(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された水中撮影用のカメラでは、
図12に示すように、圧力センサ74を用いた圧力測定装置の上面及び下面の外周部に形成された切り込み72と防水パッキン71を用いて、前記カメラに圧力センサ74を用いた圧力測定装置を防水構造で装着していた。
【0007】
防水性を確実にするために防水パッキン71を嵌め込むための切り込み72や溝が設けられると、小型なカメラなどに圧力センサ74を用いた圧力測定装置を搭載する際に、切り込み72や前記溝のためのスペースが必要となり小型化の妨げになっていた。また、防水パッキン71の価格は高くコストアップの要因となっていた。
【0008】
防水パッキン71には、加工方法によってはバリ残りが発生し、また、加工寸法ズレによって切り込み72や前記溝への嵌め込み不具合が発生し、防水性を損なうことがあった。
【0009】
特許文献2に開示されたダイバーウォッチでは、風防ガラス81に設けられた開口部82に圧力センサ74を用いた圧力測定装置が、幾つかの方法で装着されていた。
【0010】
その一つは、
図13に示すように、風防ガラス81に貫通小孔82aを設け、この貫通小孔82a内にヤング率が非常に小さいゴム状の弾性物質83を充填し、この貫通小孔82aを覆うように風防ガラス81の内側に圧力測定装置に搭載されたシリコンダイヤフラム型圧力センサ74aを密閉固着していた。この構造では、この貫通小孔82aの孔径はシリコンダイヤフラム型圧力センサ74aの径より大きくすることができなった。そのため、受圧面である貫通小孔82aの孔径が小さいために、貫通小孔82aが海水や汗が蒸発して生じる食塩の結晶またはゴミ等で塞がれて、正確な水圧の計測が損なわれることがあった。
【0011】
他の方法は、
図14、
図15に示すように、圧力センサ74を用いた圧力測定装置がセンサ取付台84にシリコンダイヤフラム型圧力センサ74aを設置して構成され、このセンサ取付台84が風防ガラス81に防水パッキン71によって防水構造で装着されていた。上述のように、防水パッキン71を用いることが、コストアップの要因となり、また、小型化の妨げになっていた。
【0012】
本発明は、このような課題を顧みてなされたものであり、低価格、良好な防水性、正確な計測及び小型化を可能とする防水構造を有する荷重センサを用いた圧力測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の荷重センサを用いた圧力測定装置は、荷重を受ける受圧部を介して前記荷重を計測する荷重センサと、前記荷重を前記受圧部に伝達する圧力伝達部と、前記圧力伝達部と前記荷重センサとを収容する凹型の筐体と、前記凹型の筐体の開口部を覆い外部からの荷重を受ける防水シートとを有し、前記凹型の筐体の底面に前記荷重センサが設置され、前記受圧部と当接して前記圧力伝達部が設置され、前記防水シートが前記圧力伝達部に当接して設置され
ている。
【0014】
低価格な前記防水シートで前記凹型の筐体の開口部を覆うことで防水性を得ると共に外部からの荷重を受けている。前記防水シートは前記凹型の筐体の外壁上面の全面をシール面として広くとれるので、切り込み及び溝は無くても十分に防水性を得ることが可能になった。
【0015】
また、前記荷重センサを収容する前記凹型の筐体の開口部の全面で受圧することで、その受圧面を広く設けることができ、前記受圧面が食塩の結晶またはゴミ等で塞がれることを低減した。
【0016】
また、上述の理由により前記切り込み及び前記溝を無くすことができたので、前記切り込みや前記溝に起因した防水性の不具合を解消すると共に、低価格及び小型化を可能とした。
【0017】
このようにして、本発明によれば、低価格、良好な防水性、正確な計測及び小型化を可能とする防水構造を有する荷重センサを用いた圧力測定装置を提供することができた。
【0026】
本発明はまた、前記荷重センサが、前記荷重により変位量が変化する変位部を備えたセンサ基板
と、前記センサ基板に接合されたベース基板と、を有し、前記センサ基板には、その表裏面の一方の面に前記受圧部と、その表裏面の他方の面に複数の歪検出素子と、前記変位部を変位自在に支持するセンサ側支持部と、前記センサ側支持部よりも基板周縁に前記複数の歪検出素子とそれぞれ電気的に接続された複数のセンサ側接続電極
