(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記変調された光ビームを前記光学装置に結合して、前記光信号を該光学装置から送り出すためにマルチコア光ファイバーが使用され、該マルチコア光ファイバーの直径が、前記特定の領域の幅と少なくとも同じ大きさであり、該マルチコア光ファイバーは、前記特定の領域に結合されるように前記変調チップの上面に取り付けられる、請求項1または2の光学エンジン。
各々の送信ユニットが、前記導波管に沿って直列に配置された複数の変調器を備え、各変調器が、別個の波長で前記光ビームを変調するように構成されている、請求項1〜5のいずれかの光学エンジン。
各々の送信ユニットが、並列に配置された複数のファブリ・ペロー変調器を備え、前記光ビームが、前記複数のファブリ・ペロー変調器で変調される前に、別個の波長に分割される、請求項1〜5のいずれかの光学エンジン。
【発明を実施するための形態】
【0003】
以下、本発明の例示的な実施形態の詳細な説明を添付の図面を参照して行う。それらの添付の図面は、本発明の一部を構成し、本発明を実施することが可能な例示的な実施形態を示している。当業者が本発明を実施できるように、それらの例示的な実施形態を例示して十分詳細に説明するが、他の実施形態も実現可能であること、及び、本発明の思想及び範囲から逸脱することなく本発明に対して種々の変更を行うことができることは当然のことである。それゆえ、本発明の実施形態についての以下のより詳細な説明は、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を限定することは意図されておらず、説明のためにだけに提示されたものであり、本発明の特徴及び特性を記述し、当業者が本発明を実施することが十分に可能となるようにするためのものであることが意図されている。したがって、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ画定されるべきものである。
【0004】
本発明の以下の詳細の説明及び例示的な実施形態は、添付の図面を参照することによって最良に理解されよう。添付の図面全体を通じて、本発明の構成要素及び特徴部は数字によって示されている。
【0005】
図1ないし
図12には、2つのコンピューティング装置(たとえば、2つのコンピュータチップ)間のポイントツーポイント通信リンク用の光学エンジンに対する本発明の種々の例示的な実施形態が示されている。外部メモリー(またはオフチップメモリ。以下同じ)に迅速にアクセスすることができないこと、もしくは、他の周辺装置と通信することができないことから生じるコンピュータ性能におけるますます悪化するボトルネックを克服するために光学エンジンを使用することができる。この制約は、部分的には、サイズ及び表面積が規定されているコネクタにはめ込むことができる電気ピンの数−この数は、通信用の最大帯域幅を決定する1つの要因である−が物理的に本質的に制限されていることに起因する。したがって、本発明の例示的な1つの用途は、マイクロプロセッサと別個のメモリーチップもしくは装置の間のチップ間光通信またはポイントツーポイント光通信を確立することでありうる。
【0006】
光学エンジンは、削減された製造コストで大幅に改善された性能を提供するコンポーネントの組み合わせである。より詳細に後述するように、光学エンジンは、変調チップに光学的に結合された光源を含むことができる。該光源を、変調チップから離れた位置に配置することができ、かつ、当該技術分野で既知の種々の手段によって変調チップに光学的に結合することができる。該光源は光ビームを生成することができる。少なくとも1つの変調器を変調チップもしくは光学エンジンチップ上に配置することができ、該少なくとも1つの変調器は該光源によって生成された光ビームを変調することができる。該変調器を、リング変調器やマッハ・ツェンダー変調器(但しこれらには限定されない)を含む任意の適切なタイプの変調器とすることができる。たとえば、あるタイプの変調器は、光学エンジンチップもしくは基板の面に平行な面に形成された1つ以上のエバネッセントマイクロリング変調器(evanescent micro-ring modulator)を含むことができる。該変調器は、光ビームを変調して光信号を生成することができる。
【0007】
さらに、導波管(または導波路。以下同じ)を変調チップ上に配置することができ、該導波管は、変調器からの変調された光ビームを、該変調チップの特定の位置もしくは領域(たとえば、該チップの中心または該チップの縁)に導くことができる。該特定の領域は、変調された光ビームを光学装置(または光学デバイス。以下同じ)または電気装置(または電気デバイス。以下同じ)に光学的に結合するための、格子結合器(grating coupler。格子カプラまたはグレーティングカプラともいう)などの1つ以上の面外カプラ(out of plane coupler)を有することができる。光学装置に伝送するためのマルチコア光ファイバーを介して、変調された光ビームを、面外カプラから光学装置もしくは電気装置へと光学的に結合することができる。複数の面外カプラを、比較的小さな特定の領域にグループ化して(または集めて)配置することができる。面外カプラは、LEDやレーザーなどの光信号発生器よりもサイズが小さい。これによって、それらの面外カプラを小さな領域においてグループ化することができる。複数の変調された光信号を、複数の面外カプラを使用して、マルチコアファイバーやファイバーリボンなどの単一の光導波管、または、中空の金属導波管に結合することができる。
【0008】
