(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5710488
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】空気力学的性能が改善されたタービンブレード
(51)【国際特許分類】
F01D 5/14 20060101AFI20150409BHJP
【FI】
F01D5/14
【請求項の数】12
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2011-530526(P2011-530526)
(86)(22)【出願日】2009年10月6日
(65)【公表番号】特表2012-505340(P2012-505340A)
(43)【公表日】2012年3月1日
(86)【国際出願番号】FR2009051897
(87)【国際公開番号】WO2010043798
(87)【国際公開日】20100422
【審査請求日】2012年8月28日
(31)【優先権主張番号】0856903
(32)【優先日】2008年10月13日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505277691
【氏名又は名称】スネクマ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルテイエ,パスカル
【審査官】
西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】
独国特許発明第00681479(DE,C2)
【文献】
米国特許第03578264(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0214113(US,A1)
【文献】
特公平02−001962(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 5/14
Thomson Innovation
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力側の面(19)と吸い込み側の面(21)とを有するタービンロータブレードであって、
前記吸い込み側は、ブレードの後端(17)付近で当該後端(17)に沿って一列に分布された複数の突起(25)を除き、表面(21)の主要部分全体が滑らかであり、
前記圧力側の面(19)は、滑らかであり、
前記突起(25)は、前記吸い込み側における流れの方向に関して前記後端(17)で終結するように配置された、タービンロータブレード。
【請求項2】
前記後縁に沿った突起(25)の位置が、前記突起のない状態で計算されたときの最大剥離ゾーン(30)の付近になるように選択されることを特徴とする、請求項1に記載のタービンロータブレード。
【請求項3】
前記後縁に沿ってほぼ半分の高さに位置する前記突起(25a)を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のタービンロータブレード。
【請求項4】
前記突起(25)の形状が、吸い込み側の面(21)から突き出て、この表面(21)に滑らかに接続する、ほぼ丸いスタッドの形状であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のタービンロータブレード。
【請求項5】
前記突起のうちの1つ(25b)が、前記後縁の半径方向内側端部付近に備わることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のタービンロータブレード。
【請求項6】
前記突起のうちの1つ(25c)が、前記後縁の半径方向外側端部付近に備わることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のタービンロータブレード。
【請求項7】
前記突起のうちの複数が、前記後縁の半径方向外側の3分の1に沿って分布されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のタービンロータブレード。
【請求項8】
後縁に対して垂直な各突起の中央断面が、吸い込み側の面(21)と滑らかに接続する半波状であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のタービンロータブレード。
【請求項9】
前記半波の傾斜が、前方に向かうほど浅く、後方に向かうほど急勾配であることを特徴とする、請求項8に記載のタービンロータブレード。
【請求項10】
前記中央断面に対して垂直な前記突起の断面が、中央極値と両側減衰波とを呈する起伏状であることを特徴とする、請求項8または9に記載のタービンロータブレード。
【請求項11】
可動ブレードを構成することを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載のタービンロータブレード。
【請求項12】
請求項1から10のいずれか一項に記載のブレードが取り付けられることを特徴とする、タービンホイール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンブレードに関し、特に、主に吸い込み側領域の後部で、空気流の境界層がブレードの表面から剥離するのを防ぐようにブレードの空気力学的挙動が改善された、航空機ターボジェットの低圧タービンの可動ホイールのブレードに関する。
【背景技術】
【0002】