とが備えられ、前記センサ基板との接合面側に位置する前記ベース基板の一方の面に、前記センサ側支持部に接合するベース側支持部と、前記ベース側支持部よりも基板周縁に前記複数のセンサ側接続電極に接合する複数のベース側接続電極と、前記複数のベース側接続電極から引き出された配線の端部に外部接続可能に形成された複数のベース側パッド電極とが備えられ、前記荷重センサはさらに、前記接合面側に対向する前記ベース基板の他方の面に接合されたプリント基板を有し、前記ベース基板との接合面側に位置する前記プリント基板の面に、前記複数のベース側パッド電極と複数のボンディングワイヤで電気的に接合された複数のプリント側パッド電極と、前記複数のプリント側パッド電極に電気的に接続された複数の貫通電極とを備えることを特徴とする。
【0027】
このような態様であれば、前記受圧部が外部から受けた荷重を、前記複数の歪検出素子によって電気信号に変換することで計測し、その電気信号を外部に出力することが可能である。
【0029】
また、熱圧着工程の生産能力に優れると共に、前記受圧部が外部から受けた荷重を計測し、その電気信号を外部に出力することが可能である。
【0031】
また、ワイヤボンディング工程の生産能力に優れると共に、前記受圧部が外部から受けた荷重を計測し、その電気信号を外部に出力することが可能である。
【0032】
前記防水シートを介して水中で稼動する機器の筐体に水密に固定されることが好ましい。
【0033】
このような態様であれば、水圧等を計測する機能及び防水構造を有する水中で稼動する機器を提供することが可能である。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、低価格な防水シートで凹型の筐体の開口部を覆うことで防水性を得ると共に外部からの荷重を受けている。前記防水シートは前記凹型の筐体の外壁上面の全面をシール面として広くとれるので、切り込み及び溝は無くても十分に防水性を得ることが可能になった。
【0035】
また、荷重センサを収容する前記凹型の筐体の開口部の全面で受圧することで、その受圧面を広く設けることができ、前記受圧面が食塩の結晶またはゴミ等で塞がれることを低減した。
【0036】
また、上述の理由により前記切り込み及び前記溝を無くすことができたので、前記切り込みや前記溝に起因した防水性の不具合を解消すると共に、低価格及び小型化を可能とした。
【0037】
このようにして、本発明によれば、低価格、良好な防水性、正確な計測及び小型化を可能とする防水構造を有する荷重センサを用いた圧力測定装置を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】第一の実施形態である荷重センサ1の断面略図である。
【
図2】第一の実施形態である凹型の筐体51の断面略図である。
【
図3】第一の実施形態である荷重センサ1が接合された凹型の筐体51の断面略図である。
【
図4】第一の実施形態である圧力測定装置2の断面略図である。
【
図5】第一の実施形態である圧力測定装置2が水中撮影用カメラの筐体61に取り付けられた断面略図である。
【
図6】第二の実施形態である柔らかいゲル状物質が圧力伝達部12を安定的に支持する圧力測定装置が水中撮影用カメラに搭載された場合の断面略図である。
【
図7】第三の実施形態である荷重センサ1aの断面略図である。
【
図8】第三の実施形態である荷重センサ1aが水中撮影用カメラの筐体61に取り付けられた断面略図である。
【
図9】第四の実施形態である荷重センサ1bの断面略図である。
【
図10】第四の実施形態である荷重センサ1bが水中撮影用カメラの筐体61に取り付けられた断面略図である。
【
図11】第四の実施形態である柔らかいゲル状物質が圧力伝達部12を安定的に支持する圧力測定装置が水中撮影用カメラに搭載された場合の断面略図である。
【
図12】特許文献1の圧力測定装置が水中撮影用カメラの筐体61に取り付けられた断面略図である。
【
図13】特許文献2の圧力測定装置がダイバーウォッチの風防ガラス81に取り付けられた断面略図である。
【
図14】特許文献2の圧力測定装置がダイバーウォッチの風防ガラス81に取り付けられた断面略図である。