光子検出器を、光学装置もしくはコンピューティング装置から一斉に送られてきた光信号を受信するために上記特定の領域に設けることもできる。光子光信号検出器または光検出器は、一般に、光信号発生器(すなわち、レーザー、LEDなど)よりも複雑ではないので、光子検出器を上記特定の領域に配置して、マルチコア光ファイバーを通って移動する入力信号を直接受信することができ、または、該光子検出器を、チップの表面上に分布させて、格子結合パッドまたはテーパー型(または先細り型)導波管で該マルチコア光ファイバーに同様に結合することができる。
【0009】
本発明の光学エンジンは、コンピュータ設計者が今日直面している、チップ当たり数千の電気ピンというおおよその上限値に由来する「ピン配列ボトルネック」を解決するのに役立ちうる。これらの電気ピンのいくつかは、CPU−メモリー間トラフィック、または、ポイントツーポイントリンクに適する場合がある他の二次的な通信のために使用される。2つのコンピューティング装置間に直接の光学的結合を提供し、及び、CPU−メモリー間通信または二次的通信を個別のマルチチャンネルポイントツーポイント光リンクで行うことによって、多数の入力/出力ピンを他の用途に再割り当てすることができ、これによって、ほかの内部コンピュータ処理に利用可能な帯域幅が大幅に増加する。
【0010】
本発明は、伝統的な有線コネクタと光ファイバー通信技術における最近の進歩との両方を含む従来技術に対してさらなる利点を提供する。1つの利点は、製造コストがより低いことである。これは、光検出器、導波管、及び光結合器(オプティカルカプラまたは光カプラ。以下同じ)を含む、光学エンジンの各コンポーネントを、費用対効果の良い、VLSI(超大規模集積回路)製造技術などの大量製造プロセスを用いて製造できるからである。
【0011】
従来技術に対する本発明の際だった1つの利点は、変調チップから離れた位置で光ビームを生成する能力である。これによって、様々なタイプのレーザーを使用可能になる。しばしば、レーザーや他の光源の動作温度範囲はかなり制限されている。環境によっては、変調チップをプロセッサなどの熱を発生するコンピューティングコンポーネント(コンピュータなどの構成要素)の近くに配置することが必要である。これによって、レーザーはその最適な性能を発揮できなくなる。変調器は、しばしば、レーザーよりも広い温度範囲で動作可能である。したがって、プロセッサの温度が変調器の動作にとって許容可能な範囲内にある間、レーザーを温度がより適切な場所に移動させることが有利である。レーザーまたは他の光源は、光ファイバーケーブル、大きな中空コア金属導波管、自由空間、または、他の光伝送装置を介して変調チップに伝送される光ビームを生成することができる。光ビームを、当該技術分野で既知の様々な異なるコンポーネントのうちの任意のものを使用して変調チップに結合することができる。そのようないくつかのコンポーネントは、格子結合器、テーパー型結合器(先細り型結合器またはテーパー型カプラともいう)、またはエッジ結合器(エッジカプラともいう)を含むことができる。
【0012】
レーザーなどの光源を変調チップから離れた場所に配置できること、及び、光信号を特定の領域に導き及び該特定の領域から導くための導波管と共に、変調器及び/または光検出器を光学エンジンチップの表面上に分布させることができ、これによって、多くの光信号を
、単一のマルチコア光ファイバー中に結合するように構成可能な小さなフットプリントに集めて配列できることは、本発明の1つの利点である。したがって、従来技術の光システムでは、検出器を有する別個のチップが、到来する信号を受信して二重通信リンクを確立することが必要になりうる。これとは対照的に、本発明のコンポーネントの各々を、シリコンベースまたはIII-V族の半導体材料を用いて製造することができ、これによって、マイクロリング変調器、受信用光検出器、及び、それらに関連するコンポーネントを同じチップ内に組み込むことが可能になる。代替の実施形態では、変調器及び光検出器を、シリコン(ケイ素)、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、または、それらの材料の組み合わせから作製することができる。
【0013】
本発明は、コンピュータの設計者及び技術者にとって魅力的でありうるさらなる利点を提供する。たとえば、2つのコンピュータ装置間の全てのポイントツーポイントトラフィックを
、単一のマルチコア光ファイバーで対処することができ、それらのファイバーを、光結合器に能動的にまたは受動的に位置合わせすることがき、及び、実績のある接着材料及び接着方法を用いて光学エンジンの特定の領域に取り付けることができる。さらに、本発明は、光学エンジンをコンピューティング装置に直接組み込むという利便性及び柔軟性、または、後続のコンピューティング装置へのウェーハマウントのために該光学エンジンを別個のチップ上に作製するという利便性及び柔軟性を提供する。
【0014】
上記の利点及び改良点の各々は、添付の図面を参照してなされている下記の詳細な説明に照らして明らかであろう。これらの利点は、何らかの限定を意図するものではない。実際に、当業者には、本発明を実施する際に、本明細書に具体的に記載したもの以外の利益及び利点を達成できることが理解されよう。
【0015】
