(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のセンサー部の前記発光部と前記第2のセンサー部の前記発光部とが対向し、前記第1のセンサー部の前記受光部と前記第2のセンサー部の前記受光部とが対向していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の識別装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.第1の実施形態
(構成)
図1(A)には、市販されている反射型のフォトインタラプター(フォトリフレクタ)100が示されている。フォトインタラプター100は、本発明におけるセンサー部の一例として用いることができる。フォトインタラプター100は、発光ダイオード等で構成される可視光を発光する発光部101とフォトトラジスタやフォトダイオード等の光電変換素子で構成される受光部102を備えている。フォトインタラプター100は、発光部101からの光を対象物110に照射し、その反射光を受光部102で検出する。
【0017】
図1(B)には、実施形態の識別装置200が示されている。識別システム200は、同じ構造のフォトインタラプター210と220を対向して配置した構造を有している。フォトインタラプター210は、
図1(A)に示すフォトインタラプター100と同じものである。フォトインタラプター210は、発光部211と受光部212を備え、フォトインタラプター220は、発光部221と受光部222を備えている。フォトインタラプター210と220は、互いの発光部と受光部が対向する状態で、且つ、両者の間に隙間を有した状態で配置されている。すなわち、発光部211と発光部221が対向し、受光部212と受光部222とが対向する位置関係とされている。
【0018】
フォトインタラプター210の発光部211の前には、左円偏光を選択的に透過する左円偏光フィルタ213が配置され、フォトインタラプター220の発光部221の前には、右円偏光を選択的に透過する右円偏光フィルタ223が配置されている。識別を行う動作時には、フォトインタラプター210と220の間(左円偏光フィルタ213と右円偏光フィルタ223の間)に識別媒体300が配置される。
図1(B)には、この識別を行う動作時の状態が示されている。
【0019】
受光部212からの出力と受光部222からの出力は、判定部230に入力される。判定部230は、マイコンとしての機能を有し、CPU、メモリ、A/Dコンバータ、その他各種のインターフェース機能を有している。判定部230は、受光部212からの出力と受光部222からの出力とを比較し、その差に基づき識別媒体の真贋を判定する。また、制御部231は、発光部211,221の発光タイミングの制御を行う。
【0020】
図2に示す識別媒体300は、コレステリック液晶層301を備えている。コレステリック液晶層301は、例えば赤の右円偏光を選択的に反射する特性に設定されている。なお、選択反射する円偏光の旋回方向は左円偏光であってもよい。また、選択反射する波長は、発光部211,221が発光する光の波長に対応したものであれば、他のものを選択することもできる。
【0021】
コレステリック液晶層301には、ホログラム型を型押しすることで形成されたホログラム302が設けられている。また、コレステリック液晶層301には、印刷されたインクによって構成される印刷図柄(文字や図形等)303が設けられている。印刷図柄303は、インクが乗っていない透明部分を有している。印刷図柄303を覆って発光部211,221からの光を透過する性質の粘着材料により構成された粘着層304が設けられている。粘着層304の露出面には、離型紙であるセパレータ305が貼り付けられている。使用時において、セパレータ305は剥がされ、露出した粘着面を対象物に押し付けることで、識別媒体300が対象物に固定される。
【0022】
図3には、もう一つの識別媒体の例である識別媒体300’が示されている。識別媒体300’は、
