特許第5710332号(P5710332)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5710332アライメント調整方法、アライメント測定方法およびアライメント用治具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5710332
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】アライメント調整方法、アライメント測定方法およびアライメント用治具
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20150409BHJP
【FI】
   A61B6/03 321J
【請求項の数】11
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2011-69012(P2011-69012)
(22)【出願日】2011年3月26日
(65)【公開番号】特開2012-200463(P2012-200463A)
(43)【公開日】2012年10月22日
【審査請求日】2013年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】300019238
【氏名又は名称】ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100106541
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 信和
(72)【発明者】
【氏名】泉原 彰
【審査官】 伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−256436(JP,A)
【文献】 特開平07−213505(JP,A)
【文献】 特開2008−148964(JP,A)
【文献】 特開2007−050243(JP,A)
【文献】 特開2006−122681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 − 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミラーを、走査ガントリの回転部の回転軸近傍に、前記回転部と一体的に回転するよう設置する工程と、
前記ミラーに向けて指向性を有する光ビームを照射しながら前記回転部を回動させたときの、該光ビームの前記ミラーによる反射光の軌道の変化に基づいて、前記ミラーの反射面が前記回転部の回転面と平行になるよう、前記ミラーの傾きを調整する工程と、
前記ミラーに向けて水平に照射される光ビームの前記ミラーによる反射光の軌道に基づいて、前記回転部のチルト角を調整する工程とを備えたX線CT装置のアライメント調整方法。
【請求項2】
前記回転部のチルト角を調整する工程は、前記回転部の回転面が水平面に対して垂直になるよう調整する工程である請求項1に記載のX線CT装置のアライメント調整方法。
【請求項3】
前記回転部のチルト角を調整する工程は、前記ミラーに向けて水平に照射される光ビームの前記ミラーへの入射光の軌道の高さと、該光ビームの前記ミラーによる反射光の軌道の高さとが一致するよう調整する工程である請求項2に記載のX線CTのアライメント調整方法。
【請求項4】
ミラーを、走査ガントリの回転部の回転軸近傍に、前記回転部と一体的に回転するよう設置する工程と、
前記ミラーに向けて指向性を有する光ビームを照射しながら前記回転部を回動させたときの、該光ビームの前記ミラーによる反射光の軌道の変化に基づいて、前記ミラーの反射面が前記回転部の回転面と平行になるよう、前記ミラーの傾きを調整する工程と、
前記ミラーに向けて水平に照射される光ビームの前記ミラーへの入射光の軌道と、該光ビームの前記ミラーによる反射光の軌道とが、鉛直方向に見て重なるよう、前記走査ガントリおよび該光ビームの光源の少なくとも一方の位置を調整する工程と、
前記ミラーに向けて照射される光ビームの軌道を基準に、撮影テーブルの位置および/または傾きを調整する工程とを備えたX線CT装置のアライメント調整方法。
【請求項5】
前記撮影テーブルの位置および/または傾きを調整する工程は、前記撮影テーブルにおける天板の移動方向が前記基準となる光ビームの軌道と平行になるよう調整する工程である請求項4に記載のX線CT装置のアライメント調整方法。
【請求項6】
前記ミラーの傾きを調整する工程は、前記ミラーに向けて照射される光ビームの該ミラーによる反射光の軌道が、前記回転部の回動に依らず一定となるよう調整する工程である請求項1から請求項5に記載のX線CT装置のアライメント調整方法。
