特許第5710445号(P5710445)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5710445反転したディンプルを有するヘッドジンバルアセンブリのためのスライダ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5710445
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】反転したディンプルを有するヘッドジンバルアセンブリのためのスライダ
(51)【国際特許分類】
   G11B 5/60 20060101AFI20150409BHJP
【FI】
   G11B5/60 Z
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-229631(P2011-229631)
(22)【出願日】2011年10月19日
(65)【公開番号】特開2012-94236(P2012-94236A)
(43)【公開日】2012年5月17日
【審査請求日】2012年5月10日
(31)【優先権主張番号】12/910,077
(32)【優先日】2010年10月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500373758
【氏名又は名称】シーゲイト テクノロジー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラズマン・ザンブリ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・アレン・グレミンガー
(72)【発明者】
【氏名】ダディ・セティアディ
【審査官】 齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−187069(JP,U)
【文献】 特公昭40−001916(JP,B1)
【文献】 米国特許第3202772(US,A)
【文献】 特開平 4−030378(JP,A)
【文献】 米国特許第5243482(US,A)
【文献】 特開平 3−152775(JP,A)
【文献】 特開平 3−134876(JP,A)
【文献】 特開昭62−256280(JP,A)
【文献】 特開平10−021663(JP,A)
【文献】 特開平 6−203506(JP,A)
【文献】 特開平 3−016069(JP,A)
【文献】 特開昭62−066482(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0050441(US,A1)
【文献】 特開平11−066530(JP,A)
【文献】 米国特許第5021907(US,A)
【文献】 特開平 8−203230(JP,A)
【文献】 特開昭62−204480(JP,A)
【文献】 特開平 5−225735(JP,A)
【文献】 特開2001−035109(JP,A)
【文献】 特開昭63−007574(JP,A)
【文献】 特開平 9−198824(JP,A)
【文献】 特開2001−351346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/60
米国特許分類 360/234.3−360/237.1
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する第1および第2の面と、前記第1の面上の空気軸受機構と、前記第2の面から延在し、支持リング上に形成され、スライダの多軸回転を促進するようにされるディンプルとを含むスライダを備え、前記支持リングは前記第2の面に前記ディンプルをアライメントするように構成され、
前記スライダは、前記第2の面から突出する第1のアライメント機構を有し、
前記支持リングは、前記支持リングから前記ディンプルと反対側に突出する第2のアライメント機構を有し、
前記第1のアライメント機構への前記第2のアライメント機構の相互接続により、前記ディンプルは前記第2の面に取付けられる、装置。
【請求項2】
前記第1のアライメント機構は、複数の第1アライメント部材を有し、および/または、前記第2のアライメント機構は、複数の第2アライメント部材を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
予荷重力を前記ディンプルに与えるジンバルをさらに備え、
前記ジンバルは開口部を有し、前記ディンプルは前記開口部を通って前記ジンバルに対して非接触関係で延在し、
