特許第5710508号(P5710508)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5710508有機リン化合物、該化合物を含む触媒系及び該触媒を使用するヒドロシアン化又はヒドロホルミル化方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5710508
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】有機リン化合物、該化合物を含む触媒系及び該触媒を使用するヒドロシアン化又はヒドロホルミル化方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/6571 20060101AFI20150409BHJP
   C07F 15/00 20060101ALI20150409BHJP
   C07C 45/50 20060101ALI20150409BHJP
   C07C 47/02 20060101ALI20150409BHJP
   C07C 253/10 20060101ALI20150409BHJP
   C07C 255/04 20060101ALI20150409BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20150409BHJP
【FI】
   C07F9/6571CSP
   C07F15/00 B
   C07C45/50
   C07C47/02
   C07C253/10
   C07C255/04
   !C07B61/00 300
【請求項の数】14
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2011-553406(P2011-553406)
(86)(22)【出願日】2010年3月5日
(65)【公表番号】特表2012-520255(P2012-520255A)
(43)【公表日】2012年9月6日
(86)【国際出願番号】EP2010052851
(87)【国際公開番号】WO2010102962
(87)【国際公開日】20100916
【審査請求日】2011年10月25日
(31)【優先権主張番号】0951577
(32)【優先日】2009年3月13日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】512299325
【氏名又は名称】インヴィスタ テクノロジーズ エスアエルエル
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100114465
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 健
(74)【代理人】
【識別番号】100174078
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100156915
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 奈月
(72)【発明者】
【氏名】セルジオ・マストロヤンニ
(72)【発明者】
【氏名】イーゴル・ミヘル
(72)【発明者】
【氏名】ポール・プリングル
【審査官】 井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2003/0092935(US,A1)
【文献】 特表2007−516976(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0114714(US,A1)
【文献】 特表2001−520659(JP,A)
【文献】 PUGH R I,PHOSPHA-ADAMANTANES: A NEWS CLASS OF BULKY ALKYL PHOSPHINE LIGANDS,THESIS,2000年 4月 1日
【文献】 VAN LEEUWEN,LIGAND BITE ANGLE EFFECTS IN METAL-CATALYZED C-C BOND FORMATION,CHEM REV [ONLINE],2000年,V100 N8,P2741-2769,URL,http://pubs.acs.org/doi/pdf/10.1021/cr9902704
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 9/6571
C07C 45/50
C07C 47/02
C07C 253/10
C07C 255/04
C07F 15/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の一般式(II)に相当することを特徴とする有機リン化合物:
【化1】
式中、
・R1、R2、R3、R4、R5、R7は、同一のもの又は異なるものであってよく、水素原子、ヘテロ原子を含有していてよい、1〜12個の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキル基、ヘテロ原子を含有していてよい置換又は非置換の芳香族又は脂環式基を有する基、アルコキシカルボニル又はアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトリル基又は1〜12個の炭素原子を有するハロアルキル基を表し、
X1及びX2は、同一のもの又は異なるものであってよく、酸素、窒素、硫黄、又は珪素原子を表し、
・R6は、共有結合、直鎖又は分岐脂肪族基、置換若しくは非置換の芳香族若しくは脂環式環又は結合により互いに縮合若しくは結合した数個の芳香族環を含む基を表し、
・n及びn1は、同一のもの又は異なるものであってよく、それぞれ、元素X1、X2の原子価を2で減じたものに等しい整数である。
【請求項2】
有機ホスフィナイトの群に属し、かつ、次の一般式(IV)に相当することを特徴とする請求項1に記載の化合物:
【化2】
式中、
