特許第5710516号(P5710516)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5710516
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20150409BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20150409BHJP
   B60R 16/03 20060101ALI20150409BHJP
【FI】
   H02M3/155 B
   H02J1/00 304H
   H02J1/00 306B
   H02J1/00 308D
   B60R16/02 670S
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-24683(P2012-24683)
(22)【出願日】2012年2月8日
(65)【公開番号】特開2013-162702(P2013-162702A)
(43)【公開日】2013年8月19日
【審査請求日】2014年2月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】510123839
【氏名又は名称】オムロンオートモーティブエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101786
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 秀行
(72)【発明者】
【氏名】折金 俊典
(72)【発明者】
【氏名】宮下 将之
(72)【発明者】
【氏名】小平 和史
(72)【発明者】
【氏名】堀尾 伸治
【審査官】 下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−112250(JP,A)
【文献】 特開平05−241659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
B60R 16/03
H02J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源と負荷との間に設けられ、前記直流電源の電圧を昇圧して前記負荷へ供給する昇圧回路と、
前記直流電源と前記負荷との間に設けられ、前記昇圧回路に対してバイパス経路を構成するバイパス素子と、
外部から入力される第1信号および第2信号に基づいて、前記昇圧回路の動作を制御するとともに切替信号を出力する制御部と、
前記切替信号および前記第2信号に基づいて、前記バイパス素子の状態を切り替える切替回路と、
を備え、
前記切替回路は、
前記切替信号および前記第2信号の一方または双方が入力されない場合は、前記直流電源から前記バイパス素子を介して前記負荷へ電圧が供給されるように、当該バイパス素子の状態を切り替え、
前記切替信号および前記第2信号が共に入力された場合は、前記直流電源から前記昇圧回路を介して前記負荷へ電圧が供給されるように、前記バイパス素子の状態を切り替え
前記バイパス素子は、コイルと接点とを有する常閉型のバイパスリレーであり、
前記切替回路は、前記バイパスリレーのコイルと直列に接続された第1スイッチと、当該第1スイッチのON・OFFを制御する第2スイッチとを含み、
前記第2信号に基づいて前記第2スイッチがONまたはOFFし、かつ、前記制御部から前記切替信号が出力されることにより、前記第1スイッチがONして、当該第1スイッチを介して前記バイパスリレーのコイルに通電が行われ、前記接点が開くことを特徴とする電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電源装置において、
前記第2信号に基づいて動作する常開型のメインリレーを更に備え、
前記昇圧回路と直列に前記メインリレーの接点が接続されており、
前記昇圧回路および前記メインリレーの接点に対して、前記バイパスリレーの接点が並列に接続されていることを特徴とする電源装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電源装置において、
前記バイパスリレーの前記コイルの一端が、前記切替回路を介して、前記昇圧回路の出力側に接続されていることを特徴とする電源装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項のいずれかに記載の電源装置において、
前記第1信号は、車両のイグニッションスイッチの操作に基づいて生成されるイグニッション信号であり、