前記ジンバルは、前記開口部を除いて実質的に平坦な直線のプレートを有する、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
局所的低部を有する段が設けられたロードビームをさらに備え、
前記ディンプルは前記局所的低部に接触して当接する、請求項1からのいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
第1の面上に空気軸受機構を有するスライダを形成するステップと、
ディンプルを形成するステップと、
前記第1の面とは反対の第2の面上に前記形成されたディンプルを配置するステップとを備え、前記ディンプルは、前記スライダの多軸回転を促進するように、前記第2の面から延在するとともに前記第2の面に取り付けられ、
前記スライダを形成するステップは、前記第2の面から突出する第1のアライメント機構を設けることを有し、
前記配置するステップは、支持部材の第1の面に前記ディンプルを形成することと、前記支持部材の反対側の第2の面から突出する第2のアライメント機構を形成することと、前記第2のアライメント機構を前記第1のアライメント機構に接触整列させることを有する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
概要
本発明のさまざまな実施例は一般的に、改善されたヘッドジンバルアセンブリ(head gimbal assembly)(HGA)、および当該ヘッドジンバルアセンブリを作製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例示的な実施例によると、HGAは対向する第1および第2の側面と、上記第1の側面上の空気軸受機構と、上記第2の側面から延在し、スライダの多軸回転を促進するようにされるディンプルとを有するスライダを含む。
【0003】
本発明のさまざまな実施例を特徴付けるこれらおよびその他の特徴および局面は、以下の詳細な説明および添付の図面を考慮すると、理解することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】例示的なデータ記憶装置の展開図を与える図である。
図2A】例示的なサスペンションアセンブリを示す図である。
図2B図2Aのサスペンションアセンブリのジンバルプレートを示す図である。
図3A】スライダ/ディンプルの位置合わせ不良によって発生し得るピッチオフセットを示す図である。
図3B】スライダ/ディンプルの位置合わせ不良によって発生し得るロールオフセットを示す図である。
図4】本発明のさまざまな実施例に従ったヘッドジンバルアセンブリ(HGA)の例示的な構造を示す図である。
図5A】さまざまな実施例に従った別の例示的なHGAのある局面を示す図である。
図5B】さまざまな実施例に従った別の例示的なHGAのある局面を示す図である。
図5C】さまざまな実施例に従った別の例示的なHGAのある局面を示す図である。
図6A】さまざまな実施例に従って形成された別の例示的なHGAについての製造シーケンスを示す図である。
図6B】さまざまな実施例に従って形成された別の例示的なHGAについての製造シーケンスを示す図である。
図6C】さまざまな実施例に従って形成された別の例示的なHGAについての製造シーケンスを示す図である。
図6D】さまざまな実施例に従って形成された別の例示的なHGAについての製造シーケンスを示す図である。
図7A】さまざまな実施例に従って形成されるHGAとの使用に好適なロードビーム構成を示す図である。
図7B】さまざまな実施例に従って形成されるHGAとの使用に好適な異なるロードビーム構成を示す図である。
図8】本発明のさまざまな実施例に従って実行されるステップを例示するHGA作製手順を提供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
詳細な説明
本開示は一般的に、データ記憶装置における使用に好適な改善されたヘッドジンバルアセンブリ(HGA)構成に関する。
【0006】
HGAはしばしば、データの読込および書込動作を促進するよう、回転している媒体表面に隣接するデータ変換器を支持するのに用いられる。例示的なHGAは、スライダに搭載される別個の書込および読込変換素子を含み得る。このスライダには、改良型空気軸受(advanced air bearing)、すなわちAABといった空気軸受面が設けられる。AABは、スライダが関連する回転面に隣接して流体力学的に支持されることを可能にする。この支持は、当該面の高速回転によってもたらされる流体の流れ(たとえば空気、ヘリウムなど)によって行われる。スライダと変換素子との組合せは、「ヘッド」とも呼ばれることがある。