【
図15】特許文献2の圧力測定装置がダイバーウォッチの風防ガラス81に取り付けられた断面略図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
<第一の実施形態>
本発明の第一の実施形態について説明する。
図1は、第一の実施形態である荷重センサ1の断面略図である。
図1に示すように、荷重センサ1は、センサ基板21、変位部22、受圧部23、歪検出素子24、引き出し配線25、センサ側接合電極26、絶縁膜27、センサ側支持部28から構成される。第一の実施形態では、歪検出素子24として、ピエゾ抵抗素子24aを用いている。
【0040】
荷重センサ1は、巨視的に見て凹凸のない一定厚さのシリコン基板からなるセンサ基板21を備えている。センサ基板21の中央部が荷重を受けて変位する変位部22を構成している。センサ基板21の表裏面の一方の面に隆起した凸形状の受圧部23が設けられて、外部からの荷重を受けている。受圧部23は、ニッケル合金またはシリコン(センサ基板21と同一材質)からなることが好ましい。
【0041】
センサ基板21の表裏面の他方の面に、複数のピエゾ抵抗素子24aと、変位部22を変位自在に支持するセンサ側支持部28と、センサ側支持部28よりもセンサ基板21の周縁に複数のピエゾ抵抗素子24aと電気的に接続された複数のセンサ側接合電極26と、複数のピエゾ抵抗素子24aと複数のセンサ側接合電極26とを電気的に接続する複数の引き出し配線25とが設けられている。センサ側支持部28は複数の柱状体である。そして、センサ側支持部28は、少なくとも一部が複数のピエゾ抵抗素子24aと平面的に重複するように設けられ、変位部22を安定的に支持するために変位部22の平面中心に対して対称な位置関係で設けられている。
【0042】
図2は、本発明の第一の実施形態である凹型の筐体51の断面略図である。
図2に示すように、凹型の筐体51には、筐体側接合電極56と筐体側支持部58が形成されている。そして、筐体側接合電極56と筐体側支持部58とは、図示してない金属配線によって凹型の筐体51の外部に接続されている。
【0043】
センサ側接合電極26、センサ側支持部28、筐体側接合電極56、及び筐体側支持部58は、Al、Ti、Cr、Ni、Cu、Ru、Rh、Ir、Pt、Ta、Fe、Auのいずれかまたは二つ以上を含む合金または二層以上の積層膜であることが好ましい。
【0044】
凹型の筐体51はインサート成形により金属配線と樹脂を一体化して製作した。筐体側接合電極56と筐体側支持部58とは、この金属配線の一部を形成しており、金属配線の他の部分は図示していない。
【0045】
凹型の筐体51の製作はインサート成形に限定されるものではなく、他の方法で製作しても構わない。また、凹型の筐体51の材質は樹脂に限定されるものではなく、金属やセラミックス等の材質も可能である。
【0046】
荷重センサ1と凹型の筐体51を、センサ側接合電極26と筐体側接合電極56、及びセンサ側支持部28と筐体側支持部58を平面的に一致させて、対向させる。そして、受圧部23に荷重した状態で常温から250℃未満に昇温し荷重センサ1を凹型の筐体51に熱圧着する。その結果、センサ側接合電極26と筐体側接合電極56、及びセンサ側支持部28と筐体側支持部58は金属接合されて、
図3に示すように、荷重センサ1は、凹型の筐体51の底面に接合される。
【0047】
荷重センサ1と凹型の筐体51との接合は熱圧着に限定されるものではなく、導電性ペース等の導電性接合材料製品を用いることも可能である。
【0048】
図4に示すように、荷重センサ1が接合された凹型の筐体51に、荷重センサ1の受圧部23に当接して圧力伝達部12を設け、圧力伝達部12に当接して防水シート11を設けることで、圧力測定装置2が構成される。
【0049】
次に、
図5に示すように、圧力測定装置2は、防水シート11を介して水中撮影用カメラの筐体61にネジ62で固定される。このように、圧力測定装置2は水中撮影用カメラの筐体61に防水構造で固定される。そして、圧力測定装置2は、例えば、水圧を計測することに用いられる。
【0050】
図5には図示していないが、荷重センサ1から出力された電気信号は、センサ側接合電極26から筐体側接合電極56を経由して、水中撮影用カメラの電気回路に出力される。