・R1、R2、R3、R4は、同一のもの又は異なるものであってよく、水素原子、又はヘテロ原子を含有していてよい、1〜12個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキル基を表し、
・R5は、共有結合、直鎖又は分岐脂肪族基、置換若しくは非置換の芳香族若しくは脂環式環又は結合により互いに縮合若しくは結合した数個の芳香族環を含む基を表す。
【請求項3】
次式を有する化合物よりなる群から選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の化合物:
【化3】
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の有機リン化合物と錯体を形成する金属元素を含む触媒系であって、該錯体が次の一般式(V)又は(VI)に相当することを特徴とする触媒系
M[Lf]t(V)
HM[Lf]t+nCO4-n(VI)
式中、
Mは遷移金属であり、
Lfは、式(II)又は(IV)の少なくとも1個の有機リン配位子を表し、tは1〜10の数を表し、
nは1〜4の数を表す。
【請求項5】
前記金属元素Mがニッケル、コバルト、鉄、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金、銅、銀、金、亜鉛、カドミウム、水銀よりなる群から選択される、請求項4に記載の触媒系。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の触媒系の存在下に液体媒体中でシアン化水素と反応させることにより少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する炭化水素化合物をヒドロシアン化させる方法であって、前記金属元素がニッケルであることを特徴とする方法。
【請求項7】
前記少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する有機化合物がジオレフィン、エチレン性不飽和脂肪族ニトリル、モノオレフィン並びにこれらの化合物の数種の混合物から選択されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ニッケル化合物の量は、ヒドロシアン化又は異性化を受ける有機化合物1モル当たり、10-4〜1モルのニッケル又は使用する他の遷移金属となるように選択され、しかも有機リン化合物の使用量は、1モルの遷移金属に対するこれらの化合物のモル数が0.5〜100となるように選択されることを特徴とする、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記エチレン性不飽和化合物がエチレン性不飽和ニトリル化合物であり、しかも前記方法を少なくとも1種の遷移金属化合物と、少なくとも1種の式(II)又は(IV)の化合物と、少なくとも1種のルイス酸からなる共触媒とを含む触媒系の存在下で実施することを特徴とする、請求項6〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記エチレン性不飽和ニトリル化合物が線状ペンテンニトリルを含むエチレン性不飽和脂肪族ニトリルから選択されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
共触媒として使用するルイス酸が周期律表の第Ib、IIb、IIIa、IIIb、IVa、IVb、Va、Vb、VIb、VIIb及びVIII族の元素の化合物から選択されることを特徴とする、請求項9〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記ルイス酸が塩化亜鉛、臭化亜鉛、沃化亜鉛、塩化マンガン、臭化マンガン、塩化カドミウム、臭化カドミウム、塩化第一錫、臭化第一錫、硫酸第一錫、酒石酸第一錫、トリフルオルメタンスルホン酸インジウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ハフニウム、エルビウム、タリウム、イッテルビウム及びルテチウムから選択される希土類元素の塩化物又は臭化物、塩化コバルト、塩化第一鉄、塩化イットリウム並びにそれらの混合物、有機金属化合物よりなる群から選択されることを特徴とする、請求項9〜11のいずれかに
記載の方法。
【請求項13】
ブタジエンのヒドロシアン化により得られる反応混合物中に存在するメチル−2−ブテン−3−ニトリルのペンテンニトリルへの異性化を、シアン化水素を存在させずに、少なくとも1種の式(II)又は(IV)の化合物と少なくとも1種の遷移金属化合物とを有する触媒の存在下で実施することを特徴とする、請求項6〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
請求項4又は5に記載の触媒系の存在下でアルケンをヒドロホルミル化する方法であって、前記金属元素がロジウム又はコバルトであることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機リン化合物、触媒系におけるそれらの使用及び該触媒系を使用した有機化合物の合成方法、特にエチレン性不飽和有機化合物を少なくとも一つのニトリル官能基を有する化合物にヒドロシアン化する方法及びアルデヒドの製造のために不飽和化合物をヒドロホルミル化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロシアン化反応は、例えば、ニッケルと有機リン配位子のトリアリールホスフィットとを含む触媒系の存在下でシアン化水素酸を少なくとも1個のエチレン二重結合を有する有機化合物に添加することによってニトリルを製造する方法に関する仏国特許第1599761号に記載されている。この反応は溶媒の存在下又は不存在下で実施できる。
【0003】
溶媒を使用する場合には、好ましくはベンゼン若しくはキシレンなどの炭化水素や、アセトニトリルなどのニトリルである。
【0004】
使用する触媒は、ホスフィン、アルシン、スチビン、ホスフィット、アルセナイト又はアンチモナイトなどの配位子を有する有機ニッケル錯体である。