【0007】
このヘッドは、ジンバルに機械的に結合され得る。スライダは、半球(ドーム)形状のディンプルによって、媒体表面の形状に追随するよう複数の軸に沿って旋回することが可能である。これらの軸は、ピッチ軸(上昇または下降回転)と、ロール軸(横方向回転)とを含み得る。
【0008】
ジンバルはしばしば、柔軟なサスペンション(フレキシャ)の遠位端にて支持され、これによりアクチュエータアセンブリの回転可能なアクチュエータアームから突出し得る。これにより、アクチュエータは制御可能に回転されて、変換素子が関連するトラックに対してデータを読込む/書込む関係になるようにし得るとともに、当該スライダが必要に応じてジンバルの周りを縦方向および横方向に移動して、上記トラックの上において安定した飛行関係にスライダを維持し得る。
【0009】
少なくともいくつかのHGA構成では、スライダの飛行特性は、ジンバルがスライダに加える3つの主な荷重によって支配され得る。これらの荷重は、予荷重(PL)、ピッチトルク(PT)、およびロールトルク(RT)として特徴付けられ得る。PLは一般的に、スライダの質量中心を通ってジンバルが適用する力を構成する。PTは一般的に、ピッチ静的姿勢(pitch static attitude(PSA))およびジンバルのピッチ剛性によって
もたらされる。RTは一般的に、ロール静的姿勢(roll static attitude(RSA))およびジンバルのロール剛性によってもたらされる。
【0010】
現実世界の製造環境では、スライダに対するディンプルの位置に変動性が導入され得る。この変動性は、ジンバルの形成および取付工程、スライダ作製および組付工程、および相互接続回路組付工程の結果生じ得る。これらの変動は直交する3つの次元に沿って示され得る。これらの変動が累積すると、スライダの飛行特性においてピッチおよび/またはロールオフセット誤差が著しくなり得る。将来世代のHGAではサイズおよび飛行高さ特性が低減されることになると考えられるので、ディンプルの配置誤差に対する感度がより高いレベルになると考えられる。
【0011】
したがって、本発明のさまざまな実施例は、ディンプルとスライダとの相対的な配置における制御の改善を提供する改善されたHGA構成に向けられる。これらの実施例は、まず図1を検討することで理解され得る。図1は、例示的なデータ記憶装置100の展開図を与える図である。装置100は、基部デッキ104および上部カバー106から形成される筐体102を含む。筐体の中には、空気雰囲気または低密度の不活性ガス雰囲気(たとえば、ヘリウム)といった流体雰囲気が保持される。
【0012】
スピンドルモータ108は、多数の記憶媒体(たとえば、磁気ディスク)110を選択された高い回転速度で回転するよう構成される。アクチュエータアセンブリ112は、柔軟なサスペンションアセンブリ(フレキシャ)116の対応するアレイを支持する剛性の
アクチュエータアーム114を含む。各フレキシャ116の端部には、ヘッドジンバルアセンブリ(HGA)118が存在する。各HGAは、HGAが関連する表面の上を所望の飛行高さで飛行することを可能にする空気軸受を形成するスライダを含む。参照のために、本願明細書においては「空気軸受」という用語は、周囲の雰囲気の流体がヘリウムのような非空気の雰囲気であっても用いられる。スライダの上には読込および書込変換素子が配され、これにより媒体表面上に規定されるデータトラックに対する読込および書込動作が促進される。
【0013】
アクチュエータ112はボイスコイルモータ(VCM)120によって回転される。アクチュエータ114を装置のプリント回路基板(PCB)124に結合するフレキシブルプリント回路ケーブル(フレックス回路)122上に導電性の信号経路が形成される。装置のPCBは、基部デッキ104の外面上に搭載され、ホストとインターフェイス接続するよう当該装置によって用いられる通信および制御回路網を支持する。いくつかの実施例では、装置100が非活性化されると、HGAが媒体表面から傾斜構造128上に降ろされることを可能にするよう傾斜積載タブ126が各HGA118に隣接して順方向に突出してもよい。
【0014】
図2Aは、例示的なサスペンションアセンブリ130の等角図である。基部132は、ロードビーム134を予荷重屈曲部136により支持する。HGA138は、ロードビーム134の遠位端にて支持され、変換器(ヘッド)140およびジンバルプレート142を含む。ジンバルプレート142の上面平面図が図2Bに示される。