前記第2信号は、車両がアイドリングストップ状態となった後、エンジンが再始動する際に生成される昇圧要求信号であることを特徴とする電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電源の電圧を昇圧して負荷に供給する電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に搭載される各種の機器や回路に直流電圧を供給するための電源装置として、従来から種々のものが知られている。例えば、後記の特許文献1〜4には、DC−DCコンバータを備えた電源装置が記載されている。DC−DCコンバータは、スイッチング素子、コイル、コンデンサなどから構成される昇圧回路を有しており、直流電源の電圧を高速でスイッチングすることにより、昇圧された直流電圧を出力する。
【0003】
自動車には、信号待ちの時などにエンジンを自動的に一時停止し、発進時にエンジンを自動的に再始動する、いわゆるアイドリングストップ機能を備えたものがある。このような自動車においては、エンジンの再始動時にスタータモータに大電流が流れるため、バッテリ電圧が大きく低下して、機器や回路がリセットされるなど正常に動作しない状態が発生する。そこで、この電圧の低下を補償するために、バッテリ電圧を昇圧する必要がある。
【0004】
特許文献1〜3の電源装置では、バッテリと負荷との間にDC−DCコンバータを設けるとともに、このDC−DCコンバータに対してバイパス経路を構成するバイパスリレーを設けている。そして、通常走行時は、バッテリからバイパスリレーを介して負荷へ直流電圧を供給し、エンジン再始動時には、バッテリからDC−DCコンバータを介して、昇圧された直流電圧を負荷へ供給する。これにより、エンジン再始動時の電源電圧の低下が補償され、負荷である機器や回路を正常に動作させることができる。
【0005】
特許文献4の電源装置は、電気自動車に搭載されるものであり、モータの高速回転時に、モータで発生する逆起電力によるバッテリ電圧の低下を補償するために、バッテリとインバータとの間にDC−DCコンバータを設けている。また、このDC−DCコンバータに対してバイパス経路を構成するバイパスリレーを設けている。そして、フィードバック手段からの指令に基づいて、バッテリの直流電圧をバイパスリレーを介して負荷へ供給するか、DC−DCコンバータを介して負荷へ供給するかを切り替える。
【0006】
は、DC−DCコンバータを備えた従来の電源装置の一例を示している。電源装置300は、バッテリ1と負荷2との間に設けられ、DC−DCコンバータ3とバイパスリレー20とから構成される。負荷2は、例えば車両用のオーディオ機器や車内灯などである。DC−DCコンバータ3は、メインリレー10、昇圧回路11、入力インタフェース12、CPU13、およびトランジスタQを備えている。メインリレー10は、コイルXaと接点Yaとを有している。接点Yaは、常時は開いた状態にある。バイパスリレー20は、コイルXbと接点Ybとを有している。接点Ybは、常時は閉じた状態にある。CPU13には、入力インタフェース12を介して、イグニッションスイッチSWからのイグニッション信号と、昇圧要求信号発生部4からの昇圧要求信号が入力される。昇圧要求信号発生部4は、例えばアイドリングストップ用のECU(Electronic Control Unit;電子制御ユニット)である。
【0007】
車両の走行中は、イグニッションスイッチSWがON(閉じた状態)となって、CPU13にH(High)レベルのイグニッション信号が入力されている。この信号を受けて、CPU13はトランジスタQをOFFに制御する。このため、バイパスリレー20のコイルXbに通電が行われず、バイパスリレー20の接点YbはON(閉じた状態)となっている。したがって、バッテリ1からバイパスリレー20の接点Ybを介して、負荷2に直流電圧が供給される。一方、CPU13には、昇圧要求信号発生部4から昇圧要求信号が入力されないので、CPU13はメインリレー10を駆動せず、メインリレー10の接点YaはOFF(開いた状態)となっている。また、CPU13は昇圧回路11も駆動しないので、DC−DCコンバータ3は昇圧動作を行わない。
【0008】
車両が停止してアイドリングストップ状態となった後、エンジンが再始動すると、CPU13に、昇圧要求信号発生部4からL(Low)レベルの昇圧要求信号が入力される。この信号を受けて、CPU13はトランジスタQをONにするとともに、メインリレー10のコイルXaに通電を行い、更に昇圧回路11を駆動する。トランジスタQがONとなることで、バイパスリレー20のコイルXbにバッテリ1から通電が行われるため、バイパスリレー20の接点YbはOFFとなる。一方、メインリレー10のコイルXaにバッテリ1から通電が行われる結果、メインリレー10の接点YaはONとなる。したがって、バッテリ1から接点Yaおよび昇圧回路11を介して、負荷2に昇圧された直流電圧が供給される。