図2の識別媒体300において、コレステリック液晶層301の背後に全波長反射コレステリック液晶層306を追加した構造を有している。全反射コレステリック液晶層306は、特願2011−61184に記載されている構造を有し、選択反射される光が特定の波長ではなく、可視光全体の右円偏光または左円偏光を選択反射する特性を有している。例えば、3原色の右円偏光を選択反射する3種類のコレステリック液晶層を積層することで、全波長反射コレステリック液晶層306が構成される。
【0023】
図3に示す識別媒体300’では、コレステリック液晶層301、全波長反射コレステリック液晶層306、印刷図側303の順で積層された構造を有している。識別媒体300’において、コレステリック液晶層301を有さない構造も可能である。この場合、全反射コレステリック液晶層306にホログラム加工が施される。
【0024】
識別媒体300および300’では、表裏の両方から識別が行われる。このため、印刷図柄303は、インクが存在していない透過部分が必要であり、粘着層304は、発光部211,221が発光する光を透過するものである必要がある。
【0025】
図4には、識別媒体300および300’におけるホログラム302と印刷図柄303の一例が示されている。この例では、ホログラム300が星型のホログラム図柄であり、印刷図柄303が「SECURITY」と印刷された表示である場合が示されている。なお、この例において、ホログラム302と印刷図柄303以外の部分は、可視光に対して透明とされている。
【0026】
このホログラム302と印刷図柄303を直接見ての観察、左右の円偏光フィルタ越しでの観察によっても識別媒体300(または300’)の真贋判定を行うこともできる。
【0027】
(識別動作)
図5には、識別を行う状態の一例が示されている。
図5において、識別の対象となる対象物400に透明な板状の部材401が固定され、そこに識別媒体300(または300’)が貼り付けられて固定されている。なお、符号401の板状の部材に開口部を設け、この開口部の部分に識別媒体300(または300’)を固定する構造であってもよい。また、透明な板状の部材401は、円偏光特性に影響を与えない材質が望ましい。
【0028】
識別媒体300の部分を
図1(B)に示すように、フォトインタラプター210と220との間に位置させた状態において識別が行われる。この際、
図1(B)に示すように、フォトインタラプター210の発光部211の前には、左円偏光フィルタが配置され、フォトインタラプター220の発光部221の前には、右円偏光フィルタが配置されている。なお、識別媒体300(300’)の表裏の向きは、必ずしも限定されないが、予め決めておいた方が好ましい。
【0029】
識別は、フォトインタラプター210と220を交互に発光させることで行う。この制御は、制御部231によって行われる。例えば、まず発光部211を発光させる。この際、発光部211から出た可視光は、左円偏光フィルタ213で左円偏光とされ、それが識別媒体300に入射する。識別媒体300のコレステリック液晶層301は、右円偏光を選択反射する設定であるから、発光部211からの左円偏光の光は、識別媒体300をほとんど透過し、そこでの反射光は少ない。よって、受光部212での検出光量は相対的に小さく、受光部222での検出光量は相対的に大きい。この違いは、受光部212の出力と受光部222の出力の差として検出される。判定部230は、この差を第1の判定要素として記憶する。
【0030】
次に、発光部221を発光させる。この際、発光部221から出た可視光は、右円偏光フィルタ223で右円偏光とされ、それが識別媒体300に入射する。識別媒体300のコレステリック液晶層301は、右円偏光を選択反射する設定であるから、発光部221からの右円偏光の光は、識別媒体300で反射され、そこでの透過光は少ない。よって、受光部212での検出光量は相対的に小さく、受光部222での検出光量は相対的に大きい。この違いは、受光部212の出力と受光部222の出力の差として検出される。判定部230は、この差を第2の判定要素として記憶する。
【0031】