【0015】
ジンバルプレートは、支持タブ146を規定する切欠き開口部144を含む。スライダは、タブ146の下側表面に固定される。半球形状のディンプル148が、タブ146の上面に力を加える。
【0016】
ジンバルプレート142の基部取付部150は、好適な接着剤(図示せず)を用いてロードビームの下側表面に固定される。これにより、ジンバル荷重力をもたらすことを補助するばね力が提供される。ディンプル148によって提供されるボール接点により、ピッチ軸(x方向)およびロール軸(y方向)に沿ったヘッド140の接触が可能になる。図面に示されるさまざまな構成要素の形状、方位、相対的な寸法、およびアスペクト比は単に例示的なものであって、所望のように変動し得ることが理解されるであろう。ヘッド140の変換素子への電気的な相互接続は、ジンバルプレートに沿ってスライダへと経路付けされるフレックス回路(図示せず)によって提供され得る。
【0017】
図3Aおよび図3Bは、ヘッド140に対するディンプル148の相対的な配置における誤差がどれだけHGA138の飛行特性に影響を与え得るかを示す。図3Aにはピッチオフセット(PO)誤差が示され、図3Bにはロールオフセット(RO)誤差が示される。誤差はこれらの図に示されるのと反対の方向に延び得ることも理解されるであろう。
【0018】
図3Aでは、ヘッド140のスライダ152はタブ146(図2B)に結合される。スライダ152は、媒体156の上にスライダを所望の飛行高さで支持するよう空気軸受(AAB)表面154を含む。
【0019】
ディンプルからの予荷重力FPLは、ベクトル158によって示され、名目上理想的な中心位置に適用される。この位置は、たとえばスライダ152の中心(質量中心)を通ることによって、スライダ152が媒体に対してピッチ角なしで名目上飛行するように選択され得る。代替的には、適用されるジンバルの力の位置は、少量の正または負のピッチをスライダに与えるよう選択されてもよい。たとえば、いくつかのHGA設計では、スライダの後縁上の読込/書込変換素子が媒体表面により近くなるように少量の負のピッチ(上
昇姿勢)が与えられる。この姿勢は、媒体表面上の汚染粒子の軽減にも役立ち得る。
【0020】
HGA138の作製の間の製造ばらつきにより、予荷重力FPLが適用される実際の位置は、ベクトル160によって例示されるようにx方向に沿ってオフセットされ得ると考えられる。このオフセットは、図3Aに示されるように、望まれないピッチ角162をスライダ152上に導入する傾向があり得る。同様に図3Bは、スライダ152にとって望まれないロール角の導入へと至る、ベクトル164によるy方向に沿う予荷重力FPLにおけるオフセットの影響を示す。
【0021】
したがって、このようなディンプル/スライダの位置合わせ不良の影響を低減する改善されたHGA構造がさまざまな実施例によって提供される。以下に説明するように、これらのさまざまなHGA構造では、ディンプルをスライダの上面上に直接的に配置する。
【0022】
図4は、いくつかの実施例に従って構成される例示的なHGA170を示す。HGA170は、下面174に沿った空気軸受(AAB)機構を有するスライダ172を含む。読込または書込素子のようなデータ変換素子176が、スライダ172の後縁(TE)に沿って支持される。データ変換素子176による使用のために、フレックス回路が電気的な相互接続を提供する。フレックス回路は、電気絶縁ポリイミド層180上に形成される導電層(たとえば、銅トレース)178を含む。ステンレス鋼のジンバルプレートが182にて示される。
【0023】
半球(ドーム)形状のディンプル184が、空気軸受面174と反対のスライダ172の上面186に接続される。いくつかの実施例では、ディンプル184は、射出成形、フォトリソグラフィ、マイクロインプリンティングなどといった好適な製造工程を用いて液晶ポリマー(LCP)のような好適な硬質材から形成される。ディンプル184は、上部スライダ表面186に直接的に形成されてもよく、または別個に作製されて上部スライダ表面186に取付けられてもよい。すなわち、ディンプル184は、上部スライダ表面186に直接接触してもよく、またはディンプル184とスライダ表面186との間に位置する接続界面を有してもよい。
【0024】