【0005】
該特許には、硼素化合物や金属塩などの触媒を活性化するための促進剤、一般にはルイス酸を存在させることも推奨されている。
【0006】
一般にホスフィット、ホスホナイト、ホスフィナイト及びホスフィンの類に属する有機リン化合物を含む他の多数の触媒系も提案されている。これらの有機リン化合物は、1分子当たり1個のリン原子を含むことができ、かつ、単座配位子と説明され、又は1分子当たり数個のリン原子を含むことができ、この場合には多座配位子と呼ばれる。特に、1分子当たり2個のリン原子を含む多数の配位子(二座配位子)が多数の特許文献に記載されている。
【0007】
しかしながら、上記方法の一般経済を改善させるために、触媒活性と安定性の両方について性能が良好な新規触媒系が常に求められている。
【0008】
また、オレフィン化合物と一酸化炭素及び水素の混合物とを加圧下で反応させてアルデヒドを形成させることからなるヒドロホルミル化反応も多数の文献に記載されている。例えば、オレフィン類のヒドロホルミル化の一般的な説明は、B.Cornils及びW.A.Herrmann(著),「Applied Homogeneous Catalysis with Organometallic compounds」,第1及び2巻,Weinheim,1996及び百科事典「Les Techniques de l’Ingenieur」J 5 750−1,2002版で公開されたE.KUNTZによる記事に見出すことができる。この反応系で使用された触媒系は、概して、有機リン配位子、特にトリフェニルホスフィンなどの有機ホスフィンや有機ホスフィットによって錯化できる、コバルト又はロジウムの水素化カルボニルを含む。アルケン類のヒドロホルミル化に使用される触媒系の一般的な説明が米国特許第7495133号に与えられている。ヒドロシアン化についても、触媒の性能と方法の単純化の両方について方法の特性を改善するために新規な触媒系が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第7495133号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】B.Cornils及びW.A.Herrmann(著),「Applied Homogeneous Catalysis with Organometallic compounds」,第1及び2巻,Weinheim,1996
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的の一つは、遷移金属と共に、特にヒドロシアン化及びヒドロホルミル化の反応において良好な触媒活性を示す触媒系を得ることを可能にする新規配位子群を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的のために、本発明は、次の一般式(I)及び(II)のうちの一つに相当することを特徴とする有機リン化合物を提案する:
【化1】
式中、
・R1、R2、R3、R4、R5、R7及びZは、同一のもの又は異なるものであってよく、水素原子、ヘテロ原子を含有していてよい、1〜12個の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキル基、ヘテロ原子を含有していてよい置換又は非置換の芳香族又は脂環式基を有する基、カルボニル、アルコキシカルボニル又はアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトリル基又は1〜12個の炭素原子を有するハロアルキル基を表し、
・X、X1及びX2は、同一のもの又は異なるものであってよく、酸素、窒素、硫黄、炭素又は珪素原子を表し、
・R6は、共有結合、直鎖又は分岐脂肪族基、置換若しくは非置換の芳香族若しくは脂環式環又は結合により互いに縮合若しくは結合した数個の芳香族環を含む基を表し、
・n及びn1は、同一のもの又は異なるものであってよく、それぞれ、元素X1、X2の原子価を2で減じたものに等しい整数である。
【0013】
本発明の特定の実施形態によれば、これらの有機リン化合物は有機ホスフィナイトの種類に相当し、かつ、次の一般式(III)及び(IV)のうちの一つに相当する:
【化2】
式中、
・R1、R2、R3、R4は、同一のもの又は異なるものであってよく、水素原子、又はヘテロ原子を含有していてよい、1〜12個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキル基を表し、
・Zは、ヘテロ原子を含有していてよい置換又は非置換の芳香族又は脂環式基、カルボニル、アルコキシカルボニル又はアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトリル基又は1〜12個の炭素原子を有するハロアルキル基を表し、
・R5は、共有結合、直鎖又は分岐脂肪族基、置換若しくは非置換の芳香族若しくは脂環式環又は結合により互いに縮合若しくは結合した数個の芳香族環を含む基を表す。
【0014】
本発明の一般式(I)、(II)、(III)又は(IV)の好ましい化合物としては、次式の化合物が挙げられる:
【化3】
【0015】
【化4】
【0016】
【化5】
【0017】
【化6】
【0018】
これらの化合物は、次式の化合物(以下CgPHという)から製造できる:
【化7】
【0019】
これらのCgPH化合物並びにそれらの合成方法は、2008年の雑誌ORGANOMETALLICS第27巻、No.13,p.3215−3224:Joanne H.Downing外による「General Routes to Alkyl Phosphotrioadamantane Ligands」に公開された科学論文に記載されている。
【0020】
該CgPH化合物は、ジクロルメタンなどの有機溶媒中で分子ハロゲンと反応することによりCgPX化合物(Xはハロゲン原子、好ましくは臭素を表す)に転化する。
【0021】