判定部230には、予め上記の出力の差がどの程度であるかについての情報が記憶されている。判定部230は、上記第1の判定要素および第2の判定要素を予め記憶している情報と照合する。具体的には、判定部230は、検出された受光部212と222の出力の差が、それぞれの発光タイミングにおいて、予め記憶されている値と符号するか、を判定する。また、判定部230は、1回目の発光タイミングにおける受光部212と222の出力の差と、2回目の発光タイミングにおける受光部212と222の出力の差との合計が、予め記憶されている値と符号するか、を判定する。判定部230は、この2つの判定の結果が真であれば、識別媒体300(または300’)が真性である旨の判定を行い、符号しなければ、識別媒体300(または300’)が真性でない旨の判定を行う。
【0032】
つまり、発光部211と221とを交互に発光させた場合に、いずれの場合であっても(受光部212の検出光量≪受光部222の検出光量)となる。この検出光量の大小関係は、受光部212からの出力と受光部222からの出力の差(例えば、出力電圧の差)として現れる。この差が予め用意しておいた値あるいはその誤差範囲であれば、識別媒体300(または300’)は真性であると判定され、そうでなければ偽物と判定される。この判定は、2つの受光部の出力電圧の絶対値の差、比、差分等を測ることで行われる。一般に外乱光等の影響を考えると、差分で判定する方法が高い精度が得られる。
【0033】
例えば、見た目を
図4に示す外観に似せて作成した偽物の識別媒体があるとする。この偽物の識別媒体は、上述した円偏光特性による反射特性および透過特性の顕著な違いが現れないので、上述したような(受光部212の検出光量≪受光部222の検出光量)の関係が得られず、偽物であることが電子的に判定可能となる。
【0034】
なお、識別媒体300’を用いた場合、反射光量が増えるので、受光部212,222における検出光のS/Nがより高くなる。また、発光部211,221の発光波長のスペクトルに偏りがあっても、検出精度の低下が生じがたい優位性が得られる。
【0035】
(優位性)
上記の例示においては、フォトインタラプター210と220を対向させ、その間に右円偏光を選択反射する設定のコレステリック液晶層を有した識別媒体300を配置した状態で識別を行う。この際、発光部211の前に左円光フィルタ213を配置し、発光部221の前に右円偏光フィルタ223を配置した状態で、発光部211と221から交互に発光を行う。識別媒体300のコレステリック液晶層は右円偏光を反射し、左円偏光を透過するので、それぞれの発光時において、受光部212の検出光量は少なく、受光部222の検出光量は大きくなる。この検出光量の差を利用して識別媒体300の真贋判定が行われる。
【0036】
この方法によれば、汎用の光学センサーであるフォトインラプターを用いることで簡素な構成の識別装置が提供される。また、市販のフォトインタラプターを用いない場合であっても、発光部と受光部とを備えた簡単な構造の光学センサーを組で用意すればよいので、構成の簡素化が図れる。また、コレステリック液晶層の選択反射特性を利用しているので、見た目を似せた偽造品との差を高い精度で検出できる。
【0037】
また、対向させたセンサーにて識別媒体の同一箇所を表裏から識別する構成であるため、識別媒体の偽造が極めて難しくなる。すなわち、上記の方式の場合、ある限定された部分での反射と透過の状態が判定結果に大きな影響を与える。このため、偽造品は、この限定された部分の光学特性を正確に再現する必要があり、偽造のハードルを高くでき、結果として高い偽造防止効果を得ることができる。
【0038】
つまり、発光部211の発光と発光部221の発光を識別媒体表裏の2回に分けて行うことで、それぞれの発光時に(受光部212の検出光量≪受光部222の検出光量)の関係が得られ、この2つの検出結果に基づき、真贋の判定が行われる。この方法によれば、偽造品は、2回行われる検出結果を再現しなければならないので、偽造の困難性が高くなる。たとえば、識別媒体300と全く同じものを再現できず、光学特性を似せた偽造品では、発光部211を発光させた場合における受光部212の検出光量と受光部222の検出光量との関係、および発光部221を発光させた場合における受光部212の検出光量と受光部222の検出光量との関係を再現する必要があるが、それは困難である。
【0039】
(比較試験)
図1(B)に示す識別装置200において、識別媒体300のコレステリック液晶層301をハーフミラーに変更したサンプルを比較例として用意した。