【0009】
ところで、リレーの接点には、常開型の接点と常閉型の接点とがある。常開型の接点は、コイルに通電されないときは開いていて、コイルに通電されると閉じる接点である。常閉型の接点は、これとは逆に、コイルに通電されないときは閉じていて、コイルに通電されると開く接点である。図の電源装置300においては、バイパスリレー20の接点Ybは、常閉型の接点となっている。この理由は、負荷2がオーディオ機器や車内灯などの場合、車両が停車状態にあってイグニッション信号のないときでも、負荷2を駆動できるようにしておく必要があるためである。
【0010】
しかるに、バイパスリレー20の接点Ybを常閉型の接点とした場合は、CPU13やトランジスタQの故障により、トランジスタQがON状態になると、バイパスリレー20のコイルXbへ通電がされ、接点Ybが開いてしまう。このため、バッテリ1から負荷2に電圧が供給されなくなり、負荷2を駆動できなくなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−112250号公報
【特許文献2】特開2010−183755号公報
【特許文献3】特開2011−162065号公報
【特許文献4】特開2005−160284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、回路に故障が発生した場合でも、電源から負荷に継続して電圧を供給することが可能な電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る電源装置は、直流電源と負荷との間に設けられ、直流電源の電圧を昇圧して負荷へ供給する昇圧回路と、直流電源と負荷との間に設けられ、昇圧回路に対してバイパス経路を構成するバイパス素子と、外部から入力される第1信号および第2信号に基づいて、昇圧回路の動作を制御するとともに切替信号を出力する制御部と、切替信号および第2信号に基づいて、バイパス素子の状態を切り替える切替回路とを備えている。切替回路は、切替信号および第2信号の一方または双方が入力されない場合は、直流電源からバイパス素子を介して負荷へ電圧が供給されるように、バイパス素子の状態を切り替え、切替信号および第2信号が共に入力された場合は、直流電源から昇圧回路を介して負荷へ電圧が供給されるように、バイパス素子の状態を切り替える。
【0014】
このような構成によると、切替信号と第2信号の双方が切替回路に入力された場合のみ、切替回路が、負荷への電圧供給経路をバイパス素子側から昇圧回路側に切り替える。このため、バイパス素子を通して負荷へ電圧が供給されている状態で、回路が故障して、誤動作により切替信号と第2信号の一方が切替回路に入力されても、他方が入力されない限り、切替回路はバイパス素子の状態を切り替えない。これにより、バイパス素子を動作状態に維持して、直流電源から負荷への電圧供給を継続することができる。
【0015】
本発明において、バイパス素子、コイルと接点とを有する常閉型のバイパスリレーで構成され、切替回路、バイパスリレーのコイルと直列に接続された第スイッチと、当該第スイッチのON・OFFを制御する第スイッチとを含む。この場合、第2信号に基づいて第スイッチがONまたはOFFし、かつ、制御部から切替信号が出力されることにより、第スイッチがONして、この第スイッチを介してバイパスリレーのコイルに通電が行われ、接点が開く。
【0016】
本発明において、第2信号に基づいて動作する常開型のメインリレーを更に設け、昇圧回路と直列にメインリレーの接点を接続し、昇圧回路およびメインリレーの接点に対して、バイパスリレーの接点を並列に接続してもよい。
【0017】
本発明において、バイパスリレーのコイルの一端を、切替回路を介して、昇圧回路の出力側に接続してもよい。
【0018】
本発明において、第1信号は、車両のイグニッションスイッチの操作に基づいて生成されるイグニッション信号であり、第2信号は、車両がアイドリングストップ状態となった後、エンジンが再始動する際に生成される昇圧要求信号であってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、回路に故障が発生した場合でも、電源から負荷に継続して電圧を供給することが可能な電源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る電源装置の回路図である。
図2実施形態の電源装置が状態#1にあるときの回路図である。
図3実施形態の電源装置が状態#2にあるときの回路図である。