ディンプル184を収容するよう、フレックス回路ならびにジンバルプレート層178、180および182のそれぞれに開口部が形成され得る。ディンプル184は、適切な位置に一度配置されると、ロードビーム188の下側表面に接触係合され、これによりスライダ172の多軸回転を可能にする。なお、空気軸受面174に対するディンプル184の位置の製造ばらつきは、実質的に単一の要因、すなわちディンプル184をスライダ172の上面186上に所望の位置に正確に配置する能力に限定される。
【0025】
図5A図5Cは、本発明のさまざまな実施例に従って構成された別のHGA190を示す。HGA190は、下面194に沿った空気軸受機構を有するスライダ192を用いる。ディンプル196が薄膜支持リング198上に形成される。上記と同様に、ディンプル196はLCPまたは他の好適な材料から形成されてもよい。支持リング198はポリイミドまたは他の好適な材料から形成されてもよい。
【0026】
第1の整列機構200が、空気軸受面194と反対側のスライダの上面202上に設けられる。第1の整列機構は、示されるように間隔を空けたパッドの連なりといった任意の数の形態を取り得る。これらのパッドは、印刷またはエッチングといったさまざまな処理を用いて形成され得る。支持リング198の下側には、パッド200と連動する戻り止めの連なりといったような第2の整列機構204が設けられ得る。戻り止めも、印刷またはエッチングといった好適な処理を用いて形成され得る。第1および第2の整列機構200、204は、スライダ192上へのディンプル196の正確な配置を確実にする自己整列
を提供するよう構成される。ディンプルをスライダに取付けるために、接着剤または他の取付機構が所望のように用いられ得る。
【0027】
ディンプル196がスライダ192に一度取付けられると、図5Bに示されるように、スライダは銅およびポリイミド層208、210を有するフレックス回路206およびジンバルプレート212といったさまざまな構成要素に取付けられ得る。上記と同様に、図5Cの上面平面図に示されるように、ディンプル196を取り囲んで収容するように共通の整列した開口部214がこれらの層に設けられ得る。
【0028】
これによりディンプル196は、スライダからジンバル212上の面へ、ロードプレートへと延在することになる。図2Bにおける146のようなジンバルタブが用いられ得るが、このようなジンバルタブは必ずしも必要ではないということは図5Cから明らかであろう。むしろ、ジンバルプレート212は、(ディンプル開口部214を除いた)実質的に平坦な直線の中空ではないバーであり得る。整列開口部216が、ロードビームへの取付けを促進するよう、所望のようにジンバルの取付端部218を通って延在し得る。
【0029】
代替的な実施例では、スライダ192の上面202の部分がレーザーアブレーションのような好適な材料除去処理を用いてエッチングまたはそうでなければ除去され、これによりスライダ192を構成する同じ材料からディンプル196を一体化して形成する。
【0030】
図6A図6Dは、本発明のさらなる実施例に従ったHGA220の例示的な部分のさまざまな概略図を提供する図である。図6Aでは、スライダ221は、間隔を空けた複数の突出部224を有する整列領域222を有する。これらの突出部224は、スライダ上の所定の位置の周りに配される。いくつかの実施例では、突出部224は、溝またはノッチを有するスライダの上面の部分を取除くことにより形成される。
【0031】
スライダ221はさらに、間隔を空けた複数の整列板228を有する形成機構226を有するよう構成される。形成機構226および整列板228は、スライダ221上の所定の位置の周りに整列領域222を適切に形成するよう、スライダ221上に構成または組み付けられ得る。例示的な実施例では、整列板228は、整列機構222が中に存在する境界を提供する。
【0032】
図6Bは、図6Aの断面A−Aに沿ったスライダ221の側面図を提供する図である。スライダは、上記整列機構222および突出部224を第1の側面上に有し、空気軸受機構230をその反対の第2の側面上に有する。上記と同様に、空気軸受機構230は、スライダに対して流体力学的な支持を提供するようデータ記憶媒体に連続的に面するように構成される。示されるように、整列板228はスライダ221の高さの全体にわたって連続し、これにより上部および底部側面の両方について整列パラメータを提供する。
【0033】
