(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施形態1に係る測位デバイス配置指定装置100の機能ブロック図である。測位デバイス配置指示装置100は、測位デバイスを配置するのに適した位置を算出してユーザに提示する装置であり、CPU(Central Processing Unit)110、メモリ120、通信装置130、プログラム記憶装置140、地図データベース150を備える。
【0015】
CPU110は、後述するデバイス配置算出モジュール141とデバイス配置描画モジュール142を実行する。以下では説明の便宜上、CPU110が実行する各プログラムを動作主体として説明する場合があるが、実際にこれらプログラムを実行するのはCPU110であることを付言しておく。
【0016】
メモリ120は、CPU110が処理を実行する過程で必要になるデータなどを記憶する装置である。通信装置130は、測位デバイス配置指定装置100と外部ネットワークを接続するネットワークインターフェースである。
【0017】
プログラム記憶装置140は、デバイス配置算出モジュール141、デバイス配置描画モジュール142を格納する記憶装置である。デバイス配置算出モジュール141は、測位デバイスの配置に適した位置を算出するソフトウェアであり、障害物リスト取得プログラム1411、デバイス配置算出プログラム1412を有する。デバイス配置描画モジュール142は、デバイス配置算出モジュール141の算出結果を画面表示するソフトウェアであり、デバイス位置選択プログラム1421、デバイス位置描画プログラム1422を有する。
【0018】
障害物リスト取得プログラム1411は、地図データベース150が格納している、障害物の位置と形状に関するデータを取得する。デバイス配置算出プログラム1412は、測位デバイスの配置に適した位置を算出する。これらの詳細は後述する。
【0019】
デバイス位置選択プログラム1421は、地図データベース150が格納しているエリアのうちいずれに測位デバイスを配置するかを選択する。ユーザは、必ずしも地図データベース150が格納している全てのエリアに対して測位デバイスを配置することを希望するとは限らない。デバイス位置選択プログラム1421は、ユーザに配置対象エリアを選択させてその選択結果を受け取るか、または自動的に対象エリアを決定する。
【0020】
デバイス位置描画プログラム1422は、デバイス配置算出モジュール141の算出結果を画面表示する。画面表示先は、測位デバイス配置指定装置100が備えるディスプレイなどの画面表示装置でもよいし、外部接続される表示デバイスでもよい。
【0021】
地図データベース150は、測位デバイスを配置する対象となっている空間に存在する物体の位置と形状を記述した地図データを保持するデータベースである。地図データベース150の詳細は後述する。地図データベース150は、ハードディスク装置などの記憶装置にデータファイルを格納することによって構成することができる。
【0022】
本発明における「障害物データ取得部」「配置算出部」は、デバイス配置算出モジュール141がこれに相当する。「表示部」は、デバイス配置描画モジュール142がこれに相当する。デバイス配置算出モジュール141とデバイス配置描画モジュール142に相当する機能を、回路デバイスなどのハードウェアを用いて実現することもできる。
【0023】
図2は、測位デバイス配置指示装置100のモジュール間のデータフローを示す図である。測位デバイス配置指示装置100が実施する処理は、大きく2つに分かれる。測位デバイス配置算出処理201と、測位デバイス配置描画処理202である。
【0024】
測位デバイス配置算出処理201において、デバイス配置算出モジュール141は、障害物の周囲に測位デバイスを配置する座標を算出し、地図データベース150に算出したデバイス配置座標を格納する。測位デバイス配置描画処理202において、デバイス配置描画モジュール142は、地図データベース150から地図データを取得し、指定されたエリアのデバイス配置を描画する。地図データベース150が更新されたときには、測位デバイス配置算出処理201を再実行する。
【0025】
図3は、地図データベース150が格納する地図コンポーネントテーブル151の構成とデータ例を示す図である。地図コンポーネントテーブル151は、測位デバイスを配置する空間に存在する物体(コンポーネント)の種類を記述するデータテーブルであり、コンポーネントIDフィールド1511、コンポーネント形状フィールド1512、コンポーネント種類フィールド1513、障害物属性フィールド1514を有する。
【0026】