図1には、本発明の例示的な1実施形態にしたがう送信基本ユニット(送信ベースユニットともいう)11が示されている。該ユニット11を、第1のコンピューティング装置(不図示)によって変調された光信号を生成するために、及び、該光信号をマルチコア光ファイバー中に結合して、第2のコンピューティング装置に伝送するために使用することが可能である。送信基本ユニットは、光ビームを発生するためのレーザーや発光ダイオードなどの光源24を備えることができる。光源を、変調チップ6とは別の場所(すなわち離れた場所)に配置して、該変調チップに光学的に結合することができる。1つの例示的な実施形態では、光源は、光ファイバー26によって変調チップに光学的に結合される。光ビームを該光源によって生成することができ、該光ビームは光ファイバーを通って伝送することができ、該光ビームを、格子結合器、テーパー型結合器、またはエッジ結合器(但し、これらには限定されない)などの種々のタイプの光結合器28によって変調チップに結合することができる。光結合器28を、任意の種々の標準的な結合器、エバネッセントカプラ、または、ピグテールカプラ(pigtail coupler)とすることができる。
【0016】
光ビームが変調チップ6に結合されると、該光ビームを変調器21によって変調することができる。変調器を、変調チップ上に配置することがき、かつ、光源24によって生成された光ビームを変調するように構成することができる。該変調器は、当該技術分野で既知の種々のタイプの変調器のうちの任意のものとすることができる。いくつかの検討されている変調器の例には、マイクロリング変調器、マッハ・ツェンダー変調器、アレキサンダー変調器(Alexander modulator)、または、吸収(型)変調器(absorption modulator)が含まれる。図面、並びに本明細書の説明のほとんどがマイクロリング変調器を使用することに向けられているが、光ビームを変調するための任意の適切なタイプの変調器を、本発明の光ビームを変調するために使用可能である。
【0017】
導波管30も変調チップ6上に配置されており、該導波管は、変調された光ビームを、変調器21から、変調チップの特定の領域(たとえば、予め画定された領域。以下同じ)にグループ化して配置された複数の面外カプラ40のうちの少なくとも1つへと導くように構成されている。導波管構造を、当業者には既知の複数の構成のうちの任意の構成をなすように形成することができる。1実施形態では、導波管を、シリコンオンインシュレータ導波管(Silicon-on-Insulator waveguide)とすることができる。代わりに、ポリマー導波管(polymer waveguide)を使用することもできる。
【0018】
1つの側面では、光ビームは、変調器に到達する前に導波管に沿って進み、次に、変調された光ビームすなわち光信号として該導波管に沿って進行を続けることができる。別の側面では、光ビームは、第1の導波管に沿って変調器まで進み、次に、第2の導波管に沿って該変調器から該特定の領域まで進むことができる。別の側面では、光ビームが変調チップに結合されているときに変調器によって該光ビームを変調し、これによって、該光ビームが、変調されるまでは導波管を通過しないようにすることができる。
【0019】
導波管30の端部には、複数の面外カプラ40がグループ化されて配置されている特定の領域48がある。1つの側面では、面外カプラを格子結合器とすることができる。変調された光ビームすなわち光信号は、導波管30内を変調チップ6の平面に平行に面外カプラまで進むことができる。面外カプラは、次に、光ビームが、変調チップの面外(すなわち、変調チップの面に非平行な方向)に進むように該光ビームの進行方向を変える。複数の光ビームを複数の変調器によって変調することができ、該光ビームは、特定の領域のそれぞれの面外カプラまで進むことができることが想定されている。ここで、それら全ての面外カプラはグループ化されて、該特定の領域内に配置されるように構成されている。1つの実施形態では、マルチコア光ファイバーの1つの端部は、変調チップに結合されているときには該特定の領域を覆うことができる。
【0020】
変調チップ6が複数の導波管30を含む実施形態では、単一の光源24は光ビームを生成することができ、該光ビームは、分割されて導波管の各々へと伝送される。該ビームを変調チップ上のスプリッターで分割することができ、または、(
図1に示すように変調チップの前で)事前に分割することができる。代わりに、複数の光源を用いて、その各々が光ビームを生成して1つ以上の導波管の各々に光ビームを送るようにすることができる。単一の光源が、複数の変調チップで使用される光ビームを生成できることも想定されている。代わりに、複数の光源の各々が光ビームを生成して、少なくとも1つの変調チップの各々に向けて送るようにすることができる。
【0021】
図2は、
図1の装置に多くの点で類似している装置11を示している。
図1が各導波管30に関連付けられた単一の変調器21を示しているのに対して、
図2の装置は、複数の変調器(今の例ではリング変調器20)が各導波管30に関連付けられている実施形態を示している。光信号をリング変調器にエバネッセント結合できるようにするために、リング変調器を導波管の十分近くに配置することができる。図示のリング変調器の各々のサイズが異なっていることに留意されたい。リング変調器は、光ビームの特定の波長を変調するように動作可能である。リング変調器によって変調された波長はリング変調器のサイズ(大きさ)と相互に関連している。リング変調器は、特定の波長で共振するように設計されている。光源24によって生成された光ビームは、リング変調器によって変調することが可能な複数の周波数に関連する複数の波長を含むことができる。リング変調器の各々は、導波管からの共振周波数に有効に結合することができる。リング変調器の共振を電子的に制御することができ、これによって、光の結合を所望の速さ(または周波数)でオン/オフすることが可能になる。リング変調器を用いて、1GHzより速い速さ(または1GHzより高い周波数)(10GHzよりも速い場合もある)で選択された波長を変調することができ、これによって、ギガビットの速さでデータを送信することが可能になる。