図6Cではスライダ221の底面図が提供される。当該底面図は、整列板228に対応する例示的な空気軸受機構230を示す。本発明のさまざまな実施例は、整列板228の整列補助によりスライダ221の上にさらに形成または組付けられ得る空気軸受突出部232を含む。なお、整列板228のさまざまな形状、サイズ、および方位は、限定されず、所望のように修正され得る。しかしながら、整列板228をスライダ221の高さにわたって延在させることにより、製造の一貫性を増加させつつ、単一の構造要素によって、スライダの対向する側面上にて機構を整列させるとともに製造時間を低減することが可能になる。
【0034】
図6Dは、ディンプルと係合するようにされる整列機構222および突出部224と、動作の間に記憶媒体の上への所望の飛行を提供するようにされる空気軸受機構230とを
有するスライダ221の正面図を示す図である。スライダ221のさまざまな機構は任意の順番で形成または組付けられ得るが、いくつかの実施例では、スライダおよび整列板は、スライダが空気軸受機構230および整列機構222が形成される前に製造される順番で製造される。
【0035】
図7Aは、本発明のさまざまな実施例に従った別の例示的なHGA250を示す図である。図7Aは、第1の側面上に空気軸受機構254を有し、第1の側面とは反対の第2の側面にディンプル256を有するスライダ252を示す。スライダ252はジンバル258およびフレックス回路260に取付けられる。ジンバル258は、整列ブロック266を用いてロードビーム264に取付けられる。整列ブロック266は、ジンバル258とロードビーム264との間に挿入され、ジンバル258およびロードビーム264のそれぞれに接着剤または他の好適な取付機構を用いて取付けられる。
【0036】
ディンプル256の曲線からなる部分がロードビーム264(ロール中心)に接触する点が媒体表面から距離H1のところに存在する。したがって、図7Aの構成は動作特性の向上を提供するが、分離距離H1では、動作における衝撃および共振振動に応答してスライダが許容できない量のロールおよびピッチ誤差の外乱に晒される場合がある。
【0037】
図7Bは、図7Aにおけるディンプル256よりも大きな曲率半径を有するより短いディンプル272が用いられることを除いて、HGA250と名目上同じである別の例示的なHGA270を与える図である。さらに、段が設けられたロードビーム274には、局所的低部276が設けられる。局所的低部276には、上述したより短いディンプル272が接触して当接する。ジンバル258は、より高い整列ブロック278によって、ロードビーム274の凸部280に固定される。この構成により、より低いロール中心距離H2が得られ、これにより動作における衝撃および共振振動に対する抵抗が向上する。
【0038】
図8は、上で論じたさまざまな実施例に従って実行されるHGA作製手順300についてのフローチャートを提供する図である。初めにステップ302において、第1の側面上に空気軸受機構を有するスライダが設けられる。この空気軸受機構は、スライダブロックをエッチングしてそこから材料を取除くか、またはさまざまな要素をスライダブロックに取付けることによって形成され得る。このステップの間に、空気軸受機構を有するスライダの側上に整列板が所望のように形成され得る。読込/書込変換素子、信号経路、および導電性パッドなどを含む他の機構もこのステップの間にスライダ上に同様に形成されてもよい。
【0039】
次いで、スライダの反対側の第2の側面の上にディンプルが形成される。これは、上で論じたようにさまざまな方法で行われ得る。
【0040】
たとえば、ステップ304に示されるように、ディンプルはスライダ本体上に直接的に形成され得る。いくつかの実施例ではこれは、液晶ポリマー(LCP)といった材料を第2の表面の上の所望の位置に堆積させることにより実行される。この材料は、最終的な所望の形状を提供することに対処することが可能である。他の実施例では、エッチングまたは他の何らかの好適な材料除去処理がスライダ本体に適用され、共通の基材から一体の単体としてディンプルおよびスライダを提供するように材料を取除く。ディンプルは、半球形状を有するように形成されてもよいが、これは必ずしも必要ではない。
【0041】
代替的には、ディンプルはスライダ本体とは別個に形成され、次いでスライダ本体に取付けられてもよい。たとえば、ステップ306に示されるように、第1の整列機構が第2の側面上に形成され得る。この整列機構は、スライダ本体の質量中心に対して所望の関係で配置される複数の突出部または窪み部を含んでもよい。
【0042】