新規なタービンブレード形状の設計では、特に、所与のタービン段のホイールに取り付けられる可動ブレードの設計では、特定の構造パラメータを変更することによって性能を向上させることが望ましい。特に、タービンの重量を低減するために、1つの可能な解決策はブレード数を低減することを含み、それにより、出口角度に適合するように、また効率損失をできる限り補正するようにブレードの輪郭が設計し直される必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このようにすることで、空気流が吸い込み側から「剥離」する危険性あるのを発見することが可能である。このような乱流擾乱は、ブレードの吸い込み側の特定のゾーン付近で始まり、これが性能を大きく損なう。本発明は、このような剥離現象を軽減する働きをする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
より詳細には、本発明は、吸い込み側の後縁付近に少なくとも1つの突起を含むことを特徴とするタービンブレードを提供する。
【0005】
後縁に沿ってこのような突起の位置を決定するために、初めに、吸い込み側の剥離ゾーンを表示し(この表示は計算によって得られる)、次に、このような突起を使用せずに決定された場合の最大擾乱ゾーン付近にこのような突起を配置することが決められる。
【0006】
このようにすることで、通常は、少なくとも1つの上述の突起が後縁の中ほどに配置されることになる。他の突起は、有利には、前記後縁の半径方向内側端部付近および/または前記後縁の半径方向外側端部付近に配置されてもよい。
【0007】
一般に、計算によって、複数の上述の突起が前記後縁の半径方向外側の3分の1に沿って分布されるように前記突起を配置することができる。
【0008】
このような突起の形状は、好ましくは、吸い込み側面から突起して吸い込み側面と滑らかに接続するほぼ丸いスタッドの形状である。
【0009】
好ましくは、後縁に対して垂直に切り取った突起の中央断面は、吸い込み側面と滑らかに接続する半波状である。
【0010】
一実施形態では、前記中央断面に対して垂直に切り取った前記突起の別の断面は、両側減衰波を有する中央極値を呈する起伏形状である。すなわち、この断面に見られるように、前記突起は、液体の滴下によって液体の平面に生じる波の形状に似ているが、この波形状は、中心点を中心として円周方向に同形ではない。
【0011】
単なる例として、添付図面を参照して考察された以下の説明から、本発明はより十分に理解され、本発明の他の利点がより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明のブレードを備えたタービンロータのホイールの部分斜視図である。
【
図2】本発明の突起の輪郭を示したブレードの部分断面図である。
【
図3】前記突起の輪郭を示した別の面の部分断面図である。
【
図4】後縁に沿った突起の数および位置を決定する方法のステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、複数のロータブレード11、具体的には、ロータディスク13の周囲から略半径方向に伸びる可動ブレードを示す。通常は、前後で変化する一定の厚さを有する各ブレードは、前縁15と後縁17との間で湾曲している。凹面部または圧力側19は滑らかである。凸面部または吸い込み側21は、後縁17付近で後縁17に沿って分布されている本発明の数個の突起25を除いて、表面の主要部分全体が滑らかである。一般に、このような突起25は、吸い込み側21の面から突起して吸い込み側面と滑らかに接続するほぼ丸いスタッドの形状であるのが好ましい。
【0014】
好ましくは、突起が配置される吸い込み側面に対して垂直である突起の断面の輪郭は、
図2に示されている形状と
図3に示されている形状とで異なる。
【0015】
したがって、
図2に示されるように、後縁17に対して垂直に切り取った前記突起25の中央断面は、吸い込み側21の面と滑らかに接続する単純な半波の形状を呈する。この半波の傾斜は前方に向かうほど浅く、後方に向かうほど急勾配であることを留意すべきである。この断面では、突起は連続して後縁に接続する。
【0016】
一方、同じ突起で前記断面に対して垂直、すなわち、後縁に平行な別の断面を見ると、
図3に示されるように、突起はより複雑な形状、つまり、中央極値27と両側減衰波28とを呈する1つまたは複数の起伏を呈することがわかる。
図3Aの変形例では、突起25の断面は、極値の両側に複数の減衰した起伏を備えることがわかる。上述したように、この断面は、液体の滴下によって静かな液体の平面に生じる波の形状に類似している。突起を「方向転換」すると、断面は、4分の1回転で、連続してこれらの断面の1つから他の断面に変わる。
【0017】
突起の好ましい形状は上述したような形状として、このような突起の位置およびこれらの位置が決定される方法について後述する。
【0018】
図4は、吸い込み側21の面で見たブレード11の突起を位置決めする際の種々の段階を左から右に示した図である。グレーの部分は、後縁付近の吸い込み側の「剥離」ゾーン30を示す。
【0019】
突起が全くなければ、この剥離ゾーン30は、実際に後縁からブレードの高さ全体にまで及び、最大幅は中ほどまでになることがわかる。この形状を分析することで、最大の擾乱ゾーン付近、すなわち、後縁に近いブレードの中ほどに第1の突起25aを配置することができる。この第1のシミュレーション(図示せず)の結果、擾乱の領域を半分の高さに低減されたことがわかるが、半径方向内側端部および半径方向外側端部では擾乱が残ることもわかる。このことから、別の突起25bを後縁の半径方向内側端部付近および/または突起を後縁の半径方向外側端部付近25cに配置することになる。したがって、例として、図示したように3つの突起が設けられる場合は、
図1に見られる実施形態に対応する。このとき、擾乱ゾーンまたは剥離ゾーンの幅は実際にブレードの半径方向高さ全体にわたって低減されるが、それでも、中央突起と外側突起との間に顕著な擾乱ゾーンが残ったままである。
【0020】
本発明に照らして開発された方法を適用して、中央突起25aと外側突起25cとの間で後縁の半径方向外側の3分の1に沿って第4の突起25dを配置することで、この最後の擾乱ゾーンを低減することができることがわかる。