コンポーネントIDフィールド1511は、空間内に存在するコンポーネントの識別番号を保持する。コンポーネント形状フィールド1512は、コンポーネントIDフィールド1511で識別されるコンポーネントの形状を記述したデータを保持する。コンポーネント種類フィールド1513は、コンポーネントIDフィールド1511で識別されるコンポーネントの種類を記述している。障害物属性フィールド1514は、コンポーネントIDフィールド1511で識別されるコンポーネントが障害物に相当するか否かを示すフラグを記述している。
【0027】
コンポーネント形状フィールド1512は、コンポーネントの位置および形状として、多角形や円などの図形、頂点、中心点の座標、半径などの値を保持する。このような地図形状データのデータベースは、例えばPostGIS(http://postgis.refractions.net/)などの既存の地図管理ツールを用いて構成することができる。
【0028】
コンポーネント種類フィールド1513が記述するコンポーネントの種類には、測位デバイスを配置する空間に存在する物体の他、当該空間の部分領域(エリア)も含まれる。例えばユーザが当該空間の部分領域についてのみ測位デバイスを配置しようとする場合、その部分領域自体もコンポーネントとして取り扱う。コンポーネントの種類として、建物、エリアなどの地形を表すコンポーネント、壁、柱、部屋、ドア、パーティション、机などの建物を構成する部品を表すコンポーネント、などが挙げられる。
【0029】
図4は、測位デバイス配置算出処理201のフローチャートである。以下、
図4の各ステップについて説明する。
(
図4:ステップS401)
ユーザは、これから配置する測位デバイスの種類を測位デバイス配置指示装置100へ入力する。デバイス配置算出モジュール141は、その種類を受け取る。測位デバイスの種類によって、測位可能距離などの仕様が異なるので、これから配置する測位デバイスの仕様に応じて最適な配置を算出するため、本ステップで測位デバイスの種類を入力することとした。
(
図4:ステップS402)
障害物リスト取得プログラム1411は、地図コンポーネントテーブル151から、障害物属性フィールド1514の値が「True」であるレコードのリストを取得し、地図データベース150に格納する。本ステップで取得する障害物のリストを障害物リストと呼ぶ。障害物リストの具体例は、後述の
図5で説明する。
【0030】
(
図4:ステップS403)
デバイス配置算出プログラム1412は、後述の
図7で説明するフローチャートを実施し、測位デバイスを配置するのに適した位置座標を算出する。本ステップの入力は
図5で説明する障害物リストである。デバイス配置算出プログラム1412は、本ステップの結果を、
図6で説明するデバイス配置座標テーブル153として地図データベース150に格納する。
(
図4:ステップS404)
デバイス配置算出プログラム1412は、ステップS403で算出したデバイス配置位置座標テーブル153を地図データベース150に格納する。以上の処理により、障害物周囲の測位デバイス配置位置座標が地図データベース150に格納され、ユーザからの要求に応じて、地図データベース150から障害物周囲の測位デバイス配置位置座標を取得することができるようになる。
【0031】
図5は、ステップS402で作成される障害物リスト152の構成とデータ例を示す図である。障害物リスト152は、地図コンポーネントテーブル151から障害物属性を有するレコードを抽出したものであり、コンポーネントIDフィールド1521、コンポーネント形状フィールド1522、コンポーネント種類フィールド1523、障害物属性フィールド1524を有する。障害物リスト152の構成は地図コンポーネントテーブル151と同じであるが、障害物属性フィールド1524の値が「True」であるレコードのみが含まれる点が異なる。
【0032】
図6は、デバイス配置座標テーブル153の構成とデータ例を示す図である。デバイス配置座標テーブル153は、デバイス配置算出プログラム1412が測位デバイスを配置する位置を算出した結果を保持するデータテーブルであり、デバイス配置位置座標IDフィールド1531、障害物IDフィールド1532、X座標フィールド1533、Y座標フィールド1534を有する。
【0033】
デバイス配置位置座標IDフィールド1531は、個々の配置位置を識別するための識別番号を保持する。障害物IDフィールド1532は、測位デバイスを両側に配置する対象となっている障害物のコンポーネントIDフィールド1521の値を保持する。X座標フィールド1533とY座標フィールド1534は、測位デバイスを配置する位置の座標を、配置対象空間内の平面座標として表した値を保持する。
【0034】
図7は、
図4のステップS403の詳細処理を示すフローチャートである。以下、