【請求項7】
ミラーを、走査ガントリの回転部の回転軸近傍に、前記回転部と一体的に回転するよう設置する工程と、
前記ミラーに向けて指向性を有する光ビームを照射しながら前記回転部を回動させたときの、該光ビームの前記ミラーによる反射光の軌道の変化に基づいて、前記ミラーの反射面が前記回転部の回転面と平行になるよう、前記ミラーの傾きを調整する工程と、
前記ミラーに向けて水平に照射される光ビームの前記ミラーによる反射光の軌道に基づいて、前記回転部のチルト角を求める工程とを備えたX線CT装置のアライメント測定方法。
【請求項8】
ミラーを、走査ガントリの回転部の回転軸近傍に、前記回転部と一体的に回転するよう設置する工程と、
前記ミラーに向けて指向性を有する光ビームを照射しながら前記回転部を回動させたときの、該光ビームの前記ミラーによる反射光の軌道の変化に基づいて、前記ミラーの反射面が前記回転部の回転面と平行になるよう、前記ミラーの傾きを調整する工程と、
前記ミラーに向けて、水平に、かつ、軌道が撮影テーブルの中心線と鉛直方向に見て重なるように光ビームを照射する工程と、
該光ビームの前記ミラーへの入射光の軌道と前記ミラーによる反射光の軌道とに基づいて、前記回転部の回転面と前記撮影テーブルにおける天板の移動方向との位置関係を求める工程とを備えたX線CT装置のアライメント測定方法。
【請求項9】
ミラーを、走査ガントリの回転部の回転軸近傍に、前記回転部と一体的に回転するよう設置する工程と、
前記ミラーに向けて指向性を有する光ビームを照射しながら前記回転部を回動させたときの、該光ビームの前記ミラーによる反射光の軌道の変化に基づいて、前記ミラーの反射面が前記回転部の回転面と平行になるよう、前記ミラーの傾きを調整する工程と、
前記ミラーに向けて水平に照射される光ビームの前記ミラーへの入射光の軌道と、該光ビームの前記ミラーによる反射光の軌道とが、鉛直方向に見て重なるよう、該光ビームの光源の位置を調整する工程と、
前記ミラーに向けて照射される光ビームの軌道を基準に、前記回転部の回転面と前記撮影テーブルにおける天板の移動方向との位置関係を求める工程とを備えたX線CT装置のアライメント測定方法。
【請求項10】
前記光ビームは、レーザ光である請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のX線CT装置のアライメント測定方法。
【請求項11】
ミラーと、該ミラーの反射面の傾き調整機構とを有するミラー部と、
該ミラー部が設置されるベース部と、
該ベース部を走査ガントリの回転部に取り付けるための取付部とを備えており、
前記ミラー部は、前記ベース部が前記回転部に取り付けられたときに前記回転部の回転軸近傍に位置するよう配置されている、X線CT装置のアライメント用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線CT(Computed Tomography)装置のアライメント(alignment)調整方法、アライメント測定方法、これらの方法に適したアライメント用治具およびX線CT装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT装置の走査ガントリ(gantry)および撮影テーブル(table)は、適正な断層像が得られるよう、高いアライメント精度が求められる。特に、放射線治療などの治療計画に用いられるX線CT装置やPET−CT装置等では、治療装置との間で、撮影空間の座標系を合わせる必要があり、極めて高い精度が要求される。
【0003】
従来、X線CT装置のアライメント精度を測定する方法として、同一スライス(slice)面内に例えば0.5mm径程度のワイヤ(wire)や複数の鋼球が配置されている専用ファントム(phantom)を撮影し、得られた断層像内での鋼球やワイヤの現れ方を観察する方法が知られている(例えば特許文献1、図3等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−148964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この方法では、断層像のスライス厚より小さな位置ずれを検出できず、分解能が十分でないため、ガントリのスキャン面(ISO Plane)の鉛直度が精度よく測定できないなど、X線CT装置のアライメント精度を精密に測定することができない。
【0006】