図6(A)に
図1(B)の識別媒体300を用いた場合における受光部212,222の出力レベルのデータが示され、
図6(B)に比較例の場合のデータが示されている。
図6から明らかなように、本実施形態では、検出光の光量の違いによる識別機能が得られるが、比較例では、2つの受光部212,222の検出レベルに違いが見られず、識別機能が得られない。
【0040】
このような違いが現れる理由について説明する。まず、識別媒体300にコレステリック液晶層301を利用した場合、上述した理由により、発光部211と221とを交互に点灯した際に、
図6(A)に示すように、受光部212と222の出力の組み合わせに顕著な違いが生じる。
【0041】
次に、識別媒体300において、コレステリック液晶層301をハーフミラーに変更した場合を説明する。まず、発光部211のみを点灯した場合、発光部211からの光のうち左円偏光のみが左円偏光フィルタ213を透過し、識別媒体300に入射する。この左円偏光の入射光は、半分が反射し、半分が透過する。この際の反射光は、旋回方向が反転し、右円偏光となり、受光部212に入射する。
【0042】
他方において、識別媒体300を図の右方向に透過した残りの半分の左円偏光は、そのままに受光部222に入射する。この入射光は、ハーフミラーでの反射光と同じレベルであるので、
図6(B)の左側に示すように、
図1における受光部212と222への入射光量は同じとなり、その出力レベルも同じとなる。
【0043】
次に、識別媒体300において、コレステリック液晶層301をハーフミラーに変更した場合に、発光部221のみを点灯した場合を説明する。この場合、発光部221からの光のうち右円偏光のみが右円偏光フィルタ223を透過し、識別媒体300に入射する。この右円偏光の入射光は、半分が反射し、半分が透過する。この際の反射光は、旋回方向が反転し、左円偏光となり、受光部222に入射する。
【0044】
他方において、識別媒体300を図の左方向に透過した残りの半分の右円偏光は、そのままに受光部212に入射する。この場合も
図6(B)の右側に示すように、受光部212と222への入射光量は同じとなるので、その出力レベルも同じとなる。
【0045】
ハーフミラーを用いた場合、発光部211と221を交互に点灯しても、共に同様な入射光が受光部212と222で得られるので、
図6(B)に示すように、
図6(A)の場合のような検出レベルの差は生じない。
【0046】
2.第2実施の形態
識別媒体300’を用い、
図2の発光部211と221をRGB3色の発光ダイオードで構成する。この場合、RGBの各波長のそれぞれにおいて個別に発光を行い、その都度判定を行う。この形態では、RGBの3波長について、上述した(受光部212の検出光量≪受光部222の検出光量)の関係を判定することになるので、判定の精度(言い換えると、偽物の検出精度)が向上する。
【0047】
この構成において、RGBの反射レベルに予め意図的に差を付けることも可能である。この場合、RGBを交互に発光させて、各色における検出光量の差を判定し、更にその結果から総合判定を行う。ここで、RGBの反射レベルに予め意図的に差が付けてあるので、このレベル差も判定基準となり、偽造品の検出精度がより高くなる。言い換えると、偽造品は、このRGBの反射レベルの違いも再現しなくてはならないので、偽造がより困難になる。
【0048】
3.第3の実施形態
以下、本発明を電子機器における交換可能な消耗部品(例えば、電池等)に適用した場合の例を説明する。
図7には、電子機器に5個の消耗品601〜605を装着した状態が概念的に示されている。消耗品601〜605は、
図5に示す構成を有し、それぞれが
図2に示す識別300(または300’)を備えている。例えば、消耗品605は、透明な板状の部材606を備え、そこに識別媒体300が貼り付けられることで固定されている。
【0049】
そして、各消耗品を電子機器に装着した状態において、
図7に示すように、各消耗品の識別媒体のそれぞれが、センサー部701〜705によって識別可能な状態となる。センサー部701〜705のそれぞれは、
図1(B)に示す構成を有し、