【0022】
任意の数の変調器を直列形態で使用することができるが、周波数を特定の順番で変調する必要はない。
図2に示すように、変調チップは任意の種々の変調器を有することができる。たとえば、Aには、周波数を変調するための一連のリング変調器が無作為の順番で配置されている。Bには、一連のリング変調器が、一番大きなものから一番小さなものへの順番で左から右に向かって配置されている。Cには、一連のリング変調器が、Bに示すのと同様の順番で配置されているが、Cにおける一連のリング変調器中の変調器の数はより少ない。理解されるように、変調器の順番、数、及びタイプを、特定の用途の要件に適合するように変更し、及び、選択的に決定することができる。
【0023】
図3には、本発明の例示的な1実施形態にしたがう送信基本ユニット10が示されている。該ユニット10を用いて、光信号を生成し、及び、該光信号を第2のコンピューティング装置に伝送するために該光信号をマルチコア光ファイバー中に結合することができる。光源24を用いて、たとえば光ファイバー26を介して送信基本ユニットに結合される光信号を生成することができる。テーパー型結合器28を用いて、該光信号を導波管30に結合することができる。リング変調器を用いて光信号の選択された波長を変調して、変調された光信号12を形成することができる。送信基本ユニット中のコンポーネントの各々を、既知の大量(たとえばVLSI)製造技術を用いて、シリコンベースのチップ基板2の上部に形成された1つ以上の下に広がる(すなわち下に横たわる)ベース層(複数の場合あり)4上に作製することができる。
図3では、送信基本ユニットのコンポーネントが、ベース層(複数の場合あり)4及び基板2の上に広がる(すなわちそれらの上に横たわる)変調チップ6の単一の光学エンジン層中に形成されるものとして示されているが、当業者には、種々の基本ユニットのコンポーネント、特にマイクロリング変調器20を、異なる材料から形成された種々の副層(サブレイヤ)から作製することができることが理解されよう。たとえば、マイクロリング変調器を、下部クラッディング(under-cladding)、マイクロリング共振器及び導波管などを形成するために使用される7つ以上の異なる層から作製することができる。
【0024】
図示のように、送信基本ユニットの光源以外のコンポーネントを、光学エンジン層6内に埋め込むことができること、または、該層の上部の上に延在するように形成して空間(または空きスペース)もしくは透明な保護コーティングによって囲まれるようにすることができることがさらに理解されよう。下に広がるベース層(複数の場合あり)4において、光学エンジンと駆動コンピューティング装置との間に電気的接続を設けることができる。
【0025】
本発明のフレキシビリティの別の側面は、マイクロリングレーザーを単一モード動作とマルチモード動作の両方で動作するように構成できることである。たとえば、例示的な1実施形態では、本発明の光学エンジンを、1310nmまたは1550nmの波長を中心とする単一モード動作用に構成することができる。
【0026】
単一モード動作及びマルチモード動作の両方の動作用に構成可能であることを含む、マイクロリングレーザー20の動作及び機能については、「System and Method For Micro-ring Laser」と題する、2008年5月6日に出願された、本願と出願人が同じで同時係属中のPCT特許出願No. PCT/US081/62791においてより具体的に説明されている。該PCT出願の内容全体は参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0027】
図3に示す実施形態では、マイクロリング変調器20を用いて、光導波管30によって伝送される光ビーム12の波長を変調することができる。導波管30は、変調された光信号12を面外カプラすなわち面外送信光導波管結合器40へと伝送する。複数の送信基本ユニット10を単一のチップ上に形成することができるので、マイクロリングレーザーと導波管結合器との間の距離は比較的短く、ほぼ100μm以下であるが、このことは、光信号が固体のシリコン導波管を通って進むときの該光信号の損失または減衰を最小限に留めるのに役立つ。例示的な1実施形態では、導波管30は、約0.5μm×0.5μmの大きさの正方形または長方形の断面を有することができる。
【0028】
面外送信光結合器40を用いて、出力された光信号を下に広がっている基板2の面の面外(すなわち、基板2の面に非平行な方向。
図3の例では、基板2の面に概ね垂直な方向)に向けて送る。銀メッキされた鏡、ビームスプリッター、光学格子(optical grating。または光回折格子)パッドなどの種々のタイプの光結合装置(光結合デバイス)を用いて、光ビームを面外に向けて送ることができる。例示的な1実施形態では、光信号を、基板の面にほぼ垂直すなわち90°の方向に向けて送ることができるが、光ビームをマルチコア光ファイバー中に結合するために、該光ビームを約30°以上の角度の方向に向けて送ることも、本発明の範囲内のものであることが理解されよう。
【0029】