図4実施形態の電源装置が状態#3にあるときの回路図である。
図5実施形態の電源装置が状態#4にあるときの回路図である。
図6実施形態の電源装置が状態#5にあるときの回路図である。
図7実施形態の電源装置の動作を示したタイムチャートである。
図8実施形態の制御ロジックを示した表である。
図9】従来の電源装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。各図において、同一部分または対応部分には同一符号を付してある。
【0022】
最初に、本発明の実施形態に係る電源装置の構成を、図1を参照しながら説明する。電源装置00は、バッテリ1と負荷2との間に設けられ、バイパスリレー20とDC−DCコンバータ30とから構成される。本実施形態では、バッテリ1は、自動車に搭載される直流電源であり、負荷2は、車両用のオーディオ機器や車内灯などである。
【0023】
バイパスリレー20は、常閉型のリレーであって、コイルXbおよび接点Ybを有している。コイルXbの一端はバッテリ1の正極に接続され、他端はDC−DCコンバータ30に接続されている。接点Ybの一端はバッテリ1の正極に接続され、他端は負荷2に接続されている。バッテリ1の負極は接地されている。
【0024】
DC−DCコンバータ30は、メインリレー10、昇圧回路11、入力インタフェース12、CPU13、および切替回路17を備えている。切替回路17は、バイパスリレー20のコイルXbと直列に接続された第1スイッチ18と、この第1スイッチ18のON・OFFを制御するトランジスタQ3とを有している。第1スイッチ18は、トランジスタやFETから構成されている。トランジスタQ3は、本発明における第2スイッチに相当する。第2スイッチとして、FETを用いてもよい。
【0025】
第1スイッチ18の一端は、バイパスリレー20の接点Ybを介してバッテリ1の正極に接続されているとともに、昇圧回路11の出力側に接続されている。第1スイッチ18の他端は、バイパスリレー20のコイルXbの一端に接続されている。コイルXbの他端は、グランドに接地されている。
【0026】
トランジスタQ3のコレクタは、抵抗R3を介してCPU13の出力に接続されているとともに、第1スイッチ18の入力に接続されている。トランジスタQ3のベースは、抵抗R5およびダイオードD4を介して、昇圧要求信号発生部4に接続されているとともに、抵抗R5および抵抗R4を介して、直流電源Bに接続されている。トランジスタQ3のエミッタは、グランドに接地されている。トランジスタQ3のベース・エミッタ間には抵抗R6が接続されている。
【0027】
昇圧回路11は、ON・OFF動作を行うスイッチング素子U、昇圧用のコイルL、整流用のダイオードD1、および平滑用のコンデンサCから構成される公知の回路である。スイッチング素子Uは、例えばMOS−FETからなり、CPU13から出力される制御信号によりスイッチング動作を行う。スイッチング素子UのON・OFFによりコイルLで発生した高電圧は、ダイオードD1で整流され、コンデンサCで平滑されて、昇圧された直流電圧として負荷2へ供給される。
【0028】
メインリレー10は、常開型のリレーであって、コイルXaと接点Yaとを有している。コイルXaの一端はバッテリ1の正極に接続され、他端はCPU13に接続されている。接点Yaの一端はバッテリ1の正極に接続され、他端は昇圧回路11のコイルLの一端に接続されている。コイルLの他端は、ダイオードD1を介して、負荷2に接続されている。
【0029】
したがって、図1においては、バッテリ1と負荷2との間に、昇圧回路11とメインリレー10の接点Yaとが直列に接続され、昇圧回路11とメインリレー10の接点Yaに対して、バイパスリレー20の接点Ybが並列に接続された構成となっている。
【0030】
バッテリ1とDC−DCコンバータ30との間には、イグニッションスイッチSWが設けられている。イグニッションスイッチSWの一端は、バッテリ1の正極に接続されている。イグニッションスイッチSWの他端は、ダイオードD2を介して入力インタフェース12に接続されている。
【0031】
昇圧要求信号発生部4は、本実施形態ではアイドリングストップ用のECUである。この昇圧要求信号発生部4には、図示しないブレーキスイッチや車速センサなどから、ブレーキ信号や車速信号が入力される。昇圧要求信号発生部4に備わる出力トランジスタQ2は、それらの信号に応じてON・OFF動作を行う。昇圧要求信号発生部4の出力は、ダイオードD3を介して入力インタフェース12に与えられるとともに、ダイオードD4および抵抗Rを介してトランジスタQのベースに与えられる
【0032】