【0051】
防水シート11は、二トリルゴム、スチロールゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム等を主材質とすることが好ましい。
【0052】
防水シート11はゴム製品に限定されるものではなく、ステンレス、インコネル、ニッケル、銅、アルミニウム等の金属または合金を使用することも可能である。
【0053】
図12に示すように、特許文献1に開示された防水パッキン71はリング状である。また、
図14、
図15に示すように、特許文献2に開示された物は、リング状の防水パッキン71または一端に突出部を備える筒状体の防水パッキン71aである。このような防水パッキン71は、圧縮成形、プレス加工、抜き打ち加工等で製作される。圧縮成形及びプレス加工は金型が必要で、抜き打ち加工には抜き型が必要である。この金型、抜き型に掛かるイニシャルコストのために、防水パッキン71は価格が高いと言う問題があった。
【0054】
図5に示すように、圧力測定装置2は、防水シート11を介して水中撮影用カメラの筐体61に防水構造で固定される。防水シート11は、平面的に四角形をした膜状の構造であり、大きなシートを裁断機によって切断して製作される。この加工方法では金型及び抜き型は必要ないためイニシャルコストが不要となり、防水シート11は安価に製作することが可能である。
【0055】
防水シート11は平面的に四角形に限定されるものではなく、多角形、円状、楕円状等の形状であっても構わない。
【0056】
また、防水パッキン71の品質では、バリ残りと寸法が重要な項目である。圧縮成形ではバリ残りが発生し易い。バリ残りは密着性を損なうため防水性能低下の原因となる。また、リング状の防水パッキン71は、そのシール面が狭いために、切り込み72や溝を設けることでシール面を広げ、防水性を改善している。防水パッキン71の寸法が切り込み72及び前記溝の寸法から外れて、防水パッキン71の切り込み72及び前記溝への嵌め込み不具合が生じて防水性能が低下することもある。また、切り込み72や前記溝を形成するためには費用が掛かる。
【0057】
防水シート11は、一体物であり凹型の筐体51の外壁上面の全面をシール面として広くとれるので、切り込み72及び前記溝を不要とし、また、切り込み72及び前記溝のスペースが必要でなくなり小型化を可能とした。また、防水シート11は裁断機で切断して製作されるのでバリ残りが発生し難く防水性能が改善した。
【0058】
図5に示すように、受圧部23に当接して設置された圧力伝達部12は、凹型の筐体51より突出している。そして、圧力伝達部12に当接して防水シート11が凹型の筐体51の開口部を覆うように設置され、防水シート11が凹型の筐体51と水中撮影用カメラの筐体61とに挟まれてネジ62で締め付けられる。その際、圧力伝達部12が突出しているので、防水シート11が延びることで圧力伝達部12を介して受圧部23が押圧される。
【0059】
押圧を0.1N(ニュートン)程度になるように設定し、この押圧0.1N(ニュートン)において、荷重センサ1の水圧を0.0N(ニュートン)と設定することで、例えば、水圧に対してゼロ点出力のない出力が可能となった。
【0060】
上記の理由は、前記押圧がない際に、圧力伝達部12と受圧部23との接触面に対し平行に振動や力等が作用すると、圧力伝達部12が受圧部23に対して横方向にずれ、圧力伝達部12に連結した防水シート11が変形し、ゴム製の防水シート11が備える弾性的な性質により圧力伝達部12に加わる荷重が変化する。この結果、外部からの荷重がない際にも出力があると言うゼロ点出力が生じる。ところで、押圧0.1N(ニュートン)程度を加えると、横方向のずれは抑えられ、ゼロ点出力を防止できる。
【0061】
防水シート11が柔らかければ、水圧が変化すると即座に防水シート11は変形し、水圧の変化は遅延することなく圧力伝達部12に伝達される。また、防水シート11が弾性を有すると、水圧の変化に対し比例して防水シート11は変形するので、水圧の変化に比例して圧力伝達部12は変位する。このように、防水シート11が弾性を有する柔らかい物質であると、水圧の変化は圧力伝達部12を介して受圧部23に即時に水圧に比例して伝達されるので、遅延のない正確な計測を可能とする。