出力光信号12を基板の面の面外に結合するための低コストであるが高効率の装置(デバイス)の1つは、格子パッド結合器(grating pad coupler。格子パッドカプラ)42でありうる。格子パッド結合器は、一般に、光導波管30の拡張された部分すなわちパッド44を備え、該パッドは、該導波管と同じかまたは異なる材料から作製されることができ、及び、該導波管に一体化されてまたは該導波管とは別個に形成されることができる。パッド44は、その厚みよりもはるかに大きな幅を有することができる。スロット46の格子パターンを、格子パッド結合器の上面にエッチングしまたはその他の方法で形成することができ、該格子パターンは、格子パッド結合器の本体内部に向かって下方に延在することができる。格子結合器は、光回折の原理に基づいて動作することができ、光信号が、パッド材料を通って進むときに単一のスロットに接触すると、該光信号は、透過成分、反射成分、及び、面外成分を含むいくつかの成分に分割される。正確に寸法決めされて、格子パッドの上面に沿って隔置された複数のスロットを用いることによって、光ビームの大部分が、導波管の面の面外を通って進む透過光信号14となるように該光ビームの進路を向け直すことができる。
【0030】
基板2の面の面外に光信号12を向け直すことにおける格子結合器の効率を、光ビームの波長に対する格子スロットの寸法及び間隔を制御することによって最適化することができる。したがって、格子結合器を、マイクロリングレーザーによって放出されたレーザー光の中心波長に対して調整または最適化することができる。これら2つの装置を共に接続する導波管についても同様である。送信基本ユニット全体を、マイクロリングレーザーによって生成された光の波長−たとえば、上述の1310nmまたは1550nmの波長−に対して調整することによって、各コンポーネントを通って進む光信号の損失を最小化すると同時に該基本ユニットの出力を最大にすることができ、これによって、所要電力がより少ない光学エンジンを得ることができる。
【0031】
図4には、本発明の例示的な1実施形態にしたがう受信基本ユニット(または受信ベースユニット)60が示されている。受信基本ユニットは、送信基本ユニットと同様に構成されており、受信側面外光結合器70、及び光学装置に通じる導波管80を備えている。受信ユニットの場合は、受信された光信号18は、逆方向に進む(すなわち、面外光結合器から光学装置に向かって進む)。光学装置を、光検出器90などの光子光信号検出器とすることができる。
【0032】
受信光結合器70を用いて、基板2の面の面外を進んで到来した光ビームすなわち入力光信号16の進行方向を変えて、導波管80を通って基板2の面に平行に進む受信光信号18にすることができる。受信光結合器70を、送信光結合器と実質的に同じとすることができ、該受信光結合器70は、さらに、銀メッキされた鏡、ビームスプリッター、光格子パッドなどを含む種々のタイプの光結合装置を含むことができる。
【0033】
図4に示す例示的な実施形態では、受信光結合器70を、送信基本ユニットで使用されている格子パッド結合器と実質的に同じである格子パッド結合器72とすることができる。これには2つの理由がある。1つの理由は、格子結合器は、いずれの方向に光の進路を変更する場合でも効率が同じでありうることである。もう1つの理由は、より詳細に後述するように、光の特定の波長に対して最適化された同じ光学エンジンがしばしば二つ一組で使用される場合があり、この場合、一方のエンジンの受信部分は、他方の送信部分によって生成された光ビームを受け取って伝送するために調整されているということである。したがって、受信基本ユニット60に配置された格子パッド結合器72を、最初に送信基本ユニットで生成されて該送信基本ユニットから送信されてきた入力光信号16を受信するように構成することができ、この場合、送信基本ユニットは該入力光信号の光と同じ波長に対して最適化されており、それら2つのユニット間で格子結合器を実質的に同じものとすることができる。
【0034】
入力光信号16が格子結合器72によって捕捉されて受信基本ユニットに結合されると、受信された光信号18を、導波管80に沿って光検出器90まで伝送することができる。光検出器は、ゲルマニウムの層、シリコンゲルマニウム、または、III-V属の材料、p-i-nもしくはショットキーダイオード、フォトトランジスタなどの種々のタイプの光検出素子を含むことができる。しかしながら、例示的な1実施形態では、光学エンジンの作製を容易にするために、光検出器を、マイクロリング変調器またはマイクロリングレーザーと同じIII-V族の半導体材料から形成することができる。
【0035】
今度は、
図5及び
図6を参照する。光学エンジンの例示的な実施形態100が図示されているが、該光学エンジンは、単一チップ106上に複数の送信基本ユニット110及び受信基本ユニット160を組み合わせて、光学装置間の全二重動作を可能にしている。5つの複数の送信基本ユニット110の各々はさらに、個別の変調器120、導波管130、及び、送信側格子結合器140を備えており、該5つの送信基本ユニット110を、それらの変調器が周辺部に向かって分布し、かつ、格子結合器が中心位置もしく特定の領域108内に集合配置(集結)されるようにチップ上に配列することができる。上述したように、送信基本ユニットの各々はさらに、個別の光源もしくは共通の光源124、及び、結合器128によって光学エンジンに結合される個別の光ファイバー126を備えることができる。5つの複数の受信基本ユニット160の各々はさらに、受信側格子結合器170、導波管180、及び光検出器190を備えることができ、該5つの受信基本ユニット160を、送信基本ユニットの場合と同様に、それらの光検出器が周辺部に向かって分布し、かつ、受信側格子結合器170が同じ集約化された特定の領域108内に集合し、かつ、送信側格子結合器140に隣接するように、チップ上に配列することができる。
【0036】
図5は、チップまたは基板106の面に平行な面内で動作する送信基本ユニット110及び受信基本ユニット160によって提供される利点を示している。この「水平」の向きによって、レーザー自体を特定の領域108に配置するという従来技術の制限が除去され、及び、多数の変調器120及び光検出器190を光学エンジン基板106の表面上に分布させる一方で、比較的狭い導波管130、180を用いて、特定の位置に集合配置されている格子結合器140、170に向けて光信号を効率的に転送しまたは導くことが可能になる。