図7の各ステップについて説明する。
(
図7:ステップS700)
本フローチャートにおいて、デバイス配置算出プログラム1412は、障害物リスト152内のレコードを1件ずつ入力として受け取る。
(
図7:ステップS701)
デバイス配置算出プログラム1412は、ステップS700で入力として受け取った障害物の形状を近似するラインLを算出する。例えば障害物が屈曲のない壁である場合は、壁にそった直線がラインLとなる。
(
図7:ステップS701:補足)
ラインLを決定する方法の例としては、障害物の形状外周に沿って代表点をサンプリングし、生成したサンプリング点の全てのペアに対して、距離が最も大きい2点間を結ぶ線分をラインLとする方法が挙げられる。代表点をサンプリングする方法としては、外周を等間隔に分割する方法、障害物形状がポリゴンであれば、頂点をまずサンプリング対象とし、頂点間を等間隔に分割する方法、などが挙げられる。
【0035】
(
図7:ステップS702)
デバイス配置算出プログラム1412は、ステップS701で生成したラインLと並行であり、ラインLから所定距離Xだけ離れた直線L1およびL2を、ラインLの両側に引き、ラインLと直線L1とで囲まれた領域S1、ラインLと直線L2とで囲まれた領域S2を形成する。
(
図7:ステップS702:補足)
距離Xを決定する方法の例としては、ラインLとラインLに向かい合う壁との間の距離の半分を距離Xとする方法、測位デバイスのセンサ信号が十分な強さで届く範囲の距離とする方法、などが挙げられる。測位デバイスのセンサ信号が十分な強さで届く距離とは、例えば電波強度を用いた測位デバイスの場合、デバイスの真下における電波強度に対し、5dB強度が下がる距離、などのように定義することができる。距離Xの値は測位デバイスの種類によって異なるため、ステップS401で入力されたデバイス種類に応じて適切な値を距離Xとして用いる。
【0036】
(
図7:ステップS703)
デバイス配置算出プログラム1412は、ステップS702で形成した領域S1内と領域S2内の任意の位置に1台ずつ測位デバイスを配置する。具体的な位置は、ユーザが後述の
図13〜
図14で説明する画面上で指定してもよいし、例えば領域S1とS2それぞれの中心などのように自動的に定めてもよい。
(
図7:ステップS703:補足)
測位デバイスを配置する位置は、領域S1とS2のなかであれば任意の位置でよい。例えば障害物の表面に接する位置でもよい。すなわち、2つの測位デバイスを結ぶ線分を障害物の少なくとも一部が横切るように、測位デバイスを配置すればよい。このように測位デバイスを配置することにより、障害物の両側それぞれに測位デバイスを配置することができる。
【0037】
図8は、
図7のフローチャートによって測位デバイスを配置する位置を決定する様子の例を示す図である。障害物801は、長方形状の形状を有する。障害物801の対角線を通る直線802がラインLとなる。ラインLから距離X離れた両側に直線L1(803)と直線L2(804)を引き、領域S1と領域S2を定める。
【0038】
図7〜
図8で説明した領域S1と領域S2にそれぞれ測位デバイスを配置することにより、領域S1側の測位デバイスのセンサ信号が強い場合は障害物の直線L1側に測位対象物があると判定でき、領域S2側の測位デバイスのセンサ信号が強い場合は直線L2側に測位対象物があると判定することができる。
【0039】
図9は、
図4のステップS404の詳細処理を示すフローチャートである。以下、
図9の各ステップについて説明する。
(
図9:ステップS901)
ユーザは、測位デバイスを設置するエリアを指定する。測位デバイスを設置するエリアとは、地図データベース150が地図データを保持している空間のうち、測位デバイスを設置する対象とする領域のことである。エリアは地図コンポーネントテーブル151内にコンポーネントの一部として記録されている。ユーザは、コンポーネントIDフィールド1511によって設置エリアを指定する。デバイス位置選択プログラム1421は、その指定結果を受け取る。
(
図9:ステップS902)
デバイス配置描画プログラム1422は、後述の
図10で説明する包含関係テーブル154を地図データベース150から取得し、その記述にしたがって、ステップS901で指定されたエリアに含まれる地図コンポーネントを取得する。デバイス配置描画プログラム1422は、取得した地図コンポーネントを、後述の
図11で説明する地図コンポーネントリスト155として地図データベース150に格納する。
【0040】
(
図9:ステップS903)
デバイス配置描画プログラム1422は、
図7の処理フローによって作成されたデバイス配置座標テーブル153から、障害物IDフィールド1532の値が設置エリアの地図コンポーネントリスト155に含まれるレコードを抽出し、後述の