【0062】
荷重センサを用いた圧力測定装置2は、荷重センサ1の変位部22が、その中心に加重される集中荷重に応じた変位量で変位し、この変位量に応じて複数のピエゾ抵抗素子24aの抵抗が変化する。そして、この抵抗の変化量に応じた電気信号が出力される。よって、変位部22に加わる集中荷重が大きくなると、出力される電気信号の強度は大きくなり、即ち、感度は大きくなる。
【0063】
図5に図示するように、水圧は、水中撮影用カメラの筐体61の開口部を通して外部に露出した防水シート11に加わり、圧力伝達部12を介して受圧部23に加わる。水圧を受ける防水シート11の受圧面積=S1、荷重を受ける受圧部23の受圧面積=S2、水圧=Pとする。この際、受圧部23の単位面積当りの荷重=P×S1/S2であり、受圧部23に加わる荷重=P×S1である。S1を大きく、S2を小さくすると、変位部22の中心に加重される集中荷重を大きくできるので、感度を大きくすることができる。また、S1は同じで、S2を小さくする、またはS1を小さくし、S2をそれ以上に小さくすることにより、変位部22の中心のより狭い領域に荷重を集中することで、感度を大きくすることができる。
【0064】
特許文献2に開示されている圧力センサを用いた圧力測定装置は、水圧が弾性物質を介して半導体抵抗を備えるシリコンダイヤフラムに加重される。この際、弾性物質とシリコンダイヤフラムとの接触面積=S3とする。シリコンダイヤフラムの単位面積当りの荷重=P×S3/S3=Pであり、シリコンダイヤフラムに加わる荷重=P×S3である。S3を大きくしても、シリコンダイヤフラムの単位面積当りの荷重を変えることができない。また、前記圧力センサを用いた圧力測定装置には、圧力測定装置2のように荷重を集中して受ける受圧部23がなく、荷重をシリコンダイヤフラムの面で受けるために、その中心に加わる集中荷重を圧力測定装置2のように大きくすることができない。
【0065】
また、0<S1、0<S3<シリコンダイヤフラムの面積であり、S1には制限がないが、S3はシリコンダイヤフラムの面積によって制限されている。
【0066】
このように、荷重センサを用いた圧力測定装置2の特徴は、圧力センサを用いた圧力測定装置に比べて、その感度を大きく変えることができることである。
【0067】
この特徴を利用すれば、荷重センサを用いた圧力測定装置2は、小型化のために凹型の筐体51を小さくし防水シート11の受圧面積が小さくなった際に、前記に相当して受圧部23の受圧面積を小さくすれば、感度を下げることなく小型化が可能である。水中で稼動する水中撮影用カメラやダイバーウォッチは、水中での操作性のために小型化の要求が強く、これに装着される計測器の小型化も要求される。よって、この要求を、荷重センサを用いた圧力測定装置2は、圧力センサを用いた圧力測定装置よりも容易に応えることができる。
【0068】
また、この特徴を利用すれば、例えば、水深が浅く、即ち、水圧が小さく感度が欲しい際は感度を上げ、水深が深く、即ち、水圧が高く計測値が飽和する際には感度を下げて計測すると言うように、同一の荷重センサ1によって広い範囲の水圧を最適に計測することが可能になる。
【0069】
また、荷重センサ1の平面的大きさは、例えば、1mm×1mm=1mm
2程度であり、直径が100mmであるシリコン基板より8000個程度に取得でき、同時に数枚のシリコン基板で生産する際は、8000個程度×数枚と大量に効率的に及び安価に生産される。このように、大量に生産された荷重センサ1を、凹型の筐体51、防水シート11及び圧力伝達部12の大きさを変えて組み立てることで、色々な用途に使用できる荷重センサを用いた圧力測定装置2を安価に製作することができる。
【0070】
ところが、圧力センサを用いた圧力測定装置では、その感度を変えるためには、シリコンダイヤフラムの膜厚を変える、または、平面的な大きさを変える等によって前記圧力センサの仕様を変える必要がある。よって、シリコン基板から前記圧力センサを生産する工程において、多品種生産、同一工程に複数枚のパターン形成用ホトマスクを用意する必要がある等が、前記圧力センサを用いた圧力測定装置の価格を高くする要因となる。
【0071】