このような事情により、X線CT装置のアライメント精度を精密に測定することができるアライメント測定方法や、アライメント調整を精度よく行うことができるアライメント調整方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の観点の発明は、ミラー(mirror)を、走査ガントリの回転部の回転軸近傍に、前記回転部と一体的に回転するよう設置する工程と、前記ミラーに向けて指向性を有する光ビーム(beam)を照射しながら前記回転部を回動させたときの、該光ビームの前記ミラーによる反射光の軌道の変化に基づいて、前記ミラーの反射面が前記回転部の回転面と平行になるよう、前記ミラーの傾きを調整する工程と、前記ミラーに向けて水平に照射される光ビームの前記ミラーによる反射光の軌道に基づいて、前記回転部のチルト角を調整する工程とを備えたX線CT装置のアライメント調整方法を提供する。
【0008】
第2の観点の発明は、前記回転部のチルト(tilt)角を調整する工程が、前記回転部の回転面が水平面に対して垂直になるよう調整する工程である上記第1の観点のX線CT装置のアライメント調整方法を提供する。
【0009】
第3の観点の発明は、前記回転部のチルト角を調整する工程が、前記ミラーに向けて水平に照射される光ビームの前記ミラーへの入射光の軌道の高さと、該光ビームの前記ミラーによる反射光の軌道の高さとが一致するよう調整する工程である上記第2の観点のX線CTのアライメント調整方法を提供する。
【0010】
第4の観点の発明は、ミラーを、走査ガントリの回転部の回転軸近傍に、前記回転部と一体的に回転するよう設置する工程と、前記ミラーに向けて指向性を有する光ビームを照射しながら前記回転部を回動させたときの、該光ビームの前記ミラーによる反射光の軌道の変化に基づいて、前記ミラーの反射面が前記回転部の回転面と平行になるよう、前記ミラーの傾きを調整する工程と、前記ミラーに向けて水平に照射される光ビームの前記ミラーへの入射光の軌道と、該光ビームの前記ミラーによる反射光の軌道とが、鉛直方向に見て重なるよう、前記走査ガントリおよび該光ビームの光源の少なくとも一方の位置を調整する工程と、
前記ミラーに向けて照射される光ビームの軌道を基準に、撮影テーブルの位置および/または傾きを調整する工程とを備えたX線CT装置のアライメント調整方法を提供する。
【0011】
第5の観点の発明は、前記撮影テーブルの位置および/または傾きを調整する工程が、前記撮影テーブルにおける天板の移動方向が前記基準となる光ビームの軌道と平行になるよう調整する工程である上記第4の観点のX線CT装置のアライメント調整方法を提供する。
【0012】
第6の観点の発明は、前記ミラーの傾きを調整する工程が、前記ミラーに向けて照射される光ビームの該ミラーによる反射光の軌道が、前記回転部の回動に依らず一定となるよう調整する工程である上記第1の観点から第5の観点のX線CT装置のアライメント調整方法を提供する。
【0013】
第7の観点の発明は、ミラーを、走査ガントリの回転部の回転軸近傍に、前記回転部と一体的に回転するよう設置する工程と、前記ミラーに向けて指向性を有する光ビームを照射しながら前記回転部を回動させたときの、該光ビームの前記ミラーによる反射光の軌道の変化に基づいて、前記ミラーの反射面が前記回転部の回転面と平行になるよう、前記ミラーの傾きを調整する工程と、前記ミラーに向けて水平に照射される光ビームの前記ミラーによる反射光の軌道に基づいて、前記回転部のチルト角を求める工程とを備えたX線CT装置のアライメント測定方法を提供する。
【0014】
第8の観点の発明は、ミラーを、走査ガントリの回転部の回転軸近傍に、前記回転部と一体的に回転するよう設置する工程と、前記ミラーに向けて指向性を有する光ビームを照射しながら前記回転部を回動させたときの、該光ビームの前記ミラーによる反射光の軌道の変化に基づいて、前記ミラーの反射面が前記回転部の回転面と平行になるよう、前記ミラーの傾きを調整する工程と、前記ミラーに向けて、水平に、かつ、軌道が撮影テーブルの中心線と鉛直方向に見て重なるように光ビームを照射する工程と、該光ビームの前記ミラーへの入射光の軌道と前記ミラーによる反射光の軌道とに基づいて、前記回転部の回転面と前記撮影テーブルにおける天板の移動方向との位置関係を求める工程とを備えたX線CT装置のアライメント測定方法を提供する。
【0015】
第9の観点の発明は、ミラーを、走査ガントリの回転部の回転軸近傍に、前記回転部と一体的に回転するよう設置する工程と、前記ミラーに向けて指向性を有する光ビームを照射しながら前記回転部を回動させたときの、該光ビームの前記ミラーによる反射光の軌道の変化に基づいて、前記ミラーの反射面が前記回転部の回転面と平行になるよう、前記ミラーの傾きを調整する工程と、前記ミラーに向けて水平に照射される光ビームの前記ミラーへの入射光の軌道と、該光ビームの前記ミラーによる反射光の軌道とが、鉛直方向に見て重なるよう、光ビーム源の位置を調整する工程と、前記ミラーに向けて照射される光ビームの軌道を基準に、前記回転部の回転面と前記撮影テーブルにおける天板の移動方向との位置関係を求める工程とを備えたX線CT装置のアライメント測定方法を提供する。