図12で説明するデバイス配置座標テーブル156として地図データベース150に格納する。
(
図9:ステップS904)
デバイス配置描画プログラム1422は、ステップS902で作成した地図コンポーネントリスト155と、ステップS903で作成したデバイス配置座標テーブル156を、重ねて画面描画する。以上の処理により、指定したエリアにおける測位デバイスの設置位置を画面上に表示することができる。ユーザは、この画面表示を見て、測位デバイスの設置位置を検討することができる。
(
図9:ステップS904:補足)
地図の画面描画は、既存の地図描画ソフトウェアを用いて実施することができる。地図描画ソフトウェアの1例として、Geomation(http://hitachisoft.jp/products/geomation/)が挙げられる。地図コンポーネントは、コンポーネント形状フィールド1522の内容を用いて描画することができる。測位デバイスの配置位置は、X座標フィールド1533とY座標フィールド1534が示す座標に適当なマークを付すなどして描画することができる。
【0041】
図10は、ステップS902で用いられる包含関係テーブル154の構成とデータ例を示す図である。包含関係テーブル154は、ある地図コンポーネントとその内部に包含される別の地図コンポーネントとの間の包含関係を記述したデータテーブルである。例えばエリアとその内部に包含される内装品との間の包含関係がこれに相当する。
【0042】
包含関係テーブル154は、コンポーネントIDフィールド1541、包含コンポーネントIDテーブル1542を有する。コンポーネントIDフィールド1541は、地図コンポーネントテーブル151が格納している地図コンポーネントのうち、他の地図コンポーネントを包含するもののコンポーネントIDフィールド1511の値を保持する。コンポーネントIDフィールド1541が指定する地図コンポーネントは、一般的にはエリアや建物など比較的サイズの大きい地図コンポーネントである。包含コンポーネントIDテーブル1542は、コンポーネントIDフィールド1541の値によって識別される地図コンポーネントが包含する地図コンポーネントのコンポーネントIDフィールド1511の値を保持する。
【0043】
図11は、ステップS902で作成される地図コンポーネントリスト155の構成とデータ例を示す図である。地図コンポーネントリスト155は、ステップS901でユーザが指定したエリア内に含まれる地図コンポーネントのリストを保持するテーブルである。ここではユーザが指定したエリア自身もリストの1行目に含めた。
【0044】
地図コンポーネントリスト155は、コンポーネントIDフィールド1551、コンポーネント形状フィールド1552、コンポーネント種類フィールド1553、障害物属性フィールド1554を有する。地図コンポーネントリスト155の構成は、地図コンポーネントテーブル151と同じである。
【0045】
図12は、ステップS903で作成されるデバイス配置座標テーブル156の構成とデータ例を示す図である。デバイス配置座標テーブル156は、ユーザがステップS901で指定したエリアに含まれる測位デバイスの配置座標を記述するデータテーブルである。
【0046】
デバイス配置座標テーブル156は、デバイス配置位置座標IDフィールド1561、障害物IDフィールド1562、X座標フィールド1563、Y座標フィールド1564を有する。デバイス配置座標テーブル156の構成は、デバイス配置座標テーブル153と同様である。
【0047】
図13は、デバイス配置描画プログラム1422が画面描画する測位デバイスの配置指定画面160の画面イメージ例を示す図である。配置指定画面160は、デバイス種類選択ボックス161、配置計算ボタン162、デバイス台数指定ボックス163、配置指示エリア164を有する。
【0048】
ユーザが、デバイス種類選択ボックス161でデバイス種類を入力し、デバイス台数指定ボックス163に測位デバイスの台数を入力し、配置計算ボタン162をクリックすると、デバイス配置算出モジュール141は測位デバイスの配置位置を算出する。デバイス配置描画モジュール142は、その算出結果を配置指示エリア164に画面表示する。
【0049】
図14は、配置指示エリア164に測位デバイスの配置位置を画面表示した状態を例示する図である。配置指示エリア164は、各障害物の両側に、測位デバイスの配置位置を×印で画面表示している。
図14に示した画面表示により、ユーザは指定したエリアにおいて測位デバイスを配置するのに適した位置を容易に把握することができる。
【0050】
<実施の形態1:まとめ>