図1(B)に関連して説明した原理による識別を行う。
図7に示す構成によれば、電子機器に装着された消耗品の真贋の判定が電子機器側で行われる。例えば、偽物の消耗品が装着されると、真贋の判定処理が行われる。ここで偽物と判定された場合、当該電子機器の表示部にその旨の警告が表示される、あるいは当該消耗品を使用しての動作ができない状態とされる。消耗品601〜606の真贋を判定するだけではなく、消耗品601〜606に係る他の情報をセンサー部701〜705で検出する構成も可能である。
【0050】
4.第4の実施形態
2つのフォトインタラプターを対向配置するバリエーションとして、
図8に示すように、発光部211と受光部222を対向させ、受光部212を発光部221に対向させる配置も可能である。なお、その他の部分は、
図1と同じである。この場合、発光部211から発光された光は、左円偏光フィルタ213で左円偏光となり、その大部分は識別媒体300(または300’)を透過し、受光部222で検出される。他方で、受光部212に到達する発光部211からの光は弱い。
【0051】
また、発光部221から発光された光は、右円偏光フィルタ223で右円偏光となり、その大部分は識別媒体300(または300’)で反射し、受光部222で検出される。他方で、受光部212に到達する発光部221からの光は弱い。この場合も受光部212と222の出力の差に基づく識別媒体300(または300’)の真贋の判定が行われる。
【0052】
(その他)
全反射コレステリック液晶層306の代わりとして、異なる波長の右円偏光または左円偏光を選択反射する2つのコレステリック液晶層を積層した構造も可能である。この場合、可視光全域の帯域の光を反射する特性とはならいが、単一の波長を選択反射する場合よりも選択反射する光の波長帯域が広くなるので、受光部212、222の出力レベルを大きくでき、S/N比を高くできる。
【0053】
また、ホログラム302および印刷図柄303の一方または両方が無い構造も可能である。符号213の円偏光フィルタを右円偏光フィルタとし、符号223の円偏光フィルタを左円偏光フィルタとする配置も可能である。
【0054】
発光部211と221の光量および発光スペクトルの一方または両方に違いを設け、発光部211の発光時における2つの受光部の出力の差の値と、発光部221の発光時における2つの受光部の出力の差の値とに意図的に違いを生じさせる構成も可能である。このようにすると、偽造品において同じ判定条件を得ることがより難しくなるので、偽造品の検出精度を更に高めることができる。
【0055】
(その他の例1)
図9に示す構成では、受光部212の前に左円偏光フィルタを配置し、受光部222の前に右円偏光フィルタを配置している。ここで、
図10(A)の左側には、発光部211を発生させ、発光部221を発光させなかった場合における受光部212と受光部222の出力のレベルが示されている。
図10(A)の右側には、発光部221を発生させ、発光部211を発光させなかった場合における受光部212と受光部222の出力のレベルが示されている。
【0056】
まず、発光部221を発光させず、発光部211を発光されると、識別媒体300での左円偏光の反射は極めて弱く、また識別媒体300で反射される右円偏光は、左円偏光フィルタ213で遮断される。このため、受光部212の出力は小さい。識別媒体300を透過した左円偏光は、右円偏光フィルタ223で遮断されるので、受光部222の出力も小さい。したがって、
図10(A)の左側に示す出力が受光部212と222において得られる。
【0057】
他方において、発光部211を発光させず、発光部221を発光されると、識別媒体300は左円偏光を透過するので、左円偏光フィルタ213を透過し、受光部212に入射する光の光量は大きく、受光部212の出力は大きくなる。また、識別媒体300は右円偏光を反射するので、この右円偏光の反射光は、右円偏光フィルタ223を透過して受光部212に入射する。この受光部212への入射光の光量は、上記の受光部212への入射の光量とほぼ同じとなる。したがって、
図10(A)の右側に示す出力が受光部212と222において得られる。そして、
図10(A)の右側の出力のレベルと左側の出力のレベルを比較することで、識別媒体300の真贋の判定が行われる。