入力インタフェース12は、CPU13の入力側に設けられており、イグニッションスイッチSWから入力されるイグニッション信号(第1信号)、および昇圧要求信号発生部4から入力される昇圧要求信号(第2信号)をCPU13へ与える。CPU13は、これらの信号に基づいて、メインリレー10、昇圧回路11、および第1スイッチ1を制御する。
【0033】
以上において、バイパスリレー20は本発明における「バイパス素子」の一例であり、CPU13は本発明における「制御部」の一例である。
【0034】
次に、電源装置200の動作につき、図〜図を参照しながら説明する。なお、以下の説明で、イグニッションスイッチSW、メインリレー10の接点Ya、バイパスリレー20の接点Yb、および第スイッチ18に関し、接点の閉じた状態を「ON」と表記し、接点の開いた状態を「OFF」と表記する。
【0035】
車両が停止しているときは、電源装置200は図に示した状態#1にある。すなわち、イグニッションスイッチSWはOFFであり、DC−DCコンバータ30にイグニッション信号は入力されない。また、昇圧要求信号発生部4の出力トランジスタQ2もOFFであるので、DC−DCコンバータ30に昇圧要求信号は入力されない。
【0036】
この状態下では、CPU13は、メインリレー10、昇圧回路11、および第スイッチ18のいずれも駆動しない。このため、メインリレー10の接点YaはOFFであり、昇圧回路11は非昇圧状態であり、第スイッチ18はOFFである。また、昇圧要求信号発生部4の出力トランジスタQ2がOFFのため、トランジスタQ3は、ベースが高電位となってONしている。第スイッチ18がOFFであるので、バイパスリレー20のコイルXbに通電は行われず、バイパスリレー20の接点YbはONとなっている。この結果、図に太矢印で示したように、バッテリ1からバイパスリレー20の接点Ybを介して負荷2へ至る電流経路が形成され、バッテリ1の電圧が、DC−DCコンバータ30を経由せずに直接負荷2へ供給される。
【0037】
車両が走行中のときは、電源装置200は図に示した状態#2にある。すなわち、イグニッションスイッチSWがONとなって、バッテリ1からイグニッションスイッチSWを介して、DC−DCコンバータ30にHレベルのイグニッション信号が入力される。このイグニッション信号は、ダイオードD2および入力インタフェース12を介して、CPU13へ与えられる。一方、昇圧要求信号発生部4の出力トランジスタQ2はOFFであるので、DC−DCコンバータ30に昇圧要求信号は入力されない。
【0038】
この状態下では、イグニッションスイッチSWからのイグニッション信号が、入力インタフェース12を介してCPU13へ入力されても、CPU13は、メインリレー10、昇圧回路11、および第スイッチ18のいずれも駆動しない。このため、メインリレー10の接点YaはOFFであり、昇圧回路11は非昇圧状態であり、第スイッチ18はOFFである。すなわち、図の状態#2は、イグニッションスイッチSWがONしている点を除いて、図の状態#1と同じ状態にある。
【0039】
また、車両が信号待ちなどでアイドリングストップ状態となった場合も、アイドリングストップが解除されるまでは、図の状態#2が維持される。
【0040】
車両がアイドリングストップ状態となった後、アイドリングストップが解除されてエンジンが再始動すると、電源装置200は、一時的に図の状態#3となった後、図の状態#4に遷移する。まず、図について説明する。アイドリングストップ後にエンジンが再始動すると、昇圧要求信号発生部4の出力トランジスタQ2がONとなり、昇圧要求信号発生部4からL(Low)レベルの昇圧要求信号が出力される。この昇圧要求信号は、ダイオードD3および入力インタフェース12を介して、CPU13へ与えられるとともに、ダイオードD4および抵抗R5を介して、トランジスタQ3のベースに与えられる。一方、イグニッションスイッチSWは、引き続きONとなっている。
【0041】
トランジスタQ3は、昇圧要求信号によってベースが低電位となるので、OFFになる。一方、CPU13は、昇圧要求信号に応答して、当該信号の入力からCPU13において信号入力が確定するまでの時間(入力確定時間)より若干長い時間だけ遅れて、第スイッチ18に切替信号を出力する。したがって、第スイッチ18は即時にONとはならない。このため、バイパスリレー20のコイルXbに通電は行われず、接点YbはONのままで、図の太矢印で示す電流経路が維持される。
【0042】
また、CPU13は、昇圧要求信号に応答して、入力確定時間だけ遅れてメインリレー10を駆動する。その結果、バッテリ1からメインリレー10のコイルXaに通電が行われ、接点YaがONとなる。なお、この時点では、CPU13は昇圧回路11を駆動しないので、昇圧回路11は非昇圧状態を維持している。