以上のように、本実施形態1に係る測位デバイス配置指定装置100は、障害物の両側ともに測位デバイスが配置されるように、測位デバイスの配置位置を算出する。この配置位置にしたがって測位デバイスを配置して測位システムを構築することにより、障害物のいずれの側に測位対象物が存在するかを誤って測位する可能性を低減することができる。
【0051】
具体的には、測位デバイス配置指定装置100は、
図8で例示したように、障害物の形状を近似するラインLの両側に直線を引いて領域S1と領域S2を作成し、各領域に測位デバイスを配置する。障害物周辺には測位デバイスを配置する候補となる箇所が多数存在するが、
図8で例示した手法により、障害物周辺のどの部分に測位デバイスを配置すべきかを自動的かつ的確に算出することができる。
【0052】
<実施の形態2>
本発明の実施形態2では、実施形態1の
図7〜
図8で説明した手法とは別の手法を用いて測位デバイスの配置位置を算出する動作例を説明する。測位デバイス配置指定装置100の構成は、ステップS403の処理内容を除いて実施形態1と同様であるため、以下では差異点を中心に説明する。
【0053】
図15は、本実施形態2における
図4のステップS403の詳細処理を示すフローチャートである。以下、
図15の各ステップについて説明する。
(
図15:ステップS1500〜S1501)
ステップS1500は、ステップS700と同様である。ステップS1501においてデバイス配置算出プログラム1412は、ステップS700で入力として受け取った障害物の形状を近似する線分Lを算出する。線分Lを算出する方法は実施形態1と同様であるが、本実施形態2では次のステップS1502との関連上、直線ではなく線分を算出する。具体的には、障害物の両端を端部とする線分を求める。
(
図15:ステップS1502)
デバイス配置算出プログラム1412は、ステップS1501で求めた線分Lの垂直2等分線を作成する。
【0054】
(
図15:ステップS1503)
デバイス配置算出プログラム1412は、ステップS1502で形成した垂直2等分線と障害物の表面との交点2点の座標を求め、この座標を測位デバイスの配置位置とする。
【0055】
図16は、
図15のフローチャートによって測位デバイスを配置する位置を決定する様子の例を示す図である。障害物1601の形状を近似する線分L(1602)を決定するところまでは
図8と同様である。障害物形状の両端点を結ぶ線分が線分L(1602)となる。線分L(1602)の垂直2等分線1603と、障害物1601との交点1604および1605に、測位デバイスを配置する。
【0056】
<実施の形態2:まとめ>
以上のように、本実施形態2に係る測位デバイス配置指定装置100は、
図16で例示したように、障害物の形状を近似する線分の垂直2等分線と、障害物の表面との交点に、測位デバイスを配置する。この2点は、障害物を挟んで近接し、かつ双方を障害物が隔てる位置関係にある。この2点に測位デバイスを置いた場合、お互いに障害物の反対側からのセンサ信号(電波など)が通り難く、当該測位デバイス側からのセンサ信号が通り易い。よって、この2点に置いた測位デバイスのうち、どちらがより強くセンサ信号を送受信しているかによって、測位対象物が障害物のどちら側にあるかを判定することができる。
【0057】
また、本実施形態2に係る測位デバイス配置指定装置100によれば、測位デバイスを配置する位置は障害物の表面上に定まるので、ユーザが最終的に配置位置を指定する必要がなく、自動的に配置位置を求めることができる。
【0058】
<実施の形態3>
本発明の実施形態3では、実施形態1〜2で説明した手法とは別の手法を用いて測位デバイスの配置位置を算出する動作例を説明する。測位デバイス配置指定装置100の構成は、ステップS403の処理内容を除いて実施形態1〜2と同様であるため、以下では差異点を中心に説明する。
【0059】
図17は、本実施形態3における
図4のステップS403の詳細処理を示すフローチャートである。以下、
図17の各ステップについて説明する。
(
図17:ステップS1700)
本フローチャートにおいて、デバイス配置算出プログラム1412は、障害物リスト152内のレコードを1件ずつ入力として受け取る。
(
図17:ステップS1701)
デバイス配置算出プログラム1412は、ステップS700で入力として受け取った障害物の形状外周に沿って、代表点をサンプリングする。サンプリング方法としては、外周を等間隔に分割する方法、障害物形状がポリゴンであれば、頂点をまずサンプリング対象とし、頂点間を等間隔に分割する方法、などが挙げられる。等間隔に分割する際の分割幅は、測位デバイスのセンサ信号が十分届く間隔とする。電波強度を用いる測位デバイスであれば50cm〜1m程度である。
【0060】
(
図17:ステップS1702)