【0016】
第10の観点の発明は、前記光ビームが、レーザ(LASER)光である上記第1の観点から第9の観点のいずれか一つの観点のX線CT装置のアライメント測定方法を提供する。
【0017】
第11の観点の発明は、ミラーと、該ミラーの反射面の傾き調整機構とを有するミラー部と、該ミラー部が設置されるベース(base)部と、該ベース部を走査ガントリの回転部に取り付けるための取付部とを備えており、前記ミラー部が、前記ベース部が前記回転部に取り付けられたときに前記回転部の回転軸近傍に位置するよう配置されている、X線CT装置のアライメント用治具を提供する。
【0018】
第12の観点の発明は、上記第11の観点のアライメント用治具におけるベース部が取り付けられる被取付部を走査ガントリの回転部に備えたX線CT装置を提供する。
【0019】
第13の観点の発明は、上記第1の観点から第3の観点のいずれか一つの観点のアライメント調整方法を用いて、走査ガントリの回転部のチルト角が調整されるX線CT装置を提供する。
【0020】
第14の観点の発明は、上記第4の観点または第5の観点のアライメント調整方法を用いて、撮影テーブルの位置および/または傾きが調整されるX線CT装置を提供する。
【発明の効果】
【0021】
上記観点の発明によれば、走査ガントリの回転部の回転軸近傍にミラーを設置し、そのミラーの反射面が上記回転面と平行になるよう精度よく調整することができ、ミラーの反射面やミラーに照射する光ビームあるいはその反射光を、アライメントの正確な基準面や基準線として用いることができる。その結果、X線CT装置のアライメント精度を精密に測定したり、アライメント調整を精度よく行ったりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】アライメント調整の対象となる走査ガントリおよび撮影テーブルの一例を示す図である。
図2】X線CT装置のアライメント調整方法のフローチャート(flowchart)である。
図3】クレードル(cradle)にその中心線がマーキング(marking)された撮影テーブルを示す図である。
図4】仮置きされた走査ガントリおよび撮影テーブルを示す図である。
図5】ミラー治具の一例を示す図である。
図6】ミラー部の構造図を示す図である。
図7】レーザ光をミラーに向けて照射する工程を説明するための図である。
図8】ミラーの傾きを調整する工程を説明するための図である。
図9】回転部のチルト角を調整する工程を説明するための図(その1)である。
図10】回転部のチルト角を調整する工程を説明するための図(その2)である。
図11】回転部の回転面とレーザ光とを位置合せする工程を説明するための図(その1)である。
図12】回転部の回転面とレーザ光とを位置合せする工程を説明するための図(その2)である。
図13】レーザ光を基準に撮影テーブルの配置を調整する工程を説明するための図(その1)である。
図14】レーザ光を基準に撮影テーブルの配置を調整する工程を説明するための図(その2)である。
図15】X線CT装置のアライメント測定方法のフローチャートである。
図16】回転部のチルト角の調整誤差を求める工程を説明するための図である。
図17】レーザ光をクレードルに対して位置合せする工程を説明するための図である。
図18】走査ガントリに対する撮影テーブルの方位の調整誤差を求める工程を説明するための図である。
図19】撮影テーブルの鉛直面方向における傾きの調整誤差を求める工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、発明の実施形態について説明する。
【0024】
(第一実施形態)
本実施形態に係るX線CT装置のアライメント調整方法について説明する。なお、以下の説明において、X線CT装置のアライメントと直接関係がない操作コンソール(console)については、図示等を省略している。
【0025】
図1は、アライメント調整の対象となる走査ガントリおよび撮影テーブルの一例を示す図である。
【0026】
走査ガントリ1は、図1に示すように、X線管およびX線検出器を有する回転部11と、回転部11を回転可能に支持する回転支持部(不図示)と、回転部11のチルト角を調整するためのチルト角調整機構(不図示)とを備えている。回転部11は、その開口の周縁に、各種部材を取り付けることができるステージ111を備えている。
【0027】