【0058】
ここで、
図1に示す場合において、識別媒体300のコレステリック液晶層301をハーフミラーとした場合、発光部211のみを点灯した場合と発光部222のみを点灯させた場合のそれぞれにおいて、受光部211,221の出力に違いが現れない(
図10(B)参照)。これは、以下の理由による。
【0059】
まず、発光部211のみを点灯した場合、発光部211からの光の半分が識別媒体300で反射される。この際、偏光の選択性はなく、ランダム光が反射される。このランダム光のうちの左円偏光が左円偏光フィルタ213を受光部212の方向に向けて透過し、受光部212で受光される。
【0060】
また、識別媒体300を透過した残りの光のうちの右円偏光が右円偏光フィルタ223を受光部222に向けて透過し、受光部222で検出される。この受光部222に入射する右円偏光は、円偏光フィルタでの損失が上記の反射成分の場合と同じであるので、受光部212で検出される入射光の光量と同じとなる。こうして
図10(B)の左側の出力レベルが得られる。
【0061】
発光部221のみを点灯した場合、発光部221からの光の半分が識別媒体300で反射される。この際、偏光の選択性はなく、ランダム光が反射される。このランダム光のうちの右円偏光が右円偏光フィルタ223を受光部222の方向に向けて透過し、受光部222で受光される。
【0062】
また、識別媒体300を透過した残りの光のうちの左円偏光が左円偏光フィルタ213を受光部212に向けて透過し、受光部212で検出される。この受光部212に入射する左円偏光は、円偏光フィルタでの損失が上記の反射成分の場合と同じであるので、受光部222で検出される入射光の光量と同じとなる。こうして
図10(B)の右側の出力レベルが得られる。
【0063】
このように、コレステリック液晶層を用い、発光部211と221とを交互に点灯した場合は、
図10(A)に示すように、受光部212と222の出力の組み合わせに顕著な差が生じる。これに対して、コレステリック液晶層301の代わりにハーフミラーを用いた場合、
図10(B)に示すように、発光部211と221とを交互に点灯しても、受光部212と222の出力の組み合わせに差が生じない。
【0064】
ここで例示したように、第1のフォトインタラプター(第1のセンサー部)の受光部の前に第1の旋回方向の円偏光フィルタを配置し、第2のフォトインタラプター(第2のセンサー部)の受光部の前に第1の旋回方向とは逆旋回方向の第2の旋回方向の円偏光フィルタを配置する構造も可能である。なお、
図9に示す構成において、符号213の円偏光フィルタを右円偏光フィルとし、符号223の円偏光フィルタを左円偏光フィルタとしてもよい。
【0065】
(その他の例2)
図11には、発光部211および受光部212の前に左円偏光フィルタ213を配置し、発光部221および受光部222の前に右円偏光フィルタ223を配置した場合の例が示されている。ここで、
図10(A)の左側には、発光部211を発生させ、発光部221を発光させなかった場合における受光部212と受光部222の出力のレベルが示されている。
図10(A)の右側には、発光部221を発生させ、発光部211を発光させなかった場合における受光部212と受光部222の出力のレベルが示されている。
【0066】
まず、発光部221を発光させず、発光部211を発光されると、識別媒体300には、左円偏光フィルタ213を透過した左円偏光が入射する。ここで、識別媒体300からの左円偏光の反射光は弱いので、受光部212の出力は小さい。また、識別媒体300から受光部222に向かう光は、左円偏光が主であり、この光は右円偏光フィルタ213で遮断されるので、受光部222の出力も小さい。したがって、受光部212と222の出力は、
図12(A)の左側に示すレベルとなる。
【0067】
そして、発光部211を発光させず、発光部221を発光されると、識別媒体300には、右円偏光フィルタ223を透過した右円偏光が入射する。この入射光は、識別媒体300でほとんど反射されるので、受光部212に入射する光は弱く、受光部212の出力は小さい。また、識別媒体300から受光部222に向かう光は、右円偏光が主となるが、この光は右円偏光フィルタ213を透過するので、受光部222の出力は大きくなる。したがって、受光部212と222の出力は、