次いで、CgPX化合物を、例えばテトラヒドロフランなどの溶媒中で一般式(III)及び(IV)において残基Z又はR5に相当するヒドロキシル化化合物と有機アルカリ金属化合物、好ましくは有機リチウム化合物とを反応させることによって得られる化合物と反応させる。
【0022】
式(I)及び(II)の化合物の製造方法に関する詳細及び追加情報は、以下の実施例に与えている。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の別の目的によれば、式(I)、(II)、(III)又は(IV)の有機リン化合物は、錯体を形成させるように金属元素と組み合わせることによって触媒系を製造するために使用される。概して、これらの触媒系の組成は、一般式(V)又は(VI)によって表すことができる(これらの式は、触媒系に存在する化合物及び錯体の構造には相当しない):
M[Lft(V)又は
HM[Lft+n(CO)4-n(VI)
式中、
Mは遷移金属であり、
fは、式(I)、(II)、(III)又は(IV)の少なくとも1個の有機リン配位子を表し、
tは1〜10の数を表し、
nは1〜4の数を表す。
【0024】
錯化できる金属Mは、一般に、The Chemical Rubber Companyによる「Handbook of Chemistry and Physics,第51版(1970−1971)」で公開された周期律表の第1b、2b、3b、4b、5b、6b、7b及び8族の全ての遷移金属である。
【0025】
これらの金属のなかでは、特に、ヒドロシアン化及びヒドロホルミル化の反応において触媒として使用できる金属が挙げられる。すなわち、制限されない例として、ニッケル、コバルト、鉄、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金、銅、銀、金、亜鉛、カドミウム、水銀が挙げられる。ニッケルがオレフィン類及び不飽和ニトリル類のヒドロシアン化にとって好ましい元素であり、特にアルケン類のヒドロホルミル化にとってはコバルト又はロジウムが好ましい元素である。
【0026】
一般式(I)、(II)、(III)又は(IV)の化合物を含む触媒系の製造は、選択された金属、例えばニッケル又はロジウムの化合物の溶液と本発明の有機リン化合物の溶液とを接触させることによって実施できる。
【0027】
この金属化合物は溶媒に溶解できる。使用する化合物において、金属は、有機金属錯体において有する酸化度又はそれよりも高い酸化度であることができる。
【0028】
例として、本発明の有機金属錯体において、ロジウムは酸化度(I)、ルテニウムは酸化度(II)、白金は酸化度(0)、パラジウムは酸化度(0)、オスミウムは酸化度(II)、イリジウムは酸化度(I)、ニッケルは酸化度(0)であることが言及できる。
【0029】
有機金属錯体の製造中に、金属をより高い酸化度で使用する場合には、該金属をその場で還元することができる。
【0030】
有機金属錯体を製造するために使用できる金属Mの化合物のなかでは、特に金属がニッケルである場合に、非限定的な例として次のニッケル化合物が挙げられる:
・ニッケルが酸化度ゼロの化合物、例えばテトラシアノニッケル酸カリウムK4[Ni(CN)4]、ニッケル(ゼロ)ビス(アクリロニトリル)、ニッケルビス(シクロオクタジエン−1,5)(Ni(cod)2ともいう)及び誘導体テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(ゼロ)などの配位子を有する誘導体。
・カルボキシレート(特にアセテート)、カーボネート、ビカーボネート、ボレート、臭化物、塩化物、シトレート、チオシアネート、シアン化物、ホルメート、水酸化物、ヒドロホスフィット、ホスフィット、ホスフェート及びその誘導体、沃化物、ニトレート、スルフェート、スルフィット、アリールスルホネート及びアルキルスルホネートなどのニッケル化合物。
【0031】
使用するニッケル化合物が0よりも大きいニッケルの酸化状態に相当する場合には、ニッケルの還元剤を反応混合物に添加し、好ましくは該反応混合物とその反応条件下で反応させる。この還元剤は有機物又は無機物であることができる。例として、ホウ化水素、例えばBH4Na、BH4K、Zn粉末、マグネシウム又は水素が挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
使用するニッケル化合物がニッケルの酸化状態0に相当する場合には、上記のような還元剤を添加することも可能であるが、この添加は必須ではない。
【0033】
鉄化合物を使用する場合には、同じ還元剤が好適である。パラジウムの場合には、還元剤は、さらに、反応混合物(ホスフィン、溶媒、オレフィン)の成分であることができる。
【0034】
一般式(I)、(II)、(III)又は(IV)の化合物を含む触媒系を製造するために使用する金属がロジウムの場合には、該錯体は、ロジウム化合物として、式(acac)Rh(CO)2又は(acac)Rh(COD)(式中、
・acacはアセチルアセトンを表し
・CODはシクロオクタジエンを表す。)
の化合物を使用して製造できる。
【0035】
また、本発明は、ニトリル化合物、特にジニトリル化合物の製造用のオレフィン、特にジオレフィンのヒドロシアン化方法に関するものでもある。
【0036】
本発明の方法で特に使用される少なくとも1個のエチレン二重結合を有する有機化合物は、ジオレフィン、例えばブタジエン、イソプレン、ヘキサジエン−1,5、シクロオクタジエン−1,5、エチレン性不飽和脂肪族ニトリル、特にペンテン−3−ニトリル、ペンテン−4−ニトリルなどの直鎖ペンテン−ニトリル並びにモノオレフィン、例えばスチレン、メチルスチレン、ビニルナフタリン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン並びにこれらの化合物の数種の混合物である。
【0037】
ペンテン−ニトリルは、ペンテン−3−ニトリル及びペンテン−4−ニトリルの他に、例えばブタジエンから不飽和ニトリルへの前のヒドロシアン化反応により得られた他の化合物、例えばメチル−2−ブテン−3−ニトリル、メチル−2−ブテン−2−ニトリル、ペンテン−2−ニトリル、バレロニトリル、アジポニトリル、メチル−2−グルタロニトリル、エチル−2−スクシノニトリル又はブタジエンを一般には少量含有することができる。