なお、ここでは、走査ガントリ1のチルト角条件が可変であるタイプ(type)を想定しているが、可変でないタイプの場合には、チルト角条件が0度に設定されたままの状態を想定すればよい。
【0028】
撮影テーブル2は、図1に示すように、クレードル21と、クレードルを長手方向に移動可能に支持するクレードル支持部22と、クレードル支持部22を昇降させる昇降部23とを備えている。昇降部23は、撮影テーブル2の鉛直面方向(前後方向)における傾きを調整するための傾き調整機構(不図示)を備えている。
【0029】
本実施形態におけるアライメント調整の目標は、次の通りである。
(1)走査ガントリ1のチルト角条件が0度に設定されているとき、走査ガントリ1の回転部11の回転面11pが鉛直方向に対して平行(水平面に対して垂直)であること。
(2)走査ガントリ1のチルト角条件が0度に設定されているとき、撮影テーブル2のクレードル21の移動方向が、走査ガントリ1の回転部11の回転面11pに対して垂直(回転軸に対して平行)であること。
(3)走査ガントリ1の回転部11の回転軸と撮影テーブル2のクレードル21の移動軸線とが、上方から見て(鉛直方向に見て)一致すること。
【0030】
図2は、X線CT装置のアライメント調整方法のフローチャートである。
【0031】
ステップ(step)S1では、アライメント調整の準備として、走査ガントリ1のチルト角条件を0度に設定し、撮影テーブル2のクレードル21上にその中心線をマーキングする。この中心線は、上方から見たときにクレードル21の移動軸線と重なる。なお、X線CT装置の搬入時に、これらの準備が既に行われている場合には、本ステップの作業を省略する。
【0032】
図3は、撮影テーブルのクレードル上にその中心線をマーキングする工程を説明するための図である。本例では、図3に示すように、クレードル21の長手方向における両端部に、クレードル21の中心線を示すライン(line)CLをマーキングする。これにより、ラインCLを目印に、クレードル21の中心線や移動方向を目視で確認することができる。なお、ラインCLは、クレードル21の製造段階でクレードル21に予めマーキングあるいは印刷しておいてもよい。
【0033】
ステップS2では、走査ガントリ1および撮影テーブル2を仮配置する。
【0034】
図4は、走査ガントリおよび撮影テーブルを仮配置する工程を説明するための図である。本例では、図4に示すように、走査ガントリ1の回転軸GAと撮影テーブル2のクレードル21の中心線TAとが鉛直方向に見て大よそ重なり、走査ガントリ1と撮影テーブル2との間が所定の距離となるように、走査ガントリ1および撮影テーブル2を床9に仮置きする。なお、ここでは、鉛直方向をy方向、回転部11の回転面11pに平行な水平方向をx方向、x方向およびy方向に直交する方向z方向とする。
【0035】
ステップS3では、走査ガントリ1の回転部11にミラー治具5を取り付ける。
【0036】
図5は、ミラー治具の一例を示す図である。ミラー治具5は、図5に示すように、ミラー部51と、ミラー部51が設置されるベース部52と、ベース部52を回転部11に取り付けるための取付部53とを備えている。
【0037】
ベース部52は、全体として直方板形状であり、長手方向における両端部には、回転部11のステージ(stage)111にボルト(bolt)で固定するための孔が取付部53として形成されている。ベース部52は、回転部11に取り付けられたときに、ベース部52の長手方向における中心と回転軸GAとが重なるように形成されている。また、ベース部52の長手方向における中心部分には、ミラー部51が設置されている。つまり、ベース部52を回転部11に取り付けて回転部11を回転させると、ベース部52およびミラー部51は回転部11と一体的に回転し、ミラー部52は回転軸GA近傍の略同じ位置で回転する。
【0038】
図6は、ミラー治具におけるミラー部の拡大構造図を示す。ミラー部51は、図6に示すように、光学用のミラー511と、略矩形状の板部材512と、複数のネジ513と、複数のバネ514とにより構成されている。板部材512の表側の板面中央には、ミラー511が貼り付けられている。また、板部材512の四隅のうち三隅には、板面を貫く孔515が形成されている。それぞれの孔515には、板部材512の表側からネジ513が挿入されており、板部材512の裏側には、板部材512を貫通したネジ513を覆うようにつる巻き状のバネ514が嵌め込まれている。このバネ514は、複数の皿バネであってもよい。ベース部52の表側の板面には、これら三つのネジ513に対応したネジ孔521が形成されている。これらのネジ孔521の内側面には、ネジ513のネジ山と勘合するネジ溝が形成されている。三つのネジ513は、これらベース部52のネジ孔521に回し入れられている。このような構成により、板部材512、三つのネジ513および三つのバネ514は、ミラー511の反射面511pの傾き調整機構として機能している。すなわち、それぞれのネジ513を回して、ミラー部511に対する板部材512の板面の傾きを変化させることにより、ミラー511の反射面511pの傾きを任意に調整することができるようになっている。