図12(A)の右側に示すレベルとなる。そして、
図12(A)の右側に示される受光部212および222の出力のレベルと、左側に示される受光部212および222の出力のレベルとを相互に比較することで、識別媒体300の真贋の判定が行われる。
【0068】
ここで、識別媒体300のコレステリック液晶層301をハーフミラーとした場合、発光部211のみを点灯した場合と発光部222のみを点灯させた場合のそれぞれにおいて、受光部211,221の出力に違いが現れない(
図12(B)参照)。これは、以下の理由による。
【0069】
まず、発光部211のみを点灯した場合、発光部211からの光は、左円偏光フィルタ213で左円偏光とされ、それが識別媒体300に入射し、その半分が反射される。この際、円偏光の旋回方向が反転し、反射光は右円偏光となる。この識別媒体300から図の左方向に反射される右円偏光は、左円偏光フィルタ213で遮断されるので、受光部212への入射光は弱く、受光部212の出力レベルは小さい。この状態が
図12(B)の左側に示されている。この場合、円偏光フィルタによる円偏光の旋回方向の選択性が機能するので、
図10(B)の場合よりも出力レベルは小さくなる。
【0070】
また、発光部211からの左円偏光のうち識別媒体300に入射した半分は、そのまま識別媒体300を左円偏光として透過する。この左円偏光は、右円偏光フィルタ223で遮断され、受光部222への入射光は弱い。この状態が
図12(B)の左側に示されている。この場合、円偏光フィルタによる円偏光の旋回方向の選択性が機能するので、
図10(B)の場合よりも出力レベルは小さくなる。
【0071】
次に、発光部221のみを点灯した場合、発光部221からの光は、右円偏光フィルタ223で右円偏光とされ、それが識別媒体300に入射し、その半分が受光部222の方向に反射される。この際、円偏光の旋回方向が反転し、反射光は左円偏光となる。この識別媒体300から図の右方向に反射される左円偏光は、右円偏光フィルタ223で遮断されるので、受光部222への入射光は弱く、受光部222の出力レベルは小さい。この状態が
図12(B)の右側に示されている。この場合、円偏光フィルタによる円偏光の旋回方向の選択性が機能するので、
図10(B)の場合よりも出力レベルは小さくなる。
【0072】
また、発光部221からの右円偏光のうち識別媒体300に入射した残りの半分は、そのまま識別媒体300を右円偏光として透過する。この右円偏光は、左円偏光フィルタ213で遮断され、受光部212への入射光は弱い。この状態が
図12(B)の右側に示されている。この場合、円偏光フィルタによる円偏光の旋回方向の選択性が機能するので、
図10(B)の場合よりも出力レベルは小さくなる。
【0073】
このように、コレステリック液晶層を用い、発光部211と221とを交互に点灯した場合は、
図12(A)に示すように、受光部212と222の出力の組み合わせに顕著な差が生じる。これに対して、コレステリック液晶層301の代わりにハーフミラーを用いた場合、
図12(B)に示すように、発光部211と221とを交互に点灯しても、受光部212と222の出力の組み合わせに差が生じない。
【0074】
このように、第1のフォトインタラプター(第1のセンサー部)の発光部および受光部の前に第1の旋回方向の円偏光フィルタを配置し、第2のフォトインタラプター(第2のセンサー部)の発光部および受光部の前に第1の旋回方向とは逆旋回方向の第2の旋回方向の円偏光フィルタを配置する構造も可能である。なお、
図11に示す構成において、符号213の円偏光フィルタを右円偏光フィルとし、符号223の円偏光フィルタを左円偏光フィルタとしてもよい。
【0075】
本発明は、パスポート、書類、各種カード、パス、紙幣、金券、証券、証書、商品券、絵画、切符、公共競技投票券、音楽や映像が記録された記録媒体、コンピュータソフトウェアが記録された記録媒体、各種製品のパッケージ、電子部品、機械部品、電池、その他各種の消耗品や交換部品等の真正性(真贋性)を識別するための識別媒体に利用可能である。