図5は、特定の位置に形成された10個の格子結合器を有する例示的な1実施形態を示しているが、格子結合器140、170の小さなフットプリント及びシリコン導波管130、180の狭い幅によって、該特定の領域を少なくとも30以上の光チャンネル用に構成することが可能であることが理解されよう。さらに、チップ外(オフチップ)の光源を使用することによって、複数の異なるタイプの光信号を生成して、光学エンジンの複数の光チャンネルに結合することができる。たとえば、発光ダイオード、シングル(単一)モードレーザー、マルチモードレーザー、高密度波長分割多重用の複数波長周波数コム出力(multiple wavelength frequency comboutput)を生成するように動作可能なモードロックレーザーなどを含む1つ以上の光源を使用することができる。シングルモード光信号を伝送するチャンネルは単一の変調器を有することができ、周波数コム信号を伝送するチャンネルは、図示のリング変調器120などの変調器を複数個(場合によっては10個も)備えることができる。前述したように、チップ外の光源を使用することによって、光学エンジンを比較的高温の場所で使用すること(たとえば、チップに搭載した状態で使用すること)も可能になる。レーザーなどの光源は一般的には高温の場所では良好に機能しない。
【0037】
図6には、光学エンジンの代替実施形態102が示されており、該実施形態では、光検出器自体を、該特定の領域に配置して、第2のチップ外ソース(オフチップソース)から送信された1つ以上の光信号を直接受信できるようにしている。第2のチップ外ソースを、メモリーチップ、処理チップ、変調チップ、第2の信号源などとすることができる。送信された信号を、マルチコア光ファイバーなどの光導波管を通じて光学エンジンに結合することによって、該送信された信号(複数の場合あり)を特定の領域108まで伝達することが可能になる。次に、該送信された信号を光検出器190で直接受信することができる。光検出器は一般に、光信号発生器(すなわち、レーザー、LEDなど)よりも(構造が)単純であり、該光検出器を、基板106の面に平行な光信号または該面の面外に進む光信号を受信するように構成することができる。前述した実施形態における受信基本ユニットを光検出器190だけで置き換えて、該光検出器を、特定の領域108の内側の受信側格子結合器と概ね同じ位置に配置することができる。この実施形態は、光学エンジンチップの作製を単純にしてコストを下げることができ、及び、チップの表面積のより多くを送信基本ユニットの実装に割り当てることを可能にする。
【0038】
図6に示すように、送信側格子結合器140及び光検出器190を中心位置または特定の領域108内に配置することは典型例に過ぎず、図示の横並びの構成には限定されない。当業者には、送信基本ユニット110と光検出器190を再配置して、特定の領域108の内部の光学エンジンチップ106の表面上に種々の配列で混在させて、コンポーネントの分布、マルチコア光ファイバーへの見通し線、及び、下部に広がるベース層(複数の場合あり)中に形成される電気経路を最適化できることが理解されよう。
【0039】
図7は、シングルモードまたはマルチモードのマルチコア光ファイバー150などのチップ外の導波管(オフチップ導波管)に結合された光学エンジン100を示す。該チップ外の導波管は、特定の領域108に光信号を伝達し、及び該特定の領域108からの光信号を伝達するように構成された光導波管である。たとえば、該チップ外の導波管を、本発明の例示的な1実施形態にしたがう、フォトニック結晶ファイバーとすることができる。マルチコア光ファイバーは、該マルチコア光ファイバーの長さ全体にわたって延びる複数の光学コアを囲む外部層すなわち外装152を備えることができる。これらのコアは、固体、気体、液体または空隙(または真空)から形成された実質的に透明な材料を有することができ、これによって、光信号が該コアを通って伝搬できるようにしている。さらに、コア154は、均一な断面を有することができ、該コア154を、ファイバー150の長さに沿って互いから隔置する(たとえば隣接するコア間の距離が均等になるように隔置する)ことができる。マルチコア光ファイバーの光学コアの構成を、チップ外のレーザー(オフチップレーザー)によって生成された光信号のタイプに適合させる(またはそれと互換性があるものとする)ことができ、それゆえ、シングルモード動作またはマルチモード動作用に構成できることがさらに理解されよう。
【0040】
マルチコア光ファイバー150は、光学エンジンチップ106の中心位置または特定の領域108に結合するための近傍端部156、及び、1つ以上の受動性の光学装置、能動性の光学装置、追加の光学エンジンなどに結合するための遠方端部158を有することができる。光学コア154が、特定の領域108内に配置されている面外光結合器140、170と整列するように、近傍端部156を、光学エンジンチップ106の特定の領域108に結合することができる。ファイバー150の近傍端部156を、適切な接着剤、取り付け方法、または、取り付け構造を用いて光学エンジンチップ106の上面に取り付けることもできる。
【0041】
面外光結合器140、170との光学コア154の整列(または位置合わせ)は、受動的な方法または自己整列法を用いて、及び/または、ファイバーをチップに結合する際に