【0039】
回転部11のステージ111には、ミラー治具5のベース部52の長手方向における両端部に形成された取付部53としての孔と対応する位置に、被取付部112としての孔が設けられている。取付部53の孔と被取付部112の孔とは、ボルトを通してナットで締めることにより固定される。
【0040】
なお、ここでの取付部53および被取付部112は一例であり、このような取付機構に限定されない。
【0041】
ステップS4では、レーザ光61をミラー511に向けて照射する。
【0042】
図7は、レーザ光をミラーに向けて照射する工程を説明するための図である。本例では、レーザ光61の光源として、レーザ墨出し器(レーザ水準器)6を用いる。レーザ墨出し器6は、その本体の傾きに依らず、水平ラインと鉛直ラインとが交差したクロスライン(cross line)状のレーザ光を水平な一方向に照射することができ、アライメントに適した光源である。また、本例では、図7に示すように、レーザ墨出し器6を、仮置きされたクレードル21の後方で、クレードル21の中心線TAより水平方向に少しだけ外れた場所に、走査ガントリ1の回転軸GAと略同じ高さで設置する。そして、レーザ墨出し器6からレーザ光61をミラー511の中心に向けて照射する。
【0043】
ステップS5では、ミラー511の反射面511pが回転部11の回転面11pと平行になるよう、ミラー511の傾きを調整する。すなわち、ミラー511に向けて水平にレーザ光61を照射しながら回転部11を回動させ、このときのミラー511からの反射光612の軌道が変化しないよう、ミラー511の傾きを調整する。
【0044】
図8は、ミラーの傾きを調整する工程を説明するための図である。本例では、図8に示すように、レーザ墨出し器6の近傍に、反射光612を遮る遮蔽板7を設置し、その遮蔽板7の板面に反射光612のクロスライン613が現れるようにする。次に、回転部11を180°程度回動させ、そのクロスライン613の位置の移動を観察する。そして、回転部11を回動させてもクロスライン613の位置が変化しないように、ミラー511の傾きを調整する。これにより、ミラー511の反射面511pが回転部11の回転面11pに対して平行に精度よく調整される。
【0045】
ステップS6では、ミラー511からの反射光612を基に回転部11のチルト角を調整する。
【0046】
図9および図10は、回転部のチルト角を調整する工程を説明するための図である。本例では、図9および図10に示すように、ミラー511に向けて照射されるレーザ光61の、ミラー511への入射光611の軌道と、そのレーザ光61のミラー511による反射光612の軌道とを比較観察する。そして、これら両方の軌道が鉛直方向において互いに一致するように、すなわち、反射光612の軌道が入射光611と同様、水平となるように、回転部11のチルト角を調整する。例えば、レーザ墨出し器6の近傍に、反射光612を遮る遮蔽板7を設置する。そして、その遮蔽板7の板面に現れる反射光612のクロスライン613の高さ位置が、レーザ墨出し器6のレーザ出射口62の高さ位置と一致するように調整する。これらの高さ位置を互いに一致させると、ミラー511の反射面511pは鉛直方向と平行になり、回転部11の回転面11pも鉛直方向と平行になる。これにより、走査ガントリ1のチルト角条件が0度に設定されているときの回転部11のチルト角が、鉛直方向に対して平行である真の0度となるように精度よく調整される。
【0047】
ステップS7では、回転部11の回転面11pとレーザ光61とを位置合せする。
【0048】
図11および図12は、回転部の回転面とレーザ光とを位置合せする工程を説明するための図である。本例では、図11および図12に示すように、レーザ墨出し器6を、仮置きされた撮影テーブル2のクレードル21の後方で、クレードル21の中心線TAと略重なるような位置に移動し、レーザ光61をミラー511に向けて照射する。そして、そのレーザ光61のミラー511への入射光611の軌道と、そのレーザ光61のミラー511による反射光612の軌道とが重なるように、レーザ墨出し器6の配置を微調整する。走査ガントリ1の配置、あるいは、走査ガントリ1およびレーザ墨出し6器の両方の配置を微調整するようにしてもよい。これにより、回転部11の回転面11pとレーザ光61の軌道とが垂直に交わるように精度よく調整される。
