及び第2揺動振幅φymaxの少なくとも一方を、判定部8により上記誤差が閾値以内であると判定されるまで、変更設定可能な構成を有する構成としてもよい。この場合、図9に示す本発明の第3実施形態のように、設定変更部9で変更設定する対象を選択切替可能な変更対象選択部13を備えて構成する。これにより、設定変更部9は、モード設定部10により校正モードに設定されている場合、変更対象選択部13により変更設定の対象を、変換パラメータの第1揺動振幅φxmax及び第2揺動振幅φymax又は予め設定された第1及び第2駆動信号の電流値に切替設定することができ、校正方法を自由に選択することができる。なお、モード設定部10は、図9に示すように、例えば、変更対象選択部13とは別に設ける場合で説明したが、これに限らず、図示省略するが、変更対象選択部13の機能を備えて、変更対象選択部13と一体的に構成してもよい。この場合、モード設定部10は、例えば、測距部6により物体までの距離を測定する通常測距モードと、予め設定された第1及び第2駆動信号の電流値を変更する駆動電流変更モードと、変換パラメータの各揺動振幅を変更する変換パラメータ変更モードとに切替設定可能に構成する。
【0058】
なお、上記全ての実施形態の説明において、基準物体は表面形状が平面である場合で説明したが、例えば、基準物体の表面形状は球面であってもよい、この場合、表面形状の特徴量は例えば真球度や表面の曲率を算出するように構成すればよい。
【0059】
また、上記全ての実施形態の説明において、画像生成部11及び表示部12を設けた場合で説明したが、画像生成部11及び表示部12は設けなくてもよい。
【0060】
そして、上記全ての実施形態の説明において、光走査部2は、外側可動部及び内側可動部を一体に形成した二次元ガルバノミラー20によって構成する場合で説明したが、光走査部2は、図示しないが、周知の一次元ガルバノミラーを2個用いて、それぞれの揺動軸が互いに直交するように配置して構成してもよい。
【符号の説明】
【0061】
1…光測距装置
2…光走査部
3…駆動部
4…光源部
5…受光部
6…測距部
7…データ変換部
8…判定部
9…設定変更部
10…モード設定部
11…画像生成部
12…表示部
13…変更対象選択部
20…二次元ガルバノミラー(光走査部)
23,25…可動部(外側可動部、内側可動部)
26…光反射面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9