また、防水シート11が水圧を受ける受圧面は、荷重センサ1を収容する凹型の筐体51の開口部と同じ程度に広くとれるので、海水や汗が蒸発して生じる食塩の結晶またはゴミ等で塞がれることが低減された。
【0072】
ところが、特許文献1及び特許文献2に開示された圧力センサを用いた圧力測定装置は、
図12、
図13、
図14、
図15に示すように、保護カバー85が取り付けられ、この保護カバー85に設けられた保護カバーの開口部85aを通して、水圧を計測していた。そして、保護カバーの開口部85aの径は圧力センサ74よりも小さく、その孔径が小さいために海水や汗が蒸発して生じる食塩の結晶またはゴミ等で塞がれ易かった。そのために、正確な水圧の計測が損なわれることがあった。
【0073】
第一の実施形態においては、圧力測定装置2を水中撮影用カメラに適用するとしたが、これに限定されるものではない。特に防水構造を必要とする分野であることが好ましく、ダイバーウォッチ、ビデオ及び携帯機器を始めとして、洗濯機、食洗機及び給湯機等の民生用、空圧計、水圧計及び油圧計等の産業用、電子制御燃料噴射装置等の車載用等に適用することが可能である。
【0074】
また、圧力測定装置2は水圧測定に限定されるものではなく、水深、空圧、油圧等にも適用することができる。
【0075】
水圧により受圧部23が受けた荷重が変位部22の変位量を変化させ、この変位量に応じピエゾ抵抗素子24aの抵抗値が変化することで水圧が計測される。また、変位部22は連続した一つの空間内に存在するので、その周囲には同一の圧力が加わる。よって、水深が深くなり圧縮されることで凹型の筐体51内の圧力が上昇しても、計測される水圧は前記圧力上昇の影響を受けない。即ち、計測される水圧は、前記水圧により変化する変位部22の前記変位量のみ依存した計測値である。
【0076】
ところが、特許文献2に開示された圧力センサを用いた圧力測定装置は、密閉された風防ガラス81内の圧力との差圧により水圧を計測する。水深が深くなると水圧が上昇するため風防ガラス81はより圧縮される。そのため、風防ガラス81内の圧力が上昇し、計測される水圧の値は小さくなる。このように、圧力センサを用いた圧力測定装置による水圧の計測値には、水深に依存した測定誤差が生じていた。
【0077】
特許文献2に開示された技術では、弾性物質83を介して半導体材料であるシリコンダイヤフラム型圧力センサ74aが外部に露出されている。そのため、太陽光などの外光により電流が流れてノイズが発生することを防ぐために、弾性物質83に遮光性の顔料を含有させており、コストアップの要因となっていた。第一の実施形態では、非透光性の防水シート11で荷重センサ1を覆っているので、このような問題は発生しなかった。
<第二の実施形態>
【0078】
図6に、第二の実施形態である柔らかいゲル状物質13が圧力伝達部12を安定的に支持する圧力測定装置が水中撮影用カメラに搭載された場合の断面略図を示す。
図6に示すように、柔らかいゲル状物質13は、防水シート11に接しないので、圧力伝達部12の下部及び荷重センサ1を周囲から包むように支えている。このように、圧力伝達部12と受圧部23との接触面は、柔らかいゲル状物質13によって周囲から支えられているので、圧力伝達部12が受圧部23からずれることが抑制され、ゼロ点出力が生じることを防止している。また、柔らかいゲル状物質13は防水シート11に接していないので、防水シート11に加重された水圧の全てが圧力伝達部12を介して受圧部23に加重される。よって、水圧のゼロ点出力のない正確な計測を可能とした。
【0079】
圧力伝達部12の周縁部が防水シート11に接着されている場合も同様であり、前記の接着により圧力伝達部12と受圧部23とがずれることが防止され、ゼロ点出力のない正確な計測を可能とした。
【0080】
柔らかいゲル状物質13が、接合されたセンサ側支持部28と筐体側支持部58との内側に侵入し、対向するセンサ基板21と凹型の筐体51との隙間に溜まってくると、変位部22の変位が制限されるため正確な水圧の計測を損なう。よって、第二の実施形態では、この侵入を防止するためにセンサ側支持部28と筐体側支持部58とは筒状体であることが好ましい。
【0081】
