【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、本発明によれば、独立請求項に記載の構成により達せられる。より好ましい構成は従属請求項に記載のとおりである。
【0005】
本発明の基本となる技術思想は次のとおりである。熱的分離の実現に少なくとも1つの形状安定な形状体を用い、この形状体を多孔質に構成するか、または多孔質断熱材料で形成する。形状体は、排気の通る内部領域を区画する内殻と、内殻の外側に配置される外殻との間に配置される。このような断熱形状体は従来のマット状の繊維質の断熱材料と比べて熱伝導係数が著しく低い。これだけでも多孔質の形状体により各排気系部品の熱的分離が効果的に実現できる。形状体はさらに耐荷重性と形状安定性を有し、このため形状体によって各排気系部品の剛性がある程度高められる。形状体を介して内殻が外殻に支えられるからである。
【0006】
好ましくは、各形状体を剛体として形成する。これにより形状体に支持機能を持たせる。それに加えてまたは代えて、形状体の形状を、内殻と外殻との間に形成される空隙の形状に合わせてもよい。これにより各形状体がほぼ自立し、取り扱いやすくなる。特に好ましくは、形状体を微細多孔質に構成するか、または微細多孔質断熱材料で形成する。このような形状体の製造に適した微細多孔性材料の例として、焼成ケイ酸またはエアロゲルの発泡体(フォーム)が挙げられる。微細多孔質断熱材料が有する細孔の大きさは、好ましくは約10nm〜50nm、より好ましくは約20nmである。これにより特に気体分子の平均自由行程を減少させ、形状体の微細多孔質構造内における対流による熱伝達を著しく低減できる。それに加えてまたは代えて、多孔質の形状体を形成する断熱材料の粒子を球状にするとよい。これにより、隣り合う材料粒子同士を極めて小さな点で接触させることができ、形状体の多孔質構造内における伝導による熱伝達を大幅に低減できる。それに加えてまたは代えて、形状体の多孔質断熱材料に赤外領域の光を吸収する材料または物質を混ぜてもよい。これにより多孔質の形状体内における放射による熱伝達を著しく低減できる。
【0007】
好ましくは、断熱材を複数の微細多孔質の形状体で構成し、そのうち少なくとも2つの形状体を堅固に係合させる。これにより形状体相互の位置決めが、高価な固定手段を用いることなく可能となる。ここで堅固な係合を実現するために、例えば、形状体に嵌め合わせ構造または実接ぎ(さねつぎ)構造を形成する。形状体を断片化するとなおよい。これが特に好ましいのは、内殻が溝状または管状に構成され、排気の通る内部領域を取り囲んでいる場合である。この場合、外殻が内殻を環状に取り囲むので空隙が環状に形成され、その中に断熱材が収容される。断片化された形状体は空隙に格別嵌め込みやすい。
【0008】
好ましくは、空隙を排気系の設置環境に対して防滴性と気体透過性を有するよう形成する。これにより、外界からの跳ね水が空隙に達するのを防ぐことができる。同時に圧力平衡を得るために、外殻には少なくとも1つの開口を設け、この開口を、たとえば微細孔を形成した金属箔などの防滴性と気体透過性を有する膜で塞ぐ。それに加えてまたは代えて、脱気装置を空隙に、好ましくは外殻に、接続すれば、それによって圧力平衡を得ることができる。あるいは、空隙を排気系部品の設置環境に対して防滴性と気体不透過性を有するよう形成する。例えば外殻に少なくとも1つの開口を形成し、この開口をフードで覆い、このフードと外殻で、外殻の開口から隔たった位置に外界に臨む開口を形成する。これにより、跳ね水からの十分な保護を実現しつつ圧力平衡を得ることができる。
【0009】
好ましくは、内殻と外殻とを管状に形成する一方、空隙と断熱材とを環状に形成する。そうすれば、各形状体を同様に環状または環片状に構成して、排気系部品の組み立ての際に空隙に嵌め込むだけでよい。
【0010】
好ましくは、管状の内殻の長さ方向沿いの一部を蛇腹に形成する。これにより内殻を長さ方向の端部で外殻に固定することができる。熱に起因する膨張は蛇腹によって吸収される。蛇腹の壁は一層でも多層でもよい。より好ましくは、蛇腹を内部領域に臨む側からガイドチューブで覆う。これにより、管状の内殻の、その内面形状が蛇腹によって乱されていることに起因する流れ抵抗を、蛇腹の領域において低減することができる。ここで、内殻が長さ方向沿いに蛇腹と接続する箇所においてそれとほぼ面一になるようにガイドチューブは蛇腹を覆う。こうすれば内殻の内面形状が蛇腹の領域において全くまたは殆ど乱されない。好ましくは、蛇腹は内殻から専ら半径方向に外側へ、すなわち空隙内へ突出する。特に好ましくは、ガイドチューブは、蛇腹の長さ方向の一端で内殻または蛇腹に軸方向に固定され、それ以外のいかなる箇所においても内殻および蛇腹に固定されていない。これにより、ガイドチューブと蛇腹との間の、または、ガイドチューブと内殻との間の、熱に起因する相対運動が可能になる。