次いで、ステップ308においてディンプルが形成される。これは、LCPもしくは他の好適な材料を成形することによって、または好適なエッチングまたはリソグラフィ処理を適用することによって行われてもよい。ディンプルは上で論じたポリイミドリングのような支持リングを所望のように統合し得る。ステップ308の間に形成されるディンプルは、ステップ306の第1の整列機構と自己整列するように構成される第2の整列機構を含んでもよい。しかしながら、このような整列機構は必ずしも必要でないということが理解されるであろう。
【0043】
次にステップ310において、第1および第2の整列機構が相互に接続されてディンプルをスライダに取付ける。これは、接着剤または何らかの他の好適な機械的な取付処理を用いて実行されてもよい。
【0044】
ディンプルが一度スライダに取付けられると、ステップ312において、ジンバルおよびフレックス回路がスライダに付与され、これによりヘッドジンバルアセンブリ(HGA)が形成され得る。所望のように、ジンバルおよびフレックス回路は、ディンプルを収容するとともにスライダと係合するようにされる開口部を有するように構成される。フレックス回路は、スライダに電気的に接続され得る回路に対応する独立した多くの導電トレースを有するように構成され得る。ステップ312の間のスライダへのフレックス回路の接続は、これらのさまざまな要素同士の間の電気的な相互接続を確立することを含み得る。
【0045】
ジンバルおよびフレックス回路がスライダ上に組み付けられてHGAを形成した後、このHGAはステップ314においてサスペンションアセンブリのロードビームに取付けられる。ステップ316では、組み付けられたサスペンションアセンブリに対して検査および調節がなされる。その後、ステップ318において、この完成したサスペンションアセンブリはデータ記憶装置に統合される。ステップ320にて、この手順は終了する。
【0046】
なお、手順300によって示されるさまざまなステップは限定的なものではなく、所望のように変更、再構成、または省略され得る。整列パラメータをスライダの第1および第2の側面に同時に提供するために整列板がスライダ上に形成されるさらなる処理が含まれ得る。
【0047】
当業者ならば理解し得るように、本願明細書において例示されたさまざまな実施例は、有用な動作特性および低減された製作処理の変動をHGA構成に提供し得る。反転したディンプルをスライダ上に配置するように適用されるさまざまな処理ステップによって、スライダ/ディンプル配置の変動量が、従来の機械的な組付け公差よりも実質的に小さいマスク位置合わせ不良の誤差の範囲にまで低減される。これにより、ピッチおよびロールオフセット誤差が著しく低減され得る。
【0048】
さらに、上記のスライダ上へのディンプルの配置によって、正確に整列されたディンプルとスライダとの関係が得られる小さい公差の処理を用いて組付け前の製造が容易になる。整列機構の使用はさらに、適切なディンプルの位置を保証し得る。本願明細書において論じられたさまざまな実施例には、多くの可能性のある用途があり、ある分野の電子媒体またはあるタイプのデータ記憶装置に限定されないということが理解されるであろう。
【0049】
本開示について、「バランスされる」という用語は、スライダおよびディンプルの両方に対する力の平衡であると解釈される。たとえば、ディンプルおよびスライダの位置合わせ不良は、図3Aおよび図3Bに示されるように、均等な力の欠如およびその結果発生するディンプルに対するスライダの角偏差によりバランスされていないロールおよびピッチオフセットを引き起こし得る。ディンプルの周りにおいてスライダがバランスされていれ
ば、横方向または回転方向の正味の力がスライダまたはディンプルのいずれの上にも存在しない。スライダ上に配されるかまたは取付けられるディンプルへの参照は、ディンプルをスライダに直接的に取付けることとして理解されることとなる。
【0050】
上記の説明において本発明のさまざまな実施例の多くの特性および利点を本発明のさまざまな実施例の構造および機能の詳細とともに記載してきたが、この詳細な説明は単に例示目的であって、特に部分の構造および構成において、添付の特許請求の範囲が表現される文言の広く一般的な意味によって示される全範囲に対する本発明の原理内で詳細が変更されてもよいということは理解されるべきである。
【符号の説明】
【0051】
230,254 空気軸受機構、148,184,196,256,272 ディンプル、152,172,192,221,252 スライダ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0052】
【特許文献1】米国特許第6376964号明細書
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図8