デバイス配置算出プログラム1412は、ステップS1701でサンプリングした障害物外周のサンプリング点について、2点のサンプリング点の全ての組み合わせペアを生成する。例えばサンプリング点が10点である場合は、本ステップで生成する組み合わせペアの数は、
10C
2=45ペアとなる。
(
図17:ステップS1703)
デバイス配置算出プログラム1412は、ステップS1702で生成した各サンプリング点ペアに対して、外周上の距離と直線距離を計算する。外周上の距離とは、2つのサンプリング点間を障害物の外周形状に沿って進んだときの距離のうち、長さの短い方の距離である。直線距離とは、2つのサンプリング点間を直線で結んだ距離である。
【0061】
(
図17:ステップS1704)
デバイス配置算出プログラム1412は、測位デバイスの配置位置座標を決定する。具体的には、ステップS1702で生成したサンプリング点ペアについて、S1703で算出した外周上距離と直線距離の比を計算し、この比が大きいサンプリング点ペアを測位デバイスの配置位置とする。
(
図17:ステップS1704:補足)
外周上距離と直線距離の比の大きいサンプリング点ペアを決める方法としては、外周上距離/直線距離の値が最も大きいペアを選択する方法、外周上距離/直線距離の値の大きい順に並べた上位5ペアの中から任意のものを選択する方法、外周上距離が直線距離の5倍以上であるペアのうち任意のものを選択する方法、などが挙げられる。すなわち、外周上距離/直線距離の値が所定の閾値以上である2点を選択すればよい。
【0062】
図18は、
図17のフローチャートによって測位デバイスを配置する位置を決定する様子の例を示す図である。実施形態1〜2とは異なり、
図18に示すように障害物1801が長方形状でなく屈曲している場合は、障害物1801の形状を近似するラインLを求めることが難しい。この場合は本実施形態3の手法が有用である。
【0063】
図18に示す障害物1801について
図17の処理フローを適用すると、測位デバイスの配置位置はそれぞれ点1802と1803になる。これらの位置は、実際の距離は近いがこれら2点間を移動するための距離は遠い、という関係にある。このような2点を誤って測位してしまうと、特に人が測位対象物に向かって移動しようとするときに、障害物が視界を遮って正しい位置を見つけられない可能性が高い。そこで本実施形態3では、そのようなリスクをできる限り低減するため、外周距離と直線距離の比が大きい2点に測位デバイスを配置することとした。
【0064】
<実施の形態3:まとめ>
以上のように、本実施形態3に係る測位デバイス配置指定装置100は、
図18で例示したように、外周距離と直線距離の比が大きい2点に測位デバイスを配置する。この2点は、障害物を挟んで近接し、かつ双方を障害物が隔てる位置関係にある。この2点に測位デバイスを置いた場合、お互いに障害物の向こう側からのセンサ信号(電波など)が通り難く、こちら側からのセンサ信号が通り易い。よって、この2点に置いた測位デバイスのうち、どちらがより強くセンサ信号を送受信しているかによって、測位対象物が障害物のどちら側にあるかを判定することができる。
【0065】
また、本実施形態3に係る測位デバイス配置指定装置100によれば、障害物の形状が長方形のような標準的な形状ではない特殊な形状である場合でも、測位デバイスを配置するのに適した位置を精度よく求めることができる。
【0066】
<実施の形態4>
本発明の実施形態4では、実施形態1〜3で説明した手法とは別の手法を用いて測位デバイスの配置位置を算出する動作例を説明する。測位デバイス配置指定装置100の構成は、ステップS403の処理内容を除いて実施形態1〜3と同様であるため、以下では差異点を中心に説明する。
【0067】
本実施形態4では、障害物が、測位デバイスのセンサ信号を遮蔽する壁ではなく、測位デバイスのセンサ信号はある程度通すが、人にとっては障害物となる柵のような形状である場合を想定する。障害物がセンサ信号を遮蔽する効果が弱いものであるか否かについては、地図コンポーネントテーブル151にあらかじめ記録しておくものとする。例えば、障害物属性フィールド1514の値として、「True」「False」以外の値(例えば「shield」)を用いて、障害物がセンサ信号を遮蔽する効果の高いものであるか否かを記述しておく。
【0068】
図19は、本実施形態4における
図4のステップS403の詳細処理を示すフローチャートである。障害物がセンサ信号を遮蔽する効果が弱い場合、測位デバイスが発信するセンサ信号が、障害物のいずれの側から発信されたのか識別することが難しい。そこで本実施形態4では、障害物の両側にそれぞれ複数台の測位デバイスを配置し、測定結果を補完することができるようにする。以下、
図19の各ステップについて説明する。
(