【0011】
好ましくは、圧力調整装置を設け、これにより空隙内の圧力をパラメータに基づいて調節可能とする。内殻と外殻との間の、特に対流による、熱伝達は、空隙内の圧力に強く依存する。よって例えば、熱的分離の改善には、空隙内の圧力を外界気圧より低くしてある程度の減圧状態にするのがよい。これは例えば低温始動時に有利である。特に高度の熱的分離の必要がなくなった時点で、空隙内の圧力を、例えば外界気圧またはそれより少し高い圧力まで、上げればよい。これにより部品に対する熱負荷を低減できる。
【0012】
それに加えてまたは代えて、導入/排出装置を設け、これによりパラメータに基づいて空隙に熱媒液を導入、また空隙から熱媒液を排出することを可能とする。例えば排気系部品の過熱を防ぐ目的で熱的分離をさらに抑えたいときには、導入/排出装置により、空隙に熱媒液を導入する。こうすると外殻と内殻との間の熱伝達が著しく高まる。これにより特に、各形状体の熱的分離作用をある程度抑制することができる。逆に、熱的分離を再び良くしたいときには、導入/排出装置により、空隙から熱媒液を排出する。言うまでもなく、熱媒液の導入が可能であるためには、形状体の製造に用いられる材質が、実際に使用される熱媒液に対して、十分に安定であることが前提となる。適切な熱媒体として、例えば水,グリコール等が挙げられる。熱媒体の導入/排出のための配管は、好ましくは空隙の、組み立てた状態において下部、特に最下部、に接続される。これにより可能な限り完全な排出が可能となる。必須ではないが、空隙の、組み立てた状態において上部、特に最上部、に空隙の通気/脱気のための開口をさらに設けてもよい。ここでも異物、特に跳ね水、の侵入を防ぐために、適切な弁装置を設けてもよい。例えば導入/排出装置を通気/脱気配管を介して貯蔵タンクに接続する;空隙から熱媒液を排出するときにはタンクに熱媒液を溜め、空隙に熱媒液を導入するときにはタンクから熱媒液を引き出す。熱媒液の移動に伴い、熱媒液が流れ込んでゆく行先の空間から追い出される空気その他気体の量は、熱媒液が流れ出してくる源の空間に継ぎ足される空気その他気体の量と等しい。このように両空間を直接接続する配管を、空気その他気体もが流通する。そこで熱媒液ではなく気体のほうを、それ用の供給装置を用いて流通させてもよい。この場合熱媒液は自動的に追従する。
【0013】
前述の圧力調整装置および/または導入/排出装置は、空隙に接続されたポンプと、このポンプをパラメータに基づいて制御するコントローラからなる。そのような装置を制御するための適切なパラメータとは例えば車両パラメータや、内燃機関の状態パラメータであり、特に内燃機関や排気系やその部品の温度である。
【0014】
各形状体は、特に空隙に熱媒液を導入可能かつ/または空隙内の圧力が制御可能な場合には、好ましくは開放多孔質構造を有する。
【0015】
好ましくは、外殻を支持部材として構成する一方、内殻を非支持部材として構成する。この構成により、外殻を専ら各部品の排気系への組み込みのために利用する一方で、内殻を主として排気の流通のために利用することができる。この構成においては、外殻を内殻に比べて肉厚にする、つまり内殻を外殻に比べて肉薄にするとよい。外殻は、例えばフェライト材料を用いて比較的安価に作製できる。外殻が曝される熱負荷は比較的小さいからである。これに対して内殻は比較的高価で腐食に強い材料、例えばオーステナイト材料、で作製される。それでも内殻を外殻より薄く作製できるので、これらを組み合わせた構成は全体として比較的安価なものとなる。
【0016】
このような、内殻,少なくとも1つの形状体,外殻で形成される排気系部品とは、例えば特には排気処理装置用のパイプ部材やハウジング部材である。そのような部品として例えば吸気マニホルドや終端管が挙げられる。
【0017】
本発明の他の重要な特徴や効果は、従属請求項、図面、および図面に基づいた本明細書内の記載の該当箇所から理解されるとおりである。
【0018】
上に述べた、また下にこれから述べるいずれの特徴も、具体的に言及されている組み合わせ以外のどのような組み合わせでも、あるいは単独でも、本発明の範囲を逸脱しない限り実施可能である。