【0049】
ステップS8では、レーザ光61を基準に撮影テーブル2の配置を調整する。すなわち、ミラー511に向けて照射されるレーザ光61の軌道と、クレードル21の移動方向とが平行になるように、撮影テーブル2の位置、水平面方向における方位、および鉛直面方向(前後方向)における傾きを調整する。
【0050】
図13および図14は、レーザ光を基準に撮影テーブルの配置を調整する工程を説明するための図である。本例では、図13に示すように、レーザ光61の軌道とクレードル21にマーキングされた中心線TAを示すラインCLとが一致するように、撮影テーブル2の位置および水平面方向における方位を調整する。
【0051】
また、図14に示すように、クレードル21の後部にレーザ光61を遮る遮蔽板7を載置する。そして、遮蔽板7の板面に現れるクロスライン613のクレードル21に対する高さ位置が、クレードル21を移動させても変わらないように、撮影テーブル2の鉛直面方向における傾きを調整する。
【0052】
これにより、回転部11の回転面11pと撮影テーブル2のクレードル21の移動方向とが垂直に交わるように精度よく調整される。
【0053】
このようなX線CT装置のアライメント調整方法によれば、走査ガントリ1の回転部11の回転軸GA近傍に光学用のミラー511を設置し、そのミラー511の反射面511pが上記回転面11pと平行になるよう精度よく調整することができ、ミラー511の反射面511pやミラー511に照射するレーザ光61の、ミラー511への入射光611あるいはその反射光612を、アライメントの正確な基準面や基準線として用いることができる。その結果、X線CT装置のアライメント調整を精密に行うことができる。
【0054】
(第二実施形態)
本実施形態に係るX線CT装置のアライメント測定方法について説明する。
【0055】
図15は、X線CT装置のアライメント測定方法のフローチャートである。
【0056】
ステップT1では、ステップS2と同様に、走査ガントリ1のチルト角条件を0度に設定し、クレードル21の中心線TAをマーキングする。
【0057】
ステップT2では、ステップS3と同様に、走査ガントリ1の回転部11にミラー治具5を取り付ける。
【0058】
ステップT3では、ステップS4と同様に、レーザ光61をミラー511に向けて照射する。
【0059】
ステップT4では、ステップS5と同様に、回転部11の回動時におけるミラー511からの反射光612を基にミラー511の傾きを調整し、ミラー511の反射面511pを回転面11pと平行にする。
【0060】
ステップT5では、ミラー511からの反射光612を基に回転部11のチルト角の調整誤差を求める。
【0061】
例えば、ミラー511に向けて水平に照射されるレーザ光61のミラー511への入射光611の軌道に対して、そのレーザ光61のミラー511による反射光612の軌道が、鉛直方向においてどの程度ずれているかを求める。そして、その求めたずれ量を基に、走査ガントリ1のチルト角条件が0度に設定されているときの回転部11の回転面11pが鉛直面から角度で何度ずれているかを求める。
【0062】
図16は、回転部のチルト角の調整誤差を求める工程を説明するための図である。本例では、図16に示すように、レーザ墨出し器6の近傍に、反射光612を遮る遮蔽板7を設置する。そして、遮蔽板7の板面に現れる反射光612のクロスライン613の位置と、レーザ墨出し器6のレーザ出射口62の位置との間の鉛直方向における距離Δy1を求める。そして、次の関係式を用いて、求めた距離Δy1と、ミラー511の反射面511pから遮蔽板7の板面までの距離、すなわち反射光612の光路長b1とから、回転面11pの鉛直面からのずれ角αを求める。このずれ角αが、回転部11のチルト角の調整誤差になる。
【0063】
Δy1≒b1・sin2α …(数式1)
【0064】
ステップT6では、レーザ光61をクレードル21に対して位置合せする。
【0065】
図17は、レーザ光をクレードルに対して位置合せする工程を説明するための図である。本例では、図17に示すように、レーザ墨出し器6を、クレードル21の後方で、クレードル21の中心線と略重なるような位置に移動し、レーザ光61をミラーに向けて照射する。そして、そのレーザ光61のミラー511への入射光611の軌道と、クレードル21の中心線TAとが、鉛直方向に見たときに重なるよう、レーザ墨出し器6の位置や水平面方向における方位を微調整する。これにより、レーザ光61の軌道とクレードル21の移動方向とが鉛直方向に見たときに重なる。