、マルチコア光ファイバー150を通る1つ以上の光信号の強度をモニタする能動的な方法を用いて、達成することができる。マルチコア光ファイバーを光学エンジンに整列させて結合するための種々の態様及び方法についての詳細は、本願と出願人が同じであり、2008年10月20日に出願された「Method for Connecting Multicore Fibers toOptical Devices」と題する同時係属中の米国特許出願第12/254490において具体的に説明されている。該米国出願の全内容は参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0042】
図8aには、中央処理装置210及び個別のメモリーチップ220などの第1及び第2のコンピューティング装置に直接組み込まれている光学エンジン間のポイントツーポイント光通信リンク200が示されている。この例示的な実施形態では、光学エンジン240を、作製中にコンピューティング装置210、220の回路に直接組み込み、次に、両方の光学エンジンの特定の領域に結合されて整列しているマルチコア光ファイバー250に接続することができる。光源は、各々が光ビームを個別の導波管に伝送するための複数の光ファイバーに該光ビームを提供することができ、または、単一の光ファイバーが、光ビームを光学エンジンに伝送することができ、この場合、スプリッター230が、光学エンジン上の個別の送信用導波管の各々へとビームを分割することに留意されたい。
【0043】
図8bはさらに、本発明の別の側面を示しており、個別の光学エンジンチップ260が、2つの隣接するコンピューティング装置210、220にウェーハマウントされ、次に、マルチコア光ファイバー250に結合されてポイントツーポイント光通信リンク202を形成している。光学エンジンを、後でコンピューティング装置に取り付けられる個別のチップ260上に形成することによって、該チップを作製する際に使用される製造プロセスをより良好に制御することが可能になり、及び、製造コストの低減に関するスケールメリットをもたらすことができる。個別の光学エンジンチップ260はまた、光学エンジンが搭載されているコンピューティング装置とは実質的に無関係な通信プロトコルの作成を可能にする。ここで、いくつかの実施形態では、単一の光源またはレーザーを複数の光学エンジンチップに光学的に結合することができることにも留意されたい。図示のように、光学エンジンチップ上のスプリッター230で光源ビーム(光源からのビーム)を分割することができる。代替として、前述したように、個別の光ファイバーが、光ビームを、光学エンジンチップの各々にある送信用導波管の各々へと伝送することができる。
【0044】
図9及び
図10は共に、光学エンジンチップ300間に形成されたポイントツーポイント光リンク302の別の例示的な実施形態を示しており、該光学エンジンは、第1のコンピューティング装置306と第2のコンピューティング装置308にウェーハマウントすることができるものである。この実施形態では、光学エンジンチップ300に形成された送信基本ユニット310及び受信基本ユニット360の両方を、前述の実施形態で説明されたチップの中央に向かう方向ではなく、該チップのエッジ314に向かう方向に向けることができる。送信基本ユニット310では、出力光ビームを、チップ外のレーザーで生成して、変調のためにマイクロリング変調器320に伝送し、及び、出力導波管330中をチップまたは基板のエッジ314のまわりに設けられた特定の領域318に向けて伝送し、これによって、導波管330に整列させ(すなわち、位置合わせし)、かつ、基板の面に平行な方向に向けることができる光ファイバーリボン350に結合することができる。しかしながら、光信号がエッジに到達する前に、該光信号のモードを、光ファイバーリボンを形成する個々の光ファイバー354の基本モードに変換する導波管のテーパー部(先細りになっている部分)340を、該光信号が通過するようにすることができる。
【0045】
光ファイバーリボン350は、他方のコンピューティング装置308(
図10参照)に搭載された同様の光学エンジンチップ300の受信部分に出力信号を伝送することができる。そして、逆の二重(双方向)通信形態において、第2の光学エンジンチップに結合されたチップ外のレーザーを用いて、光信号を該第2の光学エンジンに送ることができ、この場合、所望の形式の変調を行うことができ、変調された信号を、光ファイバーリボン350を介して、第1のコンピューティング装置306に搭載された光学エンジンチップへと送り、導波管のテーパー部370(
図9参照)を介して、受信側光検出器390に入力光信号を伝送することができる入力導波管380で受信することができる。
【0046】
図11は、例示的な1実施形態にしたがう、第1のコンピューティング装置と第2のコンピューティング装置の間でポイントツーポイント通信情報を伝送するための方法400を示すフローチャートである。この方法は、光ビームを生成するように構成された光源を提供する処理(410)であって、該光源が、変調チップとは別の場所(すなわち、変調チップから離れた場所)に配置されることからなる処理と、該光源を変調チップに光学的に結合する処理(420)を含む。この方法はさらに、変調チップ上に配置された変調器を用いて該光ビームを変調する処理(430)と、その後、変調チップの面に平行な変調された光ビームを、該変調器から、該変調チップ上に配置された光導波路を通して、複数の面外カプラを有する変調チップの特定の領域に導く処理(440)を含む。次に、少なくとも1つの面外カプラによって(あるいは少なくとも1つの面外カプラにおいて)、変調された光ビームの進行方向を、変調チップの面に平行な向きから、変調チップの該面の面外に向かう向きへと向け直すこと(450)ができる。