【0038】
実際に、ブタジエンのヒドロシアン化の間に、直鎖ペンテン−ニトリルの他に、無視できる程の量ではないメチル−2−ブテン−3−ニトリル及びメチル−2−ブテン−2−ニトリルが形成する。
【0039】
本発明の方法に従ってヒドロシアン化するために使用される触媒系は、これを反応区域に供給する前に、例えば式(I)、(II)、(III)又は(IV)の化合物そのもの又は溶媒に溶解させた該化合物に、選択された遷移金属化合物及び随意に還元剤を適当量添加することによって製造できる。また、ヒドロシアン化を受けるべき化合物を添加する前又は添加した後に、式(I)、(II)、(III)又は(IV)の化合物及び遷移金属化合物をヒドロシアン化反応混合物に単に添加することによって該触媒系を「その場」で製造することも可能である。
【0040】
ニッケル又は別の遷移金属の化合物の使用量は、ヒドロシアン化又は異性化を受ける有機化合物1モル当たり、10-4〜1の濃度(モル)の遷移金属を得るように、好ましくは使用するニッケル又は他の遷移金属を0.005〜0.5モル得るように選択される。
【0041】
触媒を形成させるために使用される式(I)、(II)、(III)又は(IV)の化合物の量は、この化合物の遷移金属1モルに対するモル数が0.5〜100、好ましくは2〜50となるように選択される。
【0042】
この反応は、通常は触媒を使用せずに実施されるが、不活性の有機溶媒を添加することが有利な場合もある。この溶媒は、ヒドロシアン化温度でヒドロシアン化を受けるべき化合物を含む相と混和性のある触媒の溶媒であることができる。このような触媒の例としては、芳香族、脂肪族又は脂環式炭化水素が挙げられる。
【0043】
ヒドロシアン化反応は、通常は10℃〜200℃、好ましくは30℃〜120℃の温度で実施される。この反応は単一相媒体で実施できる。
【0044】
本発明のヒドロシアン化方法は連続的に又は非連続的に使用できる。
【0045】
使用するシアン化水素は、金属シアン化物、特にシアン化ナトリウムから、又はアセトンシアノヒドリンなどのシアノヒドリンから、又はメタンとアンモニア及び空気とを反応させることからなるアンドルソフ法などの既知の合成方法によって製造できる。
【0046】
無水シアン化水素は、気体又は液体の状態で反応器に導入される。また、シアン化水素を予め有機溶媒に溶解しておくこともできる。
【0047】
不連続(バッチ)適用については、実際に不活性ガス(窒素、アルゴンなど)で予めパージされた反応器に、式(I)、(II)、(III)又は(IV)の化合物、遷移金属(ニッケル)化合物、随意の還元剤及び溶媒などの各種成分のいくらか若しくは全てを含有する溶液を装入する、又は該成分を別々に装入する。通常、その後反応器を選択した温度に加熱し、続いてシアン化を受けるべき化合物を導入する。続いて、シアン化水素そのものを、好ましくは連続的に均等に導入する。
【0048】
反応(その進行は、試料を検査することにより監視できる)が完了したら、反応混合物を冷却後に取り出し、そして反応生成物を例えば蒸留により単離し、分離する。
【0049】
有利には、アジポニトリルなどのジニトリルのジオレフィン(ブタジエン)からの合成は、2つの連続工程で実施される。第1工程は、ジオレフィンの二重結合をヒドロシアン化して不飽和モノニトリルを得ることからなる。第2工程は、モノニトリルの不飽和をヒドロシアン化して対応する1種以上のジニトリルを得ることからなる。これら2つの工程は、概して、同じ性質の有機金属錯体を含む触媒系で実施される。しかし、有機リン化合物/金属元素比及び触媒の濃度は異なっていてもよい。さらに、第2工程において触媒系と共触媒又は促進剤とを組み合わせることが好ましい。この共触媒又は促進剤は、通常はルイス酸である。
【0050】
特に共触媒として使用されるルイス酸は、エチレン性不飽和脂肪族ニトリルのヒドロシアン化の場合に、得られるジニトリルの線状性、すなわち形成されたジニトリルの全てに対する線状ジニトリルのパーセンテージを改善させること、及び/又は触媒の活性と可使時間とを増大させることを可能にする。
【0051】
本願において、ルイス酸とは、通常に定義に従い、電子二重項の受容体である化合物を意味する。
【0052】
特にG.A.OLAHにより公開された論文「Friedel−Crafts and related reactions」,第I巻、191〜197頁(1963)において言及されたルイス酸を使用することが可能である。
【0053】
本発明の方法において共触媒として使用できるルイス酸は、周期律表の第Ib、IIb、IIIa、IIIb、IVa、IVb、Va、Vb、VIb、VIIb及びVIII族の元素の化合物から選択される。ほとんどの場合、これらの化合物は、塩、特に、塩化物又は臭化物などのハロゲン化物、スルフェート、スルホネート、ハロスルホネート、ペルハロアルキルスルホネート、特にフルオルアルキルスルホネート又はペルフルオルアルキルスルホネート、カルボキシレート及びホスフェートである。
【0054】
該ルイス酸の例としては、塩化亜鉛、臭化亜鉛、沃化亜鉛、塩化マンガン、臭化マンガン、塩化カドミウム、臭化カドミウム、塩化第一錫、臭化第一錫、硫酸第一錫、酒石酸第一錫、トリフルオルメタンスルホン酸インジウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ハフニウム、エルビウム、タリウム、イッテルビウム及びルテチウムなどの希土類元素の塩化物又は臭化物、塩化コバルト、塩化第一鉄、塩化イットリウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
また、ルイス酸として、トリフェニルボラン、チタンイソプロピレート又は2008年1月25日に出願された仏国特許出願第0800381号に記載された化合物などの有機金属化合物を使用することも可能である。
【0056】
勿論、数種のルイス酸の混合物を使用することも可能である。