【0043】
上記のように、図の状態#3では、一時的に、バイパスリレー20の接点Ybと、メインリレー10の接点Yaとが共にONとなる。その結果、バッテリ1から接点Ybを介して負荷2へ至る電流経路(実線矢印)と、バッテリ1から接点Ya、コイルLおよびダイオードD1を介して負荷2へ至る電流経路(破線矢印)とが形成される。
【0044】
その後、CPU13から出力される切替信号により、第スイッチ18が駆動されてONすると、電源装置200は図の状態#4となる。この状態では、バッテリ1からメインリレー10の接点Ya、昇圧回路11、および第スイッチ18を通して、バイパスリレー20のコイルXbに通電が行われ、バイパスリレー20の接点YbはOFFとなる。また、CPU13は、第スイッチ18をONにすると同時に、昇圧回路11のスイッチング素子Uを駆動するので、昇圧回路11が動作して昇圧状態となる。この結果、図に太矢印で示したように、バッテリ1からDC−DCコンバータ30を経由して負荷2へ至る電流経路が形成され、バッテリ1の電圧が昇圧回路11で昇圧されて、負荷2へ供給される。これにより、エンジン再始動時のバッテリ1の電圧低下が補償される。
【0045】
エンジンが再始動した後、車両が通常の走行状態になると、電源装置200は、一時的に図の状態#5を経て、図の状態#2に遷移する。通常の走行状態になると、昇圧要求信号発生部4の出力トランジスタQ2がOFFとなり、昇圧要求信号発生部4から昇圧要求信号が出力されなくなる。このため、図に示すように、トランジスタQ3がONとなって、CPU13からの切替信号が第スイッチ18に入力されなくなるので、第スイッチ18がOFFする。これにより、バイパスリレー20のコイルXbに通電が行われなくなるので、バイパスリレー20の接点YbがONとなる。また、CPU13は、昇圧要求信号がなくなったことに応答して、メインリレー10と昇圧回路11の駆動を停止する。この場合、CPU13は、入力確定時間だけ遅れて昇圧回路11を非昇圧状態にする。また、CPU13は、入力確定時間よりも若干長い時間だけ遅れて、メインリレー10のコイルXaへの通電を停止する。このため、メインリレー10の接点Yaは即時にOFFとはならない。
【0046】
したがって、図の状態#5では、一時的に、バイパスリレー20の接点Ybと、メインリレー10の接点Yaとが共にONとなる。その結果、バッテリ1から接点Ybを介して負荷2へ至る電流経路(実線矢印)と、バッテリ1から接点Ya、コイルLおよびダイオードD1を介して負荷2へ至る電流経路(破線矢印)とが形成される。
【0047】
その後、メインリレー10の接点YaがOFFになると、図の状態#2となり、バッテリ1の電圧が、DC−DCコンバータ30を経由せずに、バイパスリレー20の接点Ybを介して直接負荷2へ供給される。
【0048】
そして、車両が停止すると、イグニッションスイッチSWがOFFとなり、電源装置200は図の状態#1に遷移する。
【0049】
このようにして、車両の状態に応じて、電源装置200は状態#1〜#5を遷移する。
【0050】
は、以上説明した電源装置200の動作をタイムチャートで表したものである。
【0051】
時刻t1までは車両は停止状態にある。このとき、イグニッションスイッチSWからのイグニッション信号は無く、昇圧要求信号発生部4からの昇圧要求信号は無く、昇圧回路11は非昇圧状態となっている。また、CPU13からの切替信号は無く、メインリレー10の接点Ya、および第スイッチ18はいずれもOFFとなっており、トランジスタQ3(第スイッチ)はONとなっており、バイパスリレー20の接点YbはONとなっている(状態#1;図)。
【0052】
時刻t1でイグニッションスイッチSWがONになり、車両が走行を開始すると、DC−DCコンバータ30にイグニッション信号が入力される。しかし、メインリレー10、第スイッチ18、トランジスタQ3、バイパスリレー20の状態に変化はなく、昇圧回路11も非昇圧状態を維持する(状態#2;図)。この状態は、車両がアイドリングストップ状態となっても維持される。
【0053】
時刻t2でアイドリングストップが解除され、エンジンが再始動すると、昇圧要求信号発生部4から昇圧要求信号が出力される。この信号によって、トランジスタQ3がOFFとなる。それから入力確定時間τ1だけ遅れて、時刻t3でメインリレー10の接点YaがONとなる(状態#3;図)。
【0054】