【0047】
この方法はさらに、以下のうちの1つ以上の追加のステップを含むことができる。
i)該特定の領域に配置された検出器で光信号を検出するステップ、
ii)変調前に光ビームを分割し、変調後に該光ビームを(再)結合するステップ、
iii)複数のマイクロリングレーザー変調器を用いて該光ビームの複数の周波数を変調するステップ、
iv)変調された光ビームをマルチコア光ファイバーに結合するステップであって、該マルチコア光ファイバーは、変調された光ビームを光学装置または電子装置に送信するように構成される、ステップ。
【0048】
いくつかの実施形態では、フォトニック結晶共振器(photonic crystal resonator)を用いて光ビームを変調することができる。
図12には、ナノキャビティファブリ・ペロー変調器(nano-cavity Fabry-Perot modulator)500が示されている。この変調器は、活性媒体(活性領域)540の外側に少なくとも1つの分布ブラッグ反射器(Distributed Bragg Reflector:DBR)530を有して構成されている。DBRは、周期構造におけるブラッグ反射に基づく、ブラッグミラー、すなわち、光反射デバイス(ミラー)である。この変調器は、波長依存性のフィードバックを提供して放射波長を画定する導波(管)構造520、560を含む。導波管520を受動性のものとして、入力光ビーム510を受光するように構成することができる。もう1つの導波管560を活性領域540の反対側に配置して、出力光信号570を伝送するのに利用することができる。光導波管のある部分は変調媒体(活性領域)540として作用し、共振器の他方の端部は、もう一方のDBR550を有することができる。いくつかの実施形態では、DBRを、波長を調整(または可変)できるものとすることができる。変調器の自由スペクトル領域(free spectral range)内のチューニング(同調または調整)を、別個のフェーズセクション(別個の処理/機能部)で行うことができるが、該変調器(または活性領域)を電気的に加熱することによって、または、単に、駆動電流を用いて活性領域の温度を変化させることによって、該変調器をチューニング(同調または調整)することができる。装置(またはデバイス)全体の温度が変化する場合には、波長応答は、通常の単一モードレーザーダイオードの場合よりもはるかに小さい。なぜなら、格子の反射帯域のシフト量は利得が最大の場合よりも小さいからである。電気光学チューニング、または、プラズマ分散効果によるチューニングを行うこともできる。ブラッグ格子(Bragg grating)と利得構造の連携したチューニングによって、より広い波長領域にわたるモードホップフリーチューニング(mode-hop free tuning)が可能である。
【0049】
図13は、上述したような複数のファブリー・ペロー変調器600を並列に使用した構成610を示す。光ビーム入力620は複数の波長を有する。該複数の波長入力を、周波数コム信号、高密度波長分割多重(DWDM)信号、または、LEDなどの広帯域光源とすることができる。光源に依存して、変調器の自由スペクトル領域(free spectral range)を、周波数コム信号間の間隔、DWDM信号間の間隔、または、デマルチプレックス(DEMUX630)及びマルチプレックス(MUX640)のチャネル間隔に適合するように設計することができる。これよって、変調器アレイ内で同一の変調器を使用することが可能になる。MUXは、オプションであって、チップのアーキテクチャに依存する。DEMUX630において、複数の波長入力620を、2つ以上の波長650、660、及び670にデマルチプレックス(逆多重化)または分割することができる。次に、波長がそれぞれ異なる光ビーム650、660、670を、
図12に関して上述したのと同様のやり方で変調することができる。次に、MUX640において、これらの波長が異なる光ビームまたは光信号を、マルチプレックス(多重化)または結合して、単一の多波長出力光信号680を形成することができる。
【0050】
上記の詳細な説明では、特定の例示的な実施形態を参照して本発明を説明した。しかしながら、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲から逸脱することなく種々の改良及び変更を行うことができることが理解されよう。詳細な説明及び添付の図面は、限定ではなく単なる例示であるとみなされるべきであって、全てのそのような改良または変更は(それらが存在する場合には)、本明細書及び図面に記載され説明されている本発明の範囲内のものであることが意図されている。
【0051】
より具体的には、本発明の例示的な実施形態を本明細書において説明したが、本発明は、それらの実施形態に限定されるものではなく、上記の詳細な説明に基づいて当業者が理解するであろう改良、省略、(たとえば、種々の実施形態全体の側面の)組み合わせ、適合化及び/または改変がなされたありとあらゆる実施形態を含む。特許請求の範囲における限定は、特許請求の範囲で使用されている用語に基づいて広義に解釈されるべきであって、上記の詳細な説明に記載された例に限定されるべきではない。すなわち、本願及び本発明が効力を生じている間は、それらの例は排他的なものではないと解釈されるべきである。たとえば、本開示において、「好ましくは」という用語は非排他的意味を有しており、「好ましいが、それに限定されない」ことを意味することが意図されている。任意の方法クレームまたはプロセス(処理)クレームに記載された任意のステップ(行程)を、任意の順番で実行することができ、それらのステップは、特許請求の範囲において提示された順番には限定されない。