図19:ステップS1900〜S1902)
これらのステップは、
図7のステップS700〜S702と同様である。
(
図19:ステップS1903)
デバイス配置算出プログラム1412は、ステップS1902で形成した領域S1とS2それぞれに、同じ複数台数の測位デバイスを配置する。本ステップで領域S1とS2に測位デバイスを配置する手法の例は、次の
図20で説明する。
【0069】
図20は、
図19のフローチャートによって測位デバイスを配置する位置を決定する様子の例を示す図である。ここでは、障害物2001の形状を近似するラインL(2002)の両側の等距離の場所に、等間隔に3台測位デバイスを配置する例を説明する。
【0070】
デバイス配置算出プログラム1412は、ラインL(2002)から距離X1(X1≦X)離れた位置に、ラインL(2002)と平行な直線L1とL2を引く。次にデバイス配置算出プログラム1412は、ラインLと障害物の表面との交点を端点とする線分L’の垂直2等分線Mと、垂直2等分線Mに並行で線分L’の両端点を通る直線M1およびM2を引く。デバイス配置算出プログラム1412は、直線L1およびL2と、直線M、M1、M2それぞれとの交点に、測位デバイスを配置する。結果、領域S1とS2にそれぞれ3台ずつ測位デバイスが配置されることになる。
【0071】
なお、
図20に示した測位デバイスの配置は1例であり、領域S1とS2にそれぞれ複数台の測位デバイスを配置するのであれば、その他の配置を採用することもできる。ただし、センサ信号の強度が偏らないようにする観点から、各測位デバイスの配置は、ラインLに対して線対称となるようにするか、または障害物2001のいずれかのサンプリング点(例えば中心)に対して点対称となるようにすることが望ましい。
【0072】
測位を実施する際は、各領域に配置した複数の測位デバイスの検出結果を相互に補完して用いることができる。例えば、領域S1と領域S2のうち、センサ信号が強い測位デバイスが多い側の領域に、測位対象物が存在していると判断することができる。
【0073】
図21は、センサ信号を遮蔽する効果が高い障害物と低い障害物が混在した場合において、配置指示エリア164に測位デバイスの配置位置を画面表示した状態を例示する図である。配置指示エリア164は、遮蔽効果が高い障害物を実線で表示し、遮断効果が低い障害物を点線で画面表示している。ユーザは、遮蔽効果の高い障害物と低い障害物が混在した状態で、最適な測位デバイスの配置位置を容易に把握することができる。
【0074】
<実施の形態4:まとめ>
以上のように、本実施形態4に係る測位デバイス配置指定装置100は、
図20で例示したように、ラインLの両側の領域S1とS2それぞれに複数台の測位デバイスを配置する。これにより、障害物がセンサ信号を遮蔽する効果が弱い場合でも、測位対象物が障害物のいずれの側に存在するかの判定精度が高くなるように、測位デバイスの配置位置を決定することができる。
【0075】
<実施の形態5>
本発明の実施形態5では、配置すべき測位デバイスの台数がユーザによって指定された場合において、測位デバイスの配置位置を求める方法について説明する。測位デバイス配置指定装置100の構成は、ステップS903の処理内容を除いて実施形態1〜4と同様であるため、以下では差異点を中心に説明する。
【0076】
図22は、本実施形態5における
図9のステップS903の詳細処理を示すフローチャートである。以下、
図22の各ステップについて説明する。
(
図22:ステップS2200)
本フローチャートにおいて、デバイス配置描画プログラム1422は、地図コンポーネントリスト155、デバイス配置座標テーブル156、およびユーザが指定したデバイス台数を入力として受け取る。
(
図22:ステップS2201)
デバイス配置描画プログラム1422は、測位デバイスを設置エリア内に存在する障害物を、障害物の優先度順にソートする。障害物の優先度は、測位デバイスセンサ信号を遮蔽または妨害する効果が大きいものほど大きく設定する。例えば、障害物の接地面積や体積が大きいものほど優先度を上げるという方法が考えられる。
【0077】
(
図22:ステップS2202)
デバイス配置描画プログラム1422は、両側に測位デバイスを配置するか否かをまだ判断していない障害物について、優先度の高い障害物から順に、障害物周囲のデバイス配置位置を、描画用デバイスリストに追加する。この描画用デバイスリストはデバイス配置座標テーブル156と同じ構成を有するが、本処理フローではユーザが指定した測位デバイスの台数によって画面に描画する測位デバイスの台数が異なるため、画面描画すべき測位デバイスの座標を保持するためのリストとして新たに設けた。
(
図22:ステップS2203)