柔らかいゲル状物質13は、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリイミド樹脂、シリコン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂のいずれかを主材料とする化合物であることが好ましい。
<第三の実施形態>
【0082】
図7に、第三の実施形態である荷重センサ1aの断面略図を示す。
図7に示すように、荷重センサ1aは、変位部22、受圧部23、歪検出素子24、引き出し配線25、センサ側接合電極26、絶縁膜27、センサ側支持部28を備えるセンサ基板21と、ベース側支持部38、ベース側接合電極36、ベース側パッド電極39を備えるベース基板31とから構成されている。第一の実施形態と同じ方法によりセンサ基板21をベース基板31に熱圧着することで、センサ側支持部28とベース側支持部38、及びセンサ側接合電極26とベース側接合電極36は金属接合される。
【0083】
図8に、第三の実施形態である荷重センサ1aが水中撮影用カメラの筐体61に取り付けられた断面略図を示す。荷重センサ1aは、凹型の筐体51の底面に接合され、複数のベース側パッド電極39と複数の凹型の筐体側パッド電極59とが複数のボンディングワイヤ42を介して電気的に接続されている。
【0084】
第三の実施形態の水中撮影用カメラの筐体61に取り付ける方法及び水圧が伝達される部分の構造は、第一の実施形態と同じである。
【0085】
第一の実施形態においては、荷重センサ1と凹型の筐体51との熱圧着は、荷重センサ1の一個毎に行う必要がある。第三の実施形態においては、複数個のセンサ基板21を備える基板と複数個のベース基板31を備える基板とを熱圧着し、その後に接合された基板を切断することにより、複数個の荷重センサ1aを得ることができる。このように、第三の実施形態は、第一の実施形態に比べて、熱圧着工程の生産能力に優れている。
<第四の実施形態>
【0086】
図9に、第四の実施形態である荷重センサ1bの断面略図を示す。図示するように、荷重センサ1bは、荷重センサ1aがプリント基板41に接合され、複数のベース側パッド電極39が複数のボンディングワイヤ42を通して複数のプリント側パッド電極49に電気的に接続された構造である。そして、プリント基板41の面上に位置する荷重センサ1aの側面周囲四方が封止樹脂48で覆われ保護されている。受圧部23は、荷重センサ1aの上部に位置するので封止樹脂48に覆われることはなく突出している。
【0087】
図10に、第四の実施形態である荷重センサ1bが水中撮影用カメラの筐体61に取り付けられた断面略図を示す。荷重センサ1bは、凹型の筐体51の底面に接合されている。図示していないが、プリント基板41には複数のプリント側パッド電極49に電気的に接続された複数の貫通電極が形成されている。そして、前記複数の貫通電極は、例えば、凹型の筐体51の底面に形成された金属配線に導電性ペースト等によって電気的に接続され、この金属配線を通して凹型の筐体51の外部に電気的に接続される。このようにして、荷重センサ1bから出力された電気信号は、水中撮影用カメラの電気回路に出力される。
【0088】
第三の実施形態においては、荷重センサ1aを凹型の筐体51に熱圧着した後に、複数のベース側パッド電極39と複数の凹型の筐体側パッド電極59とをワイヤボンディングする必要がある。そして、このワイヤボンディングは荷重センサ1aの一個毎に行う必要があった。
【0089】
第四の実施形態においては、複数個のプリント基板41を得ることができる大きいプリント基板に複数の荷重センサ1aを接合し、複数の荷重センサ1aに対して一括してワイヤボンディングを行う。次に、同時に複数の荷重センサ1aを封止樹脂48によって封止した後に、前記大きいプリント基板を切断し、複数の荷重センサ1bを製作する。
【0090】
このように、第四の実施形態は、第三の実施形態に比べて、ワイヤボンディング工程の生産能力に優れている。
【0091】
図11に、第四の実施形態である柔らかいゲル状物質13が圧力伝達部12を安定的に支持する圧力測定装置が水中撮影用カメラに搭載された場合の断面略図を示す。
図11に示すように、柔らかいゲル状物質13は、防水シート11に接しないので、圧力伝達部12の下部及び荷重センサ1bを周囲から包むように支えている。