【0057】
ルイス酸のなかでは、塩化亜鉛、臭化亜鉛、塩化第一錫、臭化第一錫、トリフェニルボラン及び塩化亜鉛/塩化第一錫混合物が特に好ましい。
【0058】
使用されるルイス酸共触媒は、通常、遷移金属化合物、特にニッケル化合物1モル当たり0.01〜50モル、好ましくは1〜10モル/モルを占める。
【0059】
第2工程で使用する不飽和モノニトリルは、有利には線状ペンテン−ニトリル、例えばペンテン−3−ニトリル、ペンテン−4−ニトリル及びそれらの混合物である。
【0060】
これらのペンテン−ニトリルは、メチル−2−ブテン−3−ニトリル、メチル−2−ブテン−2−ニトリル、ペンテン−2−ニトリルなどの他の化合物を通常は少量含有することができる。
【0061】
ルイス酸の存在下でヒドロシアン化させるための触媒溶液は、反応区域に導入する前に、例えば式(I)、(II)、(III)又は(IV)の化合物に、ルイス酸の選択された遷移金属化合物及び随意に還元剤を適当量添加することによって製造できる。また、これら様々な成分を反応混合物に単に添加することによって触媒溶液を「その場で」製造することも可能である。
【0062】
また、本発明のヒドロシアン化方法の条件で、特に式(I)、(II)、(III)又は(IV)の化合物と少なくとも1種の遷移金属化合物とを含む上記触媒系の存在下で実施することにより、シアン化水素を存在させずに、メチル−2−ブテン−3−ニトリルからペンテンニトリルへの異性化、より一般的には分岐不飽和ニトリルから線状不飽和ニトリルへの異性化を実施することも可能である。
【0063】
本発明に従って異性化されるメチル−2−ブテン−3−ニトリルは、単独で使用してもよいし、他の化合物と混合してもよい。すなわち、メチル−2−ブテン−3−ニトリルとメチル−2−ブテン−2−ニトリル、ペンテン−4−ニトリル、ペンテン−3−ニトリル、ペンテン−2−ニトリル、ブタジエンとを混合して使用することが可能である。
【0064】
特に、少なくとも1種の式(I)、(II)、(III)又は(IV)の化合物及び少なくとも1種の遷移金属化合物、より好ましくは上記酸化度0のニッケル化合物の存在下でHCNによるブタジエンのヒドロシアン化により得られた反応混合物を処理することが有利である。この好ましい変形例の範囲内では、触媒系はブタジエンのヒドロシアン化反応のために既に存在しているので、シアン化水素の供給を全て停止して、異性化反応が起こるようにすれば十分である。
【0065】
この変形例では、適宜、例えば窒素やアルゴンなどの不活性ガスで反応器の軽いパージを実施して、依然として存在する可能性があるいかなる酸化水素酸も排出させることが可能である。
【0066】
異性化反応は、一般に、10℃〜200℃、好ましくは60℃〜140℃の温度で実施される。
【0067】
ブタジエンのヒドロシアン化反応直後に異性化を行う好ましい場合には、ヒドロシアン化を実施した温度又はそれよりも僅かに高い温度で行うことが有益であろう。
【0068】
エチレン性不飽和化合物のヒドロシアン化方法について、異性化のために使用される触媒系は、反応区域に導入する前に、例えば式(I)、(II)、(III)又は(IV)の化合物と、選択される遷移金属化合物及び随意に還元剤の適当量とを混合させることによって製造できる。また、これらの各種成分を反応混合物を単に添加することで触媒系を「その場で」製造することも可能である。遷移金属化合物(特にニッケル)の使用量並びに式(I)、(II)、(III)又は(IV)の化合物の量は、ヒドロシアン化反応の場合と同じである。
【0069】
異性化反応は、通常は溶媒を使用せずに実施されるが、後に抽出剤として使用できる不活性有機溶媒を添加することが有利な場合もある。これは、特に、このような溶媒をブタジエンのヒドロシアン化反応に使用し、異性化反応を行う媒体を製造するために使用した場合である。該溶媒は、ヒドロシアン化について先に列挙したものから選択できる。
【0070】
しかし、ブタジエンなどのオレフィンのヒドロシアン化によるジニトリル化合物の製造は、不飽和ニトリルの形成工程及び上記異性化工程のために本発明に従う触媒系を使用して実施することができ、また、不飽和ニトリルからジニトリルへのヒドロシアン化反応は、本発明に従う触媒系又はこの反応のために既に知られている他の触媒系により実施できる。
【0071】
同様に、オレフィンから不飽和ニトリルへのヒドロシアン化反応及び不飽和ニトリルの異性化は、本発明とは異なる触媒系により実施することができ、不飽和ニトリルからジニトリルへのヒドロシアン化の工程は本発明に従う触媒系で実施される。
【0072】
また、本発明は、アルデヒドの合成のためにアルケンをヒドロホルミル化する方法に関するものでもある。
【0073】
本願発明の方法で使用されるアルケンは、例えば、直鎖オレフィン、例えば、エチレン、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキサン、1−オクテンである。
【0074】
一般に、ロジウムと有機リン化合物との錯体を主成分とする触媒の存在下でのヒドロホルミル化反応は、例えば、J.FALBEによる論文「New syntheses with carbon monoxide」,Springer Verlag,Berlin,Heidelberg,New York,第95頁(1980)に記載されている。オレフィンは、触媒の存在下でCO/H2混合物(合成ガス)と反応する。この反応は、40〜180℃、好ましくは60℃〜140℃の温度、1〜300bar、好ましくは10〜70barの圧力で実施される。CO/H2混合物(合成ガス)は、1〜1.25の水素対一酸化炭素体積比を有する。触媒及び配位子を、随意に溶媒を含むことができるヒドロホルミル化媒体に溶解させる。
【0075】
本発明の他の詳細及び利点を、単なる例示であって限定ではない以下の実施例により例示する。
【実施例】
【0076】

使用した略語
・Ph:フェニル基
・Cod:シクロオクタジエン
・Ni(Cod)2:ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル
・Rh(acac)(CO)2:ロジウムジカルボニルアセチルアセトン
・3PN:3−ペンテンニトリル
・AdN:アジポニトリル
・ESN:エチルスクシノニトリル
・MGN:メチルグルタロニトリル
・DN:ジニトリル化合物(AdN、MGN又はESN)
・TIBAO:テトライソブチルジアルミノキサン
・TT(Y):転化されたYのモル数対Yの初期モル数の比に相当する、転化される生成物Yの転化率
・RR(DN):形成されたジニトリルのモル数対使用した3PNのモル数の比に相当する、真のジニトリル収率
・線状性(L):AdNのモル数対形成されたジニトリルのモル数(AdN、ESN及びMGNのモル数の合計)の比
次の化合物:3PN、Ni(Cod)2、ZnCl2、TIBAO、BPh3、ジフェニルボリン酸無水物(Ph2BOPh2)、Rh(acac)(CO)2は、既知の物質であり、市販されている。
【0077】
例1〜10:配位子1〜10の製造
第1工程において、Br2(3.5158g、0.022モル)のCH2Cl2(30mL)溶液を30分以内にCgPH(4.3243g、0.02モル)を60mLのジクロルメタン(CH2Cl2)に溶解してなる溶液に0℃で添加し、この温度で30分間撹拌し、次いで1時間にわたり室温で撹拌する。溶媒を蒸発させ、そして僅かに黄色の固形物を得た(CgPBr)。NMR31Pδ53.5(CH2Cl2中):
【化8】
化合物CgPBr
【0078】
配位子1の製造:
ブチルリチウム(BuLi)のヘキサン溶液(1.6M、0.02モル、12.5mL)をフェノール(1.8822g、0.02モル)のテトラヒドロフラン(THF)(20mL)溶液に0℃でゆっくりと添加する。この混合物を室温で1時間にわたり撹拌し、続いて30分以内にCgPBr(5.9022g、0.02モル)のTHF(60mL)溶液に0℃で添加する。得られた懸濁液を一晩撹拌してから溶媒を蒸発させる。この粗配位子のCH2Cl2溶液をシリカでろ過し、そして溶媒を蒸発させる。この配位子を、窒素圧力下で、溶媒としてCH2Cl2/ペンタン混合物(体積で1/3)を使用してシリカカラムクロマトグラフィーにより精製する。
得られた量:4.33g(収率:70%)
31P NMRδ79.3(CDCl3中)。
【0079】
配位子2の製造:
BuLiのヘキサン溶液(1.6M、0.02モル、12.5mL)を2,4,6−トリメチルフェノール(2.7238 g、0.02モル)のTHF(20mL)溶液に0℃でゆっくりと添加する。この混合物を室温で1時間にわたり撹拌し、続いて30分以内にCgPBr(5.9022g、0.02モル)のTHF(60mL)溶液に0℃で添加する。得られた懸濁液を一晩撹拌してから溶媒を蒸発させる。この粗配位子をCH2Cl2(60mL)に溶解させ、そして50mLの水を添加する。水性相をCH2Cl2(50mL)で抽出し、そして一緒にした有機相をNa2SO4で乾燥させ、ろ過し、そして溶媒を蒸発させる。この配位子を、窒素圧力下で、溶媒としてCH2Cl2/ペンタン混合物(体積で1/3)を使用してシリカカラムクロマトグラフィーにより精製する。
得られた量:4.21g(60%)
31P NMRδ82.0(CDCl3中)
【0080】
配位子3の製造:
BuLiのヘキサン溶液(1.6M、0.02モル、12.5mL)を2−メチルフェノール(2.1628g、0.02モル)のTHF(20mL)溶液に0℃でゆっくりと添加する。この混合物を室温で1時間にわたり撹拌し、続いて30分以内にCgPBr(5.9022g、0.02モル)のTHF(60mL)溶液に0℃で添加する。得られた懸濁液を一晩撹拌してから溶媒を蒸発させる。この粗配位子をCH2Cl2(60mL)に溶解させ、そして50mLの水を添加する。水性相をCH2Cl2(50mL)で抽出し、そして一緒にした有機相をNa2SO4で乾燥させ、ろ過し、そして溶媒を蒸発させる。この配位子を、窒素圧力下で、溶媒としてCH2Cl2/ペンタン混合物(体積で1/3)を使用してシリカカラムクロマトグラフィーにより精製する。
得られた量:5.01g(78%)
31P NMRδ76.0(CDCl3中)
【0081】
配位子4の製造:
BuLiのヘキサン溶液(1.6M、0.02モル、12.5mL)を2,4−ジ−t−ブチルフェノール(4.125g、0.02モル)のTHF(20mL)溶液に0℃でゆっくりと添加する。この混合物を室温で1時間にわたり撹拌し、続いて30分以内にCgPBr(5.9022g、0.02モル)のTHF(60mL)溶液に0℃で添加する。得られた懸濁液を一晩撹拌してから溶媒を蒸発させる。この粗配位子をCH2Cl2(60mL)に溶解させ、そして50mLの水を添加する。水性相をCH2Cl2(50mL)で抽出し、そして一緒にした有機相をNa2SO4で乾燥させ、ろ過し、そして溶媒を蒸発させる。この配位子を、窒素圧力下で、溶媒としてCH2Cl2/ペンタン混合物(体積で1/3)を使用してシリカカラムクロマトグラフィーにより精製する。
得られた量:6.24g(74%)
31P NMRδ68.8(CDCl3
【0082】
配位子5の製造
BuLiのヘキサン溶液(1.6M、0.02モル、12.5mL)をジフェノール(1.8621g、0.01モル)のTHF(20mL)溶液に0℃でゆっくりと添加する。この混合物を室温で1時間にわたり撹拌し、続いて30分以内にCgPBr(5.9022g、0.02モル)のTHF(60mL)溶液に0℃で添加する。得られた懸濁液を一晩撹拌してから溶媒を蒸発させる。この粗配位子をCH2Cl2(60mL)に溶解させ、そして50mLの水を添加する。水性相をCH2Cl2(50mL)で抽出し、そして一緒にした有機相をNa2SO4で乾燥させ、そしてろ過し、そして溶媒を蒸発させる。配位子5をCH2Cl2/ペンタン混合物(体積で1/5)から結晶化により精製する。
得られた量:3.0g(49%)
31P NMRδ82.8(CDCl3中)
【0083】
配位子6の製造:
BuLiのヘキサン溶液(1.6M、0.02モル、12.5mL)をメタノール(0.5768g、0.018モル)のTHF(20mL)溶液に0℃でゆっくりと添加する。この混合物を室温で1時間にわたり撹拌し、続いて30分以内にCgPBr(5.9022g、0.02モル)のTHF(60mL)溶液に0℃で添加する。得られた懸濁液を一晩撹拌してから溶媒を蒸発させる。この粗配位子をCH2Cl2(60mL)に溶解させ、そして50mLの水を添加する。水性相をCH2Cl2(50mL)で抽出し、そして一緒にした有機相をNa2SO4で乾燥させ、ろ過し、そして溶媒を蒸発させる。この配位子を、窒素圧力下で、溶媒としてCH2Cl2/ペンタン混合物(体積で1/3)を使用してシリカカラムクロマトグラフィーにより精製する。
得られた量:3.11g(70%)
31P NMRδ88.5(CDCl3中)
【0084】
配位子7の製造:
BuLiのヘキサン溶液(1.6M、0.02モル、12.5mL)を1,2−ベンゼンジメタノール(1.2711g、0.00092モル)のTHF(20mL)溶液に0℃でゆっくりと添加する。この混合物を室温で1時間にわたり撹拌し、続いて30分以内にCgPBr(5.9022g、0.02モル)のTHF(60mL)溶液に0℃で添加する。得られた懸濁液を一晩撹拌してから溶媒を蒸発させる。この粗配位子をCH2Cl2(60mL)に溶解させ、そして50mLの水を添加する。水性相をCH2Cl2(50mL)で抽出し、そして一緒にした有機相をNa2SO4で乾燥させ、ろ過し、そして溶媒を蒸発させる。この配位子を、窒素圧力下で、溶媒としてエチルアセテート/ヘキサン混合物(体積で1/6)を使用してシリカカラムクロマトグラフィーにより精製する。
得られた量:3.87g(74%)
31P NMRδ85.9及び86.0(CDCl3中)
【0085】
配位子8の製造:
BuLiのヘキサン溶液(1.6M、0.02モル、12.5mL)をトリフルオルエタノール(2.0008g、0.02モル)のTHF(20mL)溶液に0℃でゆっくりと添加する。この混合物を室温で1時間にわたり撹拌し、続いて30分以内にCgPBr(5.9022g、0.02モル)のTHF(60mL)溶液に0℃で添加する。得られた懸濁液を一晩撹拌してから溶媒を蒸発させる。この配位子を、窒素圧力下で、溶媒としてCH2Cl2/ペンタン混合物(体積で1/3)を使用してシリカカラムクロマトグラフィーにより精製する。
得られた量:4.81g、(77%)。
31P NMRδ97.2、4P,F7.4Hz(CDCl3中)
19F NMRδ−75.1、4F,P3F,H7.3Hz(CDCl3中)
【0086】
配位子9の製造:
BuLiのヘキサン溶液(1.6M、0.01モル、6.25mL)を1,2−ベンゼン(ジメタノール)(2.0725g、0.015モル)のTHF(50mL)溶液に0℃でゆっくりと添加する。この混合物をゆっくりと室温にし、1時間撹拌する。次いで、CgPBr(2.9511g、0.01モル)のTHF(50mL)溶液を上記懸濁液に0℃で30分でゆっくりと添加し、そしてこの混合物を3時間にわたり室温で撹拌する。溶媒を蒸発させ、得られた固形物をCH2Cl2(50mL)に溶解させ、そして50mLの水を添加する。水性相を50mLのCH2Cl2で抽出し、そして一緒にした有機相をNa2SO4で乾燥させ、ろ過し、そして溶媒を蒸発させる。この化合物を、窒素圧力下で、溶媒としてエチルアセテート/ヘキサン混合物(体積で1/6)を使用してシリカカラムクロマトグラフィーにより精製する。
得られた量:2.89g(収率82%)
31P NMRδP87.9(CDCl3
【0087】
配位子10の製造:
ブチルリチウム(BuLi)のヘキサン溶液(1.6M、0.01モル、6.25mL)をチオフェノール(1.11g、0.01モル)のテトラヒドロフラン(THF)(15mL)溶液に0℃でゆっくりと添加する。この混合物を室温で1時間にわたり撹拌し、続いて30分でCgPBr(2.95g、0.01モル)のTHF(50mL)溶液に0℃で添加する。得られた懸濁液を一晩撹拌してから溶媒を蒸発させる。この配位子を、窒素圧力下で、溶媒としてCH2Cl2/ペンタン混合物(体積で1/3)を使用してシリカカラムクロマトグラフィーにより精製する。
得られた量:2.76g(85%)
31P NMRδP 21.5(CDCl3
【0088】
例11〜15:1−ヘキサンのヒドロホルミル化
次の手順を使用する:
不活性雰囲気下で、オートクレーブにRh(acac)(CO)2(6.2mg、0.024ミリモル)と、本発明に従う配位子(その性質及び量を表1に示す)と、5mLのトルエンとを装入する。続いて、この反応器をH2/CO混合物(1:1、モル比)を20barに加圧し、そして60℃で1時間にわたり加熱し、続いて室温にまで冷却し、脱気し、そして窒素でパージする。続いて1.2mLの1−ヘキサンを添加し、そしてオートクレーブをH2/CO混合物(1:1、モル比)で20barに再度加圧し、60℃に1時間にわたり加熱する。続いて、この反応器を室温にまで冷却し、脱気し、そして窒素でパージする。得られた生成物を1H NMR(核磁気共鳴による分析)により分析する。得られた生成物は、ヒドロホルミル化により生成物を含む混合物、例えばヘプタノール(線状生成物)及び2−メチルヘキサナール(分岐生成物)である。
【0089】
これらの結果を以下の表Iに与える。
【0090】
【表1】
【0091】
例16〜30:3−PNからAdNへのヒドロシアン化
次の手順を使用する:
アルゴン雰囲気下で、ストッパー隔壁を備える60mLのショット型ガラス管に次のものを連続的に充填する:
・配位子(1ミリモル、Pにおいて2当量)
・無水3PNを1.21g(15ミリモル、30当量)
・Ni(cod)2を138mg(0.5ミリモル、1当量)
・ルイス酸(量については表2参照)。
【0092】
この混合物を70℃で撹拌する。反応混合物にアセトンシアノヒドリンをシリンジポンプで1時間あたり0.45mLの流量で注入する。3時間の注入後に、このシリンジポンプを停止させる。混合物を室温にまで冷却し、アセトンで希釈し、そしてガスクロマトグラフィーで分析する。
【0093】
結果を次の表に与える。
【0094】
【表2】