そして、時刻t4になると、CPU13から切替信号が出力されて、第スイッチ18がONとなり、バッテリ1からバイパスリレー20のコイルXbに通電が行われて、接点YbがOFFとなる。また、昇圧回路11がCPU13により駆動され、昇圧状態となる。これにより、バッテリ1からDC−DCコンバータ30を経由して負荷2へ電圧が供給される(状態#4;図)。したがって、図で一点鎖線(A部)で示すように、エンジン再始動により12〔V〕以下に低下したバッテリ1の電圧は、DC−DCコンバータ30で昇圧され、12〔V〕以上の元のレベルまで回復する。
【0055】
時刻t5で車両が通常の走行状態になると、昇圧要求信号発生部4からの昇圧要求信号がなくなり、トランジスタQ3がONする結果、第スイッチ18がOFFとなる。これにより、バイパスリレー20のコイルXbへの通電が断たれ、接点YbがONとなる。その後、入力確定時間τ2が経過して時刻t6になると、昇圧回路11が非昇圧状態となり、CPU13からの切替信号も停止する(状態#5;図)。
【0056】
時刻t7になると、メインリレー10の接点YaがOFFとなり、バッテリ1からバイパスリレー20の接点Ybを介して、負荷2へ電圧が供給される(状態#2;図)。
【0057】
時刻t8で車両が停止すると、イグニッション信号がなくなるが、メインリレー10、第スイッチ18、トランジスタQ3、およびバイパスリレー20の状態に変化はなく、昇圧回路11も非昇圧状態を維持する(状態#1;図)。
【0058】
は、以上説明した動作における制御ロジックを、テーブルにまとめたものである。
【0059】
上述した実施形態によれば、切替回路17に、CPU13からの切替信号と、昇圧要求信号発生部4からの昇圧要求信号とが共に入力された場合にのみ、第スイッチ18がONとなって、バイパスリレー20のコイルXbに通電が行われ、接点YbがOFFとなる。このため、回路の故障により、例えばCPU13から誤って切替信号が出力されても、昇圧要求信号発生部4から昇圧要求信号が出力されない限り、第スイッチ18はONしない。したがって、バイパスリレー20のコイルXbに通電は行われず、接点YbはOFFしない。また、昇圧要求信号発生部4から誤って昇圧要求信号が出力されても、CPU13から切替信号が出力されない限り、第スイッチ18はONしない。したがって、バイパスリレー20のコイルXbに通電は行われず、接点YbはOFFしない。以上により、バッテリ1から負荷2への電圧供給が断たれるという事態を回避することができ、負荷2への通電を継続することができる。
【0060】
また、本実施形態では、バイパスリレー20のコイルXbの一端が、第スイッチ18を介して、昇圧回路11の出力側に接続されている。このため、第スイッチ18がONした場合に、昇圧回路11で昇圧された電圧が、第スイッチ18を介してコイルXbに印加される。これにより、コイルXbに十分な電流が流れ、バイパスリレー20の接点Ybが確実にOFFして、負荷2への電圧供給経路を昇圧回路11側へ切り替えることができる。
【0061】
本発明では、上述した以外にも種々の実施形態を採用することができる
【0062】
たとえば、図においては、CPU13から切替信号が出力され、かつ、第スイッチであるトランジスタQ3がOFFであるときに、第スイッチ18がONする回路構成とした。これに代えて、CPU13から切替信号が出力され、かつ、第スイッチであるトランジスタがONであるときに、第スイッチ18がONする回路構成を採用してもよい。この場合は、例えば、抵抗R3と第スイッチ18との間に、コレクタが抵抗R3に接続され、エミッタが第スイッチ18に接続されたトランジスタ(図示省略)を設ければよい。
【0063】
また、昇圧回路11をバッテリ1に対して接断する素子として、メインリレー10の代わりに、半導体スイッチング素子を用いることも可能である。
【0064】
また、上記実施形態では、車両に搭載される負荷に直流電圧を供給する電源装置を例に挙げたが、本発明は、これ以外の用途にも適用することができる。
【0065】
さらに、上記実施形態では、エンジン再始動時のバッテリ電圧の低下を補償する例を挙げたが、特許文献4のように、電気自動車のモータの高速回転時の逆起電力によるバッテリ電圧の低下を補償する場合にも、本発明は適用が可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 バッテリ(直流電源)
2 負荷
4 昇圧要求信号発生部
10 メインリレー
11 昇圧回路
13 CPU(制御部)
17 切替回路
18 第スイッチ
20 バイパスリレー(バイパス素子)
30 DC−DCコンバータ
200 電源装置
Q3 トランジスタ(第スイッチ)
SW イグニッションスイッチ
Xa メインリレーのコイル
Ya メインリレーの接点
Xb バイパスリレーのコイル
Yb バイパスリレーの接点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9