【0066】
ステップT7では、ミラー511からの反射光612を基に、走査ガントリ1に対する撮影テーブル2の方位の調整誤差を求める。
【0067】
例えば、ミラー511に向けて水平に照射されるレーザ光61の、ミラー511への入射光611の軌道に対して、そのレーザ光61のミラー511による反射光612の軌道が、水平方向においてどの程度ずれているかを求める。そして、その求めたずれ量を基に、撮影テーブル2の水平面方向における方位が、回転部11の回転面11pに垂直な方向から何度ずれているかを求める。
【0068】
図18は、走査ガントリに対する撮影テーブルの方位の調整誤差を求める工程を説明するための図である。本例では、図18に示すように、レーザ墨出し器6の近傍に、反射光612を遮る遮蔽板7を設置する。そして、その遮蔽板7の板面に現れる反射光612のクロスライン613の位置と、レーザ墨出し器6のレーザ出射口62の位置との間の水平方向における距離Δx1を求める。そして、次の関係式を用いて、求めた距離Δx1と、ミラー511の反射面511pから遮蔽板7の板面までの距離、すなわち反射光612の光路長b2とから、回転面11pに垂直な方向からの、クレードル21の移動方向のずれ角βを求める。このずれ角βが、走査ガントリ1に対する撮影テーブル2の水平面方向における方位の調整誤差になる。
【0069】
Δx1≒b2・sin2β …(数式2)
【0070】
ステップT8では、ミラー511に照射されるレーザ光61を基準に、撮影テーブル2の鉛直面方向における傾きの調整誤差を求める。
【0071】
例えば、ミラー511に向けて照射されるレーザ光61の軌道に対して、クレードル21の移動方向がどの程度ずれているかを求める。
【0072】
図19は、撮影テーブルの鉛直面方向における傾きの調整誤差を求める工程を説明するための図である。本例では、図19に示すように、クレードル21の後方にレーザ墨出し器6を設置し、クレードル21上の中央部から後部の所定の位置にレーザ光61を遮る遮蔽板7を載置する。そして、クレードル21を前方に、すなわち走査ガントリ1に近付く方向に、所定距離だけ移動させる。このときの、遮蔽板7の板面に現れるクロスライン613の、クレードル21に対する高さ位置の鉛直方向における移動距離Δy2を求める。そして、次の関係式を用いて、クレードル21が移動した所定距離b3と、レーザ光61のクロスライン613の移動距離Δy2とから、クレードル21の水平面からのずれ角γを求める。このずれ角γが、撮影テーブル2の鉛直面方向における傾きの調整誤差になる。
【0073】
Δy2≒b3・sinγ …(数式3)
【0074】
このようなX線CT装置のアライメント測定方法によれば、走査ガントリ1の回転部11の回転軸GA近傍に光学用のミラー511を設置し、そのミラ511ーの反射面511pが上記回転面11pと平行になるよう精度よく調整することができ、ミラー511の反射面511pやミラー511に照射するレーザ光61の、ミラー511への入射光611あるいはその反射光612を、アライメントの正確な基準面や基準線として用いることができる。その結果、X線CT装置のアライメント精度を精密に測定することができる。
【0075】
なお、発明の実施形態は、上記の実施形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の追加・変更等が可能である。
【0076】
例えば、上記のアライメント調整方法およびアライメント測定方法において、各工程の組合せを変えたり、各工程の順番を入れ換えたりしてもよい。
【0077】
また、ミラーに照射する光は、レーザ光に限定されず、指向性を有する光ビームであれば、いかなるものであってもよい。
【0078】
また、発明は、一般的なX線CT装置だけでなく、CT機能付きの他の装置、例えば、PET−CT装置、Angio−CT装置、CT機能付き放射線治療装置などにも適用することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 走査ガントリ
11 回転部
11p 回転面
111 ステージ
112 被取付部
2 撮影テーブル
21 クレードル
22 クレードル支持部
23 昇降部
5 ミラー治具
51 ミラー部
511 光学用のミラー
511p 反射面
512 板部材
513 ネジ
514 バネ
515 孔
52 ベース部
521 ネジ孔
53 取付部
6 レーザ墨出し器
61 レーザ光
611 入射光
612 反射光
613 クロスライン
62 出射口
7 遮蔽板
9 床
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19