デバイス配置描画プログラム1422は、描画用デバイスリストに記録されているデバイス数が、ユーザが指定したデバイス台数より大きいか否かを判断する。描画用デバイスリストに記録されているデバイス数の方が大きい場合はステップS2204に進み、そうでない場合はステップS2205に進む。
【0078】
(
図22:ステップS2204)
デバイス配置描画プログラム1422は、描画用デバイスリスト内のデバイス数が、ユーザが指定した台数を超過したので、最後に描画用デバイスリストに追加したデバイス配置位置を描画用デバイスリストにから削除する。
(
図22:ステップS2204:補足その1)
本ステップは、例えば実施形態4で説明したように、障害物の周囲に多数の測位デバイスを一度に配置したとき、配置台数がユーザの指定台数を超過する場合があることに配慮したものである。例えば、ユーザが指定した台数が10台で、これまでに8台の測位デバイスを配置済みである場合、
図20の障害物2001に対して測位デバイスを配置すると一度に6台の測位デバイスを配置することになるので、配置済みデバイス数が14台になってユーザの指定を超過してしまう。これは、
図21でデバイス台数を10台と指定した場合に相当する。この場合は、直前に実施したデバイス配置を本ステップによってキャンセルすることとした。
(
図22:ステップS2204:補足その2)
本ステップの後は、ステップS2207へスキップして残りの測位デバイスを適当な手法で配置してもよいし、ステップS2202に戻って次の優先度以降の障害物について同様の処理を繰り返してもよい。
【0079】
(
図22:ステップS2205)
デバイス配置描画プログラム1422は、描画用デバイスリスト内のデバイス数が、ユーザが指定した台数と同じであるか否かを判断する。同じである場合はステップS2208にスキップし、そうでない場合はステップS2206に進む。
(
図22:ステップS2206)
デバイス配置描画プログラム1422は、全ての障害物の周囲に測位デバイスを配置し終えたか否かをチェックする。全ての障害物に配置し終えている場合はステップS2207に進み、配置していない障害物が残っている場合はステップS2202に戻って同様の処理を繰り返す。
(
図22:ステップS2206:補足)
全ての障害物の周囲に配置するために必要な測位デバイスの台数よりも多い台数をユーザが指定した場合は、本ステップの次にステップS2207へ進むことになる。例えば障害物が全てセンサ信号を遮蔽するタイプである場合、障害物の個数が10個であれば、必要な測位デバイスは20台となる。しかしユーザが30台を指定した場合、残りの10台については障害物の周囲に配置されないままとなる。このような場合は、本ステップの次にステップS2207へ進む。
【0080】
(
図22:ステップS2207)
デバイス配置描画プログラム1422は、残りの測位デバイスを配置する。残りの測位デバイスを配置する方法としては、ランダムに配置する方法、測位デバイスを配置した障害物のラインLで対象エリアを領域に区切って、配置済みの測位デバイス数が少ない領域から順に配置する方法、などが挙げられる。
(
図22:ステップS2208)
デバイス配置描画プログラム1422は、ステップS2200〜S2207で生成した描画用デバイスリストを、本処理フローの結果として出力する。
【0081】
図23は、測位デバイスの台数を指定した場合において、配置指示エリア164に測位デバイスの配置位置を画面表示した状態を例示する図である。ここではデバイス台数を6台と指定した例を示した。
図23では、面積の大きな障害物の周囲の6台に絞って測位デバイスが配置されている。ユーザは、配置することができるデバイスの台数を指定して、測位デバイスの配置を容易に把握することができる。
【0082】
<実施の形態5:まとめ>
以上のように、本実施形態5に係る測位デバイス配置指定装置100は、指定した台数の測位デバイスを適切な位置に配置することができる。また、実施形態4で説明したように、障害物の周囲に多数の測位デバイスを一度に配置する場合でも、測位デバイスの台数が指定台数を超過しないようにすることができる。
【0083】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0084】
また、上記各構成、機能、処理部などは、それらの全部または一部を、例えば集積回路で設計することによりハードウェアとして実現することもできるし、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを実行することによりソフトウェアとして実現することもできる。各機能を実現するプログラム、テーブルなどの情報は、メモリやハードディスクなどの記憶装置、ICカード、DVDなどの記憶媒体に格納することができる。